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JP2008168787A - トーコレクトブッシュおよびその製造方法 - Google Patents

トーコレクトブッシュおよびその製造方法 Download PDF

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JP2008168787A
JP2008168787A JP2007003932A JP2007003932A JP2008168787A JP 2008168787 A JP2008168787 A JP 2008168787A JP 2007003932 A JP2007003932 A JP 2007003932A JP 2007003932 A JP2007003932 A JP 2007003932A JP 2008168787 A JP2008168787 A JP 2008168787A
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bush
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Tatsuya Ito
達哉 伊藤
Hideto Nishinaka
秀人 西仲
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Sumitomo Riko Co Ltd
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Sumitomo Riko Co Ltd
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Abstract

【課題】ブッシュ本体部分を構成する本体ゴム弾性体の軸方向端部における亀裂の発生が抑えられて、優れた耐久性が発揮されるトーコレクトブッシュを提供すること。
【解決手段】ブッシュ本体部分32を構成するアウタ筒部材14に縮径加工を施して本体ゴム弾性体16に加える予圧縮の大きさを周方向で異ならせて、トーコレクト部分36が突出する径方向側に位置する本体ゴム弾性体16の軸方向端面46の外周縁部50を予圧縮の大きい領域に位置せしめる一方、それと反対の径方向側に位置する本体ゴム弾性体16の軸方向端面46の外周縁部50をそれよりも予圧縮の小さい領域に位置せしめた。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車のサスペンションブッシュの一種であるトーコレクトブッシュの関連技術に係り、特に、トーションビーム式リジットアクスル型のサスペンション機構に用いられて、左右のトレーリングアームのボデー側への取付部位に装着される新規な構造のトーコレクトブッシュおよびその製造方法に関するものである。
従来から、自動車におけるトーションビーム式リジットアクスル型のサスペンション機構において、トーションビーム(ツイストビーム又は中間ビームとも言う)で連結された左右のトレーリングアームのボデー側への取付部位に装着されるサスペンションブッシュの一種として、トーコレクトブッシュが知られている。このトーコレクトブッシュは、例えば特開2006−96616号公報(特許文献1)等に開示されているように、インナ軸部材とアウタ筒部材を本体ゴム弾性体で連結したブッシュ本体部分の軸方向一方の端部において、インナ軸部材とアウタ筒部材からそれぞれ斜め外方に突出するインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部をトーコレクトゴムで連結したトーコレクト部分を設けた構造とされている。
このトーコレクトブッシュは、ブッシュ本体部分の中心軸(インナ軸金具およびアウタ筒金具の中心軸)が車両横方向となり、トーコレクト部分が突出する径方向が車両前後方向となる状態で自動車に装着される。これにより、車両のコーナリング時に及ぼされる横方向荷重に対して、トーコレクト部分による分力作用が発揮されて、車輪のトー変化を抑えるなどして車両の走行安定性を向上させることが出来る。
ところが、このようなトーコレクトブッシュにおいては、ブッシュ本体部分を構成する本体ゴム弾性体における特定部位に亀裂等の損傷が発生し易く、かかる損傷によって十分な耐久性を得ることが難しいということが、本発明者によって明らかとなった。具体的には、本体ゴム弾性体のうち、ゴムの外周縁部(アウタへの固着面近く)において、トーコレクト部分が突出する径方向に位置する部分で亀裂などが発生し易いことが認められた。
かかる問題に対して、本発明者が多くの実験と検討を重ねたところ、トーコレクトブッシュに特有のばね特性に起因するものであろうとの新たな知見を得るに至った。即ち、トーコレクトブッシュでは、中心軸に対して自動車の前方又は後方に位置する径方向一方の側だけにトーコレクト部分が形成されていることから、インナ軸金具がアウタ筒金具に対して車両前方に相対変位した場合と、反対に車両後方に相対変位した場合とで、インナ軸金具とアウタ筒金具の径方向の荷重−撓み特性が異なる。具体的には、インナ軸金具がアウタ筒金具に対してトーコレクト部分の突出方向と同じ径方向に相対変位せしめられる場合には、トーコレクトゴムの圧縮ばねが有効に作用するが、それと反対に、インナ軸金具がアウタ筒金具に対してトーコレクト部分の突出方向と反対の径方向に相対変位せしめられる場合には、トーコレクトゴムの圧縮ばねが作用しない。それ故、前者の場合に比して後者の場合(インナ軸金具がアウタ筒金具に対してトーコレクト部分の突出方向と反対の径方向に相対変位せしめられる場合)の方が、インナ軸金具のアウタ筒金具に対する相対的変位量が大きくなる傾向にある。
