JP2008101752A - ベルト式無段変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】オイルポンプの駆動損失の増加を抑制することができるベルト式無段変速機を提供すること。
【解決手段】プライマリ油圧室55への作動油の供給のみ許容し、プライマリプーリ50と一体回転する作動油供給弁70と、作動油供給排出弁70によりプライマリ油圧室55から排出されるおよびプライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容あるいは禁止を制御し、プライマリプーリ50と一体回転する弁開閉装置80と、作動油供給弁70によりプライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量を制御し、プライマリプーリ50と一体回転する排出流量制御弁90とを備えるベルト式無段変速機1−1であって、弁開閉装置80は、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、作動油供給弁70の開弁方向の弁体開弁方向押圧力(ピストン開弁方向押圧力F4)を作動油供給弁70の弁体71に作用させる。
【選択図】 図5
【解決手段】プライマリ油圧室55への作動油の供給のみ許容し、プライマリプーリ50と一体回転する作動油供給弁70と、作動油供給排出弁70によりプライマリ油圧室55から排出されるおよびプライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容あるいは禁止を制御し、プライマリプーリ50と一体回転する弁開閉装置80と、作動油供給弁70によりプライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量を制御し、プライマリプーリ50と一体回転する排出流量制御弁90とを備えるベルト式無段変速機1−1であって、弁開閉装置80は、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、作動油供給弁70の開弁方向の弁体開弁方向押圧力(ピストン開弁方向押圧力F4)を作動油供給弁70の弁体71に作用させる。
【選択図】 図5
Description
本発明は、ベルト式無段変速機に関するものである。
一般に、車両には、駆動源である内燃機関や電動機からの駆動力、すなわち出力トルクを車両の走行状態に応じた最適の条件で路面に伝達するために、駆動源の出力側に変速機が設けられている。この変速機には、変速比を無段階(連続的)に制御する無段変速機と、変速比を段階的(不連続)に制御する有段変速機とがある。ここで、無段変速機には、2つのプーリ、すなわち駆動源からの駆動力が伝達されるプライマリプーリおよびプライマリプーリに伝達された出力トルクを変化させて出力するセカンダリプーリと、このプライマリプーリに伝達された駆動力をセカンダリプーリに伝達するベルトとにより構成されるベルト式無段変速機がある。このプライマリプーリおよびセカンダリプーリは、平行に配置された2つのプーリ軸であるプライマリプーリ軸とセカンダリプーリ軸と、この各プーリ軸上を軸方向にそれぞれ摺動する2つの可動シーブ(プライマリ可動シーブ、セカンダリ可動シーブ)と、この2つの可動シーブに軸方向においてそれぞれ対向するとともに可動シーブとの間でV字形状の溝を形成する2つの固定シーブ(プライマリ固定シーブ、セカンダリ固定シーブ)と、油圧により可動シーブを固定シーブ側に押圧することで、ベルトに対してベルト挟圧力を発生する位置決め油圧室とにより構成されている。なお、ベルトは、プライマリプーリおよびセカンダリプーリのそれぞれに形成されるV字形状の溝に巻き掛けられている。
このベルト式無段変速機は、各位置決め油圧室によりそれぞれの可動シーブが各プーリ軸上をその軸方向に摺動し、プライマリプーリおよびセカンダリプーリのそれぞれに形成されるV字形状の溝の幅を変化させる。これにより、ベルトと、プライマリプーリおよびセカンダリプーリとの接触半径を無段階に変化させ、変速比を無段階に変化するものである。つまり、駆動源からの出力トルクを無段階に変化させるものである。
この位置決め油圧室は、例えば特許文献1に示すように、この位置決め油圧室の油圧により、可動シーブを固定シーブ側に押圧し、ベルトに対してベルト挟圧力を発生させるものである。ここで、ベルト式無段変速機では、固定シーブに対する可動シーブの軸方向への移動を規制する、すなわち固定シーブに対する可動シーブの軸方向における位置を一定とし、変速比を固定する場合がある。上記特許文献1に示すような従来のベルト式無段変速機では、固定シーブに対する可動シーブの軸方向における位置を一定に保持するため、位置決め油圧室の油圧を所定の油圧に保持する必要がある。
従って、従来のベルト式無段変速機では、変速比の変更時だけでなく変速比の固定時においても、位置決め油圧室に作動油を供給する必要がある。このため、作動油供給制御装置が備えるオイルポンプを作動させる必要がある。また、作動油供給制御装置から位置決め油圧室への作動油の供給は、ベルト式無段変速機の例えばケースなどの固定部材および例えばプーリ軸などの可動部材に形成された通路により行われる。従って、変速比の固定時においても位置決め油圧室に作動油を供給するためには、この固定部材と可動部材との摺動部から作動油が漏れる虞がある。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、オイルポンプの駆動損失の増加を抑制することができるベルト式無段変速機を提供することを目的とするものである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明では、2つのプーリと、前記各プーリに巻き掛けられ、一方のプーリに伝達された駆動源からの駆動力を他方のプーリに伝達するベルトと、前記各プーリに形成され、油圧により前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧する位置決め油圧室と、前記位置決め油圧室のうち、一方の位置決め油圧室に作動油を供給する作動油供給流路と、前記作動油供給流路と連通し、前記一方の位置決め油圧室から前記作動油を排出する作動油排出流路と、前記作動油供給流路に配置され、前記一方の位置決め油圧室への前記作動油の供給のみを許容し、前記一方のプーリと一体回転する作動油供給弁と、前記作動油供給弁を強制的に開弁することで、前記一方の位置決め油圧室からの前記作動油の排出の許容あるいは禁止を制御する弁開閉手段と、前記作動油排出流路に配置され、前記弁開閉手段によって開弁された前記作動油供給弁により前記一方の位置決め油圧室から排出される作動油の排出流量を制御し、前記一方のプーリと一体回転する排出流量制御弁と、を備え、前記弁開閉手段は、前記一方の位置決め油圧室への前記作動油の供給時に、前記作動油供給弁の開弁方向の弁体開弁方向押圧力を当該作動油供給弁の弁体に作用させることを特徴とする。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記弁開閉手段は、前記作動油が供給される駆動油圧室と、前記作動油供給弁の開閉弁方向に摺動自在に支持され、かつ前記駆動油圧室の油圧による前記弁体開弁方向押圧力を前記弁体に作用させるピストンと、を備えることを特徴とする。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記排出流量制御弁は、開閉弁方向に摺動自在に支持されるスプールを備え、前記スプールは、前記駆動油圧室の油圧による前記排出流量制御弁の開弁方向のスプール開弁方向押圧力が作用することで前記排出流量を制御することを特徴とする。
この発明によれば、変速比を変更する際には、作動油供給弁を開弁することで一方の位置決め油圧室へ作動油を供給する、あるいは作動油供給弁を強制的に開弁するとともに、排出流量制御弁を開弁することでこの一方の位置決め油圧室から作動油を排出する。一方、変速比を固定(一定)とする際には、作動油供給弁を閉弁することで一方の位置決め油圧室からの作動油の排出を禁止する。つまり、作動油供給弁が一方の位置決め油圧室への作動油の供給のみを許容するものであるため、一方の位置決め油圧室の作動油は、この一方の位置決め油圧室内に保持されることとなる。従って、可動シーブの固定シーブに対する軸方向における位置が変化しようとしても、この一方の位置決め油圧室の油圧が変化することで、可動シーブの固定シーブに対する軸方向における位置を一定に維持することができる。これにより、可動シーブの固定シーブに対する軸方向における位置を一定に維持するために、一方の位置決め油圧室にこの一方の位置決め油圧室の外部から作動油を供給しなくても良く、固定部材と可動部材との摺動部から作動油が漏れることを抑制することができる。これにより、オイルポンプの駆動損失の増加を抑制することができる。
また、一方の位置決め油圧室への前記作動油の供給時に、弁開閉手段が作動油供給弁の開弁方向の弁体開弁方向押圧力を作動油供給弁の弁体に作用させるため、作動油供給弁を開弁する、すなわち弁体を開弁方向に移動させることができる弁体開弁方向押圧力は、この弁開閉手段による弁体開弁方向押圧力と、一方の位置決め油圧室へ供給される作動油の圧力により弁体に作用する弁体開弁方向押圧力とを合わせたものとなる。従って、一方の位置決め油圧室への前記作動油の供給時に、弁開閉手段による弁体開弁方向押圧力を作動油供給弁の弁体に作用させない場合と比較して、一方の位置決め油圧室へ供給される作動油の圧力により弁体に作用する弁体開弁方向押圧力を小さくすることができる。これにより、一方の位置決め油圧室へ供給される作動油の供給圧力を小さくすることができる。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記一方の位置決め油圧室への前記作動油の供給時における弁体開弁方向押圧力を前記弁体に作用させる前記駆動油圧室の油圧は、前記排出流量制御弁を開弁させることができる前記駆動油圧室の油圧未満であることを特徴とする。
この発明によれば、一方の位置決め油圧室への前記作動油の供給時に、弁開閉手段が作動油供給弁の開弁方向の弁体開弁方向押圧力を作動油供給弁の弁体に作用させても、排出流量制御弁が閉弁状態を維持する。従って、一方の位置決め油圧室へ供給される作動油が作動油排出流路から漏れることを抑制することができる。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記作動油供給弁および前記排出流量制御弁は、同一軸上に配置されていることを特徴とする。
この発明によれば、作動油供給弁と排出流量制御弁とを一体化して、一体回転する一方のプーリに配置する。従って、小型化を図ることができる。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記スプールは、前記ピストンであることを特徴とする。
この発明によれば、スプールがピストンであるので、ピストンを開閉弁方向に移動させることで、作動油供給弁の強制的な開弁および排出流量を制御することができる。従って、ピストンとスプールを共用できるので、部品点数の削減、製造コストの低減を図ることができる。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記排出流量制御弁は、前記一方の位置決め油圧室の油圧による前記スプールの閉弁方向のスプール閉弁方向押圧力が当該スプールに作用することを特徴とする。
この発明によれば、一方の位置決め油圧室の油圧が低い場合は、一方の位置決め油圧室の油圧が高い場合と比較して、スプールに作用するスプール閉弁方向押圧力が低下する。従って、一方の位置決め油圧室の油圧が低い場合は、一方の位置決め油圧室の油圧が高い場合と比較して、排出流量制御弁を全開するためのスプール開弁方向押圧力を低減することができる。これにより、一方の位置決め油圧室の油圧に応じて、スプール開弁方向押圧力、例えば駆動油圧室の油圧によるスプール開弁方向押圧力を変更することができる。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記スプールの開弁方向の先端部は、一方の位置決め油圧室に露出していることを特徴とする。
この発明によれば、簡単な構成で、スプール開弁方向押圧力、例えば駆動油圧室の油圧によるスプール開弁方向押圧力を変更することができる。
この発明にかかるベルト式無段変速機は、オイルポンプの駆動損失の増加を抑制することができるという効果を奏する。また、一方の位置決め油圧室へ供給される作動油の供給圧力を小さくすることができるという効果を奏する。
この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施例により、この発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。ここで、下記の実施例におけるベルト式無段変速機に伝達される駆動力を発生する駆動源として内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いるが、これに限定されるものではなく、モータなどの電動機を駆動源として用いても良い。また、下記の実施例では、プライマリプーリを一方のプーリとし、プライマリ油圧室を一方の位置決め油圧室とするが、セカンダリプーリを一方のプーリとし、セカンダリ油圧室を一方の位置決め油圧室としても良い。
図1は、この発明にかかるベルト式無段変速機のスケルトン図である。また、図2は、実施例1にかかるプライマリプーリの軸方向断面図である。図3−1は、トルクカムを示す図である。図3−2は、トルクカムの動作説明図である。図4は、駆動油圧室の油圧と、弁の開弁状態を示す図である。図5は、変速比変更時におけるベルト式無段変速機の動作説明図である。図6は、変速比変更時における流量調整弁の動作説明図である。
図1に示すように、内燃機関10の出力側には、トランスアクスル20が配置されている。このトランスアクスル20は、トランスアクスルハウジング21と、このトランスアクスルハウジング21に取り付けられたトランスアクスルケース22と、このトランスアクスルケース22に取り付けられたトランスアクスルリヤカバー23とにより構成されている。
このトランスアクスルハウジング21の内部には、トルクコンバータ30が収納されている。一方、トランスアクスルケース22とトランスアクスルリヤカバー23とにより構成されるケース内部には、この実施例1にかかるベルト式無段変速機1−1を構成する2つのプーリであるプライマリプーリ50およびセカンダリプーリ60と、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55と、他方の位置決め油圧室であるセカンダリ油圧室64と、作動油供給弁70と、弁開閉装置80と、排出流量制御弁90と、ベルト120とが収納されている。なお、40は前後進切換機構、100は車輪130に内燃機関10の駆動力を伝達する最終減速機、110は動力伝達経路、140は作動油供給制御装置(図2、図4、図5参照)、150はECU(Engine Control Unit)である。
発進機構であるトルクコンバータ30は、図1に示すように、駆動源からの駆動力、すなわち内燃機関10からの出力トルクを増加、あるいはそのままいずれかベルト式無段変速機1−1に伝達するものである。このトルクコンバータ30は、少なくともポンプ(ポンプインペラ)31と、タービン(タービンインペラ)32と、ステータ33と、ロックアップクラッチ34と、ダンパ装置35とにより構成されている。
ポンプ31は、内燃機関10のクランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能な中空軸36に取り付けられている。つまり、ポンプ31は、中空軸36とともに、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能である。また、ポンプ31は、フロントカバー37に接続されている。このフロントカバー37は、内燃機関10のドライブプレート12を介して、クランクシャフト11に連結されている。
タービン32は、上記ポンプ31と対向するように配置されている。このタービン32は、上記中空軸36内部に配置され、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能なインプットシャフト38に取り付けられている。つまり、タービン32は、インプットシャフト38とともに、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能である。
ポンプ31とタービン32との間には、ワンウェイクラッチ39を介してステータ33が配置されている。このワンウェイクラッチ39は、上記トランスアクスルハウジング21に固定されている。また、タービン32とフロントカバー37との間には、ロックアップクラッチ34が配置されており、このロックアップクラッチ34は、ダンパ装置35を介してインプットシャフト38に連結されている。なお、上記ポンプ31やフロントカバー37により形成されるケーシングには、図示しない作動油供給制御装置140から作動流体として作動油が供給されている。
ここで、このトルクコンバータ30の動作について説明する。内燃機関10からの出力トルクは、クランクシャフト11からドライブプレート12を介して、フロントカバー37に伝達される。ロックアップクラッチ34がダンパ装置35により解放されている場合は、フロントカバー37に伝達された内燃機関10からの出力トルクがポンプ31に伝達され、このポンプ31とタービン32との間を循環する作動油を介して、タービン32に伝達される。そして、タービン32に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、インプットシャフト38に伝達される。つまり、トルクコンバータ30は、インプットシャフト38を介して、内燃機関10からの出力トルクを増加して後述するいずれかベルト式無段変速機1−1に伝達する。上記においては、ステータ33により、ポンプ31とタービン32との間を循環する作動油の流れを変化させ所定のトルク特性を得ることができる。
一方、上記ロックアップクラッチ34がダンパ装置35によりロック(フロントカバー37と係合)されている場合は、フロントカバー37に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、作動油を介さずに直接インプットシャフト38に伝達される。つまり、トルクコンバータ30は、インプットシャフト38を介して、内燃機関10からの出力トルクをそのまま後述するベルト式無段変速機1−1に伝達する。
なお、トルクコンバータ30と後述する前後進切換機構40との間には、オイルポンプ142が設けられている。このオイルポンプ142は、ロータ142aと、ハブ142bと、ボディ142cとにより構成されている。このオイルポンプ142は、ロータ142aにより円筒形状のハブ142bを介して、上記ポンプ31に接続されている。また、ボディ142cが上記トランスアクスルケース22に固定されている。また、ハブ142bは、上記中空軸36にスプライン嵌合されている。従って、オイルポンプ142は、内燃機関10からの出力トルクがポンプ31を介してロータ142aに伝達されるので、駆動することができる。
