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JP2008185465A - 赤外線センサの温度補償方法および装置 - Google Patents

赤外線センサの温度補償方法および装置 Download PDF

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JP2008185465A JP2007019452A JP2007019452A JP2008185465A JP 2008185465 A JP2008185465 A JP 2008185465A JP 2007019452 A JP2007019452 A JP 2007019452A JP 2007019452 A JP2007019452 A JP 2007019452A JP 2008185465 A JP2008185465 A JP 2008185465A
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Abstract

【課題】赤外線センサにおける温度補償の精度を向上し、鮮明な画像を得ること。
【解決手段】
赤外線センサ101上における入射光107以外の輻射光108の強度分布および赤外線センサ101を構成する個々のボロメータの温度特性に起因する出力電圧のばらつき(輻射光吸収強度分布という。以下同じ。)を補正する。すなわち、赤外線センサ101の温度を第1の温度として計測し、赤外線センサ101の温度に対する輻射光吸収強度分布を示すテーブルおよび前記第1の温度を参照して、ボロメータ夫々の出力電圧の補正値を求め、出力電圧のばらつきを補正する。
【選択図】図16

Description

本発明は赤外線センサの温度補償方法および装置に関し、特に、電子冷却装置(ペルチェモジュール)が不要な非冷却赤外線センサの温度補償方法および装置に関する。
従来の非冷却型赤外線撮像装置では、マイクロボロメータアレイの不均一性を最小化するべく電子冷却装置を用いた厳密な温度制御を行うことにより、鮮明な赤外画像を得ていた。
しかし、電子冷却装置は高価(かつ複雑)であるため、システムのコスト(および複雑さ)を増大させる。そこで、広い温度範囲に亘って、マイクロボロメータアレイの特性および不均一性に対処するために、新たな技術が必要とされている。
マイクロボロメータアレイの性能は、一様な入射赤外線に対する個々のマイクロボロメータ検出器の間で、応答にばらつきがあることによって、低下する。
ばらつきの要因として、個々の検出器の赤外線吸収係数、抵抗、抵抗温度係数(Temperature Coefficient of Resistance、TCR)、熱容量、および熱伝達率が挙げられる。
このような不均一性に起因する応答のばらつきの大きさは、入射赤外線に対する実際の応答の大きさよりも大きくなり得るため、不均一性を補償して、入射赤外線に相当する信号を得るために、通常、様々な技法を施すことが必要となる。
また、通常のマイクロボロメータアレイでは、各マイクロボロメータによって生成される出力電圧は、基板温度によって大きく変化する。アレイに含まれる、いくつかのマイクロボロメータにおける、平均出力電圧が最小および最大信号範囲を越え、所望の動作温度範囲内で満足できるFPAの性能が得られない場合も生じ得る。
例えば、図1に示すように、望ましい基板温度の最大値に達する前に、マイクロボロメータアレイ中のあるマイクロボロメータの出力電圧がシステムの最小ダイナミックレンジより下に低下し得る。あるいは、図2に示すように、望ましい基板温度の最大値に達する前に、マイクロボロメータアレイ内の別のマイクロボロメータの出力電圧がシステムの最大ダイナミックレンジを越えて上昇し得る(特許文献2)。
このような所望の温度範囲における非一様な挙動を軽減するべく、温度補償の方法が公開されている。例えば、特許文献1において、従来の2点補正に対し、基板温度の要素を考慮し、基板温度が変わっても入射光の感度が一定になるように、ボロメータに印加されるバイアス電圧を調整し、出力電圧特性が一様となるような補正を行っている。
図3に温度補償を行うための概略回路を示し、図4に温度補償を行うための信号フローを示す(特許文献1)。
特許文献1において開示されている、温度補償の工程は次の通りである。
(1)2つの入射レベル、2つの基板温度の条件で、センサ出力を測定する。ここでは、ある2つの画素の出力に着目する。この結果を図5Aに示す。
