JP2008095257A - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
耐炎繊維から炭素繊維を製造するのに経済性に非常に優れた製造方法を提供する。
【解決手段】
耐炎繊維に、最大波長が0.8〜2μmであり、エネルギー密度が35kW/m2以上である光を光照射器から照射することにより、前記耐炎繊維を加熱して炭素繊維に転換することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
【選択図】 なし
耐炎繊維から炭素繊維を製造するのに経済性に非常に優れた製造方法を提供する。
【解決手段】
耐炎繊維に、最大波長が0.8〜2μmであり、エネルギー密度が35kW/m2以上である光を光照射器から照射することにより、前記耐炎繊維を加熱して炭素繊維に転換することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、耐炎繊維から炭素繊維を得る際、耐炎繊維を効率的に熱分解させる製造方法に関するものであり、さらに詳しくは特定波長の近赤外線を耐炎繊維に照射し熱分解することで効率的に短時間で炭素繊維を製造する方法に関するものである。
現在、炭素繊維を得る方法としては、前駆体繊維、例えばポリアクリロニトリル系繊維を空気酸化して得られる耐炎繊維を窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気とした加熱炉中で熱分解する方法が主流である。この際、加熱炉としては抵抗加熱炉、誘電加熱炉、プラズマ加熱炉、アーク加熱炉等が使用されることが多い。
しかし、これらの加熱炉を使用する方法では、いずれも大容量の電源が必要であったり、水冷装置等冷却装置があったり、温度制御に必要な設備が複雑化したりして、炭素繊維のコストダウンのための設備費削減あるいはエネルギー削減がなかなか困難である。
そのため、かかる加熱炉に替えて、追尾装置を備えた平面鏡で太陽光を受け、集光した太陽エネルギーを利用した黒鉛繊維の製造装置が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら特許文献1で提案される技術では、天候等に左右されやすく補助光源等が必要であったり、また高価な太陽光追尾装置が必要であったりするという問題があった。
また、原料耐炎繊維の繊維軸に直交する面内において全方向から光を照射する技術も提案されているが(特許文献2参照)、この技術で用いられる装置もまた1糸条に対する設備が非常に大がかりとなり、設備費削減やエネルギー削減が十分ではないという問題があった。
一方、繊維に赤外線を照射する技術としては、有機または無機繊維を、反射付赤外加熱装置を用いて加熱して表面処理することが開示されているが(特許文献3参照)、この技術は純粋に表面処理に必要なエネルギーを与えることが目的であり、繊維全体を熱分解して炭素繊維を製造しようとするものではない。
特開昭54−156821号公報
特開昭62−57925号公報
特開昭59−144670号公報
本発明の目的は、前記従来技術における問題を解決すること、すなわち、簡素な設備、単純な条件で光エネルギーを効率よく利用し、耐炎繊維を熱分解して炭素繊維を効率的に製造する方法を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は次の構成を有するものである。すなわち、耐炎繊維に、最大波長が0.8〜2.0μmであり、エネルギー密度が35kW/m2以上である光を光照射器から照射することにより、前記耐炎繊維を加熱して炭素繊維に転換することを特徴とする炭素繊維の製造方法である。
本発明によれば、耐炎繊維に照射された近赤外線が、高効率的に熱に変換されることによって耐炎繊維の高速昇温が可能となり、簡素な設備、単純な条件で、経済性的に有利に耐炎繊維を炭素繊維に転換することができる。
以下、本発明について、さらに詳しく説明する。
本発明において、耐炎とは、炎に対し耐性を有したとえ着火したとしても燃焼が継続しない事象のことを意味し、耐炎繊維とは、耐炎性能を有する繊維をいう。通常、耐炎繊維は、ポリアクリロニトリル(PANと略)やピッチなどの耐炎化可能なポリマーを原料とし、それを繊維状とした後に酸化するか、酸化した後に繊維状として、炎に対する安定性や耐熱性が高まった一群の繊維をいう(特にピッチ系の場合、耐炎繊維よりも安定化繊維や不融化繊維と呼称されることが多い)。このような耐炎繊維は、熱分解されると炭素繊維に転換される。特に、近赤外線を照射した際に消費電力が低い割に短時間で熱分解反応を生じさせることができるという効率の高さの観点からPAN系ポリマーを前駆体とした耐炎繊維を用いるのが好ましい。本発明で用いる耐炎繊維を得るに好適な方法については後述する。
また、本発明において、炭素繊維とは、炭素含有率が70重量%以上である繊維をいい、炭素含有率が90重量%以上95重量%以下であるところの炭化繊維や、炭素含有率が95重量%を越えるところの黒鉛化繊維に限らず、耐炎繊維を熱分解し炭化繊維に至る前の炭素含有率が70重量%以上90%未満であるような、通常は炭素繊維とまでは呼称されず、予備炭化繊維とか前炭化繊維と称される(以下、前炭化繊維と称する)、耐炎繊維よりは物性の高まった一群の繊維をも含むものである。前炭化繊維は、従来の技術によれば、耐炎繊維を、例えば500〜800℃程度の不活性ガス雰囲気中で熱分解させることにより得られる。
本発明では、耐炎繊維に、最大波長が0.8〜2μmであり、エネルギー密度が35kW/m2以上である光を光照射器から照射する。波長0.8〜2μmは、いわゆる近赤外線と呼ばれ、可視光の波長が0.4〜0.8μm、赤外線の波長が0.8〜1000μmという光の波長範囲の中で特定範囲のものである。光の波長には分布があるので、本発明で用いる光はエネルギーの最も高い最大波長が特定範囲内にある必要がある。特に、用いる光の最大波長は、耐炎繊維に吸収されやすい、0.9〜1.8μmが好ましく、1〜1.6μmがさらに好ましい。
