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JP2008022513A - 歪制御機能付き増幅装置 - Google Patents

歪制御機能付き増幅装置 Download PDF

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JP2008022513A JP2006261342A JP2006261342A JP2008022513A JP 2008022513 A JP2008022513 A JP 2008022513A JP 2006261342 A JP2006261342 A JP 2006261342A JP 2006261342 A JP2006261342 A JP 2006261342A JP 2008022513 A JP2008022513 A JP 2008022513A
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Manabu Nakamura
学 中村
Yasuhiro Takeda
康弘 武田
Naoki Motoe
直樹 本江
Yoichi Okubo
陽一 大久保
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Hitachi Kokusai Electric Inc
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Abstract

【課題】ドハティ増幅器と歪補償器を組み合わせた場合の歪補償量をABクラス増幅器の歪補償量に近付けることができる歪制御機能付き増幅装置を提供する。
【解決手段】キャリア増幅回路及びピーク増幅回路を備えたドハティ増幅器20とプリディストータ102を組み合わせてドハティ増幅器20の非線形歪を補償する。ドハティ増幅器20の入力信号を方向性結合器162及び検波回路163で検出し、A/D変換器164を介して制御部117に入力する。又ドハティ増幅器20の出力信号に含まれる相互変調歪を歪検出部112で検出して制御部117に入力する。制御部117は、歪検出部112で検出された歪値が小さくなるようにプリディストータ102を制御すると共に、歪検出部112で検出された歪値及びA/D変換器164の出力に応じてピーク増幅回路のバイアスを任意に制御し、ドハティ増幅器20のAM−AM変換特性がAB級に近付くようにする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、携帯電話システム等の基地局において用いられる増幅装置に係り、特にドハティ増幅器(Doherty増幅器)の歪補償後の相互変調歪を一定にする歪制御機能付き増幅装置に関する。
従来、CDMA信号やマルチキャリア信号を電力増幅する場合、共通増幅器に歪補償手段を付加し、共通増幅器の動作範囲を飽和領域付近まで広げることで低消費電力化を図っていた。歪補償手段として、フィードフォワード歪補償やプリディストーション歪補償などがあるが、歪補償だけでは低消費電力化に限界が近付いている。そのため近年、高効率増幅器としてドハティ増幅器が注目されている。
しかし、ドハティ増幅器は、効率を良好にすればするほど、AM−AM(入力振幅レベル対出力振幅レベル)変換特性及びAM−PM(入力振幅レベル対出力位相回転量)変換特性が劣化し、従来のフィードフォワード歪補償やプリディストーション歪補償で歪を補償しきれない状態になる。
また、一般的なドハティ増幅器のAM−AM変換特性は、従来のABクラス増幅器と同等にならない。ドハティ増幅器は、動作クラスの異なる増幅器(キャリア増幅器、ピーク増幅器)を2つ組み合わせて構成しているためである。キャリア増幅器は通常ABクラスの動作であり、ピーク増幅器はCクラスの動作である。入力レベルが高い時のピーク増幅器は、入力レベルが高くなるにつれてゲインが増加するが、キャリア増幅器と同等にならない。このため最終的に動作クラスの異なる増幅器を合成した場合、飽和付近のゲインが低下する。
このような一般的なドハティ増幅器と一般的な歪補償器を組み合わせた場合の歪補償は、従来のABクラス増幅器の歪補償量と比較して、すなわち同一出力の場合におけるABクラス増幅器の歪補償量と比較して劣化する。飽和付近のゲインが低下しているために、ABクラス増幅器より非線形性が大きいからである。よって、歪補償後における相互変調歪の劣化のために効率を限界まで引き出せない状態になる。
ここで、従来のプリディストーション歪補償を行った電力増幅装置について、図13に示すブロック図を参照して説明する。
図13において、102は非線形歪を補償するプリディストータで、入力端子101から入力される信号の歪補償を行い、D/A変換器103へ出力する。このD/A変換器103は、クロック信号CLK1に同期してデジタル信号をアナログ信号に変換し、直交変調器104へ出力する。この直交変調器104は、発振器105からの信号によって入力信号を直交変調する。上記直交変調器104で変調された信号は、電力増幅器106で増幅され、出力端子107から出力される。
また、電力増幅器106の出力信号の一部は、方向性結合器108を介して取り出され、ミキサ109に入力される。ミキサ109は、方向性結合器108により取り出された信号を発振器110からの発振周波数に基づいてIF周波数にダウンコンバートし、A/D変換器111へ出力する。A/D変換器111は、IF信号をクロック信号CLK2に同期してデジタル信号に変換し、歪検出部112へ出力する。歪検出部112は、高速フーリエ変換回路(FFT:Fast Fourier Transform)113及びIM(intermodulation:相互変調)演算回路114からなり、上記電力増幅器106から出力される信号の歪値を求め、制御部115へ出力する。制御部115は、歪検出部112で検出された歪値が小さくなるようにプリディストータ102を適応的に制御する。
上記の構成において、電力増幅器106から出力される信号の一部が方向性結合器108を介して取り出され、ミキサ109によりIF周波数にダウンコンバートされた後、A/D変換器111でデジタル信号に変換されて歪検出部112へ送られる。歪検出部112は、高速フーリエ変換回路113でIF信号のスペクトラムを求め、次いでIM演算回路114にて変調信号のキャリア数とその離調周波数から計算されるIM3(3次の相互変調歪)、IM5(5次の相互変調歪)の周波数における電力値を歪値とする。制御部115は、歪検出部112で検出された歪値が小さくなるようにプリディストータ102を適応的に制御する。そして、プリディストータ102で歪補償された信号がD/A変換器103でアナログ信号に変換された後、直交変調器104で直交変調され、電力増幅器106で増幅されて出力端子107から出力される。
次に、上記プリディストータ102の構成を図14に示すブロック図を参照して説明する。
電力増幅器106の非線形特性が相互変調歪として現れるのは、奇数次歪であるため、電力増幅器106の非線形の逆特性を付加するプリディストータ102は、[式1]で近似できる。