前後進切換機構40は、トルクコンバータ30を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクを後述するいずれかベルト式無段変速機1−1のプライマリプーリ50に伝達するものである。この前後進切換機構40は、少なくとも遊星歯車装置41とフォワードクラッチ42と、リバースブレーキ43とにより構成されている。
遊星歯車装置41は、サンギヤ44と、ピニオン45と、リングギヤ46とにより構成されている。
サンギヤ44は、図示しない連結部材にスプライン嵌合されている。この連結部材は、後述するプライマリプーリ50のプライマリプーリ軸51にスプライン嵌合されている。従って、サンギヤ44に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、プライマリプーリ軸51に伝達される。
ピニオン45は、サンギヤ44と噛み合い、その周囲に複数個(例えば、3個)配置されている。各ピニオン45は、サンギヤ44の周囲で一体に公転可能に支持する切換用キャリヤ47に保持されている。この切換用キャリヤ47は、その外周端部においてリバースブレーキ43に接続されている。
リングギヤ46は、切換用キャリヤ47に保持された各ピニオン45と噛み合い、フォワードクラッチ42を介して、トルクコンバータ30のインプットシャフト38に接続されている。
フォワードクラッチ42は、図示しない作動油供給制御装置140からインプットシャフト38の図示しない中空部に供給された作動油により、ON/OFF制御されるものである。フォワードクラッチ42のOFF時には、インプットシャフト38に伝達された内燃機関10からの出力トルクがリングギヤ46に伝達される。一方、フォワードクラッチ42のON時には、リングギヤ46とサンギヤ44と各ピニオン45とが互いに相対回転することなく、インプットシャフト38に伝達された内燃機関10からの出力トルクが直接サンギヤ44に伝達される。
リバースブレーキ43は、図示しない作動油供給制御装置140から作動油が供給された図示しないブレーキピストンにより、ON/OFF制御されるものである。リバースブレーキ43がON時には、切換用キャリヤ47がトランスアクスルケース22に固定され、各ピニオン45がサンギヤ44の周囲を公転できない状態となる。リバースブレーキ43がOFF時には、切換用キャリヤ47が解放され、各ピニオン45がサンギヤ44の周囲を公転できる状態となる。
ベルト式無段変速機1−1のプライマリプーリ50は、前後進切換機構40を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクを後述するベルト120により、セカンダリプーリ60に伝達するものである。このプライマリプーリ50は、図1および図2に示すように、プライマリプーリ軸51と、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁54と、位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55とにより構成されている。
プライマリプーリ軸51は、軸受121,122により回転可能に支持されている。また、プライマリプーリ軸51は、互いに連通しない供給側通路51aと、駆動側通路51bが形成されている。この供給側通路51aには、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55に供給される作動油が流入する。駆動側通路51bには、作動油供給制御装置140から後述する駆動油圧室82に供給される作動油が流入する。
また、プライマリプーリ軸51は、供給側通路51aに流入した作動油をプライマリ隔壁54とプライマリプーリ軸51との間に形成される空間部T1に流入する連通通路51cが形成されている。また、プライマリプーリ軸51は、駆動側通路51bに流入した作動油をプライマリ隔壁54とプライマリプーリ軸51との間に形成される空間部T2に流入する連通通路51dが形成されている。ここで、プライマリ隔壁54とプライマリプーリ軸51との間には、空間部T1および空間部T2をそれぞれ挟み込むように例えばシールリングなどのシール部材Sがそれぞれ設けられている。つまり、空間部T1および空間部T2は、シール部材Sによりそれぞれシールされている。
プライマリ固定シーブ52は、プライマリ可動シーブ53と対向する位置にプライマリプーリ軸51とともに回転するように設けられている。具体的には、プライマリ固定シーブ52は、プライマリプーリ軸51の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、この実施例1では、プライマリ固定シーブ52は、プライマリプーリ軸51の外周に一体的に形成されている。
プライマリ可動シーブ53は、円筒部53aと、環状部53bとにより構成されている。また、プライマリ可動シーブ53には、環状部53bの外周端部の近傍に軸方向のうち他方向に突出、すなわちプライマリ隔壁側に突出する環状の突出部53dが形成されている。円筒部53aは、プライマリプーリ軸51の軸線と同一軸線を中心に形成されている。環状部53bは、この円筒部53aのプライマリ固定シーブ側の端部から径方向外側に突出して形成されている。このプライマリ可動シーブ53は、円筒部53aの内周面に形成されたスプライン53cと、プライマリプーリ軸51の外周面に形成されたスプライン51eとがスプライン嵌合することで、このプライマリプーリ軸51に軸方向に摺動可能に支持されている。このプライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との間、すなわちプライマリ固定シーブ52の図示しない環状部のプライマリ可動シーブ53に対向する面と、プライマリ可動シーブ53の環状部53bのプライマリ固定シーブ52に対向する面との間で、V字形状のプライマリ溝120aが形成されている。
プライマリ隔壁54は、プライマリ可動シーブ53を挟んでプライマリ固定シーブ52と軸方向において対向する位置に配置されている。また、このプライマリ隔壁54は、環状部材である。また、プライマリ隔壁54は、その径方向内側から外側に向かって第1流路54a、第2流路54b、第3流路54cが形成されている。また、プライマリ隔壁54は、軸方向の他方に向かって、すなわち作動油供給弁70および排出流量制御弁90の閉弁方向に向かって、第1連通流路54d、第2連通流路54eが形成されている。ここで、このプライマリ隔壁54は、その内周面に形成されたスプライン54fと、プライマリプーリ軸51の外周面に形成されたスプライン51fとがスプライン嵌合することで、プライマリプーリ軸51とともに回転するように設けられている。
第1流路54aは、軸方向、すなわち作動油供給弁70および排出流量制御弁90の開閉弁方向に形成されている。この第1流路54aは、上記プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所形成されている。各第1流路54aは、円柱形状であり、閉弁方向の端部が各第3流路54cとそれぞれ連通しており、開弁方向の端部がプライマリ隔壁54の開弁方向における側面、すなわちプライマリ油圧室55にそれぞれ開口している。また、各第1流路54aは、その開閉弁方向における中央部にリング状の弁座突出部72がそれぞれ形成されている。
第2流路54bは、開閉弁方向に形成されている。この第2流路54bは、上記プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所形成されている。各第2流路54bは、円柱形状であり、閉弁方向の端部が閉塞部材54gによりそれぞれ閉塞されており、開弁方向の端部がプライマリ隔壁54の内部でそれぞれ閉塞されている。
第3流路54cは、開閉弁方向に形成されている。この第3流路54cは、上記プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所形成されている。また、各第3流路54cは、各第1流路54aとそれぞれ同一軸上に形成されている。この各第3流路54cは、円柱形状であり、閉弁方向の端部が閉塞部材54hによりそれぞれ閉塞されており、開弁方向の端部が各第1流路54aとそれぞれ連通している。なお、各第1流路54aと各第3流路54cとが連通する部分の径は、各第3流路54cの径よりも小さく形成されている。
第1連通流路54dは、径方向、すなわち作動油供給弁70および排出流量制御弁90の開閉弁方向と直交する直交方向に形成されている。この第1連通流路54dは、上記プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所形成されている。各第1連通流路54dは、円柱形状であり、径方向内側の端部が各第1流路54aの閉弁方向の端部とそれぞれ連通しており、径方向外側の端部が閉塞部材54iによりそれぞれ閉塞されている。また、各第1連通流路54dは、その途中で第2流路54bとそれぞれ連通している。また、各第1連通流路54dは、径方向内側の端部において、一方の端部が空間部T1とそれぞれ連通する連通通路54kの他方の端部とそれぞれ連通している。つまり、各第1流路54aおよび各第1連通流路54dは、各連通通路54k、空間部T1および連通通路51cを介して、プライマリプーリ軸51の供給側通路51aとそれぞれ連通している。従って、作動油供給制御装置140から供給側通路51aに供給された作動油は、各第1流路54aおよび各第1連通流路54dに流入する。
第2連通流路54eは、径方向、すなわち作動油供給弁70および排出流量制御弁90の開閉弁方向と直交する直交方向に形成されている。この第2連通流路54eは、上記プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所形成されている。各第2連通流路54eは、円柱形状であり、径方向内側の端部が各第3流路54cの閉弁方向の端部近傍とそれぞれ連通しており、径方向外側の端部が閉塞部材54jによりそれぞれ閉塞されている。また、各第2連通流路54eは、その途中で第2流路54bの閉弁方向の端部近傍とそれぞれ連通している。また、各第2連通流路54eは、径方向内側の端部において、一方の端部が空間部T2とそれぞれ連通する連通通路54lの他方の端部とそれぞれ連通している。つまり、各第3流路54cおよび各第2連通流路54eは、各連通通路54l、空間部T2および連通通路51dを介して、プライマリプーリ軸51の駆動側通路51bとそれぞれ連通している。従って、作動油供給制御装置140から駆動側通路51bに供給された作動油は、各第3流路54cよび各第2連通流路54eに流入する。
なお、第2流路54bよりも径方向外側で、かつ第1連通流路54dと第2連通流路54eとの間には、排出流路54mが複数形成されている。各排出流路54mは、一方の端部が各第2流路54bの開閉弁方向における中央部にそれぞれ連通しており、他方の端部がプライマリ隔壁54の外周面、すなわち外部にそれぞれ連通している。また、第2流路54bよりも径方向外側で、かつ第1連通流路54dよりも開弁方向には、解放通路54nが複数形成されている。各解放通路54nは、一方の端部が各第2流路54bの開弁方向の端部の近傍にそれぞれ連通しており、他方の端部がプライマリ隔壁54の外周面、すなわち外部にそれぞれ連通している。さらに、第2流路54bと第3流路54cとの間で、かつ第1連通流路54dと第2連通流路54eとの間には、解放通路54oが複数形成されている。各解放通路54oは、一方の端部が各第3流路54cの開弁方向の端部にそれぞれ連通しており、他方の端部が各第2流路54bにそれぞれ連通している。
ここで、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給する作動油供給流路は、この実施例1では、供給側通路51aと、連通通路51cと、空間部T1と、連通通路54kと、第1流路54aとにより構成されている。また、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55から作動油を排出する作動油排出流路は、この実施例1では、第1連通流路54dと、第2流路54bと、排出流路54mとにより構成されている。
プライマリ油圧室55は、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する一方の位置決め油圧室であり、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁54とにより形成される空間部である。ここで、プライマリ可動シーブ53の突出部53dとプライマリ隔壁54との間およびプライマリ可動シーブ53の円筒部53aとプライマリ隔壁54との間には、例えばシールリングなどのシール部材Sがそれぞれ設けられている。つまり、プライマリ油圧室55を構成するプライマリ可動シーブ53とプライマリ隔壁54とにより形成される空間部は、シール部材Sによりシールされている。
このプライマリ油圧室55には、作動油供給弁70が開弁することで、プライマリプーリ軸51の供給側通路51aに流入した作動油が供給される。つまり、プライマリ油圧室55に作動油を供給し、この供給された作動油の圧力、すなわちプライマリ油圧室55の油圧P1により、プライマリ可動シーブ53を軸方向に摺動させ、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ52に対して接近あるいは離隔させるものである。プライマリ油圧室55は、このプライマリ油圧室55の油圧P1により、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧することで、プライマリ溝120aに巻き掛けられるベルト120に対するプライマリ側ベルト挟圧力を発生させ、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を変更する。これにより、変速比を変更させる変速比変更手段としての機能をも有するものである。
ベルト式無段変速機1−1のセカンダリプーリ60は、ベルト120によりプライマリプーリ50に伝達された内燃機関10からの出力トルクをベルト式無段変速機1−1の最終減速機100に伝達するものである。このセカンダリプーリ60は、図1に示すように、セカンダリプーリ軸61と、セカンダリ固定シーブ62と、セカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ油圧室64、セカンダリ隔壁65と、トルクカム66により構成されている。なお、69は、パーキングブレーキギヤである。
セカンダリプーリ軸61は、軸受123,124により回転可能に支持されている。また、セカンダリプーリ軸61は、内部に図示しない作動油通路を有しており、この作動油通路には、作動油供給制御装置140からセカンダリ油圧室64に供給される作動流体である作動油が流入する。
セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリ可動シーブ63と対向する位置にセカンダリプーリ軸61と一体回転するように設けられている。ここでは、セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリプーリ軸61の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、この実施例1では、セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリプーリ軸61の外周に一体的に形成されている。
セカンダリ可動シーブ63は、その内周面に形成された図示しないスプラインと、セカンダリプーリ軸61の外周面に形成された図示しないスプラインとがスプライン嵌合することで、このセカンダリプーリ軸61に軸方向に摺動可能に支持されている。このセカンダリ固定シーブ62とセカンダリ可動シーブ63との間、すなわちセカンダリ固定シーブ62のセカンダリ可動シーブ63に対向する面と、セカンダリ可動シーブ63のセカンダリ固定シーブ62と対向する面との間で、V字形状のセカンダリ溝120bが形成されている。
セカンダリ油圧室64は、セカンダリ可動シーブ63をセカンダリ固定シーブ側に押圧する他方の位置決め油圧室であり、セカンダリ可動シーブ63と、セカンダリプーリ軸61に固定された円板形状のセカンダリ隔壁65とにより形成される空間部である。セカンダリ可動シーブ63には、軸方向の一方に突出、すなわち最終減速機側に突出する環状の突出部63aが形成されている。一方、セカンダリ隔壁65には、軸方向の他方向に突出、すなわちセカンダリ可動シーブ側に突出する環状の突出部65aが形成されている。ここで、この突出部63aと突出部65aとの間には、例えばシールリングなどの図示しないシール部材が設けられている。つまり、セカンダリ油圧室64を構成するセカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ隔壁65とにより形成される空間部は、図示しないシール部材によりシールされている。
このセカンダリ油圧室64には、図示しない作動流体供給孔を介して、セカンダリプーリ軸61の図示しない作動油通路に流入した作動油供給制御装置140からの作動油が供給される。つまり、セカンダリ油圧室64に作動油を供給し、この供給された作動油の圧力、すなわちセカンダリ油圧室64の油圧により、セカンダリ可動シーブ63を軸方向に摺動させ、セカンダリ可動シーブ63をセカンダリ固定シーブ62に対して接近あるいは離隔させるものである。セカンダリ油圧室64は、このセカンダリ油圧室64の油圧により、セカンダリ可動シーブ63をセカンダリ固定シーブ側に押圧することで、セカンダリ溝120bに巻き掛けられるベルト120に対するセカンダリ側ベルト挟圧力を発生させ、ベルト120のプライマリプーリ50およびセカンダリプーリ60に対する接触半径を一定に維持する。
トルクカム66は、図3−1に示すように、セカンダリプーリ60のセカンダリ可動シーブ63に環状に設けられた山谷状の第1係合部63bと、この第1係合部63bとセカンダリプーリ軸61の軸線方向において対向する後述する中間部材67に形成された第2係合部67aと、この第1係合部63bと第2係合部67aとの間に配置された円板形状の複数の伝達部材68とにより構成されている。
中間部材67は、セカンダリ隔壁65と一体に形成、あるいはセカンダリ隔壁65に固定され、軸受け123、125により、セカンダリプーリ軸61やセカンダリ可動シーブ63に対してセカンダリプーリ軸61上で相対回転可能に支持されている。この中間部材67は、動力伝達経路110の入力軸111とスプライン勘合されている。つまり、セカンダリプーリ60に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、この中間部材67を介して動力伝達経路110に伝達される。
ここで、トルクカム66の動作について説明する。プライマリプーリ50に内燃機関10からの出力トルクが伝達され、このプライマリプーリ50が回転すると、ベルト120を介してセカンダリプーリ60が回転する。このとき、セカンダリプーリ60のセカンダリ可動シーブ63は、このセカンダリ固定シーブ62、セカンダリプーリ軸61、軸受123ともに回転するため、このセカンダリ可動シーブ63と中間部材67との間に相対回転が発生する。そして、図3−1に示すように、第1係合部63bと第2係合部67aとが接近した状態から、複数の伝達部材68により、図3−2に示すように第1係合部63bと第2係合部67aとが離隔した状態に変化する。これにより、トルクカム66は、セカンダリプーリ60にベルト120に対するセカンダリ側ベルト挟圧力を発生する。