これに起因して、本体ゴム弾性体のうち、インナ軸金具に対してトーコレクト部分の突出方向となる径方向一方の側に位置する部分では引張変形量が大きくなる一方、それと反対の径方向他方の側に位置する部分では圧縮変形量が大きくなる。なかでも特に、本体ゴム弾性体において、トーコレクト部分を構成する傾斜部による拘束力が及ぼされない、トーコレクト部分と反対側の軸方向端面に亀裂が発生し易いことも確認されている。
なお、一般にゴム弾性体は圧縮変形より引張変形に対する耐久性が低いことから、引張変形量が大きくなる、上記のインナ軸金具に対してトーコレクト部分の突出方向となる径方向一方の側に位置する部分における亀裂の発生が一層問題となり易いが、かといって、本体ゴム弾性体の加硫成形後にアウタ筒金具を大きく縮径させることにより本体ゴム弾性体に大きな予圧縮を加えると、確かに当該部分における引張応力に起因する亀裂の発生は抑えられるが、その代わり、インナ軸金具に対してトーコレクト部分の突出方向と反対の径方向他方の側に位置する部分に作用する圧縮変形量が大きくなり過ぎて、圧縮変形に起因する亀裂が発生し易くなってしまうという問題の発生が、本発明者によって確認されている。従って、単に本体ゴム弾性体に大きな予圧縮を加えることは、上述の如き本体ゴム弾性体における耐久性の問題に有効な解決策を与えるものでない。
特開2006−96616号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、車両への装着状態下において、目的とするばね特性を損なうことなく、本体ゴム弾性体における亀裂等の損傷が軽減乃至は回避されて、良好なる耐久性が発揮される新規な構造のトーコレクトブッシュおよびトーコレクトブッシュの製造方法を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明の特徴とするところは、インナ軸部材とその外方に離隔配置されたアウタ筒部材とを、それらの径方向対向面間に介装された筒状の本体ゴム弾性体で連結することによりブッシュ本体部分を構成する一方、該インナ軸部材の軸方向一方の端部において軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設けると共に、該アウタ筒部材の軸方向一方の端部において軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出して該インナ軸部材に対して離隔して対向位置せしめられるアウタ側傾斜部を設けて、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間をトーコレクトゴム弾性体で連結することによりトーコレクト部分を構成し、更に、該インナ側傾斜部及び該アウタ側傾斜部の突出方向となる径方向で該インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、該ブッシュ本体部分を構成する該本体ゴム弾性体における該インナ軸部材と該アウタ筒部材の間を軸方向に延びる第一のスリットと第二のスリットが、該トーコレクト部分と反対の軸方向端面に開口して形成されたトーコレクトブッシュにおいて、前記ブッシュ本体部分を構成する前記アウタ筒部材に対して縮径加工が施されて前記本体ゴム弾性体に予圧縮が加えられていると共に、少なくとも前記トーコレクト部分と軸方向反対側に位置する該本体ゴム弾性体の軸方向他端側の外周縁部において予圧縮率が周方向で異ならされており、該トーコレクト部分が突出する径方向側がそれに反対の径方向側に比して大きな予圧縮率とされているトーコレクトブッシュにある。
このような本発明に従う構造とされたトーコレクトブッシュにあっては、ブッシュ本体部分を構成する本体ゴム弾性体において予圧縮の大きい部分と小さい部分が周方向で異なる位置に設けられている。そして、引張応力に起因すると考えられる亀裂発生等が問題となる部分である、本体ゴム弾性体のトーコレクト部分と軸方向反対側端部のうちでインナ軸部材に対してトーコレクト部分の突出方向となる径方向一方の側に位置する部分であって、アウタ筒部材に対して固着された外周縁部が、予圧縮の大きい領域に設定されている。一方、圧縮応力に起因すると考えられる亀裂発生等が問題となる部分である、本体ゴム弾性体のトーコレクト部分と軸方向反対側端部のうちでインナ軸部材に対してトーコレクト部分の突出方向と反対となる径方向他方の側に位置する部分であって、アウタ筒部材に対して固着された外周縁部が、予圧縮の小さい領域に設定されている。
これにより、本体ゴム弾性体において、上述の引張応力に起因すると考えられる亀裂発生等が問題となる部分では、大きな予圧縮が及ぼされて、装着状態下の外力作用で生ぜしめられる引張応力が抑えられて、亀裂発生が抑えられる。また、上述の圧縮応力に起因すると考えられる亀裂発生等が問題となる部分では、過度の予圧縮が回避されて、装着状態下の外力作用で生ぜしめられる圧縮応力が低減されることにより、亀裂発生が抑えられる。その結果、本体ゴム弾性体ひいてはトーコレクトブッシュの耐久性が有利に確保されるのである。
しかも、本発明に従う構造とされたトーコレクトブッシュでは、亀裂発生防止のために本体ゴム弾性体やトーコレクトゴム弾性体の弾性変形量を不必要に制限することもないことから、ブッシュ本体部分とトーコレクト部分との何れにおいても、基本的なばね特性等は十分に確保され得る。
また、本発明においては、例えば次の態様が採用され得る。即ち、前記アウタ筒部材には、筒状部の軸方向中央部分に大径部が形成されていると共に、該大径部に対して前記アウタ側傾斜部と反対の軸方向側に小径部が形成されており、該大径部において所定の装着穴に嵌着固定されるようになっている一方、該大径部と該小径部の軸方向間には縮径率が周方向で異ならされた異形筒状部が設けられて、該異形筒状部において前記トーコレクト部分の突出する径方向側に比してそれに反対の径方向側の方が大きな半径寸法とされており、且つ該異形筒状部の半径寸法が全周に亘って該アウタ筒部材における該小径部と該大径部の間の寸法範囲に設定されている態様が、本発明において採用可能である。