ここで最大波長λはウィンの変位則
λ=2897/(t+273)
λ:最大エネルギー波長(μm) t:発熱体温度(℃)
から計算できる。ここで、発熱体温度は光温度計等によって測定することができる。これらの波長は空気等の気体雰囲気には吸収されにくいが繊維に吸収されやすく、しかも被照射耐炎繊維がどのような形状であっても繊維内部に侵入しやすいという特徴がある。
λ=2897/(t+273)
λ:最大エネルギー波長(μm) t:発熱体温度(℃)
から計算できる。ここで、発熱体温度は光温度計等によって測定することができる。これらの波長は空気等の気体雰囲気には吸収されにくいが繊維に吸収されやすく、しかも被照射耐炎繊維がどのような形状であっても繊維内部に侵入しやすいという特徴がある。
光のエネルギー密度とは、光照射器の能力を示し、単位出力(W)を照射断面積で割った値であり、単位としてはW/m2となる。ここで照射断面積とは、照射に用いる光照射器があるピッチ間隔で存在する時、構成する平面的な占有面積全体を意味し、具体的には幅50mm、有効長さ1mの照射器をピッチ200mmで5本を用いて縦横1mの面積1m2の中にこれらを組み込んだ時、1m2が照射断面積となる。本発明では、エネルギー密度が35kW/m2以上、好ましくは50kW/m2以上、より好ましくは100kW/m2以上である光照射器を用いる。なお、現在の技術ではエネルギー密度の最大値は、照射器自体の発熱を抑制するため冷却水等を通すことを駆使したとしても1000kW/m2程度が限界といえる。本発明では、上記した特定条件を満たす光照射器を用いることにより、短時間で、効率的に、耐炎繊維を炭素繊維に転換することができる。
本発明において、耐炎繊維に、特定条件を満たす光を照射して耐炎繊維を加熱する、つまり輻射加熱を行うわけであるが、当然加熱流体等による、例えば対流加熱を併用することもできる。
本発明で用いる光照射器を構成する発熱体は光源であり、発熱体を構成するフィラメント材料は、カンタル線、タングステン、カーボン等を適宜用いることができるが、前記した最大波長の光とするにはタングステンを用いることが特に好ましい。
これに電圧をかけ、電流を流すことによって発熱体を昇温させ目的の温度に達することで先に記したウィンの変位則に従って最大波長を有する光が照射される。
発熱体の発光効率を維持するためには対流熱損失を避ける必要があり、発熱体が光透過性の良好なチューブなどの透明体で覆われた構造とすることが好ましい。この場合、チューブの構成材料として石英、好ましくは透明石英を用いるのが良いが、機械的強度を高めるためには、透明石英などの透明体のツインチューブ型構造とするのが特に好ましい。ここで、ツインチューブとは、2本のチューブを並行して整列して構成したものであり、透明石英とは近赤外の吸収が少なく光透過度を高めたもので、具体的には光を吸収しやすい残存水酸基(−OH)を1000ppm以下に抑えた石英のことを示す。
さらに照射効率を上げるためには、前記透明体において、耐炎繊維に対向する内面、すなわち輻射面と反対側の内面が、金属膜で被覆されているのが良い。金属膜は、反射膜として作用する。金属としては金、銀、アルミ等を用いることができるが、反射率の点から金であるのが好ましい。透明体に金属膜が存在する結果、輻射する近赤外線エネルギーを耐炎繊維への方向での照射効率を上げることができる。
照射効率は80%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。ここで照射効率とは投入した電力に対し、光として出力されたエネルギーの比を百分率で表したものであり、100%とならない場合はチューブ等へ吸収され損失となる。
ここで、透明体の表面温度は透明性を維持するため600℃以下とすることが好ましく、特に大出力になる場合には水冷などで冷却することにより光照射器表面の温度を低下させることが好ましい。
前記した最大波長を有する光を得るためには、場合によって透明体の中にハロゲンガスを封入しても良く、石英管の中にハロゲンガスを封入し維持した、いわゆるハロゲンヒータを用いてもよい。ハロゲンヒータでは、発熱体の本体はタングステンが使用されていることが多い。
このような条件を満たす光照射器としては、市販品あるいは自製品を用いることができるが、市販品では、ヘレウス(株)社製短波長赤外線ヒーター形式600/80Gなどを挙げることができる。
本発明では、耐炎繊維に、前記特定条件の光を照射し、耐炎繊維を加熱して炭素繊維に転換するが、もちろん、一旦、前炭化繊維となして、これに再度前記条件を満たす光を照射して炭化繊維や黒鉛化繊維となしてもよいし、一旦、前炭化繊維として、従来用いられる加熱炉で加熱して炭化繊維や黒鉛化繊維としてもよい。また、炭化繊維や黒鉛化繊維とせずとも前炭化繊維のままでも利用できる用途は存在する。
耐炎繊維に光を照射するに際しては、バッチ法、連続法を適宜選択できるが、炭素繊維として連続した繊維を得るためには、連続した耐炎繊維に連続的に光を照射する連続法の方が効率的で好ましい。
連続法では、耐炎繊維の走行方向に、光照射器を、1個ないし複数個を用いて設置し光照射するのが良い。その際、耐炎繊維を挟み対向する位置に反射板を1個または複数個設置し、光照射器から耐炎繊維に向けて照射された光を反射板で反射して耐炎繊維に再照射することが好ましい。図1および図2にその方法の一例を示した。図1は、光照射器6を用いて、ローラー7間を連続して走行する耐炎繊維4に光を照射し、その光を反射板5で反射した反射光を耐炎繊維4に再度照射する場合を示す概略側面図であり、図2は、図1におけるA−A‘断面を示す概略図である。また、図1、2では、照射器を構成するチューブと耐炎繊維が並行している例をあげたが、直交あるいは斜行させることもできる。なお、図2では、ツインチューブ型の光照射器を用いた場合を示しているが、必ずしも本発明で用いる光照射器はツインチューブ型に限定されるものではない。なお、反射板は、反射した光が集光するように反射面が凹面となっている。