[式1]
y=α*|x|*x+β*|x|*x+γ*|x|*x
ここで、x、yはプリディストータ102の入力信号及び出力信号で複素数である。制御部115は、歪検出部112で得られた歪値が小さくなるように摂動法を用いて、α、β、γの値を制御する。また、α、β、γは複素数で、
[式2]
α=A3*exp(j*φ3)
β=A5*exp(j*φ5)
γ=A7*exp(j*φ7)
と表され、αはA3とφ3で、βはA5とφ5で、γはA7とφ7で決まる。これらの係数をφ3→A3→φ5→A5→φ7→A7→φ3…という順番で変化させ、歪値が小さくなるようにα、β、γの値を更新する。
上記のようにプリディストータ102は、上記[式1]で近似できるので、図14のように構成される。すなわち、入力端子101に入力される信号xに対し、「α*x」の演算を行う第1の演算系120、「β*x」の演算を行う第2の演算系130、「γ*x」の演算を行う第3の演算系140を設け、上記第1、第2、第3の演算系120、130、140の演算結果と入力信号xとを加算器150で加算し、その加算結果yを出力端子151から出力する。
第1の演算系120は、入力信号xと定数器121の出力|x|を乗算する乗算器122、及びこの乗算器122の出力と係数αとを乗算する乗算器123により構成される。
第2の演算系130は、入力信号xと定数器131の出力|x|を乗算する乗算器132、及びこの乗算器132の出力と係数βとを乗算する乗算器133により構成される。
第3の演算系140は、入力信号xと定数器141の出力|x|を乗算する乗算器142、及びこの乗算器142の出力と係数γとを乗算する乗算器143により構成される。
上記のように制御部115は、歪検出部112で得られた歪値が小さくなるように摂動法を用いて係数α、β、γの値を制御し、電力増幅器106における非線形の逆特性を、べき級数を用いたプリディストータ102で近似することにより、歪補償が可能となる。
しかし、上記プリディストーション歪補償を行った増幅器は、上記したように歪補償だけでは低消費電力化に限界が近付いている。
図15は、従来のドハティ増幅器の構成を示すブロック図である。
入力端子1に入力された信号は、分配器2で分配され、その一方の信号はキャリア増幅回路4に入力される。キャリア増幅回路4は、増幅素子42と、この増幅素子42の入力側と整合を取る入力整合回路41と、増幅素子42の出力側と整合を取る出力整合回路43から構成されている。キャリア増幅回路4の出力は、λ/4変成器61でインピーダンス変換される。
上記分配器2で分配されたもう一方の信号は、移相器3で位相が90度遅延されてピーク増幅回路5に入力される。ピーク増幅回路5はキャリア増幅回路4と同様に、入力整合回路51と、増幅素子52と、出力整合回路53から構成されている。λ/4変成器61及びピーク増幅回路5の出力はノード(合成点)62において合成される。λ/4変成器61とノード62とを合わせて、ドハティ合成部6と呼ぶ。合成された信号は、出力負荷Zに整合するため、λ/4変成器7でインピーダンス変換され、出力端子8を介して負荷9に供給される。上記増幅素子42、52としては、通常、LD−MOS(Lateral Diffused MOS)、GaAs−FET、HEMT、HBT等の半導体デバイスが用いられる。
キャリア増幅回路4とピーク増幅回路5は、増幅素子42がAB級にバイアスされ、増幅素子52がB又はC級にバイアスされている点で異なる。そのため、増幅素子52が動作する入力までは増幅素子42は単独で動作し、増幅素子42が飽和領域に入り、増幅素子42の線形性が崩れ始めると、増幅素子52が動作し始め、増幅素子52の出力が負荷9に供給され、増幅素子42とともに負荷9を駆動する。このとき出力整合回路43の負荷線は、高い抵抗から低い抵抗へ移動するが、増幅素子42は飽和領域にあるので効率は良い。入力端子1からの入力が更に増加すると、ピーク増幅回路5の増幅素子52も飽和し始めるが、増幅素子42、52ともに飽和しているので、このときも効率は良い。
図16は、図15のドハティ増幅器における理論上のコレクタ効率(%)ないしドレイン効率(%)を示す図である。なお、ここでいうコレクタ効率とは、コレクタに印加される電源の電圧(直流)とその電源から供給される電流(直流)の積に対する、コレクタから取り出せる無線周波出力電力の割合の意味であり、ドレイン効率についても同様である。
図16の横軸はバックオフ(dB)であり、増幅素子42、52の両方が飽和する最小の入力端子1への入力レベル、即ちコンプレッションポイントを0dBとし、入力レベルがコンプレッションポイントに対しどれだけ余裕があるかを示す数値である。
図16において、実線は簡単なモデルにおけるドハティ増幅器の効率を示し、破線は一般的なB級増幅器の効率を示している。
入力レベルが小さく、バックオフが6dB以上の領域Aにあるときは、基本的にキャリア増幅回路4のみ動作する。バックオフが6dBになる付近でキャリア増幅回路4は飽和し始め、効率はB級増幅器の最大効率付近まで達する。ドハティ増幅器の最大出力をPとすると、このときキャリア増幅回路4の出力は約P/4である。
バックオフが6dB以下の領域Bでは、入力レベルが増加するに従い、キャリア増幅回路4の出力は約P/4からP/2へ増加し、ピーク増幅回路5の出力はほぼ0からP/2へ増加する。このときキャリア増幅回路4及びピーク増幅回路5の出力電力の和は、入力端子1への入力電力に対し、領域Aのときと同じ比例定数で比例する。ピーク増幅回路5が動作し始めると効率は一旦低下するが、ピーク増幅回路5も飽和し始めるコンプレッション点で再びピークを迎える。コンプレッション点において、キャリア増幅回路4とピーク増幅回路5の出力は等しくなる。
一般に、CDMA信号やマルチキャリア信号は高いピークファクタ、すなわちピーク電力と平均電力の比を有するが、通常の増幅器では7〜12dBのピークファクタに対応できるように、コンプレッション点からその分を下げた点を動作点としている。
図15に戻り、各部のインピーダンスを説明する。出力負荷Zは一定に規定されているので、これを起点とする。ノード62からλ/4変成器7をみたインピーダンスZは、λ/4変成器7の特性インピーダンスをZとすると、
=Z /Z
となる。
出力整合回路43からλ/4変成器61をみたインピーダンスZは、A領域においては出力整合回路53の出力インピーダンスが実質的に無限大となるために上記と同様に求まり、入力信号レベルが大きいC領域においては負荷を等しく分担するため、λ/4変成器61の負荷インピーダンス(ノード62での増幅回路4の寄与分)と出力整合回路53の負荷インピーダンスがそれぞれ2Zとなるので、
Figure 2008022513
Figure 2008022513
となる。ただし、Zは、λ/4変成器61の特性インピーダンスである。インピーダンスZ及びZは、B領域ではA領域の時の値とC領域の時の値との間をそれぞれ遷移する。
更にドハティ増幅器を周波数の高い領域に応用した場合について、以下に説明する。
