JP2008190492A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、圧縮室内の冷媒の一部をバイパス通路を介して圧縮機構の吸入側へ戻すことが可能な回転式圧縮機に係るものである。
従来より、シリンダ室内をピストンが偏心回転することで、圧縮室内で冷媒を圧縮させる回転式圧縮機は、冷媒回路で冷凍サイクルを行う空気調和装置等に広く適用されている。
この種の回転式圧縮機として、特許文献1には圧縮機構において、圧縮室内を圧縮機構の吸入側と連通させるバイパス通路を備えた圧縮機が開示されている。この圧縮機は、圧縮機は、シリンダ室を有するシリンダと、シリンダ室に収納されるピストンとを備えている。ピストンには、駆動軸から所定量偏心した偏心軸部が内嵌している。そして、駆動軸が回転すると、偏心軸部に駆動されてピストンがシリンダ室内を公転する。その結果、シリンダ室では、ピストンとシリンダとの間に形成される圧縮室の容積が変化し、圧縮室内で冷媒が圧縮される。
また、上記バイパス通路は、流入端がシリンダの内周面に形成されて圧縮室に開口し、流出端が圧縮機構の吸入配管と繋がっている。このバイパス通路は、弁体によって開閉自在となっている。具体的には、弁体の背面側には、冷媒導入管を介して圧縮機構の吐出側と繋がる背圧室が形成されている。また、冷媒導入管には、圧縮機構の吐出側と背圧室とを連通させる状態と、圧縮機構の吐出側と背圧室とを遮断する状態とに切り換え可能な三方弁が設けられている。
三方弁の切換により圧縮機構の吐出側と背圧室とが連通すると、弁体は背圧室に導入された高圧冷媒に押圧されバイパス通路を閉鎖する位置に変位する。この状態でピストンがシリンダ室内を公転すると、吸入口より圧縮室内に吸入された冷媒が圧縮され、その冷媒の全量が吐出口から吐出される。
一方、三方弁の切換により、圧縮機構の吐出側と背圧室とが遮断されると、弁体がスプリングによって付勢され、バイパス通路を開放する位置に変位する。この状態でピストンがシリンダ室内を公転すると、吸入口より圧縮室内に吸入された冷媒は、一部がバイパス通路を介して圧縮機構の吸入側へ戻される一方、残りの冷媒だけが圧縮されて吐出口から吐出される。
特開昭59−12264号公報
上述のように、この回転式圧縮機では、空気調和装置の運転条件に併せて三方弁の設定を適宜変更することで、弁体の開閉状態を切り換えて冷媒の閉じ込み容積(実質的な吸入容積)を変化させるようにしている。このため、この回転式圧縮機では、弁体を開閉するための三方弁や、この三方弁に接続される配管等が必要となる。また、空気調和装置の運転条件に併せて三方弁を切り換えるためには、センサ等により空気調和装置の運転条件がどのような状態であるかを適宜検出し、このセンサの検出結果に応じて三方弁の設定を切り換える必要がある。従って、特許文献1の回転式圧縮機では、その装置構造が複雑となり、製造コストの増大、あるいはメンテナンスの煩雑化を招いてしまう。
本発明は、斯かる点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、単純な構造により、空気調和装置等の運転条件に併せてバイパス通路を開閉させることができる回転式圧縮機を提案することである。
第1の発明は、固定部材(41a,41b,44,45,46,81)と、該固定部材(41a,41b,44,45,46,81)との間に圧縮室を形成しながら駆動軸(33)に対して偏心回転する可動部材(47a,47b,82)とを有する圧縮機構(40a,40b,80)を備え、冷凍サイクルが行われる冷媒回路(11)に接続されて冷媒を上記圧縮室で圧縮する回転式圧縮機を前提としている。そして、この回転式圧縮機は、一端が圧縮室に開口し、他端が圧縮機構(40a,40b,80)の吸入側と繋がるバイパス通路(66)と、該バイパス通路(66)を開閉する弁体(64)と、一端がバイパス通路(66)に臨むと共に、上記弁体(64)がバイパス通路(66)を開閉自在に変位するように内嵌する弁体収容部(61)とを備え、該弁体収容部(61)内では、上記冷媒回路(11)の高低差圧の変化に応じて弁体(64)の開閉位置が自動的に切り換わるように、弁体(64)に圧縮機構(40a,40b,80)の吐出側の圧力が作用していることを特徴とするものである。
第1の発明では、固定部材(41a,41b,44,45,46,81)に対して可動部材(47a,47b,82)が偏心回転することで、圧縮室の容積が拡縮されて冷媒が圧縮される。ここで、弁体(64)がバイパス通路(66)を閉鎖する位置で圧縮動作が行われると、冷媒の全量が圧縮室内で圧縮される。一方、弁体(64)がバイパス通路(66)を開放する位置で圧縮動作が行われると、冷媒の一部がバイパス通路(66)を通じて圧縮機構(40a,40b,80)の吸入側に戻され、残りの冷媒は圧縮室で圧縮される。以上のように、この圧縮機構(40a,40b,80)では、弁体(64)によるバイパス通路(66)の開閉動作に応じて、圧縮室の吸入容積が可変となっている。
本発明では、弁体収容部(61)内に弁体(64)が変位自在に内嵌している。弁体収容部(61)内には、圧縮機構(40a,40b,80)の吐出側の圧力が作用している。冷媒回路(11)の冷凍サイクルの条件に応じて、冷媒回路(11)の高低差圧が変化すると、弁体(64)に作用する圧力もこれに応じて変動する。その結果、弁体収容部(61)では、この圧力の変動に伴い弁体(64)が変位し、バイパス通路(66)を開放する位置や閉鎖する位置となる。即ち、本発明では、冷媒回路(11)の高低差圧の変化に連動するようにして、弁体(64)の開閉位置が自動的に切り換えられる。従って、圧縮機構(40a,40b,80)の吸入容積も、冷媒回路(11)の高低差圧に応じて自動的に変更されることになる。
第2の発明は、第1の発明の回転式圧縮機において、駆動軸(33)には1つの圧縮機構(80)が連結されており、上記弁体(64)は、上記冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、上記バイパス通路(66)の開放位置に変位するように構成されていることを特徴とするものである。
第2の発明の回転式圧縮機は、1つの圧縮機構により冷凍サイクルの圧縮行程を行う、単段式の圧縮機で構成される。一方、弁体収容部(61)内の弁体(64)は、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、バイパス通路(66)を開放する位置に変位する。このため、このように冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件においては、圧縮室の冷媒の一部がバイパス通路(66)を介して圧縮機構(80)の吸入側に戻される。その結果、圧縮機構(80)の吸入容積が小さくなり、この回転式圧縮機の冷媒循環量が機械的に抑制される。
第3の発明は、第2の発明の回転式圧縮機において、上記弁体収容部(61)内には、その一端側に形成されて圧縮機構(80)の吸入側と繋がる低圧側空間(61a)と、その他端側に形成されて圧縮機構(80)の吐出側と繋がる高圧側空間(61b)とが、上記弁体(64)によって仕切られており、上記弁体(64)には、上記高圧側空間(61b)と低圧側空間(61a)との差圧がバイパス通路(66)の閉鎖位置に向かって作用しており、上記冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると弁体(64)が開放位置に変位するように、上記差圧に抗する反力を弁体(64)に作用させる弁開放手段(65)を備えていることを特徴とするものである。
第3の発明では、弁体収容部(61)内が、弁体(64)によって高圧側空間(61b)と低圧側空間とに仕切られる。高圧側空間(61b)は、圧縮機構(80)の吐出側と繋がっており、高圧雰囲気となっている。一方、低圧側空間(61a)は、圧縮機構(80)の吸入側と繋がっており、低圧雰囲気となっている。弁体(64)には、これら高圧側空間(61b)と低圧側空間(61a)の差圧がバイパス通路(66)の閉鎖位置に向かって作用している。また、弁体(64)には、弁開放手段(65)によってこの差圧と反対側を向く反力、即ちバイパス通路(66)の開放位置に向かう力が作用している。
冷媒回路(11)の高低差圧が所定値を上回る状態では、高圧側空間(61b)と低圧側空間(61a)の差圧が比較的大きくなるので、この差圧により弁体(64)はバイパス通路(66)の閉鎖位置に変位する。その結果、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的大きい運転条件では、圧縮機構(80)の吸入容積が大きくなり、この回転式圧縮機の運転能力が自動的に増大する。一方、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になる状態では、高圧側空間(61b)と低圧側空間(61a)の差圧が比較的小さくなるので、弁体(64)は弁開放手段(65)によりバイパス通路(66)の開放位置に変位する。その結果、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件では、圧縮機構(80)の吸入容積が小さくなり、この回転式圧縮機の冷媒循環量が機械的に抑制される。
第4の発明は、第1の発明の回転式圧縮機において、上記圧縮機構は、上記冷媒回路(11)から吸入した冷媒を圧縮する低段側圧縮機構(40a)と、上記低段側圧縮機構(40a)が吐出した冷媒を吸入して圧縮すると共に該低段側圧縮機構(40a)と駆動軸(33)で連結される高段側圧縮機構(40b)とで構成され、上記バイパス通路(66)は、一端が低段側圧縮機構(40a)の圧縮室に開口し、他端が低段側圧縮機構(40a)の吸入側と繋がっており、上記弁体(64)は、上記冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、上記バイパス通路(66)の開放位置に変位するように構成されていることを特徴とするものである。
第4の発明では、低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)とが駆動軸(33)によって互いに連結された圧縮機構が設けられる。本発明のバイパス通路(66)や弁体収容部(61)は、低段側圧縮機構(40a)に設けられており、弁体(64)の開閉位置に応じて低段側圧縮機構(40a)の吸入容積が切換可能となっている。ここで、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件において、両圧縮機構(40a,40b)で冷媒を2段圧縮すると、低段側圧縮機構(40a)側で冷媒の圧縮行程がほぼ終了し、高段側圧縮機構(40b)ではほとんど冷媒が圧縮されないことがある。その結果、低段側圧縮機構(40a)における冷媒の圧縮トルクの変動幅が、高段側圧縮機構(40b)における冷媒の圧縮トルクの変動幅よりも相対的に大きくなってしまう。その結果、両圧縮機構(40a,40b)における圧縮トルクの変動幅がアンバランスとなることに起因して、駆動軸(33)の回転に伴い振動や騒音が生じてしまうという問題が生じる。