つまり、セカンダリプーリ60には、ベルト挟圧力発生手段として、セカンダリ油圧室64以外にトルクカム66を備える。このトルクカム66が主としてセカンダリ側ベルト挟圧力を発生させ、セカンダリ油圧室64はトルクカム66により発生したセカンダリ側ベルト挟圧力の不足分を発生させるものである。なお、セカンダリプーリ60のベルト挟圧力発生手段がセカンダリ油圧室64のみであっても良い。
作動油供給弁70は、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給のみを許容するものである。作動油供給弁70は、図2、図5、図6に示すように、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の外部、すなわちプライマリプーリ50の外部からこのプライマリ油圧室55への作動流体である作動油の供給、後述する弁開閉装置80によるプライマリ油圧室55からプライマリプーリ50の外部への作動油の排出、プライマリ油圧室55の作動油の保持を行うものである。この作動油供給弁70は、この実施例1では、一方のプーリであるプライマリプーリ50のプライマリ隔壁54に形成された第1流路54aに対応して設けられている。従って、作動油供給弁70は、プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所設けられている。つまり、作動油供給弁70は、一方のプーリであるプライマリプーリ50と一体回転するものである。また、この作動油供給弁70は、弁体71と、上述した弁座突出部72と、弁体弾性部材73と、係止部材74とにより構成されている。
弁体71は、円板形状であり、弁座突出部72の内径の径よりも大きい直径である。また、この弁体71は、第1流路54aの弁座突出部72よりも開弁方向に、その軸方向が開閉弁方向と平行となるように配置されている。弁体71が弁座突出部72に接触することで、第1流路54aの弁座突出部72より開弁方向側と、閉弁方向側との連通が遮断、すなわち作動油供給弁70が閉弁される。また、弁体71が弁座突出部72から離れることで、第1流路54aの弁座突出部72より開弁方向側と、閉弁方向側との連通、すなわち作動油供給弁70が開弁される。つまり、作動油供給弁70は、第1流路54aにおいて、開弁方向に向かって開弁し、閉弁方向に向かって閉弁する。
弁体弾性部材73は、ピストン閉弁方向押圧手段である。この弁体弾性部材73は、弁体71を介して、第1流路54aに固定された係止部材74と、弁体突出部72との間に付勢された状態で配置されている。これにより、弁体弾性部材73は、閉弁付勢力を発生しており、この閉弁付勢力が、弁体71が弁座突出部72に接触する方向の押圧力、すなわち弾性部材押圧力F2が弁体閉弁方向押圧力として弁体71に作用している。これにより、弁体71が弁座突出部72に押さえつけられ、作動油供給弁70が逆止弁として機能する。また、係止部材74は、円板形状であり、その中央部に作動油を通過させるための開口が形成されている。
ここで、作動油供給弁70を開弁する場合は、弁体71が弁座突出部72から離れる方向、すなわち開弁方向に弁体71に作用する押圧力である弁体開弁方向押圧力が、この弁体71が弁座突出部72に接触する方向、すなわち閉弁方向に弁体71に作用する押圧力である弁体閉弁方向押圧力を超え、弁体71が弁座突出部72から離れることで行われる。この弁体開弁方向押圧力としては、通常、連通通路54kから第1流路54aに供給された作動油の圧力、すなわち第1流路54aの油圧P2により弁体71に作用する作動油押圧力F1がある。一方、弁体閉弁方向押圧力としては、上記閉弁付勢力により弁体71に作用する弾性部材押圧力F2と、プライマリ油圧室55の油圧P1により弁体71に作用する作動油押圧力F3とが含まれる。このプライマリ油圧室55の油圧P1は、弁体71に閉弁方向の押圧力として作用するため、プライマリ油圧室55の油圧P1が上昇しても、弁体71が弁座突出部72から離れることがない。従って、弁体71に作用する弁体開弁方向押圧力が弁体開弁方向押圧力を超えない限り、作動油供給弁70の閉弁状態は維持されるため、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の作動油がこのプライマリ油圧室55に確実に保持される。
また、従来のベルト式無段変速機のように、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定に維持するために、作動油供給制御装置140から一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55へ作動油を供給し続ける場合は、作動油が作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55までの作動油供給流路に、所定圧力の作動油が存在することとなる。この作動油供給流路には、固定部材と可動部材との摺動部を複数箇所含まれており、変速比の固定時において所定圧力の作動油がこの摺動部から作動油供給流路の外部に漏れる虞があった。この固定部材とは、ベルト式無段変速機1−1を構成する部材において、回転、摺動などを行わない部材である。例えばトランスアクスル20のトランスアクスルハウジング21、トランスアクスルケース22と、トランスアクスルリヤカバー23である。一方、この可動部材とは、ベルト式無段変速機1−1を構成する部材において、回転、摺動などを行う部材である。例えばプライマリプーリ軸51などである。従って、摺動部とは、例えば、トランスアクスル20のトランスアクスルハウジング21、トランスアクスルケース22、トランスアクスルリヤカバー23などに対して、プライマリプーリ軸51が回転する部分などが含まれる。
この実施例1にかかる上記ベルト式無段変速機1−1では、作動油供給弁70は、プライマリ油圧室55と上記摺動部との間に配置されている。つまり、作動油供給弁70の閉弁状態に維持し、プライマリ油圧室55に作動油を保持した状態とした際に、プライマリ油圧室55と、作動油供給弁70との間には、上記固定部材と可動部材との摺動部が存在しない。これにより、この摺動部から作動油が漏れることを抑制することができるので、オイルポンプ142の動力損失の増加を抑制することができる。
弁開閉装置80は、弁開閉手段であり、プライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容あるいは禁止を制御するものである。弁開閉装置80は、作動油供給弁70を強制的に開弁するものである。この弁開閉装置80は、この実施例1では、一方のプーリであるプライマリプーリ50のプライマリ隔壁54に形成された第3流路54cに対応して設けられている。従って、弁開閉装置80は、プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所設けられている。つまり、弁開閉装置80は、一方のプーリであるプライマリプーリ50と一体回転するものである。また、この弁開閉装置80は、ピストン81と、駆動油圧室82とにより構成されている。
ピストン81は、上記弁体71を開弁方向に移動させるものである。このピストン81は、第3流路54cに開閉弁方向に摺動自在に支持されている。このピストン81は、円柱形状であり、開弁方向の端部にこの開弁方向に突出する弁体押圧突起部81aが形成されている。この弁体押圧突起部81aは、第3流路54cの開弁方向の端部から連通する第1流路54aに突出し、弁体71と接触できるように形成されている。この弁体押圧突起部81aは、駆動油圧室82の油圧P3によりピストン81に作用するピストン開弁方向押圧力F4により、このピストン81が開弁方向に摺動することで、弁体71に接触する。そして、ピストン81に作用するピストン開弁方向押圧力F4が弁体開弁方向押圧力として弁体71に作用する。従って、このピストン開弁方向押圧力F4が、弁体閉弁方向押圧力を超えることによっても、弁体71が弁座突出部72に対して開弁方向に移動し、作動油供給弁70が開弁する。つまり、作動油供給弁70は、プライマリ油圧室55から作動油が外部に排出される方向にも強制的に開弁するものである。
駆動油圧室82は、作動油が供給されるものであり、この供給された作動油の圧力、すなわち駆動油圧室82の油圧P3により、作動油供給弁70および排出流量制御弁90を制御するものである。つまり、作動油供給弁70は、駆動油圧室82の油圧P3により、プライマリ油圧室55への作動油の供給のみ許容、プライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容あるいは禁止が制御される。また、排出流量制御弁90は、駆動油圧室82の油圧P3により、排出流量が制御される。この駆動油圧室82は、第2流路54bと、第3流路54cと、第2連通流路54eと、ピストン81と、スプール91と、閉塞部材54g,h,jとの間に形成されるものである。従って、この駆動油圧室82の油圧P3により、ピストン81にピストン開弁方向押圧力F4が作用し、スプール91にスプール開弁方向押圧力F6が作用する。
排出流量制御弁90は、上記作動油供給弁70により一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量を制御するものである。この排出流量制御弁90は、この実施例1では、一方のプーリであるプライマリプーリ50のプライマリ隔壁54に形成された第2流路54bに対応して設けられている。つまり、プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所設けられている。つまり、排出流量制御弁90は、一方のプーリであるプライマリプーリ50と一体回転するものである。この排出流量制御弁90は、スプール91と、スプール弾性部材92とにより構成されている。
スプール91は、円柱形状であり、その軸方向が開閉弁方向と平行となるように、第2流路54bに開閉弁方向に摺動自在に支持されている。このスプール91は、開閉弁方向における中央部に周方向に連続する絞り部91aが形成されている。この絞り部91aの開弁方向側には、開弁方向に向かってその径が増加するテーパー面91bが形成されている。ここで、スプール91の絞り部91aよりも開弁方向の第1本体部91cの直径は、この第1本体部91cが第2流路54bに対して開閉弁方向に摺動でき、かつこの第2流路54bを介した第1連通流路54dと、排出流路54mおよび解放通路54n,oとの連通が遮断(ほぼ遮断される場合も含む)されるように、第2流路54bの内径に対して設定されている。また、スプール91の絞り部91aよりも閉弁方向の第2本体部91dの直径は、この第2本体部91dが第2流路54bに対して開閉弁方向に摺動でき、かつこの第2流路54bを介した第2連通流路54eと、排出流路54mおよび解放通路54oとの連通が遮断(ほぼ遮断される場合も含む)されるように、第2流路54bの内径に対して設定されている。
ここで、このスプール91が第2流路54bに対して最も閉弁方向に位置すると、第1本体部91cが第1連通流路54dと対向する位置となる。従って、第2流路54bを介した第1連通流路54dと排出流路54mとの連通が遮断され、排出流量制御弁90が閉弁される。また、このスプール91が第2流路54bに対して最も閉弁方向に位置した状態から、開弁方向に第2流路54bに対して摺動すると、絞り部91aのテーパー面91bが第1連通流路54dと対向する位置となる。従って、第2流路54bを介した第1連通流路54dと排出流路54mとの連通が解放され、排出流量制御弁90が開弁される。また、排出流量制御弁90は、このテーパー面91bと第1連通流路54dとで形成される排出流路面積に応じて、第2流路54bを介して第1連通流路54dから排出流路54mに流入する作動油の排出流量を制御するものである。
スプール弾性部材92は、スプール閉弁方向押圧手段である。このスプール弾性部材92は、第2流路54bの開弁方向の端部と、スプール91との間に付勢された状態で配置されている。スプール弾性部材92は、閉弁付勢力を発生しており、この閉弁付勢力によりスプール91の第1本体部91cを第1連通流路54dと対向する位置に摺動させる弾性部材押圧力がスプール閉弁方向押圧力F5としてスプール91に作用している。
ここで、排出流量制御弁90を開弁する場合は、開弁方向にスプール91に作用する押圧力であるスプール開弁方向押圧力F6が、閉弁方向にこのスプール91に作用する押圧力であるスプール閉弁方向押圧力F5を超え、テーパー面91bが第1連通流路54dと対向する位置までのスプール91を摺動させることで行われる。このスプール閉弁方向押圧力F5は、上記閉弁付勢力によりスプール91に作用する弾性部材押圧力である。一方、スプール開弁方向押圧力F6は、駆動油圧室82の油圧P3によりスプール91に作用する開弁方向の押圧力である。
また、排出流量制御弁90は、作動油供給弁70が駆動油圧室82の油圧P3により開弁する際に、この作動油供給弁70を強制的に開弁することができる駆動油圧室82の油圧P3以上の油圧で開弁するように設定されている。ここで、この作動油供給弁70を開弁することができる駆動油圧室82の油圧P3は、弁体71に作用する弁体閉弁方向押圧力がプライマリ油圧室55の油圧P1の変化に応じて変化する。従って、排出流量制御弁90が開弁することができる駆動油圧室82の油圧P3は、図4に示すように、プライマリ油圧室55の油圧P1が最大の際に、作動油供給弁70が開弁することができる油圧PA以上となる。つまり、排出流量制御弁90は、プライマリ油圧室55の油圧P1が最大の際に、作動油供給弁70が開弁することができる油圧PA以上の油圧で排出流量が制御されるように設定されている。具体的には、プライマリ油圧室55の油圧P1が最大の際に、作動油供給弁70が開弁することができる油圧PA以上の油圧で、排出流量制御弁90が開弁できるように、ピストン81の受圧面積に対するスプール91の受圧面積およびスプール弾性部材92が発生する閉弁付勢力が設定されている。この実施例1では、排出流量制御弁90の全開時における駆動油圧室82の油圧P3をPBとし、駆動油圧室82の油圧P3が油圧PAからPBまでの間で、排出流量制御弁90による排出流量が制御される。これにより、1つの駆動油圧室82の油圧P3を制御することで、作動油供給弁70を開弁することができるとともに、排出流量制御弁90による排出流量の制御を行うことができる。従って、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の作動油の排出の許容あるいは禁止および排出流量の制御を簡単な構成で行うことができる。
セカンダリプーリ60と最終減速機100との間には、動力伝達経路110が配置されている。この動力伝達経路110は、セカンダリプーリ軸61と同一軸線上の入力軸111と、このセカンダリプーリ軸61と平行なインターミディエイトシャフト112と、カウンタドライブピニオン113、カウンタドリブンギヤ114と、ファイナルドライブピニオン115とにより構成されている。入力軸111およびこの入力軸111に固定されているカウンタドライブピニオン113は、軸受128,129により回転可能の保持されている。インターミディエイトシャフト112は、軸受126,127により回転可能に支持されている。カウンタドリブンギヤ114は、インターミディエイトシャフト112に固定されており、カウンタドライブピニオン113と噛み合わされている。また、ファイナルドライブピニオン115は、インターミディエイトシャフト112に固定されている。
ベルト式無段変速機1−1の最終減速機100は、動力伝達経路110を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクを車輪130,130から路面に伝達するものである。この最終減速機100は、中空部が形成されたデフケース101と、ピニオンシャフト102と、デフ用ピニオン103,104と、サイドギヤ105,106とにより構成されている。
デフケース101は、軸受107,108により回転可能に支持されている。また、このデフケース101の外周には、リングギヤ109が設けられており、このリングギヤ109がファイナルドライブピニオン115と噛み合わされている。ピニオンシャフト102は、デフケース101の中空部に取り付けられている。デフ用ピニオン103,104は、このピニオンシャフト102に回転可能に取り付けられている。サイドギヤ105,106は、このデフ用ピニオン103,104の両方に噛み合わされている。このサイドギヤ105,106は、それぞれドライブシャフト131,132に固定されている。
ベルト式無段変速機1−1のベルト120は、プライマリプーリ50を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクをセカンダリプーリ60に伝達するものである。このベルト120は、図1に示すように、プライマリプーリ50のプライマリ溝120aとセカンダリプーリ60のセカンダリ溝120bとの間に巻き掛けられている。また、ベルト120は、多数の金属製の駒と複数本のスチールリングで構成された無端ベルトである。
ドライブシャフト131,132は、その一方の端部にそれぞれサイドギヤ105,106が固定され、他方の端部に車輪130,130が取り付けられている。
作動油供給制御装置140は、少なくともベルト式無段変速機1−1の各構成部品の潤滑部分や、各油圧室(プライマリ油圧室55やセカンダリ油圧室64や駆動油圧室82も含まれる)に作動油を供給するものである。この作動油供給制御装置140は、オイルタンク141と、オイルポンプ142と、プレッシャーレギュレータ143と、挟圧力調圧バルブ144と、押圧力調圧バルブ145とにより構成されている。
オイルポンプ142は、上述のように、内燃機関10の出力、例えば図示しないクランクシャフトの回転に連動して作動するものであり、オイルタンク141に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。この加圧されて吐出された作動油は、プレッシャーレギュレータ143を介して、挟圧力調圧バルブ144および押圧力調圧バルブ145に供給される。ここで、プレッシャーレギュレータ143は、このプレッシャーレギュレータ143よりも下流側における油圧が所定油圧以上となった際に、この下流側にある作動油の一部をオイルタンク141に戻すものである。
挟圧力調圧バルブ144は、その弁開度を制御することで、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55に供給される作動油の圧力を調圧するものである。これにより、挟圧力調圧バルブ144は、プライマリ油圧室55の油圧P1を調圧するものである。つまり、挟圧力調圧バルブ144は、プライマリ油圧室55において発生するベルト挟圧力を制御するものである。この挟圧力調圧バルブ144は、プライマリプーリ軸51の供給側通路51aに接続されており、挟圧力調圧バルブ144により調圧された作動油が、この供給側通路51a、空間部T1、連通通路54kおよび作動油供給弁70を介してプライマリ油圧室55に供給される。なお、作動油供給制御装置140は、この挟圧力調圧バルブ144以外にもう一つ図示しない挟圧力調圧バルブを備え、この図示しない挟圧力調圧バルブがセカンダリプーリ軸61の図示しない作動油通路に接続されており、この挟圧力調圧バルブにより調圧された作動油が、この図示しない作動油通路を介してセカンダリ油圧室64に供給される。
