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JP2008142183A - マイクロニードルシート及びその製造方法 - Google Patents

マイクロニードルシート及びその製造方法 Download PDF

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JP2008142183A JP2006330698A JP2006330698A JP2008142183A JP 2008142183 A JP2008142183 A JP 2008142183A JP 2006330698 A JP2006330698 A JP 2006330698A JP 2006330698 A JP2006330698 A JP 2006330698A JP 2008142183 A JP2008142183 A JP 2008142183A
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Abstract

【課題】 皮膚にすんなりと突き刺すことができ、低い製造コスト、高い歩留まりで製造できる微小針のアレイを有するマイクロニードルシート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 シート表面に多数の角錐状の微小針17が形成された微小針アレイを有するマイクロニードルシート16において、角錐状の微小針の稜線17Aを、該微小針17の内側に湾曲した形状とする。
【選択図】 図5

Description

本発明は、マイクロニードルシート及びその製造方法に係り、特に、皮膚表層又は皮膚角質層において、簡便に、安全にかつ効率的に薬品等を注入することが可能なマイクロニードルシート及びその製造方法に関するものである。
従来、生体表面、即ち皮膚や粘膜等より、薬品等を投与する方法としては、主に液状物質又は、粉状物質を付着させる方法が殆どであった。しかしながら、これらの物質の付着領域は、皮膚の表面に限られていたため、発汗や異物の接触等によって、付着している薬品等が除去される場合があり、適量を投与することは困難であった。また、薬品を皮膚の奥深くに浸透させるためには、このような薬品の拡散による浸透を利用した方法では、浸透深さを確実に制御することは困難であるため、十分な薬効を得ることは困難であった。
このため、特許文献1から3に記載されている機能性マイクロパイル等を用い、その先端を皮膚内に挿入することにより、薬品を注入する方法が開示されている。
特表2002−517300号公報 特開2003−238347号公報 特開2006−51361号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている発明では、機能性マイクロパイルを製造する際、Siや金属等からなる基板表面を直接エッチング加工して製造するものであるため、生産性に乏しく、高コストになってしまうといった問題点があった。また、特許文献2、3に開示された発明では、機能性マイクロパイルとなるものを樹脂材料の射出成型で作製する方法であることから、アスペクト比の高い構造の機能性マイクロパイルでは、金型からの剥離が困難であり、先端部に欠陥が生じやすく、完全なものを得ることが非常に困難であり、又、製造上の歩留まりが低いといった問題点があった。
また、特許文献1から3に記載の方法で製造された機能性マイクロパイル等は、皮膚に刺さりやすくするための工夫がなされていないため、皮膚にすんなりと突き刺すことができないという問題点もあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、皮膚にすんなりと突き刺すことができ、低い製造コスト、高い歩留まりで製造できる微小針のアレイを有するマイクロニードルシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、シート表面に多数の角錐状の微小針が形成された微小針アレイを有するマイクロニードルシートにおいて、前記角錐状の微小針の稜線が、該微小針の内側に湾曲した形状であることを特徴とするマイクロニードルシートを提供する。
請求項1によれば、角錐状の微小針の稜線が、微小針の内側に湾曲した形状であることで、皮膚にすんなりと突き刺すことができるマイクロニードルシートを提供することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記稜線の湾曲の最大深さZは、稜線の始点と終点とを結ぶ線分の長さをLとしたとき、0.04×L以上0.2×L以下であることを特徴とする。
