以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1及び図2は、本実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの外観図である。図1は、カメラを被写体側より見た正面側斜視図であって、撮影レンズユニットを外した状態を示す。図2は、カメラを撮影者側より見た背面側斜視図である。
図1に示すように、カメラ本体1には、撮影時に撮影者が安定して握り易いように被写体側に突出したグリップ部1aが設けられている。
カメラ本体1のマウント部2には、撮影レンズユニット(図1、2では不図示)が着脱可能に固定される。マウント接点21は、カメラ本体1と撮影レンズユニットとの間で制御信号、状態信号、データ信号等の通信を可能にするとともに、撮影レンズユニット側に電力を供給する。マウント接点21は、電気通信のみならず、光通信、音声通信等が可能なように構成してもよい。マウント部2の横には、撮影レンズユニットを取り外す際に押し込むレンズロック解除ボタン4が配置されている。
カメラ本体1内には、撮影レンズを通過した撮影光束が導かれるミラーボックス5が設けられており、ミラーボックス5内にメインミラー(クイックリターンミラー)6が配設されている。メインミラー6は、撮影光束をペンタダハミラー22(図3を参照)の方向へ導くために撮影光軸に対して45°の角度に保持される状態と、撮像素子33(図3を参照)の方向へ導くために撮影光束から退避した位置に保持される状態とを取り得る。
カメラ上部のグリップ1a側には、撮影開始の起動スイッチとしてのレリーズボタン7と、撮影時の動作モードに応じてシャッタスピードやレンズ絞り値を設定するためのメイン操作ダイヤル8と、撮影系の上面動作モード設定ボタン10とが配置されている。これら操作部材の操作結果の一部は、LCD表示パネル9に表示される。レリーズボタン7は、第1ストロークでSW1(図3の7a)がONし、第2ストロークでSW2(図3の7b)がONする構成となっている。また、上面動作モード設定ボタン10は、レリーズボタン7の1回の押込みで連写になるか1コマのみの撮影となるかの設定や、セルフ撮影モードの設定等を行うためのものであり、LCD表示パネル9にその設定状況が表示される。
カメラ上部の中央には、カメラ本体1に対してポップアップするストロボユニット11と、フラッシュ取り付け用のシュー溝12及びフラッシュ接点13とが設けられている。
カメラ上部の右よりには、撮影モード設定ダイヤル14が配置されている。
カメラのグリップ1aに対して反対側の側面には、開閉可能な外部端子蓋15が設けられている。外部端子蓋15を開けた内部には、外部インタフェースとしてビデオ信号出力用ジャック16及びUSB出力用コネクタ17が納められている。
図2に示すように、カメラ背面の上方には、ファインダ接眼窓18が設けられている。また、カメラ背面の中央付近には、画像表示可能なカラー液晶モニタ19が設けられている。
カラー液晶モニタ19の横には、サブ操作ダイヤル20が配置されている。サブ操作ダイヤル20は、メイン操作ダイヤル8の機能の補助的役割を担うものである。例えばカメラのAEモードでは、自動露出装置によって算出された適正露出値に対する露出補正量を設定するために使用される。シャッタスピード及びレンズ絞り値の各々を使用者の意志によって設定するマニュアルモードでは、メイン操作ダイヤル8でシャッタスピードを設定し、サブ操作ダイヤル20でレンズ絞り値を設定するように使用される。また、このサブ操作ダイヤル20は、カラー液晶モニタ19に表示される撮影済み画像の表示を選択するためにも使用される。
さらに、カメラ背面には、カメラの動作を起動もしくは停止するためのメインスイッチ43と、クリーニングモードを動作させるためのクリーニング指示操作部材44とが配置されている。クリーニング指示操作部材44は、詳しくは後述するが、ローパスフィルタの表面に付着した塵埃等の異物をふるい落とす動作を指示するためのものである。
図3は、本実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの主要な電気的構成を示すブロック図である。なお、図1、2と共通する部分には同一の符号を付す。カメラ本体1に内蔵されたマイクロコンピュータの中央処理装置(以下、「MPU」と称する)100は、カメラの動作制御を司るものであり、各要素に対して様々な処理や指示を実行する。MPU100に内蔵されたEEPROM101aは、時刻計測回路109の計時情報やその他の情報を記憶することができる。
MPU100には、ミラー駆動回路101、焦点検出回路102、シャッタ駆動回路103、映像信号処理回路104、スイッチセンス回路105、測光回路106が接続される。また、LCD駆動回路107、バッテリチェック回路108、時刻計測回路109、電源供給回路110、圧電素子駆動回路111が接続される。これらの回路は、MPU100の制御によって動作するものである。
MPU100は、撮影レンズユニット内のレンズ制御回路201とマウント接点21を介して通信を行う。マウント接点21は、撮影レンズユニットが接続されるとMPU100へ信号を送信する機能も有する。これにより、レンズ制御回路201は、MPU100との間で通信を行い、AF駆動回路202及び絞り駆動回路203を介して撮影レンズユニット内の撮影レンズ200及び絞り204の駆動を行う。なお、図3では便宜上1枚の撮影レンズのみを図示しているが、実際は多数のレンズ群によって構成される。
AF駆動回路202は、例えばステッピングモータによって構成され、レンズ制御回路201の制御によって撮影レンズ200内のフォーカスレンズ位置を変化させ、撮像素子33に撮影光束の焦点を合わせるように調整する。絞り駆動回路203は、例えばオートアイリス等によって構成され、レンズ制御回路201の制御によって絞り204を変化させ、光学的な絞り値を得る。
メインミラー6は、図3に示す撮影光軸に対して45°の角度に保持された状態で、撮影レンズ200を通過する撮影光束をペンタダハミラー22へ導くとともに、その一部を透過させてサブミラー30へ導く。サブミラー30は、メインミラー6を透過した撮影光束を焦点検出用センサユニット31へ導く。
