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JP2008188620A - 鋳造方法および鋳型 - Google Patents

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JP2008188620A
JP2008188620A JP2007024489A JP2007024489A JP2008188620A JP 2008188620 A JP2008188620 A JP 2008188620A JP 2007024489 A JP2007024489 A JP 2007024489A JP 2007024489 A JP2007024489 A JP 2007024489A JP 2008188620 A JP2008188620 A JP 2008188620A
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sheet
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Akishi Matsuzaki
晃士 松崎
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Abstract

【課題】断熱性のシートを利用することにより、簡単な構造でキャビティ内の溶湯に指向性凝固を生じさせることができる鋳造方法または鋳型を提供する。
【解決手段】鋳型材料から形成される鋳型10は、キャビティCを形成する壁面Sを有し、キャビティCに注入された溶湯によりタイヤ成形用金型のピース金型を成形する。鋳型10には、壁面Sを構成する天井面24の一部を被覆すると共に前記鋳型材料よりも熱伝導率が小さい断熱性のシート30が設けられる。孔31が設けられたシート30により、天井面24は、シート30に設けられた孔31を通じてキャビティCに露出していて溶湯が接触する露出部24aと、シートに被覆されてキャビティに露出しておらず溶湯が接触しない被覆部24bとに二分される。そして、シート30によりキャビティC内の溶湯に指向性凝固を生じさせる。
【選択図】図3

Description

本発明は、鋳型の壁面により形成されるキャビティ内の溶湯に指向性凝固を生じさせるための鋳造方法および鋳型に関し、該鋳造方法および鋳型は、例えばタイヤ成形用金型の成形に使用される。
鋳造において、引け巣の発生を防止するために、鋳型のキャビティに注入された溶湯に指向性凝固を生じさせるものは知られている。(例えば、特許文献1参照)
特開平4−228252号公報
ところで、指向性凝固を生じさせるために、キャビティを形成する鋳型の壁面に塗型剤が塗布されて塗型が形成される場合には、該塗型の形状が鋳造の度に変化するために、頻繁に塗布を繰り返す必要がある。しかも、再塗布が行われるときには、残っていた塗型剤を除去しなければならないこともある。さらに、塗型剤の塗布の際には、塗布の範囲や塗型の厚みが設定されたとおりになるようにしなければならない。このことは、鋳型により形成される鋳造品の形状が複雑なときや異なる鋳造品が形成されるときは、一層手間がかかる作業になる。
このため、塗型の形成には手間がかかり、コストの増加を招来する。しかも、鋳型として石膏鋳型が使用される場合、該石膏鋳型に塗型を形成することはできない。
また、指向性凝固を生じさせるために鋳型に冷却装置や加熱装置が設けられる場合には、鋳造装置が大型化するうえ、冷却装置および加熱装置のために設備費が大幅に増加する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1〜11記載の発明は、断熱性のシートを利用することにより、簡単な構造でキャビティ内の溶湯に指向性凝固を生じさせることができる鋳造方法または鋳型を提供することを目的とする。そして、請求項2,3,5記載の発明は、さらに、鋳造品の種類に応じた指向性凝固の形態の変更を容易にすることを目的とし、請求項6,7記載の発明は、さらに、シートに起因する鋳造品の製品面での成形精度の低下を防止することを目的とする。
請求項1記載の発明は、鋳型の壁面により形成されるキャビティに溶湯が注入されて鋳造品が成形される鋳造方法において、前記壁面の一部を前記鋳型よりも熱伝導率が小さい断熱性のシートで被覆することにより、指向性凝固を生じさせる鋳造方法である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の鋳造方法において、前記シートの形状変更により前記指向性凝固の形態が変更されるものである。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の鋳造方法において、前記形状変更は、前記シートに設けられる孔または切欠きの形状または位置の変更により行われるものである。