すなわち、インピーダンスZは入力信号のレベルが小さいとき(A領域)のインピーダンス値に対し、入力信号レベルが大きいとき(C領域)には半分になり、換言すれば2倍の負荷変動を起こす。例えば、Z=25Ω、Z=50Ωとすると、Zは100〜50Ωの間で変化する。従って増幅素子42の負荷インピーダンスも変動している。
上述したドハティ増幅器は、図17で示すようなAB級の平衡増幅器と比較して飽和領域における出力電力が低下するという欠点がある。図17の平衡増幅器は、入力端子200から入力される信号を分配器201で2つの増幅回路210、220に分配し、この増幅回路210、220で増幅された信号を合成器202で合成し、出力端子203から出力負荷204に供給している。上記増幅回路210は、入力整合回路211、AB級にバイアスされた増幅素子212、出力整合回路213により構成され、増幅回路220は、入力整合回路221、AB級にバイアスされた増幅素子222、出力整合回路223により構成されている。
ドハティ増幅器の飽和領域における出力電力は、AB級にバイアスされた平衡増幅器より小さい。これはドハティ増幅器の飽和領域における出力電力が、AB級のキャリア増幅回路4とC級のピーク増幅回路5の合成であり、C級はAB級と比較して利得が低下することに起因する。この飽和領域における出力電力の低下は、更に増幅器を追加し合成することで対処することになるが、平衡増幅器と比較して多くの増幅器が必要になり、コスト高になる。
上記ドハティ増幅器の飽和領域における電力の低下を改善する方法として、入力レベルに応じてピーク増幅回路のゲートバイアス電圧を制御することで、特性の劣化を補償した図18に示すようなドハティ増幅器が考えられている。このドハティ増幅器と図15に示した従来のドハティ増幅器との違いは、入力端子1と分配器2との間に方向性結合器17を設け、この方向性結合器17から取り出した信号をピーク増幅回路5のゲートバイアス制御回路18に入力してピーク増幅回路5のバイアスを制御するようにした点である。
ゲートバイアス制御回路18は、方向性結合器17から得られた信号をダイオード検波し、図19に一例を示すゲートバイアス電圧制御特性のようなゲートバイアス電圧を出力する。入力レベルが低いA領域では、ピーク増幅回路5をC級動作させているので、従来のドハティ増幅器と同じであるが、ピーク増幅回路5も飽和し始めるコンプレッション点では、キャリア増幅回路4と同じAB級動作であるため、AB級の平衡増幅器と同等の飽和電力が得られる。B領域では、A領域のときの値とC領域のときの値との間を遷移するような特性になっている。このようなゲートバイアス制御により、高効率で飽和電力が低下しないドハティ増幅器を実現できる。
ゲートバイアス制御回路18は、ダイオード検波によるアナログ回路が考えられるが、製品化する際にはダイオードの個体の特性バラツキにより同じゲートバイアス特性を実現するのは困難であり、また、調整により特性をほぼ一定にしてもその調整工数により、製造コストが増大する。この問題を解決する方法としてデジタル回路でゲートバイアス制御回路18を実現することは容易に考えられる。
図20は、デジタル回路によるゲートバイアス制御回路を備えたドハティ増幅器を送信機に適用した場合の構成を示すブロック図である。ベースバンドI相信号(同相成分)及びベースバンドQ相信号(直交成分)は、入力端子231、232より歪補償を行うデジタルプリディストータ233を介してデジタル直交変調器234に入力される。この直交変調器234は、乗算器235、236、NCO(Numerical Controlled Oscillator)237及び加算器238からなり、上記プリディストータ233で歪補償された信号を変調する。直交変調器234で変調された信号は、D/A変換器239でデジタル信号からアナログ信号に変換され、ローパスフィルタ(LPF)240を介してアップコンバータ241に入力され、RF信号(高周波信号)に変換される。このRF信号は、ドライバアンプ242で増幅された後、ドハティ増幅器243の入力端子1に入力される。このドハティ増幅器243は、上記図18に示したものと同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。
また、上記プリディストータ233から出力されるベースバンドI相信号及びベースバンドQ相信号は、パワーディテクタ244に入力されて「√(I+Q)」の演算により包絡線が計算される。このパワーディテクタ244の演算結果は、ゲートバイアス制御特性が記憶されているLUT(Look Up Table)245に入力される。このLUT245から出力されるゲートバイアス制御信号は、D/A変換器246でデジタル信号からアナログ信号に変換された後、ローパスフィルタ(LPF)247及びバッファアンプ248を介してドハティ増幅器243のピーク増幅回路5に入力され、そのバイアスを制御する。上記ドハティ増幅器243の出力端子8から出力される信号は、負荷9に供給される。
ゲートバイアス制御回路18をデジタル回路で実現するもう1つの利点としてゲートバイアス制御特性をLUT245に書き込むことで、バイアス制御を自由に設定できることが上げられる。
そして、上記ドハティ増幅器243の出力信号の一部を方向性結合器251により分岐して取り出し、ダウンコンバータ252でIF信号に変換する。このIF信号は、ローパスフィルタ253を介してA/D変換器254に入力され、アナログ信号からデジタル信号に変換されて歪検出回路255へ送られる。この歪検出回路255は、A/D変換器254でサンプリングされた信号から歪を検出し、その検出信号を制御回路256へ出力する。制御回路256は、歪検出回路255で検出された歪が小さくなるようにプリディストータ233を適応制御する。
また、本発明に関連する公知技術として、主増幅器と補助増幅器からなるドハティ増幅器において、補助増幅器のバイアスを制御して歪の発生を低減し、また、入力信号の帯域を広げずに済むようにした歪制御機能付き増幅器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
米国特許出願公開第2006/0049870号明細書
一般的なドハティ増幅器と一般的な歪補償器を組み合わせた場合の歪補償は、従来のABクラス増幅器の歪補償量と比較して劣化する。飽和付近のゲインが低下しているために、ABクラス増幅器より非線形性が大きくなり、歪補償後における相互変調歪の劣化のために効率を限界まで引き出すことが困難である。
また、従来のドハティ増幅器は、効率を良好にすればするほど、AM−AM(入力振幅レベル対出力振幅レベル)変換特性及びAM−PM(入力振幅レベル対出力位相回転量)変換特性が劣化し、また、歪制御機能付き増幅器においても歪の低減が十分でなく、効率を限界まで引き出すことができないという問題がある。
また、図20に示した送信機では、入力端子231、232からのベースバンドI相信号、Q相信号が、プリディストータ233を介して乗算器235、236へ分岐されてRF信号に変換され、ピーク増幅回路5における増幅素子52のゲート端子(増幅素子52をFETにより構成した場合)に入力されるまでの遅延時間τ1と、プリディストータ233からパワーディテクタ244へ分岐された信号がゲートバイアス制御信号となってピーク増幅回路5における増幅素子52のゲート端子に達するまでの遅延時間τ2に差があると、RF信号とゲートバイアス制御信号にタイミングずれが発生し、ドハティ増幅器243の歪以外に、タイミングずれによる歪が発生してしまうという問題がある。