請求項2によれば、稜線の湾曲の最大深さZが、稜線の始点と終点とを結ぶ線分の長さをLとしたとき、0.04×L以上0.2×L以下であることが好ましい。ここで、稜線の始点と終点は、本発明においては、角錐の底面からの先端Aの高さhの半分の位置h/2に底面と平行な線を引き、その平行な線が稜線と交わる点をMとしたとき、線分AM=線分BMとなるような点Bを取り、その先端Aを稜線の始点、点Bを稜線の母線の終点と定義する。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記角錐状の微小針の稜線が該稜線同士の間の角錐面よりも張り出していることを特徴とする。
請求項3によれば、角錐状の微小針の稜線が該稜線同士の間の角錐面よりも張り出していることで、より皮膚にすんなりと突き刺すことができるマイクロニードルシートを提供することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1において、前記微小針の稜線の鋭利性を示す曲率半径が10μm以下であることを特徴とする。
請求項4によれば、稜線の曲率半径が10μm以下であることが好ましい。
請求項5に記載の発明は、シート表面に多数の円錐状の微小針が形成された微小針アレイを有するマイクロニードルシートにおいて、前記円錐状の微小針の円錐面が、前記微小針の内側に湾曲していることを特徴とするマイクロニードルシートを提供する。
請求項5によれば、円錐状の微小針の円錐面が、微小針の内側に湾曲した形状であることで、皮膚にすんなりと突き刺すことができるマイクロニードルシートを提供することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記円錐面の湾曲の最大深さZ’は、円錐面の母線の始点と終点とを結ぶ線分の長さをL’としたとき、0.04×L’以上0.2×L’以下であることを特徴とする。
請求項6によれば、円錐面の湾曲の最大深さZ’が、円錐面の母線の始点と終点とを結ぶ線分の長さをL’としたとき、0.04×L’以上0.2×L’以下であることが好ましい。ここで、円錐面の母線の始点と終点は、本発明においては、円錐の底面からの先端Aの高さhの半分の位置h/2に底面と平行な線を引き、円錐面と交わる点をMとしたとき、線分AM=線分BMとなるような点Bを取り、その先端Aを円錐面の母線の始点、点Bを円錐面の母線の終点と定義する。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか1において、前記微小針の先端の鋭利性を示す曲率半径が5μm以下であることを特徴とする。
請求項7によれば、微小針の先端の曲率半径を5μm以下にすることで更に皮膚にすんなりと突き刺すことができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか1において、前記微小針は、底面の一辺又は直径が、30μm以上300μm以下であり、高さが50μm以上1000μm以下であることを特徴とする。
請求項8によれば、微小針の形状が角錐状の場合には底面の一辺、円錐状の場合には底面の直径が30μm以上300μm以下で、且つ高さが50μm以上1000μm以下であることが好ましい。
請求項9に記載の発明は、シート表面に多数の角錐状又は円錐状の微小針が形成された微小針アレイを有するマイクロニードルシートの製造方法において、前記微小針アレイを形成するためのスタンパーに、ゲル化可能なポリマー樹脂を溶媒に溶解したポリマー溶液を塗布するポリマー溶液塗布工程と、前記塗布されたポリマー溶液をゲル化させて体積が所定以上の収縮率で収縮した凝固体を形成するとともに、ゲル化した凝固体中の前記溶媒を蒸発して乾燥するポリマー溶液乾燥工程と、前記乾燥後の前記凝固体を前記スタンパーから剥離する剥離工程と、を備えたことを特徴とするマイクロニードルシートの製造方法を提供する。