ミラー駆動回路101は、例えばDCモータとギヤトレイン等によって構成され、メインミラー6を、ファインダにより被写体像を観察可能とする位置と、撮影光束から待避する位置とに駆動する。メインミラー6が駆動すると、同時にサブミラー30も、焦点検出用センサユニット31へ撮影光束を導く位置と、撮影光束から待避する位置とに移動する。
焦点検出用センサユニット31は、不図示の結像面近傍に配置されたフィールドレンズ、反射ミラー、2次結像レンズ、絞り、複数のCCDからなるラインセンサ等によって構成され、位相差方式の焦点検出を行う。焦点検出センサユニット31から出力される信号は、焦点検出回路102へ供給され、被写体像信号に換算された後、MPU100に送信される。MPU100は、被写体像信号に基づいて位相差検出法による焦点検出演算を行う。そして、デフォーカス量及びデフォーカス方向を求め、これに基づいて、レンズ制御回路201及びAF駆動回路202を介して撮影レンズ200内のフォーカスレンズを合焦位置まで駆動する。
ペンタダハミラー22は、メインミラー6によって反射された撮影光束を正立正像に変換反射する。撮影者はファインダ光学系を介してファインダ接眼窓18から被写体像を観察することができる。ペンタダハミラー22は、撮影光束の一部を測光センサ23へも導く。測光回路106は、測光センサ23の出力を得て、観察面上の各エリアの輝度信号に変換し、MPU100に出力する。MPU100は、輝度信号に基づいて露出値を算出する。
シャッタユニット(機械フォーカルプレーンシャッタ)32は、撮像待機時、つまり撮影者がファインダにより被写体像を観察している時には、撮影光束を遮る状態にある。そして、撮像時には、レリーズ信号に応じて、不図示の先羽根群と後羽根群の走行する時間差により所望の露光時間を得るように構成される。シャッタユニット32は、MPU100の指示を受けたシャッタ駆動回路103によって制御される。
撮像ユニット400は、光学ローパスフィルタ410、圧電素子430、撮像素子33が後述する他の部品と共にユニット化されたものである。その詳細な構成については後述する。
光学ローパスフィルタ410は、撮影光軸方向に複数に分離されており、詳しくは後述するが、それぞれ略矩形状の第1群の光学部材411、第2群の光学部材412、及び第3群の光学部材413によって構成される(図6を参照)。本実施形態では、第1群の光学部材411は水晶からなる複屈折板、第2群の光学部材412は位相板及び赤外吸収ガラスを積層させたもの、第3群の光学部材413は水晶からなる複屈折板である。ここで「群」と称しているのは、外観上において1枚の板形状であるが、例えば第2の光学部材412のように積層構造を有するものも含む意味である。したがって、本実施形態では、第1群の光学部材411は単結晶板である水晶からなる複屈折板であるが、第2群及び第3群412、413は、単結晶板を貼り合わせて積層したり、単結晶板と結晶構造をとらないガラス板等を貼り合わせたりしたものであってもよい。また、第1群の光学部材411も含めて、それぞれの光学部材の表面には光学的な機能性を有するコーティングを施しても良い。例えば、赤外線や紫外線を反射するコーティングとして、SiO2やTiO2を交互に被膜形成することが可能である。
圧電素子430は、MPU100の指示を受けた圧電素子駆動回路111によって駆動され、光学ローパスフィルタ410のうち最前(最も被写体側)に配設された第1群の光学部材411を振動させる。
撮像素子33は、本実施形態ではCMOS型撮像デバイスが用いられるが、その他にもCCD型等様々な形態があり、いずれの形態の撮像デバイスを採用してもよい。
クランプ/CDS(相関二重サンプリング)回路34は、A/D変換する前の基本的なアナログ処理を行うものであり、クランプレベルを変更することも可能である。AGC(自動利得調整装置)35は、A/D変換する前の基本的なアナログ処理を行うものであり、AGC基本レベルを変更することも可能である。A/D変換器36は、撮像素子33のアナログ出力信号をデジタル信号に変換する。
映像信号処理回路104は、デジタル化された画像データに対してガンマ/ニー処理、フィルタ処理、モニタ表示用の情報合成処理等、ハードウエアによる画像処理全般を実行する。この映像信号処理回路104からのモニタ表示用の画像データは、カラー液晶駆動回路112を介してカラー液晶モニタ19に表示される。また、映像信号処理回路104は、MPU100の指示に従って、メモリコントローラ38を通じてバッファメモリ37に画像データを保存することもできる。さらに、映像信号処理回路104は、JPEG等の画像データ圧縮処理を行うこともできる。連写撮影等、連続して撮影が行われる場合は、一旦バッファメモリ37に画像データを格納し、メモリコントローラ38を通して未処理の画像データを順次読み出すこともできる。これにより、映像信号処理回路104は、A/D変換器36から入力されてくる画像データの速度に関わらず、画像処理や圧縮処理を順次行うことができる。
メモリコントローラ38は、外部インタフェース40から入力される画像データをメモリ39に記憶し、メモリ39に記憶されている画像データを外部インタフェース40から出力する機能を有する。なお、外部インタフェース40は、図1におけるビデオ信号出力用ジャック16及びUSB出力用コネクタ17が相当するものである。メモリ39としては、カメラ本体に着脱可能なフラッシュメモリ等が用いられる。
スイッチセンス回路105は、各スイッチの操作状態に応じて入力信号をMPU100に送信する。スイッチSW1(7a)は、レリーズボタン7の第1ストロークによりONする。スイッチSW2(7b)は、レリーズボタン7の第2ストロークによりONする。スイッチSW2(7b)がONされると、撮影開始の指示がMPU100に送信される。また、メイン操作ダイヤル8、サブ操作ダイヤル20、撮影モード設定ダイヤル14、メインスイッチ43、クリーニング指示操作部材44が接続されている。
