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JP2008186689A - 走査形電子顕微鏡 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明の目的は、電子ビームの試料に到達するエネルギーを減少させる減速電界形成手段を備えた走査電子顕微鏡において、高効率のBSEの選択検出を可能とする走査形電子顕微鏡の提供にある。
【解決手段】
減速電界形成手段を備えた走査形電子顕微鏡において、電子を検出するための検出器を備え、当該検出器は、前記減速電界形成手段によって加速されるSEの軌道外であって、当該SEの軌道に比べて、電子ビーム光軸より離間した位置に、電子を受ける部分を備えるように構成される。
【選択図】図2

Description

本発明は、試料に電子ビームを走査し、当該走査個所から放出される電子を検出する走査形電子顕微鏡に係り、特に、後方散乱電子、或いは二次電子を検出するのに好適な走査形電子顕微鏡に関するものである。
走査形電子顕微鏡は、電子源から放出された電子を加速し、静電レンズ、或いは磁界形レンズにて集束させ、細い電子ビーム(一次電子線)とし、当該電子ビームを試料上で走査することによって試料から放出される電子を検出し、当該検出信号強度を、電子ビームの走査と同期して表示装置上に表示することによって、試料像を形成する装置である。
電子ビームを試料に照射することによって、試料から放出される電子は広いエネルギー分布を持つ。試料に入射した一次電子線の一部は、試料表面の原子により弾性散乱される。これは後方散乱電子(Backscattered Electron:BSE、以下の説明では反射電子と称することもある)と呼ばれ、その大部分は電子ビームとほぼ同じエネルギーを持つことが知られている。
また、電子ビームの一部は試料内の原子と相互作用し、試料中の電子が運動エネルギーを得て試料から放出される。これは二次電子(Secondary Electron:SE)と呼ばれ、その大部分は、50eV以下、平均的には10eV程度のエネルギーを有することが知られている。
試料から放出される電子の内、BSEは試料の組成情報等を有しており、走査形電子顕微鏡には、BSEを選択的に検出することによる組成分析等を行うというニーズがある。特許文献1,2,3、及び4にはBSEを選択的に検出、或いはSEとBSEを弁別する走査形電子顕微鏡が説明されている。
特許文献1には、BSEのクロスオーバー付近に絞りを配置すると共に、当該絞りと電子源との間に検出器を配置することで、BSE中心の信号を検出する構成が説明されている。
特許文献2には、電子ビームの軸外に配置された検出器に、二次電子を導くために、検出器の周囲に10kV程度の正電圧を印加する構成が説明されている。
このように構成することで、SEは強電界によって検出器に導かれるが、エネルギーの高いBSEはそれ程、軌道を曲げられることなく、電子源方向に向かって直進する。
更に、特許文献3には、磁界形の対物レンズによって、軌道変更を受けたBSEの軌道上に、二次電子変換電極を配置し、当該二次電子変換電極への印加電圧を切り替えること等により、SEとBSEの検出を切り替えることが説明されている。
特許文献4には、レンズの集束作用を利用して、SEとBSEの軌道を分離すると共に、電子ビームの光軸を中心として、内側に配置されるBSE検出器と、外側に配置されるSE検出器によって、BSE,SEのそれぞれを検出する技術が説明されている。
特許文献5には、試料に負電圧を印加することによって、電子ビームのランディングエネルギー(試料に電子ビームが到達するときのエネルギー)を減速させる技術が説明されている。更に当該文献には、対物レンズより上方(電子源側)に配置される検出器を用いて、BSEを選択的に検出する技術が説明されている。BSEを検出するための検出器には、負の電圧が印加されるため、エネルギーの低いSEは試料側に追い返され、BSEが選択的に検出される。
なお、特許文献6にも、試料に負電圧を印加することによって、電子ビームのランディングエネルギーを減速させる技術が説明されている(以下、リターディング技術と称することもある)。このような技術によれば、対物レンズを通過する電子ビームのエネルギーを高い状態に保った状態で、試料に到達する電子ビームのエネルギーを低下させることができるため、装置の高分解能化と試料への低ダメージ化の両立を実現することが可能となる。