反射板を設置することにより、照射したエネルギーを無駄なく繊維の加熱に利用できるし、繊維束中単繊維1本1本をより均等に加熱することができ、それにより単繊維間の強度・伸度等の物性ムラを低減できるので好ましい。反射板の材質は耐熱性、光反射性の観点から、金、銀、アルミニウム、ニッケルあるいはそれらの合金等を適宜使用できるが、経済性を考慮すればアルミニウムを用いることが好ましい。耐炎繊維への集光効率を上げるため、任意に湾曲した状態に加工することができる。反射板の厚みは0.01〜10mm程度まで任意のものを使用できる。反射板の反射面は通常鏡面加工されている。
光照射器と耐炎繊維との距離(例えば、透明体表面から糸束表面の距離)は1〜60mmの任意とすることができるが、エネルギー効率の点から好ましくは5〜50mm、さらに好ましくは7〜40mmとするのが良い。また耐炎繊維と反射板の最小距離もエネルギー効率の点から1〜60mmの任意とすることができるが、エネルギー効率の点から好ましくは5〜50mm、さらに好ましくは7〜40mmとするのが良い。
光照射器からの光の照射時間は上記距離によっても異なるが、1〜3000秒の間で任意にとることができる。ただし、照射時間が長くなると却って劣化が進み、物性が低下することもあることに注意する必要がある。
ここで光を照射している間の繊維が晒されている雰囲気は、従来の加熱炉を使用する場合と同様に、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを用いた雰囲気としてもよいが、本発明においては必ずしも不活性ガス雰囲気である必要はない。通常の空気雰囲気そのままで行うことができるし、燃焼ガス等酸素濃度が低く安価なガスを用いることもできる。特に前炭化繊維を得る場合には空気中でそのまま加熱することが経済性の面から有利である。
また、耐炎繊維の周辺を囲み炉として構成することもできるが、炉を構成せず開放系としてそのまま空間を保持し直接耐炎繊維に照射することももちろんできる。ただし、耐炎繊維が炭素繊維に転換するにあたって、分解ガスが発生するので、図1におけるように吸気装置8を設けることが好ましい。
耐炎化度の高い耐炎繊維を用いる場合は一気に炭素繊維を得ることができるが、耐炎化度の低い耐炎繊維の場合には近赤外線を照射した際に発火することもあるため、一旦穏和な条件で前炭化繊維を経由してから、再度近赤外線を照射して炭素繊維とすることが好ましい。ここで耐炎化度が高いとは、通常、後述する炎収縮保持率が80%以上であり、浅いとは80%未満のことをいう。
また、光照射時の繊維に与える延伸比は、所望する炭素繊維の要求特性に応じて、毛羽発生など品位低下の生じない範囲で適宜選択することができるが、0.8〜2であるのが好ましく、0.9〜1.8であるのがより好ましく、0.93〜1.5であるのがさらに好ましい。
本発明で用いる耐炎繊維を得るに好適な方法を次に説明する。かかる方法では、PANを繊維化してアクリル繊維とした後に酸化するか、PANを酸化して耐炎ポリマーとなし、それを繊維状となすことにより耐炎繊維を得る。
最初にアクリル繊維を酸化して耐炎繊維を得る場合について説明する。この場合、アクリル繊維を、200〜300℃の酸化性雰囲気において酸化して耐炎化する。
アクリル繊維は、次のようにして得ることができる。少なくとも95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のアクリロニトリルと、5モル%以下、より好ましくは2モル%以下の、耐炎化を促進し、かつ、アクリロニトリルと共重合性のある、耐炎化促進成分を共重合したPANを繊維化する。耐炎化促進成分としては、ビニル基含有化合物(以下ビニル系モノマーという)からなる共重合体が好適に使用され、ビニル系モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などを挙げることができる。また、一部または全量をアンモニア中和したアクリル酸、メタクリル酸、またはイタコン酸のアンモニウム塩を共重合すると、耐炎化促進作用がより向上する。
PANを繊維化する際に用いる紡糸方法は、乾湿式紡糸法や湿式紡糸法が好ましく採用される。口金から直接または間接に凝固浴中に紡糸原液を吐出し、凝固糸を得る。凝固浴液は、紡糸原液に使用する溶媒と凝固促進成分とから構成するのが、簡便性の点から好ましく、凝固促進成分として水を用いるのがさらに好ましい。凝固浴中の紡糸溶媒と凝固促進成分の割合、および凝固浴液温度は、得られる凝固糸の緻密性、表面平滑性および可紡性などを考慮して適宜選択して使用される。得られた凝固糸は、20〜98℃に温調された単数または複数の水浴中で水洗、延伸するのがよい。さらにシリコーン油剤を付与するのが好ましく、さらに150℃以上180℃以上程度で乾燥するのが好ましい。乾燥された糸条は、さらに加圧スチーム中または乾熱下で後延伸されるのが好ましい。
このようにして得られるアクリル繊維は、単糸繊度が0.1〜2.0dTexであることが好ましく、0.3〜1.5dTexであることがより好ましく、0.5〜1.2dTexがさらに好ましい。かかる繊度が小さいほど、得られる炭素繊維の引張強度や弾性率の点で有利であるが、生産性は低下するため、性能とコストのバランスを勘案し選択するのがよい。
耐炎化は、空気などの酸化性雰囲気中で行い、その温度は、200〜300℃がよく、糸条が反応熱の蓄熱によって糸切れが生じる温度よりも、10〜20℃低い温度とするのがコスト削減および得られる炭素繊維の性能を高める観点から好ましい。耐炎化に際して、繊維を延伸比0.90〜1.05、好ましくは0.91〜1.02、より好ましくは0.92〜1.00として延伸するのがよい。
