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JP2008074969A - 接着剤組成物 - Google Patents

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JP2008074969A
JP2008074969A JP2006256108A JP2006256108A JP2008074969A JP 2008074969 A JP2008074969 A JP 2008074969A JP 2006256108 A JP2006256108 A JP 2006256108A JP 2006256108 A JP2006256108 A JP 2006256108A JP 2008074969 A JP2008074969 A JP 2008074969A
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Kazuji Kageishi
一二 影石
Ariyoshi Ando
有美 安藤
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Toray Fine Chemicals Co Ltd
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Toray Fine Chemicals Co Ltd
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Abstract

【課題】エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート化合物および硬化剤としてのジアミン化合物またはビス(アミノ)アルキルピペラジンを含有する硬化性(メタ)アクリレート変性エポキシ樹脂からなる接着剤組成物を提供する。
【解決手段】下記構造式で示される繰り返し単位を分子中に有する数平均分子量2〜50万のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、および、硬化剤とからなる接着剤組成物。
Figure 2008074969

(ただし、Rは炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10の整数を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性、耐水性などに優れた性能を発揮する新規な接着剤を提供するものである。
エポキシ接着剤は機械的強度が高く、種々基材の接着性、耐熱性や耐薬品性に優れるため汎用から構造用接着剤用途まで広く使用されている。エポキシ接着剤は、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性が高いことから、一部は電子材料用接着剤として、また光学部材用接着剤としても使用されている。
また、エポキシ接着剤は、N,N―ジメチルプロピルアミンなどのアミノ化合物を硬化剤とする室温硬化(塗料、接着剤に使用されている)から、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの酸無水物を硬化剤とする高温硬化タイプ(電気材料に使用されている)まで幅広い硬化特性、諸物性のコントロールが可能であり、適用範囲が広いのが特徴である。さらには、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、望ましくは、脂環式エポキシ樹脂などは、ヨードニウム塩などの酸発生剤を開始剤としてカチオン硬化され、貯蔵安定性、ポットライフ調整等が比較的容易で、短時間硬化できる塗料、接着剤などに応用されている。
アクリル樹脂は、耐候性や透明性に優れ、物性調整が比較的容易であることから、近年ではFPD用粘・接着剤(例えば、PDPの機能フィルタ用粘着剤として多用されている)として多くの需要が見込まれている。
エポキシ樹脂の接着剤としての優れた性能と、アクリル樹脂の粘着剤としての機能を組み合わせたいわゆるアクリル−エポキシハイブリッド型接着剤が提案されている(特許文献1参照)。本提案は、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート化合物および硬化剤としてのジアミン化合物またはビス(アミノ)アルキルピペラジンを含有する硬化性(メタ)アクリレート変性エポキシ樹脂組成物を提供するものである。特許文献1によれば、エポキシ樹脂接着剤の機械的強靱性は、そのままで耐衝撃性が改善され、自動車バンパーなどの接着剤用途として適しているとされている。本提案の狙うところは、(1)高粘度エポキシ樹脂を低粘度の(メタ)アクリレートで希釈し、低粘度化して接着剤塗布作業性の改善を図ること、(2)硬化過程で、エポキシ樹脂を前記ジアミン化合物などで硬化、架橋反応させるとともに、(メタ)アクリレートの重合を進めエポキシ−アクリルの相互侵入網目構造(以下IPNともいう)を形成し、強靱で耐衝撃性に優れた接着剤を得ようとするものと考えられる。