そこで、本発明では、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、低段側圧縮機構(40a)の弁体(64)をバイパス通路(66)の閉鎖位置に変位させている。このため、このように冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件においては、低段側圧縮機構(40a)の圧縮室の冷媒の一部がバイパス通路(66)を介して低段側圧縮機構(40a)の吸入側に戻される。その結果、弁体(64)を閉鎖位置とした場合よりも、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積が小さくなるので、その分だけ低段側圧縮機構(40a)の圧縮トルクの変動幅が小さくなり、両圧縮機構(40a,40b)の圧縮トルクの変動幅が平均化される。従って、両圧縮機構(40a,40b)における圧縮トルクの変動幅のアンバランスに起因して、駆動軸(33)の回転に伴い振動や騒音が生じてしまうことが自動的に解消される。
第5の発明は、第4の発明の回転式圧縮機において、上記弁体収容部(61)内には、その一端側に形成されて低段側圧縮機構(40a)の吸入側と繋がる低圧側空間(61a)と、その他端側に形成されて高段側圧縮機構(40b)の吐出側と繋がる高圧側空間(61b)とが、上記弁体(64)によって仕切られており、上記弁体(64)には、バイパス通路(66)の閉鎖位置に向かう上記高圧側空間(61b)と低圧側空間(61a)との差圧が作用しており、上記冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると弁体(64)が開放位置に変位するように、上記差圧に抗する反力を弁体(64)に作用させる弁開放手段(65)を備えていることを特徴とするものである。
第5の発明では、弁体収容部(61)内が、弁体(64)によって高圧側空間(61b)と低圧側空間とに仕切られる。高圧側空間(61b)は、高段側圧縮機構(40b)の吐出側と繋がっており、高圧雰囲気となっている。一方、低圧側空間(61a)は、低段側圧縮機構(40a)の吸入側と繋がっており、低圧雰囲気となっている。弁体(64)には、これら高圧側空間(61b)と低圧側空間(61a)の差圧がバイパス通路(66)の閉鎖位置に向かって作用する一方、弁開放手段(65)によってこの差圧と反対側を向く反力も作用している。
冷媒回路(11)の高低差圧が所定値を上回る状態では、高圧側空間(61b)と低圧側空間(61a)の差圧が比較的大きくなるので、この差圧により弁体(64)はバイパス通路(66)の閉鎖位置に変位する。その結果、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的大きい運転条件では、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積が大きくなり、両圧縮機構(40a,40b)でバランス良く圧縮行程が行われる。一方、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になる状態では、高圧側空間(61b)と低圧側空間(61a)の差圧が比較的小さくなるので、弁体(64)は弁開放手段(65)によりバイパス通路(66)の開放位置に変位する。その結果、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件では、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積が小さくなる。このため、両圧縮機構(40a,40b)における圧縮トルクの変動幅のアンバランスに起因して、駆動軸(33)の回転に伴い振動や騒音が生じてしまうことが自動的に解消される。
第6の発明は、第1の発明の回転式圧縮機において、上記圧縮機構は、上記冷媒回路(11)から吸入した冷媒を圧縮する低段側圧縮機構(40a)と、上記低段側圧縮機構(40a)が吐出した冷媒を吸入して圧縮すると共に該低段側圧縮機構(40a)と駆動軸(33)で連結される高段側圧縮機構(40b)とで構成され、上記バイパス通路(66)は、一端が高段側圧縮機構(40b)の圧縮室に開口し、他端が高段側圧縮機構(40b)の吸入側と繋がっており、上記弁体(64)は、上記冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、上記バイパス通路(66)の閉鎖位置に変位するように構成されていることを特徴とするものである。
第6の発明では、低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)とが駆動軸(33)によって互いに連結された圧縮機構が設けられる。本発明のバイパス通路(66)や弁体収容部(61)は、高段側圧縮機構(40b)に設けられており、弁体(64)の開閉位置に応じて高段側圧縮機構(40b)の吸入容積が切換可能となっている。ここで、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件において、両圧縮機構(40a,40b)で冷媒を2段圧縮すると、上述したように、低段側圧縮機構(40a)における冷媒の圧縮トルクの変動幅が、高段側圧縮機構(40b)における冷媒の圧縮トルクの変動幅よりも相対的に大きくなってしまい、振動や騒音が生じてしまう。
そこで、本発明では、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、高段側圧縮機構(40b)の弁体(64)をバイパス通路(66)の閉鎖位置に変位させている。このため、このように冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件においては、高段側圧縮機構(40b)の圧縮室で冷媒の全量が圧縮される。その結果、弁体(64)を開放位置とした場合よりも、高段側圧縮機構(40b)の吸入容積が大きくなるので、その分だけ高段側圧縮機構(40b)の圧縮トルクの変動幅が大きくなり、両圧縮機構(40a,40b)の圧縮トルクの変動幅が平均化される。従って、両圧縮機構(40a,40b)における圧縮トルクの変動幅のアンバランスに起因して、駆動軸(33)の回転に伴い振動や騒音が生じてしまうことが自動的に解消される。
第7の発明は、第6の発明の回転式圧縮機において、上記弁体収容部(61)は、その一端側に形成されて高段側圧縮機構(40b)の吐出側と繋がる高圧側空間(61b)と、その他端側に形成されて高段側圧縮機構(40b)の吸入側と繋がる中間圧側空間(61c)とが、上記弁体(64)によって仕切られており、上記弁体(64)には、バイパス通路(66)の開放位置に向かう上記高圧側空間(61b)と中間圧側空間(61c)との差圧が作用しており、上記冷凍サイクルの高低差圧が所定値以下になると弁体(64)が閉鎖位置に変位するように、上記差圧に抗する反力を弁体(64)に作用させる弁閉鎖手段(65)を備えていることを特徴とするものである。
第7の発明では、弁体収容部(61)内が、弁体(64)によって高圧側空間(61b)と中間圧側空間(61c)とに仕切られる。高圧側空間(61b)は、高段側圧縮機構(40b)の吐出側と繋がっており、高圧雰囲気となっている。一方、中間圧側空間(61c)は、高段側圧縮機構(40b)の吸入側と繋がっており、中間圧雰囲気となっている。弁体(64)には、これら高圧側空間(61b)と中間圧側空間(61c)の差圧がバイパス通路(66)の開放位置に向かって作用する一方、弁閉鎖手段(65)によってこの差圧と反対側を向く反力も作用している。
冷媒回路(11)の高低差圧が所定値を上回る状態では、高圧側空間(61b)と中間圧側空間(61c)の差圧が比較的大きくなるので、この差圧により弁体(64)はバイパス通路(66)の開放位置に変位する。その結果、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的大きい運転条件では、高段側圧縮機構(40b)の吸入容積が小さくなり、両圧縮機構(40a,40b)でバランス良く圧縮行程が行われる。一方、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になる状態では、高圧側空間(61b)と中間圧側空間(61c)の差圧が比較的小さくなるので、弁体(64)は弁閉鎖手段(65)によりバイパス通路(66)の閉鎖位置に変位する。その結果、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件では、高段側圧縮機構(40b)の吸入容積が大きくなる。このため、両圧縮機構(40a,40b)における圧縮トルクの変動幅のアンバランスに起因して、駆動軸(33)の回転に伴い振動や騒音が生じてしまうことが自動的に解消される。
第8の発明は、第3、第5、及び第7の発明の回転式圧縮機において、上記圧縮機構(40a,40b,80)が収納されると共に、内部空間に冷媒回路(11)の高圧冷媒が満たされるケーシング(21)を備え、上記弁体収容部(61)の高圧側空間(61b)は、上記ケーシング(21)の内部空間に臨んでいることを特徴とするものである。
第8の発明の回転式圧縮機は、ケーシング(21)の内部空間が冷媒回路(11)の高圧冷媒で満たされる、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機で構成される。一方、弁体収容部(61)の高圧側空間(61b)は、ケーシング(21)の内部空間に臨んでおり、高圧側空間(61b)内に高圧冷媒の高圧が作用している。その結果、弁体(64)は、この高圧によってバイパス通路(66)の開閉位置が自動的に切り換えられる。
第9の発明は、第8の発明の回転式圧縮機において、上記ケーシング(21)の内部空間には、その底部に圧縮機構(40a,40b,80)を潤滑する油が貯留される油溜め部(21a)が形成され、上記高圧側空間(61b)は、上記油溜め部(21a)に臨んでいることを特徴とするものである。
第9の発明では、高圧側空間(61b)がケーシング(21)の油溜め部(21a)に臨んでおり、高圧側空間(61b)は高圧冷媒によって押し出される油が導入される。つまり、高圧側空間(61b)からは、高圧の油が弁体(64)に作用している。その結果、弁体(64)は、この油の高圧によってバイパス通路(66)の開閉位置が自動的に切り換えられる。