LCD駆動回路107は、MPU100の指示に従って、LCD表示パネル9やファインダ内液晶表示装置41を駆動する。
バッテリチェック回路108は、MPU100の指示に従って、バッテリチェックを行い、その検出結果をMPU100に送信する。電源部42は、カメラの各要素に対して電源を供給する。
時刻計測回路109は、メインスイッチ43がOFFされて次にONされるまでの時間や日付を計測し、MPU100からの指示に従って、計測結果をMPU100に送信する。
以下、図4〜12を参照して、撮像ユニット400について説明する。図4は、撮像ユニット400を含むカメラ内部の概略構成を示す分解斜視図である。ミラーボックス5には、被写体側から順にシャッタユニット32、カメラ本体構造部材である本体シャーシ300、撮像ユニット400が組み付けられる。撮像ユニット400を組み付けるに際しては、撮影レンズユニットの取り付け基準となるマウント2の取り付け面に対して、撮像素子33の撮像面が所定の距離かつ平行になるように調整される。また、本体シャーシ300の上部には、ペンタダハミラー22及びファインダ接眼窓18を含んで構成される接眼ユニット210が配置され、ミラーボックス5内のメインミラー6、ペンタダハミラー22によって導かれる被写体の光学像が観察可能となる。接眼ユニット210は、本体シャーシ300の上部を撮影者側に折り曲げて延伸させた接眼ユニット係止部300aに載置され、係止部材301によって係止される。
図5は、撮像ユニット400の正面図である。また、図6は、撮像ユニット400の分解斜視図である。撮像ユニット400は、図6に示すように、撮像素子ユニット500とローパスフィルタユニット470とを主要な構成要素とする。
撮像素子ユニット500は、少なくとも撮像素子33と、撮像素子保持部材510とによって構成される。また、ローパスフィルタユニット470は、少なくとも第1群の光学部材411と、ローパスフィルタ保持部材420と、圧電素子430と、振動伝達部材431と、付勢部材440と、付勢力伝達部材441と、第1の弾性部材480と、第2の弾性部材490と、規制部材460と、マスク部材560とによって構成される。
撮像素子ユニット500において、撮像素子保持部材510は、略矩形状の開口部を有する板状部材であり、その開口部に撮像面を露出させるように撮像素子33が固着される。撮像素子保持部材510の周囲には、ミラーボックス5にビス固定するための腕部が形成されており、撮像素子保持部材510はミラーボックス5に3箇所でビス固定される。
ローパスフィルタユニット470において、ローパスフィルタ保持部材420は、樹脂又は金属製の枠体であり、その枠部420aに第1群の光学部材411が組み付けられる。この場合に、ローパスフィルタ保持部材420と第1群の光学部材411との間には、環状の第1の弾性部材480を介在させる。ローパスフィルタ保持部材420の四隅には、撮像素子保持部材510に取り付け保持するための腕部420bが一体に設けられている。
ローパスフィルタ保持部材420の枠部420aのうち一辺(上辺)には、圧電素子430を収納するための収納部421が形成される。圧電素子430は、その一端面が枠部420aに接着等により固定され、電圧の印加による伸縮方向が撮影光軸に対して直交方向(カメラ上下方向)となるように保持される。圧電素子430は、リード線432及びコネクタ433を介して圧電素子駆動回路111に接続する。
振動伝達部材431は、圧電素子430と第1群の光学部材411との間に挟まれるように位置し、第1群の光学部材411に接着される。この場合に、圧電素子430は、第1群の光学部材411に接着固定された振動伝達部材431に固定されず、接するのみとなっている。振動伝達部材431の材料、形状、効果については、図12を参照して後述する。
また、ローパスフィルタ保持部材420の枠部420aのうち収納部421を有する辺に対向する辺(下辺)には、付勢部材保持部材450に保持された付勢部材440が取り付けられる。付勢部材440は、第1群の光学部材411を圧電素子430の方向に付勢する。
付勢力伝達部材441は、付勢部材440と第1群の光学部材411との間に挟まれるように位置し、第1群の光学部材411に接着される。付勢力伝達部材441の材料、形状、効果についても、図12を参照して後述する。
すなわち、第1群の光学部材411は、振動伝達部材431と付勢力伝達部材441とを介して、圧電素子430と付勢部材440とで同一平面内で挟み込まれるように配置される。このように配置されることにより、第1群の光学部材411は、圧電素子430の伸縮運動に追従するようになる。
圧電素子430は、圧電体と内部電極とを交互に積層してなる積層型の圧電素子であり、振動伝達部材431に接するように配置される。より具体的には、圧電体の積層方向に電圧を印加するd33型の積層型圧電素子を採用する。したがって、積層方向により大きな振幅(変位)が得られ、第1群の光学部材411を振動方向に大きく変位させることができる。他にも、圧電素子には様々な種類があり、光学ローパスフィルタ410の面水平方向(撮影光軸に対して直交方向)に変位を生じるものであれば、いずれの圧電素子を使用することも可能である。
付勢部材440は、ブロック状の弾性部材であり、圧電素子430と対向し、付勢力伝達部材441に接するように配置される。付勢部材440は、付勢部材保持部材450によって保持されている。図9(a)は、組み付け前の付勢部材440及び付勢部材保持部材450を被写体側より見た斜視図である。図9(b)は、組み付け後の付勢部材440及び付勢部材保持部材450の上面図である。図9(c)、(d)は、付勢部材440と圧電素子430との関係を示す側面図である。
付勢部材保持部材450の被写体側には、図9(a)、(b)に示すように、凸部450aが2箇所に設けられている。一方、付勢部材440の被写体側には、付勢部材保持部材450の凸部450aに係合する凹部440aが2箇所に形成されている。付勢部材440を付勢部材保持部材450に組み付けるに際して、凸部450aを凹部440aに係合させることにより、付勢部材440の位置を決めることができる。また、凸部450aを設けることにより、付勢部材440が押圧変形した時に、それよりも被写体側に位置するシャッタユニット32と干渉を起こさないように規制することができる。