このような態様においては、サスペンション部材やボデー側部材に設けられたブッシュ組付用の装着穴に対して嵌着固定される大径部に比して、それと同じか或いはそれより小さい外径寸法をもって異形筒状部が形成されることから、この異形筒状部の存在に起因する、トーコレクトブッシュの装着穴への組み付けへの支障が回避され得る。
また、本発明においては、例えば次の態様が採用され得る。即ち、前記アウタ筒部材には、前記トーコレクト部分側の軸方向端部側において、軸方向中央側の大径部よりも小径のくびれ状部が形成されている態様が、本発明において採用可能である。
このような態様に従ってくびれ状部をアウタ筒部材に設けることにより、該くびれ状部のリブ作用によって部材強度の向上が図られ得る。また、くびれ状部の開口端部から斜め外方に延び出してアウタ側傾斜部が形成されることにより、アウタ側傾斜部のインナ側傾斜部に対する対向面積が、くびれ状部によって径方向内方にまで広がって有利に確保され得て、目的とするトーコレクト作用の向上も図られ得る。
また、本発明においては、例えば次の態様が採用され得る。即ち、前記インナ軸部材の軸方向一方の端部には、全周に亘って軸直角方向外方に広がる拘束板部が設けられており、この拘束板部が周上の一カ所で軸方向斜め外方に向かって傾斜せしめられることにより前記インナ側傾斜部が構成されていると共に、前記本体ゴム弾性体の軸方向一方の端面に該拘束板部が重ね合わされて固着されることにより前記第一及び第二のスリットが軸方向他端面だけに開口する有底形状とされている態様が、本発明において採用可能である。
このような態様に従って拘束板部を採用することにより、本体ゴム弾性体における軸方向一方側の端部(トーコレクト部分の位置する軸方向側端部)が、そこに固着された拘束板部によって変形拘束されることから、大きな変形が抑えられる。その結果、かかる軸方向一方の端部側でも、本体ゴム弾性体の大きな変形に起因する亀裂等の不具合の発生が効果的に防止される。なお、拘束板部は、インナ軸部材に対して固定的に設けられていれば良く、インナ軸部材に対して一体成形でも別体固着でも良い。
また、本発明においては、例えば次の態様が採用され得る。即ち、前記本体ゴム弾性体の前記軸方向他端面は、前記アウタ筒部材側から前記インナ軸部材側に向かって径方向内方に行くに従って軸方向外方に延び出したテーパ状傾斜面とされており、そのテーパ傾斜角度が周方向の全周に亘って一定とされている態様が採用可能である。
このような態様に従い、テーパ状傾斜面をもって本体ゴム弾性体の軸方向他端面を形成することにより、本体ゴム弾性体のゴムボリュームを内周側でも有利に確保できると共に、本体ゴム弾性体の成形用型において、かかる軸方向他端面の成形面形状を周方向で特定方向性のない簡単な形状をもって容易に形成することも可能となる。
また、本発明においては、例えば次の態様が採用され得る。即ち、前記ブッシュ本体部分を構成する前記本体ゴム弾性体には、前記第一のスリットと前記第二のスリットの対向方向に対して直交する径方向で前記インナ軸部材を挟んだ両側において、それぞれ、該インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間を軸方向に延びる第三のスリットと第四のスリットが、前記トーコレクト部分と反対の軸方向端面に開口して形成されている態様が、採用可能である。
このような態様に従い、第三及び第四のスリットを採用することにより、車両上下方向のブッシュばね特性のチューニング自由度が一層大きく確保される。ところで、これら第三及び第四のスリットを形成すると、第一〜第四の周方向で各隣接するスリット間を径方向に延びる4本の脚部構造の本体ゴム弾性体において、そのゴムボリュームが小さくなることと、スリットによる応力集中作用が惹起されることとに起因して、亀裂等の発生がより大きな問題として懸念される。しかしながら、本発明においては、前述の如く、4本の脚部構造の本体ゴム弾性体において、引張応力が問題となり易い、トーコレクト部分が位置する径方向一方の側では、大きな予圧縮が及ぼされて引張応力の緩和が図られると共に、圧縮応力が問題となり易い、トーコレクト部分と反対の径方向他方の側では、小さな予圧縮とされて過度の圧縮応力の発生が抑えられることから、良好な耐久性も併せて確保することが出来るのである。
また、製造方法に関する本発明の特徴とするところは、インナ軸部材とその外方に離隔配置されたアウタ筒部材とを、それらの径方向対向面間に介装された筒状の本体ゴム弾性体で連結することによりブッシュ本体部分を構成する一方、該インナ軸部材の軸方向一方の端部において軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設けると共に、該アウタ筒部材の軸方向一方の端部において軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出して該インナ軸部材に対して離隔して対向位置せしめられるアウタ側傾斜部を設けて、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間をトーコレクトゴム弾性体で連結することによりトーコレクト部分を構成し、更に、該インナ側傾斜部及び該アウタ側傾斜部の突出方向となる径方向で該インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、該ブッシュ本体部分を構成する該本体ゴム弾性体における該インナ軸部材と該アウタ筒部材の間を軸方向に延びる第一のスリットと第二のスリットが、該トーコレクト部分と反対の軸方向端面に開口して形成されたトーコレクトブッシュの製造方法であって、前記本体ゴム弾性体の内外周面に前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材を加硫接着せしめた一体加硫成形品を準備し、該一体加硫成形品における該アウタ筒部材に対して縮径加工を施して該本体ゴム弾性体に予圧縮を加えるに際して、該本体ゴム弾性体における予圧縮率を、少なくとも前記トーコレクト部分と軸方向反対側に位置する該本体ゴム弾性体の軸方向他端側が位置する部分において周方向で異ならせて、該トーコレクト部分が突出する径方向側がそれに反対の径方向側に比して予圧縮率が大きくなるようにするトーコレクトブッシュの製造方法にある。