上記RF信号とゲートバイアス制御信号のタイミングのずれによる歪について以下に説明する。例えばIQベースバンド信号からピーク増幅回路5における増幅素子52のゲート端子に達するまでのRF信号の遅延時間τ1とゲートバイアス制御信号の遅延時間τ2が等しい場合と異なっている場合のイメージ波形を図21に示す。図21(a)は「τ1=τ2」でのイメージ波形、同図(b)は「τ1<τ2」のときのイメージ波形で、それぞれRF信号の包絡線とゲートバイアス制御信号の時間波形であり、横軸に時間、縦軸に振幅を表示している。
(a)「τ1=τ2」では、RF信号とゲートバイアス制御信号のタイミングのずれがないが、(b)「τ1<τ2」では、RF信号とゲートバイアス制御信号のタイミングのずれにより、RF信号の包絡線振幅が時間とともに増加するときのゲートバイアス電圧と、時間とともに減少するときのゲートバイアス電圧に違いがある。これは、RF信号が増加するときと減少するときで、ピーク増幅回路5の動作クラスが違うことになり、歪の発生要因となる。
一般的に増幅器は、動作クラス(ゲートバイアス電圧)によって、利得、歪特性(AM−AM特性、AM−PM特性)に違いがあるので、RF信号が増加するときと減少するときで動作クラスに違いがあれば歪が大きくなる。
ゲートバイアス制御回路をデジタル回路で実現する際には、このタイミングのずれを補正するのに、デジタル回路のクロック周波数の単位で調整することが可能である。つまり、図21(b)の「τ1<τ2」では、RF信号の遅延時間を大きくするために、例えば加算器238の後段にフリップフロップを追加することにより、τ1をτ2に近付けることが可能である。また、D/A変換器239の後段に同軸線路などの遅延線を配置し、アナログ信号で遅延時間τ1とτ2を合わせることが可能となる。
しかし、デジタル回路のフリップフロップによる遅延時間の調整は、デジタル回路のクロック周波数の単位でしか調整できない。また、アナログ回路の遅延線で遅延時間を調整するのは、一般的に線路長が長くなり、小型化、原価低減の面から不利になってしまう。
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、一般的なドハティ増幅器及び歪補償器を組み合わせた場合における歪補償量をABクラス増幅器の歪補償量に近付けることができ、効率を限界まで引き出すことができる歪制御機能付き増幅装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、ゲートバイアス制御機能を備えたドハティ増幅器と歪補償器を組み合わせた場合において、RF信号とゲートバイアス制御信号のタイミングのずれを精度良く調整できる歪制御機能付き増幅装置を提供することを目的とする。
第1の発明に係る歪制御機能付き増幅装置は、AB級で動作する増幅素子を備えたキャリア増幅回路と、制御端子から入力される制御信号により増幅動作が制御される増幅素子を備えたピーク増幅回路と、前記キャリア増幅回路及びピーク増幅回路で増幅された信号を合成して出力する合成手段とからなるドハティ増幅器と、
前記ドハティ増幅器の非線形歪を補償するプリディストータと、前記ドハティ増幅器の出力信号に含まれる相互変調歪を検出する歪検出部と、前記歪検出部で検出された歪値が小さくなるように前記プリディストータを制御すると共に、前記歪検出部で検出された歪値及び前記ドハティ増幅器の入力信号のレベルに応じて前記ピーク増幅回路のバイアスを任意に制御し、前記ドハティ増幅器の入力振幅レベル対出力振幅レベル変換特性がAB級に近付くように制御する制御部とからなるプリディストーション歪補償回路とを具備することを特徴とする。
第2の発明に係る歪制御機能付き増幅装置は、AB級で動作する増幅素子を備えたキャリア増幅回路と、制御端子から入力されるバイアス制御信号により増幅動作が制御される増幅素子を備えたピーク増幅回路と、前記キャリア増幅回路及びピーク増幅回路で増幅された信号を合成して出力する合成手段とからなるドハティ増幅器と、
増幅対象となる入力信号について、前記ドハティ増幅器で発生する非線形歪を補償するプリディストータと、前記プリディストータで補償された信号を高周波信号に変換して前記ドハティ増幅器の信号入力端子に入力する第1の信号系統と、前記プリディストータから出力される信号を分岐して取り出し、該信号のレベル及び予め設定されたバイアス制御特性に基づいてバイアス制御信号を生成して前記ドハティ増幅器の制御端子に入力する第2の信号系統と、前記第1の信号系統と第2の信号系統の少なくとも一方に設けられる遅延調整回路と、前記ドハティ増幅器の出力信号に含まれる相互変調歪を検出する歪検出部と、前記歪検出部で検出された歪値が小さくなるように前記プリディストータを制御すると共に前記遅延調整回路の信号遅延量を制御する制御部とを具備したことを特徴とする。
第1の発明によれば、歪検出部で検出された歪値が小さくなるようにプリディストータを制御すると共に、歪検出部で検出された歪値及びドハティ増幅器の入力信号レベルに応じてピーク増幅回路のバイアスを任意に制御し、ドハティ増幅器の入力振幅レベル対出力振幅レベル変換特性がAB級に近付くように制御することで、一般的なドハティ増幅器及びプリディストータを組み合わせた場合の歪補償量をABクラス増幅器の歪補償量に近付けることができ、効率を限界まで引き出すことができる。また、歪補償量のバラツキもバイアスを任意に変えることにより吸収できる。
第2の発明によれば、ドハティ増幅器に対する高周波信号を伝送する第1の信号系統とバイアス制御信号を伝送する第2の信号系統の少なくとも一方に遅延調整回路を設け、歪検出部で検出された歪値が小さくなるように遅延調整回路の信号遅延量を調整することで、第1の信号系統における高周波信号と第2の信号系統におけるバイアス制御信号のタイミングずれを無くして歪の発生を抑圧することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る歪制御機能付き増幅装置の構成を示すブロック図であり、プリディストーション歪補償回路100とドハティ増幅器20を組み合わせて構成したものである。図2はドハティ増幅器20の詳細な構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プリディストーション歪補償回路100への入力信号は、入力端子101よりプリディストータ102に入力される。プリディストータ102は、上記図14に示したものと同様の構成であるので詳細な説明は省略する。プリディストータ102は、入力信号の非線形歪を補償してD/A変換器103へ出力する。D/A変換器103は、クロック信号CLK1に同期してデジタル信号をアナログ信号に変換し、直交変調器104へ出力する。この直交変調器104は、発振器105からの信号によって入力信号を直交変調し、遅延補正回路161を介してドハティ増幅器20へ出力する。上記遅延補正回路161は、後述する制御部117における信号の遅延に合わせて、上記変調信号を遅延させるためのもので、例えば伝送線路や遅延フィルタなどで構成される。上記遅延補正回路161で遅延補正された変調波は、ドハティ増幅器20で増幅され、出力端子107から出力される。
