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JP2008013831A - 高ヤング率溶接構造用厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高ヤング率溶接構造用厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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JP2008013831A JP2006188336A JP2006188336A JP2008013831A JP 2008013831 A JP2008013831 A JP 2008013831A JP 2006188336 A JP2006188336 A JP 2006188336A JP 2006188336 A JP2006188336 A JP 2006188336A JP 2008013831 A JP2008013831 A JP 2008013831A
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Akio Omori
章夫 大森
Tomoyuki Yokota
智之 横田
Hirofumi Otsubo
浩文 大坪
Shigeru Endo
茂 遠藤
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JFE Steel Corp
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JFE Steel Corp
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Abstract

【課題】優れた溶接性および低温靭性を有し、L方向およびC方向のヤング率が高い溶接構造用厚鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】C:0.06〜0.2%で、炭素当量Ceqが0.45以下の鋼素材を、500℃〜Ac3変態点未満に加熱したのち、(Ac3変態点−40℃)〜500℃において、1パス当りの圧下率が平均10%以下、累積圧下率50%以上とする圧延を施す。あるいは鋼素材に、Ac3変態点〜1180℃に加熱したのち、900℃〜(Ar3変態点−20℃)における累積圧下率が30%以上である一次圧延を行い、ついで、(Ar3変態点−20℃)〜500℃で1パス当りの圧下率が平均10%以下、累積圧下率が50%以上である二次圧延を行なう。
【選択図】図1

Description

本発明は、建築、橋梁、建設機械、産業機械、海洋構造物等の溶接鋼構造物用として好適な厚鋼板に係り、とくに、圧延方向(L方向)および圧延方向に垂直な方向(板幅方向:C方向)の弾性率(ヤング率)が共に高い厚鋼板に関する。なお、ここでいう「厚鋼板」とは、板厚:6mm以上の鋼板で、リバース圧延を施して1枚ずつ製造される鋼板をいうものとする。
近年の建築、橋梁、建設機械、産業機械、海洋構造物等の溶接鋼構造物の大型化に伴い、使用鋼板の薄肉化による構造物の軽量化が強く望まれている。しかし、使用する鋼板が薄肉化することにより、構造物の剛性が低下するという問題がある。構造物の剛性は、形状が一定であれば、使用する鋼板の弾性率(ヤング率)に比例する。このため、高いヤング率を有する鋼板が要望されている。
高ヤング率鋼板を得る方法としては、従来から、
(1)集合組織を利用する方法、
(2)高ヤング率粒子を分散させる方法
等、が知られている。
例えば特許文献1〜特許文献6に、集合組織を制御して高ヤング率鋼板を得る技術が記載されている。特許文献1には、温度がAr3変態点以上1250℃以下の鋼片を、再結晶終了温度以下Ar3変態点以上の温度域で圧下率:20%以上の熱間圧延を行い、直ちに5℃/s以上の冷却速度で冷却し、Ar3変態点未満で圧下率:50%以上の二相域圧延を行う、低温靭性に優れた高ヤング率構造用鋼板の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術によれば、低温靭性に優れ、特定方向(C方向)の剛性(ヤング率)が10%程度向上した構造用鋼板が得られるとしている。また、特許文献2には、温度がAr3変態点以上1250℃以下の鋼片を、再結晶終了温度以下Ar3変態点以上の温度域で圧下率:20%以上の熱間圧延を行い、直ちに5℃/s以上の冷却速度で冷却し、Ar3変態点未満で圧下率:50%以上の二相域圧延を行い、焼入れした後、焼戻処理を行う、低温靭性に優れた高ヤング率構造用鋼板の製造方法が記載されている。特許文献2に記載された技術によれば、低温靭性に優れ、特定方向(C方向)の剛性(ヤング率)が20%程度以上向上した構造用鋼板が得られるとしている。
特許文献1、2に記載された技術では、{211}〈110〉方位を主方位とする結晶粒を発達させ、これにより、圧延方向に垂直な方向(C方向)のヤング率を高めることができるが、しかし、特許文献1、2に記載された技術では、圧延方向(L方向)のヤング率を高めることができないという問題があった。
また、特許文献3には、C:0.02〜0.15%、Cr:0.60%以下、Cu:1.5%以下、Ni:3.0%以下、V:0.10%以下、Ti:0.10%以下、Ca:0.0050%以下を含み、さらにNb、Mo、Bのうちの2種以上を、所定の特定関係を満足するように含有する鋼片に、950℃〜Ar3変態点の温度域での累積圧下率を50%以上、Ar3変態点未満の累積圧下率を5%以下とする熱間圧延を施す、高ヤング率鋼板の製造方法が提案されている。特許文献3に記載された技術では、{211}〈110〉方位の結晶粒を発達させ、これにより、圧延方向に垂直な方向(C方向)のヤング率を高めることができるが、しかし、圧延方向(L方向)のヤング率を高めることができないという問題があった。