請求項4記載の発明は、鋳型材料から形成される鋳型であって、キャビティを形成する壁面を有し、前記キャビティに注入された溶湯により鋳造品を成形する鋳型において、前記壁面の一部を被覆すると共に前記鋳型材料よりも熱伝導率が小さい断熱性のシートが設けられ、前記シートにより指向性凝固を生じさせる鋳型である。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の鋳型において、前記シートには孔または切欠きが設けられ、前記孔または前記切欠きを通じて前記壁面がキャビティに露出するものである。
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項記載の鋳造方法または鋳型において、前記壁面は、前記鋳造品の製品面を成形する主面と、前記鋳造品の非製品面を成形する補助面とから構成され、前記シートは前記主面および前記補助面のうちで前記補助面のみに設けられ、前記シートは、前記補助面において前記キャビティを挟んで前記主面と対向する対向部分に配置されるものである。
請求項7記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項記載の鋳造方法または鋳型において、前記鋳型は、前記鋳造品の製品面を成形する主面を有する石膏鋳型と、前記鋳造品の非製品面を成形する補助面を有する金型とを含み、前記壁面は前記主面と前記補助面とから構成され、前記シートは前記主面および前記補助面のうちで前記補助面のみに設けられ、前記シートは、前記補助面において前記キャビティを挟んで前記主面を上方から覆う天井面に配置されるものである。
請求項8記載の発明は、請求項7記載の鋳造方法または鋳型において、前記シートは、前記天井面の面積の70%〜95%を被覆するものである。
請求項9記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項記載の鋳造方法または鋳型において、前記シートは、前記壁面を被覆している範囲の全体で実質的に一様な厚みを有し、前記厚みは0.1mm〜1.0mmであるものである。
請求項10記載の発明は、請求項1から9のいずれか1項記載の鋳造方法または鋳型において、前記シートはセラミックファイバー製であるものである。
請求項11記載の発明は、請求項1から10のいずれか1項記載の鋳造方法または鋳型において、前記鋳型は低圧鋳造用の鋳型であり、前記鋳造品はタイヤ成形用金型であるものである。
請求項1記載の発明によれば、キャビティを形成する壁面において、シートに被覆されてキャビティから遮蔽された被覆部では、溶湯から鋳型への伝熱量が抑制される一方、シートに被覆されることなくキャビティに露出している露出部では、溶湯から鋳型への伝熱量が大きいので、露出部において溶湯の冷却が促進され、露出部に向かって指向性凝固が生じる。このため、シートを利用して、壁面に露出部および被覆部を形成することにより、シートを配置するという簡単な構造で、キャビティ内の溶湯に指向性凝固を生じさせることができ、引け巣の発生が防止または抑制される。また、シートは予め用意されたものを壁面に取り付ければよいので、その作業が容易になり、また、シートの交換も容易であり、さらに鋳型の大型化および設備費の大幅な増加が回避されて、コストが削減される。
請求項2記載の事項によれば、鋳造品が異なる場合にも、該鋳造品に対応したシートに交換することにより、指向性凝固の形態が変更される。この結果、鋳造品に関与する鋳型以外の鋳型をそのまま使用することができ、しかも簡単な作業で鋳造品に最適な指向性凝固を生じさせることができて、コストの削減に寄与する。
請求項3記載の事項によれば、鋳造品が異なる場合にも、シートに設けられる孔または切欠きの形状または位置を変更することにより、鋳造品に最適な指向性凝固を生じさせることができて、コストの削減に寄与する。
請求項4記載の発明によれば、鋳型にシートを設けることにより、請求項1記載の発明と同様の効果が奏される。
請求項5記載の事項によれば、露出部の位置や大きさをシートの孔または切欠きの形状や位置に応じて簡単に変更することができるので、鋳造品が異なる場合にも、シートに設けられる孔または切欠きの形状または位置を変更することにより、鋳造品に最適な指向性凝固を生じさせることができる。