押圧力調圧バルブ145は、その弁開度を制御することで、駆動油圧室82に供給される作動油の圧力を調圧するものである。これにより、押圧力調圧バルブ145は、駆動油圧室82の油圧P3を調圧、すなわち変化させるものである。つまり、押圧力調圧バルブ145は、駆動油圧室82の油圧P3により、ピストン81を介して弁体71に作用するピストン開弁方向押圧力を制御し、作動油供給弁70を強制的に開弁させるものである。また、押圧力調圧バルブ145は、駆動油圧室82の油圧P3により、スプール91に作用するスプール開弁方向押圧力を制御し、排出流量制御弁90による排出流量を制御するものである。この押圧力調圧バルブ145は、プライマリプーリ軸51の駆動側通路51bに接続されており、押圧力調圧バルブ145により調圧された作動油が、この駆動側通路51b、空間部T2および連通通路54lを介して駆動油圧室82に供給される。
この作動油供給制御装置140は、少なくとも内燃機関10の運転制御を行うECU150と接続されている。従って、作動油供給制御装置140は、ECU150からの変速比の制御信号に基づいて、プライマリ油圧室55の油圧P1を調圧する挟圧力調圧バルブ144、駆動油圧室82の油圧P3を調圧する押圧力調圧バルブ145、セカンダリ油圧室64の油圧を調圧する図示しない挟圧力調圧バルブを制御することで、少なくともベルト式無段変速機1−1の変速比を制御するものである。
次に、この実施例1にかかるベルト式無段変速機1−1の動作について説明する。まず、一般的な車両の前進、後進について説明する。車両に設けられた図示しないシフトポジション装置により、運転者が前進ポジションを選択した場合は、ECU150が、作動油供給制御装置140から供給された作動油によりフォワードクラッチ42をON、リバースブレーキ43をOFFとし、前後進切換機構40を制御する。これにより、インプットシャフト38とプライマリプーリ軸51が直結状態となる。つまり、遊星歯車装置41のサンギヤ44とリングギヤ46を直接連結し、内燃機関10のクランクシャフト11の回転方向と同一方向にプライマリプーリ軸51を回転させ、この内燃機関10からの出力トルクをプライマリプーリ50に伝達する。プライマリプーリ50に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、ベルト120を介してセカンダリプーリ60に伝達され、このセカンダリプーリ60のセカンダリプーリ軸61を回転させる。
セカンダリプーリ60に伝達された内燃機関10の出力トルクは、中間部材67から動力伝達経路110の入力軸111、カウンタドライブピニオン113およびカウンタドリブンギヤ114を介して、インターミディエイトシャフト112に伝達され、インターミディエイトシャフト112を回転させる。インターミディエイトシャフト112に伝達された出力トルクは、ファイナルドライブピニオン115およびリングギヤ109を介して最終減速機100のデフケース101に伝達され、このデフケース101を回転させる。デフケース101に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、デフ用ピニオン103,104およびサイドギヤ105,106を介してドライブシャフト131,132に伝達され、その端部に取り付けられた車輪130,130に伝達され、車輪130,130を図示しない路面に対して回転させ、車両は前進する。
一方、車両に設けられた図示しないシフトポジション装置により、運転者が後進ポジションを選択した場合は、ECU150が、作動油供給制御装置140から供給された作動油によりフォワードクラッチ42をOFF、リバースブレーキ43をONとし、前後進切換機構40を制御する。これにより、遊星歯車装置41の切換用キャリヤ47がトランスアクスルケース22に固定され、各ピニオン45が自転のみを行うように切換用キャリヤ47に保持される。従って、リングギヤ46がインプットシャフト38と同一方向に回転し、このリングギヤ46と噛合っている各ピニオン45もインプットシャフト38と同一方向に回転し、この各ピニオン45と噛合っているサンギヤ44がインプットシャフト38と逆方向に回転する。つまり、サンギヤ44に連結されているプライマリプーリ軸51は、インプットシャフト38と逆方向に回転する。これにより、セカンダリプーリ60のセカンダリプーリ軸61、入力軸111、インターミディエイトシャフト112、デフケース101、ドライブシャフト131,132などは、運転者が前進ポジションを選択した場合とは逆方向に回転し、車両が後進する。
また、ECU150は、車両の速度や運転者のアクセル開度などの所条件とECU150の記憶部に記憶されているマップ(例えば、機関回転数とスロットル開度に基づく最適燃費曲線など)とに基づいて、内燃機関10の運転状態が最適となるようにベルト式無段変速機1−1の変速比を制御する。このベルト式無段変速機1−1の変速比の制御には、変速比の変更と、変速の固定(変速比γ定常)とがある。この変速比の変更、変速比の固定は、少なくともプライマリプーリ50の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の油圧P1と、駆動油圧室82の油圧P3とを制御することで行われる。
変速比の変更は、主に作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55への作動油の供給、あるいはプライマリ油圧室55からプライマリプーリ50の外部への作動油の排出により、プライマリ可動シーブ53がプライマリプーリ軸51の軸方向に摺動し、プライマリ固定シーブ52とこのプライマリ可動シーブ53との間の間隔、すなわちプライマリ溝120aの幅が調整される。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト120の接触半径が変化し、プライマリプーリ50の回転数とセカンダリプーリ60の回転数との比である変速比が無段階(連続的)に制御される。また、変速比の固定は、主に、プライマリ油圧室55からプライマリプーリ50の外部への作動油の排出の禁止により行われる。
なお、セカンダリプーリ60においては、セカンダリ油圧室64に作動油供給制御装置140から供給される作動油の油圧を図示しない挟圧力調圧バルブにより制御することで、セカンダリ固定シーブ62とこのセカンダリ可動シーブ63とによりベルト120を挟み付けるセカンダリ側ベルト挟圧力が調整される。これにより、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60との間に巻き掛けられたベルト120のベルト張力が制御される。
変速比の変更には、アップシフト、すなわち変速比を減少させる変速比減少変更と、ダウンシフト、すなわち変速比を増加させる変速比増加変更とがある。以下、それぞれについて説明する。
変速比減少変更では、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55へ作動油を供給し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に摺動(移動)させることで行われる。図5に示すように、作動油供給弁70を開弁し、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55への作動油の供給を許容する。具体的には、ECU150は、減少変速比と変速速度と算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を作動油供給制御装置140に出力する。作動油供給制御装置140は、ベルト式無段変速機1−1の変速比を上記変速速度で減少変速比とするために、挟圧力調圧バルブ144を制御し、第1流路54aに供給される作動油の油圧を上昇させる。従って、第1流路54aに油圧P2が上昇し、この第1流路54aの油圧P2により弁体71に作用する作動押圧力F1が増加する。
このとき、作動油供給制御装置140は、押圧力調圧バルブ145を制御し、この作動油供給制御装置140から駆動油圧室82への作動油の油圧を調圧する。ここでは、この駆動油圧室82の油圧P3によりピストン81にピストン開弁方向押圧力F4を作用させる。つまり、弁開閉装置80は、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、ピストン81にピストン開弁方向押圧力F4を作用させることで、このピストン開弁方向押圧力F4を作動油供給弁70の開弁方向の弁体開弁方向押圧力として弁体71に作用させる。従って、プライマリ油圧室55への作動油の供給時には、作動油押圧力F1とピストン開弁方向押圧力F4とを合わせた押圧力が弁体開弁方向押圧力となる。これにより、この弁体開弁方向押圧力が、弁体弾性部材73の閉弁付勢力により弁体71に作用する弾性部材押圧力F2とプライマリ油圧室55の油圧P1により弁体71に作用する作動油押圧力F3とを合わせた弁体閉弁方向押圧力を超えることで、弁体71が開弁方向に移動し、作動油供給弁70が開弁することとなる。つまり、作動油供給弁70による一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給を許容する。
ここで、作動油供給制御装置140は、プライマリ油圧室55への作動油の供給時における駆動油圧室の油圧P3が排出流量制御弁90を開弁させることができる駆動油圧室82の油圧P3未満、この実施例1ではPA未満となるように、駆動油圧室82に供給される作動油の圧力を押圧力調圧バルブ145により調圧する。駆動油圧室82の油圧P3を増加すると、ピストン開弁方向押圧力F4が増加するとともに、排出流量制御弁90のスプール91に作用するスプール開弁方向押圧力F6も増加する。従って、この増加したスプール開弁方向押圧力F6がスプール閉弁方向押圧力F5を超えると、この排出流量制御弁90が開弁することとなる。しかしながら、プライマリ油圧室55への作動油の供給時における駆動油圧室の油圧P3が排出流量制御弁90を開弁させることができる駆動油圧室82の油圧P3未満であるため、ピストン81を介して、弁開閉装置80が弁体開弁方向押圧力としてピストン開弁方向押圧力F4を弁体71に作用させても、排出流量制御弁90が閉弁状態を維持する。従って、プライマリ油圧室55へ供給される作動油が作動油排出流路、すなわち排出流路54mから漏れることを抑制することができる。なお、排出流量制御弁90が開弁することができる駆動油圧室82の油圧が、作動油供給弁70が開弁することができる駆動油圧室82の油圧よりも大きい場合は、プライマリ油圧室55への作動油の供給時における駆動油圧室の油圧P3を作動油供給弁70が開弁することができる駆動油圧室82の油圧とする。これにより、作動油供給弁70の開弁を駆動油圧室の油圧P3により行うことができる。
作動油供給弁70によるプライマリ油圧室55への作動油の供給が許容されると、同図の矢印Aに示すように、作動油供給制御装置140の挟圧力調圧バルブ144により調圧された作動油は、供給側通路51aから連通通路51c,54kおよび第1流路54aを介してプライマリ油圧室55に供給される。このとき、上述のように、排出流量制御弁90は、駆動油圧室82の油圧P3により、スプール開弁方向押圧力F6がスプール91に作用するがこのスプール91に作用するスプール閉弁方向押圧力F5により第2流路54bに対して最も閉弁方向に位置し、第1本体部91cが第1連通流路54dと対向する位置となるため、閉弁状態を維持し、第2流路54bを介した第1連通流路54dと排出流路54mとの連通が遮断される。従って、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55へ供給される作動油が第1連通流路54d、第2流路54bおよび排出流路54mを介して排出されることが禁止され、作動油供給弁70を介して供給された作動油によりプライマリ油圧室55の油圧P1が上昇し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧力する押圧力が上昇し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト120の接触半径が増加し、セカンダリプーリ60におけるベルト120の接触半径が減少し、変速比が減少され、減少変速比となる。
変速比増加変更では、プライマリ油圧室55から作動油を排出し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側と反対側に摺動(移動)させることで行われる。まず、図6に示すように、作動油供給弁70を強制的に開弁し、プライマリ油圧室55から作動油の排出を許容する。そして、排出流量制御弁90により、プライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量を制御する。具体的には、ECU150は、増加変速比と変速速度と算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を作動油供給制御装置140に出力する。作動油供給制御装置140は、ベルト式無段変速機1−1の変速比を上記変速速度で増加変速比とするために、押圧力調圧バルブ145を制御し、駆動油圧室82に供給される作動油の油圧を上昇させる。従って、駆動油圧室82の油圧P3が上述の油圧PA以上に上昇し、この駆動油圧室82の油圧P3によりピストン81を介して弁体71に弁体開弁方向押圧力として作用するピストン開弁方向押圧力F4は、弁体弾性部材73の閉弁付勢力により弁体71に作用する弾性部材押圧力F2とプライマリ油圧室55の油圧P1により弁体71に作用する作動油押圧力F3とを合わせた弁体閉弁方向押圧力を超えることとなる。これにより、弁体71は、開弁方向に移動し、作動油供給弁70が弁開閉装置80により強制的に開弁される。つまり、弁開閉装置80は、作動油供給弁70による一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55からの作動油の排出を許容する。
このとき、上昇した駆動油圧室82の油圧P3(油圧PAからPBまでの間の油圧)によりスプール91に作用するスプール開弁方向押圧力F6は、スプール弾性部材92の閉弁付勢力によりスプール91に作用するスプール閉弁方向押圧力F5を超えることとなる。ここで、排出流量制御弁90は、スプール91が第2流路54bに対して最も閉弁方向に位置した状態からのこのスプール91の開弁方向への移動量(ストローク量)に応じて、テーパー面91bと第1連通流路54dとで形成される排出流路面積が増加することとなる。上述の移動量が所定量以上となると、スプール91の第1連通流路54dに対する位置関係は、スプール91の第1本体部91cが第1連通流路54dと対向する位置関係から、スプール91のテーパー面91bが第1連通流路54dと対向する位置関係に変化する。従って、排出流量制御弁90により、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55から外部への作動油の排出流量の制御が行われる。
作動油供給弁70によるプライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容され、排出流量制御弁90によるこの作動油の排出流量の制御が行われると、同図の矢印Bに示すように、プライマリ油圧室55の作動油は、第1流路54a、第1連通流路54d、第2流路54bを介して排出流路54mに流入する。この排出流路54mに流入した作動油は、プライマリプーリ50の外部へ排出される。このとき、プライマリ油圧室55からの排出された作動油は、第1連通流路54dを介して、この第1連通流路54dと直交する第2流路54bに流入する。ここで、排出流量制御弁90のスプール91は、第2流路54bに開閉弁方向に摺動自在に支持されている。つまり、排出流量制御弁90は、一体回転する一方のプーリであるプライマリプーリ50のうち、作動油供給弁70の開弁時に、一方の位置決め油圧室であるプライマリプーリ50の油圧が開閉弁方向に作用しない位置に配置されている。従って、プライマリ油圧室55から作動油を排出時におけるプライマリ油圧室55の油圧P1がプライマリ油圧室55から作動油を排出する際に変化することで、この第2流路54bに流入するプライマリ油圧室55から排出された作動油の圧力が変化しても、スプール91の第2流路54bに対する開閉弁方向における位置が変位し難くなる。これにより、排出流量制御弁90は、プライマリ油圧室55の油圧P1の変化による排出流量の変化を抑制することができ、安定して作動油を排出することができるので、排出流量の制御性を向上することができる。また、排出流量に対するプライマリ油圧室55の油圧P1の変化の影響を抑制するために、このプライマリ油圧室55の油圧P1の変化に基づいたフィードバック制御を行う必要がないため、制御の簡素化を図ることができる。また、低コスト化を図ることができる。
このとき、作動油供給制御装置140は、挟圧力調圧バルブ144を閉弁する。これは、プライマリ油圧室55から排出された作動油が連通通路54k、空間部T1、連通通路51cおよび供給側通路51aを介して、作動油供給制御装置140に戻ることを抑制するためである。つまり、作動油供給弁70は、プライマリ油圧室55への作動油の供給を禁止する。従って、排出流量制御弁90により排出流量が制御されながら、作動油供給弁70を介してプライマリ油圧室55から作動油から排出されることにより、プライマリ油圧室55の油圧P1が減少し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力が減少し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側と反対側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト120の接触半径が減少し、セカンダリプーリ60におけるベルト120の接触半径が増加し、変速比が増加され、増加変速比となる。なお、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55へ作動油を供給する流路、例えばプライマリプーリ軸51の供給側通路51aに逆止弁を設けても良い。この逆止弁は、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55へ作動油を供給する方向にのみ開弁するものである。従って、変速比増加変更の際に、プライマリ油圧室55から排出された作動油がこの逆止弁により、作動油供給制御装置140に戻ることを抑制することができる。
変速比の固定は、プライマリ油圧室55へ作動油を供給せず、かつこのプライマリ油圧室55から作動油を排出せず、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定とし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する移動を規制することで行われる。なお、変速比を固定、すなわち変速比を定常とするのは、車両の走行状態が安定している場合など、大幅な変速比の変更を行う必要がないと、ECU150が判断した場合である。図2に示すように、作動油供給弁70を閉弁状態に維持し、プライマリ油圧室55への作動油の供給の許容およびこのプライマリ油圧室55から作動油の排出をともに禁止する。具体的には、作動油供給制御装置140は、挟圧力調圧バルブ144を閉弁し、作動油供給制御装置140から第1流路54aへの作動油の供給を停止する。また、作動油供給制御装置140は、押圧力調圧バルブ145を閉弁して、この作動油供給制御装置140から駆動油圧室82への作動油の供給を停止、あるいは駆動油圧室82の油圧P3をこの駆動油圧室82の油圧P3によりスプール91に作用するスプール開弁方向押圧力F6がスプール閉弁方向押圧力F5を超えないように、この駆動油圧室82に供給される作動油の圧力を押圧力調圧バルブ145により調圧する。
