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JP2008087444A - 液滴噴射装置の製造方法、ならびに液滴噴射装置 - Google Patents

液滴噴射装置の製造方法、ならびに液滴噴射装置 Download PDF

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JP2008087444A JP2006274135A JP2006274135A JP2008087444A JP 2008087444 A JP2008087444 A JP 2008087444A JP 2006274135 A JP2006274135 A JP 2006274135A JP 2006274135 A JP2006274135 A JP 2006274135A JP 2008087444 A JP2008087444 A JP 2008087444A
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Takehiko Kawasaki
岳彦 川▲崎▼
Hideaki Nojiri
英章 野尻
Masatake Akaike
正剛 赤池
Takatsugi Wada
隆亜 和田
Tamayoshi Kurashima
玲伊 倉島
Tomohito Nozu
智史 野津
Kozo Toyama
綱造 外山
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

【課題】ノズル圧電素子ギャップを精密に制御して印字の安定性をより向上し高密度記録を行うことができる、ホットメルトインクを用いたインクジェットなどに用いる液滴噴射装置の製造方法、液滴噴射装置を提供する。
【解決手段】複数のノズル開孔10を有するノズル形成部材1と、該ノズル形成部材1と所定の間隔のノズル圧電素子ギャップ14をもって前記ノズル開孔10の各々と対向してインク中に設けられた複数の圧電素子を有する液滴噴射装置の製造方法であって、少なくとも、ノズル形成部材1にノズル開孔10を形成する工程、ノズル形成部材1上に犠牲層3を形成する工程、前記犠牲層3上に形成されかつノズル形成部材1上に固定端12が接合された圧電素子を形成する工程、前記犠牲層3をエッチング除去しノズル圧電素子ギャップ14を形成する工程を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は,インクジェットプリンタヘッドなどに用いられる液滴噴射装置の製造方法、ならびに液滴噴射装置に関するものである。とりわけ、圧電素子を用いてホットメルトインクの吐出を行う液滴噴射装置の製造方法、ならびに液滴噴射装置に関するものである。
近年、高品位の印刷を行うプリンターとしてインクジェットプリンターが普及している。このようなインクジェットプリンターは、印刷用途のみならず捺染、工業用の薬液やパターン材料の塗布など極めて広い応用が期待されるものである。インクジェットプリンターには、代表的なものとして圧電素子を用いる圧電式と、ヒーターによる加熱を用いる熱式があり、いずれも高性能化の開発が進んでいる。
圧電式インクジェットプリンターの例としてホットメルトインクを用いた装置が公知となっている。ホットメルトインクとは常温で固体または高粘度の液体であり、かつ常温より高温の所定温度で低粘度液体となるインクである。このような装置の例として、特許広報第2692121号に開示されている装置があり、図11に装置構成を示す。図11において、201はノズル形成部材、204は第1電極層、205は圧電層、206は第2電極層、210はノズル開孔、211は圧電素子、212は固定端、213は自由端、214はノズル圧電素子ギャップ、220はインク、221はインク槽、222はインク供給部、223はインク導入ガイド、224はインク導入路、225は筐体、226はフィルタ、227はインク加熱機構(ポジスタ)、228及び229は大気連通部、230は解放端、231は配線、232はインク液滴、233はスペーサーである。図のように、ホットメルトインクを所定温度に加熱溶融する加熱手段と、複数のノズル開孔を有するノズル形成部材と、該ノズル形成部材と所定の間隔をもって前記ノズル開孔の各々と対向してインク中に設けられた複数の電気機械変換手段(圧電素子)を有するものである。上記従来例の装置によれば普通紙に高品位な印字が可能であり、なおかつホットメルトインクの問題点であるところのインクの常温固化時における体積収縮に起因して発生する気泡の排出を安定して行うことが可能でインクの射出も安定に行えるため、記録装置に好ましく用いることができる。
また、このようなホットメルトインクを用いた装置の例としては、他に特開2000−071452、あるいは特開2000−127380に開示されているような、ノズルごとに設けられたインク流露(圧力室)に対して振動板を介して圧電素子より圧力を印加し、ノズルより液滴を噴射する装置が提案されている。
特登録2692121号公報 特開2000−071452号公報 特開2000−127380号公報
前記従来例のインクジェット記録装置においては、印字の安定性を確保するために、ノズルと圧電素子との間隔(以下ノズル圧電素子ギャップ)を精密に制御することが必要である。前記従来例においてはノズル圧電素子ギャップの制御を圧電素子の固定端とノズル形成部材との間に設けられた金属薄板からなるスペーサーによって行っていた。
しかしながら、かかる従来例の構成によった場合、ノズル圧電素子ギャップを精密に制御するためには、スペーサーの厚さ及び厚さのムラ、変形をきわめて精密に制御する必要がある。なおかつスペーサーと圧電素子、ノズル形成部材やフレームとの接合工程においても高い精度が要求される。さらに固定端側のみでギャップを制御する構成であり、ノズル圧電素子ギャップが形成される自由端側では固定端側で生じた誤差は拡大される。以上の理由からノズル圧電素子ギャップを安定的に制御して製造することは難しかった。このため、複数のノズルから均一な特性での吐出を行うことが難しく、印字安定性を確保した記録装置を提供することは難しかった。
また、特に近年においては高精細記録への要求から記録装置においても高密度化が求められ、圧電素子も高集積化に伴う微細化、薄膜化が求められている。同時に、ノズル開孔にも微細化が求められ、ノズル開孔の微細化(高精細化)に対応してノズル長さも短くなるため、ノズル形成部材も極めて薄いものを用いる必要が生じる。また、圧電素子の微細化に伴いノズル開孔との位置あわせは高い精度が要求されが、このような薄膜圧電素子並びに薄いノズル形成部材は脆く取り扱いが難しく、両者をスペーサーを介して高い位置あわせ精度で張り合わせるといった加工には困難が伴う。そのため上記従来例への応用は難しく、高密度化対応は困難であった。
また、特開2000−071452、あるいは特開2000−127380に開示されている装置は、ノズル個別に隔壁で隔てられた圧力室を設けている。このような構成では隔壁の幅でノズルの集積度が制限されるため、高密度化対応には限界がある。
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的はノズル圧電素子ギャップを精密に制御して印字の安定性をより向上し高密度記録を行うことができる液滴噴射装置の製造方法、ならびに液滴噴射装置を提供することである。
本発明は、複数のノズル開孔を有するノズル形成部材と、前記ノズル開孔の各々と対向してインク中に設けられた複数の圧電素子を有し、該ノズル形成部材と圧電素子が所定の間隔のノズル圧電素子ギャップをもって配置された構成を有する液滴噴射装置の製造方法であって、少なくとも、ノズル形成部材にノズル開孔を形成する工程、ノズル形成部材上に、後工程でのエッチング除去によりノズル圧電素子ギャップを形成するための犠牲層を形成する工程、前記犠牲層上に形成されかつノズル形成部材上に固定端が接合された圧電素子を形成する工程、前記犠牲層をエッチング除去しノズル圧電素子ギャップを形成する工程を有することを特徴とする液滴噴射装置の製造方法である。
本発明のノズル形成部材としては、使用するインクに対して十分な耐性があり、所望のノズル開孔形成等の加工を行うことができるものであれば任意の材料を用いることができる。本発明のノズル形成部材として好ましく用いられるものとして、第1に半導体材料が挙げられる。半導体材料は大規模集積回路などに用いられるため高度に微細加工技術が確立しており、本発明に要する加工を容易に行うことができる。半導体材料の中でも特に好ましいものとしてシリコン単結晶が挙げられる。シリコン単結晶は、異方性エッチングにより、結晶の面並びにエッチング条件やマスク開口形状を適宜選択することで、高い精度で形状を制御したノズルを容易に形成することができる。また、SOI基板も好適である。また、本発明のノズル形成部材として好ましく用いられるものとして、第2に導電性材料が挙げられる。導電性材料は、圧電素子がノズル形成部材上に固定端が接合されて形成することより、ノズル形成部材と圧電素子の電極の電位を等電位にしておくことができるため、製造工程において静電力による張り付きを防止し、より高い歩留まりで液滴噴射装置を製造できる。まあ、後述する犠牲層の形成工程において、めっき、あるいは電着などの方法で容易に犠牲層を形成できるという点でも好ましい。導電性材料の中でも特に好ましいものとして金属材料が挙げられる。金属としてはステンレス鋼や、ニッケル、クロムなど殆ど限定されずに用いることができる。これら金属材料は圧延や研磨などで薄いノズル形成部材の作製が容易であると共に、放電加工などで微細なノズル開口を容易に形成できる。また、本発明のノズル形成部材として好ましく用いられるものとして、第3に絶縁性材料が挙げられる。絶縁性材料は熱伝導率が低く保温性が高いため、溶解したホットメルトインクがノズル周辺など大気に接する箇所で放熱での温度低下を低減し、安定した吐出が可能であるという利点がある。好ましい絶縁性材料としては、感光性樹脂が挙げられ、紫外線などのパターン照射で容易にノズル開孔などの形成が行える。また、他に好ましい絶縁性材料としてガラス材料が挙げられる。