請求項6記載の事項によれば、シートは、鋳造品において最も重要な面である製品面を形成する主面に設けられることなく、補助面に設けられるため、製品面の形状がシートにより影響を受けないので、シートに起因して、鋳造品の製品面での成形精度が低下することが防止される。
請求項7記載の事項によれば、鋳型が石膏鋳型を含み、鋳造品において最も重要な面である製品面を形成する主面が石膏鋳型に設けられる場合にも、シートが該石膏鋳型にキャビティを挟んで対向する天井面に配置されることにより、製品面の形状がシートにより影響を受けないので、シートに起因して、鋳造品の製品面での成形精度が低下することが防止される。
請求項8記載の事項によれば、石膏鋳型の主面と対向する天井面が、その面積の70%〜95%の範囲でシートにより被覆されることにより、適切な温度勾配が得られて、良好な指向性凝固を生じさせることができる。
請求項9記載の事項によれば、0.1mm〜1.0mmの範囲でシート30の厚みを変更することで断熱性の程度を変更することができるので、適切な温度勾配が得られて、良好な指向性凝固を生じさせることができる。
請求項10記載の事項によれば、シートが耐熱性および断熱性および耐熱性に優れたセラミックファイバー製であることにより、良好な指向性凝固を得ながら、シートの耐久性を向上させることができる。
請求項11記載の事項によれば、シートを利用した低圧用鋳造により、低コストでタイヤ成形用金型を成形することができる。
以下、本発明の実施形態を図1〜図6を参照して説明する。
本発明が適用された鋳造方法に使用される鋳型10(図3参照)は、図1,図2に示されるように、鋳造品としてのタイヤ成形用金型1、より具体的には該金型1の構成部品である後述するピース金型4を成形するためのものである。金型1は、タイヤT(図1に二点鎖線で示される。)の製造において、グリーンタイヤに加硫が施される際に使用される。
複数の金型に分割される分割型の金型1は、この実施形態では、金型1により成形される製品としてのタイヤTの周方向に複数に分割される円環状のセクタ金型2(いわゆるセクタモールド)と、セクタ金型2を挟んで下方および上方にそれぞれ配置される円環状の1対の補助金型6,7とから構成される。そして、セクタ金型2は、タイヤTの周方向に沿って環状に配列された複数の分割金型3から構成される。
各分割金型3は、タイヤTのトレッド部T1を成形する1以上の、ここでは複数のピース金型4と、該ピース金型4を保持するホルダ5とから構成される。各ピース金型4はトレッド部T1のトレッド面を成形する成形面4aを有し、該成形面4aには、該トレッド面にトレッドパターンを成形するための突出部4eが設けられる。なお、トレッドパターンは、説明の便宜上、単純化されている。
以下、図3,図4を参照して、ピース金型4を鋳造するための鋳型10および鋳造方法について説明する。
鋳造装置としての低圧鋳造装置Eは、溶湯が注入されるキャビティCを形成する壁面Sを有すると共に鋳造品としてのピース金型4(図1,図2参照)を成形する鋳型10と、キャビティCに溶湯を供給する溶湯供給装置50とを備える。ここで、溶湯は、溶融状態の金属、例えばアルミニウム合金である。
溶湯供給装置50は、高温状態に維持されている溶湯を収容する収容部51と、収容部51内の溶湯をキャビティCに導く給湯路を形成する1対の給湯管52と、収容部51内の溶湯をキャビティCに圧送するための圧送手段としての加圧気体供給装置53とを備える。
収容部51は加熱装置により加熱されている。1対の給湯管52はそれぞれ鋳型10の1対の湯口15に接続されている。1対の湯口15は、後述する枠金型13に設けられてキャビティCに開口する貫通孔により構成される。また、加圧気体供給装置53は、加圧気体を収容部51内の溶湯に作用させて、該溶湯を加圧する。そして、加圧された溶湯が各給湯管52を通じてキャビティCに供給される。
低圧鋳造用の鋳型10は、ピース金型4の成形面4a(図1,図2参照)を成形するための主面S1を有する主鋳型としての石膏鋳型11と、ピース金型4の非成形面4b(図1参照)を成形する補助面S2を有する補助鋳型としての金型12,13,14とから構成される。この成形面4aは、鋳型10により成形される鋳造品(この実施形態ではピース金型4である。)の製品面、すなわち鋳造品において最も重要な面である。このとき、非成形面4bは非製品面である。