また、特許文献4には、Ac3変態点以上から圧延を開始し、Ar3変態点未満の温度域で圧下率50%以上の二相域圧延を、鋼板平均温度1200℃〜Ar1変態点の間で冷却時間と総圧延時間との比が0.2超えを満足し、表面の冷却速度が2℃/s以上の冷却速度で冷却しながら行う、スケール密着性に優れ、かつヤング率が高い構造用厚鋼板の製造方法が提案されている。特許文献4に記載された技術によれば、C方向のヤング率が10%以上向上するとしている。しかし、L方向ヤング率の増加が少なく、二相域温度域での圧下率を80%としても、L方向のヤング率は高々220GPa程度であるという問題があった。
また、特許文献5には、C:0.04〜0.15%、Mn:0.6〜2.0%を含み、Si、P、S、N、Alを適正量含有する鋼片を、950〜1200℃に加熱した後、800〜900℃で累積圧下量60%以上の圧延を行い、その後空冷し450〜600℃で累積圧下量5〜15%の軽圧下圧延する厚鋼板の製造方法が提案されている。特許文献5に記載された技術によれば、{111}〈110〉方位を発達させて、板面内に均一に高いヤング率を有する厚鋼板を製造することができるとしている。しかし、特許文献5に記載された技術によって達成されるヤング率は、L、C両方向とも高々220GPa程度であり、効果が十分とは言えない。
また、特許文献6には、C:0.04〜0.15%、Mn:0.6〜2.0%を含み、Si、P、S、N、Alを適正量含有する鋼片を、950〜750℃に加熱した後、最終圧延方向に垂直な方向に累積圧下量10%以上の圧延を施した後、最終圧延方向の圧延を650〜800℃の温度範囲で終了する厚鋼板の製造方法が提案されている。特許文献6に記載された技術によれば、圧延方向および圧延方向に垂直な方向のヤング率を240GPa程度まで高めることができるとしている。しかし、特許文献6に記載された技術では、圧延途中で鋼材を90°転回する必要があり、鋼材のサイズが限定されること、また圧延方向に垂直な方向(C方向)での圧延負荷が大きいこと、などの制約条件が多く、生産性が低下するという問題があった。
また、特許文献7には、C:0.0005〜0.30%、Mn:2.7〜5.0%、Mo:0.15〜1.5%を含むスラブを、950℃以上の温度に加熱し、800℃以下で、圧延ロールと鋼板との摩擦係数が0.2超、かつ圧下率の合計が50%以上となるように行い、Ar3変態点以上750℃以下の温度で熱間圧延を終了する、高ヤング率鋼板の製造方法が提案されている。特許文献7に記載された技術は、圧延時に、鋼板と圧延ロールとの間の摩擦力によって剪断歪を導入して、鋼板表層近傍に{110}〈223〉または{110}〈111〉の非常に先鋭な剪断集合組織を発達させてL方向のヤング率を高める方法である。
また、特許文献8には、C:0.2〜1.7%、B:0.5〜3.2%を含み、Si、Mn、Ti、Mo、N、V、Nb、Ta、Hf、Caの適正量を含む溶鋼の鋳造過程で、六方晶系硼化物、又は立方晶系炭窒化物を晶出させ、ついで残留溶鋼から六方晶系硼化物、立方晶系炭窒化物及びFeマトリックス相を晶出させた鋼塊を、所定温度以下で総減面率50%以上の熱間加工を行い、さらに焼きならし、および焼戻処理する、高強度高剛性鋼の製造方法が提案されている。
また、特許文献9には、C:0.03〜1.7%、V:1〜12%、B:0.5〜3.2%を含み、さらにSi、Mn、Nの適正量を含有し、あるいはさらにTi、および/または、Nb、Taのうちの1種以上、および/または、Mo、および/または、Ca、Mg、Ndのうちの1種、を含有する鋳片を1075℃以上に加熱し、950〜1050℃の範囲で10/s以下の歪速度、かつ圧下率5〜20%で熱間加工を行う、高剛性鋼の製造方法が提案されている。特許文献9に記載された技術によれば、鋼母地に、ヤング率が高い、斜方晶構造を有するMB型硼化物を体積率で5%以上分散させることができ、232GPa以上の高ヤング率と、良好な靭性を有する鋼材を容易に製造できるとしている。
特開平4−141519号公報 特開平4−293720号公報 特開平8−311541号公報 特開平6−73504号公報 特開平4−147915号公報 特開平4−147917号公報 特開2005−273001号公報 特開2004−33948号公報 特開2004−353063号公報
しかしながら、特許文献7に記載された技術では、目的の集合組織が得られる範囲が板厚の表層近傍に限られるため、おおむね板厚6mm以上の厚鋼板においては、高いヤング率を達成することができないという問題があった。また、Mn、Mo、B等の含有量が多いため、溶接性が低下するという問題もあった。
また、特許文献8、9に記載された技術によれば、方向によらずに高いヤング率を有する鋼材が得られるが、高ヤング率粒子を体積率で数%以上含有させる必要があるため、靭性が低下したり、溶接性が低下したりするなどの問題があった。また、多量の合金元素の含有を必要とするため、材料コストが高騰するという問題もあった。
本発明は、上記した従来技術の問題に鑑み、優れた溶接性および優れた低温靭性を有するとともに、圧延方向(L方向)のヤング率が220GPa以上、圧延方向と直角方向(C方向)のヤング率が230GPa以上と、L方向、C方向がともに高いヤング率を有する、安価な、溶接構造用厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、C方向に加えてL方向のヤング率向上に影響する種々の要因について、鋭意研究した。