このような本発明方法に従えば、要求される防振特性やトーコレクト性能等を殆ど低下させることなく、優れた耐久性を有利に得ることの出来る、前述の如き新規な構造のトーコレクトブッシュを効率的に製造して提供することが出来るのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1〜4には、本発明の一実施形態としてのトーコレクトブッシュ10が、示されている。このトーコレクトブッシュ10は、インナ軸部材としての内筒金具12とアウタ筒部材としての外筒金具14が、互いに径方向に離隔して配置されていると共に、それら内外筒金具12,14間に本体ゴム弾性体16が介装されて、両金具12,14が弾性的に連結された構造とされている。
より詳細には、内筒金具12は、ストレートな小径の円筒形状を有しており、軸方向一方(図1中の左方)の端部近くには、内筒金具12の全周に亘って軸直角方向外方に広がる拘束板部としての固定プレート18が固着されている。この固定プレート18は、プレス金具等の剛性部材で形成されており、中央には装着孔20が設けられている。そして、装着孔20に対して内筒金具12が挿通され、装着孔20の内周縁部が内筒金具12に溶着されることによって、固定プレート18が内筒金具12に固着されている。
また、固定プレート18は、図1中の上側の略半周部分が、内筒金具12から離れるに従って幅広となる略扇形状を有しており、内筒金具12の中心軸22に対して傾斜して軸方向斜め外方に向かって突出せしめられている。また、かかるインナ側傾斜部19は、略全体が、内筒金具12の中心軸22に対して略一定の傾斜角度:θaで外方に向かって突設されており、それによって、中心軸22に対して傾斜した傾斜面が形成されている。即ち、この扇形状の上半部分によってインナ側傾斜部19が構成されている。なお、インナ側傾斜部19は、その径方向外方への突出先端部が、軸方向への投影で、外筒金具14にまで至る大きさで広がっている。
更にまた、固定プレート18の幅方向両側縁部(図2中の左右両側に相当する各突出先端部分)には、内筒金具12の軸方向外方に向かって屈曲せしめられた補強リブ26(図3参照)が一体形成されている。更に、固定プレート18の下方には、略平板形状で広がって、外筒金具14の軸方向外方に離隔位置する当接部27が一体形成されている。
また一方、外筒金具14は、大径の円筒形状を有しており、内筒金具12に外挿されることにより、内筒金具12の径方向外方に離隔して内筒金具12と同一中心軸(22)上に配されている。なお、外筒金具14の軸方向長さは、内筒金具12よりも短くされており、内筒金具12の軸方向両端部分が外筒金具14から軸方向外方に突出せしめられている。また、外筒金具14の軸方向一方(図1中の左方)の開口周縁部には、径方向外方に突出して周方向に連続して延びるフランジ状部28が一体形成されている。
そして、フランジ状部28の周上の一部分(図1,2中の上側部分)には、アウタ側傾斜部30が形成されている。このアウタ側傾斜部30は、フランジ状部28の径方向外方に延長されていると共に、内筒金具12の中心軸22に対して前記インナ側傾斜部19と略同じ傾斜角度:θbで、外筒金具14の軸方向外方に傾斜せしめられており、内筒金具12に突設されたインナ側傾斜部19に対して斜め軸方向に離隔し、インナ側傾斜部19に対して略平行に対向位置せしめられている。これにより、本実施形態では、インナ側傾斜部19とアウタ側傾斜部30の対向面間距離が、略一定とされている。
また、アウタ側傾斜部30は、その径方向外方への突出先端縁部が、インナ側傾斜部19よりも大径の円弧形状とされていると共に、その突出先端縁部の周方向長さも、インナ側傾斜部19よりも大きくされて、インナ側傾斜部19の周方向両側に張り出して位置せしめられている。
さらに、本体ゴム弾性体16は、全体として厚肉の略円筒形状を有しており、内筒金具12と外筒金具14の径方向対向面間に介在せしめられている。そして、本体ゴム弾性体16の内外周面が、内筒金具12の外周面と外筒金具14の内周面に対してそれぞれ加硫接着されることにより、本体ゴム弾性体16が、それら内外筒金具12,14を有する一体加硫成形品として形成されている。また、本実施形態では、内外筒金具12,14が本体ゴム弾性体16で連結されることによって、ブッシュ本体部分32が構成されている。
更にまた、本体ゴム弾性体16は、インナ側傾斜部19とアウタ側傾斜部30の対向面間にも延び出しており、以て、それらインナ側傾斜部19とアウタ側傾斜部30の対向面間の全体に亘って充填されたトーコレクトゴム34が、本体ゴム弾性体16と一体的に形成されている。なお、本実施形態では、トーコレクトゴム34の肉厚寸法が、全体に亘って略同じとされている。
なお、このことからも明らかなように、本実施形態では、内筒金具12を挟んだ径方向一方の側(図1,2中の上側)だけに設けられた固定プレート18,アウタ側傾斜部30およびトーコレクトゴム34によって、内筒金具12の中心軸22に直交する軸直角方向(径方向)で非対称なトーコレクト部分36が構成されている。
また、外筒金具14は、ブッシュ本体部分32を構成する筒状部において径寸法が軸方向及び周方向で異ならされている。具体的には、図1に示されているように、トーコレクト部分36が位置する側から、小径のくびれ部35,大径の大径部37,周方向で径寸法が異ならされた異形筒状部38,小径の小径部39とされている。なお、本実施形態では、くびれ部35と小径部39が略同じ径寸法とされている。また、本実施形態では、かかるくびれ部35が形成されることにより、くびれ部35の開口端部から斜め外方に延び出してアウタ側傾斜部30が形成されており、その結果、アウタ側傾斜部30のインナ側傾斜部19に対する対向面積がくびれ部35により径方向内方にまで広がって有利に確保されるようになっている。
