JP2008081735A - 竹粉および/または木粉・熱可塑性樹脂複合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 竹粉および/または木粉と熱可塑性高分子とからなる高分子複合体であって、竹粉および/または木粉を熱可塑性高分子と共に、機械的に粉砕する操作を行なうことにより複合体粉末とし、ついでこれを溶融混練し、さらに、該混練物に対して、圧縮あるいは押し出しによって成形体としたことを特徴とする分子レベルで複合化した竹粉および/または木粉・熱可塑性樹脂複合体。竹粉および/または木粉として湿式または乾式で粉砕する前処理、あるいは乾式と湿式を組み合わせて粉砕する前処理を行ったものを用いる。
【選択図】 図2
Description
本発明の課題は、竹・木粉と熱可塑性樹脂とから製造される複合体に竹・木粉の持つ抗酸化性、抗菌活性が長期間安定に発現する構造を導入し、併せて成形性にも優れた竹・木粉の熱可塑性樹脂複合体を提供することである。
本発明は、植物資源の全体的な活用により、長期間の使用につれて、また洗濯の繰返しにつれて、ゆるやかに抗菌剤が消費されまたは落ちるという、抗酸化性、抗菌性の低下が緩やかである植物資源加工品を提供することができる。
本発明は、竹・木粉と熱可塑性樹脂とから製造される複合体に竹・木粉の持つ抗酸化性、抗菌活性が長期間安定に発現する構造を導入し、併せて成形性にも優れた竹・木粉の熱可塑性樹脂複合体を提供することができる。竹粉および/または木粉として、湿式で粉砕する前処理、あるいは乾式と湿式を組み合わせて粉砕する前処理を行ったものを用いることによって、竹粉および/または木粉をナノサイズまで微細化(フィブリル化)することに成功し、この微細化繊維状粒子を使用して、複合体を作成したところ、より均一に分散し、機械物性も良好な複合体が得られる。
リグニンは、木材の主要成分の1つで、セルロースと強固に結合している。すなわち、リグニンは、木材骨格の主要部分を成す物質である。植物バイオマス中のリグニンは、セルロース、ヘミセルロース、フェルラ酸等と強固で複雑なマトリックス構造を形成している。これにより、構造性多糖は加水分解に対し著しく抵抗性を増している。リグニンを木材骨格から除去(抽出)するためには、例えば、パルプを製造する工程で用いられているように、非常に強い塩基性の水溶液に浸漬させる必要がある。しかしながら、分子量が500〜50000程度と、比較的小さいリグニンは、例えば、0.25mol/l以下の低濃度の塩基性溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液等で容易に抽出することができる。このように抽出されるリグニン又はその配糖体およびこれらの混合物を水溶性リグニンまたは低分子リグニンと称する。水溶性リグニンは、ヒドロキシフェニルプロパン等を基本単位としたポリフェノール化合物であり、癌の原因と言われている活性酸素を除去することができる物質である。
竹の粉末化は、グラインダーなどで粉末処理後、大きい粒子を除くためにふるい分けを行う。例えば粒径が300μm以下となるようふるい分けした後に乾燥処理を行う。乾燥処理の方法は特に限定されないが、加温した状態で一晩程度減圧乾燥を行うと効率よく乾燥できる。よく乾燥した竹粉末をボールミルなどでさらに粉砕処理したもの(平均粒度5〜500μm)の竹粉末を本発明の原料に用いる。ボールミルなどによる処理を行った後、乾燥竹粉末を保管しておいて使用することも可能であるが、このような微粉末化後は取り扱いが困難となるなどの問題を生じやすいため、製造するとただちに複合体の製造に用いることが望ましい。
また、竹粉を親和性溶媒下粉砕するという前処理を施すことで、竹粉をナノサイズまで微細化(フィブリル化)することができる。ナノパーティクルは狭義にはシングルナノ(1nm以上10nm未満)から100nm程度までとされる場合が多いが、広義にはnm領域(1nm以上1μm未満)とサブナノの領域の粒子を全体的に含めてナノパーティクルと呼ばれることがある。本発明においては広義で考え、1μm未満の繊維径をもつ微細化繊維状粒子をナノ微粒子という。この微細化繊維状粒子〔超微粒子(ナノファイバー)〕を使用して,上記と同様な複合体を作成したところ、より均一に分散した複合体が得られ、複合体の機械物性も良好なことが判明した。