本発明者らは、まず、(α+γ)二相域およびα単相域での圧延に着目した。スラブ等の鋼素材に、(α+γ)二相域および/またはα単相域で圧延を施し厚鋼板とすると、厚鋼板は、{100}〈110〉、{211}〈110〉、{111}〈110〉、{111}〈110〉、{111}〈211〉等の加工集合組織が強く発達した組織を呈する。このような厚鋼板について、L断面(長手方向断面、圧延方向に平行で圧延面に垂直な面)で組織観察すると、{100}、{211}、{111}面が圧延面にほぼ平行な(5°以内)フェライト粒の集団(以下、フェライト粒コロニーと称する)によって構成されていることがわかった。なお、フェライト粒コロニーは、圧延方向に伸長したフェライト粒単一あるいは複数のフェライト粒の集まりで、アスペクト比の高い形態を呈している。また、フェライト粒コロニーを構成するフェライト粒の内部には、サブグレイン、亜結晶を含んでいる。
L方向のヤング率を向上させるために、本発明者らは、このような加工集合組織に加えて、表層に、板厚中央部とは異なる、{110}集合組織を発達させることが肝要であることに想到した。厚鋼板の表層に、板厚中央部とは異なる、{110}集合組織を発達させることにより、ヤング率のL方向/C方向差を小さくでき、かつL方向のヤング率を向上させることができる。また、本発明者らは、集合組織を形成するフェライト粒コロニーを微細化することにより、厚鋼板の巨視的なヤング率が高くなることをも見出した。フェライト粒コロニーが微細化されると、変形に際し、隣接するフェライト粒コロニー間に作用する拘束力が大きくなり、同じ弾性歪を与えるのに必要な応力が大きくなり、巨視的なヤング率が高くなると考えられる。
そして、本発明者らは、表層に{110}集合組織を発達させるためには、少なくとも、(α+γ)二相域およびα単相域で、1パス当りの平均圧下率を10%以下、かつ累積圧下率を50%以上とする圧延を施すことが肝要であることを新規に見出した。1パス当たりの平均圧下率を小さくすることにより、鋼板表面付近に剪断歪が集中し、板厚中央部とは異なる集合組織({110}集合組織)が発達すると考えられる。これにより、フェライト粒コロニーも微細化し、靭性が向上することを知見した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)溶接構造用の厚鋼板であって、該厚鋼板が、質量%で、C:0.06〜0.2%を含み、次(1)式
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ……(1)
(ここで、Ceq:炭素当量(%)、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義される炭素当量Ceqが0.45以下である組成を有し、かつ、板厚中央部における(200)面および(211)面のX線回折集積密度の合計が4.5以上、表面下1mmにおける(110)面のX線回折集積密度が1.5以上で、かつ{100}面、{211}面、{110}面、{111}面のうちのいずれかの面が、圧延面に対し5°以内に揃ったフェライト粒コロニーの平均長軸長さが、板厚中央部で60μm以下、表面下1mmで30μm以下である組織を有することを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板。
(2)(1)において、前記組成が、質量%で、C:0.06〜0.2%を含み、前記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.45以下で、かつ、Si:1%以下、Mn:2%以下、Al:0.1%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板。
(3)(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1%以下、Ni:1.5%以下、Mo:1%以下、Cr:1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板。
(4)(2)または(3)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.1%以下、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板。
(5)(2)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板。
(6)鋼素材に圧延を施し厚鋼板とする溶接構造用厚鋼板の製造方法であって、前記鋼素材を質量%で、C:0.06〜0.2%を含み、次(1)式
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ……(1)
(ここで、Ceq:炭素当量(%)、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義される炭素当量Ceqが0.45以下である組成を有する鋼素材とし、前記圧延を、500℃以上Ac3変態点未満の温度に加熱したのち、(Ac3変態点−40℃)以下500℃以上の温度域において、1パス当りの圧下率が平均で10%以下、累積圧下率が50%以上とする圧延とすることを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。
(7)(6)において、前記圧延に代えて、Ac3変態点以上1180℃以下の温度に加熱したのち、900℃以下(Ar3変態点−20℃)以上の温度域における累積圧下率が30%以上である一次圧延を行い、ついで、(Ar3変態点−20℃)以下500℃以上の温度域で1パス当りの圧下率が平均で10%以下で、該温度域での累積圧下率が50%以上である二次圧延を行なう圧延とすることを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。
(8)(6)または(7)において、前記組成が、質量%で、C:0.06〜0.2%を含み、前記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.45以下で、かつ、Si:1%以下、Mn:2%以下、Al:0.1%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。
