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JP2008179569A - 薬剤及び薬剤の適用方法 - Google Patents

薬剤及び薬剤の適用方法 Download PDF

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JP2008179569A JP2007014746A JP2007014746A JP2008179569A JP 2008179569 A JP2008179569 A JP 2008179569A JP 2007014746 A JP2007014746 A JP 2007014746A JP 2007014746 A JP2007014746 A JP 2007014746A JP 2008179569 A JP2008179569 A JP 2008179569A
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Tomohisa Takagi
智久 高木
Yuji Naito
裕二 内藤
Toshimitsu Okuda
敏充 奥田
Takahiro Suzuki
隆裕 鈴木
Katsura Mizushima
かつら 水島
Hisato Tsuboi
寿人 坪井
Hirokazu Kajikawa
洋和 梶川
Tetsuya Okayama
哲也 岡山
Tatsuji Omatsu
達司 尾松
Ikudai Hirata
育大 平田
Hiroshi Ichikawa
寛 市川
Osamu Handa
修 半田
Satoshi Furukura
聡 古倉
Norimasa Yoshida
憲正 吉田
Toshiichi Yoshikawa
敏一 吉川
Hideo Ueda
秀雄 植田
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Abstract

【課題】炎症性大腸疾患患者に対して、10から30%で薬物療法が無効であるとされており、その場合は外科的治療が適応され、患部を切除が行われている。これでは患者に負担が大きいため、本発明者等は、一酸化炭素(CO)の薬理作用に着目し、その投与方法を検討した結果完成したものである。
【解決手段】胃潰瘍、炎症性腸疾患などの消化管炎症の治療用の薬剤であって、一酸化炭素が溶解した水溶液であり、消化管に直接局所投与して用いるもの及び経口摂取や腸内に挿入した管を用いることによって、直接患部に請求項1記載の薬剤を局所投与するもの。
【選択図】 なし