また、付勢部材440の撮影者側には、凹部440bが3箇所に形成されている。このように付勢部材440の撮影者側にも凹部440bを形成するのは、第1群の光学部材411の撮影光軸に垂直な中心面411aに対して、その前後(被写体側と撮影者側)で付勢方向に垂直な断面積が略同一となるようにするためである。一方、付勢部材保持部材450には、付勢部材440の凹部440bに係合する凸部450bが3箇所に設けられている。
付勢部材440において付勢方向に垂直な断面積が中心面411aの前後で異なる場合、図9(d)に示すように、付勢力伝達部材441に付勢部材440が押圧されると、付勢部材440の潰れ量が被写体側と撮影者側とで同一でなくなる。そのため、付勢力伝達部材441が付勢方向に対して傾いて、第1群の光学部材411が、ローパスフィルタ保持部材420や第1の弾性部材480に対して傾いてしまう。特にその傾きが大きい場合は、第1群の光学部材411又はローパスフィルタ保持部材420と、第1の弾性部材480との間に隙間が生じ、塵埃等の異物が侵入してしまうという懸念が有る。
それに対して、本実施形態のように付勢部材440において付勢方向に垂直な断面積が中心面411aの前後で略同一である場合、図9(c)に示すように、付勢力伝達部材441に付勢部材440が押圧されても、付勢部材440の潰れ量が被写体側と撮影者側とで略同一となる。したがって、第1群の光学部材411が、ローパスフィルタ保持部材420や第1の弾性部材480に対して大きく傾いてしまうのを防ぐことができる。これにより、第1群の光学部材411及びローパスフィルタ保持部材420と、第1の弾性部材480との間の封止が保たれ、塵埃等の異物の侵入を防ぐことができる。
なお、本実施形態においては、付勢部材440をゴムとするが、弾性体であれば、ゴムやプラスチック等の高分子重合体を用いてもよいし、金属によって形成される板バネやコイルバネを用いてもよい。また、ローパスフィルタ保持部材420そのものに弾性を持たせることで、第1群の光学部材411が圧電素子430の伸縮運動に追従するようにしてもよい。
図5、6に説明を戻して、ローパスフィルタ保持部材420と第1群の光学部材411との間に介在させた第1の弾性部材480は、エラストマー(高分子物質)で形成されている。第1の弾性部材480により、圧電素子430の伸縮に追従した第1群の光学部材411の振動を許容する上、振動により第1群の光学部材411が傷つくのを防止する。第1群の光学部材411は、周囲四辺の近傍で、ローパスフィルタ保持部材420に対して第1の弾性部材480を介して隙間がないように密閉されている。
第1群の光学部材411は、第1の弾性部材480及び後述する第2の弾性部材490で支持されることにより、圧電素子430の伸縮方向(撮影光軸に対して直交方向)のみならず、撮影光軸方向の運動についても所定量許容される。つまり、圧電素子430の振動を受けることにより、第1群の光学部材411は、撮影光軸に直交する平面に対してある程度の傾きが許容される。このようにある程度の傾きが許容されることにより、第1群の光学部材411の表面に付着した異物が撮影光軸方向にも加速度を受け得ることになり、異物除去にはより好ましい。
ところが、第1群の光学部材411の撮影光軸に直交する平面に対する傾きを許容した場合、圧電素子430と第1群の光学部材411とが接着固定されていると、圧電素子430にせん断応力が生じてしまう。特に本実施形態のように積層型の圧電素子を用いる場合には、このようなせん断応力により圧電素子の破壊を招くおそれがあり好ましくない。
このような問題に対し、上述したように、圧電素子430の第1群の光学部材411(振動伝達部材431)に対する接触面(振動面)を、第1群の光学部材411(振動伝達部材431)に接着しないように、つまり接するのみとすることで対応している。これにより、第1群の光学部材411が撮影光軸に直交する平面に対して傾いたとしても、圧電素子430にせん断応力は生じないことになる。なぜなら、第1群の光学部材411が傾いたときには、圧電素子430の接触面と、第1群の光学部材411(振動伝達部材431)の接触面とは、相対的に位置がずれるだけであって、圧電素子430が直接的に回転力を受けることがないからである。
その一方で、圧電素子430の接触面と、第1群の光学部材411(振動伝達部材431)の接触面とを接着しない場合には、圧電素子430の振動に対し、第1群の光学部材411の追従性が悪くなるという問題を生じる。
このような問題に対し、上述したように、第1群の光学部材411を圧電素子430と付勢部材440とで同一平面内で挟み込むように配置することで対応している。つまり、第1群の光学部材411を反対側から付勢することで、圧電素子430が縮み方向に駆動したときでも、第1群の光学部材411(振動伝達部材431)が圧電素子430に常に接するように構成されている。
以上述べた構成により、せん断応力の発生による圧電素子430の破壊を避けつつ、圧電素子430の振動に対する第1群の光学部材411の良好な追従性を確保している。
図6に示すように、第1群の光学部材411の被写体側には、規制部材460が設けられる。この場合に、第1群の光学部材411と規制部材460との間には、不要光線を遮光するマスク部材560と、第1群の光学部材411の表面両側に接する一対の第2の弾性部材490とを介在させる。
マスク部材560は、第1群の光学部材411を露出させる開口部を有し、開口部以外に入射される撮影光束を遮光する。これにより、第1群の光学部材411の外周部から撮影光束が撮像素子33へ入射することを防ぎ、反射光によるゴーストの発生を防止することができる。
第2の弾性部材490は、第1群の光学部材411をローパスフィルタ保持部材420の方向に付勢する。第2の弾性部材490も、第1の弾性部材480と同様にエラストマーで形成されている。第2の弾性部材490により、第1群の光学部材411の撮影光軸に直交する平面に対する傾きを許容しつつ、所定の角度以上は傾かないように規制する上、振動により第1群の光学部材411が傷つくのを防止する。