(9)(8)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1%以下、Ni:1.5%以下、Mo:1%以下、Cr:1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。
(10)(8)または(9)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.1%以下、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。
(11)(8)ないし(10)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、優れた溶接性および優れた低温靭性を有するとともに、圧延方向(L方向)のヤング率が220GPa以上、圧延方向と直角方向(C方向)のヤング率が230GPa以上と、L方向、C方向がともに高いヤング率を有する溶接構造用厚鋼板を容易に、しかも生産性の低下を伴うことなく、安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
本発明の溶接構造用厚鋼板は、表層と板厚中央部とで異なった集合組織を有する。これにより、L方向およびC方向のヤング率を向上させることができる。本発明厚鋼板の板厚中央部では、(200)面および(211)面のX線回折集積密度の合計が4.5以上となる集合組織を有する。板厚中央部で、(200)面および(211)面のX線回折集積密度の合計を4.5以上とすることにより、C方向のヤング率が向上し、230GPa以上を確保できるようになる。しかし、これだけでは、C方向に高いヤング率が得られるだけで、L方向のヤング率を高めることができない。
本発明厚鋼板では、さらに、表面下1mmの表層部で、(110)面のX線回折集積密度が1.5以上となる集合組織を有する。表面下1mmの表層部で、(110)面のX線回折集積密度を1.5以上とすることにより、板厚方向に集合組織の変化が生じ、L方向のヤング率が向上し220GPa以上を確保でき、C方向のヤング率とL方向のヤング率の差を小さくすることができる。
上記した集合組織に加えてさらに、本発明厚鋼板は、板厚全域にわたって、フェライト粒コロニーが微細化した組織を有する。本発明でいう「フェライト粒コロニー」は、{100}面、{211}面、{110}面、{111}面のうちのいずれかの面が、圧延面に対し5°以内に揃ったフェライト粒の集まりを言うものとする。なお、圧延面と上記したフェライト各面との成す角度は、例えば、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法による結晶方位解析を用いて容易に測定することができる。図1に、本発明厚鋼板の圧延方向断面におけるEBSPによる結晶方位解析に基づく、フェライト粒コロニーの分布状況の一例を図示して、示す。図1(a)が表面下1mmの場合、(b)が板厚中央部の場合である。
本発明でいう、フェライト粒コロニーの微細化とは、上記したフェライト粒コロニーの平均長軸長さが、板厚中央部で60μm以下、表面下1mmで30μm以下である場合をいうものとする。なお、フェライト粒コロニーの「平均長軸長さ」とは、厚鋼板の圧延方向断面の各位置において、EBSPによる結晶方位解析に基づき上記した定義に合致するフェライト粒コロニー領域を確定し、各フェライト粒コロニーの圧延方向長さ(長軸長さ)をそれぞれ測定し、それらの値を平均した平均値をいうものとする。
このようなフェライト粒コロニーの微細化により、集合組織の種類(方位成分)や集積度が変わらなくても、ヤング率をさらに高めることができる。これは、巨視的な弾性変形を与える際に、隣接するフェライト粒コロニー間で応力および変形の連続性を保つために、微視的には複雑な応力場と弾性歪が導入され、単純にそれぞれの方位のもつ特性を平均した平均特性とは異なる応力−歪関係を示すためである。すなわち、フェライト粒コロニーを微細化するほど、隣接するフェライト粒コロニー間での変形に対する拘束度が高まり、同じ巨視的な弾性変形量を得るためにより大きな応力を与える必要が生じる。すなわちヤング率が増加する。なお、フェライト粒コロニーの微細化には靭性を向上する効果もある。フェライト粒コロニーの平均長軸長さが、上記した板厚中央部で60μm、表面下1mmで30μm、をそれぞれ超えると、ヤング率向上効果、靭性向上効果の程度が小さくなる。
フェライト粒コロニーの大きさは、圧延開始時の初期組織や、圧延条件に依存するが、初期組織の微細化、累積圧下率の増加、パス間時間と圧延温度との最適化によって、フェライト粒コロニーの微細化が可能となる。なお、{110}集合組織は、{100}、{111}、{211}などのフェライト粒コロニーを分断するように生成するため、鋼板表層付近に{110}集合組織を発達させることは、フェライト粒コロニーの微細化にも効果がある。
上記した板厚方向で異なる集合組織の形成と、さらに板厚の各位置での、フェライト粒コロニーの微細化とを、同時に達成することにより、はじめてL方向およびC方向のヤング率を所定値以上に高めることができる。板厚各位置での、集合組織の形成およびフェライト粒コロニーの微細化のいずれかひとつでも、本発明範囲から外れると、L方向およびC方向のヤング率を所定値以上に高めることができなくなる。この状況を図2、図3に示す。表面下1mmでの(110)面の集積密度および板厚中央部での(200)および(211)面の集積密度の合計で代表される、所望の集合組織の形成、および、表面下1mmでのフェライト粒コロニーの平均長軸長さおよび板厚中央部でのフェライト粒コロニーの平均長軸長さが所定値以下となるフェライト粒コロニーの微細化、の条件のうち少なくとも1つの条件が本発明範囲を外れた、符号△、▲では、L方向および/またはC方向のヤング率が所定値未満となっている。