(2)2つの基板温度で入射光に対する感度は2つの画素で異なる。また各基板温度で平均ゲインを算出。この結果を図5Bに示す。
(3)各基板温度の平均ゲインが同じになるように各画素のバイアス電圧を調整した。この結果を図5Cに示す。
(4)従来の入射光に対するゲイン補正とオフセット補正の2点補正を行う。この結果を図5Dに示す。
上記(1)ないし(4)の一連の補正を行った結果を図6に示す。
入射レベルQmin、Qmaxおよび基板温度Tmin、Tmaxの間で空間的にほぼ一様な分布が得られる。
図7はオンチップ読み出し回路概略図であり、上記した基板温度が変わっても入射光の感度が一定になるようにボロメータに印加されるバイアス電圧を調整する行為をDAC36により実施し、従来の入射光に対するオフセット補正をDAC74で行う。
図8は、読み出し回路を含むシステム構成例を示している。
また、特許文献2において、図9に示すアクティブマイクロボロメータ3と基準マイクロボロメータ2の抵抗温度係数(TCR)の相対ミスマッチを、アクティブマイクロボロメータ3に直列に可変抵抗26を設けることによって補償する回路が開示されている。可変抵抗26は所望の温度範囲に亘って、相対ミスマッチの影響を最小化するように較正することができる。
例えば、図9を参照すると、アクティブマイクロボロメータ3と基準マイクロボロメータ2のTCRの相対ミスマッチが、例えば、基板温度の上昇につれて、アクティブマイクロボロメータ3の抵抗が基準マイクロボロメータ2より速く減少するようなものである場合、所定のレベルの入射赤外線に対して、基板温度が上昇するにつれて出力電圧42は上昇する。この様子は、可変抵抗26の最小抵抗値に対する曲線51(図10)によって表されている。
同じ基板温度範囲に対して測定を繰り返す際に、図9に示す可変抵抗26の抵抗値を増加し、オフセットを調整して、出力電圧42が最小基板温度に対する初期値に戻るようにすると、出力電圧42は、温度上昇に対し、より緩やかに上昇する。この様子は、曲線52によって表されている。このプロセスは可変抵抗26の値を様々に変えて繰り返すことができ、例えば曲線53や54が得られる。曲線51〜54から明らかなように、曲線54が所望の基板温度に亘って最適な応答を提供する。さらに、このプロセスは、アレイ内の各マイクロボロメータに対する最適な抵抗値の設定を行い、図11に示すような特性を得るために、用いることもできる。
また、特許文献3の段落[0026]において、次のことが記載されている。
センサの出力電圧を変化させる要因として、センサを収容しているパッケージの周辺における周囲温度に関係する背景放射の影響がある。そして、その影響はセンサからの信号の平均(即ちDC)成分に寄与するものであり、また、通常この影響は本質的に時間変動するものである。この影響を撮像システムによって例えば信号から減算することによって補償することが可能である。
特許WO98/35212号公報 特表2005−519266号公報 特表2003−532111号公報
電子冷却装置(ペルチェモジュール)を不要とした非冷却型赤外線撮像装置において、ボロメータアレイの出力のばらつきを増大させる要因として、公知例で挙げられているように、基板温度(以下、センサ温度と呼ぶ)の影響およびレンズを通って入ってくる入射光以外の輻射光(以後、輻射光と呼ぶ)の影響が考えられる。
しかし、これらの影響を考慮した温度補償を行ったとしても、ボロメータアレイの出力のばらつきを抑え、鮮明な赤外線画像を得るには不十分である。以下では、その理由を検討する。
図12に入射光と輻射光の模式図を示す。ここでは輻射光の例として、筐筒からその温度に対応して放出される赤外光を示した。
輻射光はセンサPKGや光学系の構造により、筐筒からの輻射光ではなく、センサPKGからの輻射光が支配的になる場合がある。この模式図を図13に示す。このような場合はPKG温度をモニタし、その温度の情報に基づいた補正を行う必要がある。
電子冷却装置(ペルチェモジュール)を不要とした非冷却型赤外線撮像装置においては、センサ温度の変化に伴い、画素毎のセンサの出力電圧が変化する。
入射赤外線に応じたセンサの出力電圧Vresは次式で表される。
Vres =(Vbol・TCR@Ts・η・Pin)/Gth
ここで、Vbol:ボロメータの印加電圧、TCR@Tsはセンサ温度Tsの時のボロメータの温度係数(感度に相当し、画素毎に異なる値をとると共にセンサ温度によって値が変化する。)、ηはボロメータの吸収率、Pinはボロメータへ入射する赤外線の強度、Gthはボロメータの熱コンダクタンスである。