また、本発明においてノズル形成部材は、ノズル長さに対応した厚さのものを用いる必要があり、ノズル開孔の微細化(高精細化)に対応してノズル長さも短くなるため、極めて薄いものを用いる必要がある。このため、前記ノズル形成部材の厚さは、1μm乃至50μmであることが好ましい。本発明においてはこのような薄いノズル形成部材に対して犠牲層および圧電素子の形成、ならびにノズル開孔の形成などの加工を行う際には必要に応じて補強してから加工を行う。補強の方法としては補強材を接合することが挙げられ、この補強材としては後工程にインクジェットのインク槽などを構成する筐体の一部(以後筐体部材)を使用することで、後に補強材の分離を行う必要がなくなり好ましい。さらにより好ましい形態としては、取り扱い容易な厚さのノズル形成部材の一部をエッチングもしくは切削等により加工して凹部を作ってメンブレンを形成し、さらにこのようにして形成したメンブレン上に犠牲層および圧電素子の形成、ならびにノズル開孔の形成などの加工を行う方法が挙げられる。このようにすることにより、ノズル形成部材の薄い板に対して別途補強材を接合した場合と比較して接合箇所を持たない構成となり、特に高温過程が必要とされる圧電素子の形成における温度衝撃、あるいは犠牲層エッチングなどの化学プロセスにおけるエッチング液の浸入などによる接合の剥離が防止でき、より歩留まりの高い製造方法が提供できる。本発明においては、犠牲層及び圧電素子はノズル形成部材に形成したメンブレンのいずれの面に形成してもかまわないが、好ましくは犠牲層及び圧電素子をメンブレン上の凹部内側に形成することにより、ノズル開孔からの液滴の吐出をメンブレンの凹部と反対側より行う構成とすることでノズル開孔と記録用紙の間の距離を短くすることができるため、高精細の記録には好適となる。凹部底部に素子等の形成加工を行う場合はアスペクト比の高いマスクが形成できるフォトレジスト、一例としてSU-8(マイクロ ケム コーポレーション社)などを用いた加工を行う。またこのような作製方法においては、ノズル形成部材としてはSOI基板を用いることも好ましい。基板内部の酸化層をエッチングストップに用い、より正確にメンブレン厚さを制御して作製できる。
また、本発明のノズル形成部材にノズル開孔を形成する工程は、機械的な切削加工や放電加工、エッチング、あるいは型などを用いた成形など任意の加工方法が用いられる。本発明においては、ノズル開孔を形成する工程は請求項1に記載した各工程のどの段階で行っても構わない。例えば、ノズル形成部材の表面上に犠牲層を形成した後裏面より位置あわせをして開孔を形成する方法を用いることができる。本発明においてはノズル開孔に対して圧電素子を精度良く位置あわせして形成する必要があるため、より好ましくは位置あわせをノズル形成部材の同一面上で行う方法を用いる。本発明においては例えば以下のような工程が挙げられる。
(1)ノズル形成部材上にマスク層を形成する。
(2)マスク層に微小なマスク開口を形成する。
(3)ノズル形成部材をマスク開口よりノズル形成部材をエッチングしてエッチング穴を形成する。
上記(1)乃至(3)の工程によって、ノズル形成部材の裏面までエッチング穴を貫通させてノズル開孔を形成してもよい。あるいは上記(1)乃至(3)の工程によって、ノズル形成部材の厚さ半ばまでの深さにエッチング穴を形成し、後に必要に応じてノズル形成部材を裏面より研磨しノズル開孔を形成してもよい。(3)のマスク開口よりノズル形成部材をエッチングする工程においては等方性エッチングを用いて概半球形等のエッチング穴を形成することもできるが、異方性エッチングを用いて穴形状を制御して形成することもできる。異方性エッチングを用いた場合の工程を例を挙げてより詳細に説明する。一例としてノズル形成部材として(100)面方位のSi単結晶ウエハ、マスク層として窒化シリコンを用い、マスク開口を少なくともエッチング液の浸入が可能な大きさの矩形とし、エッチング液としてKOH水溶液あるいはTMAH水溶液などを用いることにより、ノズル形成部材1である(100)面方位のSi単結晶ウエハを異方性エッチングし、一辺がマスク開口より大きく逆四角錐形にエッチングされた異方性エッチング穴を形成することが可能である。これは、上記エッチング液を用いた異方性エッチングにおいては(110)面あるいは(100)面のエッチングレートに対して(111)面のエッチングレートはきわめて遅いため、通常は一辺がマスク開口とほぼ等しい逆四角錐形にエッチングされた異方性エッチング穴が形成されるが、エッチング液の濃度や温度を選ぶことで(111)面のエッチングレートをある程度大きくすることが可能であり(Sensors and Actuators A,34(1992)51)、上記形状のエッチング穴の形成が可能となる。またエッチング時間を適宜に選ぶことにより、異方性エッチング穴の大きさと深さはある程度任意に作製できる。上記工程によれば、マスク層は開口を有するメンブレン状に残る。このため、このマスク層上にマスク開口を塞ぐ形で犠牲層を堆積することが可能で、さらに犠牲層上に圧電素子を形成することが可能となる。犠牲層は、膜厚および堆積方法を適宜選択し、マスク開口を塞ぐ形で形成する。マスク開口径。ならびに犠牲層の材料や膜厚および堆積方法については実施例中に具体例を示す。このような工程によれば、ノズル開孔と圧電素子の作製の位置あわせをノズル形成部材の同一面上で行うことが可能となり、精度良く位置あわせして形成することができる。
また本発明のノズル形成部材にノズル開孔を形成する工程においては、ノズル形成部材の厚さに対して途中までの深さの穴を形成した後、穴の裏面側よりノズル形成部材を研磨して前記穴の底部にノズル開孔を形成してもよい。
また、本発明においては前記ノズルの開孔面積が、1×10−11m乃至1×10−9mであることが好ましい。上記範囲とすることで微小な圧電変位素子によっても安定的に微小液滴の吐出が可能な液滴噴射装置を形成できる。
また、本発明においては、前記ノズル形成部材に大気連通部を形成することも好ましい。製造方法の点で、このような大気連通部はノズル開孔と同様のノズル形成部材の貫通口でありノズル形成と同時に形成することができるため、液滴噴射装置全体として工程数が減少しより低コストにて液滴噴射装置を提供できる。大気連通部を形成する位置として好ましいものに、ノズル形成部材の各々の圧電素子と対向した部分であって前記ノズル開孔に対して圧電素子の固定端側が好ましい。このようにすることにより、メニスカス(解放端)を前記大気連通部のごく近傍に形成し、メニスカス位置を圧電素子の固定端側に極めて精度良く設定することができるため、筐体など圧電素子より離れた位置に設けた場合と比較して微小な圧電素子周囲のインクの状態を精度良く制御可能となり、より安定な吐出特性を得ることができる。また、前記大気連通部の開孔面積は、前記ノズル開孔の開孔面積よりも大きく、おおむね5×10−11m乃至5×10−7mであることが好ましい。
また、本発明に用いられる犠牲層としては、エッチングにより溶解除去可能であり、その際ノズル形成部材、あるいは圧電素子を構成する材料、もしくはこれらに形成する保護層に対して十分なエッチングレート比が得られるものであれば用いることができる。このような犠牲層は適宜パターニングし、後述する圧電素子の固定端となる箇所など不要部分は除去する。本発明の犠牲層材料として好ましく用いられるものとして、第1に有機材料が挙げられる。有機材料として好ましいものとしては特にフォトレジストなどの感光性樹脂が挙げられ、紫外線などのパターン照射で容易にパターニングができると共に、圧電素子がほとんどエッチングされないアセトンなどの有機溶剤で容易にエッチングされるため好ましい。本発明の犠牲層材料として好ましく用いられるものとして、第2に無機材料が挙げられる。無機材料として好ましいものにMgOが挙げられる。本発明では犠牲層上に圧電素子を形成するため、後述する各種圧電材料の中でも特に高い電気機械変換特性をもつペロブスカイト系酸化物圧電材料の薄膜の形成に好適なMgOが特に好ましく用いられ、犠牲層上に良好な特性の圧電素子が形成できることから、安定な吐出特性を有する液滴吐出装置が作製できる。他には、マイクロメカニクスなどの技術分野において犠牲層材料として用いられ製法及びエッチング技術が開発されている酸化シリコンあるいはポリシリコンも好ましく用いられる。また、めっきなどで容易に形成できる金属材料も好ましい。