規制部材460は、例えば導電性を有する金属板からなり、マスク部材560と同様に第1群の光学部材411を露出させる開口部を有する。規制部材460は、その両側部を撮影者側に折り曲げて延伸させた係止片の係止穴460aを、ローパスフィルタ保持部材420の側面の爪部420cに係止させることにより、ローパスフィルタ保持部材420に組み付けられる。これにより、第1群の光学部材411の撮影光軸方向の動きを規制している。つまり、第1群の光学部材411が、何らかの要因によりローパスフィルタユニット470から飛び出したり、撮影光軸に直交する平面に対して所定角以上の傾いたりすることを防いでいる。
また、規制部材460の腕部460cが、撮像素子保持部材510にビス550によって固定される。この腕部460cは、総長さに対して幅を半分以下とし、長さ方向の途中で湾曲させた細長形状となっている。このように湾曲させた細長形状とすることで、圧電素子430の伸縮に追従した第1群の光学部材411の振動が撮像素子保持部材510にダイレクトに伝わるのを防止している。
ここで、撮像素子保持部材510は、本体シャーシ300に不図示の接地部材を介して接地する。したがって、撮像素子保持部材510及び本体シャーシ300を金属等の導電性材料で形成することで、規制部材460が腕部460cを介して本体シャーシ300と同電位に接地することになる。
また、第2の弾性部材490は、弾性に加え導電性を有するエラストマーからなり、マスク部材560と接する側の面に凸部490aが形成されている。マスク部材560には、第2の弾性部材490の凸部490aに対応する開口部560aが形成されるとともに、表裏全面に粘着層が設けられている。
マスク部材560は、位置決め穴560bを規制部材460の位置決め穴460bに合わせることで位置決めして、規制部材460に貼付される。さらに、第2の弾性部材490も、位置決め穴490bをマスク部材560の位置決め穴560b、つまりは規制部材460の位置決め穴460bに合わせることで位置決めして、マスク部材560に貼付される。
この場合に、第2の弾性部材の凸部490aがマスク部材560の開口部560aに対応する位置に設けられているので、凸部490aは開口部560aを貫通して規制部材460に接触することになる。つまり、第2の弾性部材490は、凸部490a及び規制部材460を介して本体シャーシ300と同電位に接地することになる。
この結果、第2の弾性部材490に接する第1群の光学部材411の表面も接地することになり、静電気による第1群の光学部材411の表面への塵埃等の異物の付着力を低下させることができる。したがって、圧電素子430の伸縮に追従した第1群の光学部材411の振動により、第1群の光学部材441の表面に付着した塵埃等の異物を落としやすくすることができる。
図6に示すように、ローパスフィルタユニット470の構成要素の一つである第2群の光学部材412は、ローパスフィルタ保持部材420に撮影者側から組み付けられ、ローパスフィルタ保持部材420に接着固定される。このように第2群の光学部材412が、第1群の光学部材411と反対側からローパスフィルタ保持部材420に組み付けられるようにして、一定の距離を確保するので、第1群の光学部材411の振動に影響を与えにくい。また、第1群の光学部材411と第2群の光学部材412とが一つの部材(ローパスフィルタ保持部材420)に組み付けられることにより、部品点数を削減し、部品点数が増えて封止部位が増加することによる異物の侵入の可能性も低減させることができる。
ローパスフィルタユニット470と、撮像素子ユニット500とは、その間にゴムシート520を挟み込んで、段ビス530によって結合される。ゴムシート520のうち撮像素子ユニット500側の面は、撮像素子33の撮像面に密着固定された第3群の光学部材413に密着し、ローパスフィルタユニット470側の面は、ローパスフィルタ保持部材420の枠部420aに密着する。これにより、ローパスフィルタ保持部材420と第3群の光学部材413との間はゴムシート520で封止され、第1群の光学部材411とローパスフィルタ保持部材420との間は第1の弾性部材480で封止される。したがって、第1群の光学部材411と撮像素子33の間の空間は、塵埃等の異物の侵入を防ぐ密閉空間が形成されることになる。
また、段ビス530は、段ビスゴムブッシュ531を挟み込んで、ローパスフィルタ保持部材420の腕部420bと撮像素子保持部材510とを結合する。
このようにローパスフィルタユニット470と撮像素子ユニット500とは、ゴムシート520及び段ビスゴムブッシュ531を介して結合されており、ゴムシート520及び段ビスゴムブッシュ531の弾性により相互に浮遊支持する構造となっている。これにより、圧電素子430の振動が撮像素子ユニット500に伝達するのを防止することができる。
なお、本実施形態ではゴムシート520を例にして説明したが、塵埃等の異物の侵入を防ぐ密閉性と、圧電素子430の振動を撮像素子33に伝達しない振動吸収性とを有する部材であればこれに限らない。例えば、一定の厚みを有するスポンジ製の両面テープやゲルシートのような部材であっても適用可能である。
図7は、撮像ユニット400を本体シャーシ300に組み付けた状態の正面図である。図8は、撮像ユニット400を含むカメラの縦断面図である。図7、8に示すように、第1群の光学部材411、圧電素子430、振動伝達部材431、付勢部材440、及び付勢力伝達部材441等によって構成されるローパスフィルタユニット470は、本体シャーシ300と撮影光軸方向の略同一位置に配置される。本体シャーシ300には本体シャーシ開口部300bが形成されており、ローパスフィルタユニット470が本体シャーシ開口部300bから所定の間隙をもって配置される。このようにローパスフィルタユニット470と本体シャーシ300とが撮影光軸方向の略同一位置に配置されるので、カメラの厚さ方向(撮影光軸方向)の小型化を図ることができる。