したがって、輻射光の強度が一定であっても、ボロメータの温度係数TCRが各画素で異なる値を持つことにより、画素毎の出力電圧が変化する。すなわち、センサ温度Tsが変化することにより、輻射光吸収強度分布も変化する。したがって、センサ温度変化に応じて、輻射光吸収強度分布を補正する必要がある。
また、赤外線センサ面において、輻射光の強度分布と入射光の強度分布とは異なっているため、従来のように、入射光に対する強度分布の補正のみを行った場合には、補正誤差が生じるという問題がある。したがって、輻射光に対しても、独立に強度分布の補正を行うことが課題となる。
また、電子冷却装置(ペルチェモジュール)を不要とした非冷却型赤外線撮像装置を放射温度計として用いる場合、仮にセンサ温度は変化せずに、輻射光だけが一様に変化したときに、これを入射光が変化したものとみなして(温度指示値に)誤りを生じさせることがないようにするためには、輻射光吸収強度分布の補正だけではなく、輻射光の変化量の絶対値も補正することが課題となる。
ここで、輻射光が変化する場合の一例として、筐筒温度が変化する場合を考える。
電子冷却装置(ペルチェモジュール)を不要とした非冷却型赤外線撮像装置の場合、センサ温度および筐筒温度は、いずれも環境温度によって決まる。
すなわち、センサ温度および筺体温度は、環境温度と相関があるものの、図14に示すように撮像装置内部の物理的な構造により熱抵抗や熱容量を持つため、センサ温度と筺体温度の間には熱時定数が存在する。例えば、センサ温度と筐筒温度の温度差が大きくなる場合として、撮像しながら火災現場へ侵入する場合など環境温度が急激に変化する場合が挙げられる。
したがって、センサ温度と筐体温度を同一視した場合には、赤外線センサの温度補償を正確に行うことができないという問題がある。
そこで、これら2つの温度は独立に変動するものとして扱い、その影響をそれぞれ補正することが課題となる。
本発明の第1の視点に係る赤外線センサの温度補償方法は、(a)赤外線センサを構成するボロメータアレイに含まれるボロメータ夫々の温度特性に起因する出力電圧のばらつきを補正する工程と、(b)前記赤外線センサ上における計測すべき入射光の強度分布および前記ボロメータ夫々の温度特性に起因する出力電圧のばらつきを補正する工程と、を含む温度補償方法であって、(c)前記赤外線センサ上における前記入射光以外の輻射光の強度分布および前記ボロメータ夫々の温度特性に起因する出力電圧のばらつき(輻射光吸収強度分布という。以下同じ。)を補正する工程をさらに含むことを特徴とする。
本発明の第2の視点に係る赤外線センサの温度補償装置は、赤外線センサを構成するボロメータアレイに含まれるボロメータ夫々の温度特性に起因する出力電圧のばらつきを補正するテーブルと、前記赤外線センサ上における計測すべき入射光の強度分布および前記ボロメータ夫々の温度特性の相違に起因する出力電圧のばらつきを補正するテーブルと、を備えた温度補償装置であって、前記赤外線センサ上における前記入射光以外の輻射光の強度分布および前記ボロメータ夫々の温度特性の相違に起因する出力電圧のばらつき(輻射光吸収強度分布という。以下同じ。)を補正する輻射光吸収強度分布補正手段をさらに備えたことを特徴とする。
赤外線センサ上における入射光以外の輻射光の強度分布とボロメータ夫々の温度特性の相違とに起因する出力電圧のばらつき(輻射光吸収強度分布)を補正することにより、赤外線センサの温度補償を行い、環境温度が変化した場合であっても、鮮明な赤外線画像を撮像することが可能となる。
本発明においては、鮮明な赤外画像を得るために、(1)センサ温度変化に対する出力電圧の変化に応じた感度補正、(2)輻射光吸収強度分布の補正、(3)輻射光の変化量の絶対値の補正、を行う。
本発明に係る赤外線センサの温度補償方法は、赤外線センサの温度変動に起因する、前記センサの少なくとも1つの動作特性の変化に対して前記赤外線センサを補償する方法であって、前記赤外線センサの前記温度変動に基づいて前記センサに関連する少なくとも1つの較正パラメータを動的に調節する工程を含む方法であって、特に輻射光吸収強度分布をセンサ温度の変化に応じて較正することを特徴とする。
一方、本発明に係る赤外線センサの温度補償装置は、赤外線センサの温度変動に起因する、前記センサの少なくとも1つの動作特性の変化に対して前記センサを補償する信号処理部を備え、該信号処理部が、前記赤外線センサの前記温度変動に基づいて前記センサに関連する少なくとも1つの較正パラメータを動的に調節するように構成される装置であって、特に輻射光吸収強度分布をセンサ温度の変化に応じて較正することを特徴とする。