請求項9によれば、シート表面に多数の角錐状又は円錐状の微小針が形成された微小針アレイを有するマイクロニードルシートの製造方法において、微小針アレイを形成するためのスタンパーに、ゲル化可能なポリマー樹脂を溶媒に溶解したポリマー溶液を塗布するポリマー溶液塗布工程と、塗布されたポリマー溶液をゲル化させて体積が所定以上の収縮率で収縮した凝固体を形成するとともに、ゲル化した凝固体中の溶媒を蒸発して乾燥するポリマー溶液乾燥工程と、乾燥後の凝固体をスタンパーから剥離する剥離工程と、によってマイクロニードルシートを製造することで、角錐状又は円錐状の微小針の稜線が微小針内側に湾曲した形状のマイクロニードルシートを製造することができるので、皮膚にすんなりと突き刺すことのできるマイクロニードルシートを製造することができる。また、このようにマイクロニードルシートを製造することで、低い製造コストおよび高い歩留まりでマイクロニードルシートを提供することができる。
請求項10に記載の発明は、請求項9において、前記所定以上の収縮率は70%以上であることを特徴とする。
請求項10によれば、所定以上の収縮率が70%以上であることで、より皮膚にすんなりと突き刺すことのできるマイクロニードルシートを製造することができる。
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10において、前記凝固体の収縮率が70%以上になるように、前記ポリマー樹脂の種類の選択、前記溶媒に対する前記ポリマー樹脂の濃度の調整、ゲル化剤の添加、乾燥条件のうちの少なくとも1つを行うことを特徴とする。
請求項11によれば、ポリマー樹脂の種類の選択、溶媒に対するポリマー樹脂の濃度の調整、ゲル化剤の添加、乾燥条件のうちの少なくとも1つを行うことで、凝固体の収縮率を70%以上にすることができる。
請求項12に記載の発明は、請求項9〜11の何れか1において、前記ポリマー樹脂が、水溶性であることを特徴とする。
請求項12によれば、ポリマー樹脂が水溶性であるので、製造されたマイクロニードルシートを皮膚に突き刺しても安全である。
請求項13に記載の発明は、請求項9〜12の何れか1において、前記ポリマー樹脂は、ゼラチン、アガロース、マルトース、ペクチン、ジェランガム、カラギナン、キサンタンガム、アルギン酸、デンプンの何れかの材料又はこれらの材料の組合せであることを特徴とする。
請求項13によれば、このような材料を用いることで、好ましく微小針の稜線が微小針内側に湾曲した形状のマイクロニードルシートを製造することができる。
請求項14に記載の発明は、請求項9〜13の何れか1において、前記ポリマー樹脂を前記スタンパーから剥離する際に、基材シートを前記スタンパーに前記ポリマー樹脂を介して重ね合わせて接着し剥離することを特徴とする。
請求項14によれば、基材シートをスタンパーに重ね合わせてポリマー樹脂に接着し剥離することで、高い歩留まりで丈夫なマイクロニードルシートを製造することができる。
請求項15に記載の発明は、請求項9〜14の何れか1において、前記基材シートを前記スタンパーから剥離する際に、該シートの端部から徐々に剥離することを特徴とする。
請求項15によれば、基材シートをスタンパーから剥離する際に、シートの端部から徐々に剥離することで、微小針の先端部に欠陥が生じにくく、完全なマイクロニードルシートを得ることが非常に容易となる。
以上説明したように、本発明によれば、形成される微小針の形状を損なうことなく、また、皮膚にすんなりと突き刺すことができる、低い製造コストで、高い歩留まりで微小針のアレイを有するマイクロニードルシート及びその製造方法を提供することができる。
以下本発明の実施の形態におけるマイクロニードルシート及びその製造方法について説明する。図1は、本実施の形態のフローチャートであり、図2は、製造のために用いられる装置の一例である。
最初に図1に示すステップ102(S102)の原版作製工程を行う。具体的には、図3(a)に示すように、マイクロニードルシートの製造のためのスタンパーを作製するための原版を作製するものである。
この原版11の作製方法は2種類あり、1番目の方法は、Si基板上にフォトレジストを塗布した後、露光、現像を行い、RIE(リアクティブイオンエッチング)等によるエッチングを行うことにより、原版11の表面に円錐の形状部12のアレイを作製する。尚、RIE等のエッチングを行う際には、Si基板を回転させながら斜め方向からのエッチングを行うことにより、円錐の形状を形成することが可能である。
2番目の方法は、Ni等の金属基板に、ダイヤモンドバイト等の切削工具を用いた加工により、原版11の表面に四角錐等の形状部12のアレイを形成する方法がある。
次に、図1に示すステップ104(S104)のスタンパー作製工程を行う。具体的には、図3(b)に示すように、原版11よりスタンパー13を作製する。通常のスタンパー13の作製には、Ni電鋳等による方法が用いられるが、原版11は、先端が鋭角な円錐形又は角錐形の形状を有しているため、スタンパー13に形状が正確に転写され剥離することができるように、本実施の形態では、安価に製造することが可能な3つの方法による方法が考えられる。