本発明においては犠牲層の厚さは所望のノズル圧電素子ギャップの厚さとして決定される。このため、犠牲層の形成方法としては膜厚の制御性がよいものの中から適宜選択される。好適なものの例として、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法など気相からの犠牲層材料の堆積によることが挙げられ、これら方法によれば1nm以下の誤差で厚さ制御された犠牲層が形成でき、ノズル圧電素子ギャップをきわめて精度良く形成できるため、安定した吐出特性を有する液滴噴射装置を作製できる。また、別の好適なものの例として、電界めっき法、無電界めっき法、電着法、電気泳動法など液相からの犠牲層材料の堆積によることが挙げられ、これら方法によっても良好な膜厚の制御性が得られると同時に、これら方法は選択的成長が可能でありノズル形成部材上の必要箇所への堆積が容易である。また、犠牲層材料の塗布によってもよく、塗布液の粘度や塗布方法を適宜選択することで本発明の犠牲層の範囲において比較的厚いものでも容易な形成が可能である。
前記犠牲層の厚さは、1μm乃至50μmであることが好ましい。上記範囲とすることで微小な圧電変位素子によっても安定的に微小液滴の吐出が可能な液滴噴射装置を形成できる。
続いて犠牲層上に圧電素子を形成後に、マスク層、および犠牲層をエッチング除去する。
圧電素子としては、材料、形態や素子構成はノズル開孔に対向して配置可能で、なおかつインクの吐出に十分な変位が得られるものであれば任意に選ぶことができる。
圧電素子に用いる圧電材料は、所望の駆動特性が得られるものであれば特に限定されず用いる事ができる。例としては、PZT系材料などのぺロブスカイト系材料や、ZnO等である。また、膜厚方向に組成を変えて成膜したPZT系の配向膜(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.32(1993)pp.4057)なども本発明に好ましく用いられる。電極層としては、材料は高い導電性を有し、圧電薄膜作製工程等の加熱などに耐えうるもののなかから適宜選択する。好ましいものの例としては、Pt、Au、Pd、Ir、Rh、Ruなどの貴金属系材料があげられる。またこれらの合金、積層膜なども用いることができる。電極層および圧電層の形成方法としては、犠牲層端部の段差を十分被覆して形成することができる方法より適宜選択する。好ましい例としては、ゾルゲル法等の塗布・焼成による堆積法や、MO−CVD法やスパッタ法など気相からの堆積法が挙げられる。本発明において圧電素子は、ノズル形成部材上に固定端が接合された形態に形成する。本発明における圧電素子の固定端とノズル形成部材の接合は、膜の堆積による直接接合が好ましいが、適当な接合層を介して積層接合してもかまわない。
圧電素子の構成として本発明に好ましく用いられるものとしては、カンチレバー型の素子が挙げられる。素子構成としては圧電材料の薄い板の両面に電極を設け、たとえば両面の電極厚さを異なったものとする、あるいは片側の面に振動板材料を別途形成するなどして曲げ方向変位を生じさせる構成とする。このような圧電素子は、固定端に対して自由端の大きな変位が得られ、インクの吐出を安定して行うことができる。このような圧電素子は、上下の電極層、圧電層等を堆積し、適宜パターニングして形成する。前記圧電素子の厚さは必要な変位量、発生する力を考慮して適宜設計するが、1μm乃至50μmであることが好ましく、前記の微小なノズル開孔と組み合わせることにより、安定的に微小液滴の吐出が可能な液滴噴射装置を形成できる。
上記圧電素子をパターンとして形成した後に、犠牲層を除去する。犠牲層の除去は、素子をエッチング液に浸漬して行う。犠牲層の除去に際して、圧電素子部及び筐体部材などが使用するエッチング液によって侵される場合は、保護の必要な箇所をフォトレジスト等の保護膜により保護する。なお、保護膜は犠牲層の除去工程後に除去する。犠牲層をエッチング液によるエッチングで除去し、圧電素子パターンの固定端を除いて自由端までをノズル形成部材よりリリースして、圧電素子の固定端がノズル形成部材に固定され、犠牲層厚さ分のノズル圧電素子ギャップを有する構成を有する形で形成する。
さらに、犠牲層の除去工程においては、ノズル開孔もしくは大気連通部よりエッチング液を導入して犠牲層のエッチング除去を行うことが好ましい。この際、必要に応じてシール材をもちいて圧電素子パターンなどを保護する。素子全体をエッチング液に浸漬してエッチングを行う場合と比較して前記エッチング液が圧電素子などに接触する時間を減少させることができ、圧電素子に形成した保護膜の劣化やピンホールからのエッチング液の浸入による圧電素子の劣化や破壊を低減し、より高い歩留まりで液滴噴射装置の製造を行うことができる。
以上述べてきた方法により、ノズル開孔を有するノズル形成部材上に所定のノズル圧電素子ギャップをもって前記ノズル開孔の各々と対向して複数の圧電素子を形成する。
また、本発明おいては、このようなノズル開孔と圧電素子を形成したノズル形成部材に対して、インク槽及びインク供給部などを構成する筐体、インクの加熱を行う加熱機構、圧電素子に駆動電圧を供給する配線などを接合して、液滴噴射装置を作製する。本発明の液滴噴射装置は、上記工程により作製され、圧電素子の固定端がノズル形成部材に固定され、犠牲層厚さ分のノズル圧電素子ギャップを有する構成となる。また、本発明の液滴噴射装置は、前記圧電素子に対して個別に制御された駆動電圧を印加する機構を設ける。
以上、本発明によれば、ノズル圧電素子ギャップが所望の値に精度良く配置され、そのばらつきも小さく、複数のノズルから均一な特性での吐出を行うことができ、十分な印字安定性を確保した液滴噴射装置を提供できる。
以上本発明によれば、ノズル圧電素子ギャップを精密に制御し印字の安定性をより向上し、高密度記録を行うことができる液滴噴射装置の製造方法、ならびに液滴噴射装置を提供することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
本発明の第1の実施例を図1、及び図2を用いて説明する。図1は本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法の工程図、図2は本実施例の液滴噴射装置を各々断面図として示すものである。
まず、図1を用いて本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法について説明する。
図1において、1はノズル形成部材、2は第1のマスク層、3は犠牲層、4は第1電極層、5は圧電層、6は第2電極層、7は筐体部材、8は第2のマスク層、9はマスク開口、10はノズル開孔、11は圧電素子、12は固定端、13は自由端、14はノズル圧電素子ギャップである。
まず図1(a)に示すように、ノズル形成部材1上に第1のマスク層2を形成し、さらに一部に犠牲層3を形成した。ノズル形成部材1としては厚さ300μm、(110)面方位のSi単結晶ウエハを用いた。さらにLP-CVD法によって窒化シリコン膜を300nm堆積し第1のマスク層2を表面に形成した。続いて、高周波スパッタ法により酸化シリコン膜を10μm堆積し、エッチング加工により不要部分を除去して犠牲層3を形成した。
続いて図1(b)に示すように、第1電極層4、圧電層5、第2電極層6を順に堆積した。第1電極層4は高周波スパッタ法によりTiを5nm、Ptを100nm順に堆積した。圧電層5はZnOを高周波スパッタ法により8μm堆積した。圧電層5の成膜条件は、ターゲットとしてZnO、スパッタリングガスとしてArに10%のOを添加したものを用い、全圧2Pa、基板温度200℃、高周波出力をターゲットに対して4W/cm印加した。第2電極層6は高周波スパッタ法によりPtを500nm堆積した。
続いて図1(c)に示すように、フォトリソグラフィーとエッチングによって第1電極層4、圧電層5、第2電極層6をパターニング加工し、圧電素子パターンを形成した。エッチングは第1電極層4および第2電極層6はArガスによるプラズマを用いたドライエッチング、圧電層5は酸性水溶液を用いたウェットエッチングで行った。圧電素子パターンは長さ500μm、幅100μmの矩形のカンチレバー型とした。また、不図示であるが、第1のマスク層2の、後述する筐体部材との接合箇所も除去してシリコン面を露出させた。
続いて図1(d)に示すように、ノズル形成部材1に対して、後述する筐体の一部を構成する筐体部材7を接合した。筐体部材7としてはパイレックス(登録商標)ガラス(コーニング社商標登録、#7740)を切削加工などで加工したものを用いた。接合はノズル形成部材1のシリコン露出面および筐体部材7を清浄化して重ね合せ、200℃に加熱し、両者の間に200Vの電圧を印可し、さらに押し付けて陽極接合した。
続いて図1(e)に示すように、ノズル形成部材1を圧電素子パターンを形成した面の裏面より研磨して厚さ30μmまで薄片化した。薄片化加工はラッピングマシンと研磨剤を用いた研磨により行い、凹凸やうねりを除去して平坦化した。また、研磨の際、研磨剤粒子径を段階的に微小なものにしていき、最終的にコロイダルシリカを用いて研磨面を鏡面仕上げした。