また、圧電素子430は、第1群の光学部材411に対して撮影光軸よりも接眼ユニット210側(上側)に配置され、付勢部材440は、第1群の光学部材411に対して圧電素子430と対向する側(下側)に配置される。
付勢部材440は、第1群の光学部材411の振動を安定させるため、付勢力のばらつきを抑えることが望ましい。付勢力のばらつきを抑えるためには、部品公差等を考慮し、付勢部材440のバネ定数を小さくすることが有効である。さらに、第1群の光学部材411の振動を安定させるのに必要な付勢力を発生させるために、付勢部材440は圧電素子430に比べて体積が大きくなりやすい。
ここで、撮像ユニット400の周辺においてカメラ横(左右)方向では、不図示のコネクタや電池室等が撮像ユニット400に近接する。そのため、圧電素子430及び付勢部材440を、第1群の光学部材411に対してカメラ横方向に配置すると、カメラ本体1が横方向に大型化してしまう可能性がある。
それに対して、図8に示すように、撮像ユニット400の周辺においてカメラ上下方向では、直上には接眼ユニット210が近接するが、直下には本実施形態も含めて一般的な一眼レフカメラにおいては直上に比べてスペースがあることが多い。これは、接眼ユニット210と撮影光軸に対して略対向する位置に配置され、サブミラー30によって導かれる撮影光束により焦点検出を行う焦点検出センサユニット31が、ミラーボックス5の中央付近の下側に収まっているためである。
そこで、体積の小さな圧電素子430を接眼ユニット210側(上側)に配置し、体積の大きな付勢部材440を下側に配置することで、本体シャーシ開口部300bの上側の面積が拡大するのを最小限に抑えることができる。これにより、本体シャーシ300の剛性や強度を効率的に確保することができ、カメラ本体の剛性や強度を確保することができる。さらに、接眼ユニット210の支持剛性や強度を確保しつつ、接眼ユニット係止部300aの高さを抑えることもできるので、カメラの上下方向及び左右方向の小型化を図ることができる。
次に、光学ローパスフィルタ410の構成要素である第1群の光学部材411の振動について説明する。制御手段であるMPU100が所定の周期電圧を圧電素子430に印加するように制御すると、圧電素子430は、撮影光軸に対して直交方向であるカメラ上下方向に伸縮するように振動する。図9(c)に示すように、第1群の光学部材411には振動伝達部材431と付勢力伝達部材441とが接着固定されており、第1群の光学部材411は圧電素子430と付勢部材440とで略同一平面内方向で挟み込まれるように配置されている。これにより、第1群の光学部材411は振動伝達部材431を介して圧電素子430に常に接した状態に維持されるので、圧電素子430の振動が第1群の光学部材411に伝達される。
本実施形態において、被振動部材である第1群の光学部材411は、単結晶構造を持つ水晶からなる複屈折板である。水晶は結晶構造を持つので、非晶材料であるガラス等に比べて共振の鋭さを示すQ値が高く、振動が減衰しにくい性質を持つ。つまり、第1群の光学部材411を水晶からなる複屈折板とすることで、ガラス等に比べてより効率的に振動させることができ、第1群の光学部材411の表面に付着した塵埃等の異物の大部分を効率よく除去することができる。なお、図10のQ値概念図に示すように、Q値とは以下の式(1)で定義される。つまり、振動の共振周波数Ωにおける振幅をAmaxとすると、Amax/√2以上の振幅を持つ周波数幅の逆数で定義される。
図11は、撮像ユニット400の横断面図である。図11に示すように、ローパスフィルタ保持部材420は、第1群の光学部材411の周囲を囲む枠部420aと、撮像素子保持部材510に取り付け保持するための4つの腕部420bとを有する。ここで、枠部420aの厚みhaは、腕部420bの厚みhbに比べて厚く構成されており、枠部420aの断面曲げ剛性は、腕部420bの断面曲げ剛性に比べて大きくなっている。つまり、枠部420aの共振固有振動数は、腕部420bの共振固有振動数に比べて高いことになる。したがって、圧電素子430によって枠部420aの共振固有振動数近傍で第1群の光学部材411を振動させる際には、共振固有振動数が小さい腕部420bの影響は小さくて済み、第1群の光学部材411を効率的に振動させることができる。
本実施形態では、4箇所の腕部420bは、ローパスフィルタ保持部材420の側面の爪部420cを避けるため、それぞれブリッジ形状をなし、腕部開口部420dが設けられている。つまり、腕部420bは、腕部開口部420dの両側で枠部420aに接合する。もちろん、腕部開口部420dがなくてもよいし、枠部420aと片側で接合するよう構成されていてもよい。枠部420aの断面曲げ剛性が、腕部420bの断面曲げ剛性に比べて大きくなるよう構成すれば、第1群の光学部材411を効率的に振動させることが可能となる。
また、腕部420bの断面曲げ剛性が、枠部420aの断面曲げ剛性に比べて小さいことから、この腕部420bで振動が減衰し、ローパスフィルタ保持部材420から腕部420bを介して撮像素子ユニット500に伝達される振動を減少させることができる。
本実施形態では、上述したように、ローパスフィルタ保持部材420は、腕部420bにおいて、段ビス530により段ビスゴムブッシュ531を挟み込んで撮像素子保持部材510に係止される。具体的には、図13に示すように、撮像素子保持部材510から段ビスゴムブッシュ531の先端がローパスフィルタ保持部材420側に突出し、その先端でローパスフィルタ保持部材420の腕部420bを受ける。
また、撮像素子保持部材510との間にゴムシート520が挟み込まれている。
このように、ローパスフィルタユニット470と撮像素子ユニット500においては、ゴムシート520による離そうとする力と、段ビス530が引きこもうとする力とが釣り合う。これにより、結果として両者が触れ合うことなく相互に浮遊支持する構造になっており、段ビスゴムブッシュ531とゴムシート520との潰れ状態が釣り合った状態で維持される。