次に、PANを酸化して耐炎ポリマーとなし、それを繊維状となして耐炎繊維を得る場合について説明する。ここで耐炎ポリマーとは、通常耐炎繊維や安定化繊維と呼称されるものの化学構造と同一または類似するものである。PANを前駆体とする耐炎ポリマーの構造は完全には明確となっていないが、アクリロニトリル系耐炎繊維を解析した文献(ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス,パートA:ポリマー・ケミストリー・エディション)(J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.Ed.),1986年,第24巻,p.3101)では、ニトリル基の環化反応あるいは酸化反応によって生じるナフチリジン環やアクリドン環、水素化ナフチリジン環構造を有すると考えられており、構造から一般的にはラダーポリマーと呼ばれている。もちろん、未反応のニトリル基が残存しても耐炎性を損なわない限りよいし、分子間に微量架橋結合が生じることがあっても溶解性を損なわない限りはよい。
耐炎ポリマー自体またはその溶液の核磁気共鳴(NMR)装置により13−Cを測定した場合、ポリマーに起因して150〜200ppmの範囲にシグナルを有する構造であることが好ましい。その範囲に吸収を示すことで、耐炎性が良好となる。耐炎ポリマーの分子量は特に限定されず、繊維化方法に応じた粘性を有する分子量とすればよい。
耐炎ポリマーは、通常、PANを溶媒に溶解した溶液を80〜300℃に加熱することにより得られる。耐炎ポリマーとしては、アミン系化合物によって変性されたポリマーが好適である。アミン系化合物で変性するには、前記した溶液にアミン化合物を配合すればよい。ここでいう「アミン系化合物によって変性された」状態としては、アミン系化合物が原料前駆体ポリマーと化学反応を起こした状態、または水素結合若しくはファンデルワールス力等の相互作用によりポリマー中に取り込まれた状態が例示される耐炎ポリマー含有溶液中の耐炎ポリマーがアミン系化合物によって変性されているか否かは、下記のAやBの方法でわかる。
A.分光学的方法、例えば、先に示したNMRスペクトルや赤外吸収(IR)スペクトル等を用い、変性されてないポリマーとの構造との差を解析する手段。
B.後述する方法により耐炎ポリマー含有溶液中の耐炎ポリマー重量を測定し、原料とした前駆体ポリマーに対して重量増加しているか否かによって確認する手段。
A.分光学的方法、例えば、先に示したNMRスペクトルや赤外吸収(IR)スペクトル等を用い、変性されてないポリマーとの構造との差を解析する手段。
B.後述する方法により耐炎ポリマー含有溶液中の耐炎ポリマー重量を測定し、原料とした前駆体ポリマーに対して重量増加しているか否かによって確認する手段。
前者のAの手段の場合、通常空気酸化によって得られたポリマー(アミン変性なし)のスペクトルに対し、アミンで変性された耐炎ポリマーのスペクトルには変性剤として用いたアミン化合物の由来する部分が新たなスペクトルとして追加される。
後者のBの手段の場合、通常、一般に空気酸化によっては前駆体繊維の重量に対して、耐炎繊維は同程度の重量が得られるが、アミンで変性されることにより前駆体ポリマーに対して、1.1倍以上、さらに1.2倍以上、さらに1.3倍以上に順に増加していることが好ましい。また、増加量としての上の方としては、3倍以下、さらに2.6倍以下、さらに2.2倍以下に順に減少している方が好ましい。かかる重量変化が小さいと、耐炎ポリマーの溶媒への溶解が不十分となる傾向があり、耐炎繊維とした際に、ポリマー成分が異物となる場合がありうる。一方、かかる重量変化が大きいとポリマーの耐炎性を損なう場合がある。
アミン変性に用いることのできるアミン系化合物は、1級〜4級のアミノ基を有する化合物であればいずれでもよいが、具体的には、モノエタノールアミン(以下、MEA)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン等のエタノールアミン類やエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびN−アミノエチルピペラジン等のポリエチレンポリアミン等やオルト、メタ、パラのフェニレンジアミン等が挙げられる。
溶媒としては、有機溶媒を用いることができ、特にアミン系有機溶媒を用いるのが良い。かかる溶媒としては、1級〜4級のアミン構造を有する化合物であればいずれであってもよい。アミン系有機溶媒を用いることによって、耐炎ポリマーが均一に溶解した耐炎ポリマー含有溶液となり、かつ良好な成形性を兼ね備えた耐炎ポリマーが実現するのである。
また、溶媒には、極性有機溶媒を用いることができる。この溶媒には、アミン系有機溶媒などアミン系化合物を含むことができる。アミン系化合物で変性された耐炎ポリマーは極性が高く、極性有機溶媒が耐炎ポリマーをよく溶解するためである。
ここで極性有機溶媒とは、水酸基、アミノ基、アミド基、スルホニル基およびスルホン基等を有するもので、さらに水との相溶性が良好なもので、具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量200〜1000程度のポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等やアミン系有機溶媒として前記したモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン等のエタノールアミン類やエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびN−アミノエチルピペラジン等のポリエチレンポリアミン等やオルト、メタ、パラのフェニレンジアミン等をアミン変性剤と兼用して用いることができる。これらは1種だけで用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