第1の発明では、弁体収容部(61)内に設けた弁体(64)を冷媒回路(11)の高低差圧の変化に応じて変位させてバイパス通路(66)を開閉するように、弁体(64)に圧縮機構(40a,40b,80)の吐出側の圧力を作用させている。このため、本発明によれば、従来技術のように三方弁等を設けたり、この三方弁を適宜制御したりすることなく、弁体(64)の開閉位置を冷媒回路(11)の高低差圧の変化に応じて自動的に切り換えることができる。従って、この回転式圧縮機をシンプルに構成することができ、コスト削減、あるいはメンテナンスの簡便化を図ることができる。
第2の発明では、単段式の圧縮機構(80)において、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、弁体(64)を開放位置に変位させるようにしている。このため、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件においては、圧縮機構(80)の吸入容積を自動的に小さくして回転式圧縮機の冷媒循環量が機械的に抑制される。従って、この回転式圧縮機の運転周波数を著しく低下させることもなく、モータ効率の高い周波数で運転を行うことができる。
第3の発明では、高圧側空間(61b)と低圧側空間(61a)の差圧、及びこの差圧に抗する弁開放手段(65)の反力を利用することで、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、弁体(64)をバイパス通路(66)の開放位置に変位させるようにしている。従って、本発明によれば、比較的単純な構成によって、冷媒回路(11)の高低差圧が小さい運転条件で回転式圧縮機の冷媒循環量を機械的に抑制することができる。
第4の発明では、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、低段側圧縮機構(40a)の弁体(64)をバイパス通路(66)の開放位置に自動的に変位させるようにしている。また、第6の発明では、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、高段側圧縮機構(40b)の弁体(64)をバイパス通路(66)の閉鎖位置に自動的に変位させるようにしている。このため、これらの発明によれば、このような運転条件において、低段側圧縮機構(40a)の圧縮トルクの変動幅と高段側圧縮機構(40b)の圧縮トルクの変動幅を速やかに平均化させることができ、自動的に振動や騒音の防止を図ることができる。
第5の発明では、高圧側空間(61b)と低圧側空間(61a)の差圧、及びこの差圧に抗する弁開放手段(65)の反力を利用することで、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、低段側圧縮機構(40a)の弁体(64)をバイパス通路(66)の開放位置に変位させるようにしている。また、第7の発明では、高圧側空間(61b)と中間圧側空間(61c)の差圧、及びこの差圧に抗する弁閉鎖手段(65)の反力を利用することで、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、高段側圧縮機構(40b)の弁体(64)をバイパス通路(66)の閉鎖位置に変位させるようにしている。従って、これらの発明によれば、比較的単純な構成により、両圧縮機構(40a,40b)の圧縮トルクの変動幅を平均化させることができ、振動や騒音の発生を未然に防止することができる。
第8の発明では、冷媒回路(11)の高圧冷媒が満たされるケーシング(21)の内部空間に高圧側空間(61b)が臨むようにしている。このため、圧縮機構(40b)の吐出側の圧力を高圧側空間(61b)へ導くための配管等が不要になり、この回転式圧縮機の構造を更にシンプルに構成することができる。
第9の発明では、油溜め部(21a)に高圧側空間(61b)が臨むようにしている。このため、高圧の油を利用して、弁体(64)の開閉位置を切り換えることができる。また、このように弁体(64)を油で変位させるようにすると、閉鎖位置の弁体(64)の外周面と弁体収容部(61)の内周面との間の隙間を油によってシールすることができる。このため、比較的高温の高圧冷媒が、弁体(64)周りの隙間を通じて圧縮機構(40a,40b,80)の圧縮室内へ入り込んでしまうことが防止でき、圧縮室内の冷媒が上記高圧冷媒によって加熱されることを未然に回避できる。従って、いわゆる冷媒の吸入加熱により、圧縮機構(40a,40b,80)の容積効率が低下してしまうのを防止できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《実施形態1》
本発明の実施形態1に係る回転式圧縮機(20)は、室内の冷房や暖房を行う空気調和装置(10)に適用されている。
本発明の実施形態1に係る回転式圧縮機(20)は、室内の冷房や暖房を行う空気調和装置(10)に適用されている。
〈空気調和装置の全体構成〉
図1に示すように、空気調和装置(10)は、冷媒が循環することで冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備えている。冷媒回路(11)には、上記回転式圧縮機(20)、室外熱交換器(14)、室内熱交換器(15)、第1膨張弁(16)、第2膨張弁(17)、四方切換弁(12)、気液分離器(18)、及びアキュームレータ(19)が接続されている。
図1に示すように、空気調和装置(10)は、冷媒が循環することで冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備えている。冷媒回路(11)には、上記回転式圧縮機(20)、室外熱交換器(14)、室内熱交換器(15)、第1膨張弁(16)、第2膨張弁(17)、四方切換弁(12)、気液分離器(18)、及びアキュームレータ(19)が接続されている。
回転式圧縮機(20)の吐出側は、吐出管(23)を通じて四方切換弁(12)の第1ポート(P1)に接続されている。また、回転式圧縮機(20)の吸入側は、吸入管(22)を介してアキュームレータ(19)の底部に接続されている。また、アキュームレータ(19)の頂部は、四方切換弁(12)の第4ポート(P4)に接続されている。また、室外熱交換器(14)は、その一端が四方切換弁(12)の第2ポート(P2)に、その他端が第2膨張弁(17)を介して気液分離器(18)の底部に接続されている。一方、室内熱交換器(15)は、その一端が四方切換弁(12)の第3ポート(P3)に、その他端が第1膨張弁(16)を介して気液分離器(18)の底部に接続されている。
四方切換弁(12)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通し且つ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが連通する状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通し且つ第2ポート(P2)と第4ポート(P4)とが連通する状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。
また、冷媒回路(11)には、インジェクション管(24)及びバイパス管(28)が設けられている。インジェクション管(24)は、その一端が気液分離器(18)の頂部に接続され、その他端が回転式圧縮機(20)に接続されている。このインジェクション管(24)には、開閉自在な電磁弁(31)が設けられている。電磁弁(31)を開状態にすると、気液分離器(18)内の中間圧冷媒がインジェクション管(24)によって回転式圧縮機(20)に導入される。上記バイパス管(28)は、その一端が回転式圧縮機(20)に接続され、その他端が吸入管(22)に接続されている。
〈回転式圧縮機の構成〉
次に、本発明に係る回転式圧縮機の構成について説明する。
次に、本発明に係る回転式圧縮機の構成について説明する。
図2に示すように、回転式圧縮機(20)は、縦長で円筒形の密閉容器であるケーシング(21)を備えている。ケーシング(21)の上部には、上記吐出管(23)が貫通して接続されている。ケーシング(21)の胴部には、上記吸入管(22)及びバイパス管(28)が貫通して接続されている。ケーシング(21)の内部には、その上側寄りに電動機(25)が配置され、その下側寄りに圧縮機構(40)が配置されている。また、ケーシング(21)の内部空間は、圧縮機構(40)から吐出された冷媒で満たされている。つまり、この回転式圧縮機(20)は、ケーシング(21)の内部空間が冷媒回路(11)の高圧冷媒で満たされる、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機で構成されている。
上記電動機(25)は、ステータ(26)とロータ(27)とで構成されている。ステータ(26)は、ケーシング(21)の内周面に固定されている。ロータ(27)は、ステータ(26)の内側に配置されている。ロータ(27)の中央部には、上下方向に延びる駆動軸(33)の主軸部(34)が連結されている。
駆動軸(33)は、電動機(25)が通電されることで、所定の回転軸(X)を軸心として回転駆動される。駆動軸(33)には、下側から順に第1偏心軸部(35)と第2偏心軸部(36)とが形成されている。第1偏心軸部(35)及び第2偏心軸部(36)は、主軸部(34)よりも大径で、且つ主軸部(34)の回転軸(X)に対して偏心して形成されている。第1偏心軸部(35)と第2偏心軸部(36)とでは、回転軸(X)に対する偏心方向が逆になっている。また、第1偏心軸部(35)の高さは、第2偏心軸部(36)よりも高くなっている。
上記ケーシング(21)内の底部には、潤滑油の油溜め部(21a)が形成されている。この油溜め部(21a)には、駆動軸(33)の下端部が浸積されている。駆動軸(33)の下端部には、遠心式の油ポンプ(33a)が設けられている。駆動軸(33)が回転すると、油溜め部(21a)の潤滑油は、油ポンプ(33a)によって上方に汲み上げられる。この潤滑油は、駆動軸(33)に形成される油通路(53)を介して、詳細は後述する圧縮機構(40)の各摺動部等へ供給される。
上記圧縮機構(40)は、低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)とによって構成されている。つまり、この回転式圧縮機は、2つの圧縮機構を備え、冷媒を2段階に圧縮する、いわゆる二段圧縮型の圧縮機で構成されている。