ローパスフィルタ保持部材420の腕部420bは、略矩形状の枠部420aの四隅に配置され、4箇所の腕部420bの取り付け位置の重心は、被写体側から見た光軸に直交する平面座標上で第1群の光学部材411の重心と略一致するように設けられる。これにより、段ビスゴムブッシュ531とゴムシート520との潰れ状態のばらつきが生じた場合、ローパスフィルタユニット470の傾きを最小限に抑えることができる。
また、枠部420aの四隅は、断面曲げ剛性も大きいことから、上述した第1群の光学部材411の効率的な振動にも効果がある。
図12は、振動伝達部材431及び付勢力伝達部材441の詳細図である。振動伝達部材431の断面は略L字形状となっており、面431a及び面431bの二面で第1群の光学部材411に接し、接着される。同様に、付勢力伝達部材441の断面は略L字形状となっており、面441a及び面441bの二面で第1群の光学部材411に接し、接着される。
振動伝達部材431において、圧電素子430に接する接触面の撮影光軸方向及び撮影光軸と直交する方向の長さA1、A2は、それぞれ圧電素子430が振動伝達部材431に接する接触面の撮影光軸方向及び撮影光軸と直交する方向の長さB1、B2より長くなっている。換言すれば、圧電素子430の接触面(振動面)の面積に比べて、振動伝達部材432の接触面の面積が大きく、圧電素子430の接触面のすべてが振動伝達部材431の接触面に接している。このような構成にすることで、圧電素子430が伸縮する際に発生する力の多くを第1群の光学部材411に伝達することができ、また、局所的な荷重がかかることを防ぐことができる。
同様に、付勢力伝達部材441において、付勢部材440に接する接触面の撮影光軸方向及び撮影光軸と直交する方向の長さC1、C2は、それぞれ付勢部材440が付勢力伝達部材441に接する接触面の撮影光軸方向及び撮影光軸と直交する方向の長さD1、D2より長くなっている。換言すれば、付勢部材440の接触面の面積に比べて、付勢力伝達部材441の接触面の面積が大きく、付勢部材440の接触面のすべてが付勢力伝達部材441の接触面に接している。このような構成にすることで、付勢部材440の付勢力の多くを第1群の光学部材411に伝達することができ、また、局所的な荷重がかかることを防ぐことができる。
また、略L字形状の振動伝達部材431の折曲部431c、及び、略L字形状の付勢力伝達部材441の折曲部441cは、撮像素子33側に配置されている。このような構成にすることで、ローパスフィルタユニット470の撮影光軸方向の厚みを減らすことができる。
本実施形態では、振動伝達部材431及び付勢力伝達部材441の材料として、第1群の光学部材411と線膨張係数が近い金属を用いている。したがって、温度変化による熱応力を原因として、振動伝達部材431及び付勢力伝達部材441と、第1群の光学部材411との間の接着層に生じるせん断応力によって接着層が破壊されるのを防ぐことができる。これにより、振動伝達部材431及び付勢力伝達部材441が第1群の光学部材411から剥離することを防ぐことができる。
また、金属のように減衰が少ない材料を用いることで、圧電素子430から第1群の光学部材411に効率よく振動を伝達することが可能となる。
振動伝達部材431及び付勢力伝達部材441と、第1群の光学部材411との間の接着層に発生する最大せん断応力Fは、以下の式(2)で表される。なお、Gは接着剤の横弾性係数、ΔTは温度変化、Lは接着面の最大長さ、tは接着層の厚さ、α1は振動伝達部材431及び付勢力伝達部材441の線膨張係数、α2は第1群の光学部材411の線膨張係数である。
式(2)から明らかなように、振動伝達部材431及び付勢力伝達部材441の線膨張係数α1と、第1群の光学部材411の線膨張係数α2との差が小さいほど、接着層に発生する最大せん断応力Fを小さくすることができる。
本実施形態で用いている第1群の光学部材411は、回転角0度の水晶複屈折板(水晶の結晶のX軸と第1群の光学部材411の短辺が平行になる方向に切り出されている)である。そして、第1群の光学部材411の長辺方向の線膨張係数は10〜12(×10-6)/℃、以下同じ)程度である。それに対して、振動伝達部材431及び付勢力伝達部材441は、フェライト系ステンレス材を用いており、線膨張係数は10〜12程度である。また、フェライト系ステンレス材は、同程度の線膨張係数を持つ樹脂材料等に比べて減衰が小さいので、圧電素子430の振動を効率よく伝達することができる。
さらに、第1群の光学部材411が、回転角90度の水晶複屈折板(水晶の結晶のX軸と第1群の光学部材411の長辺が平行になる方向に切り出されている)である場合は、第1群の光学部材411の長辺方向の線膨張係数は13〜15程度である。この場合、振動伝達部材431及び付勢力伝達部材441は、線膨張係数が14〜17程度であるオーステナイト系ステンレス材等を用いることが望ましい。
その他にも、第1群の光学部材411の線膨張係数に合わせて、アルミニウム合金、チタン合金、ニッケル鉄合金、ニッケル鉄クロム合金、ニッケル鉄モリブデン合金等を振動伝達部材や付勢力伝達部材として用いても良い。このように線膨張係数を同程度とするのは、紫外線硬化接着剤で貼り合わせた際に剥がれを生じないようにするためである。つまり、カメラが使用される通常の環境下である−10℃から40℃を想定する。このとき、この温度変化による熱応力を原因として、振動伝達部材431及び付勢力伝達部材441と第1群の光学部材411との間の紫外線硬化接着剤による接着層がせん断応力によって破壊されないようにする。
また、振動伝達部材431及び付勢力伝達部材441を第1群の光学部材411に接着するに際して、熱応力の発生を避けるため、熱硬化性の接着剤ではなく、常温で硬化する接着剤を用いることが望ましい。本実施形態では、紫外線硬化接着剤を用いているが、2液混合型の接着剤やその他常温で硬化する接着剤を使用しても良い。
上述したように、ローパスフィルタ保持部材420と撮像素子33との間は、ゴムシート520によって、また、第1群の光学部材411とローパスフィルタ保持部材420との間は、圧電素子430及び第1の弾性部材480によって封止される。これにより、第1群の光学部材411と撮像素子33との空間は、塵埃等の異物が侵入しないような密閉空間が形成される。