とりわけ、DMSOは、耐炎ポリマーが水中で凝固しやすく、また緻密で硬いポリマーとなりやすいため、湿式紡糸にも適用可能な点から好ましく用いられる。
アミン系有機溶媒の場合、アミノ基以外にも水酸基等の酸素、窒素および硫黄などの元素を有する官能基を有していることも好ましく、溶解性の観点から、アミノ基とこのようなアミン以外の官能基とも含め2以上の官能基を有する化合物であることが好ましい。耐炎ポリマーがより均一に溶解した耐炎ポリマー含有溶液とすることで、異物の少ない耐炎繊維を得ることができる。
耐炎ポリマー含有溶液の粘度は、ポリマーを用いての紡糸方法、紡糸温度、口金および金型等の種類等によって、それぞれ好ましい範囲とすることができる。一般的には、50℃の温度での測定において、粘度は、好ましくは1〜100000Pa・sの範囲で用いることができる。粘度は、より好ましくは10〜10000Pa・sであり、さらに好ましくは20〜1000Pa・sである。かかる粘度は、各種粘度測定器、例えば回転式粘度計、レオメータやB型粘度計等により測定することができる。いずれか1つの測定方法により上記範囲に入ればよい。また、かかる範囲外であっても紡糸時に加熱あるいは冷却することにより適当な粘度として用いることもできる。
このような耐炎ポリマーを、PANを繊維化する場合と同様にして、紡糸して繊維化する。この場合、凝固糸、または、水洗、延伸された後の水膨潤状態の繊維に、油剤濃度0.01〜20重量%として、油剤を付与することができる。油剤の付与方法としては、糸条内部まで均一に付与できることを勘案し、適宜選択して使用すればよいが、具体的には、糸条の油剤浴中への浸漬、走行糸条への噴霧および滴下などの手段が採用される。ここで油剤とは、例えば、シリコーンなどの主油剤成分とそれを希釈する希釈剤成分からなるものであるであり、油剤濃度とは主油剤成分の油剤全体に対する含有比率である。油剤成分の付着量は、繊維の乾燥重量に対する純分の割合が、好ましくは0.1〜5重量%であり、より好ましくは0.3〜3重量%であり、さらに好ましくは0.5〜2重量%である。油剤成分の付着量が少なすぎると、単繊維同士の融着が生じ、得られる炭素繊維の引張強度が低下することがあり、多すぎるとまた得られる炭素繊維の引張強度が低下することがある。
このような耐炎ポリマーを、PANを繊維化する場合と同様にして、紡糸して繊維化する。この場合、凝固糸、または、水洗、延伸された後の水膨潤状態の繊維に、油剤濃度0.01〜20重量%として、油剤を付与することができる。油剤の付与方法としては、糸条内部まで均一に付与できることを勘案し、適宜選択して使用すればよいが、具体的には、糸条の油剤浴中への浸漬、走行糸条への噴霧および滴下などの手段が採用される。ここで油剤とは、例えば、シリコーンなどの主油剤成分とそれを希釈する希釈剤成分からなるものであるであり、油剤濃度とは主油剤成分の油剤全体に対する含有比率である。油剤成分の付着量は、繊維の乾燥重量に対する純分の割合が、好ましくは0.1〜5重量%であり、より好ましくは0.3〜3重量%であり、さらに好ましくは0.5〜2重量%である。油剤成分の付着量が少なすぎると、単繊維同士の融着が生じ、得られる炭素繊維の引張強度が低下することがあり、多すぎるとまた得られる炭素繊維の引張強度が低下することがある。
本発明で得られる炭素繊維は、さらにプラスチックと補強した場合に接着性が向上するように表面を電解処理することもできる。電解処理に用いられる電解液としては、硫酸、硝酸、塩酸といった酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドといったアルカリあるいはそれらの塩を用いることができるが、より好ましくはアンモニウムイオンを含む水溶液が好ましい。例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、燐酸2水素アンモニウム、燐酸水素2アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、あるいは、それらの混合物を用いることができる。得られた炭素繊維には、さらに、必要に応じて、サイジング処理がなされる。サイジング剤には、マトリックスとの相溶性の良いサイジング剤が好ましく、マトリックスに合せて選択して使用される。
このようにして本発明により得られた炭素繊維は、引張強度が0.5〜10GPa、好ましくは0.6〜8GPa、より好ましくは0.7〜6GPaで、引張弾性率が50〜300GPa、好ましくは60〜280GPa、より好ましくは70〜260GPaとなる。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。前述した各測定値、および後述する実施例中での各測定値は、次に示す方法により測定した。
<耐炎繊維の炎収縮保持率>
耐炎繊維束を約40cm採取し、試長20cmとなるようにクリップなどの不燃物でマークをつける。次に、一端を固定し、もう一端に3300dTexあたり10gの張力をかけ、マークした試長間をブンセンバーナーの炎によって加熱する。この際、ブンセンバーナーの炎の高さは約15cmとし、炎の上部約1/3の部分を用い、マーク間を約15秒/20cmの速さで1往復半移動させながら加熱する。その後、マーク間の長さを測定し、これをWb(mm)とすると、炎収縮保持率(%)は以下の式で定義される。
<耐炎繊維の炎収縮保持率>
耐炎繊維束を約40cm採取し、試長20cmとなるようにクリップなどの不燃物でマークをつける。次に、一端を固定し、もう一端に3300dTexあたり10gの張力をかけ、マークした試長間をブンセンバーナーの炎によって加熱する。この際、ブンセンバーナーの炎の高さは約15cmとし、炎の上部約1/3の部分を用い、マーク間を約15秒/20cmの速さで1往復半移動させながら加熱する。その後、マーク間の長さを測定し、これをWb(mm)とすると、炎収縮保持率(%)は以下の式で定義される。