金型12,13,14は、石膏鋳型11が固定される下鋳型としての下金型12と、下金型12から立ち上がると共に該下金型12に載置された石膏鋳型11を水平方向で囲む枠鋳型としての枠金型13と、石膏鋳型11の上方に配置されてキャビティCを挟んで上方から石膏鋳型11を覆う上鋳型としての上金型14とから構成される。平面視で矩形状の枠金型12が一体成形される下金型13は、基台(図示されず)上に固定され、上金型14は、該基台に締め付けられて固定されるホルダ(図示されず)に保持されて枠金型13に結合される。
ここで、鋳型10を形成する材料である鋳型材料は、石膏鋳型11については石膏であり、金型12,13,14については鉄合金である。
キャビティCを形成する鋳型10の壁面Sは、主面S1と補助面S2とに二分され、石膏鋳型11が有する壁面21および各金型12,13,14がそれぞれ有する壁面である底面22、周面23、天井面24により構成される。
具体的には、主面S1は石膏鋳型11の壁面21により構成される。主面S1には、ピース金型4の突出部4e(図1,図2参照)を成形するための複数条の溝21eが、石膏鋳型11の長手方向に間隔をおいて設けられる。また、補助面S2は、下金型12において石膏鋳型11が接触している壁面以外の壁面である鋳型10の底面22と、枠金型13において石膏鋳型11が接触している壁面以外の壁面である鋳型10の周面23と、上金型14においてキャビティCを挟んで主面S1および底面22を上方から覆う壁面である鋳型10の天井面24とにより構成される。天井面24は、キャビティCを挟んで主面S1(すなわち壁面21)および底面22と上下方向で対向する。
そして、鋳型10には、壁面Sの一部を被覆することにより、キャビティC内の溶湯に指向性凝固を生じさせる1以上の断熱性のシート30、この実施形態では1枚のシート30が設けられる。より具体的には、主面S1および補助面S2のうちで補助面S2のみに設けられるシート30は、補助面S2である天井面24においてキャビティCを挟んで主面S1と対向する対向部分24eに配置されて、該天井面24の一部を被覆する。そして、シート30は、耐熱性を有する断熱材、例えばセラミックから形成され、ここではセラミックファイバーから形成される。このため、シート30の熱伝導率は、天井面24を有する上金型14をはじめ、下金型12および枠金型13のそれぞれの熱伝導率よりも小さい。そして、平面視でキャビティCの形状に応じた形状、ここでは四角形状を有するシート30は、その全周縁部30cが枠金型13と上金型12とに挟持された状態で、天井面24に貼着されるなどして、天井面24に密着した状態で取り付けられる。
シート30は、天井面24を被覆している範囲の全体で実質的に一様な厚みを有し、該厚みは0.1mm〜1.0mmである。ここで、「実質的に一様な厚み」とは、シート30が奏する断熱性の観点で、厚みが厳密に一様である場合に比べて有意な差異が生じない範囲で、厚みが変化する場合も含まれることを意味する。さらに、シート30の形成材料を変更することにより、良好な指向性凝固を生じさせるための熱伝導率を設定することができる。なお、図において、シート30の厚みは、説明の便宜上、誇張されて描かれている。
シート30には開口部としての1以上の孔31、この実施形態では1つの孔31が設けられ、孔31を通じて天井面24がキャビティCに露出する。それゆえ、天井面24は、孔31を通じてキャビティCに露出していて溶湯が接触する露出部24aと、露出部24a以外の部分であってシート30により被覆されてキャビティCに露出しておらず溶湯が接触しない被覆部24bとに二分される。そして、被覆部24bでは溶湯から上金型12,13,14への伝熱量が抑制される一方で、露出部24aではその伝熱量が被覆部24bよりも著しく大きい。
孔31は、枠金型13の各湯口15においてキャビティCに開口する出口15eからキャビティCにおいて最も離れた最遠位置に露出部24aが少なくとも形成される位置に設けられる。このため、この実施形態では、孔31は、長手方向で互いに対向する位置にある両出口15eに対して、長手方向でキャビティCを二等分する中央位置に設けられる。そして、孔31は、平面視で長手方向に直交する方向である石膏鋳型11の幅方向で、石膏鋳型11の全幅に渡って四角形状に形成される。さらに、シート30は、天井面24の面積の95%〜70%を被覆するように設けられ、したがって天井面24における露出部24a(または孔31)の大きさは、天井面24の面積に対して5%〜30%の面積となるように設定される。
そして、溶湯供給装置50から供給される溶湯が湯口15を経てキャビティCに注入されてピース金型4が成形される。このとき、キャビティC内において、溶湯は、出口15eが位置する下部から充填方向としての上部に向かって次第に充填されてゆき、最後に、各湯口15から等距離にある露出部24aに達する。