特開2004−221089号公報 特開2002−324510号公報 国際公開番号WO00/19482号公報 特開平8−273569号公報 特表平9−507331号公報 特開平9−171791号公報
特許文献1〜5に開示の技術によれば、SE或いはBSEの選択的、或いは合成した検出が可能となるが、以下のような問題がある。
特許文献1に開示の技術によれば、BSEのクロスオーバー付近に絞りを配置することで、そこを通過するBSEと、絞りに衝突するその他の電子との分離を行っている。しかしながら、BSEの放出方向は、多岐に亘り、電子ビームの開き角外に放出されるBSEも多い。電子ビーム光軸から離れた角度に放出されるBSEの収束点は、ビーム光軸に沿った角度に放出されるBSEの収束点とは異なることになるため、小径の絞りを用いて、BSEを選択的に検出する場合、その検出量は低下する。
一方、検出効率の低下を補うために大きな径の絞りを用いると、SEの通過をも許容してしまうことになるため、BSEの選択的検出という本来の目的を達成できないことになる。
特許文献2及び特許文献3の開示によれば、電界や磁界の作用によって、SEとBSEの軌道を分離することが説明されているが、特許文献6に説明されているようなリターディング技術を採用した場合、SEが高加速化されることになるため、BSEとのエネルギー差を利用した軌道弁別が困難となり、結果としてSE/BSEの弁別検出が困難になるという問題がある。
更に、特許文献4には、レンズの集束作用によるSEとBSEの分離技術について説明されているが、発明者らの実験によれば、SEの軌道は、BSEの軌道より外側を通ることはなかった。特に、静電レンズ(例えばリターディング技術等)を用いた場合、試料から放出される電子の速度は、初速ベクトルと、静電レンズによる加速ベクトルが重畳された値となるため、電子の進行方向の角度分布が圧縮される。
SEは特に、静電レンズによる加速ベクトルが支配的になり、再び減速するまでは、ビーム光軸から大きく離れることはない。例えば、SEの運動エネルギーを10eV、静電レンズが形成する電位差を1500Vとした場合、ビーム光軸に垂直な方向に散乱されたSEは静電レンズを通り越した時点で、ビーム光軸から0.4 度の方向に進むことが速度ベクトルの加算により算出できた。
即ち、SEはビーム光軸を中心として非常に狭い角度範囲を通過することになるため、特許文献4に説明されているような検出器の配置では、SEとBSEの弁別検出が困難となるという問題がある。
特許文献5によれば、検出器の検出面を負にバイアスすることによって、電子ビーム光軸に近い軌道を通る比較的高アングルの放出角を持つBSEを検出する技術が説明されている。
しかしながら、検出面に試料に印加する負電圧と同等の電圧を印加することになるため、当該電圧印加によって形成される電界が、その近傍を通過する電子ビームの軌道に、悪影響を与える可能性がある。更に、検出器の検出面と電子ビーム軌道との間に、電界の漏洩を遮断するシールド部材を配置することも考えられるが、シールド部材を設けるための空間分,検出面を小さくする必要があり、検出効率が低下するという問題がある。また、構造が複雑になるという問題もある。
本発明の目的は、電子ビームの対物レンズ内の通過エネルギーを高めると共に、試料に到達するエネルギーを減少させる減速電界形成手段を備えた走査電子顕微鏡において、高効率のBSE、或いはSEの選択検出を可能とする走査形電子顕微鏡の提供にある。
上記目的を達成するための、本発明の一態様では、減速電界形成手段を備えた走査形電子顕微鏡において、電子を検出するための検出器を備え、当該検出器は、前記減速電界形成手段によって加速されるSEの軌道外であって、当該SEの軌道に比べて、電子ビーム光軸より離間した位置に、電子を受ける部分を備えるように構成される。
減速電界によって、SEは電子ビーム光軸近傍に集中することになるため、このSEの軌道外であって、SEの外側の軌道を通過するBSEを選択的に受ける部分を備えた検出器を設けることによって、BSEを選択的且つ高効率に検出することが可能となる。
減速電界形成技術は、装置の高分解能化を実現できることができる反面、上述のようにSEの軌道を光軸近傍に集中させてしまうという問題がある。SEの信号量は、BSEの信号量より多いため、一点に集中したSEが検出されてしまうと、BSEの情報が失われてしまう可能性がある。
上記本発明の一態様では、SEが光軸中心に集中し、BSEがその外側を通過するという現象を逆に利用し、集中したSEの通過軌道外であって、SEの外側の軌道を通過するBSEを選択的に検出することによって、高効率のBSEの選択的検出を可能としている。