1番目の方法は、原版11にPDMS(ポリジメチルシロキサン、例えば、ダウコーニング社製のシルガード184)に硬化剤を添加したシリコーン樹脂を流し込み、100℃で加熱処理し硬化した後に、原版11より剥離する方法である。2番目の方法は、紫外線を照射することにより硬化するUV硬化樹脂を原版11に流し込み、窒素雰囲気中で紫外線を照射した後に、原版11より剥離する方法である。3番目の方法は、ポリススチレンやPMMA(ポリメチルメタクリレート)等のプラスチック樹脂を有機溶剤に溶解させたものを剥離剤の塗布された原版11に流し込み、乾燥させることにより有機溶剤を揮発させて硬化させた後に、原版11より剥離する方法である。
このようにして作製されたスタンパー13を図3(c)に示す。尚、上記3つのいずれの方法においてもスタンパー13は、何度でも容易に複製することが可能である。
次に、図1に示すステップ106(S106)のポリマー溶液塗布工程を行う。具体的には、上記のスタンパー作製工程において作製したスタンパー13の微小針に対応した凹凸パターンの形成された面にポリマー樹脂を溶解した溶液を塗布する。この中には、投薬する薬品を適量混入させることができる。
このようなポリマー樹脂を溶解した溶液の塗布を行うための具体的な方法は、スピンコーターを用いた塗布方法が挙げられる。尚、スタンパー13に形成されている微小針を形成するため凹部には、空気の存在によりポリマー樹脂を溶解した溶液が奥まで入り込まない場合が考えられ、この工程は減圧状態において行うことが望ましい。ステップ106におけるポリマー溶液塗布工程は、図2に示すマイクロニードルシートの製造装置30の溶液塗布部32において行われる。
ところで、微小針を皮膚表面に数100μmの深さで刺すためには、(1)先端が十分に尖っていて、皮膚内に入る針の径も十分に細い(長さ/径のアスペクト比が高い)こと、(2)十分な強度があること(針が折れ曲がったりしないこと)、が必要である。
(1)のためには、細くて尖った形状が必要であるが、これは(2)に相反し、細すぎると先端や根元で折れ曲がってしまい、太すぎると刺さらない。これを改良する方法としては、材料をできるだけ硬い材料にすること、そして、錐体の稜線を内側に湾曲した形状として、先端は十分尖っている一方、根元は広がることで折れにくくすることが考えられる。
さらに、微小針を皮膚に刺し込んでいく過程として、(3)微小針先端が皮膚に挿入後、挿入が進むに従って、刺した孔が拡げられるようになることが必要である。このためには、微小針の先端形状が円錐状よりも、稜線のエッジが鋭い角錐状が好ましい。
ところが、このような形状のスタンパー13を加工することは簡単ではない。しかしながら、スタンパー13の形状自体は円錐又は角錐であっても、成形する材料が成形中に大きく収縮するようにすれば、上記(1)〜(3)を満たすものを作製できる。本発明によれば、このように収縮の大きい材料をスタンパー13に注入し、材料をゲル化後に乾燥させることで、金型内で大きく収縮させて上記(1)〜(3)を満たすものを実現できる。
塗布に用いられるポリマー樹脂は、水溶性であることが好ましく、特に、ゼラチン、アガロース、マルトース、ペクチン、ジェランガム、カラギナン、キサンタンガム、アルギン酸、デンプン等の粉体を温水で溶解したポリマー樹脂であることが好ましい。濃度は材料によっても異なるが、20〔%〕程度が好ましい。尚、溶解に用いる溶媒は、温水以外であっても揮発性を有するものであればよく、例えば、アルコール等を用いることも可能である。ポリマー樹脂は溶解後に薬品を添加してもよい。溶解液は、例えば30〜60〔℃〕とし、耐熱性のない薬品の添加もできる。
図1に示すステップ108(S108)のポリマー溶液乾燥工程を行う。具体的には、塗布されたポリマー樹脂を溶解した溶液に温風を吹付けることにより乾燥させる。
一つの方法は、最初に10〜15〔℃〕の冷風を吹きつけ、表面をゲル化させた後、10〜20〔m/s〕の温風を吹付ける。この温風は、除湿した温風が好ましく、例えば、40〜60〔℃〕、相対湿度15〔%〕以下、より好ましくは10〔%〕以下であることが好ましい。