炎収縮保持率(%)=(Wb/200)×100
<耐炎繊維、炭素繊維の目付>
測定すべき繊維を1m採取し、120℃で2時間の絶乾させた後にその繊維重量(g単位)を測定し、これを目付(g/m)とする。
<耐炎繊維の熱分解率>
光照射の前後の目付(耐炎糸の目付をT、炭素繊維の目付をCとする)の測定およびその時の延伸比Dから下記式で計算する。
<耐炎繊維、炭素繊維の目付>
測定すべき繊維を1m採取し、120℃で2時間の絶乾させた後にその繊維重量(g単位)を測定し、これを目付(g/m)とする。
<耐炎繊維の熱分解率>
光照射の前後の目付(耐炎糸の目付をT、炭素繊維の目付をCとする)の測定およびその時の延伸比Dから下記式で計算する。
熱分解率(%)=T/(C×D)×100
<耐炎繊維、炭素繊維の比重>
JIS Z 8807(1976)に従って測定を行った。浸漬液としてはエタノールを用い、この中に試料を投入し測定した。なお、予め投入前にエタノールを用い別浴で試料を十分濡らし、泡抜き操作を実施した。
<炭素繊維の炭素含有率>
柳本製作所製CHNコーダーMT−3型装置を用い、試料分解炉950℃、酸化炉850℃、還元炉550℃の条件で炭素繊維試料を酸化分解し測定した。
<炭素繊維の引張強度および引張弾性率>
炭素繊維の引張強度は、JIS−R−7601(1982)「樹脂含浸ストランド試験法」に記載された手法により求められる。ただし、測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、”BAKELITE(登録商標)”ERL4221(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維に含浸させ、130℃、30分で硬化させて形成する。また、ストランドの測定本数は、6本とし、各測定結果の平均値を、その炭素繊維の引張強度、引張弾性率とする。
<耐炎繊維、炭素繊維の比重>
JIS Z 8807(1976)に従って測定を行った。浸漬液としてはエタノールを用い、この中に試料を投入し測定した。なお、予め投入前にエタノールを用い別浴で試料を十分濡らし、泡抜き操作を実施した。
<炭素繊維の炭素含有率>
柳本製作所製CHNコーダーMT−3型装置を用い、試料分解炉950℃、酸化炉850℃、還元炉550℃の条件で炭素繊維試料を酸化分解し測定した。
<炭素繊維の引張強度および引張弾性率>
炭素繊維の引張強度は、JIS−R−7601(1982)「樹脂含浸ストランド試験法」に記載された手法により求められる。ただし、測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、”BAKELITE(登録商標)”ERL4221(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維に含浸させ、130℃、30分で硬化させて形成する。また、ストランドの測定本数は、6本とし、各測定結果の平均値を、その炭素繊維の引張強度、引張弾性率とする。
(実施例1)
アクリロニトリル99.5モル%とイタコン酸0.5モル%を共重合してなるPANをDMSOを溶媒とする溶液重合法により重合し、濃度22重量%の紡糸原液を得た。重合後、アンモニアガスをpH8.5になるまで吹き込み、イタコン酸を中和して、アンモニウム基をポリマー成分に導入することにより、紡糸原液の親水性を向上させた。得られた紡糸原液を40℃として、直径0.15mm、孔数4000の紡糸口金を用いて、一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過させた後、3℃にコントロールした35%DMSO水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸により凝固させ凝固糸を得た。得られた凝固糸を水洗したのち70℃の温水中で3倍に延伸し、さらに油剤浴中を通過させることにより、アミノシリコーン油剤を付与した。油剤浴中の濃度は、純分2.0重量%となるように水で希釈して調整した。さらに180℃の加熱ローラーを用いて、接触時間40秒の乾燥処理を行い乾燥糸を得た。得られた乾燥糸を、0.4MPa-Gの加圧スチーム中で延伸することにより、製糸全延伸倍率を14倍とし、単糸繊度0.8dTex、単繊維本数3000本のアクリル繊維を得た。なお、得られたアクリル繊維はシリコーン油剤付着量が純分で1.0重量%であった。
アクリロニトリル99.5モル%とイタコン酸0.5モル%を共重合してなるPANをDMSOを溶媒とする溶液重合法により重合し、濃度22重量%の紡糸原液を得た。重合後、アンモニアガスをpH8.5になるまで吹き込み、イタコン酸を中和して、アンモニウム基をポリマー成分に導入することにより、紡糸原液の親水性を向上させた。得られた紡糸原液を40℃として、直径0.15mm、孔数4000の紡糸口金を用いて、一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過させた後、3℃にコントロールした35%DMSO水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸により凝固させ凝固糸を得た。得られた凝固糸を水洗したのち70℃の温水中で3倍に延伸し、さらに油剤浴中を通過させることにより、アミノシリコーン油剤を付与した。油剤浴中の濃度は、純分2.0重量%となるように水で希釈して調整した。さらに180℃の加熱ローラーを用いて、接触時間40秒の乾燥処理を行い乾燥糸を得た。得られた乾燥糸を、0.4MPa-Gの加圧スチーム中で延伸することにより、製糸全延伸倍率を14倍とし、単糸繊度0.8dTex、単繊維本数3000本のアクリル繊維を得た。なお、得られたアクリル繊維はシリコーン油剤付着量が純分で1.0重量%であった。