また、本発明の他の一態様によれば、減速電界形成手段を備えた走査形電子顕微鏡において、試料から放出された電子を受ける部分を複数備え、当該電子を受ける部分を、検出する電子の種類に応じて、使い分ける機構を備えた走査形電子顕微鏡を提案する。
上述のように、減速電界形成手段を備えた走査形電子顕微鏡では、SEが電子ビーム光軸に集中する傾向がある。そのために、SEの情報に阻害されることなく、BSEの検出効率を高めるためには、上述の通り、集中したSEの通過軌道外であって、SEの外側の軌道を通過するBSEを選択的に受ける部分を持つ検出器を備えることで実現できる。
このようなBSEの選択的検出が可能な装置構成において、SEを検出するために、上記BSEを受ける部分より内周側に、SEを受ける部分を配置する。このような構成によれば、減速電界によって、光軸近傍に集中するSEを高効率に検出することが可能となる。更に、SEを受ける面を小さくできるため、反面、BSEの検出可能領域を大きくとることができ、SEに比べて、信号量の少ないBSEを高効率に検出することが可能となる。
上記本発明の一態様によれば、減速電界形成手段を備えた走査電子顕微鏡において、高効率のBSEの選択的検出が可能となる。また、上記本発明の他の一態様によれば、減速電界形成手段を備えた走査電子顕微鏡において、必要に応じて、BSE検出とSE検出の切り替えが可能となると共に、BSE,SEの選択的検出を高効率に行い得る走査電子顕微鏡の提供が可能となる。
図1は、走査形電子顕微鏡の概略を説明する図であり、レンズギャップが下方(試料側)に向かって開放されている対物レンズ(セミインレンズ)を採用した構成を説明するものである。
また、試料に負電圧を印加して対物レンズ−試料間で一次電子線を減速する減速法を併用した走査形電子顕微鏡において、対物レンズより電子源側に一次電子線光軸を中心とした内周,外周の環状の電極板とビーム光軸からずらした位置に配置する検出器を持ち、さらに内周,外周の電極板に印加する電圧を変えられる機構をもった例を示すものである。
本例ではセミインレンズ型の対物レンズで構成された例を示したが、レンズの形状はセミインレンズ型に限らず効果は同じである。
電子源1より放出された一次電子線2(電子ビームと称することもある)は二段に配置された偏向器3a,3bによって走査され、対物レンズ4によって、試料上に集束される。また、試料6には図示しない試料ステージを経由して、減速電圧印加電源5より負電圧が印加される。減速電界は、静電レンズとしても機能するため、一次電子線2は、対物レンズ4が発生する磁界と、減速電圧印加電源5によってもたらされる電界の重畳作用により、試料6上に集束される。
また、対物レンズは接地電位になっているため、一次電子線2は減速電圧印加電源5によって対物レンズと試料の間に発生した電界により減速され、対物レンズを通過したときよりも低速で試料に照射される。
試料6に対する一次電子線2の照射によって、試料6からは二次電子7および反射電子8が放出される。二次電子7のエネルギーは50eV以下で平均的には10eV程度である。散乱強度分布はcosθ に比例するとされている。θは試料表面と垂直となる線(或いは電子ビーム光軸)となす角である。二次電子7は対物レンズと試料の間に発生した電界により加速される。本例では減速電圧印加電源5によって試料に印加する電圧を−1500Vとおくが、印加電圧を変更しても効果は同じである。
二次電子7は1500eVから1550eV、平均的には1510eV程度のエネルギーを持って対物レンズより上方に導かれる。このとき、二次電子7の速度は、対物レンズと試料の間に発生した電界での加速によるビーム光軸方向の速度と、試料上で発生した時の速度との加算である。従って、ビーム光軸と垂直方向の速度成分は試料上で発生した時の速度のうちビーム光軸と垂直方向の速度成分を維持しているのみで、平均的には10
eV相当の速度が最大である。
速度加算による最大の開き角は本例では0.4 度となる。対物レンズ4で作られる磁場により全体としては収束方向の力を受けて進行し、検出電極9に到達する。このSEの軌道の外側(電子ビーム光軸(電子ビームが偏向を受けないときの理想軌道)から見て外側)に、BSEを検出するための部材を配置する例について、説明する。