また、ドハティ増幅器20の出力信号の一部は、方向性結合器108を介して取り出され、ミキサ109に入力される。ミキサ109は、方向性結合器108から取り出された信号を発振器110からの発振周波数に基づいてIF周波数にダウンコンバートする。ミキサ109でダウンコンバートされたIF信号は、A/D変換器111でデジタル信号に変換されて歪検出部112へ送られる。この歪検出部112は、高速フーリエ変換回路(FFT)113及びIM演算回路114からなり、上記ドハティ増幅器20から出力される信号の歪値を求め、制御部117へ出力する。
また、上記直交変調器104から出力される変調信号の一部は、方向性結合器162を介して取り出され、検波回路163に入力される。この検波回路163は、例えばショットキーダイオードなどで構成された一般的な検波回路であり、変調波の電力の大きさに応じた電圧を出力する。検波回路163から出力される電圧は、A/D変換器164でアナログ信号からデジタル信号に変換されて制御部117へ送られる。上記A/D変換器164は、検波回路163から出力される電圧(アナログ信号)をクロック信号CLK3に同期してデジタル信号に変換する。
制御部117は、歪検出部112で検出された歪値が小さくなるようにプリディストータ102を適応的に制御すると共に、歪検出部112で検出された相互変調歪が目標値になるように、検波回路163からA/D変換器164を介して送られてくる信号をそのまま用いたり、また、任意(例えば図4の検波電圧が元であれば、A領域を上下させたり、B領域の傾きを急峻にしたり、緩やかにしたり、C領域を上下させること)に変更した電圧でドハティ増幅器20のバイアスを制御し、歪補償量を改善する。この場合、制御部117から出力されるドハティ増幅器20に対する制御信号(デジタル信号)は、D/A変換器116によりクロック信号CLK4に同期してアナログ信号に変換されてドハティ増幅器20へ送られ、図2に示すようにピーク増幅回路5内の増幅素子52のゲート端子11に入力される。また、制御部117は、上記検波回路163からA/D変換器164を介して送られてくる信号に基づいてドハティ増幅器20のバイアスを制御し、歪補償量を改善する。
すなわち、制御部117は、歪補償を行いながら上記検波回路163からA/D変換器164を介して入力される信号レベルに応じて上記ピーク増幅回路5内の増幅素子52のバイアス電圧を変化させることにより、飽和付近のゲインの低下を補い、ABクラス増幅器と同等の歪補償可能な非線形性を確保している。
次にドハティ増幅器20の詳細な構成について図2を参照して説明する。
ドハティ増幅器20の入力端子1には、図1に示した直交変調器104で変調された信号が入力される。この入力端子1に入力された信号は、分配器2で分配され、その一方の信号はキャリア増幅回路4に入力される。キャリア増幅回路4は、増幅素子42と、この増幅素子42の入力側と整合を取る入力整合回路41と、増幅素子42の出力側と整合を取る出力整合回路43から構成されている。キャリア増幅回路4の出力は、λ/4変成器61でインピーダンス変換される。
上記分配器2で分配されたもう一方の信号は、移相器3で位相が90度遅延されてピーク増幅回路5に入力される。ピーク増幅回路5は、増幅素子52と、この増幅素子52の入力側と整合を取る入力整合回路51と、増幅素子52の出力側と整合を取る出力整合回路53から構成される。上記増幅素子52は、制御端子であるゲート端子11を備え、このゲート端子11に上記図1に示したD/A変換器116から出力されるゲートバイアス電圧が入力される。上記増幅素子42、52としては、通常、LD−MOS(Lateral Diffused MOS)、GaAs−FET、HEMT、HBT等の半導体デバイスが用いられる。なお、増幅素子52としてFETを用いた場合は、ゲートバイアス電圧により動作が制御されるが、増幅素子52としてトランジスタを用いた場合はベースバイアス電圧により動作が制御される。
そして、上記λ/4変成器61及びピーク増幅回路5の出力は、ノード62において合成される。上記λ/4変成器61及びノード62によりドハティ合成部6を構成している。ノード62で合成された信号は、出力負荷Zに整合するため、λ/4変成器7でインピーダンス変換され、出力端子8を介して図1に示した出力端子107へ送られる。
次に上記実施形態に係る歪制御機能付き増幅装置の動作を説明する。
入力端子101より入力された信号は、プリディストータ102により非線形歪が補償され、D/A変換器103でアナログ信号に変換された後、直交変調器104で直交変調される。この直交変調器104で変調された信号は、遅延補正回路161により制御部117の処理時間に合わせて遅延補正され、ドハティ増幅器20により増幅されて出力端子107から出力される。
このときドハティ増幅器20で増幅された信号の一部が方向性結合器108を介して取り出され、ミキサ109によりIF周波数にダウンコンバートされた後、A/D変換器111でデジタル信号に変換されて歪検出部112へ送られる。歪検出部112は、高速フーリエ変換回路113でIF信号のスペクトラムを求め、次いでIM演算回路114にて変調信号のキャリア数とその離調周波数から計算されるIM3(3次の相互変調歪)、IM5(5次の相互変調歪)の周波数における電力値を歪値とする。制御部117は、歪検出部112で検出された歪値が小さくなるようにプリディストータ102を適応的に制御する。
上記制御部117の上記プリディストータ102に対する制御動作を図3に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、更新対象係数、設定回数、前回の歪値、ピーク増幅回路5内の増幅素子52に対するゲートバイアス電圧(図4内のa、b、c)等について初期設定を行う(ステップA1)。例えば更新する対象の係数Kをφ3に設定し、歪検出部112で計算された歪値を、前回の歪値と比較する(ステップA2)。歪値が前回の値より小さくなっていれば、更に同じ方向に係数を更新し、すなわち、「K=K+Step」の処理により係数を更新し(ステップA4)、歪値が大きくなっていれば「Step=Step * (−1)」の処理により更新方向を反転させ(ステップA3)、その後、ステップA4に進んで係数の更新を行う。次に同じ係数φ3を連続して何回更新したかをカウントし(ステップA5)、検出した歪値を保存する(ステップA6)。この保存した歪値は、次回の歪値比較で用いる。ここで保存した歪値が目標値もしくはABクラスとほぼ同等の歪値になった場合は、パラメータを固定する。但し、現在の歪値が劣化しはじめたら、またステップA2から開始する。