圧縮機構(40)では、上方から順に、フロントヘッド(44)、高段側シリンダ(41b)、ミドルプレート(46)、低段側シリンダ(41a)、及びリアヘッド(45)が配設され、これらがケーシング(21)に固定される固定部材を構成している。フロントヘッド(44)、ミドルプレート(46)、及びリアヘッド(45)には、上記駆動軸(33)が貫通している。また、フロントヘッド(44)及びリアヘッド(45)は、ケーシング(21)の内壁に固定されており、駆動軸(33)を回転自在に支持している。また、リアヘッド(45)は、上述の油溜め部(21a)に浸積している。
低段側シリンダ(41a)及び高段側シリンダ(41b)は、筒状に形成されている。低段側シリンダ(41a)の内部には低段側シリンダ室(42a)が、高段側シリンダ(41b)の内部には高段側シリンダ室(42b)がそれぞれ形成されている。つまり、低段側シリンダ室(42a)は、その下側の開放端がリアヘッド(45)に閉塞され、その上側の開放端がミドルプレート(46)に閉塞されている。そして、リアヘッド(45)、ミドルプレート(46)、及び低段側シリンダ(41a)の間に、上記低段側シリンダ室(42a)が形成されている。一方、高段側シリンダ室(42b)は、その下側の開放端がミドルプレート(46)に閉塞され、その上側の開放面がフロントヘッド(44)に閉塞されている。そして、フロントヘッド(44)、ミドルプレート(46)、及び高段側シリンダ(41b)の間に、上記高段側シリンダ室(42b)が形成されている。
また、低段側シリンダ室(42a)には、筒状の低段側ピストン(47a)が設けられている。低段側ピストン(47a)には、上記第1偏心軸部(35)が内嵌している。一方、高段側シリンダ室(42b)には、筒状の高段側ピストン(47b)が設けられている。高段側ピストン(47b)には、上記第2偏心軸部(36)が内嵌している。低段側ピストン(47a)及び高段側ピストン(47b)は、可動部材を構成している。以上のようにして、この圧縮機構(40)では、リアヘッド(45)からミドルプレート(46)に亘って低段側圧縮機構(40a)が設けられ、ミドルプレート(46)からフロントヘッド(44)に亘って高段側圧縮機構(40b)が設けられている。
低段側圧縮機構(40a)及び高段側圧縮機構(40b)は、各ピストン(47a,47b)が各シリンダ室(41a,41b)をそれぞれ揺動するように公転する、いわゆる揺動ピストン型(スイング型)のロータリ圧縮機構で構成されている。低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)とは、基本的な構成は同様となっている。一方、低段側圧縮機構(40a)の低段側シリンダ室(42a)の容積は、高段側圧縮機構(40b)の高段側シリンダ室(42b)の容積よりも大きくなっている。
図3に示すように、低段側圧縮機構(40a)には、ブレード(38)と一対のブッシュ(39,39)が設けられている。上記ブレード(38)は、低段側ピストン(47a)と一体に形成されている。ブレード(38)は、低段側ピストン(47a)の外周面から径方向外側に伸長している。このブレード(38)は、低段側シリンダ室(42a)を低圧側の低圧室(42a-Lp)と高圧側の高圧室(42a-Hp)とに区画している。一対のブッシュ(39,39)は、低段側シリンダ(41a)に形成されるブッシュ孔(56)に嵌合している。各ブッシュ(39,39)は、それぞれ略半円柱状に形成されている。両ブッシュ(39,39)は、その平坦な面同士が互いに向かい合っている。そして、両ブッシュ(39,39)は、その平坦面の間で上記ブレード(38)を進退自在に保持している。また、各ブッシュ(39,39)は、その円弧状の外周面がブッシュ孔(56)の内周面と摺接している。そして、各ブッシュ(39,39)は、ブッシュ孔(56)の軸心を支点としてブッシュ孔(56)に揺動自在に保持されている。以上のような構成のブレード(38)及びブッシュ(39)は、低段側ピストン(47a)の自転を規制するための自転制限機構を構成している。
低段側圧縮機構(40a)には、低段側吸入通路(48a)及び低段側吐出通路(49a)が形成されている。低段側吸入通路(48a)は、低段側シリンダ(41a)に形成されている。低段側吸入通路(48a)の流入端には、上記吸入管(22)が接続されている。低段側吸入通路(48a)の流出端は、低段側シリンダ室(42a)の低圧室(42a-Lp)に開口している。つまり、低段側吸入通路(48a)の流出端は、低段側シリンダ室(42a)の吸入口を構成している。低段側吸入通路(48a)からは、低段側シリンダ室(42a)へ低圧のガス冷媒が供給される。上記低段側吐出通路(49a)は、ミドルプレート(46)に形成されている。低段側吐出通路(49a)の流入端は、低段側シリンダ室(42a)の高圧室(42a-Hp)に開口している。つまり、低段側吐出通路(49a)の流入端は、低段側シリンダ室(42a)の吐出口を構成している。また、低段側吐出通路(49a)の流出端には、ミドルプレート(46)の内部に形成された中間圧室(50)に開口している(図2参照)。更に、低段側吐出通路(49a)の流出開口部には、図示しない吐出弁が設けられている。中間圧室(50)は、低段側圧縮機構(40a)からの吐出冷媒で満たされており、中間圧雰囲気となっている。中間圧室(50)は、上記インジェクション管(24)と連通している。
高段側圧縮機構(40b)には、上記低段側圧縮機構(40a)と同様にして、ブレード及びブッシュが設けられている(図示省略)。また、高段側圧縮機構(40b)には、高段側吸入通路(48b)と高段側吐出通路(49b)が形成されている。高段側吸入通路(48b)の流入端は、上記中間圧室(50)と連通している。高段側吸入通路(48b)の流出端は、高段側シリンダ室(42b)の低圧室に開口している。上記高段側吐出通路(49b)は、フロントヘッド(44)に形成されている。高段側吐出通路(49b)の流入端は、高段側シリンダ室(42b)の高圧室に開口している。高段側吐出通路(49b)の流出端は、ケーシング(21)の内部に開口している。また、高段側吐出通路(49b)の流出開口部には、図示しない吐出弁が設けられている。更に、フロントヘッド(44)の上部には、高段側吐出通路(49b)の流出開口部近傍の騒音を低減するためのマフラ(58)が設けられている(図2参照)。
図4(A)及び図4(B)に示すように、上述した低段側圧縮機構(40a)のリアヘッド(45)には、バイパス孔(62)及び弁体収容部(61)が設けられている。
バイパス孔(62)は、バイパス通路(66)の流入端を構成している。バイパス孔(62)は、その上端が低段側シリンダ室(42a)の下側の内壁面に開口している。また、図3に示すように、バイパス孔(62)は、駆動軸(33)の回転軸(X)とブッシュ孔(56)の軸心を結ぶ直線を基準線とした場合に、この基準線から回転軸(X)を中心として図3の時計回りに約90度を成す直線上に位置している。このバイパス孔(62)は、その径方向外側寄りの一部がリアヘッド(45)に跨るように配置されている。また、バイパス孔(62)は、上記第1偏心軸部(35)よりも径方向外側に位置している。つまり、バイパス孔(62)は、回転軸(X)を中心に偏心回転する第1偏心軸部(35)の外周面の軌跡よりも径方向外側に位置している。従って、低段側圧縮機構(40a)では、第1編心軸部(35)の外周面に供給される潤滑油がバイパス孔(62)に直接入り込んでしまうことがない。
弁体収容部(61)は、リアヘッド(45)の下端から上端近傍に亘って形成されている。弁体収容部(61)内には、上記バイパス孔(62)と同軸の円柱状の空間が形成されている。弁体収容部(61)は、その上端がバイパス孔(62)に臨んでおり、その下端が蓋部材(63)によって封止されている。
弁体収容部(61)内には、弁体(64)が上下方向に変位自在に内嵌している。弁体(64)は、弁体収容部(61)の上側から下側に向かって2段階に外径が拡大するような円柱状に形成されている。つまり、弁体(64)は、上段側の小径部(64a)と中段側の中径部(64b)と下段側の大径部(64c)とを有している。これら小径部(64a)、中径部(64b)、及び大径部(64c)は同軸となっている。
弁体(64)の大径部(64c)は、その外径が弁体収容部(61)の内径とほぼ同じである。つまり、弁体(64)の大径部(64c)は、弁体収容部(61)の内周面に摺接している。そして、弁体収容部(61)は、弁体(64)の大径部(64c)によって、その上側の低圧側空間(61a)とその下側の高圧側空間(61b)とに区画されている。
弁体(64)の小径部(64a)は、その外径がバイパス孔(62)の内径とほぼ同じである。つまり、弁体(64)の小径部(64a)は、バイパス孔(62)に係合してバイパス孔(62)を封止可能に構成されている。また、小径部(64a)の先端は、平坦であり且つリアヘッド(45)の上面と平行となるよう形成されている。また、小径部(64a)の高さは、バイパス孔(62)の深さと一致するか、あるいはバイパス孔(62)の深さよりも短くなっている。
弁体(64)の中径部(64b)は、その外径が弁体収容部(61)の内径よりも小さくなっている。つまり、弁体(64)の中径部(64b)と弁体収容部(61)の内周面との間には、筒状の空間が形成されている。この筒状の空間には、中径部(64b)の周囲を覆うようにしてバネ部材(65)が設けられている。バネ部材(65)は、低圧側空間(61a)において、一端が大径部(64c)と当接し、他端が弁体収容部(61)の天井面と当接するように配置されている。
弁体収容部(61)では、その低圧側空間(61a)に上記バイパス管(28)が接続されている。つまり、低段側シリンダ室(42a)は、バイパス孔(62)及び低圧側空間(61a)を介してバイパス管(28)と連通している。これらバイパス孔(62)、低圧側空間(61a)、及びバイパス管(28)がバイパス通路(66)を構成している。つまり、低圧側空間(61a)は、低段側圧縮機構(40a)の吸入側と繋がっている。一方、高圧側空間(61b)は、高段側圧縮機構(40b)の吐出側と繋がっている。具体的には、蓋部材(63)には、導入通路(29)が形成されている。導入通路(29)は、その下端がケーシング(21)の油溜め部(21a)に開口し、その上端が上記高圧側空間(61b)に開口している。その結果、高圧側空間(61b)には、導入通路(29)を通じて高圧の油が導入されており、弁体(64)の背面にはこの高圧の油が作用している。