Description

本発明は、薬剤及び薬剤の適用方法に関するものである。
炎症性大腸疾患(intestinal bowl disease, IBD)に対して、従来、様々な薬物療法剤が使用されてきているが、原因が不明であり、根治治療は望めないばかりか、使用時に細心の注意を払っていても副作用を伴うなど問題が多く、使用上困難が伴っているのが現状である。
炎症性大腸疾患は通常、狭義には持続性炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis, UC)とクローン病(Crohn disease, CD)を意味するが、広義には病原微生物、薬物、血行障害、放射線、 化学的・物理的要因などによる疾患を含める概念として理解されている。
特に、UCやCDはいずれも原因が明らかでなく、腸粘膜には慢性非特異性炎症が存在し、臨床的には難治性で再発、再燃を繰り返すこと、根治療法がないことなど本症は、極めて多彩な病態を示す。さらに若年者に多く発症し、進学、就職、結婚など多くの社会的要因をも考慮して診療に当たらねばならないもので、これらの診断、治療について厚生労働省は専門研究班を組織して臨床的にも大きな課題となっている。
治療方法としては、内科治療として一般療法(心身の安静、腸管の安静、食事療法および全身状態の改善)に加えて個々の症例に応じたきめの細かい療法が求められる。薬物療法としては、副腎皮質ステロイドホルモン剤、Salazosulfapyridine サラゾピリン(登録商標 )、 SASP、免疫抑制剤などが主であり近年SASPに比べ副作用の少ない5-aminosalicylic acid(メサラジン、ペンサタ(登録商標)、5-ASA)も使用されるようになっている。
また、クローン病(CD)は主として若い成人において口腔から肛門に至る全消化管に病変が起こるもので病理学的には全層性非特異的肉芽腫性病変を示し、臨床的に再発、再燃を繰り返す、やはり原因不明の難治性腸疾患である。治療には栄養療法と薬物療法を主体とする内科的治療が基本となるが、腸閉塞、穿孔、大量出血などに対しては手術による適応となる。薬物療法には、やはりステロイド、5-aminosalicylic acid(5-ASA)や免疫抑制剤、TNF-αの抗体などの生物学的製剤が用いられるが、Drug delivery systemの応用など副作用の少ない有効な薬の開発が課題となっている。
さらに、胃・十二指腸潰瘍の治療は、酸分泌抑制剤の登場により劇的に薬物治療が奏効しており、また、発症原因の一つとしてヘリコバクター・ピロリ感染の関与も指摘されておりその除菌治療も推奨されている。しかしながら、依然再燃を繰り返す症例、薬物治療が奏効しない症例など治療に難渋する症例も少なからず認められる。また、酸分泌抑制剤の長期投与には安全性の点における疑念も拭いきれず、より優れた治療薬の開拓が望まれているのが現状である。
この炎症性腸疾患患者に対して、10〜30%で薬物療法が無効であるとされており、その場合は外科的治療が適応され、患部を切除が行われている。また、ステロイド等薬物離脱時に容易に再燃を繰り返すことから、結果的に薬物の長期投与となり、重症副作用(糖尿病、大腿骨頭壊死など)が発現する可能性があるなどのため更なる治療技術(薬)の改善、開発が必要とされるのが現状である。
このような現状に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明薬剤及び薬剤の適用方法を完成したものであり、その特徴とするところは、薬剤にあっては、胃潰瘍、炎症性腸疾患などの消化管炎症の治療用の薬剤であって、一酸化炭素が溶解した水溶液であり、消化器系臓器に直接局所投与して用いる点にあり、薬剤の適用方法にあっては、経口投与や腸内に挿入した管から直接患部に請求項1記載の薬剤を局所投与する点にある。
本発明は、本発明者が後述する一酸化炭素(CO)の薬理作用に着目し、その投与方法を検討した結果完成したものであり、COを炎症局所にCO溶剤として経口投与や肛門からの経管投与で簡単、短時間操作で可能である。また、投与後の処置も全くといって良いほど不要で、しかもCOによる副作用はない、という従来の治療薬では考えられない優れた特性を有しているのである。
本発明では、CO溶液は、密閉した容器に保管される。この時に容器内の気相部分はCOのみでも他の気体との混合物でもよい。溶解度はヘンリーの法則から混合気体中の濃度に比例するため、気相部分のCO濃度は高い法が一般的には効果が大きいと考えられる。
COは通常、水に溶けにくいガスとして知られるが、発明者が測定したところ次のような溶解性を確認した。これは、化学便覧にみる溶解度とほぼ同じで水溶液にCOと結合性をもつ金属成分(たとえば、ヘムなど)が含まれない限りヘンリーの法則に基づきガス濃度(分圧)に比例している。
気相でのCO濃度 検知濃度
50% 532ppm
5% 52ppm
1% 11.5ppm
0.1% 1.8ppm
COは血液中のヘモグロビンとの結合力が酸素(O2)の250倍も大きい。そのために、たびたびCO中毒事故が発生し、COは有毒ガスとされている。しかし、近年の研究からCOが生体内で生理活性を有することが知られるようになって来た。