ここで、変速比の固定時においても、ベルト120のベルト張力が変化するため、プライマリプーリ50におけるベルト120の接触半径が変化しようとし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置が変化する虞がある。上述のように、プライマリ油圧室55には、作動油が保持された状態となるため、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置が変化しようとすると、このプライマリ油圧室55の圧力は変化するがプライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置は一定に維持される。従って、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定に維持するために、プライマリ油圧室55に外部から作動油を供給することによるプライマリ油圧室55の油圧P1の上昇を行わなくても良い。これにより、変速比の固定時に、プライマリ油圧室55に作動油を供給するためにオイルポンプ142を駆動させなくても良いため、オイルポンプ142の動力損失の増加を抑制することができる。
以上のように、上記実施例1にかかるベルト式無段変速機1−1においては、作動油排出弁を別個設けることなく、1つの弁により、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給、このプライマリ油圧室55からの作動油の排出、プライマリ油圧室55での作動油の保持を行うことができる。
また、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給時に、弁開閉手段である弁開閉装置80が作動油供給弁70の開弁方向の弁体開弁方向押圧力であるピストン開弁方向押圧力F4を作動油供給弁70の弁体71に作用させるため、作動油供給弁70を開弁する、すなわち弁体71を開弁方向に移動させることができる弁体開弁方向押圧力は、この弁開閉装置80によるピストン開弁方向押圧力F4と、プライマリ油圧室55へ供給される作動油の圧力、すなわち第1流路54aおよび第1連通流路54dの油圧P2により弁体71に作用する弁体開弁方向押圧力である作動油押圧力F1とを合わせたものとなる。従って、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、弁開閉装置80によるピストン開弁方向押圧力F4を作動油供給弁70の弁体71に作用させない場合と比較して、作動油供給弁70を開弁するための作動油押圧力F1を小さくすることができる。これにより、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、作動油供給弁70を開弁する際の弾性部材押圧力F2の影響を少なくすることができるため、プライマリ油圧室55へ供給される作動油の供給圧力を小さくすることができる。また、上記円板形状の弁体71は、作動油供給弁70の閉弁時に弁体突出部72と面接触するため、弁体と線接触する球形状の弁体と比較して、シール性を向上することができる。しかし、上記弁体71は、面接触ため、作動油供給弁70を開弁する弁体開弁方向押圧力が、線接触である弁体を用いる場合と比較して高くなる。この発明では、弁体開弁方向押圧力をピストン開弁方向押圧力F4と作動油押圧力F1とを合わせたものとするため、弁体開弁方向押圧力が高くなっても、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、ピストン開弁方向押圧力F4を作動油供給弁70の弁体71に作用させない場合と比較して、作動油供給弁70を開弁するための作動油押圧力F1を小さくすることができる。これにより、作動油供給弁70のシール性を向上することができると共に、プライマリ油圧室55へ供給される作動油の供給圧力を小さくすることができる。さらに、ベルト式無段変速機1−1において、最も作動油の圧力を必要とする場合は、上述した変速比減少変更時である。従って、作動油供給制御装置140のオイルポンプ142の最大吐出圧を小さくすることができる。これにより、オイルポンプ142の駆動損失の増加をさらに抑制することができる。
なお、上記実施例1では、排出流量制御弁90のスプール91に閉弁方向に作用する押圧力は、スプール弾性部材92が発生する閉弁付勢力によりこのスプール91に閉弁方向に作用する弾性部材押圧力であるスプール閉弁方向押圧力F5のみであるが、この発明はこれに限定されるものではない。図7は、実施例1にかかる排出流量制御弁の他の構成例である。
同図に示すように、排出流量制御弁90のスプール91の開弁方向の端部には、この開弁方向に突出する先端部91eが形成されている。この先端部91eは、第2流路54bの開弁方向の端部に形成された連通孔54pを介して一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55に露出している。ここで、先端部91eは、スプール91が第2流路54bに対して開閉弁方向に摺動しても、常に先端面91fがプライマリ油圧室55に露出できるように、このスプール91に形成されている。なお、連通孔54pと先端部91eとの間は、連通孔54pに設けられたシール部材Sによりシールされている。
従って、スプール91には、プライマリ油圧室55の油圧P1により、このスプール91の閉弁方向の押圧力である作動油押圧力F7がスプール閉弁方向向押圧力として作用することとなる。つまり、スプール開弁方向押圧力F6がスプール弾性部材92の閉弁付勢力によりスプール91に作用する弾性部材押圧力F5とプライマリ油圧室55の油圧P1によりスプール91に作用する作動油押圧力F7とを合わせたスプール閉弁方向押圧力を超えることで、排出流量制御弁90が開弁することとなる。
プライマリ油圧室55の油圧P1が低い場合は、高い場合と比較して、スプール91に作用する作動油押圧力F7が低下する。従って、排出流量制御弁90のスプール91は、プライマリ油圧室55の油圧P1が低いほど、同一のスプール開弁方向押圧力F6で開弁方向に移動する移動量が増加する。つまり、プライマリ油圧室55の油圧P1が低い場合は、高い場合と比較して、排出流量制御弁90を全開させるためのスプール開弁方向押圧力F6を低減することができる。図4に示すように、排出流量制御弁90を全開させるためのスプール開弁方向押圧力F6をスプール91に作用させることができる駆動油圧室82の油圧P3は、プライマリ油圧室55の油圧P1が高い場合(同図PB)よりも、低い場合(同図PC)に低減することができる。これにより、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の油圧P1に応じて、スプール開弁方向押圧力、この実施例1では駆動油圧室82の油圧P3によるスプール開弁方向押圧力F6を変更することができる。
なお、上記実施例1では、一対の作動油供給弁70および弁開閉装置80と、排出流量制御弁90とは、一方のプーリであるプライマリプーリ50の同一法線上に配置されているがこの発明はこれに限定されるものではない。一対の作動油供給弁70および弁開閉装置80と、排出流量制御弁90とは、プライマリプーリ50の異なる法線上にそれぞれ配置されていても良い。例えば、一対の作動油供給弁70および弁開閉装置80と、排出流量制御弁90とをプライマリプーリ50の回転中を挟んで対向するように配置しても良い。なお、この場合は、一対の作動油供給弁70および弁開閉装置80と、排出流量制御弁90とは、プライマリプーリ50の偏芯回転を抑制するように配置されることが好ましい。
次に、実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2について説明する。図8は、実施例2にかかる作動油供給弁、弁開閉装置および排出流量制御弁の構成例を示す図である。図9および図10は、変速比変更時におけるベルト式無段変速機の動作説明図である。実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2が、実施例1にかかるベルト式無段変速機1−1と異なる点は、作動油供給弁160と、弁開閉装置170と、排出流量制御弁180とが同一軸上に形成されている点である。なお、実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2の基本的構成は、実施例1にかかるベルト式無段変速機1−1の基本的構成とほぼ同一であるため、同一部分はその説明を省略する。
プライマリ隔壁54は、図8に示すように、開口部54q、共通流路54rが形成されている。なお、開口部54qと共通流路54rとの間には、弁座突出部162が形成されている。
開口部54qは、軸方向、すなわち作動油供給弁160および排出流量制御弁180の開閉弁方向に形成されている。この開口部54qは、上記プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所形成されている。開口部54qは、円柱形状であり、閉弁方向の端部が弁座突出部162を介して共通流路54rと連通しており、開弁方向の端部がプライマリ隔壁54の開弁方向における側面、すなわちプライマリ油圧室55に開口している。
共通流路54rは、軸方向、すなわち作動油供給弁160および排出流量制御弁180の開閉弁方向に形成されている。この共通流路54rは、上記プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所形成されている。共通流路54rは、円柱形状であり、閉弁方向の端部が閉塞部材56により閉塞されており、開弁方向の端部が弁座突出部162を介して開口部54qに連通している。また、この共通流路54rは、開閉弁方向における中央部に空間部T3が形成されている。この空間部T3は、共通流路54rの外周を覆うリング状であり、連通通路54kと連通している。つまり、共通流路54rは、空間部T3、連通通路54k、空間部T1および連通通路51cを介して供給側通路51aと連通しており、作動油供給制御装置140から供給側通路51aに供給された作動油が流入する。
なお、排出流路54mは、一方の端部が共通流路54rの空間部T3のよりも閉弁方向の位置に連通しており、他方の端部がプライマリ隔壁54の外周面、すなわち外部に連通している。また、解放通路54nは、一方の端部が共通流路54rの開弁方向の端部の近傍に連通しており、他方の端部がプライマリ隔壁54の外周面、すなわち外部に連通している。
作動油供給弁160は、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給のみを許容するものである。作動油供給弁160は、図7〜図9に示すように、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の外部、すなわちプライマリプーリ50の外部からこのプライマリ油圧室55への作動流体である作動油の供給、プライマリ油圧室55からプライマリプーリ50の外部への作動油の排出、プライマリ油圧室55の作動油の保持を行うものである。この作動油供給弁160は、この実施例1では、一方のプーリであるプライマリプーリ50のプライマリ隔壁54に形成された共通流路54rに対応して設けられている。つまり、プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所設けられている。この作動油供給弁160は、弁体161と、上述した弁座突出部162と、弁体弾性部材163と、係止部材164と、により構成されている。なお、165は、弁体161を弁開閉装置170のピストン171に固定する固定ピンである。
弁体161は、円板形状であり、弁座突出部162の内径の径よりも大きい直径である。また、この弁体161は、開口部54qに軸方向が開閉弁方向と平行となるように配置されている。弁体161が弁座突出部162に接触することで、開口部54qの共通流路54rと連通している閉弁方向の端部が閉塞され、作動油供給弁160が閉弁される。また、弁体161が弁座突出部162から離れることで、開口部54qと、共通流路54rとが連通し、作動油供給弁160が開弁される。つまり、作動油供給弁160は、開口部54qにおいて、開弁方向に向かって開弁し、閉弁方向に向かって閉弁する。
弁体弾性部材163は、ピストン閉弁方向押圧手段である。この弁体弾性部材163は、弁体161を介して、開口部54qに固定された係止部材164と、弁体突出部162との間に付勢された状態で配置されている。弁体弾性部材163は、閉弁付勢力を発生しており、この閉弁付勢力が、弁体161が弁座突出部162に接触する方向の押圧力、すなわち弾性部材押圧力F9が弁体閉弁方向押圧力として弁体161に作用している。これにより、弁体161は、弁座突出部162に押さえつけられ、作動油供給弁160が逆止弁として機能する。また、係止部材164は、円板形状であり、その中央部に作動油を通過させるための開口が形成されている。
弁開閉装置170は、弁開閉手段であり、プライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容あるいは禁止を制御するものである。弁開閉装置170は、作動油供給弁160を強制的に開弁するものである。この弁開閉装置170は、この実施例2では、一方のプーリであるプライマリプーリ50のプライマリ隔壁54に形成された共通流路54rに対応して設けられている。従って、弁開閉装置170は、プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所設けられている。つまり、弁開閉装置170は、一方のプーリであるプライマリプーリ50と一体回転するものである。また、この弁開閉装置170は、ピストン171と、駆動油圧室172とにより構成されている。
ピストン171は、上記弁体161を開閉弁方向に移動させるものである。このピストン171は、共通流路54rに開閉弁方向に摺動自在に支持されている。この実施例2では、共通流路54rに開閉弁方向に摺動自在に支持されている排出流量制御弁180のスプール181の内周面に対して摺動自在に支持されている。このピストン171は、円柱形状であり、開弁方向の端部が弁座突出部162に突出している。このピストン171の開弁方向の端部の外径は、この開弁方向の端部が弁座突出部162に対して開閉弁方向に摺動でき、かつこの弁座突出部162を介した開口部54qと、共通流路54rとの連通が遮断(ほぼ遮断される場合も含む)されるように、弁座突出部162の内径に対して設定されている。また、このピストン171の開弁方向の端部は、固定ピン165により弁体161に固定されている。つまり、ピストン171は、弁体161とともに、開閉弁方向に移動するものである。
また、ピストン171は、第1連通通路171aおよび第2連通通路171bが形成されている。第1連通通路171aは、ピストン171の開閉弁方向の中央部に形成されている。第1連通通路171aの両端部は、ピストン171の外周面に開口している。なお、この第1連通通路171aは、作動油供給弁160が閉弁状態において、排出流量制御弁180の後述する連通孔181eを介して、空間部T3と連通するものである。つまり、作動油供給弁160が閉弁状態において、第1連通通路171aには、作動油供給制御装置140から供給側通路51aに供給された作動油が連通通路51c、空間部T1、連通通路51k、空間部T3および連通孔181eを介して流入する。
第2連通通路171bは、ピストン171の開閉弁方向と平行に形成されている。第2連通通路171bは、その閉弁方向の端部が第1連通通路171aと連通し、開弁方向の端部がピストン171の開弁方向の端部に固定されている弁体161により閉塞されている。ここで、ピストン171の開弁方向の端部近傍の外周面には、連通孔171cが複数個(例えば、等間隔に4個)形成されている。第2連通通路171bは、この連通孔171cと連通している。つまり、第2連通通路171bには、第1連通通路171aに流入した作動油供給制御装置140から供給側通路51aに供給された作動油が流入する。
ここで、作動油供給弁160を開弁する場合は、弁体161が弁座突出部162から離れる方向、すなわち開弁方向に弁体161に作用する押圧力である弁体開弁方向押圧力が、この弁体161が弁座突出部162に接触する方向、すなわち閉弁方向に弁体161に作用する押圧力である弁体閉弁方向押圧力を超え、弁体161が弁座突出部162から離れることで行われる。この弁体開弁方向押圧力としては、通常、連通通路54kから第1連通通路171aから第2連通通路171bに供給された作動油の圧力、すなわち第2連通通路171b(作動油供給弁160の閉弁状態において、連通孔171cを介して弁座突出部162と弁体161との間に形成された空間部も含まれる)の油圧P4により弁体161に作用する作動油押圧力F8がある。一方、弁体閉弁方向押圧力としては、上記閉弁付勢力により弁体16に作用する弾性部材押圧力F9と、プライマリ油圧室55の油圧P1により弁体161に作用する作動油押圧力F10とが含まれる。このプライマリ油圧室55の油圧P1は、弁体161に閉弁方向の押圧力として作用するため、プライマリ油圧室55の油圧P1が上昇しても、弁体161が弁座突出部162から離れることがない。従って、弁体161に作用する弁体開弁方向押圧力が弁体開弁方向押圧力を超えない限り、作動油供給弁160の閉弁状態は維持されるため、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の作動油がこのプライマリ油圧室55に確実に保持される。
上記実施例1と同様に、この実施例2にかかる上記ベルト式無段変速機1−2では、作動油供給弁160は、プライマリ油圧室55と上記摺動部との間に配置されている。つまり、作動油供給弁160の閉弁状態に維持し、プライマリ油圧室55に作動油を保持した状態とした際に、プライマリ油圧室55と、作動油供給弁160との間には、上記固定部材と可動部材との摺動部が存在しない。これにより、この摺動部から作動油が漏れることを抑制することができるので、オイルポンプ142の動力損失の増加を抑制することができる。
また、このピストン171は、駆動油圧室172の油圧P5により、ピストン171の閉弁方向の円形の端面171dに作用するピストン開弁方向押圧力F11が弁体開弁方向押圧力として弁体161に作用する。従って、このピストン開弁方向押圧力F11が、弁体閉弁方向押圧力を超えることによって、弁体161が弁座突出部162に対して開弁方向に移動し、作動油供給弁160が開弁する。つまり、作動油供給弁160は、プライマリ油圧室55から作動油が外部に排出される方向にも強制的に開弁するものである。
駆動油圧室172は、作動油が供給されるものであり、この供給された作動油の圧力、すなわち駆動油圧室172の油圧P5により、作動油供給弁160および排出流量制御弁180を制御するものである。つまり、作動油供給弁160は、駆動油圧室172の油圧P5により、弁開閉装置170によりプライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容あるいは禁止が制御される。また、排出流量制御弁180は、駆動油圧室172の油圧P5により、排出流量が制御される。この駆動油圧室172は、共通流路54rと、ピストン171の閉弁方向の端面171dと、スプール181の閉弁方向の端面181fと、閉塞部材56と間に形成されるものである。従って、この駆動油圧室172の油圧P5により、ピストン171にピストン開弁方向押圧力F11が作用し、スプール181にスプール開弁方向押圧力F12が作用する。