さらに、特に本実施形態では、くびれ部35と小径部39は、何れも、略一定の内外径寸法で軸方向に延びる円筒形状とされている。また、外筒金具14の軸方向略中央部分に位置せしめられた大径部37は、くびれ部35及び小径部39よりも大きな径寸法を有する部分であって、かかる大径部37においては、軸方向でトーコレクト部分36が位置する側から順に、くびれ部35に対して滑らかに内外周面を接続する大径テーパ部37bと、内外径寸法が略一定の円筒形状を有する大径円筒部37aとが、一体形成されている。なお、これらのくびれ部35,大径部37,小径部39は、何れも、中心軸22回りの回転体形状とされている。
また、本実施形態においては、大径部37と小径部39との軸方向中間部に位置して、径寸法が周方向で異ならされた異形筒状部38が形成されている。かかる異形筒状部38においては、一定の肉厚寸法とされた外筒金具14の内外径寸法が、大径部37と小径部39の内外径寸法の間で軸方向で徐変せしめられることにより、大径部37及び小径部39に対して、内外周面が滑らかに接続されている。より詳細には、異形筒状部38においては、軸方向でトーコレクト部分36が形成された側から順に、大径部側異形筒状部38aと、小径部側異形筒状部38bとが、滑らかに接続されて連続して形成されている。
先ず、大径部側異形筒状部38aにおいては、図1に示されるように、トーコレクト部分36の突出する径方向側(図1中、上側)の略半周部分のみにおいて、径寸法が軸方向で変化せしめられている。一方、小径部側異形筒状部38bにおいては、トーコレクト部分36の突出する径方向側とは反対側(図1中、下側)の略半周部分のみにおいて、径寸法が軸方向で変化せしめられている。これにより、異形筒状部38は、図4に示されるように、トーコレクト部分36が突出する径方向側(図4中、上側)が、、反対の径方向側(図4中、下側)の方が大きな半径寸法とされた、異形の円筒形状とされているのである。また、このことから明らかなように、本実施形態の外筒金具14は、そのブッシュ本体部分32を構成する筒状部がくびれ部35,大径部37,異形筒状部38,小径部39から形成された、段付円筒形状とされている。
さらに、かかる外筒金具14は、本体ゴム弾性体16の加硫成形後に縮径加工が施されることにより、本体ゴム弾性体16に対して径方向の予圧縮が及ぼされている。ここにおいて、縮径加工前の一体加硫成形品48が、図5〜6に示されている。これらに図示されているように、本実施形態では、加硫成形に採用される縮径加工前の外筒金具14は、筒状部においてくびれ部35に相当する部分だけが、他の部分(大径部37と異形筒状部38と小径部39に相当する部分)に比して小径とされており、大径部37と異形筒状部38と小径部39に相当する部分が一定の内外径を有する円筒形状とされている。
そして、かかる一体加硫成形品48における外筒金具14の筒状部に対して、例えば八方絞りや十六方絞り等の金型を用いた絞り加工等の縮径加工を施すことにより、図1〜4に示されている如きトーコレクトブッシュ10を得ることとなる。本実施形態では、大径部37,異形筒状部38,小径部39に加えて、くびれ部35にも縮径加工が施される。ここにおいて、大径部37に加えられる縮径率(即ち、縮径によって本体ゴム弾性体16に及ぼされる予圧縮率)が、小径部39に加えられる縮径率と異ならされている。具体的には、縮径率は、例えば下式にて表すことが出来るが、この縮径率が、大径部37よりも小径部39において大きくされているのである。
縮径率 =(絞り加工前の外筒金具14の内径寸法−絞り加工後の外筒金具14の内径寸法)/絞り加工前の外筒金具14の内径寸法
即ち、小径部39および大径部37の各縮径率は以下のとおりである。
小径部39の縮径率 = (D−Da)/D
大径部37の縮径率 = (D−Db)/D
但し、Da<Db
さらに、異形筒状部38においては、異形筒状部38に加えられる縮径率(即ち、縮径によって本体ゴム弾性体16に及ぼされる予圧縮率)が、周方向で異ならされている。より詳細には、異形筒状部38では、トーコレクト部分36が突出する径方向側が、それに反対の径方向側に比して、大きな予圧縮率とされている。また、異形筒状部38における縮径率は、図1における大径部側異形筒状部38aにおいては、トーコレクト部分36が突出する径方向側の略半周部分の縮径率が、軸方向で変化せしめられており、また、小径部側異形筒状部38bにおいては、トーコレクト部分36が突出する側とは径方向反対側の略半周部分の縮径率が、軸方向で変化せしめられるようになっている。これにより、異形筒状部38の縮径率は、全周に亘って、外筒金具14における小径部39の縮径率と大径部37の縮径率の間の範囲に設定されている。なお、くびれ部35も、適当な量だけ縮径されて、本体ゴム弾性体16の加硫収縮に起因する引張応力の解消等が図られている。
一方、本体ゴム弾性体16は、トーコレクトゴム34が位置しない部分(即ち、図2中の左右両側や下側の部分)でも、内筒金具12の外周面に沿って固定プレート18まで軸方向に延び出しており、以て、固定プレート18の外周面を被覆するカバーゴム33が、本体ゴム弾性体16と一体的に形成されている。特に、固定プレート18の当接部27には、軸方向内方に向かって突出するストッパゴム31が、カバーゴム33と一体成形されており、このストッパゴム31を介して、固定プレート18の当接部27が外筒金具14のフランジ状部28に対して軸方向で打ち当たることにより、軸方向のストッパ機能が発揮されるようになっている。