次に、更新回数と予め設定した設定回数を比較し(ステップA7)、更新回数が設定回数以下であればステップA2に戻ってφ3の係数更新を繰り返す。また、更新回数が設定回数を超えると、更新対象係数を変更する(ステップA8)。つまり、係数Kをφ3からA3に変更し、更新回数をクリアする(ステップA9)。その後、ステップA2に戻り、上記の動作を繰り返して実行する。更に歪値がほぼ収束(歪値が前回の歪値より小さくならない:A2をモニタすることで分かる)した場合、ピーク増幅回路5内の増幅素子52に対するゲートバイアス電圧を動かす(A〜C領域のa、a、a、b、b、b、c、c、cを任意に変更していく)(ステップA10)。その後、従来の動作をまた繰り返す。制御部115は、このような制御の流れで歪値が小さくなるようにプリディストータ102の係数やピーク増幅回路5内の増幅素子52に対するゲートバイアス電圧を制御する。
上記のような摂動法によって増幅器における非線形の逆特性を、べき級数を用いたプリディストータ102で近似することにより、ドハティ増幅器20の非線形歪を補償することができる。なお、図2では説明を容易にするため省略したが、ドハティ増幅器20の前段にドライブ増幅器を設けても良いし、直交変調器104の後段にドライブ増幅器を設けても良い。また、最適アルゴリズムは特に規定している訳ではなく他にもある。
また、上記制御部117には、直交変調器104から出力される変調信号の一部が方向性結合器162を介して取り出され、検波回路163で検波されて変調波の電力の大きさに応じた電圧となり、A/D変換器164でアナログ信号からデジタル信号に変換されて入力される。制御部117は、歪検出部112で検出された歪値及び検波回路163からA/D変換器164を介して入力される信号レベルに応じてピーク増幅回路5内の増幅素子52のゲートバイアス電圧を図4の制御特性に示すように変化させ、ドハティ増幅器20のAM−AM変換特性をAB級に近付けることにより、飽和付近のゲインの低下を補い、ABクラス増幅器と同等の歪補償可能な非線形性を確保する。
図4は、ピーク増幅回路5内の増幅素子52に対するゲートバイアス電圧の制御例(図4のa、b、cの例)を示したもので、横軸に入力電力(dBm)をとり、縦軸に出力電圧(V)をとって示した。制御部117は、直交変調器104から出力される変調信号の電力が低レベルの範囲、すなわちドハティ増幅器20が飽和し始めるまでは図4のA領域に示すようにゲートバイアス電圧を低レベルに保持し、ドハティ増幅器20が飽和し始めるとB領域に示すように入力電力に応じてゲートバイアス電圧を上昇させ、ドハティ増幅器20が飽和点に達するとC領域に示すようにゲートバイアス電圧の上昇を抑えた制御特性としている。
制御部117から出力される増幅素子52のゲートバイアス電圧を図4に示した特性図のように変化させるとにより、ドハティ増幅器20の飽和付近のゲインを図5のAM−AM変換特性に示すようにABクラスの増幅器と同等にすることができる。なお、図4は、増幅素子52に対するゲートバイアス制御の一例を示したもので、制御部117にて任意の制御特性に変換することが可能である。
図5は、ドハティ増幅器及びABクラス増幅器のAM−AM変換特性の例を示したもので、横軸に入力(dBm)をとり、縦軸にゲイン(dB)をとって示した。図5において、aは上記実施形態におけるドハティ増幅器20のAM−AM変換特性、bは一般的なドハティ増幅器のAM−AM変換特性、cはABクラス増幅器のAM−AM変換特性である。一般的なドハティ増幅器は、特性bに示すように入力信号のレベルが増大した場合、入力電力が比較的低いレベルで飽和してしまう。これに対し上記実施形態に示したドハティ増幅器20は、特性aに示すように入力信号のレベルが増大して一般的なドハティ増幅器の飽和付近に達しても、増幅素子52のゲートバイアス電圧を制御してゲインの低下を補うことにより、ABクラス増幅器の特性cと同等の特性とすることができる。
図6はドハティ増幅器及びABクラス増幅器の歪補償特性例を示したもので、aは上記実施形態におけるドハティ増幅器20の歪補償特性、bは一般的なドハティ増幅器の歪補償特性、cはABクラス増幅器の歪補償特性である。また、図6において、fは中心周波数である。上記図6からも明らかなように上記実施形態に係るドハティ増幅器20の歪補償をABクラス増幅器の歪補償と同等のものとすることができる。
上記実施形態で示したように歪検出部112で検出されたドハティ増幅器20の歪値が小さくなるようにプリディストータ102を制御すると共に、歪検出部112で検出された歪値及び方向性結合器162、検波回路163、A/D変換器164で検出されたドハティ増幅器20の入力信号レベルに応じてピーク増幅回路5のバイアスを制御し、ドハティ増幅器20のAM−AM変換特性がAB級に近付くように制御することで、一般的なドハティ増幅器及び歪補償器を組み合わせた場合の歪補償量をABクラス増幅器の歪補償量に近付けることができ、効率を限界まで引き出すことができる。
なお、上記実施形態におけるプリディストーション歪補償回路100は、一例を示したものであり、他の構成であっても良い。
また、ドハティ増幅器20も一例を示したもので、他の構成であっても良い。
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態に係る歪制御機能付き増幅装置について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る歪制御機能付き増幅装置を送信機に適用した場合の構成を示すブロック図である。この第2実施形態に係る増幅装置は、図20に示した送信機において、直交変調器234における加算器238とD/A変換器239との間に第1の粗調整遅延回路261を設けると共に、LUT245とD/A変換器246との間に第2の粗調整遅延回路262及び微調整遅延回路263を設け、これら第1の粗調整遅延回路261、第2の粗調整遅延回路262及び微調整遅延回路263の遅延量を制御回路256Aからの制御信号によって制御するようにしたものである。その他の構成は図20に示した送信機と同様の構成であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
上記第1の粗調整遅延回路261及び第2の粗調整遅延回路262は、デジタル回路のクロック周波数の単位で遅延を調整するもので、図8に示すように構成される。また、微調整遅延回路263は、クロック周波数の単位以下で調整するもので、図9に示すように構成される。
上記第1の粗調整遅延回路261及び第2の粗調整遅延回路262は、図8に示すように前段回路から入力端子271に入力される信号を複数段のフリップフロップ272a〜272nによってクロック単位で遅延させ、各フリップフロップ272a〜272nの出力をセレクタ273に入力する。また、セレクタ273には、制御回路256Aから制御端子274を介して制御信号が与えられる。セレクタ273は、フリップフロップ272a〜272nの出力信号の中から、制御回路256Aからの制御信号により指示されたクロック分だけ遅延した信号を選択し、出力端子275より出力する。
上記のように第1の粗調整遅延回路261及び第2の粗調整遅延回路262は、制御回路256Aから指示された分だけクロック単位で遅延させる。