検出電極9は内周部9aと外周部9bで構成されており、試料6から放出された電子を受ける部分に相当する。本例では、電子の衝突によって、更に二次電子を発生させる二次電子変換電極を検出電極9として採用する例について、説明をするが、これに限られることはなく、例えばマイクロチャンネルプレートの検出面(或いは電子信号の増幅部材)を直接的に配置するようにしても良い。
また、内周部9aと外周部9b間は電気的に絶縁され、環状に形成されている。外周部9bは接地されている。内周部9aは電圧印加機構10を接続してあり、任意の電圧を印加できる。内周部9aには一次電子線2が通過するよう、穴が中心部に開けてある。二次電子はビーム光軸と垂直方向の速度成分が小さいため、ビーム光軸から大きく離れることはなく、内周部9aに衝突する。内周部9aと外周部9bは、それぞれSEとBSEの軌道上、或いは対物レンズを通過したSEとBSE軌道の延長線上に配置される。
また、内周部9aは、SEを受ける部分と電子ビームの通過開口を備えている。当該通過開口は、光軸に近い軌道を通過するSEを、効率良く検出するために、電子ビームの通過を妨げない範囲で、より小さな開口となるように形成されている。一方、外周部9bの電子ビーム通過開口は、内周部9aの電子ビーム通過開口より大きく形成されている。
二次電子,反射電子双方による画像を取得したいときには、検出電極内周部9aには電圧印加機構10から接地電位か−10V程度の負電位を供給する。検出電極内周部9aに衝突した二次電子のエネルギーは1500eVから1550eVまでと十分大きく、検出電極内周部9aの表面から再発生した二次電子11が放出される。
内周部9aは接地電位か負電位、検出電極外周部9bや図示していない周辺の構成要素は接地電位であるので、二次電子は検出電極内周部9aの表面から放出される。ビーム光軸からずらした位置には二次電子検出器12が配置されている。二次電子検出器12の前面には図示していない電圧印加機構が接続してあり、高電圧を印加している。この高電圧によって発生する電界が再発生した二次電子11を牽引し、二次電子検出器12で二次電子7に起因する信号を検出する。
本例では、二次電子検出器12より電子源側に外周部9bを配置することによって、電子ビーム光軸を中心とした高アングルのBSEを検出可能としている。また、内周部9aと、外周部9bは同じ高さに配置することが望ましい。異なる高さに配置すると、内周部9aと外周部9b間を通過する電子が発生するため、検出効率の観点からは、両者を同じ高さに配置することが望ましい。また、ワーキングディスタンスを極力小さくするという観点からも、内周部9a,外周部9bは対物レンズ4より、電子源1側に配置される。
反射電子8は一次電子線が試料に照射される時のエネルギーとほぼ等しい。本例では照射電圧を800eVとおくが、照射電圧を変更しても発明の効果は同じである。照射電圧は二次電子と同様、対物レンズと試料の間に発生した電界により加速されるため、2300
eVのエネルギーを持って対物レンズより上方に導かれる。
速度加算による最大の開き角は本例では20.4 度となる。反射電子の速度のうちビーム光軸と垂直方向の速度成分は最大800eV相当の速度である。対物レンズ4で作られる磁場により全体としては収束方向の力を受けて進行し、検出電極9に到達する。反射電子はビーム光軸と垂直方向の速度成分が大きいため、一部は検出電極内周部9aに衝突するが大半は外周部9bに衝突する。
反射電子衝突のエネルギーによって、検出電極の内周部9a,外周部9bの表面からは再発生した二次電子13が放出される。再発生した二次電子13は二次電子検出器12前面に印加された電圧に起因する電界に牽引され、二次電子検出器12に到達する。このようにして、二次電子検出器12で反射電子8に起因する信号が検出される。
二次電子検出器12で検出した信号や図示していないその他の検出器からの信号を信号処理手段14によって選択したり合成または色付けしたりした上で表示装置15に表示する。
すなわち、検出電極内周部9aに負電位を供給した場合は二次電子7,反射電子8の双方の情報を同時に取得することになる。二次電子7の発生量は反射電子8に比べて多いので、双方の情報を同時に取得した場合には二次電子情報の割合の多い像となる。
一方、反射電子のみによる画像を取得したいときには、検出電極内周部9aには電圧印加機構10から+10V程度の正電位を供給する。このときの本例の状態を図2に示す。負電圧を供給したときと同様に、二次電子7は検出電極内周部9aに衝突する。検出電極内周部9aは正電位、検出電極外周部9bや図示していない周辺の構成要素は接地電位であるので、二次電子11は検出電極内周部9aの表面からいったん放出されることがあっても電界により押し戻され、検出電極内周部9aに吸収される。