続いて図1(f)に示すように、ノズル形成部材1の研磨面に対して第2のマスク層8を形成した。第2のマスク層8はプラズマCVD法により窒化シリコン膜を厚さ300nm形成した。
続いて図1(g)に示すように、第2のマスク層8にマスク開口9を形成した。マスク開口9は1辺が25μmの正方形とした。マスク開孔9は、圧電素子部の自由端部分に対向する位置にすべて形成した。
続いて図1(h)に示すように、KOH水溶液を用いてノズル形成部材1をマスク開口9より異方性エッチングして、さらに第1のマスク層2の開口部分もエッチング除去し、ノズル開孔10を形成した。本実施例においてノズル形成部材1として用いた(110)面方位のシリコン単結晶は、表面に対してほぼ鉛直方向に異方性エッチングされ、断面が25μm×25μm、長さが30μmとなるように図で示した形状のノズル開孔10を形成した。
続いて図1(i)に示すように、圧電素子部及び筐体部材などの保護の必要な箇所を不図示のフォトレジストよりなる保護膜により保護したのち、犠牲層3をHF水溶液によるエッチングで除去し、圧電素子パターンの固定端12を除いて自由端13までをノズル形成部材1よりリリースして、圧電素子11をノズル圧電素子ギャップ13の間隙を有した形で形成した。圧電素子11は固定端より自由端までの長さを500μm、幅100μmとして形成し、ノズル圧電素子ギャップ14の間隔は10μmとなるようにした。また、圧電素子11は間隔が50μmとなるように複数個形成した。保護膜は本工程後に除去した。
なお、本実施例においては圧電素子、及びマスク開孔は、上記寸法、間隔をもって200組並列に形成した。
以上述べた製造方法により、本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製を行った。
以上のようにして作製したノズル圧電素子ギャップ部について、レーザー顕微鏡を用いてノズル圧電素子ギャップ13の間隙を測定したところ、すべての素子において10μmに対して±0.5ミクロン以内に形成できた。
以上述べた本実施例の製造方法によれば、ノズル圧電素子ギャップを精密に制御し、複数の素子において間隔のばらつきの極めて小さなものを作製することができた。
図2に、本実施例の製造方法により作製した液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部を用いた液滴噴射装置を示す。図2において、101はノズル形成部材、104は第1電極層、105は圧電層、106は第2電極層、107は筐体部材、110はノズル開孔、111は圧電素子、112は固定端、113は自由端、114はノズル圧電素子ギャップ、120はインク、121はインク槽、122はインク供給部、123はインク導入ガイド124はインク導入路、125は筐体、126はフィルタ、127はインク加熱機構、128及び129は大気連通部、130は解放端、131は配線、132はインク液滴である。また、本実施例の液滴噴射装置には、圧電素子に対して個別に制御された駆動電圧を印加する機構を設けた。
本実施例の液滴噴射装置においては、以下のようにしてインク液滴の噴射を行う。まず、インク加熱機構126に不図示の電源より電力を供給してインク供給部122及びインク槽121を、インクの溶解温度まで昇温する。このようにすることで、インク供給部122内のインク120は溶解し、フィルタ126を通過し、インク槽121に流入した。流入したインク120は、ノズル形成部材101、圧電素子111、インク導入ガイド124の間に形成されている狭い間隙であるインク導入路125を毛細管現象にて上昇し、インク導入路の解放端130近傍まで導入される。さらに、配線131より圧電素子111に個別に駆動電圧を印加して圧電素子の自由端113を図左右方向に変位せしめ、これによりノズル圧電素子ギャップ近傍のインク120に対して圧力を加え、ノズル開孔110よりインク液滴132として噴射するようにした。
本実施例の液滴噴射装置においては、複数のノズルから均一な特性での吐出を行うことができた。すなわち本実施例によれば、十分な印字安定性を確保した液滴噴射装置を提供することができた。
本発明の第2の実施例を図3、及び図4を用いて説明する。図3は本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法の工程図、図4は本実施例の液滴噴射装置を各々断面図として示すものである。
まず、図3を用いて本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法について説明する。
図3において、1はノズル形成部材、3は犠牲層、4は第1電極層、5は圧電層、6は第2電極層、7は筐体部材、10はノズル開孔、11は圧電素子、12は固定端、13は自由端、14はノズル圧電素子ギャップである。
まず図3(a)に示すように、ノズル形成部材1上に一部に犠牲層3を形成した。ノズル形成部材1としては厚さ50μmのSUS304板を鏡面研磨したものに高周波スパッタ法によりTiを200nm堆積して用いた。不要部分を不図示の絶縁体よりなるマスクでマスキングした後無電界めっきによりAuを10μm堆積し、不図示のマスキングを除去して犠牲層3を形成した。めっき浴は金塩として亜硫酸塩、還元剤としてアスコルビン酸を溶解した溶液を用い、溶液温度は60℃として行った。
続いて図3(b)に示すように、第1電極層4、圧電層5、第2電極層6を順に堆積した。第1電極層4は高周波スパッタ法によりTiを5nm、Ptを100nm順に堆積した。圧電層5はZnOを高周波スパッタ法により10μm堆積した。圧電層5の成膜条件は、ターゲットとしてZnO、スパッタリングガスとしてArに10%のOを添加したものを用い、全圧2Pa、基板温度200℃、高周波出力をターゲットに対して4W/cm印加した。第2電極層6は高周波スパッタ法によりPtを1μm堆積した。
続いて図3(c)に示すように、フォトリソグラフィーとエッチングによって第1電極層4、圧電層5、第2電極層6をパターニング加工し、圧電素子パターンを形成した。エッチングは第1電極層4および第2電極層6はArガスによるプラズマを用いたドライエッチング、圧電層5は酸性水溶液を用いたウェットエッチングで行った。圧電素子パターンは長さ700μm、幅150μmの矩形のカンチレバー型とした。
続いて図3(d)に示すように、ノズル形成部材1に対して、後述する筐体の一部を構成する筐体部材7を接合した。筐体部材7としてはパイレックス(登録商標)ガラス(コーニング社商標登録、#7740)を切削加工などで加工したものを用いた。接合はノズル形成部材1および筐体部材7を清浄化し、エポキシ系接着剤を塗布して重ねあわせ100℃に加熱し押し付けて接着した。
続いて図3(e)に示すように、ノズル形成部材1に対して放電加工を行い、断面が直径15μmの円形、長さが50μmとなるようにノズル開孔10を形成した。
続いて図3(f)に示すように、圧電素子部及び筐体部材などの保護の必要な箇所を不図示のフォトレジストよりなる保護膜により保護したのち、犠牲層3をKIおよびヨウ素を溶解した水溶液によるエッチングで除去し、圧電素子パターンの固定端12を除いて自由端13までをノズル形成部材1よりリリースして、圧電素子11をノズル圧電素子ギャップ13の間隙を有した形で形成した。圧電素子11は固定端より自由端までの長さを700μm、幅150μmとして形成し、ノズル圧電素子ギャップ14の間隔は10μmとなるようにした。また、圧電素子11は間隔が50μmとなるように複数個形成した。保護膜は本工程後に除去した。
なお、本実施例においては圧電素子、及びマスク開孔は、上記寸法、間隔をもって200組並列に形成した。
以上述べた製造方法により、本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製を行った。
以上のようにして作製したノズル圧電素子ギャップ部について、レーザー顕微鏡を用いてノズル圧電素子ギャップ13の間隙を測定したところ、すべての素子において10μmに対して±0.5ミクロン以内に形成できた。
以上述べた本実施例の製造方法によれば、ノズル圧電素子ギャップを精密に制御し、複数の素子において間隔のばらつきの極めて小さなものを作製することができた。
また、本実施例では前記ノズル形成部材として導電性材料を用いたことにより、圧電素子はノズル形成部材上に固定端が接合されて形成することより、ノズル形成部材と圧電素子の電極の電位を等電位にしておくことができるため、製造工程において静電力による張り付きは見られず、より高い歩留まりで液滴噴射装置を製造できた。
図4に、本実施例の製造方法により作製した液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部を用いた液滴噴射装置を示す。本実施例においては、ノズル圧電素子ギャップ部を除く液滴噴射装置の構成は実施例1と同様とした。
本実施例の液滴噴射装置においても実施例1と同様に、複数のノズルから均一な特性での吐出を行うことができた。すなわち本実施例によれば、十分な印字安定性を確保した液滴噴射装置を提供することができた。