得られたアクリル繊維を、240〜280℃の空気中で耐炎化して、炎収縮保持率が80%の耐炎繊維を得た。耐炎化時間は40分、耐炎化工程の延伸比は0.95とした。
得られた耐炎繊維に対して、近赤外照射器としてヘレウス社製短波長赤外線ヒーター、形式600/80Gを用いて、図1に示すように光照射を行うことにより炭素繊維を得た。この照射器は、発熱体がタングステンフィラメント、それを覆うチューブが透明石英、断面が23mm×11mmであるツインチューブ構造であり、有効加熱長は80mm、全長145mmで金反射膜を有し照射断面積としては0.05m2のユニットととし、定格出力は600W、定格電圧は115Vである。
照射条件として、光照射している間、繊維が晒されている雰囲気は空気とし、耐炎繊維と照射器の距離を20mm、耐炎繊維と反射板の距離も20mm、電圧115V、600Wと設定することにより、最大波長1.2μmの近赤外線を120kW/m2のエネルギー密度、96%の照射効率で照射することができた。近赤外線を照射している際、延伸比Dは1.0で定長とした。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
照射条件として、光照射している間、繊維が晒されている雰囲気は空気とし、耐炎繊維と照射器の距離を20mm、耐炎繊維と反射板の距離も20mm、電圧115V、600Wと設定することにより、最大波長1.2μmの近赤外線を120kW/m2のエネルギー密度、96%の照射効率で照射することができた。近赤外線を照射している際、延伸比Dは1.0で定長とした。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
(実施例2〜5、比較例1)
電圧と電力を表1に示すように変更することにより最大波長λを変えた以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
電圧と電力を表1に示すように変更することにより最大波長λを変えた以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
(比較例2)
エネルギー密度を変えた以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
エネルギー密度を変えた以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
(実施例6)
反射板を用いない以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
反射板を用いない以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
(実施例7)
繊維が晒されている雰囲気を空気に替えて窒素とした以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
繊維が晒されている雰囲気を空気に替えて窒素とした以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
(実施例8〜10)
耐炎繊維と照射器との距離を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
耐炎繊維と照射器との距離を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
(実施例11)
金反射膜を除去し照射効率を低下させた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
金反射膜を除去し照射効率を低下させた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率等を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
(実施例12)
アクリロニトリル100重量部、DMSO371重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部、オクチルメルカプタン1重量部を反応容器に仕込み、窒素置換後に65℃で5時間、75℃で7時間加熱し重合し、DMSOを溶媒とするアクリロニトリル100モル%を重合してなるPANを含む溶液を調製した。系全体をポンプで排気して30hPaまで減圧することで脱モノマーした後に160℃に加温しDMSO、MEA、オルトニトロトルエン(ONT)を加え160℃で60分間反応させ、黒色の耐炎ポリマー含有溶液を得た。この際の仕込み重量比はPAN/DMSO/MEA/ONT=10/74/8/8であった。冷却して得た耐炎ポリマー含有溶液の粘度は25℃で50Pa・s、50℃では20Pa・sであった。この耐炎ポリマー含有溶液を湿式紡糸装置で繊維化した。耐炎ポリマー溶液を焼結フィルターを通した後、0.06mmの孔径を3000ホール有する口金から20℃のDMSO/水=40/60浴中に吐出した。さらに60℃のDMSO/水=30/70浴、続いてさらに70℃のDMSO/水=20/80浴を通して1.3倍に延伸しつつ徐々に糸内部のDMSOを水に置換し、最後に70℃の温水浴中において、溶媒類をほとんど水に置換した。その後、工程油剤としてアミンシリコーン油剤を付与し、温度200℃の乾熱装置にて3分間乾燥する乾燥工程に供した。乾燥工程での延伸倍率は1.2倍であった。乾燥した糸は、次にスチーム中にて延伸を行う、いわゆるスチーム延伸工程に供した。スチームは40cmのチューブ状の処理部分にスチームを導入し、このチューブの両端にそれぞれ3mmの円形絞りを有するユニットを5つ設置し、さらにドレン処理部を設けた。チューブ状の処理部分の周囲にはヒーターを設置して内部にドレンが溜まらないようにした。スチームの圧力は0.8kg/cm2、スチーム温度は112℃であった。スチーム延伸工程での延伸倍率は2.1倍であった。スチーム延伸後の糸は180℃のローラーによって乾燥し、水分率を2.1%とした。さらにこのようにして得られた糸を空気熱風循環炉に導き、炉中270℃で1.1倍に延伸し、同時に15分間熱処理する熱処理工程を経て耐炎繊維を得た。