また、本発明に係る赤外線センサの温度補償装置は、第1の温度計により得られた赤外線センサの温度と赤外線センサの感度および(直接入射光以外の)輻射光の強度分布との対応を示す第1の補正テーブルを備え、第1の温度計の温度情報を元に第1の補正テーブルから得られた補正値により赤外線センサから得られる出力信号の補正処理を行うことが好ましい。
さらに、本発明に係る赤外線センサの温度補償装置は、第2の温度計により得られた、赤外線撮像装置内部から赤外線センサに(直接入射光以外の)入射する輻射光を発する部位の温度と、(直接入射光以外の)輻射光の強度に応じた赤外線センサからの出力信号との対応を示す第2の補正テーブルを備え、第2の温度計の温度情報を元に第2の補正テーブルから得られた補正値により赤外線センサから得られる出力信号の補正処理を行うものであってもよい。
本発明に係る赤外線センサの温度補償方法および装置の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
図15に本発明の実施の形態を示す補正ブロック概略図(信号処理システム構成図)を示す。
まず、電子冷却装置(ペルチェモジュール)を不要とした非冷却型赤外線センサにおける出力信号を変動させる要因の内訳を以下の式で表すことができる。
出力信号変動=センサ温度変動起因成分+輻射光変動起因成分+入射光変動起因成分
センサ温度変動起因成分は、センサ温度変化に応じたボロメータの温度特性による成分のほかにオンチップ読みだし回路の温度ドリフト成分を含む。
輻射光変動起因成分はセンサ温度変化に応じた感度変化による輻射の吸収感度分布変化と環境温度変化に応じた筐筒温度の変化である。
入射光変動起因成分は、被写体温度変化による入射光変化はもちろんのこと、環境温度変化によるレンズ透過率変化などを含む。
撮像時において、これらの変動成分を補正し、出力信号の変動を抑制するために、例えば、以下のような補正テーブルを事前に用意する必要がある。
補正テーブル1:センサ温度変化によるボロメータの温度特性による成分(面内分布含む)およびオンチップ読みだし回路の温度ドリフトの補正
補正テーブル2:センサ温度変化に対する出力電圧の変化に応じた輻射光に対する感度補正および輻射光の強度分布の補正
補正テーブル3:筐体温度変化による輻射光の変化成分(絶対値)の補正
補正テーブル4:センサ温度変化に対する出力電圧の変化に応じた入射光に対する感度補正および入射光の強度分布(レンズシェーディングやレンズ透過率変化の影響等)の補正
補正テーブル4を補正テーブル2の後に挿入する場合、後述するように、補正テーブル4には、入射光と輻射光の強度分布の比が係数として含まれる。
図16に本発明の実施の形態に係る赤外線センサの温度補償装置を備えた撮像装置の構成例を示す。
計測対象とされる入射光107は、レンズ104を介して、赤外線センサ101へと達する。入射光107以外に、輻射光108が、例えば、撮像装置の筐筒から、赤外線センサ101へ到達する。赤外線センサ101を温度補償するために、温度計123および116によって、それぞれ、赤外線センサ101の温度および筐筒の温度を計測する。これらの温度は、赤外線センサ101の出力信号とともに、A/D変換器117を介して、DSP(Digital Signal Processor)115へ送られる。
フレームメモリ114に格納された補正テーブル1〜4と、上述のDSP115へ送信された信号とに基づき、DSP115において、赤外線センサ101の出力信号の補正が行われる。
前記補正テーブル1〜4は予め作成しておくことが好ましい。
その方法として、例えば、図17に示すように、恒温槽121に撮像装置118を入れ、温度変化させてデータを取得する方法が考えられる。
図17にデータ取得を行うためのセットアップの一例を示す。ここで、図17に示すようにパソコン122を介さず撮像装置118内部のDSP(図16の115)を利用して演算してもよい。また、面光源120は恒温槽121の外に配置してもよい。
補正テーブル1〜4に格納される補正係数について、2つの画素の出力電圧を例として、具体的に説明する。
2つの画素(画素1、画素2とする。)における、出力電圧をそれぞれV1、V2とする。上述の出力信号変動の右辺の3つの項に対応して、V1、V2は以下のように表すことができる。
V1={(B1・Ts)+(Kb1・(1+A1)・C・Tc)+(Ki1・(1+A1)・Pin)}・V
V2={(B2・Ts)+(Kb2・(1+A2)・C・Tc)+(Ki2・(1+A2)・Pin)}・V