本発明の第3の実施例を図3、及び図4を用いて説明する。図3は本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法の工程図、図4は本実施例の液滴噴射装置を各々断面図として示すものである。
まず、図3を用いて本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法について説明する。
図3において、1はノズル形成部材、3は犠牲層、4は第1電極層、5は圧電層、6は第2電極層、7は筐体部材、10はノズル開孔、11は圧電素子、12は固定端、13は自由端、14はノズル圧電素子ギャップである。
まず図3(a)に示すように、ノズル形成部材1上に一部に犠牲層3を形成した。ノズル形成部材1としては厚さ50μmのSUS304板を鏡面研磨したものに高周波スパッタ法によりTiを200nm堆積して用いた。犠牲層3は、感光性樹脂を10μmの厚さに塗布後、紫外線のパターン照射と現像により加工して不要部分を除去して犠牲層3を形成した。
続いて図3(b)に示すように、第1電極層4、圧電層5、第2電極層6を順に堆積した。第1電極層4は高周波スパッタ法によりTiを5nm、Ptを100nm順に堆積した。圧電層5はAlNをクラスターイオンビーム蒸着法により10μm堆積した。圧電層5の成膜条件は、蒸発源としてAlをもちい、Oを添加した窒素ガス雰囲気中において基板温度150℃で成膜した。第2電極層6は高周波スパッタ法によりPtを1μm堆積した。
続いて図3(c)に示すように、フォトリソグラフィーとエッチングによって第1電極層4、圧電層5、第2電極層6をパターニング加工し、圧電素子パターンを形成した。エッチングは第1電極層4および第2電極層6はArガスによるプラズマを用いたドライエッチング、圧電層5は酸性水溶液を用いたウェットエッチングで行った。圧電素子パターンは長さ700μm、幅150μmの矩形のカンチレバー型とした。
続いて図3(d)に示すように、ノズル形成部材1に対して、後述する筐体の一部を構成する筐体部材7を接合した。筐体部材7としてはパイレックス(登録商標)ガラス(コーニング社商標登録、#7740)を切削加工などで加工したものを用いた。接合はノズル形成部材1および筐体部材7を清浄化し、エポキシ系接着剤を塗布して重ねあわせ100℃に加熱し押し付けて接着した。
続いて図3(e)に示すように、ノズル形成部材1に対して放電加工を行い、断面が直径15μmの円形、長さが50μmとなるようにノズル開孔10を形成した。
続いて図3(f)に示すように、犠牲層3を有機溶剤によるエッチングで除去し、圧電素子パターンの固定端12を除いて自由端13までをノズル形成部材1よりリリースし、圧電素子11をノズル圧電素子ギャップ13の間隙を有した形で形成した。圧電素子11は固定端より自由端までの長さを700μm、幅150μmとして形成し、ノズル圧電素子ギャップ14の間隔は10μmとなるようにした。また、圧電素子11は間隔が50μmとなるように複数個形成した。
なお、本実施例においては圧電素子、及びマスク開孔は、上記寸法、間隔をもって200組並列に形成した。
以上述べた製造方法により、本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製を行った。
以上のようにして作製したノズル圧電素子ギャップ部について、レーザー顕微鏡を用いてノズル圧電素子ギャップ13の間隙を測定したところ、すべての素子において10μmに対して±0.5ミクロン以内に形成できた。
以上述べた本実施例の製造方法によれば、ノズル圧電素子ギャップを精密に制御し、複数の素子において間隔のばらつきの極めて小さなものを作製することができた。
また、本実施例では前記ノズル形成部材として導電性材料を用いたことにより、圧電素子はノズル形成部材上に固定端が接合されて形成することより、ノズル形成部材と圧電素子の電極の電位を等電位にしておくことができるため、製造工程において静電力による張り付きは見られず、より高い歩留まりで液滴噴射装置を製造できた。
図4に、本実施例の製造方法により作製した液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部を用いた液滴噴射装置を示す。本実施例においては、ノズル圧電素子ギャップ部を除く液滴噴射装置の構成は実施例1と同様とした。
本実施例の液滴噴射装置においても実施例1と同様に、複数のノズルから均一な特性での吐出を行うことができた。すなわち本実施例によれば、十分な印字安定性を確保した液滴噴射装置を提供することができた。
本発明の第4の実施例を図5、及び図6を用いて説明する。図5は本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法の工程図、図6は本実施例の液滴噴射装置を各々断面図として示すものである。
まず、図5を用いて本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法について説明する。図5において、1はノズル形成部材、2は第1のマスク層、3は犠牲層、4は第1電極層、5は圧電層、6は第2電極層、7は筐体部材、9はマスク開口、10はノズル開孔、11は圧電素子、12は固定端、13は自由端、14はノズル圧電素子ギャップ、15は異方性エッチング穴、16は犠牲層材料である。
まず図5(a)に示すように、ノズル形成部材1上に第1のマスク層2を形成した。ノズル形成部材1としては厚さ300μm、(100)面方位のSi単結晶ウエハを用いた。さらにLP-CVD法によって窒化シリコン膜を300nm堆積し第1のマスク層2を表面に形成した。
続いて図5(b)に示すように、第1のマスク層2にマスク開口9を形成した。マスク開口は一辺が3μmの矩形とした。
続いて図5(c)に示すように、TMAH水溶液をエッチング液として用いてノズル形成部材1をマスク開口9より異方性エッチングして、異方性エッチング穴15を形成した。本工程においては、マスク開口9より浸入したエッチング液はノズル形成部材1である(100)面方位のSi単結晶ウエハを異方性エッチングし、図で示すような逆四角錐にエッチングされた異方性エッチング穴15を形成した。また、本工程では第1のマスク層2は開口を有するメンブレン状に残した。異方性エッチング穴15は、一辺が30μm、深さがおよそ20μmに形成されるようにエッチング時間を選択した。本実施例の異方性エッチングは、TMAH濃度を10wt.%、液温を60℃として行った。
続いて図5(d)に示すように、ノズル形成部材1上の一部に犠牲層3を形成した。本実施例において、犠牲層として、高周波スパッタ法によりMgOを7μm堆積し、エッチング加工により不要部分を除去して犠牲層3を形成した。成膜に際しては、ターゲットとしてMgOを焼成したものを用い、ArとOを5:2に混合したガスで、ターゲットに対して高周波パワーが2.0W/cmとなるように印可し、基板温度は250℃とした。また、本実施例においては、犠牲層の成膜に際しては、基板を回転させるとともにターゲットから斜め方向よりスパッタ粒子が入射する位置に基板を配置してマスク開口9の開口をふさぐ方向に薄膜を堆積し、開口をふさとともにほぼ平坦な表面となるように形成した。なお、この際少量の犠牲層材料16がマスク開口9より浸入し異方性エッチング穴15内にも堆積した。
続いて図5(e)に示すように、第1電極層4、圧電層5、第2電極層6を順に堆積した。第1電極層4は高周波スパッタ法によりTiを5nm、Ptを100nm順に堆積した。圧電層5はPb(ZrTi(1−x))Oを3μm堆積して形成した。圧電層5の成膜条件は、ターゲットとしてPb1.1Zr0.5Ti0.5の比率で混合焼成したものを用い、ArとOを5:1に混合したガスで、ターゲットに対して高周波パワーが1.5W/cmとなるように印可し、基板温度は620℃として行った。第2電極層6は高周波スパッタ法によりPtを500nm堆積した。
続いて図5(f)に示すように、フォトリソグラフィーとエッチングによって第1電極層4、圧電層5、第2電極層6をパターニング加工し、圧電素子パターンを形成した。エッチングは第1電極層4および第2電極層6はArガスによるプラズマを用いたドライエッチング、圧電層5は酸性水溶液を用いたウェットエッチングで行った。圧電素子パターンは長さ200μm、幅50μmの矩形のカンチレバー型とした。また、不図示であるが、第1のマスク層2の、後述する筐体部材との接合箇所も除去してシリコン面を露出させた。
続いて図5(g)に示すように、ノズル形成部材1に対して、後述する筐体の一部を構成する筐体部材7を接合した。筐体部材7としてはパイレックス(登録商標)ガラス(コーニング社商標登録、#7740)を切削加工などで加工したものを用いた。接合はノズル形成部材1のシリコン露出面および筐体部材7を清浄化して重ね合せ、200℃に加熱し、両者の間に200Vの電圧を印可し、さらに押し付けて陽極接合した。
続いて図5(h)に示すように、ノズル形成部材1を圧電素子パターンを形成した面の裏面より研磨して厚さ15μmまで薄片化した。薄片化加工はラッピングマシンと研磨剤を用いた研磨により行い、凹凸やうねりを除去して平坦化した。また、研磨の際、研磨剤粒子径を段階的に微小なものにしていき、最終的にコロイダルシリカを用いて研磨面を鏡面仕上げした。また、本研磨工程によってノズル形成部材1の裏面に開口を形成し、ノズル開孔10を形成した。ノズル開孔10の径は10μmとした。