アクリロニトリル100重量部、DMSO371重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部、オクチルメルカプタン1重量部を反応容器に仕込み、窒素置換後に65℃で5時間、75℃で7時間加熱し重合し、DMSOを溶媒とするアクリロニトリル100モル%を重合してなるPANを含む溶液を調製した。系全体をポンプで排気して30hPaまで減圧することで脱モノマーした後に160℃に加温しDMSO、MEA、オルトニトロトルエン(ONT)を加え160℃で60分間反応させ、黒色の耐炎ポリマー含有溶液を得た。この際の仕込み重量比はPAN/DMSO/MEA/ONT=10/74/8/8であった。冷却して得た耐炎ポリマー含有溶液の粘度は25℃で50Pa・s、50℃では20Pa・sであった。この耐炎ポリマー含有溶液を湿式紡糸装置で繊維化した。耐炎ポリマー溶液を焼結フィルターを通した後、0.06mmの孔径を3000ホール有する口金から20℃のDMSO/水=40/60浴中に吐出した。さらに60℃のDMSO/水=30/70浴、続いてさらに70℃のDMSO/水=20/80浴を通して1.3倍に延伸しつつ徐々に糸内部のDMSOを水に置換し、最後に70℃の温水浴中において、溶媒類をほとんど水に置換した。その後、工程油剤としてアミンシリコーン油剤を付与し、温度200℃の乾熱装置にて3分間乾燥する乾燥工程に供した。乾燥工程での延伸倍率は1.2倍であった。乾燥した糸は、次にスチーム中にて延伸を行う、いわゆるスチーム延伸工程に供した。スチームは40cmのチューブ状の処理部分にスチームを導入し、このチューブの両端にそれぞれ3mmの円形絞りを有するユニットを5つ設置し、さらにドレン処理部を設けた。チューブ状の処理部分の周囲にはヒーターを設置して内部にドレンが溜まらないようにした。スチームの圧力は0.8kg/cm2、スチーム温度は112℃であった。スチーム延伸工程での延伸倍率は2.1倍であった。スチーム延伸後の糸は180℃のローラーによって乾燥し、水分率を2.1%とした。さらにこのようにして得られた糸を空気熱風循環炉に導き、炉中270℃で1.1倍に延伸し、同時に15分間熱処理する熱処理工程を経て耐炎繊維を得た。
実施例1で用いた耐炎繊維に替えて、このようにして得られた耐炎繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維について、炭素含有率、目付、比重、強度、弾性率を測定した。主要な条件および測定結果を表1に示す。
実施例のものでは、高い物性を発現できたが、比較例のものは、実施例のものに比して強度・弾性率が低いものであることがわかる。
本発明は、各種の用途、例えば、航空機やロケットなどの航空・宇宙用航空材料、テニスラケット、ゴルフシャフトおよび釣竿などのスポーツ用品に広く使用され、さらに船舶や自動車などの運輸機械用途分野などに使用することができ、また、高い導電性や放熱性から、携帯電話やパソコンの筐体等の電子機器部品や、燃料電池の電極などにも用られる炭素繊維を、低コスト・簡便な設備で製造でき、産業上有用である。
1 発熱体
2 透明体
3 金属膜
4 耐炎繊維
5 反射板
6 光照射器
7 ローラー
8 吸気装置
2 透明体
3 金属膜
4 耐炎繊維
5 反射板
6 光照射器
7 ローラー
8 吸気装置
Claims (5)
- 耐炎繊維に、最大波長が0.8〜2μmであり、エネルギー密度が35kW/m2以上である光を光照射器から照射することにより、前記耐炎繊維を加熱して炭素繊維に転換することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
- 光照射器は、発熱体が透明体で覆われた構造である、請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
- 光照射器は、ツインチューブ型の構造を有する請求項1または2に記載の炭素繊維の製造方法。
- 透明体は、耐炎繊維に対向する内面が金属膜で被覆されてなる、請求項2または3に記載の炭素繊維の製造方法。
- 光照射器から照射される光の少なくとも一部を反射板で反射して耐炎繊維に照射する、請求項1〜4項のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006281428A JP2008095257A (ja) | 2006-10-16 | 2006-10-16 | 炭素繊維の製造方法 |
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
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Family
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Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2006
- 2006-10-16 JP JP2006281428A patent/JP2008095257A/ja not_active Withdrawn
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CN109306553A (zh) * | 2017-07-28 | 2019-02-05 | 北京化工大学 | 制备聚丙烯腈碳纤维的方法 |
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