以上のようにして、弁体(64)には、その背面側に高段側圧縮機構(40b)の吐出側の圧力が作用し、その先端面側に低圧が作用している。これにより、弁体(64)には、高圧側空間(61b)の高圧と低圧側空間(61a)の低圧との差圧がバイパス通路(66)の閉鎖位置に向かって作用している。一方、上述したバネ部材(65)は、この差圧に抗してバイパス通路(66)の開放位置に向かう反力を弁体(64)に作用させる弁開放手段を構成している。このバネ部材(65)は、空気調和装置(10)の運転条件の変化に伴い冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、弁体(64)が開放位置となるように弁体(64)を付勢している。このような弁体(64)の開閉動作の詳細は後述するものとする。
−空気調和装置の運転動作−
本実施形態に係る空気調和装置(10)の運転動作について説明する。空気調和装置(10)は、冷房運転と暖房運転とが可能に構成されている。
本実施形態に係る空気調和装置(10)の運転動作について説明する。空気調和装置(10)は、冷房運転と暖房運転とが可能に構成されている。
〈冷房運転〉
冷房運転時には、四方切換弁(12)が図1に実線で示す状態に設定される。この状態で回転式圧縮機(20)の電動機(25)に通電すると、回転式圧縮機(20)の運転が開始し、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
冷房運転時には、四方切換弁(12)が図1に実線で示す状態に設定される。この状態で回転式圧縮機(20)の電動機(25)に通電すると、回転式圧縮機(20)の運転が開始し、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
回転式圧縮機(20)で圧縮された冷媒は、吐出管(23)から吐出されて四方切換弁(12)を通り、室外熱交換器(14)へ送られて室外空気へ放熱する。室外熱交換器(14)で放熱した高圧冷媒は、第2膨張弁(17)で減圧されて中間圧冷媒となり気液分離器(18)に流入する。気液分離器(18)に流入した中間圧冷媒は、中間圧ガス冷媒と中間圧液冷媒とに分離される。そのうち気液分離器(18)の底部から流出した中間圧液冷媒は、第1膨張弁(16)で減圧されて低圧液冷媒となり室内熱交換器(15)へ流入する。室内熱交換器(15)では、流入した冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、室内空気が冷却される。室内熱交換器(15)から流出した低圧冷媒は、四方切換弁(12)とアキュームレータ(19)を順に通過して回転式圧縮機(20)へ吸入される。回転式圧縮機(20)に吸入された冷媒は、低段側圧縮機構(40a)、高段側圧縮機構(40b)の順で圧縮される。
また、この冷房運転において、電磁弁(31)を開状態に設定すると、気液分離器(18)内の中間圧ガス冷媒がインジェクション管(24)によって回転式圧縮機(20)の中間圧室(50)へ導入される。中間圧室(50)へ導入された冷媒は、低段側圧縮機構(40a)から吐出された冷媒と共に高段側圧縮機構(40b)で圧縮される。このように、インジェクション管(24)から高段側圧縮機構(40b)の吸入側へ中間圧冷媒を送るようにすると、高段側圧縮機構(40b)の吸入冷媒のエンタルピが低下し、いわゆるエコノマイザ効果により空気調和装置(10)の運転効率が向上する。
〈暖房運転〉
暖房運転時には、四方切換弁(12)が図1に破線で示す状態に切り換えられる。この状態で回転式圧縮機(20)の電動機(25)に通電すると、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
暖房運転時には、四方切換弁(12)が図1に破線で示す状態に切り換えられる。この状態で回転式圧縮機(20)の電動機(25)に通電すると、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
回転式圧縮機(20)で圧縮された冷媒は、吐出管(23)から吐出されて四方切換弁(12)を通り、室内熱交換器(15)へ流入する。室内熱交換器(15)では、流入した冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。室内熱交換器(15)で放熱した冷媒は、第1膨張弁(16)で減圧されて中間圧冷媒となり気液分離器(18)に流入する。気液分離器に流入した中間圧冷媒は、中間圧ガス冷媒と中間圧液冷媒とに分離される。そのうち気液分離器(18)の底部から流出した中間圧液冷媒は、第2膨張弁(17)で減圧されて低圧液冷媒となる。第2膨張弁(17)で減圧された低圧液冷媒は、室外熱交換器(14)へ送られ、室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(14)から流出した低圧冷媒は、四方切換弁(12)とアキュームレータ(19)を順に通過して回転式圧縮機(20)へ吸入される。回転式圧縮機(20)に吸入された冷媒は、低段側圧縮機構(40a)、高段側圧縮機構(40b)の順で圧縮される。
また、この暖房運転においても、電磁弁(31)を開状態に設定すると、気液分離器(18)内の中間圧のガス冷媒が中間圧室(50)へ導入される。中間圧室(50)へ導入された冷媒は、低段側圧縮機構(40a)から吐出された冷媒と共に高段側圧縮機構(40b)で圧縮される。このように、インジェクション管(24)から高段側圧縮機構(40b)の吸入側へ中間圧冷媒を送るようにすると、高段側圧縮機構(40b)の吸入冷媒のエンタルピが低下し、いわゆるエコノマイザ効果により空気調和装置(10)の運転効率が向上する。
−回転式圧縮機の動作−
次に、回転式圧縮機(20)の動作について説明する。この回転式圧縮機(20)は、電動機(25)に通電すると、その電動機(25)で発生する動力によって駆動軸(33)が回転する。その結果、第1及び第2偏心軸部(35,36)は、回転軸(X)に対して所定の偏心量で偏心回転する。これにより、各偏心軸部(35,36)が内嵌する各ピストン(47a,47b)は、各シリンダ(41a,41b)内を偏心回転する。その結果、低段側圧縮機構(40a)及び高段側圧縮機構(40b)では、以下のような圧縮動作が行われる。なお、低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)とでは、基本的には同様の圧縮動作が行われるので、以下には低段側圧縮機構(40a)の圧縮動作について詳細に説明する。
次に、回転式圧縮機(20)の動作について説明する。この回転式圧縮機(20)は、電動機(25)に通電すると、その電動機(25)で発生する動力によって駆動軸(33)が回転する。その結果、第1及び第2偏心軸部(35,36)は、回転軸(X)に対して所定の偏心量で偏心回転する。これにより、各偏心軸部(35,36)が内嵌する各ピストン(47a,47b)は、各シリンダ(41a,41b)内を偏心回転する。その結果、低段側圧縮機構(40a)及び高段側圧縮機構(40b)では、以下のような圧縮動作が行われる。なお、低段側圧縮機構(40a)と高段側圧縮機構(40b)とでは、基本的には同様の圧縮動作が行われるので、以下には低段側圧縮機構(40a)の圧縮動作について詳細に説明する。
〈第1圧縮動作〉
第1圧縮動作は、バイパス通路(66)を閉状態としながら回転式圧縮機(20)を運転するものである。図5(A)に示す位置の低段側ピストン(47a)の偏心回転角度を0度として低段側圧縮機構(40a)の圧縮動作を説明する。駆動軸(33)の回転に伴い図5(A)の位置の低段側ピストン(47a)が時計回りに偏心回転すると、低段側ピストン(47a)と低段側シリンダ(41a)の当接位置が時計回りに変位する。この当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過すると、低段側シリンダ室(42a)内に低圧室(42a-Lp)が形成される(図5(B)参照)。低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が大きくなるに連れて、低段側吸入通路(48a)から低圧室(42a-Lp)へ冷媒が吸入されていく(図5(B)〜図5(H)参照)。低圧室(42a-Lp)には、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が360度(即ち、0度)になるまで冷媒が吸入される。
第1圧縮動作は、バイパス通路(66)を閉状態としながら回転式圧縮機(20)を運転するものである。図5(A)に示す位置の低段側ピストン(47a)の偏心回転角度を0度として低段側圧縮機構(40a)の圧縮動作を説明する。駆動軸(33)の回転に伴い図5(A)の位置の低段側ピストン(47a)が時計回りに偏心回転すると、低段側ピストン(47a)と低段側シリンダ(41a)の当接位置が時計回りに変位する。この当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過すると、低段側シリンダ室(42a)内に低圧室(42a-Lp)が形成される(図5(B)参照)。低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が大きくなるに連れて、低段側吸入通路(48a)から低圧室(42a-Lp)へ冷媒が吸入されていく(図5(B)〜図5(H)参照)。低圧室(42a-Lp)には、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が360度(即ち、0度)になるまで冷媒が吸入される。
その後、図5(A)の状態から、低段側ピストン(47a)が僅かに回転すると、低段側ピストン(47a)と低段側シリンダ(41a)の当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過する。低段側圧縮機構(40a)では、この当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過した時点で、低圧室(42a-Lp)における冷媒の閉じ込みが完了する。そして、この状態から駆動軸(33)が更に公転すると、低圧室(42a-Lp)は高圧室(42a-Hp)となって冷媒の圧縮を開始する。低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が大きくなるに連れて、高圧室(42a-Hp)の容積が縮小して冷媒が圧縮される。そして、高圧室(42a-Hp)内の冷媒の圧力が中間圧室(50)の冷媒の圧力を上回ると、吐出弁が開状態になり冷媒が低段側吐出通路(49a)から中間圧室(50)へ吐出される。冷媒の吐出は、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が360度になるまで続く。