溶媒は,セルロースに対して親和性溶媒/水素結合性溶媒、あるいは膨潤性溶媒のもので、具体的には、水、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが例示される。竹粉の湿式粉砕は乾式粉砕で前粉砕した後に湿式でさらに粉砕することができる。これは単に効率の問題である。
木粉についても、竹粉と同様に、親和性溶媒、水素結合性溶媒、あるいは膨潤性溶媒をもちいて、あらかじめ、湿式処理することによって、より微細化した繊維状粒子を用いてもよい。
粉砕、混合、混練および圧延から選ばれた少なくとも一種の処理を行うとは、衝撃力および/又はせん断力および/又は摩擦力および/又は圧縮力等の多様な力で、破壊、および/又は、凝着、および/又は、変形の繰り返しを、竹粉末と熱可塑性高分子とに与えることである。具体的には、回転ボールミル、振動型ボールミル、遊星ボールミル等の媒体型の粉砕機、バンバリーミキサー等の撹拌羽根型の機械、又はプレス(圧延)の繰り返し等で可能である。これらの組み合わせでもかまわない。処理条件は、処理機械の種類、高分子類の種類等によって大幅に異なるため限定できない。
竹粉末と熱可塑性高分子に、必要に応じ竹粉末に対する親和性を有する可塑剤を加え、竹粉末を構成するセルロース系高分子を膨潤させた状態で、機械的に粉砕する操作を行なうことにより、竹粉末を構成するセルロース系高分子と熱可塑性高分子が分子レベルで複合化した状態である複合体を好適に作製することができる。
(用いた材料)
竹材(茎部分)
ポリエチレン:三井住友化学社製HDPE ハイゼックス7000FP、粉末状
可塑剤:関東化学(株) フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(以下、可塑剤と記す)
(竹材の前処理)
1) 竹材をグラインダーで粉末化後、粒径300μm 以下にふるいわけした(以下、竹微粉末と記す。)。
2) 1)で調整した竹微粉末を40℃下、一晩減圧乾燥を行うことにより、水分を徹底的に除去した。
(複合体調整)
3) よく乾燥した竹微粉末を以下に記した装置と粉砕条件下、機械的に粉砕処理した。
装置:(独)フリッチェ社製、遊星型ボールミル装置(p−5)
専用容器一つに対し、専用ボール(15mmφ)15 個、(容器,ボールとも窒化ケイ素製)
粉砕条件:10 分粉砕−10 分休止の繰り返し、実質粉砕時間2 時間(処理時間4 時間)。
4) 粉砕終了後、ポリエチレン粉末、可塑剤を以下の組成比(表1)となるように3)の容器中の竹微粉末に添加した(No.1−3)。対照実験として、可塑剤無添加の場合も同時に調整した(No.4)。
(複合体シート成形)
6)5)で得た複合粉末3gを熱プレス機(東洋精機,minitest press)にセットし、160℃、10MPaの条件でプレスし、シート状物を得た(図1)。
得られた複合体シートはイソプロピルアルコールを用いて可塑剤を抽出したあと、分析を行った。
7)複合体中ポリエチレンの熱分析(示差走査型熱量計、パーキンエルマー社製、DSC−7)
(表2,図2,3)
このことはポリエチレンの結晶サイズあるいは結晶完全度が竹含有量に依存し低下していることを示している。
またポリエチレンの結晶融解熱量は竹含有量増加によって減少した。このことは竹含有量に依存し,ポリエチレン結晶量が減少することを示している。
可塑剤無添加の場合:ポリエチレンの結晶融解温度結晶融解熱は減少した。可塑剤添加の場合と同様、複合化によって、結晶サイズの減少、結晶量減少、を示した。
8)13CNMR
によるポリエチレンの結晶化度算出
13CNMR
によって観測されるポリエチレン結晶由来のピークと非晶性由来ピークの面積比から、各複合体中のポリエチレンの結晶化度をピーク分離法によって算出した(表3)。