さらに、本体ゴム弾性体16には、内外筒金具12,14の径方向対向面間を軸方向にそれぞれ延びる第一〜第四のスリットとしての第一〜第四のすぐり部40,41,42,43が形成されている。特に、本実施形態では、何れのすぐり部40,41,42,43も、軸方向に略ストレートに延び、且つ、軸方向端面に固定プレート18が固着されていない軸方向一方の側(トーコレクト部分36と反対の、図1中の右側に位置する軸方向他端側)だけに開口する有底のポケット形状とされている。
また、これら4つのすぐり部40,41,42,43は、何れも、図2に示されているように径方向外方に向かって次第に広がる略扇形状の断面で軸方向に延びている。これにより、本体ゴム弾性体16は、周方向で各隣りあう二つのすぐり部間を径方向に延び出した4本の脚部44,44,44,44によって内外筒金具12,14を径方向で弾性連結する構造とされている。
また、4つのすぐり部40,41,42,43は、マウント中心軸(内筒金具12の中心軸)22を挟んで径方向で対向位置して各対を為す同士が、略対称形状とされている。即ち、マウント中心軸22を挟んで図2中の上下で対向位置する第一のすぐり部40と第二のすぐり部41が相互に略対称の断面形状とされていると共に、マウント中心軸22を挟んで図2中の左右で対向位置する第三のすぐり部42と第四のすぐり部43が相互に略対称の断面形状とされている。特に、トーコレクト部分36が径方向に突出する径方向(図2中の上下方向)で内筒金具12を挟んだ両側に位置する第一のすぐり部40と第二のすぐり部41は、第三及び第四のすぐり部42,43に比して、周方向に大きく広がる断面形状とされており、以て、互いに直交する二つの径方向で異なるばね特性が設定されている。
また、第一のすぐり部40と第二のすぐり部41の内部には、外周内面から径方向内方に向かって突出する弾性当接部45,45が、本体ゴム弾性体16と一体成形されている。これらの弾性当接部45,45の内筒金具12に対する当接により、内外筒金具12,14の相対的な径方向変位量を、緩衝的に制限するストッパ機能が発揮されるようになっている。
特に本実施形態では、本体ゴム弾性体16の一方の軸方向端面(図1中の左側の端面)が、直接に或いはトーコレクトゴム34と一体化されて、固定プレート18に対して加硫接着されている。これにより、本体ゴム弾性体16の軸方向一方の端部では、固定プレート18によって弾性変形量が抑えられて、過大な歪みに起因する亀裂等の発生が抑えられるようになっている。
一方、本体ゴム弾性体16の他方の軸方向端面(図1中の右側の端面)は、内外筒金具12,14間で全体に亘って自由表面をもって露出されている。そして、この軸方向他端面において、上記第一〜第四のすぐり部40,41,42,43が開口せしめられている。
ここにおいて、かかる本体ゴム弾性体16の軸方向他端面は、外筒金具14から内筒金具12に向かって径方向内方に行くに従って軸方向外方に延び出したテーパ状傾斜面46とされている。換言すれば、本体ゴム弾性体16の軸方向他端面は、内外筒金具12,14間でえぐられたような形状とされており、そのえぐられた状態で周方向の全周に亘って延びる部分は、軸方向の深さ寸法が内周部分よりも外周側に行くに従って次第に深くなっているのである。
また、この本体ゴム弾性体16の軸方向他端面においては、えぐられた状態の最底部50の軸方向深さ寸法は周方向で一定とされている。特に本実施形態では、本体ゴム弾性体16のテーパ状傾斜面46における傾斜角度が一定とされることにより、かかる最底部50の位置が周上において一定とされている。
すなわち、本体ゴム弾性体16の軸方向他端面において、えぐられた状態の最底部50は、本体ゴム弾性体16の外筒金具14への固着部位である外周縁部に位置せしめられているが、この最底部50の軸方向位置が、異形筒状部38の軸方向中央部分に位置せしめられている。特に本実施形態では、最底部50の位置は、大径部側異形筒状部38aと小径部側異形筒状部38bの境界線上に位置せしめられるようにされている。
これにより、本体ゴム弾性体16の外筒金具14への固着部分である外周縁部の位置(即ち、最底部50の位置)が、異形筒状部38の径方向内方に位置せしめられている。すなわち、大径部側異形筒状部38aでは、本体ゴム弾性体16の外筒金具14への固着部分である外周縁部が、トーコレクト部分36の突出方向となる径方向略半周部分(図1中の上側)においては軸方向で径寸法が変化せしめられているのに対して、径方向反対側の略半周部分(図1中の下側)においては、径寸法が軸方向で一定とされて、大径部37と同じ径寸法とされている。また一方、小径部側異形筒状部38bでは、トーコレクト部分36の突出方向とは径方向反対側の略半周部分(図1中の下側)の径寸法が軸方向で変化せしめられることとなるが、かかる小径部側異形筒状部38bの径方向内方には、えぐられた状態の空洞が位置するようになっている。
而して、このような構造とされたトーコレクトブッシュ10は、例えば、自動車の左右両側の車輪を支持する一対のトレーリングアームを車幅方向(車両左右方向)に延びるトーションビームで相互に連結固定せしめたトーションビーム式サスペンション機構に対して、一対が組み付けられる。即ち、その左右両側のトレーリングアームの各車両前端部分に形成された車幅方向に延びる装着孔に対して、外筒金具14をその大径部37において圧入固定する一方、内筒金具12をロッド等を介して車両ボデーに固定することにより、トーコレクトブッシュ10は、その左右方向が車両左右方向で、上下方向が車両前後方向となる状態で装着される。また、各トレーリングアームの先端部分において、トーコレクト部分36が、車両左右方向で内方に位置し、且つブッシュ本体部分32から車両前方に向かって突出せしめられるように、車両中央を前後方向に延びる対称軸(中央線)を挟んで、左右両側の一対のトーコレクトブッシュ10,10が互いに対称的に装着される。なお、本実施形態のトーコレクトブッシュ10においては、ブッシュ組付用の装着穴に嵌着固定される大径部37に対して、それと同じか或いはそれより小さい外径寸法をもって異形筒状部38が形成されていることから、異形筒状部38の存在に起因する、トーコレクトブッシュの装着穴への組み付けへの支障が有利に回避され得るようになっている。