反射電子8も図1と同様に一部は検出電極内周部9aに衝突するが大半は外周部9bに衝突する。反射電子衝突のエネルギーによって、検出電極の内周部9aと外周部9bの表面からは再発生した二次電子13が放出される。再発生した二次電子13のうち、検出電極内周部9aから発生したもの13aは検出電極内周部9aの表面からいったん放出されることがあっても電界により押し戻され、検出電極内周部9aに吸収される。
再発生した二次電子13のうち、検出電極内周部9bから発生したもの13bは二次電子検出器12前面に印加された電圧に起因する電界に牽引され、二次電子検出器12に到達する。このようにして、二次電子検出器12では反射電子8に起因する信号のみが検出される。二次電子検出器12で検出した信号や図示していないその他の検出器からの信号を信号処理手段14によって選択したり合成または色付けしたりした上で表示装置15に表示する。
すなわち、検出電極内周部9aに正電位を供給した場合は反射電子8の情報のみを取得することになる。つまり、検出電極内周部9aに印加する電圧を変更することにより、実効的に検出部の内径切り替えを行い、二次電子/反射電子の弁別検出を行うことが出来るのである。
図1,図2に示す例では、検出電極内周部9aの下部表面は検出電極外周部9bの下部表面と同一平面で平坦であるが、検出電極内周部9aの下部表面を検出電極外周部9bの下部表面より上部に位置させて構成してもよい。
一次電子線2の減速のための電界により、二次電子7,反射電子8は加速されている。検出電極9位置での二次電子7,反射電子8のエネルギーは1500eV以上である。これら二次電子7,反射電子8が検出電極内周部9aに衝突したとき、再発生した二次電子11,13のみならず、再発生した反射電子19がある割合で発生する。
この反射電子19は検出電極内周部9aに印加した+10V程度の電圧に起因する電界では軌道を変化させないため直進する。本例では、検出電極内周部9a上の反射電子19発生位置から二次電子検出器12に至る経路上に物理的な障壁があるため、反射電子19の検出を抑制でき、二次電子/反射電子の弁別検出をさらに厳密に行うことが出来る。
図3に本例における検出電極9周辺の動作を示す。なお、検出電極内周部9aに負電圧あるいは接地電位を印加した場合は、印加電圧に起因する電界によって再発生した二次電子11,13の軌道が二次電子検出器12へと導かれ、二次電子の検出も問題なく行われる。
また、図3の例によれば、図1,図2に示す例のように、内周部9a,外周部9bを同じ高さに配置しなくとも、内周部9aの側壁の存在により、内周部9a,外周部9b間を通過する電子を抑制でき、SEの高い検出効率を維持することができる。
減速法を使用しない時は二次電子7,反射電子8の速度には対物レンズと試料の間に発生した電界での加速によるビーム光軸方向の速度が加算されることはなく、図1,図2に図示する説明とは異なる軌道を取る。したがって、検出電極内周部9aへの電圧印加により二次電子/反射電子の弁別検出を行うことは出来ない。
そこで、減速法を用いている場合にのみ、検出電極内周部9aへの正電圧印加が可能となるような装置設定としてもよい。あるいは、減速法使用時には自動的に検出電極内周部9aへの正電圧印加が行われるようにしてもよい。また、減速電圧印加電源5によって試料に印加する電圧が低い場合には軌道の分離が十分でなく、検出電極内周部9aへの正電圧印加によって効果的に二次電子/反射電子の弁別検出を行うことは出来ないことがある。
従って、検出電極内周部9aへの正電圧印加が可能となるような装置設定を、減速電圧印加電源5の印加電圧が所定の値以上になった場合に、許容するようにコントロールしても良い。なお、図示しない制御装置によって、このようなコントロールを行うようにしても良い。更に何等かの画像の変化、或いは所定の画像の状態が検出される場合に、BSEとSEの検出を切り替えるように自動制御するようにしても良い。例えば、SEの信号量が過剰となり、画像が白くなるような場合、或いはBSEの信号量不足により、画像が暗くなる場合には、その状態の検知に基づいて、他方の検出手段に切り替えるように制御することも可能である。
好適な一例として、装置設定できるようにする減速電圧印加電源5の設定電圧は、50V以下にするのが合理的である。減速法による二次電子、反射電子の速度加算後の最大開き角を図4に示す。50Vの減速電圧によって10eVの二次電子は10度に、800