一方、高段側圧縮機構(40b)では、高段側ピストン(47b)の偏心回転に伴って、中間圧室(50)内の冷媒が高段側吐出通路(49b)を介して高段側シリンダ室(42b)内に吸入される。そして、高段側シリンダ室(42b)内の冷媒の圧力がケーシング(21)内の空間の冷媒の圧力を上回ると、吐出弁が開状態になり、冷媒が高段側吐出通路(49b)からケーシング(21)内の空間へ吐出される。この冷媒は、吐出管(23)から冷媒回路(11)へ吐出され、上述した冷凍サイクルに利用される。
〈第2圧縮動作〉
第2圧縮動作は、バイパス通路(66)を開状態としながら回転式圧縮機(20)を運転するものである。具体的には、第2圧縮動作では、三方切換弁(13)が図1の破線で示す状態に設定される。その結果、上述のように弁体収容部(61)内では、バネ部材(65)によって弁体(64)が下方に押し下げられる(図4(B)参照)。このため、第2圧縮動作では、バイパス孔(62)が開放された状態となる。以上のようにして、バイパス通路(66)が開放されると、低段側シリンダ室(42a)は、バイパス通路(66)を介して低段側圧縮機構(40a)の吸入側(吸入管(22))と連通した状態となる。
第2圧縮動作は、バイパス通路(66)を開状態としながら回転式圧縮機(20)を運転するものである。具体的には、第2圧縮動作では、三方切換弁(13)が図1の破線で示す状態に設定される。その結果、上述のように弁体収容部(61)内では、バネ部材(65)によって弁体(64)が下方に押し下げられる(図4(B)参照)。このため、第2圧縮動作では、バイパス孔(62)が開放された状態となる。以上のようにして、バイパス通路(66)が開放されると、低段側シリンダ室(42a)は、バイパス通路(66)を介して低段側圧縮機構(40a)の吸入側(吸入管(22))と連通した状態となる。
偏心回転角度が0度の状態の低段側ピストン(47a)が、僅かに回転すると、低段側ピストン(47a)と低段側シリンダ(41a)の当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過する。その結果、上記第1圧縮動作と同様に、低段側シリンダ室(42a)内に低圧室(42a-Lp)が形成され、低段側吸入通路(48a)から該低圧室(42a-Lp)へ冷媒が吸入される。そして、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が再び0度となり、その状態からさらに偏心回転して、低段側ピストン(47a)と低段側シリンダ(41a)の当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過すると、その時点で、低圧室(42a-Lp)における冷媒の吸入が完了すると共に、低圧室(42a-Lp)が高圧室(42a-Hp)となる。
ここで、第2圧縮動作では、バイパス通路(66)は開状態となっている。このため、低段側ピストン(47a)が更に偏心回転しても、高圧室(42a-Hp)では冷媒の圧縮が行われず、高圧室(42a-Hp)内の冷媒はバイパス孔(62)からバイパス通路(66)を介して吸入管(22)へ排出される。この冷媒の排出動作は、低段側ピストン(47a)がバイパス孔(62)を塞ぐ状態(偏心回転角度が約90度)になるまで続く。そして、低段側ピストン(47a)がバイパス孔(62)を塞いだ時点で、冷媒の排出が終了すると同時に、高圧室(42a-Hp)における冷媒の閉じ込みが完了する。この状態から駆動軸(33)がさらに回転すると、高圧室(42a-Hp)における冷媒の圧縮が開始され、高圧室(42a-Hp)内の冷媒の圧力が中間圧室(50)の冷媒の圧力を上回ると、吐出弁が開状態になり冷媒が低段側吐出通路(49a)から中間圧室(50)へ吐出される。冷媒の吐出は、低段側ピストン(47a)の偏心回転角度が360度に達するまで続く。高段側圧縮機構(40b)における冷媒の圧縮動作は、上記第1圧縮動作と同様である。以上のように、上述の第1圧縮動作では、低段側ピストン(47a)と低段側シリンダ(41a)の当接位置が低段側吸入通路(48a)の開口部を通過した時点で低段側圧縮機構(40a)における冷媒の閉じ込みが完了する。一方、第2圧縮動作では、低段側ピストン(47a)がバイパス孔(62)を塞いだ時点で低段側圧縮機構(40a)における冷媒の閉じ込みが完了する。
〈弁体の自動開閉動作〉
この回転式圧縮機(20)では、空気調和装置(10)の運転条件の変化に応じて、上記第1圧縮動作と第2圧縮動作とが自動的に切り換えられる。つまり、弁体(64)は、空気調和装置(10)の運転条件の変化に伴って変動する冷媒回路(11)の高低差圧の変化に応じて開閉状態が切り換えられる。
この回転式圧縮機(20)では、空気調和装置(10)の運転条件の変化に応じて、上記第1圧縮動作と第2圧縮動作とが自動的に切り換えられる。つまり、弁体(64)は、空気調和装置(10)の運転条件の変化に伴って変動する冷媒回路(11)の高低差圧の変化に応じて開閉状態が切り換えられる。
具体的には、例えば冷媒回路(11)の高低差圧が比較的大きい運転条件では、ケーシング(21)内の高圧冷媒の圧力が高くなる。このような条件では、油溜め部(21a)から高圧側空間(61b)内の導入された高圧の油によって弁体(64)に作用する圧力も高くなる。すると、弁体(64)がバネ部材(65)の付勢力に抗して上方に押し上げられ、バイパス孔(62)を閉鎖する位置まで変位する(図4(A)参照)。その結果、回転式圧縮機(20)では、上述した第1圧縮動作が行われる。
一方、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件では、ケーシング(21)内の高圧冷媒の圧力、ひいては弁体収容部(61)の高圧側空間(61b)内の圧力も低くなる。そして、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、弁体(64)はバネ部材(65)に押し下げられ、バイパス孔(62)を開放する位置まで変位する(図4(B)参照)。その結果、回転式圧縮機(20)では、上述した第2圧縮動作が行われる。
このように、この回転式圧縮機(20)では、冷媒回路(11)の高低差圧の変化に応じてバイパス通路(66)を自動的に開閉させることで、低段側圧縮機構(40a)の閉じ込み容積(実質的な吸入容積)を変化させるようにしている。これにより、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積Vlに対する高段側圧縮機構(40b)の吸入容積Vhの比(吸入容積比=Vh/Vl)が自動的に変化する。即ち、低段側圧縮機構(40a)の低段側ピストン(47a)と、高段側圧縮機構(40b)の高段側ピストン(47b)とは、同じ駆動軸(33)に連結されているので、駆動軸(33)の回転速度を変化させるだけでは、両圧縮機構(40a,40b)の吸入容積比(Vh/Vl)を変化させることができない。しかしながら、本実施形態の回転式圧縮機(20)では、上述した第1圧縮動作と第2圧縮動作とを自動的に切り換えることで、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積Vl、ひいては上記吸入容積比(Vh/Vl)が適宜変更される。その結果、この回転式圧縮機(20)では、空気調和装置(10)の運転条件に応じた最適な吸入容積比での運転が可能となる。
具体的には、例えば冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件になると、低段側圧縮機構(40a)で冷媒の圧縮行程のほとんどが行われることになる。このような場合には、高段側圧縮機構(40b)では冷媒がほとんど圧縮されないので、低段側圧縮機構(40a)の圧縮トルクの変動幅が、高段側圧縮機構(40b)の圧縮トルクの変動幅に対して相対的に大きくなり、振動や騒音が発生してしまうことある。また、このように冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件において、低段側圧縮機構(40a)で圧縮行程のほとんどが行われると、低段側圧縮機構(40a)の吐出冷媒の圧力(即ち、中間圧力)が比較的高くなってしまう。このような場合には、上記インジェクション管(24)から高段側圧縮機構(40b)の吸入側へ送られる中間圧冷媒の量が減少し、上述したようなエコノマイザ効果を充分得ることができないこともある。
このため、本実施形態の回転式圧縮機(20)は、このように冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、上述の如く弁体(64)が自動的にバイパス通路(66)を開放させ、第2圧縮動作が行われる。その結果、低段側圧縮機構(40a)の吸込容積Vlが減少し、上記吸入容積比(Vh/Vl)が大きくなるので、冷媒は各圧縮機構(40a,40b)でバランス良く圧縮されることになる。このため、上述のような各圧縮機構(40a,40b)の圧縮トルクの変動幅が平均化され、振動や騒音の低減が図られる。また、このようにすると、低段側圧縮機構(40a)の吐出冷媒の圧力が低下するので、その分だけインジェクション管(24)から高段側圧縮機構(40b)の吸入側へ送られる中間圧冷媒の量が多くなる。従って、比較的高低差圧が小さい運転条件においても、所望のエコノマイザ効果が得られ、空気調和装置(10)の運転効率が向上する。
−実施形態1の効果−
上記実施形態1では、弁体(64)に低圧側空間(61a)と高圧側空間(61b)との差圧を作用させることで、冷媒回路(11)の高低差圧の変化に連動するように、弁体(64)によるバイパス通路(66)の開閉位置を切り換えるようにしている。このため、従来のもののように弁体(64)の開閉を切り換えるために三方弁等を設けたり、この三方弁を適宜制御したりすることなく、弁体(64)の開閉位置を自動的に切り換えることができる。従って、この回転式圧縮機をシンプルに構成することができ、コスト削減、あるいはメンテナンスの簡便化を図ることができる。
上記実施形態1では、弁体(64)に低圧側空間(61a)と高圧側空間(61b)との差圧を作用させることで、冷媒回路(11)の高低差圧の変化に連動するように、弁体(64)によるバイパス通路(66)の開閉位置を切り換えるようにしている。このため、従来のもののように弁体(64)の開閉を切り換えるために三方弁等を設けたり、この三方弁を適宜制御したりすることなく、弁体(64)の開閉位置を自動的に切り換えることができる。従って、この回転式圧縮機をシンプルに構成することができ、コスト削減、あるいはメンテナンスの簡便化を図ることができる。
また、上記実施形態では、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、低段側圧縮機構(40a)の弁体(64)をバイパス通路(66)の開放位置に自動的に変位させるようにしている。このため、このように高低差圧が小さい運転条件において、低段側圧縮機構(40a)の吸入容積Vlを小さくさせて、上記吸入容積比(Vh/Vl)を自動的に増大できる。従って、低段側圧縮機構(40a)の圧縮トルクの変動幅と高段側圧縮機構(40b)の圧縮トルクの変動幅を速やかに平均化させることができ、振動や騒音の防止を図ることができる。