つぎに、本発明厚鋼板の組成限定理由について、説明する。
(α+γ)二相域圧延、α単相域圧延における所望の集合組織の発達には、とくに合金元素の影響は小さい。このため、所望の集合組織を発達させるために、特別な合金元素の含有は必要としないが、フェライト粒コロニーの微細化のためにC含有量の限定、またさらに、溶接構造用として優れた溶接性および低温靭性を確保するために、少なくともC含有量の限定および炭素当量の限定を必要とする。なお、以下、組成における質量%は、単に%で記す。
C:0.06〜0.2%
Cは、固溶して鋼の強度を増加させる元素であり、溶接構造用として所望の強度を確保するために、含有する必要がある。(α+γ)2相域および/またはα単相域で圧延することにより、フェライト粒の再結晶が進行しフェライト粒が微細化するが、Cが0.06%未満では、再結晶の進行が遅く、集合組織を形成するフェライト粒コロニーの微細化が進行しないため、フェライト粒コロニーが粗大となる。このため、所望の高ヤング率が達成できない。また、0.2%を超える含有は、溶接性が急激に低下する。このようなことから、Cは0.06〜0.2%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.08〜0.18%である。
炭素当量Ceq:0.45以下
炭素当量Ceqは、溶接性を評価する指数として、次(1)式
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ……(1)
(ここで、Ceq:炭素当量(%)、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義される。上記したC含有量に加えてさらに、本発明では、溶接構造用として所望の特性を確保するために、所望量の合金元素を含有することができるが、炭素当量Ceqが0.45を超えて大きくなるまでに多量に合金元素を含有すると、溶接性が顕著に低下し、溶接構造用として所望の溶接性を確保できなくなる。このため、本発明では、上記したC含有量の範囲内で、かつ炭素当量Ceqを0.45以下に限定した。なお、好ましくは0.4%以下である。
本発明厚鋼板では、上記したC、Ceqに加えて、Si:1%以下、Mn:2%以下、Al:0.1%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。
Si:1%以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶強化により鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上含有することが好ましいが、1%を超える含有は、表面性状を損なううえ、靭性が極端に低下する。このため、Siは1%以下に限定することが好ましい。
Mn:2%以下
Mnは、鋼中では強化元素として作用する。このような効果を得るためには、0.2%以上含有することが望ましいが、2%を超える多量の含有は、溶接性を低下させるとともに、材料コストの高騰を招く。このため、Mnは2%以下に限定することが好ましい。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であるが、このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、0.1%を超える含有は、介在物量を増加させるとともに、靭性をも低下させる。このため、Alは0.1%以下に限定することが好ましい。
上記した成分以外に、Cu:1%以下、Ni:1.5%以下、Mo:1%以下、Cr:1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、V:0.1%以下、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有できる。
Cu:1%以下、Ni:1.5%以下、Mo:1%以下、Cr:1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Mo、Cr、Bはいずれも、鋼の焼入れ性を高め、強度向上に直接寄与するとともに、靭性をも向上させる元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有できる。このような効果は、Cu:0.01%以上、Ni:0.01%以上、Mo:0.01%以上、Cr:0.01%以上、B:0.0005%以上、の含有で顕著となるが、Cu:1%、Ni:1.5%、Mo:1%、Cr:1%、B:0.01%をそれぞれ超える過度の含有は、靭性、溶接性を低下させる。このため、Cu:1%以下、Ni:1.5%以下、Mo:1%以下、Cr:1%以下、B:0.01%以下に、それぞれ限定することが好ましい。
V:0.1%以下、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
V、Nb、Tiはいずれも、窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化し、鋼を強化する効果を有する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。このような効果を得るためには、V、Nb、Tiを、それぞれ0.003%以上含有することが望ましい。一方、V:0.1%、Nb:0.05%、Ti:0.05%を超えて多量に含有すると、鋳片に割れを生じ、製造コストの高騰を招く。このため、V:0.1%以下、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下、の範囲にそれぞれ限定することが好ましい。
Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種