そして、かかる装着状態下、車両のコーナリング走行に際して、タイヤから車両左右方向に及ぼされる向心力が各トーコレクトブッシュ10の内外筒金具12,14間の略軸方向に及ぼされることにより、トーコレクト部分36のインナ側傾斜部19とアウタ側傾斜部30の間でトーコレクトゴム34を介して生ぜしめられる分力に基づいて、トーションビームの変位を抑えて走行安定性の向上が図られ得ることとなるのである。
ところで、上述の如き構造とされたトーコレクトブッシュ10では、急加減速時や段差乗越時などに入力される車両前後方向の径方向荷重によって、内外筒金具12,14が、図2中の上下方向で相対変位せしめられることとなり、繰り返しの荷重入力によって本体ゴム弾性体16の特定部位における亀裂等の発生が懸念される。この本体ゴム弾性体16における車両前後方向荷重に伴う歪は、自由表面が大きくされた、トーコレクト部分36と反対側の軸方向端部(図1中の右側端部)で大きくなり、特に、本体ゴム弾性体16の外筒金具14への固着部位である外周縁部付近、即ちテーパ状傾斜面46によりえぐられた形状とされた軸方向端面の最底部50に応力集中が惹起される。なかでも、図2中の上下方向において、トーコレクト部分36の作用により、図2中の上側部分では、特に第一のすぐり部40の周方向両端部分52,52において、引張応力に起因すると考えられる亀裂発生が懸念されると共に、図2中の下側部分では、特に第二のすぐり部41の周方向両端部分54,54において、圧縮応力に起因すると考えられる亀裂発生が懸念される。
ここにおいて、本体ゴム弾性体16における歪や応力に起因する亀裂発生が懸念される部分である、テーパ状傾斜面46によるえぐられた形状とされた軸方向端面の最底部50が、外筒金具14における異形筒状部38の内周側に位置せしめられている。そして、軸方向で最底部50が至らない部分である大径部側異形筒状部38aでは、径方向でトーコレクト部分36が突出される側(図1中、上側)の径寸法が、径方向反対側(図1中、下側)の径寸法よりも小さくされている。すなわち、大径部側異形筒状部38aの図1中上側においては、異形筒状部38に対する周方向で異なる縮径率での縮径加工によって、本体ゴム弾性体16の図1中の上側の周方向略半周部分に及ぼされた大きな予圧縮が、かかる亀裂発生の懸念される図1中の上側の最底部50付近の本体ゴム弾性体16に対して有効に及ぼされている。その結果、かかる径方向でトーコレクト部分36が突出される側(図1中の上側)の最底部50付近の本体ゴム弾性体16においては、荷重入力時における引張応力の発生が軽減乃至は回避されることとなり、以て引張に起因する亀裂の発生が防止されて優れた耐久性が発揮されるのである。
また、小径部側異形筒状部38bでは、歪みや応力に起因する亀裂が懸念される部位である、テーパ状傾斜面46によるえぐられた形状とされた軸方向端面の最底部50よりも軸方向外方において、図1中、下側の略半周部分の径寸法が軸方向で変化せしめられて、軸方向外方に向けて徐々に小径とされている。これにより、かかる亀裂発生の懸念される図1中、下側の最底部50付近の本体ゴム弾性体16には、小径部39よりも小さい縮径率での、大径部37と略同等な縮径加工によって本体ゴム弾性体16に及ぼされた、それ程大きくない予圧縮、或いは本体ゴム弾性体16の加硫成形時の収縮が解消される程度の予圧縮(圧縮率としては略0となることもある)だけが及ぼされている。その結果、かかる図1中下側の最底部50付近の本体ゴム弾性体16においては、荷重入力時における圧縮応力の発生が抑えられることとなり、以て圧縮に起因する亀裂の発生が防止されて優れた耐久性が発揮されるのである。
しかも、本発明に従う構造とされたトーコレクトブッシュ10では、亀裂発生防止のために本体ゴム弾性体16やトーコレクトゴム34の弾性変形量を不必要に制限することもないから、ブッシュ本体部分32とトーコレクト部分36の何れにおいても、基本的なばね特性や防振性能、トーコレクト作用等が十分に確保され得る。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記実施形態において、車両装着時に鉛直上下方向に位置せしめられる第三および第四のすぐり部42,43は、要求されるばね特性等に応じて設けられるものであって、本発明において必須でない。
また、トーコレクト部分36において、インナ側傾斜部19とアウタ側傾斜部30の傾斜角度を相互に異ならせて設定することも可能であるし、或いは、固定プレート18を図1中の下方に延び出させることなく周方向の半周形状として、インナ側傾斜部19だけを形成し、軸方向のストッパ機構を備えていない構造とすることも可能である。
また、図1中の最底部50の深さ寸法も、要求される防振性能やばね剛性、耐久性等を総合的に考慮して設定されるものである。例えば、図1中の最底部50を、小径部39の軸方向中央部分に位置させたり、大径部37の軸方向中央部分に位置させたりすることも可能である。
さらに、内筒金具12と外筒金具14は、装着状態下に及ぼされる軸直角方向の静的荷重等を考慮して、装着前の非荷重入力状態下で軸直角方向で相対的に偏心配置されていても良い。
本発明の一実施形態としてのトーコレクトブッシュの縦断面図。 図1における右側面図。 図1におけるIII−III断面説明図。 図1におけるIV−IV断面図。 図1に示されたトーコレクトブッシュの縮径加工が施される前の縦断面図。 図5における右側面図。
符号の説明
10:トーコレクトブッシュ、12:内筒金具、14:外筒金具、16:本体ゴム弾性体、19:インナ側傾斜部、30:アウタ側傾斜部、32:ブッシュ本体部分、34:トーコレクトゴム、36:トーコレクト部分、38:異形筒状部、40:第一のすぐり部、41:第二のすぐり部、46:テーパ状傾斜面、50:最底部

Claims (7)