また、低湿度の冷風を流すことにより塗布されたポリマー樹脂を溶解した溶液をゲル化させることができる。この場合、完全にゲル化させるために10〜15〔℃〕の冷風を上記の場合よりも長時間吹付け、この後、上記と同様に温風を吹付ける。又、この場合において、この後の乾燥させるために高温の温風を流す際には、温風の温度が高すぎると、ポリマー樹脂を溶解した溶液におけるゲル化が戻ってしまったり、薬品によっては加熱により分解等により効能が変化したりするため、吹付ける温風の温度には注意を要する。このように、塗布されたポリマー樹脂を溶解した溶液を乾燥、あるいは、ポリマー溶液をゲル化させた後乾燥させることにより、図4(a)に示すように、固化しポリマー樹脂14となる。
この際、ゲル化を行いポリマー樹脂14が固化することにより、ポリマー樹脂は、ポリマー樹脂を溶解した溶液を塗布した際の状態よりも顕著に縮小する。これにより、微小針17は、図5(a)に示すように、稜線17A、17A…、は微小針内側に湾曲した形状となる。
図5(b)は、微小針17の側面から見た図である。ここで、角錐状の微小針の稜線17A、17Aが該稜線同士の間の角錐面17Cよりも張り出していることが好ましい。
微小針17の形状は、底面の一辺Xが30μm以上300μm以下の範囲であり、高さYが50μm以上1000μm以下であることマイクロニードルシートであることが好ましい。そして、稜線17Aの湾曲の最大深さZは、稜線の始点と終点とを結ぶ線分の長さをLとしたとき、0.04×L以上0.2×L以下であることが好ましい。また、微小針の稜線17Aの鋭利性を示す曲率半径R’が10μm以下であることが好ましく(図5(a)の稜線17Aでの点17aにおける断面を参照)、微小針の先端17Bの鋭利性を示す曲率半径Rが5μm以下であることが好ましい(図5(b)参照)。
尚、図5において、四角錐状の微小針17について示しているが、図6に示す円錐状や他の角錐状の微小針も同様に製造することができる。尚、円錐状の場合においては、円錐面の湾曲の最大深さZ’は、円錐面の母線の始点と終点とを結ぶ線分の長さをL’としたとき、0.04×L’以上0.2×L’以下であることが好ましい。
ここで、稜線または円錐面の母線の始点と終点は、本発明においては、以下の通り定義する。図7に示すように、角錐または円錐の底面からの先端Aの高さhの半分の位置h/2に底面と平行な線を引き、稜線または円錐面と交わる点をMとしたとき、線分AM=線分BMとなるような点Bを取る。このとき、先端A(点A)を稜線または円錐面の母線の始点、点Bを稜線または円錐面の母線の終点と定義する。
次に、図1に示すステップ110(S110)の剥離工程を行う。具体的には、図4(b)に示すように、先のポリマー溶液乾燥工程において、スタンパー13上で乾燥し固化したポリマー樹脂14の上に、粘着性の粘着層が形成されているシート状の基材であるPET(ポリエチレンテレフタレート)シート15を付着させた後、端部よりPETシート15をめくるように剥離を行う。このようにして、図4(c)に示すように、マイクロニードルシート16が完成する。尚、ステップ110の剥離工程におけるPETシート15の付着は、図2に示すマイクロニードルシートの製造装置30における付着部34において行われ、付着したPETシート15とともに固化したポリマー樹脂14の剥離は、図2に示すマイクロニードルシートの製造装置30における剥離部36において行われる。
通常、本実施の形態のように、アスペクト比の高い微小針の構造のものをスタンパー13から剥離する場合では、接触面積が大きいことから、強い応力がかかり、微小針が破壊されスタンパー13から剥離されることなくスタンパー13内に残存し、作製されるマイクロニードルシート16は致命的な欠陥を有するものとなってしまう。この点を踏まえ、スタンパー13を構成する材料は、剥離が非常にしやすい材料により構成することが好ましい。また、スタンパー13を構成する材料を弾性が高く柔らかい材料とすることにより、剥離する際における微小針にかかる応力を緩和することができる。更には、剥離工程では、図8に示すように端部よりローラ18を用い、めくるように剥離することにより、より一層応力が緩和を緩和させることができる。以上の観点より、スタンパー13を構成する材料としては、シリコーン樹脂等の弾性変形しやすい材料が好ましい。
尚、ポリマー樹脂14の表面の微小針17に残存している水分を蒸発させるために、剥離後に、再度乾燥した風を吹付ける場合もある。具体的には、梱包する直前において、ポリマー樹脂内の水分量を10〔%〕以下、望ましくは5〔%〕以下とした後に梱包することが好ましい。