また、微調整遅延回路263は、FIR(Finite Response Filter)フィルタを用いて構成したもので、図9に示すように前段回路から入力端子281に入力される信号を複数段のフリップフロップ282a〜282nで遅延させ、遅延したそれぞれの信号に、制御回路256Aから係数入力端子283に与えられる係数を乗算器284a〜284nで掛け合わせ、その乗算結果を加算器285で加算して出力端子286から出力する。
上記FIRフィルタによる遅延回路の動作を図10を参照して説明する。
図10は、ローパスフィルタのインパルス応答であるが、このフィルタ特性をFIRフィルタにより実現するには、例えば黒丸の点を係数として図9の係数入力端子283に設定すればよい。
上記微調整遅延回路263において、ここでの目的であるクロック周波数単位より更に短い単位で遅延調整を行うためには、図10の白丸に示すようにインパルス応答のサンプリングする位置をずらした点を係数として図9の係数入力端子283に設定すればよい。図10の黒丸を基準にすれば、白丸はクロック周波数の半周期分だけ遅延する。ここでは、クロック周波数の半周期を例にしたが、黒丸から1/4周期だけずらした点をサンプリングした係数を上記係数入力端子283に設定すれば、クロック周波数の1/4だけ遅延させることが可能になる。
上記のように、FIRフィルタにおけるインパルス応答のサンプリングする位相を変えることによって、クロック周波数よりも短い単位で遅延量を制御することが可能になる。必要な精度でサンプリングした結果をFIRフィルタの係数としてメモリに保存しておき、その係数を切替えることにより、遅延量をクロック周波数単位以下で制御することが可能になる。
なお、図7に示した実施形態では、微調整遅延回路263をゲートバイアス制御回路側の第2の粗調整遅延回路262の後段に配置しているが、RF信号側の第1の粗調整遅延回路261の後段に配置しても良い。
また、粗調整遅延回路261、262及び微調整遅延回路263は、プリディストータ233の出力の分岐点からD/A変換器239、246までのどこに配置しても良い。仮にRF信号の遅延時間τ1とゲートバイアス制御信号の遅延時間τ2のどちらの遅延時間大きいか事前に分かっていれば、遅延時間の大きい方の粗調整遅延回路は削除し、遅延時間の小さい方に粗調整遅延回路と微調整遅延回路を配置すればよい。
次に、粗調整遅延回路261、262及び微調整遅延回路26の遅延時間の調整について、図11を参照して説明する。図11(a)はτ1<τ2の場合の説明図、図11(b)はτ1>τ2の場合の説明図である。
図11(a)のτ1<τ2の場合では、クロック周期を一単位としたときに、遅延時間τ1が「3」、遅延時間τ2が「6.5」である。τ1とτ2を一致させるためには、第1の粗調整遅延回路261で「4」、微調整遅延回路263で「0.5」の遅延を発生させることで、「τ1=τ2=7」となり、ドハティ増幅器のゲートバイアス制御方式におけるRF信号とゲートバイアス制御信号のタイミングずれによる歪を抑えることができる。
また、図11の(a)−gは、第1の粗調整遅延回路261の遅延量D1を変えた場合の歪値を示している。第1の粗調整遅延回路261の遅延量D1を増加するにつれて(τ1=τ2に近付くにつれて)歪値が減少するが、τ1>τ2となった時点で歪値が増加する。この時点で、微調整遅延回路263の遅延量D3を制御し、クロック単位以下の遅延調整を行う。
図11(b)のτ1>τ2の場合では、遅延時間τ1が「6.5」、遅延時間τ2が「3」である。τ1とτ2を一致させるためには、第2の粗調整遅延回路262で「3」、微調整遅延回路263で「0.5」の遅延を発生させることで、「τ1=τ2=6.5」と調整が可能である。
また、図11の(b)−gは、第2の粗調整遅延回路262の遅延量D2を変えた場合の歪値を示したもので、遅延量D2を0から1づつ増加していくと歪値が減少するが、τ1<τ2となった時点で、歪値が増加する。ここで、図11(b)においては、遅延量D2から「1」引いた後で、第2の粗調整遅延回路262の遅延量D3を制御し、クロック単位以下の遅延調整を行う。
次に、第1の粗調整遅延回路261、第2の粗調整遅延回路262及び微調整遅延回路263に対する制御回路256Aの制御動作について、図12の制御フローを参照して説明する。この制御フローで用いているパラメータを次のように定義する。第1の粗調整遅延回路261の遅延量をD1、第2の粗調整遅延回路262の遅延量をD2、微調整遅延回路263の遅延量をD3とし、歪検出回路255で検出する歪値(I)のIは、検出した順番を表わすインデックスで、I=1は1回目に検出した歪値を歪値(1)と表す。
上記図11で説明した通り、(a)τ1<τ2と、(b)τ1>τ2では制御の仕方が違うため、先ずτ1とτ2のどちらの遅延量が大きいかを判断する。
初期値設定(ステップB1)で、各遅延量D1〜D3について、D1=0、D2=0、D3=0とパラメータの初期値を設定し、歪値(1)を読込み(ステップB2)、D=1に設定(ステップB3)した後、再び歪値(2)の読込みを行う(ステップB4)。
次にD1=0のときの歪値(1)とD1=1のときの歪値(2)を比較し(ステップB5)、歪値(2)<歪値(1)であるならば、第1の粗調整遅延回路261の遅延量D1を増加すれば良いことになる。よって、この場合には、D1=D1+1の演算(ステップB6)、歪値(I)の読込み(ステップB7)、歪値(I)<歪値(I−1)(ステップB8)の処理を、ステップB8の判定においてNoとなるまで繰り返して実行する。
上記ステップB8の判定結果がNoになれば、クロック単位の第1の粗調整遅延回路261の遅延量D1の調整は終了したことになるので、ステップB15からの微調整遅延回路263の制御に移る。
また、上記ステップB5の判定結果がNoであれば、第2の粗調整遅延回路262の遅延量D2を増加すれば良いことになるが、ステップB3でD1=1にしているので、D1=0に戻し(ステップB9)、歪値(I)を読込み(ステップB10)、その後、第2の粗調整遅延回路262の遅延量D2を制御する。すなわち、D2=D2+1の演算(ステップB11)、歪値(I)の読込み(ステップB12)、歪値(I)<歪値(I−1)(ステップB13)の処理を、ステップB13の判定においてNoとなるまで繰り返して実行する。
上記ステップB13の判定結果がNoになれば、クロック単位の第2の粗調整遅延回路262の遅延量D2の調整は終了したことになるが、図11でも説明した通り、「1」引く必要があるので、ステップB14で「D2=D2−1」の処理を行い、ステップB15からの微調整遅延回路263の制御に移る。
上記ステップB15で歪値(I)の読込みを行った後、D3=D3+0.1の演算(ステップB16)、歪値(I)の読込み(ステップB17)、歪値(I)<歪値(I−1)(ステップB18)の処理をステップB18の判定においてNoとなるまで繰り返して実行する。
ステップB16で、D3=D3+0.1としたのは、微調整遅延回路263におけるFIRフィルタの係数を、クロックの1/10単位で制御できるように設定したことを仮定しての例である。そして、ステップB18の判定結果がNoになれば、その前の値が最もτ1=τ2という条件に近く歪値が小さいといえるので、ステップB19で、D3=D3−0.1の演算を行って処理を終了する。