また結晶融解熱量値が特異的であった竹含有量50%(竹/PE=5/5)のものは、最も結晶化度が低下していた。
以上の分析結果は竹微粉末とポリエチレンは機械的処理によって、非常によく相溶し、部分的に分子レベルで複合化していること示すものである。
竹/PE複合体熱プレスシートの成形条件と成形性を表4に示した。
成形条件
A 140℃、2分、10MPa
B 160℃、4分、10MPa
◎:膜厚がほぼ一定で,均質で,透明性がある
○:膜厚がほぼ一定で,均質である
△:膜厚は一定であるが,やや不均質で同心円方向にムラがある
×:膜厚は一定であるが,やや不均質で同心円方向にムラがあり,形状にひずみがある。
(竹材の前処理)
竹材をグラインダーで粉末化後、親和性溶媒(エチレングリコール)下粉砕することにより、ナノサイズまで微細化(フィブリル化)した微細化繊維状粒子〔超微粒子(ナノファイバー)〕を得た。図4に、乾式粉砕の顕微鏡写真(5,000倍)と湿式粉砕の微細化した竹粉の顕微鏡写真(5,000倍と60,000倍)を添付する。
(複合体調整)
2)この超微粒子を使用して、実施例1のフタル酸ジ−2−エチルヘキシルをマレイン化PPに換えて実施例1と同様な複合体を作成した。フタル酸ジ−2−エチルヘキシルとマレイン化PPとで相違するので、実施例1との直接の比較はできないが、実施例1のものよりもより均一に分散した複合体が得られた。
(複合体シート成形)
3)2)で得た複合粉末を用いて実施例1と同様にシート状物を作成した。乾式粉砕と湿式粉砕の竹粉砕複合物シートを作成した。乾式粉砕の竹粉より、湿式粉砕の竹粉シートの方が、優れた物性であった。また、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルとマレイン化PPとで相違するので、実施例1との直接の比較はできないが、湿式粉砕の竹粉シートは、実施例1のものよりも機械物性が良好なシート状物が得られた。
その理由として、均一な分散と界面接着性の二つの原因が考えられる。詳細は、(ア)平均粒径が小さいので、均一な分散が可能と成った。(イ)比表面積が大きいことは、表面に存在するセルロース由来の水酸基が多いことを意味する。したがって、より頻繁にマレイン化PPと結合できる。このことは竹粒子と樹脂との界面での接着性が増加することwp意味しており、強度が増加する。(ウ)表面が粗くなっている(多孔化している)ので、分子鎖の物理的なからみ合いの効果も寄与する。(エ)粒子自体が高結晶性=高弾性体であるから、複合化した材料もその性質を受け継ぎ、補強剤として、より優れている。
以上の結果は、DOP系において作成した複合シートでも、同様な結果が推測される。
Claims (7)
- 竹粉および/または木粉と熱可塑性高分子とからなる高分子複合体であって、竹粉および/または木粉を熱可塑性高分子と共に、機械的に粉砕する操作を行なうことにより複合体粉末とし、ついでこれを溶融混練し、さらに、該混練物に対して、圧縮あるいは押し出しによって成形体としたことを特徴とする分子レベルで複合化した竹粉および/または木粉・熱可塑性樹脂複合体。
- 竹粉および/または木粉として湿式または乾式で粉砕する前処理、あるいは乾式と湿式を組み合わせて粉砕する前処理を行ったものを用いる請求項1に記載の竹粉および/または木粉・熱可塑性樹脂複合体。
- 可塑剤の存在下に熱可塑性高分子と共に上記の機械的に粉砕を行う請求項1または2に記載の竹粉および/または木粉・熱可塑性樹脂複合体。
- 熱可塑性樹脂がポリエチレンである請求項1、2または3に記載の竹粉および/または木粉・熱可塑性樹脂複合体。
- 可塑剤がフタル酸エステル類である請求項3または4に記載の竹粉および/または木粉・熱可塑性樹脂複合体。
- 成形体がシート状または溶融成形体である請求項1ないし5のいずれかに記載の竹粉および/または木粉・熱可塑性樹脂複合体。
- さらに、シート状に成形したものを一軸または二軸延伸をしたものである請求項6に記載の竹粉および/または木粉・熱可塑性樹脂複合体。
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