また、スタンパー13は複数回利用することが可能であることから、ステップ110の剥離工程後のスタンパー13を用いて、ステップ106のポリマー溶液塗布工程、ステップ108のポリマー溶液乾燥工程、ステップ110の剥離工程を繰り返すことにより、複数のマイクロニードルシート16を短時間に低コストで複数作製することができる。尚、スタンパー13は永久的に使用することができるものではないため、使用することができなくなった場合には、ステップ104のスタンパー作製工程を行うことにより作製可能である。
このように、シート表面に多数の角錐状又は円錐状の微小針が形成された微小針アレイを有するマイクロニードルシートの製造方法において、微小針アレイを形成するためのスタンパーに、ゲル化可能なポリマー樹脂を溶媒に溶解したポリマー溶液を塗布するポリマー溶液塗布工程と、塗布されたポリマー溶液をゲル化させて体積が所定以上の収縮率で収縮した凝固体を形成するとともに、ゲル化した凝固体中の溶媒を蒸発して乾燥するポリマー溶液乾燥工程と、乾燥後の凝固体を前記スタンパーから剥離する剥離工程と、でマイクロニードルシートを製造することで、角錐状又は円錐状の微小針17の稜線17Aが微小針内側に湾曲した形状のマイクロニードルシート16を製造することができるので、皮膚にすんなりと突き刺すことのできるマイクロニードルシート16を得ることができる。また、このようにマイクロニードルシート16を製造することで、低い製造コストおよび高い歩留まりでマイクロニードルシート16を提供することができる。
ここで、前記所定以上の収縮率が70%以上であることが好ましい。凝固体の収縮率が70%以上にするには、ポリマー樹脂の種類の選択、溶媒に対するポリマー樹脂の濃度の調整、ゲル化剤の添加、乾燥条件のうちの少なくとも1つを行うことで達成することができる。
実際のマイクロニードルシート16の製造には、スタンパー13を複数用意しておき、同時に製造を行うことにより、高い生産性で製造を行うことができる。
本実施の形態における実施例を以下に示す。
〔実施例1〕
実施例1では、Niからなる金属板に、ダイヤモンドバイトによる切削加工を行い、図5(b)における四角錐の形状部12の底辺Xが200〔μm〕、高さYが400〔μm〕、ピッチが1000〔μm〕である四角錐アレイの形成された原版11を作製した。
この原版11にシリコーン樹脂(PDMS)を流し込み硬化させ、図3(c)に示す原版11とは反転形状のスタンパー13を作製する。
ゼラチンを水に溶かし、攪拌し膨潤させた後、40〔℃〕に加熱・溶解させてゼラチン濃度20〔%〕のポリマー樹脂を溶解した溶液を作製する。この溶液をスピンコーターによりスタンパー13の凹凸の形成されている面に塗布する。この溶液には投与される薬品が適量混入されている。この際、減圧チャンバー等において、減圧状態において行う。
ゼラチンを水で溶かしたポリマー樹脂を溶解した溶液を塗布したものに、15〔℃〕の冷風を20〔秒〕間与え完全にゲル化させた後、50〔℃〕、相対湿度15〔%〕の温風を30〔分〕間与えて十分乾燥させ、固化させる。
この後、図4(b)に示すように粘着層の形成されている厚さ120〔μm〕のPETシートをスタンパー13上の固化したポリマー樹脂14に付着させ粘着させた後、図8に示すようにローラ18により端部より、固化したポリマー樹脂14をめくるように剥離する。これにより、皮膚にすんなりと突き刺すことができる高精度のマイクロニードルシート16を作製することができる。
〔実施例2〕
実施例1において、ゼラチンの濃度および乾燥条件を変え、ゼラチンの硬化時の収縮率を変化させ、マイクロニードルシート16を作製した。マイクロスコープでの観察から、収縮率を測定して、50〜75%のサンプルを作製した。これらのサンプルを擬似皮膚(シリコーンゴム)にニードル1本当りの定荷重を与えて、ニードルが擬似皮膚に刺さるかどうかを判定したところ、表1のようになり、収縮が大きいほど、四角錐の側面(稜線)が湾曲することで、低荷重で刺さりやすいことが確認できた。
Figure 2008142183
以上、本発明に係るマイクロニードルシート及びその製造方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行うことが可能である。
本発明に係るマイクロニードルシートの製造方法のフローチャート 本発明に係るマイクロニードルシートの製造装置の構成図 本発明に係るマイクロニードルシートの製造方法の工程図(1) 本発明に係るマイクロニードルシートの製造方法の工程図(2) 本発明に係るマイクロニードルシートの角錐状の微小針の斜視図及び断面図 本発明に係るマイクロニードルシートの円錐状の微小針の斜視図及び断面図 本発明における稜線または円錐面の母線の始点と終点を説明する説明図 本発明における剥離工程の説明図