続いて図5(i)に示すように、圧電素子部及び筐体部材などの保護の必要な箇所を不図示のフォトレジストよりなる保護膜により保護したのち、リン酸水溶液を用いて第1のマスク層2およびMgOよりなる犠牲層3をエッチング除去し、圧電素子パターンの固定端12を除いて自由端13までをノズル形成部材1よりリリースして圧電素子11を、ノズル圧電素子ギャップ14の間隙を有した形で形成した。圧電素子11は固定端より自由端までの長さを200μm、幅50μmとして形成し、ノズル圧電素子ギャップ13の間隔は7μmとした。また、圧電素子12は間隔が30μmとなるように複数個形成した。保護膜は本工程後に除去した。また、図5(d)の工程で、異方性エッチング穴15内に堆積した犠牲層材料16は、本工程において犠牲層3および第1のマスク層2と共にエッチング除去された。
なお、本実施例においては圧電素子、及びマスク開孔は、上記寸法、間隔をもって200組並列に形成した。
以上述べた製造方法により、本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製を行った。
以上のようにして作製したノズル圧電素子ギャップ部について、レーザー顕微鏡を用いてノズル圧電素子ギャップ13の間隙を測定したところ、すべての素子において7μmに対して±0.5ミクロン以内に形成できた。
以上述べた本実施例の製造方法によれば、ノズル圧電素子ギャップを精密に制御し、複数の素子において間隔のばらつきの極めて小さなものを作製することができた。
さらに本実施例の液滴噴射装置の製造方法によれば、ノズル開孔と圧電素子の作製の位置あわせをノズル形成部材の同一面上で行うことが可能となり、精度良く位置あわせして形成することができた。このため実施例1と比較して、圧電素子及びノズル開孔を微小なものとしたにもかかわらず、位置あわせのずれによる素子不良や特性のばらつきはみられず、良好に作製を行うことができた。
図6に、本実施例の製造方法により作製した液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部を用いた液滴噴射装置を示す。本実施例においては、ノズル圧電素子ギャップ部を除く液滴噴射装置の構成は実施例1と同様とした。
本実施例の液滴噴射装置においては、複数のノズルから均一な特性での吐出を行うことができた。すなわち本実施例によれば、十分な印字安定性を確保した液滴噴射装置を提供することができた。
本発明の第5の実施例を図7、及び図8を用いて説明する。図7は本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法の工程図、図8は本実施例の液滴噴射装置を各々断面図として示すものである。
まず、図7を用いて本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法について説明する。図7において、1はノズル形成部材、2は第1のマスク層、3は犠牲層、4は第1電極層、5は圧電層、6は第2電極層、9はマスク開口、10はノズル開孔、11は圧電素子、12は固定端、13は自由端、14はノズル圧電素子ギャップ、15は異方性エッチング穴、16は犠牲層材料、17は凹部、18はメンブレンである。
まず図7(a)に示すように、ノズル形成部材1として不図示の熱酸化膜が200nm堆積された(100)面方位のSi単結晶ウエハを用い、これを通常の異方性エッチングで加工して一部に凹部17を形成した。凹部17は深さ150μmとなるようにエッチング条件を制御し、底部には厚さ20μmのSiよりなるメンブレン18を形成した。
続いて図7(b)に示すように、さらにLP-CVD法によって窒化シリコン膜を300nm堆積し第1のマスク層2をノズル形成部材1の凹部17を含む表面全体に形成した。
続いて図7(c)に示すように、第1のマスク層2にマスク開口9を形成した。マスク開口9の形成はFIB(集束イオンビーム)エッチング装置を用いて行い、マスク開口は一辺が3μmの矩形とした。
続いて図7(d)に示すように、ノズル形成部材1をマスク開口9より異方性エッチングして、異方性エッチング穴を形成した。本工程は実施例2と同様にして行ったが、エッチング時間を制御することにより異方性エッチング穴をノズル形成部材の裏面まで貫通させて裏面に開口を形成し、ノズル開孔10を形成した。ノズル開孔10の径は10μmとした。尚、本工程においては不図示の保護膜によってノズル形成部材のシリコン露出箇所を保護した状態で異方性エッチングを行い、終了後に保護膜は除去した。
続いて図7(e)に示すように、ノズル形成部材1のメンブレン上の凹部内側の一部上に犠牲層3を形成した。犠牲層としては、高周波スパッタ法によりMgOを7μm堆積し、エッチング加工により不要部分を除去して犠牲層3を形成した。成膜に際しては、実施例3と同様にして、基板を回転させるとともに、ターゲットから斜め方向よりスパッタ粒子が入射する位置に基板を配置して、マスク開口9の開口をふさぐ方向に薄膜を堆積し、開口をふさとともにほぼ平坦な表面となるように形成した。なお、この際少量の犠牲層材料16がマスク開口9より浸入しノズル開孔10内にも堆積した。また不要部分の除去は、フォトリソグラフィーとエッチングを組み合わせて行うが、本実施例においては凹部17の底部の加工を行うため、マスクとしてフォトレジストとしてSU−8(マイクロ ケム コーポレーション社)を用い、アスペクト比の大きなレジストパターンを形成してエッチング加工を行った。以下、本実施例における凹部17の底部の加工に係わるフォトリソグラフィー工程は同様にして行った。
続いて図7(f)に示すように、第1電極層4、圧電層5、第2電極層6を順に堆積した。第1電極層4は高周波スパッタ法によりTiを5nm、Ptを100nm順に堆積した。圧電層5はPb(ZrTi(1−x))Oを3μm堆積して形成した。圧電層5の成膜条件は、ターゲットとしてPb1.1Zr0.5Ti0.5の比率で混合焼成したものを用い、ArとOを5:1に混合したガスで、ターゲットに対して高周波パワーが1.5W/cmとなるように印可し、基板温度は620℃として行った。第2電極層6は高周波スパッタ法によりPtを500nm堆積した。
続いて図7(g)に示すように、フォトリソグラフィーとエッチングによって第1電極層4、圧電層5、第2電極層6をパターニング加工し、圧電素子パターンを形成した。エッチングは第1電極層4および第2電極層6はArガスによるプラズマを用いたドライエッチング、圧電層5は酸性水溶液を用いたウェットエッチングで行った。圧電素子パターンは長さ200μm、幅50μmの矩形のカンチレバー型とした。
続いて図7(h)に示すように、圧電素子部など保護の必要な部分を不図示のフォトレジストより成る保護膜により保護したのち、エッチング液としてリン酸水溶液を用いて第1のマスク層2およびMgOよりなる犠牲層3をエッチング除去し、圧電素子パターンの固定端12を除いて自由端13までをノズル形成部材1よりリリースして圧電素子11を、ノズル圧電素子ギャップ14の間隙を有した形で形成した。本実施例において本工程は、ノズル形成部材1に形成した凹部17について不図示のシール材をもちいて封止して圧電素子パターンならびに犠牲層を保護した状態にて、前記ノズル開孔よりエッチング液を導入して犠牲層のエッチング除去を行った。圧電素子11は固定端より自由端までの長さを200μm、幅50μmとして形成し、ノズル圧電素子ギャップ13の間隔は7μmとした。また、圧電素子12は間隔が30μmとなるように複数個形成した。保護膜は本工程後に除去した。また、図7(d)の工程で、異方性エッチング穴15内に堆積した犠牲層材料16は、本工程において犠牲層3および第1のマスク層2と共にエッチング除去された。
なお、本実施例においては圧電素子、及びマスク開孔は、上記寸法、間隔をもって200組並列に形成した。
以上述べた製造方法により、本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製を行った。
以上のようにして作製したノズル圧電素子ギャップ部について、レーザー顕微鏡を用いてノズル圧電素子ギャップ13の間隙を測定したところ、すべての素子において7μmに対して±0.5ミクロン以内に形成できた。
以上述べた本実施例の製造方法によれば、ノズル圧電素子ギャップを精密に制御し、複数の素子において間隔のばらつきの極めて小さなものを作製することができた。
さらに、実施例1乃至実施例3で示したノズル形成部材の薄い板に対して別途補強材を接合した場合と比較して接合箇所を持たない構成となり、接合箇所の剥離などの問題を回避してより歩留まりの高い製造方法が提供できた。
図8に、本実施例の製造方法により作製した液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部を用いた液滴噴射装置を示す。本実施例においては、ノズル圧電素子ギャップ部を除く液滴噴射装置の構成は実施例1と同様とした。