このため、キャビティC内の溶湯は、露出部24aでは天井面24、したがって上金型14を通じて放熱するので凝固しやすい一方、被覆部24bでは、シート30により放熱が抑制されているので、露出部24a付近に比べて凝固しにくい。このため、シート30により、前記最遠位置にある露出部24aから湯口15に向かうにつれて溶湯の温度が低下する温度勾配が生じ、キャビティC内の溶湯には、前記最遠位置にある露出部24aから湯口15に向かって凝固が進行する指向性凝固が生じて、引け巣の発生が防止または抑制される。
また、各溝21eが各湯口15よりも露出部24aに近い位置に設けられていることにより、各突出部4e(図1,図2参照)では鋳造過程における早い段階で凝固が生じるので、ピース金型4の突出部4e付近での引け巣の発生が防止または抑制される。
さらに、異なる形状のピース金型4が成形される場合には、該ピース金型4に対応した形状が異なるシート30に交換することにより、指向性凝固の形態が変更される。その際、シート30の形状変更は、孔31の形状または位置を変更すること、または複数枚のシートが使用される場合にそれらシートの配置により行われる。
次に、鋳型10を具体化した鋳型によりピース金型4を鋳造した実施例について、表1を参照して説明する。
シート30は、からなるセラミックファイバー製であり、厚みは0.25mmおよび0.5mmである。また、セラミックファイバー製シート30として、SCペーパー(新日化サーマルセラミックス株式会社の製品の商品名。)が使用された。
また、シート30に設けられる孔31の形状および位置が変更された例として、平面視で長方形状であり長手方向の長さが400mmの天井面24の一部を被覆するシート30には、40mmおよび80mmの長手方向幅Wの四角形状の孔31が、長手方向で天井面24の中央位置に、該天井面24を長手方向に二等分する直線L(図4参照)に対称に設けられた。したがって、天井面24に対する露出部24a(すなわち孔31)の大きさは、それぞれ、天井面24の面積の10%(すなわち、シート30は天井面24の面積の90%を被覆する。)および20%(すなわち、シート30は天井面24の面積の80%を被覆する。)である。
そして、各実施例において、上金型14の温度を、従来の設定温度である通常温度の350°C、該通常温度よりも低温の300°C、および、該通常温度よりも高温の400°Cにした場合について、ピース金型4の各突出部4e(図1,図2参照)付近での引け巣の発生の有無が調べられた。
なお、キャビティCに注入される溶湯の温度は約700°Cである。
また、表1には、比較のために、シート30が設けられていない点を除いて鋳型10と同一構造の鋳型が使用されたときの例が、比較例1〜3として示されている。
[表1]
Figure 2008188620
実施例1,2,4,7では、引け巣が発生しないことが判明した。特に、実施例2では最良の結果が得られた。また、実施例3,5,6,8,9では、僅かな引け巣の発生が見られたものの、ピース金型4の使用上、問題とならない程度のものであった。
シート30の厚みが薄い実施例2,4,7および天井面24がシート30により被覆される面積が小さい実施例1,2,6,7において、より良好な結果が得られたのは、長手方向に間隔をおいて成形された複数の突出部4eについて、露出部24aから出口15eに向かうにつれて温度が次第に低下する温度勾配が、より滑らかに変化する形態で実現されたことによると考えられる。
また、上金型14の温度が低いほど良好な結果が得られたのは、露出部24aでの冷却がより促進されることによると考えられる。
このように、シート30の厚み、シート30の形状および天井面24(または上金型14)の温度を最適化することにより、ピース金型4での引け巣の発生が防止または抑制される。
これに対して、比較例1〜3では、ピース金型4の使用に適さない程度の引け巣が発生した。
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