Ca、REMはいずれも、介在物の形状制御を介して、延性、靭性向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種を含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0005%以上、REM:0.001%以上含有することが好ましいが、Ca:0.01%、REM:0.01%を超える多量の含有は、靭性を低下させる。このため、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物としては、P:0.1%以下、S:0.006%以下が許容できる。P:0.1%、S:0.006%をそれぞれ超える含有は、靭性を低下させる。
つぎに、本発明厚鋼板の好ましい製造方法について説明する。
上記した組成の溶鋼を、転炉等、常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法で、スラブ等の鋼素材とすることが好ましい。
得られた鋼素材は、ついで、圧延を施され、厚鋼板とされる。
本発明では、圧延は、鋼素材を、500℃以上Ac3変態点未満の温度に加熱したのち、(Ac3変態点−40℃)以下500℃以上の温度域において、1パス当りの圧下率が平均で10%以下、累積圧下率が50%以上とする圧延とすることが好ましい。
本発明では、鋼素材に、(α+γ)2相域および/またはα単相域で圧延を施し、{100}〈110〉、{211}〈110〉、{111}〈110〉、{111}〈110〉、{111}〈211〉等の加工集合組織が強く発達した組織を有する厚鋼板とする。そのため、鋼素材を、500℃以上Ac3変態点未満の温度に加熱する。加熱温度が500℃未満では、鋼素材の変形抵抗が大きくなりすぎて、圧延設備への負荷が大きくなりすぎ、圧延が困難となる場合が発生する。このようなことから、鋼素材の加熱温度は、500℃以上Ac3変態点未満の温度に限定することが好ましい。
上記した加熱温度に加熱された鋼素材はついで、(Ac3変態点−40℃)以下500℃以上の温度域において、1パス当りの圧下率が平均で10%以下、累積圧下率が50%以上となる圧延を施される。これにより、フェライト相に所望の加工集合組織を発達させることができる。
上記した所望の圧下を施す圧延温度が、(Ac3変態点−40℃)を超えて高温となると、フェライト相分率が低くため、所望の加工集合組織が発達しにくく、十分なヤング率向上効果が期待できない。一方、圧延温度が500℃未満では、表層部の{110}集合組織の発達が抑制されるため、十分なヤング率向上効果が期待できない。また、さらに圧延温度が500℃未満では、板厚中心部の{100}集合組織は発達するものの、フェライト粒の再結晶による細粒化が進まないため、靭性が低下する。このようなことから、所望の圧下を施す圧延温度は、(Ac3変態点−40℃)以下500℃以上の温度域とすることが好ましい。
また、本発明では、上記した圧延温度で、1パス当りの圧下率が平均で10%以下、累積圧下率が50%以上の圧延を行う。
上記した圧延温度範囲での、1パス当たりの圧下率が平均で10%を超えると、{110}集合組織がほとんど発達しなくなる。1パス当たりの圧下率は、圧延により鋼材内部に導入される塑性歪の板厚方向分布に影響する。1パス当りの圧下率が増加すると、板厚方向歪分布はより均一になり、板厚方向の集合組織変化は小さくなる。1パス当りの圧下率を小さくすると、鋼板表層付近に塑性歪が集中し、表層付近の{110}集合組織が発達する。このようなことから、本発明では、上記した圧延温度範囲での1パス当りの圧下率を平均で10%以下に限定した。なお、好ましくは3〜8%である。
また、上記した圧延温度範囲での、累積圧下率が50%未満では、板厚中央部で十分な強度の集合組織が発達しないうえ、フェライト粒コロニーの微細化も不十分となるため、十分なヤング率向上効果が期待できないうえ、優れた低温靭性を確保できなくなる。このため、上記した圧延温度範囲での累積圧下率を50%以上に限定した。なお、好ましくは75%以上である。
なお、圧延終了後に、直接焼入や加速冷却を行ってもよい。
また、本発明では、上記した圧延に代えて、Ac3変態点以上1180℃以下の温度に加熱したのち、900℃以下(Ar3変態点−20℃)以上の温度域における累積圧下率が30%以上である一次圧延を行い、ついで、二次圧延を行なう圧延としてもよい。
本発明では、(α+γ)2相域および/またはα単相域で圧延する前に、鋼素材をAc変態点以上1180℃以下の温度に加熱してもよい。しかし、この場合には、(α+γ)2相域および/またはα単相域で圧延する二次圧延の前に、加熱により形成されたオーステナイト粒をできるだけ微細化しておく必要がある。このため、加熱後、900℃以下(Ar3変態点−20℃)以上の温度域における累積圧下率が30%以上である一次圧延を行う。これにより、オーステナイト粒が微細化され、その後のγ→α変態により微細なフェライト粒が得られる。なお、加熱温度が1180℃を超えて高温となると、オーステナイト粒が粗大化しすぎて、その後の圧延によっても微細なフェライト粒が得られなくなる。
一次圧延の圧延温度が900℃を超えて高温となると、圧延により加工されたオーステナイト粒が再結晶し粗大化するため、組織の微細化効果が少なくなる。また、一次圧延の上記した圧延温度域における累積圧下率が30%未満では、オーステナイト粒の微細化効果が少なく、その後のγ→α変態により微細なフェライト粒が得られない。なお、γ→α変態により更なる微細なフェライト粒を得るためには、一次圧延途中のAr3変態点付近の温度域で水冷処理を施してもよい。
上記した一次圧延に引続いて、本発明では、(Ar3変態点−20℃)以下500℃以上の温度域で1パス当りの圧下率が平均で10%以下で、該温度域での累積圧下率が50%以上である二次圧延を施す。これにより、上記した所望の集合組織が十分に発達するとともに、最終的に形成されるフェライト粒コロニーが微細化される。