本実施例の液滴噴射装置においては、複数のノズルから均一な特性での吐出を行うことができた。すなわち本実施例によれば、十分な印字安定性を確保した液滴噴射装置を提供することができた。
さらに本実施例の液滴噴射装置によれば、犠牲層及び圧電素子をメンブレンの凹部内側に形成することにより、ノズル開孔の液滴の吐出側をメンブレンの凹部と反対側になるようにすることができるため、ノズル開孔と記録用紙の間の距離を短くすることができる、高精細の記録には好適な液滴噴射装置を作製することができた。
本発明の第6の実施例を図9、及び図10を用いて説明する。図9は本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法の工程図、図10は本実施例の液滴噴射装置を各々断面図として示すものである。
まず、図9を用いて本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法について説明する。図9において、1はノズル形成部材、2は第1のマスク層、3は犠牲層、4は第1電極層、5は圧電層、6は第2電極層、9はマスク開口、10はノズル開孔、11は圧電素子、12は固定端、13は自由端、14はノズル圧電素子ギャップ、15は異方性エッチング穴、16は犠牲層材料、17は凹部、18はメンブレン、19は大気連通部マスク開口、20は大気連通部である。
まず図9(a)に示すように、ノズル形成部材1として(100)面方位のSi単結晶ウエハを用い、これを通常の異方性エッチングで加工して一部に凹部17を形成した。凹部17は深さ150μmとなるようにエッチング条件を制御し、底部には厚さ20μmのSiよりなるメンブレン18を形成した。
続いて図9(b)に示すように、さらにLP-CVD法によって窒化シリコン膜を300nm堆積し第1のマスク層2をノズル形成部材1の凹部17を含む表面全体に形成した。
続いて図9(c)に示すように、第1のマスク層2にマスク開口9、及び大気連通部マスク開口19を形成した。マスク開口9並びに大気連通部マスク開口19の形成はFIB(集束イオンビーム)エッチング装置を用いて行い、マスク開口9は一辺が2μmの矩形、大気連通部マスク開口19は一辺が5μmの矩形とした。
続いて図9(d)に示すように、ノズル形成部材1をマスク開口9並びに大気連通部マスク開口19より異方性エッチングして、異方性エッチング穴を形成した。本工程は実施例2と同様にして行ったが、エッチング時間を制御することにより異方性エッチング穴をノズル形成部材の裏面まで貫通させて裏面に開口を形成し、ノズル開孔10、並びに大気連通部19を形成した。ノズル開孔10は一辺が7μmの矩形、並びに大気連通部19は一辺が10μmの矩形とした。
続いて図9(e)に示すように、ノズル形成部材1上の一部に犠牲層3を形成した。本実施例において、犠牲層として、高周波スパッタ法によりMgOを10μm堆積し、エッチング加工により不要部分を除去して犠牲層3を形成した。成膜に際しては、実施例3と同様にして、基板を回転させるとともに、ターゲットから斜め方向よりスパッタ粒子が入射する位置に基板を配置して、マスク開口9、及び大気連通部マスク開口19の開口をふさぐ方向に薄膜を堆積し、開口をふさとともにほぼ平坦な表面となるように形成した。なお、この際少量の犠牲層材料16がマスク開口9及び大気連通部マスク開口19より浸入しノズル開孔10及び大気連通部20内にも堆積した。また不要部分の除去は、フォトリソグラフィーとエッチングを組み合わせて行うが、本実施例においては凹部17の底部の加工を行うため、マスクとしてフォトレジストとしてSU−8(マイクロ ケム コーポレーション社)を用い、アスペクト比の大きなレジストパターンを形成してエッチング加工を行った。以下、本実施例における凹部17の底部の加工に係わるフォトリソグラフィー工程は同様にして行った。
続いて図9(f)に示すように、第1電極層4、圧電層5、第2電極層6を順に堆積した。第1電極層4は高周波スパッタ法によりTiを5nm、Ptを100nm順に堆積した。圧電層5はPb(ZrTi(1−x))Oを3μm堆積して形成した。圧電層5の成膜条件は、ターゲットとしてPb1.1Zr0.5Ti0.5の比率で混合焼成したものを用い、ArとOを5:1に混合したガスで、ターゲットに対して高周波パワーが1.5W/cmとなるように印可し、基板温度は620℃として行った。第2電極層6は高周波スパッタ法によりPtを500nm堆積した。
続いて図9(g)に示すように、フォトリソグラフィーとエッチングによって第1電極層4、圧電層5、第2電極層6をパターニング加工し、圧電素子パターンを形成した。エッチングは第1電極層4および第2電極層6はArガスによるプラズマを用いたドライエッチング、圧電層5は酸性水溶液を用いたウェットエッチングで行った。圧電素子パターンは長さ200μm、幅50μmの矩形のカンチレバー型とした。
続いて図9(h)に示すように、圧電素子部など保護の必要な部分を不図示のフォトレジストより成る保護膜により保護したのち、エッチング液としてリン酸水溶液を用いて第1のマスク層2およびMgOよりなる犠牲層3をエッチング除去し、圧電素子パターンの固定端12を除いて自由端13までをノズル形成部材1よりリリースして圧電素子11を、ノズル圧電素子ギャップ14の間隙を有した形で形成した。本実施例において本工程は、ノズル形成部材1に形成した凹部17について不図示のシール材をもちいて封止して圧電素子パターンならびに犠牲層を保護した状態にて、前記ノズル開孔、並びに大気連通部よりエッチング液を導入して犠牲層のエッチング除去を行った。圧電素子11は固定端より自由端までの長さを200μm、幅50μmとして形成し、ノズル圧電素子ギャップ13の間隔は10μmとした。また、圧電素子12は間隔が30μmとなるように複数個形成した。保護膜は本工程後に除去した。また、図9(d)の工程で、異方性エッチング穴内に堆積した犠牲層材料16は、本工程において犠牲層3および第1のマスク層2と共にエッチング除去された。なお、本実施例においては圧電素子、及びマスク開孔は、上記寸法、間隔をもって200組並列に形成した。
以上述べた製造方法により、本実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製を行った。
以上のようにして作製したノズル圧電素子ギャップ部について、レーザー顕微鏡を用いてノズル圧電素子ギャップ13の間隙を測定したところ、すべての素子において7μmに対して±0.5ミクロン以内に形成できた。
以上述べた本実施例の製造方法によれば、ノズル圧電素子ギャップを精密に制御し、複数の素子において間隔のばらつきの極めて小さなものを作製することができた。
さらに、実施例1、及び実施例2で示したノズル形成部材の薄い板に対して別途補強材を接合した場合と比較して接合箇所を持たない構成となり、接合箇所の剥離などの問題を回避してより歩留まりの高い製造方法が提供できる。
さらに、犠牲層のエッチング除去工程において、前記ノズル開孔、並びに大気連通部よりエッチング液を導入して犠牲層のエッチング除去を行ったことにより、素子全体をエッチング液に浸漬してエッチングを行った他実施例と比較して前記エッチング液が圧電素子などに接触する時間を減少させることができ、圧電素子に形成した保護膜の劣化やピンホールからのエッチング液の浸入による圧電素子の劣化や破壊を低減し、より高い歩留まりで液滴噴射装置の製造を行うことができた。
図10に、本実施例の製造方法により作製した液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部を用いた液滴噴射装置を示す。本実施例においては、ノズル圧電素子ギャップ部を除く液滴噴射装置の構成は実施例1と同様とした。
本実施例の液滴噴射装置においては、複数のノズルから均一な特性での吐出を行うことができた。すなわち本実施例によれば、十分な印字安定性を確保した液滴噴射装置を提供することができた。
さらに本実施例の液滴噴射装置によれば、犠牲層及び圧電素子をメンブレン上の凹部内側に形成することにより、ノズル開孔の液滴の吐出側をメンブレンの凹部と反対側になるようにすることができるため、ノズル開孔と記録用紙の間の距離を短くすることができる、高精細の記録には好適な液滴噴射装置を作製することができた。
さらに本実施例の液滴噴射装置によれば、大気連通部をノズル形成と同時に形成することができるため、液滴噴射装置全体として工程数が減少し、より低コストにて液滴噴射装置を提供できた。さらに、大気連通部がノズル形成部材の圧電素子と対向した部分であって前記ノズル開孔に対して圧電素子の固定端側に設けられたことにより、メニスカスが前記大気連通部のごく近傍に形成され、その位置を圧電素子の固定端側に極めて精度良く設定することができるため、圧電素子周囲のインクの状態を精度良く制御可能となり、より安定な吐出特性を得た。