以上の処理を行うことにより、RF信号とゲートバイアス制御信号のタイミングずれによる歪の発生を抑圧することが可能になり、この後は、プリディストータ233によるドハティ増幅器の歪補償を行う。
従って、上記第2実施形態によれば、ドハティ増幅器のゲートバイアス制御方式におけるRF信号とゲートバイアス制御信号のタイミングずれによる歪を抑圧するための遅延調整を、高精度に、低コストで実現することが可能となる。
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
本発明の第1実施形態に係る歪制御機能付き増幅装置の全体の構成を示すブロック図である。 同実施形態におけるドハティ増幅器の詳細な構成を示すブロック図である。 同実施形態における制御部の処理動作を示すフローチャートである。 同実施形態において、ピーク増幅回路内の増幅素子に対するゲートバイアス電圧の制御例を示す図である。 同実施形態におけるドハティ増幅器及びABクラス増幅器のAM−AM変換特性例を示す図である。 同実施形態におけるドハティ増幅器及びABクラス増幅器の歪補償特性例を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る歪制御機能付き増幅装置を送信機に適用した場合の構成を示すブロック図である。 同実施形態における第1及び第2の粗調整遅延回路の構成を示すブロック図である。 同実施形態における微調整遅延回路の構成を示すブロック図である。 同実施形態におけるFIRフィルタによる遅延回路の動作を説明するためのローパスフィルタのインパルス応答波形図である。 同実施形態における第1及び第2の粗調整遅延回路及び微調整遅延回路の遅延時間の調整動作を説明するための図である。 同実施形態における第1及び第2の粗調整遅延回路及び微調整遅延回路の制御動作を示すフローチャートである。 従来のプリディストーション歪補償を行った電力増幅装置の構成を示すブロック図である。 図13の電力増幅装置におけるプリディストータの構成を示すブロック図である。 従来のドハティ増幅器の構成を示すブロック図である。 従来のドハティ増幅器における理論上のコレクタ効率ないしドレイン効率を示す図である。 従来のAB級平衡増幅器の構成を示すブロック図である。 ゲートバイアス制御方式によるドハティ増幅器の構成を示すブロック図である。 ゲートバイアス制御特性の一例を示す特性図である。 ゲートバイアス制御回路を備えたドハティ増幅器を送信機に適用した場合の構成を示すブロック図である。 (a)は図20の送信機において、RF信号の遅延時間τ1がゲートバイアス制御信号の遅延時間τ2に等しいときのRF信号の包絡線とゲートバイアス制御信号の時間波形を示す図、(b)はRF信号の遅延時間τ1が遅延時間τ2より小さいときのRF信号の包絡線とゲートバイアス制御信号の時間波形を示す図である。
符号の説明
1…入力端子、2…分配器、3…移相器、4…キャリア増幅回路、5…ピーク増幅回路、6…ドハティ合成部、7…変成器、8…出力端子、9…負荷、11…ゲート端子、20…ドハティ増幅器、41…入力整合回路、42…増幅素子、43…出力整合回路、51…入力整合回路、52…増幅素子、53…出力整合回路、61…変成器、62…ノード(合成点)、100…プリディストーション歪補償回路、101…入力端子、102…プリディストータ、103…D/A変換器、104…直交変調器、105…発振器、106…電力増幅器、107…出力端子、108…方向性結合器、109…ミキサ、110…発振器、111…A/D変換器、112…歪検出部、113…高速フーリエ変換回路(FFT)、114…IM演算回路、115…制御部、116…D/A変換器、117…制御部、161…遅延補正回路、162…方向性結合器、163…検波回路、164…A/D変換器、231、232…入力端子、233…プリディストータ、234…デジタル直交変調器、235、236…乗算器、237…NCO、238…加算器、239…A変換器、240…ローパスフィルタ(LPF)、241…アップコンバータ、242…ドライバアンプ、243…ドハティ増幅器、244…パワーディテクタ、245…LUT、246…D/A変換器、247…ローパスフィルタ(LPF)、248…バッファアンプ、251…方向性結合器、252…ダウンコンバータ、253…ローパスフィルタ(LPF)、254…A/D変換器、255…歪検出回路、256、256A…制御回路、261…第1の粗調整遅延回路、262…第2の粗調整遅延回路、263…微調整遅延回路、271…入力端子、272a〜272n…フリップフロップ、273…セレクタ、274…制御端子、275…出力端子、281…入力端子、282a〜282n…フリップフロップ、283…係数入力端子、284a〜284n…乗算器、285…加算器、286…出力端子

Claims (2)

  1. AB級で動作する増幅素子を備えたキャリア増幅回路と、制御端子から入力される制御信号により増幅動作が制御される増幅素子を備えたピーク増幅回路と、前記キャリア増幅回路及びピーク増幅回路で増幅された信号を合成して出力する合成手段とからなるドハティ増幅器と、
    前記ドハティ増幅器の非線形歪を補償するプリディストータと、前記ドハティ増幅器の出力信号に含まれる相互変調歪を検出する歪検出部と、前記歪検出部で検出された歪値が小さくなるように前記プリディストータを制御すると共に、前記歪検出部で検出された歪値及び前記ドハティ増幅器の入力信号のレベルに応じて前記ピーク増幅回路のバイアスを任意に制御し、前記ドハティ増幅器の入力振幅レベル対出力振幅レベル変換特性がAB級に近付くように制御する制御部とからなるプリディストーション歪補償回路と、
    を具備することを特徴とする歪制御機能付き増幅装置。
  2. AB級で動作する増幅素子を備えたキャリア増幅回路と、制御端子から入力されるバイアス制御信号により増幅動作が制御される増幅素子を備えたピーク増幅回路と、前記キャリア増幅回路及びピーク増幅回路で増幅された信号を合成して出力する合成手段とからなるドハティ増幅器と、
    増幅対象となる入力信号について、前記ドハティ増幅器で発生する非線形歪を補償するプリディストータと、前記プリディストータから出力される信号を高周波信号に変換して前記ドハティ増幅器の信号入力端子に入力する第1の信号系統と、前記プリディストータで補償された信号を分岐して取り出し、該信号のレベル及び予め設定されたバイアス制御特性に基づいてバイアス制御信号を生成して前記ドハティ増幅器の制御端子に入力する第2の信号系統と、前記第1の信号系統と第2の信号系統の少なくとも一方に設けられる遅延調整回路と、前記ドハティ増幅器の出力信号に含まれる相互変調歪を検出する歪検出部と、前記歪検出部で検出された歪値が小さくなるように前記プリディストータを制御すると共に前記遅延調整回路の信号遅延量を制御する制御部と、
    を具備したことを特徴とする歪制御機能付き増幅装置。
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