  1. インナ軸部材とその外方に離隔配置されたアウタ筒部材とを、それらの径方向対向面間に介装された筒状の本体ゴム弾性体で連結することによりブッシュ本体部分を構成する一方、該インナ軸部材の軸方向一方の端部において軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設けると共に、該アウタ筒部材の軸方向一方の端部において軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出して該インナ軸部材に対して離隔して対向位置せしめられるアウタ側傾斜部を設けて、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間をトーコレクトゴム弾性体で連結することによりトーコレクト部分を構成し、更に、該インナ側傾斜部及び該アウタ側傾斜部の突出方向となる径方向で該インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、該ブッシュ本体部分を構成する該本体ゴム弾性体における該インナ軸部材と該アウタ筒部材の間を軸方向に延びる第一のスリットと第二のスリットが、該トーコレクト部分と反対の軸方向端面に開口して形成されたトーコレクトブッシュにおいて、
    前記ブッシュ本体部分を構成する前記アウタ筒部材に対して縮径加工が施されて前記本体ゴム弾性体に予圧縮が加えられていると共に、少なくとも前記トーコレクト部分と軸方向反対側に位置する該本体ゴム弾性体の軸方向他端側の外周縁部において予圧縮率が周方向で異ならされており、該トーコレクト部分が突出する径方向側がそれに反対の径方向側に比して大きな予圧縮率とされていることを特徴とするトーコレクトブッシュ。
  2. 前記アウタ筒部材には、筒状部の軸方向中央部分に大径部が形成されていると共に、該大径部に対して前記アウタ側傾斜部と反対の軸方向側に小径部が形成されており、該大径部において所定の装着穴に嵌着固定されるようになっている一方、該大径部と該小径部の軸方向間には縮径率が周方向で異ならされた異形筒状部が設けられて、該異形筒状部において前記トーコレクト部分の突出する径方向側に比してそれに反対の径方向側の方が大きな半径寸法とされており、且つ該異形筒状部の半径寸法が全周に亘って該アウタ筒部材における該小径部と該大径部の間の寸法範囲に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のトーコレクトブッシュ。
  3. 前記アウタ筒部材には、前記トーコレクト部分側の軸方向端部側において、軸方向中央側の大径部よりも小径のくびれ状部が形成されている請求項2に記載のトーコレクトブッシュ。
  4. 前記インナ軸部材の軸方向一方の端部には、全周に亘って軸直角方向外方に広がる拘束板部が設けられており、この拘束板部が周上の一カ所で軸方向斜め外方に向かって傾斜せしめられることにより前記インナ側傾斜部が構成されていると共に、前記本体ゴム弾性体の軸方向一方の端面に該拘束板部が重ね合わされて固着されることにより前記第一及び第二のスリットが軸方向他端面だけに開口する有底形状とされている請求項1乃至3の何れか一項に記載のトーコレクトブッシュ。
  5. 前記本体ゴム弾性体の前記軸方向他端面は、前記アウタ筒部材側から前記インナ軸部材側に向かって径方向内方に行くに従って軸方向外方に延び出したテーパ状傾斜面とされており、そのテーパ傾斜角度が周方向の全周に亘って一定とされている請求項1乃至4の何れか一項に記載のトーコレクトブッシュ。
  6. 前記ブッシュ本体部分を構成する前記本体ゴム弾性体には、前記第一のスリットと前記第二のスリットの対向方向に対して直交する径方向で前記インナ軸部材を挟んだ両側において、それぞれ、該インナ軸部材と前記アウタ筒部材の間を軸方向に延びる第三のスリットと第四のスリットが、前記トーコレクト部分と反対の軸方向端面に開口して形成されている請求項1乃至5の何れか一項に記載のトーコレクトブッシュ。
  7. インナ軸部材とその外方に離隔配置されたアウタ筒部材とを、それらの径方向対向面間に介装された筒状の本体ゴム弾性体で連結することによりブッシュ本体部分を構成する一方、該インナ軸部材の軸方向一方の端部において軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出するインナ側傾斜部を設けると共に、該アウタ筒部材の軸方向一方の端部において軸方向外方に傾いて径方向一方向で斜め外方に向かって突出して該インナ軸部材に対して離隔して対向位置せしめられるアウタ側傾斜部を設けて、それらインナ側傾斜部とアウタ側傾斜部の対向面間をトーコレクトゴム弾性体で連結することによりトーコレクト部分を構成し、更に、該インナ側傾斜部及び該アウタ側傾斜部の突出方向となる径方向で該インナ軸部材を挟んだ両側に位置して、該ブッシュ本体部分を構成する該本体ゴム弾性体における該インナ軸部材と該アウタ筒部材の間を軸方向に延びる第一のスリットと第二のスリットが、該トーコレクト部分と反対の軸方向端面に開口して形成されたトーコレクトブッシュの製造方法であって、
    前記本体ゴム弾性体の内外周面に前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材を加硫接着せしめた一体加硫成形品を準備し、該一体加硫成形品における該アウタ筒部材に対して縮径加工を施して該本体ゴム弾性体に予圧縮を加えるに際して、該本体ゴム弾性体における予圧縮率を、少なくとも前記トーコレクト部分と軸方向反対側に位置する該本体ゴム弾性体の軸方向他端側が位置する部分において周方向で異ならせて、該トーコレクト部分が突出する径方向側がそれに反対の径方向側に比して予圧縮率が大きくなるようにすることを特徴とするトーコレクトブッシュの製造方法。
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