前記鋳型材料から形成される鋳型10であって、キャビティCを形成する壁面Sを有し、キャビティCに注入された溶湯によりタイヤ成形用金型1のピース金型4を成形する鋳型10に、壁面Sを構成する天井面24の一部を被覆すると共に前記鋳型材料よりも熱伝導率が小さい断熱性のシート30が設けられ、該シート30により指向性凝固を生じさせることにより、キャビティCを形成する天井面24において、シート30に被覆されてキャビティCから遮蔽された被覆部24bでは、溶湯から上金型14への伝熱量が抑制される一方、シート30に被覆されることなくキャビティCに露出している露出部24aでは、溶湯から上金型14への伝熱量が大きいので、露出部24aにおいて溶湯の冷却が促進され、露出部24aに向かって指向性凝固が生じる。このため、シート30を利用して、天井面24に露出部24aおよび被覆部24bを形成することにより、シート30を配置するという簡単な構造で、キャビティC内の溶湯に指向性凝固を生じさせることができ、引け巣の発生が防止または抑制される。また、シート30は予め用意されたものを天井面24に取り付ければよいので、その作業が容易になり、また、シート30の交換も容易であり、さらに鋳型10、ひいては鋳造装置Eの大型化、および設備費の大幅な増加が回避されて、コストが削減される。
シート30の形状変更により指向性凝固の形態が変更されることにより、1枚のシート30の形状を変更したり、形状が異なる複数枚のシートの配置などにより、ピース金型4が異なる場合にも、該ピース金型4に対応したシートに交換することにより、指向性凝固の形態が変更される。この結果、ピース金型4に関与する鋳型である石膏鋳型11以外の鋳型である金型12,13,14をそのまま使用することができ、しかも簡単な作業でピース金型4に最適な指向性凝固を生じさせることができて、コストの削減に寄与する。
シート30の形状変更が、シート30に設けられる孔31の形状または位置の変更により行われることにより、露出部24aの位置や大きさをシート30の孔31の形状や位置に応じて簡単に変更することができるので、ピース金型4が異なる場合にも、シート30に設けられる孔31の形状または位置を変更することにより、ピース金型4に最適な指向性凝固を生じさせることができて、コストの削減に寄与する。
鋳型10は、ピース金型4の成形面4aを成形する主面S1を有する石膏鋳型11と、ピース金型4の非成形面4bを成形する補助面S2を有する金型12,13,14とを含み、壁面Sは主面S1と補助面S2とから構成され、シート30は主面S1および補助面S2のうちで補助面S2のみに設けられ、シート30は、補助面S2においてキャビティCを挟んで主面S1を上方から覆う天井面24の対向部分24eに配置されることにより、鋳型10が石膏鋳型11を含み、ピース金型4において最も重要な面である成形面4aを形成する主面S1が石膏鋳型11に設けられる場合にも、シート30が該石膏鋳型11にキャビティCを挟んで対向する天井面24に配置されるため、成形面4aの形状がシート30により影響を受けないので、シート30に起因して、ピース金型4の成形面4aでの成形精度が低下することが防止される。
鋳型10は低圧鋳造用の鋳型であり、該鋳型10により成形される鋳造品がタイヤ成形用金型1のピース金型4であることにより、シート30を利用した低圧用鋳造により、低コストでタイヤ成形用金型1のピース金型4を成形することができる。
シート30は天井面24の面積の70%〜95%を被覆することにより、適切な温度勾配が得られて、良好な指向性凝固を生じさせることができる。
シート30は、天井面24を被覆している範囲の全体で実質的に一様な厚みを有し、該厚みは0.1mm〜1.0mmであることにより、0.1mm〜1.0mmの範囲でシート30の厚みを変更することで断熱性の程度を変更することができるので、適切な温度勾配が得られて、良好な指向性凝固を生じさせることができる。
シート30はセラミックファイバー製であることにより、シート30が耐熱性および断熱性および耐熱性に優れたセラミックファイバー製であるので、良好な指向性凝固を得ながら、シート30の耐久性を向上させることができる。
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
鋳型により成形される鋳造品は、ピース金型以外のタイヤ成形用金型の構成部材、例えば成形面を有する分割金型やセクタ金型であってもよく、さらにタイヤ成形用金型以外の鋳造品を成形するものであってもよい。また、鋳型は金型のみにより構成されてもよい。
シート30に設けられる孔の形状は、図5に示される孔32のように、石膏鋳型11の長手方向に幅が変化して、湯口15の出口15eに近づくほど幅が狭くなる形状であってもよい。
露出部24aは、シート30により形成される開口部として、シート30に設けられた孔31により形成される場合のほかに、図6に示されるように、複数のシート30,30が使用される場合に、別のシート30との協働によりシート30に設けられた切欠き33により開口部が形成されてもよい。さらに、湯口の数が1つである場合など、湯口の位置によっては、1枚のシートの切欠きにより開口部が形成されてもよい。