ここで、Tsはセンサ温度、Tcは筐体温度、B1(B2)は画素1(画素2)のセンサ温度変動に対する出力電圧変化係数、Kb1(Kb2)は画素1(画素2)の輻射光の強度分布に相当する係数、A1(A2)は画素1(画素2)のボロメータの温度係数、Cは輻射光の強度の係数、Ki1(Ki2)は画素1(画素2)の入射光の強度分布に相当する係数、Pinは被写体からの入射信号強度に相当する係数、Vは基準出力電圧である。
補正テーブル1はV1およびV2の式の右辺第1項の係数を含み、補正テーブル2および3は、右辺第2項の係数を含み、補正テーブル4は右辺第2項及び第3項の係数を含む。
ここでは、画素1を基準画素として、画素2の特性を画素1の特性にそろえるような補正を行う場合を示す。
すると、画素1および画素2の補正テーブル1〜4に含まれる係数は、それぞれ以下の式によって与えられる。
画素1の補正テーブル1:B1・V
画素1の補正テーブル2:1
画素1の補正テーブル3:Kb1・(1+A1)・C・V
画素1の補正テーブル4:(1+A1)
画素2の補正テーブル1:B2・V
画素2の補正テーブル2:{Kb2・(1+A2)}/{Kb1・(1+A1)}
画素2の補正テーブル3:Kb1・(1+A1)・C・V
画素2の補正テーブル4:{(Ki2/Kb2)/(Ki1/Kb1)}・(1+A1)
これらの補正係数を各補正テーブルに備え、撮像時において、補正テーブル1と計測されたセンサ温度Tsとに基づいて補正値を計算し、センサ出力信号から減ずる。
次に、補正テーブル2と計測されたセンサ温度Tsとに基づいて補正因子を計算し、センサ出力信号をこの補正因子によって除する。
さらに、補正テーブル3と計測された筐体温度Tcとに基づいて、補正値を計算し、センサ出力信号から減ずる。
最後に、補正テーブル4と計測されたセンサ温度Tsとに基づいて、補正因子を計算し、センサ出力信号をこの補正因子によって除する。
以上の補正処理により2つの画素に対応する出力電圧V1、V2は以下のように表すことができる。
V1=(Ki1・Pin)・V
V2=(Ki1・Pin)・V
この式からも分かるとおり、この補正処理を行うことでセンサ温度Tsの変動成分、筐体温度Tcの変動成分はゼロとなり、被写体からの入射信号成分のみからなる鮮明な赤外画像が得られる。
ところで、センサ出力電圧には、前述の通り、センサ温度変動起因成分、輻射光変動起因成分、入射光変動起因成分が含まれているため、各成分を定量的に分離して、補正係数を作成する必要がある。
まず、入射光変動起因成分については、温度が一定の面光源を撮像してデータを取得することにより分離することができる。
次に、センサ温度変動起因成分(センサ温度に対するセンサ出力変化の特性)と輻射光変動起因成分(筐筒温度に対するセンサ出力変化の特性)とを分離する方法として、赤外線センサが実装されたパッケージ内の雰囲気が大気と真空の2条件でデータ取得する方法が考えられる。以下、この方法を具体的に説明する。
被写体の微弱な熱の変化を、被写体から放射される赤外線を吸収することによって検出するため、赤外線センサは、シリコン基板から熱分離された構造を備えるとともに、その熱の変化が空気により熱拡散しないようにパッケージに実装した後真空封止する。
したがって、パッケージ内の雰囲気が大気の状態で動作させると言うことは、入射赤外線による微弱な熱の変化は空気を介して拡散されてしまうため、センサに入射する赤外線に対して感度を持たないことになる。したがって、この特性を利用し、センサ温度変動起因成分と輻射光変動起因成分とを分離することができる。
具体的なフローは、センサ製造過程のパッケージ真空封止前の状態で一度撮像装置に組み込み、補正テーブル作成のためのデータ取得を行う。一連の必要なデータが取得の後、改めてパッケージの真空封止を行う。その後、入射光に関する補正テーブルの作成および輻射光に関する補正テーブルの作成を行う。
しかし、パッケージ内の雰囲気を大気と真空の2条件でデータ取得する方法はセンサ製造過程でのセンサの出し入れがあるため、センサパッケージを購入し撮像装置を製作するカメラメーカーには実現できない方法である。
したがって、真空封止されたパッケージの状態でデータ取得する方法を考案した。
しかし、電子冷却装置(ペルチェモジュール)を不要とした非冷却型赤外線撮像装置の場合、センサ温度を固定して筐筒温度を変化させたり、もしくはその逆を行うことはできず、恒温槽の温度(環境温度)を変化させると、センサ温度と筐筒温度の両者が変化してしまう問題がある。
この問題を解決するために、上記したセンサ温度と筺体温度の間には熱時定数を持つことを利用する。具体的には、恒温槽温度を変化させてデータを取得する際、温度Aから温度Bに恒温槽温度を階段状に変化させて、センサ温度と筺体温度の間に熱時定数によって温度差を生じさせる。