第1の実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法の工程図 第1の実施例の液滴噴射装置 第2、第3の実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法の工程図 第2、第3の実施例の液滴噴射装置 第4の実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法の工程図 第4の実施例の液滴噴射装置 第5の実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法の工程図 第5の実施例の液滴噴射装置 第6の実施例の液滴噴射装置のノズル圧電素子ギャップ部の作製方法の工程図 第6の実施例の液滴噴射装置 従来例の液滴噴射装置
符号の説明
1、101、201 ノズル形成部材
2 第1のマスク層
3 犠牲層
4、104、204 第1電極層
5、105、205 圧電層
6、106、206 第2電極層
7、107、207 筐体部材
8 第2のマスク層
9 マスク開口
10、110、210 ノズル開孔
11、111、211 圧電素子
12、112、212 固定端
13、113、213 自由端
14、114、214 ノズル圧電素子ギャップ
15 異方性エッチング穴
16 犠牲層材料
17 凹部
18 メンブレン
19 大気連通部マスク開口
20 大気連通部
120、220 インク
121、221 インク槽
122、222 インク供給部
123、223 インク導入ガイド
124、224 インク導入路
125、225 筐体
126、226 フィルタ
127、227 インク加熱機構
128、129、228、229 大気連通部
130、230 解放端
131、231 配線
132、232 インク液滴
233 スペーサー

Claims (39)

  1. 複数のノズル開孔を有するノズル形成部材と、前記ノズル開孔の各々と対向してインク中に設けられた複数の圧電素子を有し、該ノズル形成部材と圧電素子が所定の間隔のノズル圧電素子ギャップをもって配置された構成を有する液滴噴射装置の製造方法であって、少なくとも、
    (1)ノズル形成部材にノズル開孔を形成する工程
    (2)ノズル形成部材上に、後工程でのエッチング除去によりノズル圧電素子ギャップを形成するための犠牲層を形成する工程
    (3)前記犠牲層上に形成されかつノズル形成部材上に固定端が接合された圧電素子を形成する工程
    (4)前記犠牲層をエッチング除去しノズル圧電素子ギャップを形成する工程
    を有することを特徴とする液滴噴射装置の製造方法。
  2. 前記ノズル形成部材にノズル開孔を形成する工程が、
    (1)ノズル形成部材上にマスク層を形成する工程
    (2)マスク層に微小なマスク開口を形成する工程
    (3)マスク開口よりノズル形成部材をエッチングしてエッチング穴を形成する工程
    を少なくとも有し、概工程後に前記マスク層上に犠牲層ならびに圧電素子を形成する工程を行うことを特徴とする、請求項1記載の液滴噴射装置の製造方法。
  3. 前記ノズル形成部材の一部をエッチングもしくは切削により加工して凹部ならびにメンブレンを形成し、前記メンブレン上に犠牲層および圧電素子、ノズル開孔の形成を行うことを特徴とする、請求項1記載の液滴噴射装置の製造方法。
  4. 請求項3の液滴噴射装置の製造方法であって、犠牲層および圧電素子を前記メンブレン上の凹部内側に形成することを特徴とする液滴噴射装置の製造方法。
  5. 前記犠牲層をエッチング除去しノズル圧電素子ギャップを形成する工程において、前記ノズル開孔よりエッチング液を導入して犠牲層のエッチング除去を行うことを特徴とする、請求項1記載の液滴噴射装置の製造方法。
  6. 前記ノズル形成部材に大気連通部を形成する工程を有することを特徴とする、請求項1記載の液滴噴射装置の製造方法。
  7. 前記大気連通部が、ノズル形成部材の圧電素子と対向した部分であって前記ノズル開孔に対して圧電素子の固定端側に形成されてなることを特徴とする、請求項6記載の液滴噴射装置の製造方法。
  8. 前記犠牲層をエッチング除去しノズル圧電素子ギャップを形成する工程において、前記大気連通部よりエッチング液を導入して犠牲層のエッチング除去を行うことを特徴とする、請求項6乃至請求項7記載の液滴噴射装置の製造方法。
  9. 前記犠牲層が気相からの犠牲層材料の堆積によって形成されたものであることを特徴とする、請求項1記載の液滴噴射装置の製造方法。
  10. 前記犠牲層が液相からの犠牲層材料の堆積によって形成されたものであることを特徴とする、請求項1記載の液滴噴射装置の製造方法。
  11. 前記犠牲層が犠牲層材料の塗布によって形成されたものであることを特徴とする、請求項1の液滴噴射装置の製造方法。
  12. 前記犠牲層の厚さが1μm乃至50μmであることを特徴とする、請求項1記載の液滴噴射装置の製造方法。
  13. 前記犠牲層材料として有機材料を用いることを特徴とする、請求項1記載の液滴噴射装置の製造方法。
  14. 前記犠牲層材料として用いる有機材料が感光性樹脂であることを特徴とする、請求項13記載の液滴噴射装置の製造方法。
  15. 前記犠牲層材料として無機材料を用いることを特徴とする、請求項1記載の液滴噴射装置の製造方法。
  16. 前記犠牲層材料として用いる無機材料がMgOであることを特徴とする、請求項15記載の液滴噴射装置の製造方法。
  17. 前記犠牲層材料として用いる無機材料が酸化シリコンであることを特徴とする、請求項15記載の液滴噴射装置の製造方法。
  18. 前記犠牲層材料として用いる無機材料がポリシリコンであることを特徴とする、請求項15記載の液滴噴射装置の製造方法。
  19. 前記犠牲層材料として用いる無機材料が金属であることを特徴とする、請求項15記載の液滴噴射装置の製造方法。
  20. 複数のノズル開孔を有するノズル形成部材と、前記ノズル開孔の各々と対向してインク中に設けられた複数の圧電素子を有し、該ノズル形成部材と圧電素子が所定の間隔のノズル圧電素子ギャップをもって配置された構成を有する液滴噴射装置であって、圧電素子の固定端がノズル形成部材に固定され、圧電素子の自由端とノズル形成部材の間に犠牲層厚さ分のノズル圧電素子ギャップを有する構成を有することを特徴とする液滴噴射装置。
  21. 前記ノズル形成部材の厚さが1μm乃至50μmであることを特徴とする、請求項20記載の液滴噴射装置。
  22. 前記ノズル形成部材として、半導体材料を用いることを特徴とする、請求項20記載の液滴噴射装置。
  23. 前記ノズル形成部材として用いる半導体材料がシリコン単結晶であることを特徴とする、請求項22記載の液滴噴射装置。
  24. 前記ノズル形成部材として導電性材料を用いることを特徴とする、請求項20記載の液滴噴射装置。
  25. 前記ノズル形成部材として用いる導電性材料が金属であることを特徴とする、請求項24記載の液滴噴射装置。
  26. 前記ノズル形成部材として絶縁性材料を用いることを特徴とする、請求項20記載の液滴噴射装置。
  27. 前記ノズル形成部材として用いる絶縁性材料が感光性樹脂であることを特徴とする、請求項26記載の液滴噴射装置。
  28. 前記ノズル形成部材として用いる絶縁性材料がガラス材料であることを特徴とする、請求項26記載の液滴噴射装置。
  29. 前記ノズルの開孔面積が1×10−11m乃至1×10−9mであることを特徴とする、請求項20記載の液滴噴射装置。
  30. 前記圧電素子の厚さが1μm乃至50μmであることを特徴とする、請求項20記載の液滴噴射装置。
  31. 前記圧電素子に用いる圧電層材料としてペロブスカイト系酸化物圧電材料を用いることを特徴とする、請求項20記載の液滴噴射装置。
  32. 前記ノズル圧電素子ギャップの間隔が1μm乃至50μmであることを特徴とする、請求項20記載の液滴噴射装置。
  33. 前記ノズル形成部材の一部をエッチングもしくは切削により加工して凹部ならびにメンブレンを形成し、前記メンブレン上に犠牲層および圧電素子、ノズル開孔を形成したことを特徴とする、請求項20記載の液滴噴射装置。
  34. 前記犠牲層および圧電素子を前記メンブレン上の凹部内側に設けた形成することを特徴とする、請求項33記載の液滴噴射装置。
  35. 前記ノズル形成部材に大気連通部を有することを特徴とする、請求項20記載の液滴噴射装置。
  36. 前記大気連通部がノズル形成部材の圧電素子と対向した部分であって前記ノズル開孔に対して圧電素子の固定端側に設けられたことを特徴とする、請求項35記載の液滴噴射装置。
  37. 前記大気連通部の開孔面積が、前記ノズル開孔の開孔面積よりも大きいことを特徴とする、請求項35記載の液滴噴射装置。
  38. 前記大気連通部の開孔面積が、5×10−11m乃至5×10−7mであることを特徴とする、請求項35記載の液滴噴射装置。
  39. 前記圧電素子に対して個別に制御された駆動電圧を印加する機構を設けたことを特徴とする、請求項20記載の液滴噴射装置。
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JP2010083134A (ja) * 2008-09-30 2010-04-15 Samsung Electro-Mechanics Co Ltd インクジェットヘッド及びその製造方法

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