eVの反射電子は70度に開き角が圧縮される。これは本特許に基づく二次電子/反射電子弁別を実現するのに十分な角度差である。
以上のような条件では、最大開き角が10度以下の電子が、選択的に通過できるような開口を、外周部9bに設け、当該開口内、或いは開口上に、内周部9aを設けることによって、両者の弁別を行うことが可能となる。
図1,図2に示す例では、検出電極9上で再発生した二次電子11,13の牽引を二次電子検出器12前面に印加された電圧に起因する電界のみによって行ったが、ビーム光軸を含む部分にE×B偏向器(直交電磁界発生器)16を加えて構成してもよい。この場合の構成を図5に示す。E×B偏向器を用いた場合、一次電子線2の軌道に影響を与えることなく再発生した二次電子11,13を強力に牽引できる。この直交電磁界発生器は例えば、特開平9−171791号公報(特許文献6)に開示されている。
図6は検出部の内径切り替えを機械的に行う場合の実施例を示す概略図である。図1,図2に図示した検出電極9に替えて可動式検出板17を同じ位置に配置する。
小さい径の穴を一次電子線2の軸に合わせた場合、一次電子線2を試料6に照射して発生する二次電子7,反射電子8の双方が可動式検出板17に衝突し、二次電子11,13が再発生する。再発生した二次電子は二次電子検出器12前面に印加された電圧に起因する電界に牽引され、二次電子検出器12に到達する。
このようにして、二次電子検出器12で二次電子,反射電子に起因する信号が検出される。二次電子検出器12で検出した信号や図示していないその他の検出器からの信号を信号処理手段14によって選択したり合成または色付けしたりした上で表示装置15に表示することもできる。
可動機構18を操作して、可動式検出板17の大きい径の穴を一次電子線2の軸に合わせた場合、一次電子線2を試料6に照射して発生する反射電子が選択的に、可動式検出板
17に衝突し、二次電子が再発生する。再発生した二次電子は二次電子検出器12前面に印加された電圧に起因する電界に牽引され、二次電子検出器12に到達する。
このようにして、二次電子検出器12で反射電子に起因する信号が検出される。二次電子検出器12で検出した信号や図示していないその他の検出器からの信号を信号処理手段14によって選択したり合成または色付けしたりした上で表示装置15に表示する。
すなわち、可動式検出板17の位置を変更し、内径切り替えを機械的に行うことにより、二次電子/反射電子の弁別検出を行うことが出来るのである。
本例についても図3に図示した例と同様、再発生した二次電子を強力に牽引するため、E×B偏向器(直交電磁界発生器)16を加えて構成してもよい。
図7は内周,外周の環状検出器を用いて構成した場合の実施例を示す概略図である。図1,図2の実施例の検出電極9に替えてシンチレーター19を同じ位置に配置する。内周部のシンチレーター19aと外周部のシンチレーター19bはそれぞれ光学的に独立になるよう、間を遮光する。一次電子線2を試料6に照射して発生する二次電子7は内周部のシンチレーター19aに、反射電子8は外周部のシンチレーター19bにそれぞれ入射し、発光現象が起きる。
それぞれのシンチレーター19内で発生した光はライトガイド20によってそれぞれ接続された光電子増倍管21に導かれ、電気信号に変換される。光電子増倍管21で検出した信号や図示していないその他の検出器からの信号を信号処理手段14によって選択したり合成または色付けしたりした上で表示装置15に表示する。内周部のシンチレーター
19aからは主に二次電子7の信号が、外周部のシンチレーター19bからは主に反射電子8の情報が得られる。このようにして二次電子/反射電子の弁別検出を行うことが出来る。
本例はシンチレーターで検出器を構成した例であるが、同様に環状の半導体検出器やマルチチャンネルプレートで構成してもよい。
以上のように、本発明の実施例装置によれば、減速法を用いた低照射電圧条件においても、二次電子/反射電子の弁別検出を行うことが可能になる。
図8は、本発明の他の実施例を説明するための図である。本例では、減速電界形成手段として、電子ビーム光軸に沿って形成された加速円筒22を用いている。加速円筒22には、正の電圧が印加され、電子源1より引き出された電子ビームは、加速電圧印加電源
23によって、加速される。加速された状態の電子ビーム2は、加速円筒23と、試料6との電位差によって減速され、試料6に到達する。