また、この階段状の温度変化を、温度Aから温度Bへ温度上昇させる場合および温度Bから温度Aへ温度下降させる場合の2回実施することにより、あるセンサ温度Ts1に対して、筐体温度Tc1s1と筐体温度Tc2s1の2つの状態(およびもう1つのセンサ温度Ts2に対し筐体温度Tc1s2と筐体温度Tc2s2の2つの状態)を作り、さらに、ある筐体温度Tc1に対して、センサ温度Ts1c1とセンサ温度Ts2c1の2つの状態をそれぞれ作ることができ、このデータからセンサ温度に対するセンサ出力変化の特性と筐筒温度に対するセンサ出力変化の特性を分離して求めることができる。
上述した、恒温槽温度の階段状の変化から得られるセンサ温度に対する筐体温度を模式的に図18に示す。
次に具体的に各補正テーブルの作成方法を以下に示す。
図19の各補正テーブルの作成方法のフローを示す。
まず、センサ温度変動起因成分、輻射光変動起因成分、入射光変動起因成分を分離するために、ある温度の面光源温度を撮像しながら(入射光変動起因成分を排除)、恒温槽の温度を振りつつ、センサ出力信号のデータを取得する。
まず、真空封止した状態でデータ取得したときのセンサ出力信号は、データ取得時のセンサ温度および筐体温度の相関を含んだ状態の信号である。ここで、この状態の信号をデータ取得基礎信号と呼ぶ。
まず、上述した方法に従い、センサ温度とセンサ出力信号の関係を表す補正テーブル1を作成する。
この補正テーブル1とデータ取得基礎信号を取得した時のセンサ温度から計算される補正値をデータ取得基礎信号から減算する。この状態の信号を補正1信号と呼ぶ。
補正1信号は、(1)データ取得時のセンサ温度変化による出力電圧感度変化の影響、(2)輻射光の強度分布の影響、の両者を含んだ状態の信号である。
したがって、これらの影響も補正する必要がある。
例えば、図18に示したように、所望のセンサ温度の上限および下限の温度において、2つの筐体温度に対して、センサ出力信号を取得する。このデータからある基準画素の輻射光に対する感度とセンサアレイの他の画素の感度が一定となるように、画素それぞれについて係数を算出し、センサ温度と輻射光感度係数の関係を表す補正テーブル2を作成する。
この補正テーブル2とデータ取得基礎信号を取得した時のセンサ温度から計算される補正値を補正1信号から除算する。この状態の信号を補正2信号と呼ぶ。
補正2信号は、アレイ面内で一様な筐筒温度に対するセンサ出力信号の出力特性である。したがって、この補正2信号より筐筒温度とセンサ出力信号の関係を表す補正テーブル3を作成する。この補正は、前述したように放射温度計として応用する場合、温度指示値の誤りを訂正するものであり、監視カメラのように、温度の絶対値を必要としない応用例においては、必ずしも必要ではない。
この補正テーブル3とデータ取得基礎信号を取得した時の筐筒温度から計算される補正値を補正2信号から減算する。この状態の信号を補正3信号と呼ぶ。
データ取得基礎信号を取得した条件は、ある温度の面光源温度を撮像(入射光が一定の条件のもと)したものであるため、この時点の補正3信号は、各温度変動成分に対し、精度よく補正された信号となる。
次に、入射光に対する感度係数を補正する補正テーブル4については、前述の補正テーブル1〜3を作成した後に、センサ温度が所望範囲の両端の点でそれぞれ、面光源の温度を撮像し、センサ出力信号を取得する。ここで、この信号を入射データ取得信号と呼ぶ。
図20の補正テーブル4の作成方法のフローを示す。
この入射データ取得信号に対し、補正テーブル1〜3の補正を行ったデータからある基準画素の入射光に対する感度とセンサアレイの他の画素の感度とが一定になるように、画素それぞれについて係数を算出し、センサ温度と入射光感度係数の関係を表す補正テーブル4を作成する。
この補正テーブル4と入射データ取得信号を取得した時のセンサ温度とに基づいて計算される補正値によって、補正3信号を除する。この状態の信号を補正4信号と呼ぶ。
補正テーブル1〜4による補正処理が施された後の信号は、センサ温度変動起因成分、輻射光変動起因成分の影響を排除し、レンズを介してセンサに到達する入射光のみに対応する信号であるため、鮮明な赤外画像が得られる。
上記のフローにしたがって作成される各補正テーブルは、センサが稼動可能な環境温度範囲を複数に分割し、夫々の温度領域ごとに設ける。
図21に補正テーブルの構成図の一例を示す。この例では、0℃から90℃の温度領域に亘って、10℃毎に補正テーブルを設けている。