もともと有害であるとされるCOが生体内で産生されていることは、19世紀の末にはすでに健常なヒトや動物の血中に存在が知られていたにもかかわらず、ほぼ100年間は研究の対象にならなかった。しかし 、1990年代初頭になって世界的に医学・生化学研究者の間でヘムオキ シゲナーゼ(heme oxygenase、HO)研究が急速に活発になった関係から、COの生体内での様々な作用が知られるようになり、臨床の現場でもにわかに注目されるようになった。
COは生体内ではヘムの開裂によって産生される。このヘムとは、ヘモグロビンとして赤血球などに大量に存在するが、たとえば赤血球が120日の寿命で崩壊される、このときにヘム核を分解するのにHOが働く。このHOの酵素作用でヘムから生成されたCOは、赤血球Hbと結合して一酸化炭素ヘモグロビン(Carboxylhemoglobin: COHb)となって、血液に乗って体内を循環 し肺でO2と置き換わって遊離COとして呼気中に排泄される。これが呼気中COであり、誰もが1−2ppm程度排出している。
COは非常に安定なガス分子であり、生体内でロスが無いので血中にしろ、呼気中にしろ、CO濃度は、生体内COの生成量と連動することになる。すなわち、CO発生量はHOの増加に比例している。中でも誘導型 (inducible) HO-1は、ストレス応答で誘導されることからこのCOをモニターすることによってストレス程度を知ることができると考えられる。
一方、COは、近年の研究からさまざまな生理的働きがあることが知られるようになってきた。前節で述べたようにHO-1の発現とCOの生成は相関関係にあるが、生成したCOそのものにも抗炎症作用、抗アポトーシス作用、抗増殖作用などの抗ストレス作用、細胞組織の恒常性作用があることが知られるようになってきた。このHOが恒常的にヘム分解に働くだけでなく、ストレスに対して増加するHO-1は、生体の恒常性を維持し健康状態を保つのに非常に重要な役割をもつ生体因子(酵素)である。たとえば、HO-1の欠損したヒトやマウスは、激しい感染症などの病変に侵され生存が困難であることが明らかにされた。このことからも分かるように、HO-1は様々なストレスから生体を防御する働きを持ち、われわれの生存に不可欠なものである。
また、このことを裏付けるものとして、HO-1を作為的に増やせば様々な炎症性疾患において症状が軽減され、症状の重症度と比例してHO-1が増加することが知られている。
さらに、COを直接患者に付与して治療効果、また移植臓器の保護効果などを活用する臨床応用への期待が高まっている。
COの投与方法は、従来はガス室での生体飼育によるガス暴露法が行われてきた。しかし、これは動物実験レベルでは小規模で、簡単な操作であるが、人体への実用化を念頭に操作を考慮すれば更なる工夫が必要とされた。そこで、発明者は、種々の研究を重ねて得た方法が本発明による投与方法である。
CO水溶液をセプタム付き容器に収納し必要量をシリンジで採取して患部に経管的に投与すると言う簡単な操作である。COの安全性に関しては、必要投与量を直接患部に投与すること、また、消化管は閉鎖系と考えられ外部への漏えいは無いと考えられること、また投与量が生体に吸収されたとしても有害性の無い量を調整することができるので問題はなく安全である。さらに、このガスは、所期の目的とする作用を発現した後は、血中に入り呼気から比較的速やかに排泄されるので、副作用などは全く発生しないと考えられる。
本発明では、CO溶液の経肛門的投与により潰瘍の形成が抑制され、腸湿重量が軽減し、その機序の一端として、粘膜の脂質過酸化の抑制、粘膜の好中球浸潤の抑制が認められ、さらに著明な腸炎治癒促進効果が認められた。また、著しい胃潰瘍治癒促進効果が認められ、有意に潰瘍の治癒が促進されていることが確認された。このように効果を有する本発明は、臨床的な環境に適合した器具がコンパクト、操作が極めて簡単、安全な方法であること、そして生体には副作用をもたらさないと言う治療薬として理想的な条件を備えていることが最も大きな特徴である。
要するに本発明薬剤及び薬剤の適用方法には次のような大きな効果がある。
(1) 薬剤が水溶液であるため製造が簡単である。
(2) 患部への適用も簡単である。
(3) 炎症性消化管疾患の治療に大きな効果を有する。
以下実施例に従って本発明をより詳細に説明する。
以下CO溶液の使用方法とその効果性について述べる。
ラット腸炎モデルにおける検討
CO溶液による急性腸炎における発症抑制効果
7週齢雄性Wistar ratに対し腹部正中線で開腹し、遠位大腸を露出し、trinitrobenzene sulfonic acid (TNBS)、0.1M-100μl(35% ETOH)を既報に従い、大腸管腔内に注入し、TNBS腸炎を作製した。TNBS腸炎作製直後より、CO溶液1mlを経肛門的に1日2回投与し、TNBS腸炎作製後3 日目に病変を評価した。評価項目としては、潰瘍面積、腸湿重量、大腸粘膜脂質過酸化、大腸粘膜好中球浸潤を評価した。大腸粘膜脂質過酸化はTBARSを、好中球浸潤はMPO活性で評価した。
また、ブランクとして潰瘍を作製しないラットにも同様のものを投与して結果を見た。
評価の結果は、次の通りである。
潰瘍面積(潰瘍ラット)
ブランク 68.5±3.7mm2
実施例 31.3±7.9mm2
潰瘍面積(健常ラット)
ブランク 0.4±0.4mm2