二次圧延の圧延温度が、(Ar3変態点−20℃)を超えて高温となると、フェライト相分率が少なく、フェライト粒に上記した所望の集合組織を十分に発達させることができない。また、二次圧延の圧延温度が500℃未満では、板厚中心部の{100}集合組織は発達するものの、フェライト粒の再結晶による細粒化が進まないため、靭性が低下する。このようなことから、二次圧延の圧延温度は、(Ac3変態点−20℃)以下500℃以上の温度域とすることが好ましい。
また、上記した二次圧延の圧延温度範囲での、1パス当たりの圧下率が平均で10%を超えると、{110}集合組織がほとんど発達しなくなる。このため、上記した二次圧延の圧延温度範囲での1パス当たりの圧下率は平均で10%以下に限定した。なお、好ましくは3〜8%である。
また、上記した圧延温度範囲での、累積圧下率が50%未満では、板厚中央部で十分な強度の集合組織が発達しないうえ、フェライト粒コロニーの微細化も不十分となるため、十分なヤング率向上効果が期待できないうえ、優れた低温靭性を確保できなくなる。このため、上記した圧延温度範囲での累積圧下率を50%以上に限定した。なお、好ましくは75%以上である。
なお、二次圧延終了後に、直接焼入や加速冷却を行ってもよい。
表1に示す組成の溶鋼を真空溶解炉で溶製し、小型鋼塊としたのち、粗圧延により120mm厚のスラブ(鋼素材)とした。得られた鋼素材に、表2に示す条件の圧延を施し、厚鋼板(板厚:12mm)とした。なお、厚鋼板はすべて、圧延終了後、室温まで空冷した。
得られた厚鋼板について、組織観察、引張試験、シャルピー衝撃試験、ヤング率測定を実施し、組織、引張特性、低温靭性、ヤング率を評価した。測定・試験方法は次の通りとした。
(1)組織観察
得られた厚鋼板から、圧延面に平行に、板状試験片(大きさ:25×25mm)を、測定面が表面下1mm、あるいは板厚中央部(但し、中心偏析部から外れるように採取)となるように、採取した。そして、板状試験片の測定面を、バフ研磨により鏡面に仕上げたのち、電解研磨または化学研磨により測定面の残留歪を除去し、測定用試験片とした。得られた測定用試験片を用いて、X線回折測定を行い、正極点図または逆極点図を測定し、(200)面および(211)面のX線回折強度比を求めた。この(200)面および(211)面のX線回折強度比を、(200)面および(211)面の集積密度とし、加工集合組織の形成状態の指標とした。なお、X線回折強度比は、測定用試験片を用いて得られた各面のX線回折強度と、結晶方位がランダムな試験片を用いて得られた各面のX線回折強度との比である。
また、同一の測定用試験片を用いて、EBSP法による結晶方位解析を行い、{100}面、{211}面、{110}面、{111}面のうちのいずれかの面が、圧延面に対し5°以内に揃った領域である、フェライト粒コロニーを定めた。そして、各フェライト粒コロニーの圧延方向長さ(長軸長さ)を、EBSP解析結果を1000倍に拡大した映像を紙面に印刷し、測定した。そして、得られたフェライト粒コロニーの圧延方向長さ(長軸長さ)を平均し、その値を、各厚鋼板の各位置におけるフェライト粒コロニーの平均長軸長さとした。なお、各厚鋼板の各位置で、測定したフェライト粒コロニーの数は各20個とした。
(2)引張試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2201の規定に準拠して、板厚中央部から、引張方向が圧延方向に直交する方向(C方向)となるように、14号引張試験片(平行部:6mmφ)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS)を求めた。
(3)シャルピー衝撃試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2242の規定に準拠して、板厚中央部から、圧延方向に垂直な方向(C方向)に、Vノッチ試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。
(4)ヤング率測定
得られた厚鋼板の板厚1/4位置から、試験片の長手方向が圧延方向に平行に(L方向)、および試験片の長手方向が圧延方向に垂直に(C方向)、ヤング率測定用試験片(厚さ1.0mm×幅6.4mm×長さ105mm)を採取し、JIS Z 2208の規定に準拠した常温での共振法を用いて、ヤング率を測定した。なお、共振法とは、試験片に加える振動の振動数を徐々に変化させ、一次共振周波数を測定し、次式
E=0.946×L4/h2×ρ×f2
(ここで、E:ヤング率(GPa)、L:試験片の振動部長さ(m),h:試験片厚さ(m)、ρ:密度(g/mm3)、f:一次共振周波数(s−1))
からヤング率Eを算出する方法である。
得られた結果を表2、表3に示す。
Figure 2008013831
Figure 2008013831
Figure 2008013831
Figure 2008013831
本発明例はいずれも、板厚中央部における(200)面および(211)面のX線回折集積密度の合計が4.5以上、表面下1mmにおける(110)面のX線回折集積密度が1.5以上となる集合組織と、かつフェライト粒コロニーの平均長軸長さが、板厚中央部で60μm以下、表面下1mmで30μm以下を満足する微細化されたフェライト粒コロニーを有する組織を有し、L方向で220GPa以上、C方向で230GPa以上の高いヤング率と、vTrs:−60℃以下の優れた低温靭性を有する厚鋼板となっている。一方、本発明範囲を外れる比較例は、所望の集合組織が得られていないか、および/または、フェライト粒コロニーが微細化されていないか、のため、所望の高いヤング率が得られていない。
EBSP法による結晶方位解析結果をもとに、フェライト粒コロニーの分布状況の一例を図示した説明図である。 LおよびC方向のヤング率に及ぼす、板厚中央部での(200)面および(211)面集積密度の合計方向と表面下1mmでの(110)面集積密度との関係を示すグラフである。 LおよびC方向のヤング率に及ぼす、板厚中央部でのフェライト粒コロニーの平均長軸長さと表面下1mmでのフェライト粒コロニーの平均長軸長さとの関係を示すグラフである。