また、これらの補正テーブルを作成したときのセンサに関連する動作パラメータも補正テーブルに、記録しておく。
各温度の補正テーブル間の切り替えタイミングについて図22に示す。
通常撮像時に環境温度がちょうど補正テーブル間を跨ぐような温度になり、補正テーブルを切り替える必要が生じた場合、出来る限り画像をフリーズさせないようにスムースな補正テーブルの切り替えを行うことが好ましい。そのために、補正テーブルを取得する際の温度幅を10℃とした場合、取得した温度幅の、例えば上下端の0.5℃は遷移領域とし、さらに遷移領域でセンサ温度上昇時と下降時で補正テーブルの切り替え温度にヒステリシスの特性を持たせた方が好ましい。
したがって、この例では実効的なペルチェレス温度範囲は9℃となる。このとき、例えば環境温度0℃〜90℃まで使用するものとすると、10個の補正テーブル群を作成する必要がある。
以上のように、本発明に係る赤外線センサの温度補償方法および装置により、センサ温度変化による感度の変化と輻射の強度分布の両者の影響である輻射光吸収強度分布に対する補正が可能となる。
すなわち、赤外線センサ上に設けられた温度計からのセンサ温度と赤外線センサの感度および(直接入射光以外の)輻射光の強度分布との対応を示す第1の補正テーブルを事前に作成し、通常撮像時にセンサ温度の情報を元に第1の補正テーブルから得られた補正値により赤外線センサから得られる出力信号の補正処理を行うことによって、温度補償を実現する。
さらに、本発明に係る赤外線センサの温度補償方法および装置により、輻射光の変化量に対する補正が可能となる。
すなわち、輻射光の根源となる部位(例えば筐筒)に備えられた第2の温度計により得られる温度と、(直接入射光以外の)輻射光の強度に応じた赤外線センサからの出力信号との対応を示す第2の補正テーブルを事前に作成し、通常撮像時に筐筒温度の情報を元に第2の補正テーブルにより得られた補正値により赤外線センサから得られる出力信号の補正処理を行うことによって、補正が実現される。
従来のマイクロボロメータ回路の出力電圧を基板温度の関数として示すグラフである。 従来の別のマイクロボロメータ回路の出力電圧を基板温度の関数として示すグラフである。 従来の実施例に基づく温度補償を行うための概略回路を示す。 従来の実施例に基づく温度補償を行うための信号フローを示す。 A〜Dは、従来の実施例に基づく温度補償技法を実行したマイクロボロメータ回路の出力電圧を示すグラフである。 従来の実施例に基づく温度補償技法を実行した後の空間的な不均一性を示すグラフである。 従来の実施例に基づくオンチップ読み出し回路概略図を示す。 従来の実施例に基づくシステム構成例を示す。 従来の実施例に基づく温度補償を行うための回路を示す。 従来のマイクロボロメータ回路の出力電圧を基板温度の関数として示すグラフであり、一実施例に基づく温度補償技法を例示している。 従来の実施例に基づく温度補償技法を実行した後におけるマイクロボロメータアレイからのマイクロボロメータ回路の出力電圧を示すグラフである。 赤外線撮像装置の光学的な成分を表した模式図である。 赤外線撮像装置の光学的な成分について2つの例を表した模式図である。 赤外線撮像装置内部の熱的な成分を表した模式図である。 本発明の実施の形態を示す補正ブロック(信号処理システム構成)概略図である。 本発明の実施の形態に係る赤外線センサの温度補償装置を備えた、撮像装置の構成を示す。 本発明のデータ取得を行うためのセットアップの一例である。 本発明のセンサ温度に対する筐体温度の模式図である。 本発明の各補正テーブルの作成方法のフローである。 本発明のある補正テーブルの作成方法のフローである。 本発明の補正テーブルの構成図の一例である。 本発明の各温度の補正テーブル間の切り替えタイミングを示す模式図である。
符号の説明
1 入射放射光
2 基準マイクロボロメータ(赤外線センサ)
3 アクティブマイクロボロメータ(赤外線センサ)
10 スイッチ
11、39 バイアス生成器
12、32、34 増幅器
20 温度補償回路
26 可変抵抗
28 積分増幅器
29 ゲイン補正
30 オフセット補正
31、72 トランジスタ
34A トランスインピーダンス増幅器
35 フィードバック回路
36、40、74 DAC(デジタル・アナログ変換回路)
38 オフセット抵抗器
41 ノード
42 出力電圧
51、52、53、54 出力電圧・基板温度特性
60 A/D変換器
61 フレームメモリ
62 画像表示装置
63 データレジスタ・ロード回路
64 タイミング発生器
65 データ処理装置
66 データ処理装置用メモリ