以上のような構成によっても、加速円筒23と試料6との間に減速電界が形成されるため、他の実施例と同様に、後方散乱電子と、二次電子との間に軌道差が生じる。すなわち、二次電子は内周部9aで、後方散乱電子は外周部9bに衝突する。よって、他の実施例と同様に、内周部9aと外周部9bを適切に配置することによって、二次電子と後方散乱電子の弁別検出が可能となる。
走査電子顕微鏡の一例を説明する図。 後方散乱電子を選択的に検出することを説明した走査形電子顕微鏡の概略図。 検出電極内周部に奥行きを持たせた例を説明する図。 減速法での試料印加電圧と、試料から放出される電子の最大開き角との関係を説明する図。 E×B偏向器を備えた走査電子顕微鏡の概略図。 可動検出板を備えた走査電子顕微鏡の概略図。 検出器としてシンチレーターを備えた走査電子顕微鏡の概略図。 減速電界形成手段として、加速円筒を採用した走査電子顕微鏡の概略図。
符号の説明
1 電子源
2 一次電子線
3a,3b 偏向器
4 対物レンズ
5 減速電圧印加電源
6 試料
7,11,13 二次電子
8 反射電子
9 検出電極
9a 検出電極内周部
9b 検出電極外周部
10 電圧印加機構
12 二次電子検出器
14 信号処理手段
15 表示装置
16 E×B偏向器
17 可動式検出板
18 可動機構

Claims (12)

  1. 負の電圧が印加された試料に対し、電子ビームを照射し、当該電子ビームの照射個所から放出される電子を検出する走査電子顕微鏡による試料の測定、或いは観察方法において、
    前記試料への負の電圧の印加に基づいて形成される電界によって加速された二次電子の軌道外であって、前記電子ビームの光軸から見て、前記二次電子の軌道の外側を通過する後方散乱電子を、前記電界によって加速された二次電子の軌道外であって、試料から放出される後方散乱電子の軌道上に、電子を受ける部分を持つ検出器によって検出することを特徴とする試料の測定,観察方法。
  2. 請求項1において、
    前記検出器は、前記加速された二次電子の軌道上に、当該二次電子を受ける部分を有することを特徴とする試料の測定,観察方法。
  3. 電子源と、
    当該電子源から放出された電子ビームを集束する対物レンズと、試料に負電圧を印加する負電圧印加電源を備えた走査電子顕微鏡において、
    前記負電圧印加電源の試料への負電圧印加により形成される電界によって、加速される二次電子の軌道外であって、前記電子ビームの光軸から見て、前記電界によって加速された二次電子の軌道外であって、前記試料から放出される後方散乱電子の軌道上に、当該後方散乱電子を受ける部分を備えた検出器を有することを特徴とする走査電子顕微鏡。
  4. 請求項3において、
    前記後方散乱電子を受ける部分より、前記電子ビーム光軸側に、前記加速された二次電子を受ける部分を備えたことを特徴とする走査電子顕微鏡。
  5. 請求項4において、
    前記後方散乱電子を受ける部分と、前記二次電子を受ける部分間は、電気的に絶縁されていることを特徴とする走査電子顕微鏡。
  6. 請求項4において、
    前記二次電子を受ける部分には電圧印加電源が接続されていることを特徴とする走査電子顕微鏡。
  7. 請求項4において、
    前記後方散乱電子を受ける部分と、前記二次電子を受ける部分は、前記検出器の検出面であることを特徴とする走査電子顕微鏡。
  8. 請求項4において、
    前記後方散乱電子を受ける部分と、前記二次電子を受ける部分は、電子の衝突によって二次電子を発生する二次電子変換電極であることを特徴とする走査電子顕微鏡。
  9. 請求項3において、
    前記後方散乱電子を受ける部分は、前記電子ビームを通過させる開口を備えていることを特徴とする走査電子顕微鏡。
  10. 請求項9において、
    前記電子ビームを通過させる開口を、前記電子ビームの軸内と電子ビームの軸外との間で移動させる移動機構を備えたことを特徴とする走査電子顕微鏡。
  11. 請求項9において、
    前記移動機構は、前記後方散乱電子を受ける部分に設けられた開口と、前記二次電子を受ける部分に設けられた開口を、切り替えるように構成されていることを特徴とする走査電子顕微鏡。
  12. 請求項11において、
    前記後方散乱電子を受ける部分の設けられた開口は、前記二次電子を受ける部分に設けられた開口より大きいことを特徴とする走査電子顕微鏡。
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