実施例 0.67±0.67mm2
腸湿重量(潰瘍ラット)
ブランク 611.8±24.6mg
実施例 514.2±12.5mg
腸湿重量(健常ラット)
ブランク 336.4±11.6mg
実施例 331±11.9mg
大腸粘膜脂質過酸化(潰瘍ラット)
ブランク 4.04±0.13nmol/mg prt.
実施例 2.38±0.45nmol/mg prt.
大腸粘膜脂質過酸化(健常ラット)
ブランク 1.39±0.36nmol/mg prt.
実施例 1.27±0.27nmol/mg prt.
大腸粘膜好中球浸潤(潰瘍ラット)
ブランク 2.34±1.12mU/mg prt.
実施例 0.66±0.40mU/mg prt.
大腸粘膜好中球浸潤(健常ラット)
ブランク 0.078±0.018mU/mg prt.
実施例 0.095±0.031mU/mg prt.
以上より、CO溶液の経肛門的投与により潰瘍の形成が抑制され、腸湿重量が軽減し、その機序の一端として、粘膜の脂質過酸化の抑制、粘膜の好中球浸潤の抑制が認められた。
CO溶液による腸炎治癒促進効果
上述モデルにおいて大腸潰瘍病変はTNBS注入後2日目には十分な病変が形成されていることが判明しており、TNBS腸炎作製後3日目よりCO溶液-1mlを経肛門的に1日2回投与し、TNBS腸炎作製後7日目に潰瘍面 積を評価し、病変の治癒促進効果を検討した。下記に示すように著明な腸炎治癒促進効果が認められた。
潰瘍面積 初日 0±0
2日目 69.8±17.7mm2
4日目 ブランク 60.9±12.3mm2
実施例 61.5±14.3mm2
7日目 ブランク 69.3±14.3mm2
実施例 26.0±13.1mm2
マウス酢酸胃潰瘍モデルにおける潰瘍治癒促進効果
7週齢雄性 C57BL/6マウスを用いて、ネンブタール麻酔下に腹部正中線で開腹し、後胃前壁側に40%酢酸 (30秒)押し当て法にて酢酸潰瘍を作製した。酢酸潰瘍作製1週間後に病変の潰瘍面積を計測し評価した。本モデルにおいては酢酸潰瘍作製後3日後には病変が形成され、ピークを迎えることが判明しており、同日よりCO溶液0.2mlを1日2回経口投与し、その治癒促進効果を判定した。
腸湿重量 初日 410.5±23.6mg
2日目 789.8±79.3mg
4日目 ブランク 809.6±41.7mg
実施例 754.8±70.7mg
7日目 ブランク 852.2±49.7mg
実施例 674.8±56.6mg
潰瘍面積
初日 0±0
3日目 19.88±1.99mm2
7日目 ブランク 11.32±2.04mm2
実施例 4.53±0.60mm2
以上のように、CO溶液の投与により著しい胃潰瘍治癒促進効果が認められた。

Claims (3)

  1. 胃潰瘍、炎症性腸疾患などの消化管炎症に対する治療用の薬剤であって、一酸化炭素が溶解した水溶液であり、消化管に直接局所投与して用いることを特徴とする薬剤。
  2. 該水溶液には、ヘム核を有する成分(ヘモグロビン、へミン等)Co、Mg、Znの1種又は複数を含むものである請求項1記載の薬剤。
  3. 経口摂取や腸内に挿入した管を用いることによって、直接患部に請求項1記載の薬剤を局所投与することを特徴とする薬剤の適用方法。
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