67 補正係数メモリ
70 読み出し回路
101 赤外線センサ
102 筐筒
103 PKG(パッケージ)
104 レンズ
105 窓体
106 ヒートシンク
107 入射光
108 輻射光
109 空気の熱抵抗
110 筐筒の熱抵抗
111 筐筒の熱容量
112 ヒートシンクの熱抵抗
113 ヒートシンクの熱容量
114 フレームメモリ
115 DSP(Digital Signal Processor)
116、123 温度計
117 A/D変換器
118 撮像装置
119 モニタ
120 面光源
121 恒温槽
122 パソコン

Claims (8)

  1. (a)赤外線センサを構成するボロメータアレイに含まれるボロメータ夫々の温度特性に起因する出力電圧のばらつきを補正する工程と、
    (b)前記赤外線センサ上における計測すべき入射光の強度分布および前記ボロメータ夫々の温度特性に起因する出力電圧のばらつきを補正する工程と、
    を含む温度補償方法であって、
    (c)前記赤外線センサ上における前記入射光以外の輻射光の強度分布および前記ボロメータ夫々の温度特性に起因する出力電圧のばらつき(輻射光吸収強度分布という。以下同じ。)を補正する工程
    をさらに含むことを特徴とする赤外線センサの温度補償方法。
  2. 前記の補正工程(c)が、
    (d)前記赤外線センサの温度を第1の温度として計測する工程と、
    (e)前記赤外線センサの温度に対する前記輻射光吸収強度分布を示すテーブルおよび前記第1の温度を参照して前記ボロメータ夫々の出力電圧の補正値を求めて出力電圧のばらつきを補正する工程と、
    を含むことを特徴とする、請求項1に記載の赤外線センサの温度補償方法。
  3. (f)前記赤外線センサ上における前記入射光以外の輻射光の強度に相当する一様な電圧変動を補正する工程
    をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の赤外線センサの温度補償方法。
  4. 前記の補正工程(f)が、
    (g)前記輻射光の発生源の温度を第2の温度として計測する工程と、
    (h)前記輻射光の発生源の温度に対する前記輻射光の強度を示すテーブルおよび前記第2の温度を参照して一様な出力電圧の補正値を求めて出力電圧変動を補正する工程と、
    をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の赤外線センサの温度補償方法。
  5. 赤外線センサを構成するボロメータアレイに含まれるボロメータ夫々の温度特性に起因する出力電圧のばらつきを補正するテーブルと、
    前記赤外線センサ上における計測すべき入射光の強度分布および前記ボロメータ夫々の温度特性の相違に起因する出力電圧のばらつきを補正するテーブルと、
    を備えた温度補償装置であって、
    前記赤外線センサ上における前記入射光以外の輻射光の強度分布および前記ボロメータ夫々の温度特性の相違に起因する出力電圧のばらつき(輻射光吸収強度分布という。以下同じ。)を補正する輻射光吸収強度分布補正手段
    をさらに備えたことを特徴とする赤外線センサの温度補償装置。
  6. 前記輻射光吸収強度分布補正手段が、
    前記赤外線センサの温度に対する前記輻射光吸収強度分布を示す第1のテーブルと、
    前記赤外線センサの温度を計測する第1の温度計と、
    を備え、
    前記第1の温度計によって計測された第1の温度および前記第1のテーブルを参照して、前記ボロメータ夫々の出力電圧の補正値を求めて出力電圧のばらつきを補正するように構成されたことを特徴とする、請求項5に記載の赤外線センサの温度補償装置。
  7. 前記赤外線センサ上における前記入射光以外の輻射光の強度に相当する一様な電圧変動を補正する輻射光強度補正手段
    をさらに備えたことを特徴とする、請求項5に記載の赤外線センサの温度補償装置。
  8. 前記輻射光強度補正手段が、
    前記輻射光の発生源の温度に対する前記輻射光の強度を示す第2のテーブルと、
    前記輻射光の発生源の温度を計測する第2の温度計と、
    をさらに備え、
    前記第2の温度計によって計測された第2の温度および前記第2のテーブルを参照して、一様な出力電圧の補正値を求めて出力電圧変動を補正するように構成されたことを特徴とする、請求項7に記載の赤外線センサの温度補償装置。
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