符号の説明
11…原版、12…円錐又は角錐の形状部、13…スタンパー、14…ポリマー樹脂、15…PETシート、16…マイクロニードルシート、17…微小針、17A…微小針の稜線、17B…微小針の先端、17C…角錐面、L…稜線の始点と終点とを結ぶ線分の長さ、X…底面の一辺、Y…高さ、Z…最大深さ

Claims (15)

  1. シート表面に多数の角錐状の微小針が形成された微小針アレイを有するマイクロニードルシートにおいて、
    前記角錐状の微小針の稜線が、該微小針の内側に湾曲した形状であることを特徴とするマイクロニードルシート。
  2. 前記稜線の湾曲の最大深さZは、稜線の始点と終点とを結ぶ線分の長さをLとしたとき、0.04×L以上0.2×L以下であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルシート。
  3. 前記角錐状の微小針の稜線が該稜線同士の間の角錐面よりも張り出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロニードルシート。
  4. 前記微小針の稜線の鋭利性を示す曲率半径が10μm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載のマイクロニードルシート。
  5. シート表面に多数の円錐状の微小針が形成された微小針アレイを有するマイクロニードルシートにおいて、
    前記円錐状の微小針の円錐面が、前記微小針の内側に湾曲していることを特徴とするマイクロニードルシート。
  6. 前記円錐面の湾曲の最大深さZ’は、円錐面の母線の始点と終点とを結ぶ線分の長さをL’としたとき、0.04×L’以上0.2×L’以下であることを特徴とする請求項5に記載のマイクロニードルシート。
  7. 前記微小針の先端の鋭利性を示す曲率半径が5μm以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載のマイクロニードルシート。
  8. 前記微小針は、底面の一辺又は直径が、30μm以上300μm以下であり、高さが50μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1に記載のマイクロニードルシート。
  9. シート表面に多数の角錐状又は円錐状の微小針が形成された微小針アレイを有するマイクロニードルシートの製造方法において、
    前記微小針アレイを形成するためのスタンパーに、ゲル化可能なポリマー樹脂を溶媒に溶解したポリマー溶液を塗布するポリマー溶液塗布工程と、
    前記塗布されたポリマー溶液をゲル化させて体積が所定以上の収縮率で収縮した凝固体を形成するとともに、ゲル化した凝固体中の前記溶媒を蒸発して乾燥するポリマー溶液乾燥工程と、
    前記乾燥後の前記凝固体を前記スタンパーから剥離する剥離工程と、を備えたことを特徴とするマイクロニードルシートの製造方法。
  10. 前記所定以上の収縮率は70%以上であることを特徴とする請求項9に記載のマイクロニードルシートの製造方法。
  11. 前記凝固体の収縮率が70%以上になるように、前記ポリマー樹脂の種類の選択、前記溶媒に対する前記ポリマー樹脂の濃度の調整、ゲル化剤の添加、乾燥条件のうちの少なくとも1つを行うことを特徴とする請求項9又は10に記載のマイクロニードルシートの製造方法。
  12. 前記ポリマー樹脂が、水溶性であることを特徴とする請求項9〜11の何れか1に記載のマイクロニードルシートの製造方法。
  13. 前記ポリマー樹脂は、ゼラチン、アガロース、マルトース、ペクチン、ジェランガム、カラギナン、キサンタンガム、アルギン酸、デンプンの何れかの材料又はこれらの材料の組合せであることを特徴とする請求項9〜12の何れか1に記載のマイクロニードルシートの製造方法。
  14. 前記ポリマー樹脂を前記スタンパーから剥離する際に、基材シートを前記スタンパーに前記ポリマー樹脂を介して重ね合わせて接着し剥離することを特徴とする請求項9〜13の何れか1に記載のマイクロニードルシートの製造方法。
  15. 前記基材シートを前記スタンパーから剥離する際に、該シートの端部から徐々に剥離することを特徴とする請求項9〜14の何れか1に記載のマイクロニードルシートの製造方法。
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