Claims (11)

  1. 溶接構造用の厚鋼板であって、該厚鋼板が、質量%で、C:0.06〜0.2%を含み、下記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.45以下である組成を有し、かつ、板厚中央部における(200)面および(211)面のX線回折集積密度の合計が4.5以上、表面下1mmにおける(110)面のX線回折集積密度が1.5以上で、かつ{100}面、{211}面、{110}面、{111}面のうちのいずれかの面が、圧延面に対し5°以内に揃ったフェライト粒コロニーの平均長軸長さが、板厚中央部で60μm以下、表面下1mmで30μm以下である組織を有することを特徴とする高ヤング率溶接構造用厚鋼板。

    Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ……(1)
    ここで、Ceq:炭素当量(%)、
    C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
  2. 前記組成が、質量%で、C:0.06〜0.2%を含み、前記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.45以下で、かつ、Si:1%以下、Mn:2%以下、Al:0.1%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする請求項1に記載の高ヤング率溶接構造用厚鋼板。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1%以下、Ni:1.5%以下、Mo:1%以下、Cr:1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項2に記載の高ヤング率溶接構造用厚鋼板。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.1%以下、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項2または3に記載の高ヤング率溶接構造用厚鋼板。
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の高ヤング率溶接構造用厚鋼板。
  6. 鋼素材に圧延を施し厚鋼板とする溶接構造用厚鋼板の製造方法であって、前記鋼素材を質量%で、C:0.06〜0.2%を含み、下記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.45以下である組成を有する鋼素材とし、前記圧延を、500℃以上Ac3変態点未満の温度に加熱したのち、(Ac3変態点−40℃)以下500℃以上の温度域において、1パス当りの圧下率が平均で10%以下、累積圧下率が50%以上とする圧延とすることを特徴とする請求項5に記載の高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。

    Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ……(1)
    ここで、Ceq:炭素当量(%)、
    C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
  7. 前記圧延に代えて、Ac3変態点以上1180℃以下の温度に加熱したのち、900℃以下(Ar3変態点−20℃)以上の温度域における累積圧下率が30%以上である一次圧延を行い、ついで、(Ar3変態点−20℃)以下500℃以上の温度域で1パス当りの圧下率が平均で10%以下で、該温度域での累積圧下率が50%以上である二次圧延を行なう圧延とすることを特徴とする請求項6に記載の高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。
  8. 前記組成が、質量%で、C:0.06〜0.2%を含み、前記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.45以下で、かつ、Si:1%以下、Mn:2%以下、Al:0.1%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする請求項6または7に記載の高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。
  9. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:1%以下、Ni:1.5%以下、Mo:1%以下、Cr:1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項8に記載の高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。
  10. 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.1%以下、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項8または9に記載の高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。
  11. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の高ヤング率溶接構造用厚鋼板の製造方法。
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