排出流量制御弁180は、上記作動油供給弁160により一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量を制御するものである。この排出流量制御弁180は、この実施例2では、一方のプーリであるプライマリプーリ50のプライマリ隔壁54に形成された共通流路54rに対応して設けられている。つまり、プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所設けられている。この排出流量制御弁180は、スプール181と、スプール弾性部材182とにより構成されている。
スプール181は、円筒形状であり、その軸方向が開閉弁方向と平行となるように、共通流路54rに開閉弁方向に摺動自在に支持されている。なお、このスプール181は、上記弁開閉装置170のピストン171を開閉弁方向に摺動自在に支持している。このスプール181は、開閉弁方向における中央部近傍に周方向に連続する絞り部181aが形成されている。この絞り部181aの開弁方向側には、開弁方向に向かってその径が増加するテーパー面181bが形成されている。ここで、スプール181の絞り部181aよりも開弁方向側の第1本体部181cの直径は、この第1本体部181cが共通流路54rに対して開閉弁方向に摺動でき、かつこの空間部T3と、解放通路54nとの連通が遮断(ほぼ遮断される場合も含む)されるように、共通流路54rの内径に対して設定されている。また、スプール181の絞り部181aよりも閉弁方向の第2本体部181dの直径は、この第2本体部181dが共通流路54rに対して開閉弁方向に摺動でき、かつこの共通流路54rを介した空間部T3と、排出流路54mとの連通が遮断(ほぼ遮断される場合も含む)されるように、共通流路54rの内径に対して設定されている。また、第1本体部181cにおける絞り部181a近傍には、連通孔181eが複数個形成されている。この連通孔181eは、スプール181の外周面と内周面とを貫通するものである。なお、連通孔181eは、このスプール181が共通流路54rに対して最も閉弁方向に位置した際に、開閉弁方向において上記空間部T3と対向し、周方向において作動油供給弁160が閉弁状態におけるピストン171の第1連通通路171aの両端部と対向する位置に形成されている。
ここで、このスプール181が共通流路54rに対して最も閉弁方向に位置すると、空間部T3が連通孔181eのみと対向する位置となる。従って、空間部T3および共通流路54rを介した第1連通通路171aと、排出流路54mとの連通が遮断され、排出流量制御弁180が閉弁される。また、このスプール181が共通流路54rに対して最も閉弁方向に位置した状態から、開弁方向に共通流路54rに対して摺動すると、空間部T3が絞り部181aのテーパー面181bおよび連通孔181eと対向する位置となる。従って、共通流路54rを介した空間部T3と、排出流路54mとの連通が解放され、排出流量制御弁180が開弁される。また、排出流量制御弁180は、このテーパー面181bと空間部T3とで形成される排出流路面積に応じて、共通流路54rを介して空間部T3から排出流路54mに流入する作動油の排出流量を制御するものである。
スプール弾性部材182は、スプール閉弁方向押圧手段である。このスプール弾性部材182は、共通流路54rの開弁方向の端部と、スプール181との間に付勢された状態で配置されている。スプール弾性部材182は、閉弁付勢力を発生しており、この閉弁付勢力によりスプール181の連通孔181eのみを空間部T3と対向する位置に摺動させる弾性部材押圧力がスプール閉弁方向押圧力F13としてスプール181に作用している。
ここで、排出流量制御弁180を開弁する場合は、開弁方向にスプール181に作用する押圧力であるスプール開弁方向押圧力F12が、閉弁方向にこのスプール181に作用する押圧力であるスプール閉弁方向押圧力F13を超え、テーパー面181bが空間部T3と対向する位置までのスプール181を摺動させることで行われる。このスプール開弁方向押圧力F12は、スプール181の閉弁方向のリング状の端面181fに作用する駆動油圧室172の油圧P5である。一方、スプール閉弁方向押圧力F13は、上記閉弁付勢力によりスプール181に作用する弾性部材押圧力である。
また、排出流量制御弁180は、作動油供給弁160が駆動油圧室172の油圧P5により開弁する際に、この作動油供給弁160を強制的に開弁することができる駆動油圧室172の油圧P5以上の油圧で開弁するように設定されている。つまり、排出流量制御弁180は、上記実施例1と同様に、プライマリ油圧室55の油圧P1が最大の際に、作動油供給弁160が開弁することができる油圧以上の油圧で排出流量が制御されるように設定されている。これにより、1つの駆動油圧室172の油圧P5を制御することで、作動油排出弁160を開弁することができるとともに、排出流量制御弁180による排出流量の制御を行うことができる。従って、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の作動油の排出の許容あるいは禁止および排出流量の制御を簡単な構成で行うことができる。
ここで、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給する作動油供給流路は、この実施例2では、供給側通路51aと、連通通路51cと、空間部T1と、連通通路54kと、空間部T3と、連通孔181eと、第1連通通路171aと、第2連通通路171bと、連通孔171cと、開口部54qとにより構成されている。また、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55から作動油を排出する作動油排出流路は、この実施例2では、共通流路54rと、排出流路54mとにより構成されている。
次に、実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2の動作について説明する。一般的な車両の前進、後進については、実施例1にかかるベルト式無段変速機1−1と同様であるため、説明を省略する。なお、変速比減少変更、変速比増加変更、変速比の固定については、実施例1にかかるベルト式無段変速機1−1と同一部分は、簡略化して説明する。
変速比減少変更では、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55へ作動油を供給し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に摺動(移動)させることで行われる。図9に示すように、作動油供給弁160を開弁し、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55への作動油の供給を許容する。具体的には、ECU150は、減少変速比と変速速度と算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を作動油供給制御装置140に出力する。作動油供給制御装置140は、第2連通通路171bに供給される作動油の油圧を上昇させる。従って、第2連通通路171bの油圧P4が上昇し、この第2連通通路171bの油圧P4により弁体161に作用する作動油押圧力F8が増加する。
このとき、作動油供給制御装置140は、押圧力調圧バルブ145を制御し、駆動油圧室172の油圧P5によりピストン171にピストン開弁方向押圧力F11を作用させる。つまり、弁開閉装置170は、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、ピストン171にピストン開弁方向押圧力F11を作用させることで、このピストン開弁方向押圧力F11を作動油供給弁160の開弁方向の弁体開弁方向押圧力として、このピストン171に固定ピン165を介して固定されている弁体161に作用させる。従って、プライマリ油圧室55への作動油の供給時には、作動油押圧力F8とピストン開弁方向押圧力F11とを合わせた押圧力が弁体開弁方向押圧力となる。これにより、この弁体開弁方向押圧力が、弁体弾性部材163の閉弁付勢力により弁体161に作用する弾性部材押圧力F9とプライマリ油圧室55の油圧P1により弁体161に作用する作動油押圧力F10とを合わせた弁体閉弁方向押圧力を超えることで、弁体161が開弁方向に移動し、作動油供給弁160が開弁することとなる。つまり、作動油供給弁160による一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給を許容する。
ここで、作動油供給制御装置140は、プライマリ油圧室55への作動油の供給時における駆動油圧室172の油圧P5が排出流量制御弁180を開弁させることができる駆動油圧室172の油圧P5未満となるように、駆動油圧室172に供給される作動油の圧力を押圧力調圧バルブ145により調圧する。プライマリ油圧室55への作動油の供給時における駆動油圧室172の油圧P5が排出流量制御弁180を開弁させることができる駆動油圧室172の油圧P5未満であるため、ピストン171を介して、弁開閉装置170が弁体開弁方向押圧力としてピストン開弁方向押圧力F11を弁体161に作用させても、排出流量制御弁180が閉弁状態を維持する。従って、プライマリ油圧室55へ供給される作動油が作動油排出流路、すなわち排出流路54mから漏れることを抑制することができる。
作動油供給弁160によるプライマリ油圧室55への作動油の供給が許容されると、同図の矢印Cに示すように、作動油供給制御装置140の挟圧力調圧バルブ144により調圧された作動油は、第2連通通路171bから連通孔171cを介してプライマリ油圧室55に供給される。このとき、排出流量制御弁180は、上記実施例1と同様に、閉弁状態を維持し、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55へ供給される作動油が空間部T3、共通流路54rおよび排出流路54mを介して排出されることが禁止されている。従って、作動油供給弁160を介して供給された作動油によりプライマリ油圧室55の油圧P1が上昇し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧力する押圧力が上昇し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト120の接触半径が増加し、セカンダリプーリ60におけるベルト120の接触半径が減少し、変速比が減少され、減少変速比となる。
変速比増加変更では、プライマリ油圧室55から作動油を排出し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側と反対側に摺動(移動)させることで行われる。まず、図10に示すように、作動油供給弁160を強制的に開弁し、プライマリ油圧室55から作動油の排出を許容する。そして、排出流量制御弁180により、プライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量を制御する。具体的には、ECU150は、増加変速比と変速速度と算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を作動油供給制御装置140に出力する。作動油供給制御装置140は、駆動油圧室172に供給される作動油の油圧を上昇させる。従って、駆動油圧室180の油圧P5が上述の排出流量制御弁180を開弁できる油圧以上に上昇し、この駆動油圧室182の油圧P5によりピストン171を介して弁体161に弁体開弁方向押圧力として作用するピストン開弁方向押圧力F11は、弁体弾性部材163の閉弁付勢力により弁体161に作用する弾性部材押圧力F9とプライマリ油圧室55の油圧P1により弁体161に作用する作動油押圧力F10とを合わせた弁体閉弁方向押圧力を超えることとなる。これにより、弁体161は、開弁方向に移動し、作動油供給弁160が弁開閉装置170により強制的に開弁される。つまり、弁開閉装置170は、作動油供給弁160による一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55からの作動油の排出を許容する。
このとき、上昇した駆動油圧室172の油圧P5によりスプール181に作用するスプール開弁方向押圧力F12は、スプール弾性部材182の閉弁付勢力によりスプール181に作用するスプール閉弁方向押圧力F12を超えることとなる。ここで、排出流量制御弁180は、スプール181が共通流路54rに対して最も閉弁方向に位置した状態からのこのスプール181の開弁方向への移動量(ストローク量)に応じて、テーパー面181bと空間部T3とで形成される排出流路面積が増加することとなる。上述の移動量が所定量以上となると、スプール181の空間部T3に対する位置関係は、スプール181の連通孔181eのみが空間部T3と対向する位置関係から、スプール181のテーパー面181bおよび連通孔181eが空間部T3と対向する位置関係に変化する。従って、排出流量制御弁180により、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55から外部への作動油の排出流量の制御が行われる。
作動油供給弁160によるプライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容され、排出流量制御弁180によるこの作動油の排出流量の制御が行われると、同図の矢印Dに示すように、プライマリ油圧室55の作動油は、開口部54qから、連通孔171c、第2連通流路171b、第1連通流路171aおよび連通孔171eを介して空間部T3に流入し、共通流路54rを介して排出流路54mに流入する。この排出流路54mに流入した作動油は、プライマリプーリ50の外部へ排出される。ここで、排出流量制御弁180は、一体回転する一方のプーリであるプライマリプーリ50のうち、作動油供給弁160の開弁時に、一方の位置決め油圧室であるプライマリプーリ50の油圧が開閉弁方向に作用しない位置に配置されている。従って、プライマリ油圧室55から作動油を排出時におけるプライマリ油圧室55の油圧P1がプライマリ油圧室55から作動油を排出する際に変化することで、この共通流路54rに流入するプライマリ油圧室55から排出された作動油の圧力が変化しても、スプール181の共通流路54rに対する開閉弁方向における位置が変位し難くなる。これにより、排出流量制御弁180は、プライマリ油圧室55の油圧P1の変化による排出流量の変化を抑制することができ、安定して作動油を排出することができるので、排出流量の制御性を向上することができる。また、排出流量に対するプライマリ油圧室55の油圧P1の変化の影響を抑制するために、このプライマリ油圧室55の油圧P1の変化に基づいたフィードバック制御を行う必要がないため、制御の簡素化を図ることができる。また、低コスト化を図ることができる。
このとき、作動油供給制御装置140は、挟圧力調圧バルブ144を閉弁する。これは、プライマリ油圧室55から排出された作動油が作動油供給制御装置140に戻ることを抑制するためである。つまり、作動油供給弁160は、プライマリ油圧室55への作動油の供給を禁止する。従って、排出流量制御弁180により排出流量が制御されながら、作動油供給弁160を介してプライマリ油圧室55から作動油から排出されることにより、プライマリ油圧室55の油圧P1が減少し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力が減少し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側と反対側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト120の接触半径が減少し、セカンダリプーリ60におけるベルト120の接触半径が増加し、変速比が増加され、増加変速比となる。
変速比の固定は、プライマリ油圧室55へ作動油を供給せず、かつこのプライマリ油圧室55から作動油を排出せず、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定とし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する移動を規制することで行われる。図8に示すように、作動油供給弁160を閉弁状態に維持し、プライマリ油圧室55への作動油の供給の許容およびこのプライマリから作動油の排出をともに禁止する。具体的には、作動油供給制御装置140は、挟圧力調圧バルブ144を閉弁し、作動油供給制御装置140から第2連通流路171bへの作動油の供給を停止する。また、作動油供給制御装置140は、押圧力調圧バルブ145を閉弁して、この作動油供給制御装置140から駆動油圧室172への作動油の供給を停止、あるいは駆動油圧室172の油圧P5をこの駆動油圧室172の油圧P5によりスプール181に作用するスプール開弁方向押圧力F12がスプール閉弁方向押圧力F13を超えないように、この駆動油圧室182に供給される作動油の圧力を押圧力調圧バルブ145により調圧する。
上述のように、プライマリ油圧室55には、作動油が保持された状態となるため、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定に維持するために、プライマリ油圧室55に外部から作動油を供給することによるプライマリ油圧室55の圧力の上昇を行わなくても良い。これにより、変速比の固定時に、プライマリ油圧室55に作動油を供給するためにオイルポンプ142を駆動させなくても良いため、オイルポンプ142の動力損失の増加を抑制することができる。
以上のように、上記実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2においては、上記実施例1にかかるベルト式無段変速機1−1と同様に、作動油排出弁を別個設けることなく、1つの弁により、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給、このプライマリ油圧室55からの作動油の排出、プライマリ油圧室55での作動油の保持を行うことができる。
また、上記実施例1と同様に、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、弁体開弁方向押圧力は、ピストン開弁方向押圧力F11と、作動油押圧力F8とを合わせたものとなるため、このピストン開弁方向押圧力F11を作動油供給弁160の弁体161に作用させない場合と比較して、作動油供給弁160を開弁するための作動油押圧力F8を小さくすることができる。これにより、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、作動油供給弁160を開弁する際の弾性部材押圧力F9の影響を少なくすることができるため、プライマリ油圧室55へ供給される作動油の供給圧力を小さくすることができる。また、上記実施例1と同様に、作動油供給弁160のシール性を向上することができると共に、プライマリ油圧室55へ供給される作動油の供給圧力を小さくすることができる。さらに、上記実施例1と同様に、オイルポンプ142の駆動損失の増加をさらに抑制することができる。