また、同時に、第1群の光学部材411等を含むローパスフィルタユニット470は、撮像素子ユニット500に対してゴムシート520を挟み込むように構成される。さらに段ビス530で、段ビスゴムブッシュ531を挟み込んで保持される。これにより、ローパスフィルタユニット470の振動は、ゴムシート520や段ビスゴムブッシュ531により減衰されるので、撮像素子33に伝達することを防ぐことができる。
このような構成により、圧電素子430が振動しても、撮像素子33にはその影響はほとんど及ばない。その結果、振動を受ける構造体を限定することが可能となり、特に振動を起こしたい第1群の光学部材411を重点的に振動させることができる。これにより、振動を受ける構造体の全質量を抑えることが可能となり、圧電素子430を駆動するエネルギーはより小さくて済むことになる。
さらに、第1群の光学部材411の振動が撮像素子33にほとんど伝わらないので、撮像素子33の接着剥がれといった破損を防止することができる。また逆に、カメラに対して衝撃が加えられた時には、その衝撃は圧電素子430にほとんど伝わらないことになるので、カメラに加えられる衝撃による圧電素子430の破損を防止することができる。
また、上述したように、第1群の光学部材411(振動伝達部材431)と圧電素子430とは接着しない、すなわち結合しない構成となっている。したがって、圧電素子430に周期電圧を印加して伸縮させても、圧電素子430には第1群の光学部材411を押す方向にのみ力が発生し、第1群の光学部材411により引っ張られる方向には力が作用しない。これにより、圧電素子430に超音波域の高周波電圧を印加したとしても、圧電素子430に過大な引張力が付加されることがなく、積層部分における剥離といった破損を防ぐことができる。
次に、本実施形態において、第1群の光学部材411の表面に付着した塵埃等の異物を除去する動作について説明する。ユーザによりクリーニング指示操作部材44が操作されると、クリーニングモード開始の指示を受けて、カメラをクリーニングモードの状態に移行させる。
なお、本実施形態では、クリーニング指示操作部材44を設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばクリーニングモードへの移行を指示するための操作部材は、機械的なボタンに限らず、カラー液晶モニタ19に表示されたメニューから、カーソルキーや指示ボタン等を用いて指示するものであってもよい。また、クリーニングモードへの移行は、電源ON時やOFF時等、通常のカメラシーケンス中において自動的に行われるようにしてもよいし、撮影回数や日付等を基準として行われるようにしてもよい。
電力供給回路110は、クリーニングモードに必要な電力をカメラ本体1の各部へ必要に応じて供給する。また、これに並行して電源42の電池残量を検出して、その結果をMPU100に送信する。
MPU100は、クリーニングモード開始の信号を受け取ると、圧電素子駆動回路111に駆動信号を送信する。圧電素子駆動回路111は、MPU100より駆動信号を受け取ると、圧電素子430を駆動するための周期電圧を生成し、圧電素子430に印加する。圧電素子430は、印加される電圧に応じて伸縮する。
圧電素子430が伸びると、第1群の光学部材411は圧電素子430に押されて撮影光軸に対して直交方向(面方向)に移動し、付勢部材440はその移動量分だけ縮む。圧電素子430が縮むと、第1群の光学部材411は付勢部材440によって圧電素子430の方向に付勢されているので、圧電素子430の縮みに追従して移動する。
圧電素子430に周期電圧が印加されると、上記運動の繰り返しが生じ、第1群の光学部材411は圧電素子430の周期的な伸縮に追従して振動する。第1群の光学部材411が振動することで、第1群の光学部材411の表面に付着した塵埃等の異物を除去することができる。
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
例えば、本実施形態では、非導電性のマスク部材560を介在させながらも第2の弾性部材490を規制部材460に接地するために、マスク部材560に開口部560aを形成したが、これに限られない。つまり、マスク部材560が第2の弾性部材490の凸部490aを逃げていればよく、例えばマスク部材560の一部に切り欠き部を形成し、その切り欠き部を介して第2の弾性部材490の凸部490aが規制部材460に接触するようにしてもよい。
また、マスク部材560とその粘着層をともに導電性を有する材料で形成してもよい。この場合、第2の弾性部材490に凸部490aを形成しなくても、第1群の光学部材411が、第2の弾性部材490、粘着層、マスク部材560、規制部材460を介して本体シャーシ300と同電位に接地することになる。
また、マスク部材560が不要な場合には、規制部材460もしくは第2の弾性部材490に開口部を有する粘着層を設けて、この開口部にて規制部材460と第2の弾性部材490とを接地するようにしてもよい。また、規制部材460もしくは第2の弾性部材490に導電性粘着層を設けて、規制部材460と第2の弾性部材490とを接地するようにしてもよい。
さらに、規制部材460の第2の弾性部材490側の面に、一部が第2の弾性部材490と重なるように両面粘着テープを貼付し、両面粘着テープが重ならない位置において、第2の弾性部材490が規制部材460に接地するようにしてもよい。さらにまた、規制部材460の第2の弾性部材490側の面に、少なくとも一部が第2の弾性部材490と重なるように導電性両面粘着テープを貼付し、第2の弾性部材490が規制部材460に接地するようにしてもよい。
また、本実施形態では、第2の弾性部材490を細長い板形状として2箇所に設けたが、環状としてもよい。材料についても、導電性を有するエラストマーを用いたが、これに限定されるものではなく、導電性及び弾性を有する高分子物質であればよい。