また、上記実施形態では、蓋部材(63)に導入通路(29)を貫通させ高圧側空間(61b)とケーシング(21)の内部空間とを連通させている。このため、高段側圧縮機構(40b)の吐出冷媒を高圧側空間(61b)へ導入するための配管等を設けることなく、高圧側空間(61b)内に高圧を作用させることができる。更に、導入通路(29)から高圧側空間(61b)内へ油を導入させ、この油の高圧を利用して弁体(64)を変位させるようにしている。このように弁体(64)を油で変位させるようにすると、閉鎖位置の弁体(64)の外周面と弁体収容部(61)の内周面との間の隙間を油によってシールすることができる。このため、比較的高温の高圧冷媒が、弁体(64)周りの隙間を通じて低段側圧縮機構(40a)の圧縮室内へ入り込んでしまうことが防止でき、圧縮室内の冷媒が上記高圧冷媒によって加熱されてしまうことを未然に回避できる。従って、いわゆる冷媒の吸入加熱により、低段側圧縮機構(40a)の容積効率が低下してしまうのを防止できる。
−実施形態1の変形例−
上記実施形態1において、図6に示すように、弁体収容部(61)の高圧側空間(61b)の側方に導入通路(29)を形成するようにしても良い。この導入通路(29)は、一端が弁体収容部(61)の内周面に開口し、他端がリアヘッド(45)の外周面に開口している。この変形例においても、弁体収容部(61)における弁体(64)の背面側に油溜め部(21a)の高圧の油が導入される。従って、上記実施形態1と同様、冷媒回路(11)の高低差圧の変化に応じて、弁体(64)を自動的に開閉させることができ、空気調和装置(10)の運転条件に応じて第1圧縮動作と第2圧縮動作とを切り換えることができる。
上記実施形態1において、図6に示すように、弁体収容部(61)の高圧側空間(61b)の側方に導入通路(29)を形成するようにしても良い。この導入通路(29)は、一端が弁体収容部(61)の内周面に開口し、他端がリアヘッド(45)の外周面に開口している。この変形例においても、弁体収容部(61)における弁体(64)の背面側に油溜め部(21a)の高圧の油が導入される。従って、上記実施形態1と同様、冷媒回路(11)の高低差圧の変化に応じて、弁体(64)を自動的に開閉させることができ、空気調和装置(10)の運転条件に応じて第1圧縮動作と第2圧縮動作とを切り換えることができる。
《実施形態2》
図7に示すように、実施形態2の回転式圧縮機(20)では、バイパス通路(66)、弁体収容部(61)、及び弁体(64)が高段側圧縮機構(40b)側に設けられている。具体的には、実施形態2のバイパス通路(66)は、一端が高段側シリンダ室(42b)と接続し、他端が上記中間圧室(50)と接続している。バイパス通路(66)のバイパス孔(62)は、圧縮室の上側の内壁面に開口している。一方、弁体収容部(61)は、このバイパス孔(62)に臨むようにフロントヘッド(44)に形成されている。
図7に示すように、実施形態2の回転式圧縮機(20)では、バイパス通路(66)、弁体収容部(61)、及び弁体(64)が高段側圧縮機構(40b)側に設けられている。具体的には、実施形態2のバイパス通路(66)は、一端が高段側シリンダ室(42b)と接続し、他端が上記中間圧室(50)と接続している。バイパス通路(66)のバイパス孔(62)は、圧縮室の上側の内壁面に開口している。一方、弁体収容部(61)は、このバイパス孔(62)に臨むようにフロントヘッド(44)に形成されている。
弁体収容部(61)には、柱状の弁体(64)が上下に変位自在に内嵌している。この弁体(64)は、その下部に小径部(64a)が形成され、その上部に大径部(64c)が形成されている。弁体(64)の小径部(64a)はバイパス孔(62)に係合してバイパス孔(62)を封止可能に構成されている。弁体(64)の大径部(64c)は、弁体収容部(61)の内周面に摺接している。弁体収容部(61)内は、弁体(64)によって、その上側の中間圧側空間(61c)とその下側の高圧側空間(61b)とに区画されている。
上記中間圧側空間(61c)には、バイパス分岐管(28a)が接続されている。バイパス分岐管(28a)は、一端が弁体収容部(61)の内周面に開口し、他端が上記バイパス通路(66)に接続されている。これにより、中間圧側空間(61c)は、高段側圧縮機構(40b)の吸入側と繋がっている。また、中間圧側空間(61c)には、一端が弁体(64)の上側の背面に接続され、他端が蓋部材(63)に接続されるバネ部材(65)が設けられている。一方、上記高圧側空間(61b)は、弁体(64)の小径部(64a)の外周面と弁体収容部(61)の内周面の間に形成されている。この高圧側空間(61b)は、バイパス孔(62)と区画される一方、導入通路(29)と繋がっている。導入通路(29)は、一端が弁体収容部(61)の内周面に開口し、他端がフロントヘッド(44)の外周面に開口している。つまり、導入通路(29)の他端は、高圧冷媒で満たされるケーシング(21)の内部空間に臨んでいる。これにより、高圧側空間(61b)は、高段側圧縮機構(40b)の吐出側と繋がっている。
以上のようにして、弁体(64)には、大径部(64c)の下面側に高圧が作用し、その背面側に中間圧が作用している。これにより、弁体(64)は、高圧側空間(61b)の高圧と中間圧側空間(61c)の中間圧との差圧がバイパス通路(66)の開放位置に向かって作用している。一方、上述したバネ部材(65)は、この差圧に抗してバイパス通路(66)の閉鎖位置に向かう反力を弁体(64)に作用させる弁閉鎖手段を構成している。このバネ部材(65)は、空気調和装置(10)の運転条件の変化に伴い冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、弁体(64)が閉鎖位置となるように弁体(64)を付勢している。
実施形態2の回転式圧縮機(20)においても、空気調和装置(10)の運転条件の変化に応じて、上記第1圧縮動作と第2圧縮動作とが自動的に切り換えられる。つまり、弁体(64)は、空気調和装置(10)の運転条件の変化に伴って変動する冷媒回路(11)の高低差圧の変化に応じて開閉状態が切り換えられる。
具体的には、例えば冷媒回路(11)の高低差圧が比較的大きい運転条件では、ケーシング(21)内の高圧冷媒の圧力、ひいては弁体収容部(61)の高圧側空間(61b)内の圧力も高くなる。このような条件では、弁体(64)がバネ部材(65)の付勢力に抗して上方に押し上げられ、バイパス孔(62)を開放する位置まで変位する(図8(A)参照)。その結果、回転式圧縮機(20)では、上述した第2圧縮動作が行われる。
一方、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件では、ケーシング(21)内の高圧冷媒の圧力、ひいては弁体収容部(61)の高圧側空間(61b)内の圧力も低くなる。そして、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、弁体(64)はバネ部材(65)に押し下げられ、バイパス孔(62)を閉鎖する位置まで変位する(図8(B)参照)。その結果、回転式圧縮機(20)では、上述した第1圧縮動作が行われる。
以上のように、実施形態2では、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、弁体(64)によってバイパス孔(62)を自動的に閉鎖するようにしている。その結果、高低差圧が比較的小さい運転条件においては、高段側圧縮機構(40b)の吸入容積Vhが大きくなり、上記吸入容積比(Vh/Vl)が自動的に大きくなる。その結果、上記実施形態1と同様、各圧縮機構(40a,40b)の圧縮トルクの変動幅が平均化されて振動や騒音の低減が図られると共に、インジェクション管(24)から高段側圧縮機構(40b)の吸入側へ送られる中間圧冷媒の量が多くなり、上記エコノマイザ効果が向上する。
−実施形態2の効果−
上記実施形態2では、弁体(64)に中間圧側空間(61c)と高圧側空間(61b)との差圧を作用させることで、冷媒回路(11)の高低差圧の変化に連動するように、弁体(64)によるバイパス通路(66)の開閉位置を切り換えるようにしている。このため、本実施形態においても、従来のもののように弁体(64)の開閉を切り換えるために三方弁等を設けたり、この三方弁を適宜制御したりすることなく、弁体(64)の開閉位置を自動的に切り換えることができる。従って、この回転式圧縮機をシンプルに構成することができ、コスト削減、あるいはメンテナンスの簡便化を図ることができる。
上記実施形態2では、弁体(64)に中間圧側空間(61c)と高圧側空間(61b)との差圧を作用させることで、冷媒回路(11)の高低差圧の変化に連動するように、弁体(64)によるバイパス通路(66)の開閉位置を切り換えるようにしている。このため、本実施形態においても、従来のもののように弁体(64)の開閉を切り換えるために三方弁等を設けたり、この三方弁を適宜制御したりすることなく、弁体(64)の開閉位置を自動的に切り換えることができる。従って、この回転式圧縮機をシンプルに構成することができ、コスト削減、あるいはメンテナンスの簡便化を図ることができる。
また、上記実施形態2では、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、高段側圧縮機構(40b)の弁体(64)をバイパス通路(66)の閉鎖位置に自動的に変位させるようにしている。このため、このように高低差圧が小さい運転条件において、高段側圧縮機構(40b)の吸入容積Vhを大きくさせて、上記吸入容積比(Vh/Vl)を自動的に増大できる。従って、上記実施形態1と同様、高段側圧縮機構(40a)の圧縮トルクの変動幅と高段側圧縮機構(40b)の圧縮トルクの変動幅を速やかに平均化させることができ、自動的に振動や騒音の防止を図ることができる。
なお、上記実施形態2においては、弁体収容部(61)における弁体(64)の背面側に高段側圧縮機構(40b)の吸入側の圧力を作用させているが、これに代わって低段側圧縮機構(40a)の吸入側の圧力を作用させても良い。この場合には、弁体(64)を高圧と低圧との差圧により変位させ、弁体(64)の開閉位置を自動的に切り換えることができる。
《実施形態3》
実施形態3の回転式圧縮機(20)は、図9に示すように、1つの圧縮機構(80)が駆動軸(33)に連結される単段式の圧縮機構(80)を備えるものである。また、この圧縮機構(80)は、スクロール式の圧縮機構で構成されている。