また、上記実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2においては、作動油供給弁160および排出流量制御弁180を同一軸上に配置している、すなわち一対の作動油供給弁160と排出流量制御弁180とを一体化して、一体回転する一方のプーリであるプライマリプーリ50に配置する。従って、小型化を図ることができる。
また、一対の作動油供給弁160と排出流量制御弁180とを一体化するので、別体の場合と比較してプライマリ油圧室55から排出流路54mまでの作動油が通過する部分の体積を小さくすることができる。従って、作動油供給弁160のみを開弁した際の変速比の変化およびショックを低減することができる。これにより、フィーリングを向上することができる。
次に、実施例3にかかるベルト式無段変速機1−3について説明する。図11は、実施例3にかかる作動油供給弁、弁開閉装置および排出流量制御弁の構成例を示す図である。図12および図13は、変速比変更時におけるベルト式無段変速機の動作説明図である。実施例3にかかるベルト式無段変速機1−3が、実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2と異なる点は、スプール211が、作動油供給弁190を強制的に開弁するピストンである点である。なお、実施例3にかかるベルト式無段変速機1−3の基本的構成は、実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2の基本的構成とほぼ同一であるため、同一部分はその説明を省略する。
作動油供給弁190は、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給のみを許容するものである。作動油供給弁190は、図11〜図13に示すように、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の外部、すなわちプライマリプーリ50の外部からこのプライマリ油圧室55への作動流体である作動油の供給、プライマリ油圧室55からプライマリプーリ50の外部への作動油の排出、プライマリ油圧室55の作動油の保持を行うものである。この作動油供給弁190は、この実施例3では、一方のプーリであるプライマリプーリ50のプライマリ隔壁54に形成された共通流路54rに対応して設けられている。つまり、プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所設けられている。この作動油供給弁190は、弁体191と、弁座192と、弁体弾性部材193と、リング状部材194と、係止部材195とにより構成されている。
弁体191は、球形状であり、弁座192の径よりも大きい直径である。また、この弁体191は、開口部54qに配置されている。弁座192は、共通流路54rの開弁方向の端面54sと接触した状態で配置されている。この弁座192は、リング形状であり、開弁方向の端面54sに、この開弁方向の端面54sから閉弁方向の端面に向かって(開口部側から共通流路側に向かって)その径が減少する弁座テーパー面192aが形成されている。弁座192のこの弁座テーパー面192aに弁体191が接触することで、開口部54qと共通流路54rとの連通が遮断され、作動油供給弁190が閉弁される。また、弁体191が弁座192から離れることで、開口部54qと共通流路54rとが連通し、作動油供給弁190が開弁される。つまり、作動油供給弁190は、開口部54qにおいて、開弁方向に向かって開弁し、閉弁方向に向かって閉弁する。
弁体弾性部材193は、弁体191を介して、係止部材195により開口部54qに固定されたリング状部材194、弁体191との間に付勢された状態で配置されている。弁体弾性部材193は、閉弁付勢力を発生しており、この閉弁付勢力が、弁体191が弁座192に接触する方向の押圧力、すなわち弾性部材押圧力F15が弁体閉弁方向押圧力として弁体191に作用している。これにより、弁体191は、弁座192に押さえつけられ、作動油供給弁190が逆止弁として機能する。また、係止部材195は、円板形状であり、その中央部に作動油を通過させるための開口が形成されている。
ガイド部材200は、共通流路54r内に配置されるものである。このガイド部材200は、円筒形状であり、上記作動油供給弁190の弁座192に開弁方向の端部が接触した状態で配置される。このガイド部材200の内周面には、閉弁方向から開弁方向に向かって(共通流路側から開口部側に向かって)その径が増加するガイド側テーパー面200aが形成されている。開弁方向の端部における外周面と内周面とを連通する連通部200bが形成されている。この連通部200bは、空間部T5と、空間部T6を介して連通通路54kとを連通するものである。また、このガイド部材200は、閉弁方向の端部近傍における外周面と内周面とを連通する連通部200cが形成されている。この連通部200cは、空間部T5と、空間部T7を介して排出流路54mとを連通するものである。ここで、空間部T5は、弁体191と、ガイド部材200と、スプール211とにより構成されている。
ここで、作動油供給弁190を開弁する場合は、弁体191が弁座192から離れる方向、すなわち開弁方向に弁体191に作用する押圧力である弁体開弁方向押圧力が、この弁体191が弁座突出部192に接触する方向、すなわち閉弁方向に弁体191に作用する押圧力である弁体閉弁方向押圧力を超え、弁体191が弁座192から離れることで行われる。この弁体開弁方向押圧力としては、通常、連通通路54kから空間部T5に供給された作動油の圧力、すなわち空間部T5の油圧P6により弁体191に作用する作動油押圧力F14がある。一方、弁体閉弁方向押圧力としては、上記閉弁付勢力により弁体191に作用する弾性部材押圧力F15と、プライマリ油圧室55の油圧P1により弁体191に作用する作動油押圧力F16とが含まれる。このプライマリ油圧室55の油圧P1は、弁体191に閉弁方向の押圧力として作用するため、プライマリ油圧室55の油圧P1が上昇しても、弁体191が弁座突出部192から離れることがない。従って、弁体191に作用する弁体開弁方向押圧力が弁体開弁方向押圧力を超えない限り、作動油供給弁190の閉弁状態は維持されるため、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の作動油がこのプライマリ油圧室55に確実に保持される。
排出流量制御弁210は、上記作動油供給弁190により一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量を制御するものである。また、排出流量制御弁210は、弁開閉手段であり、プライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容あるいは禁止を制御するものでもある。この排出流量制御弁210は、この実施例3では、一方のプーリであるプライマリプーリ50のプライマリ隔壁54に形成された共通流路54rに対応して設けられている。つまり、プライマリ隔壁54に対して円周上に複数箇所、例えば等間隔に3箇所設けられている。この排出流量制御弁210は、スプール211と、駆動油圧室212と、スプール弾性部材213とにより構成されている。
スプール211は、円筒形状であり、その軸方向が開閉弁方向と平行となるように、ガイド部材200を介して、共通流路54rに開閉弁方向に摺動自在に支持されている。このスプール211は、開閉弁方向における中央部近傍に周方向に連続する絞り部211aが形成されている。この絞り部211aの開弁方向側には、閉弁方向から開弁方向に向かって(共通流路側から開口部側に向かって)その径が増加するスプール側テーパー面211bが形成されている。ここで、スプール211の絞り部211aよりも開弁方向側の第1本体部211cの直径は、この第1本体部211cがガイド部材200に対して開閉弁方向に摺動でき、かつこの空間部T5と、排出流路54mとの連通が遮断(ほぼ遮断される場合も含む)されるように、ガイド部材200の内径に対して設定されている。また、スプール211の絞り部211aよりも閉弁方向の第2本体部211dの直径は、この第2本体部211dがガイド部材200に対して開閉弁方向に摺動でき、かつ後述するピストン部211fとガイド部材200との間の空間部と、排出流路54mとの連通が遮断(ほぼ遮断される場合も含む)されるように、ガイド部材200の内径に対して設定されている。また、スプール211の第2本体部211dよりも閉弁方向のピストン部211fの直径は、このピストン部211fが共通流路54rに対して開閉弁方向に摺動でき、かつ駆動油圧室212と、排出流路54mとの連通が遮断(ほぼ遮断される場合も含む)されるように、共通流路54rの内径に対して設定されている。
また、スプール211は、開弁方向の端部に開弁方向に突出する弁体押圧突起部211eが形成されている。この弁体押圧突起部211eは、弁座192を介して弁体191と接触することができる位置に形成されている。この弁体押圧突起部211eは、駆動油圧室212の油圧P7によりスプール211に作用するピストン開弁方向押圧力F16により、このスプール211が開弁方向に摺動することで、弁体191と接触する。そして、スプール211に作用するスプール開弁方向押圧力F17が弁体開弁方向押圧力として弁体191に作用する。従って、このスプール開弁方向押圧力F17が、弁体閉弁方向押圧力を超えることによっても、弁体191が弁座192に対して開弁方向に移動し、作動油供給弁190が開弁する。つまり、作動油供給弁190は、プライマリ油圧室55から作動油が外部に排出される方向にも強制的に開弁するものである。
ここで、このスプール211が共通流路54rに対して最も閉弁方向に位置すると、第1本体部211cのみがガイド部材200のガイド側テーパー面200aと対向する。従って、連通部200cおよび空間部T7を介して、空間部T5と排出流路54mとの連通が遮断され、排出流量制御弁210が閉弁される。また、このスプール211が共通流路54rに対して最も閉弁方向に位置した状態から、開弁方向に共通流路54rに対して摺動して、スプール側テーパー面211bがガイド部材200のガイド側テーパー面200aと対向する。従って、連通部200cおよび空間部T7を介して、空間部T5と排出流路54mとの連通が解放され、排出流量制御弁210が開弁される。また、排出流量制御弁210は、このスプール側テーパー面211bとガイド部材200のガイド側テーパー面200aとで形成される排出流路面積に応じて、連通部200cおよび空間部T7を介して、空間部T5から排出流路54mに流入する作動油の排出流量を制御するものである。なお、作動油供給弁190は、スプール側テーパー面211bがガイド部材200のガイド側テーパー面200aと対向する前に、弁体押圧突出部211eが弁体191に接触し、この弁体191を開弁方向に移動させるため、開弁する。つまり、スプール側テーパー面211bとガイド部材200のガイド側テーパー面200aとが対向する前に、すなわち排出流量制御弁210が開弁する前に作動油供給弁190が開弁する。
駆動油圧室212は、作動油が供給されるものであり、この供給された作動油の圧力、すなわち駆動油圧室212の油圧P7により、作動油供給弁190および排出流量制御弁210を制御するものである。つまり、作動油供給弁190は、駆動油圧室212の油圧P7により、排出流量制御弁210によりプライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容あるいは禁止が制御される。また、排出流量制御弁210は、駆動油圧室212の油圧P7により、排出流量が制御される。この駆動油圧室212は、共通流路54rと、スプール211の閉弁方向の端面211gと、閉塞部材56と間に形成されるものである。従って、この駆動油圧室212の油圧P7により、スプール211にスプール開弁方向押圧力F17が作用する。
スプール弾性部材213は、スプール閉弁方向押圧手段である。このスプール弾性部材213は、ガイド部材200を介して共通流路54rの段差部54tと、ピストン部211fとの間に付勢された状態で配置されている。スプール弾性部材213は、閉弁付勢力を発生しており、この閉弁付勢力によりスプール211の第1本体部211cのみをガイド側テーパー面200aと対向する位置に摺動させる弾性部材押圧力F18がスプール閉弁方向押圧力としてスプール211に作用している。
ここで、排出流量制御弁210を開弁する場合は、開弁方向にスプール211に作用する押圧力であるスプール開弁方向押圧力F17が、閉弁方向にこのスプール211に作用する押圧力であるスプール閉弁方向押圧力を超え、スプール側テーパー面211bがガイド側テーパー面200aと対向する位置までのスプール211を摺動させることで行われる。このスプール開弁方向押圧力F17は、スプール211の閉弁方向の端面211gに作用する駆動油圧室212の油圧P7である。一方、スプール閉弁方向押圧力は、上記閉弁付勢力によりスプール211に作用する弾性部材押圧力F18と、弁体弾性部材193の閉弁付勢力により弁体191に作用する弾性部材押圧力F15と、プライマリ油圧室55の油圧P1により弁体191に作用する作動油押圧力F16とが含まれる。
また、排出流量制御弁210は、作動油供給弁190が駆動油圧室212の油圧P7により開弁する際に、この作動油供給弁190を強制的に開弁することができる駆動油圧室212の油圧P5以上の油圧で開弁するように設定されている。つまり、排出流量制御弁210は、上記実施例1と同様に、プライマリ油圧室55の油圧P1が最大の際に、作動油供給弁190が開弁することができる油圧以上の油圧で排出流量が制御されるように設定されている。これにより、1つの駆動油圧室212の油圧P7を制御することで、作動油排出弁190を開弁することができるとともに、排出流量制御弁210による排出流量の制御を行うことができる。従って、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の作動油の排出の許容あるいは禁止および排出流量の制御を簡単な構成で行うことができる。
ここで、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給する作動油供給流路は、この実施例3では、供給側通路51aと、連通通路51cと、空間部T1と、連通通路54kと、空間部T6と、連通部200bと、空間部T5と、開口部54qとにより構成されている。また、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55から作動油を排出する作動油排出流路は、この実施例3では、連通部200cと、空間部T7と、排出流路54mとにより構成されている。
次に、実施例3にかかるベルト式無段変速機1−3の動作について説明する。一般的な車両の前進、後進については、実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2と同様であるため、説明を省略する。なお、変速比減少変更、変速比増加変更、変速比の固定については、実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2と同一部分は、簡略化して説明する。
変速比減少変更では、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55へ作動油を供給し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に摺動(移動)させることで行われる。図9に示すように、作動油供給弁190を開弁し、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55への作動油の供給を許容する。具体的には、ECU150は、減少変速比と変速速度と算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を作動油供給制御装置140に出力する。作動油供給制御装置140は、空間部T5に供給される作動油の油圧を上昇させる。従って、空間部T5の油圧P6が上昇し、この空間部T5の油圧P6により弁体191に作用する作動油押圧力F14が増加する。
このとき、作動油供給制御装置140は、押圧力調圧バルブ145を制御し、駆動油圧室212の油圧P7によりスプール211にスプール開弁方向押圧力F17を作用させる。つまり、排出流量制御弁210は、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、スプール211にスプール開弁方向押圧力F17を作用させることで、このスプール開弁方向押圧力F17を作動油供給弁190の開弁方向の弁体開弁方向押圧力として、このスプール211の弁体押圧突出部211eを介して弁体191に作用させる。従って、プライマリ油圧室55への作動油の供給時には、作動油押圧力F14とスプール開弁方向押圧力F17とを合わせた押圧力が弁体開弁方向押圧力となる。これにより、この弁体開弁方向押圧力が、弁体弾性部材193の閉弁付勢力により弁体191に作用する弾性部材押圧力F15と、プライマリ油圧室55の油圧P1により弁体191に作用する作動油押圧力F16と、スプール弾性部材213の閉弁付勢力によりスプール211に作用する弾性部材押圧力F18とを合わせた弁体閉弁方向押圧力を超えることで、弁体191が開弁方向に移動し、作動油供給弁190が開弁することとなる。つまり、作動油供給弁190による一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給を許容する。
ここで、作動油供給制御装置140は、プライマリ油圧室55への作動油の供給時における駆動油圧室212の油圧P7が排出流量制御弁210を開弁させることができる油圧未満となるように、駆動油圧室212に供給される作動油の圧力を押圧力調圧バルブ145により調圧する。プライマリ油圧室55への作動油の供給時における駆動油圧室212の油圧P7が排出流量制御弁210を開弁させることができる駆動油圧室212の油圧P7未満であるため、スプール211を介して、排出流量制御装置211が弁体開弁方向押圧力としてスプール開弁方向押圧力F17を弁体191に作用させても、排出流量制御弁210が閉弁状態を維持する。従って、プライマリ油圧室55へ供給される作動油が作動油排出流路、すなわち排出流路54mから漏れることを抑制することができる。
作動油供給弁190によるプライマリ油圧室55への作動油の供給が許容されると、同図の矢印Eに示すように、作動油供給制御装置140の挟圧力調圧バルブ144により調圧された作動油は、空間部T5からプライマリ油圧室55に供給される。このとき、排出流量制御弁210は、スプール開弁方向押圧力F17によりスプール211が開弁方向に移動するが、上記実施例2と同様に、閉弁状態を維持し、作動油供給制御装置140からプライマリ油圧室55へ供給される作動油が空間部T5、連通部200c、空間部T7および排出流路54mを介して排出されることが禁止されている。従って、作動油供給弁190を介して供給された作動油によりプライマリ油圧室55の油圧P1が上昇し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧力する押圧力が上昇し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト120の接触半径が増加し、セカンダリプーリ60におけるベルト120の接触半径が減少し、変速比が減少され、減少変速比となる。