さらに、孔や切欠きが設けられていない複数枚のシートの配置により、該複数枚のシートの協働で、露出部を形成する開口部が形成されてもよい。その場合、シートの形状は異なっていてもよい。
また、一様な厚みのシートを部分的に重ねることにより、位置に応じて断熱性の程度を変化させて、指向性凝固の形態を変更することもできる。
鋳造方法は、低圧鋳造でなく、重力鋳造であってもよい。
本発明が適用された鋳型により形成されたピース金型を備えるタイヤ成形用金型の断面図である。 図1のタイヤ成形用金型を構成するセクタ金型の一部を示す斜視断面図である。 本発明が適用された鋳造方法に使用される鋳型を備える鋳造装置の模式図であり、鋳型については図4のIII−III線断面図である。 図3のIV−IV線での鋳型の平面図である。 図3の鋳型に設けられるシートの変形例を示す図4に相当する図である。 図3の鋳型に設けられるシートの別の変形例を示す図4に相当する図である。
符号の説明
1…タイヤ成形用金型、4…ピース金型、10…鋳型、11…石膏鋳型、12,13,14…金型、24…天井面、30,30,30…シート、31,32…孔、33…切欠き、50…溶湯供給装置、
T…タイヤ、E…鋳造装置、S…壁面、C…キャビティ、S1…主面、S2…補助面。

Claims (11)

  1. 鋳型の壁面により形成されるキャビティに溶湯が注入されて鋳造品が成形される鋳造方法において、
    前記壁面の一部を前記鋳型よりも熱伝導率が小さい断熱性のシートで被覆することにより、指向性凝固を生じさせることを特徴とする鋳造方法。
  2. 前記シートの形状変更により前記指向性凝固の形態が変更されることを特徴とする請求項1記載の鋳造方法。
  3. 前記形状変更は、前記シートに設けられる孔または切欠きの形状または位置の変更により行われることを特徴とする請求項2記載の鋳造方法。
  4. 鋳型材料から形成される鋳型であって、キャビティを形成する壁面を有し、前記キャビティに注入された溶湯により鋳造品を成形する鋳型において、
    前記壁面の一部を被覆すると共に前記鋳型材料よりも熱伝導率が小さい断熱性のシートが設けられ、前記シートにより指向性凝固を生じさせることを特徴とする鋳型。
  5. 前記シートには孔または切欠きが設けられ、前記孔または前記切欠きを通じて前記壁面がキャビティに露出することを特徴とする請求項4記載の鋳型。
  6. 前記壁面は、前記鋳造品の製品面を成形する主面と、前記鋳造品の非製品面を成形する補助面とから構成され、前記シートは前記主面および前記補助面のうちで前記補助面のみに設けられ、前記シートは、前記補助面において前記キャビティを挟んで前記主面と対向する対向部分に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の鋳造方法または鋳型。
  7. 前記鋳型は、前記鋳造品の製品面を成形する主面を有する石膏鋳型と、前記鋳造品の非製品面を成形する補助面を有する金型とを含み、前記壁面は前記主面と前記補助面とから構成され、前記シートは前記主面および前記補助面のうちで前記補助面のみに設けられ、前記シートは、前記補助面において前記キャビティを挟んで前記主面を上方から覆う天井面に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の鋳造方法または鋳型。
  8. 前記シートは、前記天井面の面積の70%〜95%を被覆することを特徴とする請求項7記載の鋳造方法または鋳型。
  9. 前記シートは、前記壁面を被覆している範囲の全体で実質的に一様な厚みを有し、前記厚みは0.1mm〜1.0mmであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の鋳造方法または鋳型。
  10. 前記シートはセラミックファイバー製であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の鋳造方法または鋳型。
  11. 前記鋳型は低圧鋳造用の鋳型であり、前記鋳造品はタイヤ成形用金型であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の鋳造方法または鋳型。
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