実施形態3の回転式圧縮機(20)は、図9に示すように、1つの圧縮機構(80)が駆動軸(33)に連結される単段式の圧縮機構(80)を備えるものである。また、この圧縮機構(80)は、スクロール式の圧縮機構で構成されている。
回転式圧縮機(20)は、密閉状のケーシング(21)を備えている。ケーシング(21)には、吸入管(22)と吐出管(23)とがそれぞれ貫通して接続されている。ケーシング(21)内には、その上側寄りに上記スクロール圧縮機構(80)が設けられ、その下部には駆動軸(33)を回転させるための電動機(図示省略)が設けられている。スクロール圧縮機構(80)は、固定部材を構成する固定スクロール(81)と、可動部材を構成する可動スクロール(82)とを備えている。
固定スクロール(81)は、ケーシング(21)の上部の内壁に固定されている。固定スクロール(81)には、その外周側に上記吸入管(22)が接続する吸入口(81a)が形成され、その軸心側に吐出口(81b)が形成されている。また、吐出口(81b)の上方には、スクロール圧縮機構(80)の吐出冷媒で満たされる高圧導入室(81d)が形成されている。固定スクロール(81)の下側には渦巻き状の固定側ラップ(81c)が形成されている。
可動スクロール(82)は、その下端側に駆動軸(33)の偏心軸部(35)が嵌合しており、駆動軸(33)に対して偏心回転するように構成されている。可動スクロール(82)は、固定スクロール(81)に向かい合う鏡板(82a)と、鏡板(82a)の上面に形成される渦巻き状の可動側ラップ(82c)とが形成されている。スクロール圧縮機構(80)では、固定スクロール(81)の固定側ラップ(81c)と可動スクロール(82)の可動側ラップ(82c)とが互いに歯合することで、固定スクロール(81)と可動スクロール(82)との間に圧縮室が形成される。このスクロール圧縮機構(80)では、可動スクロール(82)の偏心回転運動に伴い、吸入管(22)を介して可動スクロール(82)の外周側から圧縮室へ冷媒が吸入される。この冷媒は、圧縮室で圧縮されながら固定スクロール(81)の軸心側へ送り込まれ、吐出口(81b)から吐出される。
実施形態3では、バイパス通路を構成するバイパス孔(62)が固定スクロール(81)に形成されている。具体的には、バイパス孔(62)は、最外周側の可動側ラップ(82d)の先端に臨むように形成されている。そして、バイパス孔(62)は、最外周側の可動側ラップ(82d)の外側の空間(即ち、スクロール圧縮機構(80)の吸入側)と、最外周側の可動側ラップ(82d)の内側の空間、(即ち、圧縮室の圧縮途中の空間)とに跨るように形成されている。これにより、このスクロール圧縮機構(80)では、圧縮室の冷媒の一部がバイパス孔(62)を介して吸入側へ戻されるようになっている。
また、固定スクロール(81)には、弁体収容部(61)と弁体(64)が設けられている。弁体収容部(61)の内部は、その下端がバイパス孔(62)に臨んでおり、その上端が高圧導入室(81d)と接続している。弁体収容部(61)内には、弁体(64)が上下に変位自在に内嵌している。そして、弁体収容部(61)内は、弁体(64)によって、その下側の低圧側空間(61a)とその上側の高圧側空間(61b)とに区画されている。また、低圧側空間(61a)には、弁体(64)を上側に付勢するようにバネ部材(65)が設けられている。
以上のようにして、弁体(64)には、その背面側に高圧が作用し、その先端面に低圧が作用している。これにより、弁体(64)は、高圧側空間(61b)の高圧と低圧側空間(61a)の低圧との差圧がバイパス通路(66)の閉鎖位置に向かって作用している。一方、上述したバネ部材(65)は、この差圧に抗してバイパス通路(66)の開放位置に向かう反力を弁体(64)に作用させる弁開放手段を構成している。このバネ部材(65)は、空気調和装置(10)の運転条件の変化に伴い冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、弁体(64)が開放位置となるように弁体(64)を付勢している。
実施形態3の回転式圧縮機(20)においても、空気調和装置(10)の運転条件の変化に応じて、上記第1圧縮動作と第2圧縮動作とが自動的に切り換えられる。つまり、弁体(64)は、空気調和装置(10)の運転条件の変化に伴って変動する冷媒回路(11)の高低差圧の変化に応じて開閉状態が切り換えられる。
具体的には、例えば冷媒回路(11)の高低差圧が比較的大きい運転条件では、スクロール圧縮機構(80)の吐出圧力、ひいては弁体収容部(61)の高圧側空間(61b)内の圧力も高くなる。このような条件では、弁体(64)がバネ部材(65)の付勢力に抗して上方に押し下げられ、バイパス孔(62)を閉鎖する位置まで変位する(図9(A)参照)。その結果、スクロール圧縮機構(80)では、上述した第1圧縮動作と同様にして、冷媒の全量が圧縮室で圧縮される。
一方、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的小さい運転条件では、スクロール圧縮機構(80)の吐出圧力、ひいては弁体収容部(61)の高圧側空間(61b)内の圧力も低くなる。そして、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、弁体(64)はバネ部材(65)に押し上げられ、バイパス孔(62)を開放する位置まで変位する(図9(B)参照)。その結果、スクロール圧縮機構(80)では、上述した第2圧縮動作と同様にして、圧縮室内の冷媒の一部が吸入側へ戻される。その結果、この回転式圧縮機(20)では、高低差圧が比較的小さい運転条件において、スクロール圧縮機構(80)の吸入容積が自動的に小さくなり、この回転式圧縮機(20)の冷媒循環量が機械的に抑制される。
−実施形態3の効果−
上記実施形態3では、弁体(64)に低圧側空間(61a)と高圧側空間(61b)との差圧を作用させることで、冷媒回路(11)の高低差圧の変化に連動するように、弁体(64)の開閉位置を切り換えるようにしている。このため、本実施形態においても、従来のもののように弁体(64)の開閉を切り換えるために三方弁等を設けたり、この三方弁を適宜制御したりすることなく、弁体(64)の開閉位置を自動的に切り換えることができる。従って、この回転式圧縮機をシンプルに構成することができ、コスト削減、あるいはメンテナンスの簡便化を図ることができる。
上記実施形態3では、弁体(64)に低圧側空間(61a)と高圧側空間(61b)との差圧を作用させることで、冷媒回路(11)の高低差圧の変化に連動するように、弁体(64)の開閉位置を切り換えるようにしている。このため、本実施形態においても、従来のもののように弁体(64)の開閉を切り換えるために三方弁等を設けたり、この三方弁を適宜制御したりすることなく、弁体(64)の開閉位置を自動的に切り換えることができる。従って、この回転式圧縮機をシンプルに構成することができ、コスト削減、あるいはメンテナンスの簡便化を図ることができる。
また、上記実施形態3では、単段式の回転式圧縮機(20)において、冷媒回路(11)の高低差圧が所定値以下になると、弁体(64)を開放位置に変位させるようにしている。このため、冷媒回路(11)の高低差圧が比較的運転条件においては、圧縮機構(80)の吸入容積を自動的に小さくして回転式圧縮機の冷媒循環量を機械的に抑制できる。従って、この回転式圧縮機の運転周波数を著しく低下させることなく、モータ効率の高い周波数で運転を行うことができる。
なお、上記実施形態3では、本発明を単段のスクロール圧縮機構(80)に適用したものであるが、同様にして、単段のロータリ圧縮機構等の他の圧縮機構に本発明を適用するようにしても良い。また、駆動軸(33)に低段側と高段側のスクロール圧縮機構を互いに連結し、上記実施形態1や実施形態2と同様にして、弁体(64)の開閉位置を切り換えることで、両圧縮機構の吸入容積比を自動的に変化させるよういしても良い。
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態の圧縮機構は、固定部材と、固定部材との間に圧縮室を形成して偏心回転する可動部材とを備えたものであれば、如何なる構成のものであっても良い。具体的には、この圧縮機構として、ローリングピストン型のロータリ圧縮機構を採用しても良いし、環状のシリンダ室を有するシリンダと、シリンダ室に設けられる環状のピストンとが相対的に偏心回転することで、複数の圧縮室を同時に拡縮する圧縮機構に採用しても良い。
また、バイパス通路(66)のバイパス孔(62)は、各シリンダ室(42a,42b)に臨む内壁面であれば、如何なる面に形成しても良い。具体的には、バイパス孔(62)をミドルプレート(46)の上端面や下端面に開口させても良いし、各シリンダ(41a,41b)の内周面に開口させても良い。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明は、圧縮室内の冷媒の一部をバイパス通路を介して圧縮機構の吸入側へ戻すことが可能な回転式圧縮機について有用である。
11 冷媒回路
20 回転式圧縮機
21 ケーシング
21a 油溜め部
33 駆動軸
40a 低段側圧縮機構(圧縮機構)
40b 高段側圧縮機構(圧縮機構)
41a 低段側シリンダ(固定部材)
41b 高段側シリンダ(固定部材)
44 フロントヘッド(固定部材)
45 リアヘッド(固定部材)
46 ミドルプレート(固定部材)
47a 低段側ピストン(可動部材)
47b 高段側ピストン(可動部材)
61 弁体収容部
61a 低圧側空間
61b 高圧側空間
61c 中間圧側空間
64 弁体
65 バネ部材(弁開放手段,弁閉鎖手段)
66 バイパス通路
80 スクロール圧縮機構(圧縮機構)
81 固定スクロール(固定部材)
82 可動スクロール(可動部材)
20 回転式圧縮機
21 ケーシング
21a 油溜め部
33 駆動軸
40a 低段側圧縮機構(圧縮機構)
40b 高段側圧縮機構(圧縮機構)
41a 低段側シリンダ(固定部材)
41b 高段側シリンダ(固定部材)
44 フロントヘッド(固定部材)
45 リアヘッド(固定部材)
46 ミドルプレート(固定部材)
47a 低段側ピストン(可動部材)
47b 高段側ピストン(可動部材)
61 弁体収容部
61a 低圧側空間
61b 高圧側空間
61c 中間圧側空間
64 弁体
65 バネ部材(弁開放手段,弁閉鎖手段)
66 バイパス通路
80 スクロール圧縮機構(圧縮機構)
81 固定スクロール(固定部材)
82 可動スクロール(可動部材)
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