変速比増加変更では、プライマリ油圧室55から作動油を排出し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側と反対側に摺動(移動)させることで行われる。まず、図13に示すように、作動油供給弁190を強制的に開弁し、プライマリ油圧室55から作動油の排出を許容する。そして、排出流量制御弁210により、プライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量を制御する。具体的には、ECU150は、増加変速比と変速速度と算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を作動油供給制御装置140に出力する。作動油供給制御装置140は、駆動油圧室212に供給される作動油の油圧を上昇させる。従って、駆動油圧室212の油圧P7が上述の排出流量制御弁210を開弁できる油圧以上に上昇し、この駆動油圧室212の油圧P7によりスプール211を介して弁体191に弁体開弁方向押圧力として作用するスプール開弁方向押圧力F17は、弁体弾性部材193の閉弁付勢力により弁体191に作用する弾性部材押圧力F15と、プライマリ油圧室55の油圧P1により弁体191に作用する作動油押圧力F16と、スプール弾性部材213の閉弁付勢力によりスプール211に作用する弾性部材押圧力F18とを合わせたスプール開弁方向押圧力を超えることとなる。これにより、弁体191が開弁方向に移動し、作動油供給弁190が排出流量制御弁210により強制的に開弁される。つまり、排出流量制御弁210は、作動油供給弁190による一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55からの作動油の排出を許容する。
このとき、上昇した駆動油圧室212の油圧P7によりスプール211に作用するスプール開弁方向押圧力F17は、スプール閉弁方向押圧力を超えることとなる。ここで、排出流量制御弁210は、スプール211が共通流路54rに対して最も閉弁方向に位置した状態からこのスプール211の開弁方向への移動量(ストローク量)に応じて、スプール側テーパー面211bとガイド側テーパー面200aとで形成される排出流路面積が増加することとなる。上述の移動量が所定量以上となると、スプール211のガイド部材200に対する位置関係は、スプール211の第1本体部211cのみがガイド側テーパー面200aと対向する位置関係から、スプール側テーパー面211bがガイド側テーパー面200aと対向する位置関係に変化する。従って、排出流量制御弁211により、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55から外部への作動油の排出流量の制御が行われる。
作動油供給弁190によるプライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容され、排出流量制御弁210によるこの作動油の排出流量の制御が行われると、同図の矢印Gに示すように、プライマリ油圧室55の作動油は、開口部54qから、空間部T5、連通部200c、空間部T7を介して排出流路54mに流入する。この排出流路54mに流入した作動油は、プライマリプーリ50の外部へ排出される。
このとき、作動油供給制御装置140は、挟圧力調圧バルブ144を閉弁する。これは、プライマリ油圧室55から排出された作動油が作動油供給制御装置140に戻ることを抑制するためである。つまり、作動油供給弁190は、プライマリ油圧室55への作動油の供給を禁止する。従って、排出流量制御弁210により排出流量が制御されながら、作動油供給弁190を介してプライマリ油圧室55から作動油から排出されることにより、プライマリ油圧室55の油圧P1が減少し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力が減少し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側と反対側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト120の接触半径が減少し、セカンダリプーリ60におけるベルト120の接触半径が増加し、変速比が増加され、増加変速比となる。
変速比の固定は、プライマリ油圧室55へ作動油を供給せず、かつこのプライマリ油圧室55から作動油を排出せず、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定とし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する移動を規制することで行われる。図11に示すように、作動油供給弁190を閉弁状態に維持し、プライマリ油圧室55への作動油の供給の許容およびこのプライマリ油圧室55から作動油の排出をともに禁止する。具体的には、作動油供給制御装置140は、挟圧力調圧バルブ144を閉弁し、作動油供給制御装置140から空間部T5への作動油の供給を停止する。また、作動油供給制御装置140は、押圧力調圧バルブ145を閉弁して、この作動油供給制御装置140から駆動油圧室212への作動油の供給を停止、あるいは駆動油圧室212の油圧P7をこの駆動油圧室212の油圧P7によりスプール211に作用するスプール開弁方向押圧力F17が弁体閉弁方向押圧力およびスプール閉弁方向押圧力を超えないように、この駆動油圧室212に供給される作動油の圧力を押圧力調圧バルブ145により調圧する。
上述のように、プライマリ油圧室55には、作動油が保持された状態となるため、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定に維持するために、プライマリ油圧室55に外部から作動油を供給することによるプライマリ油圧室55の圧力の上昇を行わなくても良い。これにより、変速比の固定時に、プライマリ油圧室55に作動油を供給するためにオイルポンプ142を駆動させなくても良いため、オイルポンプ142の動力損失の増加を抑制することができる。
以上のように、上記実施例3にかかるベルト式無段変速機1−3においては、上記実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2と同様に、作動油排出弁を別個設けることなく、1つの弁により、一方の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給、このプライマリ油圧室55からの作動油の排出、プライマリ油圧室55での作動油の保持を行うことができる。
また、上記実施例2と同様に、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、弁体開弁方向押圧力は、スプール開弁方向押圧力F17と、作動油押圧力F14とを合わせたものとなるため、このスプール開弁方向押圧力F17を作動油供給弁190の弁体191に作用させない場合と比較して、作動油供給弁190を開弁するための作動油押圧力F14を小さくすることができる。これにより、プライマリ油圧室55への作動油の供給時に、作動油供給弁190を開弁する際の弾性部材押圧力F15の影響を少なくすることができるため、プライマリ油圧室55へ供給される作動油の供給圧力を小さくすることができる。また、上記実施例2と同様に、オイルポンプ142の駆動損失の増加をさらに抑制することができる。
また、上記実施例2にかかるベルト式無段変速機1−2と同様に、作動油供給弁190および排出流量制御弁210を同一軸上に配置している、すなわち一対の作動油供給弁190と排出流量制御弁210とを一体化して、一体回転する一方のプーリであるプライマリプーリ50に配置するので、小型化を図ることができる。また、一対の作動油供給弁190と排出流量制御弁210とを一体化するので、別体の場合と比較してプライマリ油圧室55から排出流路54mまでの作動油が通過する部分の体積を小さくすることができる。従って、作動油供給弁190のみを開弁した際の変速比の変化およびショックを低減することができる。これにより、フィーリングを向上することができる。
なお、上記実施例1〜3では、作動油供給弁70,160,190、弁開閉装置80,170および排出流量制御弁90,180,210は、その軸方向、すなわち開閉弁方向が一方のプーリであるプライマリプーリ50の軸方向と、平行となるように、プライマリ隔壁54に配置されているがこの発明はこれに限定されるものではない。例えば、作動油供給弁70,160,190、弁開閉装置80,170および排出流量制御弁90,180,210は、その開閉弁方向が一方のプーリであるプライマリプーリ50の軸方向に対してねじれの位置となるように、プライマリ隔壁54に配置されていても良い。従って、作動油供給弁70,160,190、弁開閉装置80,170および排出流量制御弁90,180,210がプライマリプーリ50の軸方向に突出することを抑制することができ、プライマリプーリ50の軸方向長さに対する作動油供給弁70,160,190、弁開閉装置80,170および排出流量制御弁90,180,210の影響を少なくすることができる。これにより、プライマリプーリ50の軸方向長さの増加を抑制することができ、プライマリプーリ50の小型化を図ることができ、ベルト式無段変速機1−1〜1−3の小型化を図ることができる。
1−1〜1−3 ベルト式無段変速機
10 内燃機関(駆動源)
20 トランスアクスル
30 トルクコンバータ
40 前後進切換機構
50 プライマリプーリ(一方のプーリ)
51 プライマリプーリ軸
51a 供給側通路
51b 駆動側通路
51c,d 連通通路
51e,f スプライン
52 プライマリ固定シーブ
53 プライマリ可動シーブ
53a 円筒部
53b 環状部
53c スプライン
53d 突出部
54 プライマリ隔壁
54a 第1流路
54b 第2流路
54c 第3流路
54d 第1連通流路
54e 第2連通流路
54f スプライン
54g〜j 閉塞部材
54k,l 連通通路
54m 排出流路
54n,o 解放通路
54p 連通孔
54q 開口部
54r 共通流路
54t 段差部
55 プライマリ油圧室(位置決め油圧室)
60 セカンダリプーリ
70 作動油供給弁
71 弁体
72 弁座突出部
73 弁体弾性部材
74 係止部材
80 弁開閉装置(弁開閉手段)
81 ピストン
81a 弁体押圧突起部
82 駆動油圧室
90 排出流量制御弁
91 スプール
91a 絞り部
91b テーパー面
91c 第1本体部
91d 第2本体部
91e 先端部
91f 先端面
92 スプール弾性部材(スプール閉弁方向押圧手段)
100 最終減速機
110 動力伝達経路
120 ベルト
130 車輪
140 作動油供給制御装置
141 オイルタンク
142 オイルポンプ
143 プレッシャーレギュレータ
144 挟圧力調圧バルブ
145 押圧力調圧バルブ
150 ECU
160 作動油供給弁
161 弁体
162 弁座突出部
163 弁体弾性部材
164 係止部材
165 固定ピン
170 弁開閉装置(弁開閉手段)
171 ピストン
171a 第1連通通路
171b 第2連通通路
171c 連通孔
171d 閉弁方向の端面
180 排出流量制御弁
181 スプール
181a 絞り部
181b テーパー面
181c 第1本体部
181d 第2本体部
181e 連通孔
181f 閉弁方向の端面
182 スプール弾性部材(スプール閉弁方向押圧手段)
190 作動油供給弁
191 弁体
192 弁座
193 弁体弾性部材
194 リング状部材
195 係止部材
200 ガイド部材
200a ガイド側テーパー面
200b 連通部
200c 連通部
210 排出流量制御弁(弁開閉手段)
211 スプール(ピストン)
211a 絞り部
211b スプール側テーパー面
211c 第1本体部
211d 第2本体部
211e 弁体押圧突起部
211f ピストン部
211g 閉弁方向の端面
T1〜T7 空間部
10 内燃機関(駆動源)
20 トランスアクスル
30 トルクコンバータ
40 前後進切換機構
50 プライマリプーリ(一方のプーリ)
51 プライマリプーリ軸
51a 供給側通路
51b 駆動側通路
51c,d 連通通路
51e,f スプライン
52 プライマリ固定シーブ
53 プライマリ可動シーブ
53a 円筒部
53b 環状部
53c スプライン
53d 突出部
54 プライマリ隔壁
54a 第1流路
54b 第2流路
54c 第3流路
54d 第1連通流路
54e 第2連通流路
54f スプライン
54g〜j 閉塞部材
54k,l 連通通路
54m 排出流路
54n,o 解放通路
54p 連通孔
54q 開口部
54r 共通流路
54t 段差部
55 プライマリ油圧室(位置決め油圧室)
60 セカンダリプーリ
70 作動油供給弁
71 弁体
72 弁座突出部
73 弁体弾性部材
74 係止部材
80 弁開閉装置(弁開閉手段)
81 ピストン
81a 弁体押圧突起部
82 駆動油圧室
90 排出流量制御弁
91 スプール
91a 絞り部
91b テーパー面
91c 第1本体部
91d 第2本体部
91e 先端部
91f 先端面
92 スプール弾性部材(スプール閉弁方向押圧手段)
100 最終減速機
110 動力伝達経路
120 ベルト
130 車輪
140 作動油供給制御装置
141 オイルタンク
142 オイルポンプ
143 プレッシャーレギュレータ
144 挟圧力調圧バルブ
145 押圧力調圧バルブ
150 ECU
160 作動油供給弁
161 弁体
162 弁座突出部
163 弁体弾性部材
164 係止部材
165 固定ピン
170 弁開閉装置(弁開閉手段)
171 ピストン
171a 第1連通通路
171b 第2連通通路
171c 連通孔
171d 閉弁方向の端面
180 排出流量制御弁
181 スプール
181a 絞り部
181b テーパー面
181c 第1本体部
181d 第2本体部
181e 連通孔
181f 閉弁方向の端面
182 スプール弾性部材(スプール閉弁方向押圧手段)
190 作動油供給弁
191 弁体
192 弁座
193 弁体弾性部材
194 リング状部材
195 係止部材
200 ガイド部材
200a ガイド側テーパー面
200b 連通部
200c 連通部
210 排出流量制御弁(弁開閉手段)
211 スプール(ピストン)
211a 絞り部
211b スプール側テーパー面
211c 第1本体部
211d 第2本体部
211e 弁体押圧突起部
211f ピストン部
211g 閉弁方向の端面
T1〜T7 空間部
Claims (8)
- 2つのプーリと、
前記各プーリに巻き掛けられ、一方のプーリに伝達された駆動源からの駆動力を他方のプーリに伝達するベルトと、
前記各プーリに形成され、油圧により可動シーブを固定シーブ側に押圧する位置決め油圧室と、
前記位置決め油圧室のうち、一方の位置決め油圧室に作動油を供給する作動油供給流路と、
前記作動油供給流路と連通し、前記一方の位置決め油圧室から前記作動油を排出する作動油排出流路と、
前記作動油供給流路に配置され、前記一方の位置決め油圧室への前記作動油の供給のみを許容し、前記一方のプーリと一体回転する作動油供給弁と、
前記作動油供給弁を強制的に開弁することで、前記一方の位置決め油圧室からの前記作動油の排出の許容あるいは禁止を制御する弁開閉手段と、
前記作動油排出流路に配置され、前記弁開閉手段によって開弁された前記作動油供給弁により前記一方の位置決め油圧室から排出される作動油の排出流量を制御し、前記一方のプーリと一体回転する排出流量制御弁と、
を備え、
前記弁開閉手段は、前記一方の位置決め油圧室への前記作動油の供給時に、前記作動油供給弁の開弁方向の弁体開弁方向押圧力を当該作動油供給弁の弁体に作用させることを特徴とするベルト式無段変速機。 - 前記弁開閉手段は、
前記作動油が供給される駆動油圧室と、
前記作動油供給弁の開閉弁方向に摺動自在に支持され、かつ前記駆動油圧室の油圧による前記弁体開弁方向押圧力を前記弁体に作用させるピストンと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機。 - 前記排出流量制御弁は、開閉弁方向に摺動自在に支持されるスプールを備え、
前記スプールは、前記駆動油圧室の油圧による前記排出流量制御弁の開弁方向のスプール開弁方向押圧力が作用することで前記排出流量を制御することを特徴とする請求項2に記載のベルト式無段変速機。 - 前記一方の位置決め油圧室への前記作動油の供給時における弁体開弁方向押圧力を前記弁体に作用させる前記駆動油圧室の油圧は、前記排出流量制御弁を開弁させることができる前記駆動油圧室の油圧未満であることを特徴とする請求項3に記載のベルト式無段変速機。
- 前記作動油供給弁および前記排出流量制御弁は、同一軸上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のベルト式無段変速機。
- 前記スプールは、前記ピストンであることを特徴とする請求項5に記載のベルト式無段変速機。
- 前記排出流量制御弁は、前記一方の位置決め油圧室の油圧による前記スプールの閉弁方向のスプール閉弁方向押圧力が当該スプールに作用することを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つに記載のベルト式無段変速機。
- 前記スプールの開弁方向の先端部は、一方の位置決め油圧室に露出していることを特徴とする請求項7に記載のベルト式無段変速機。
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---|---|---|---|
JP2006286700A JP2008101752A (ja) | 2006-10-20 | 2006-10-20 | ベルト式無段変速機 |
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---|---|---|---|
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---|---|
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ID=39436230
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---|---|---|---|
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---|---|
JP (1) | JP2008101752A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010002044A (ja) * | 2008-06-23 | 2010-01-07 | Toyota Motor Corp | ベルト式無段変速機 |
-
2006
- 2006-10-20 JP JP2006286700A patent/JP2008101752A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010002044A (ja) * | 2008-06-23 | 2010-01-07 | Toyota Motor Corp | ベルト式無段変速機 |
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