特許文献1の狙いは、大変興味深いものであるが、(1)接着剤の粘度を単純に低くした場合には、接着剤粘性がニュートニアンとなり接着剤が流れ易くなって十分な接着剤層膜厚が得られない傾向があり、また被着体へのヌレ性が悪化し接着強度が不十分となる懸念がある、(2)周知の通り、ジアミン化合物、ビス(アミノ)アルキルピペラジンなどの塩基性化合物(または含N原子含有化合物)の存在下では(メタ)アクリレートはきわめて重合性が乏しく、硬化のために十分に長い時間をとったとしても(メタ)アクリレートは未反応で残る懸念が払拭できず、接着強度に重大なバラツキが出ることが予測される。さらにまた、(メタ)アクリレートは嫌気性が強く、脱気(脱酸素)が不十分な場合には、同様に接着強度発現に懸念が残ることになる。
ポリアクリレート成分と、エポキシ成分と、カチオン開始剤とを含む硬化性接着剤が提案されている(特許文献2参照)。本提案は脆い光学素子に構造用支持体を形成するのに有用とされる。本提案になる技術は、光学用塗に適用される。したがって、特許文献2の請求項1に示されている通り、すなわち、ポリアクリレート成分と、エポキシ成分と、カチオン開始剤とを含む硬化性接着剤であって、未硬化の接着剤が光学的に透明であり、組成物の視感透過率が90%より大きく、組成物の曇りが2%より小さく、組成物の不透明度が1%より小さい。特許文献2に記載の接着剤は、未硬化の硬化性接着剤が硬化して相互貫入高分子網目を含む接着剤を形成することができ、硬化した接着剤を500時間、90℃で老化させた後、硬化及び老化した接着剤の視感透過率が90%より大きく、硬化および老化した接着剤の曇りが2%より小さく、硬化及び老化した接着剤の不透明度が1%より小さい、硬化性接着剤組成物である。特許文献2に記載の接着剤は、接着剤の透明性がきわめて重要視されている。
ところが、接着剤の透明性は、接着剤溶液の体積、光が透過する距離、接着剤の厚み、被着体の形状、材質などにより大きく左右されるが、特許文献2に記載の提案では、これらに関する詳細な既述、例えば視感透過率の測定方法、接着剤の厚みなど、に関する記述が全くなく、実際の所、本提案がいうところの透明性は不明である。また、特許文献2に記載の接着剤は、透明性がきわめて重視されるため、実質的にフィラーの配合は不適切である。フィラーを配合した場合には、仮にフィラーのサイズがナノレベルときわめて微少なものであったとしてもフィラーの配合量、分散方法などによらず、曇りや不透明度は避けることが困難であると思われる。その結果、接着剤の粘性(以下レオロジーともいう)を適切にコントロールすることができず、接着剤膜厚のコントロールが不十分となったり、接着力不足を招く懸念がある。
特許文献2に記載の接着剤は、ポリアクリレートは自己架橋することなく独自に、単独で存在する。したがって、ポリアクリレートによるエポキシへの絡み合い、エポキシの拘束、エポキシとの網目構造のバインダー力はある程度制限され、さほど強くはないことが容易に予測される。換言すれば、ポリアクリレートはずるずると歪みに引きずられ移動するだけで、本来期待されるはずのIPN効果は希薄となることが推察される。
ポリアクリレートは、エポキシとポリアクリレートが有する特定の官能基、カルボン酸、水酸基、で接合される場合がある。ポリアクリレートが有する官能基がカルボン酸の場合には、エポキシ樹脂が有するエポキシ基との反応が起こり、接着剤の本来のカチオン重合反応によらないゲル化が進行し、接着剤の貯蔵安定性が悪化するばかりか、十分な高分子化が阻害されるため機械的強度や接着力の低下を招く懸念がある。ポリアクリレートが有する官能基が水酸基の場合には、接着剤をカチオン重合で硬化する際、連鎖移動剤として働き、見かけの硬化速度、架橋は促進されるが、重合度の低下を招き、接着剤が脆くなって、構造接着剤としての機能を発揮しないことが懸念される。
特開昭63−215716号公報 特表2005−508435号公報
本発明は、十分に機械的強度を発揮する数平均分子量を有するアクリル樹脂と、エポキシ樹脂および硬化剤からなる接着剤組成物を提供するものである。
本発明者らは、下記構造式で示される繰り返し単位を分子中に有する数平均分子量2〜50万のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、および、硬化剤とからなる接着剤組成物により、十分に機械的強度を発揮する接着剤となることを見いだした。
Figure 2008074969
(ただし、Rは炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10の整数を表す。)
本発明の接着剤組成物を用いた接着剤は、鉄、アルミニウム、銅、マグネシウム、チタンなどの金属およびこれらの合金類、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンアロイ、ポリエチレンなどのプラスチック類、ガラス、モルタル、石英などの無機物など、幅広い基剤に適用できる。
本発明の接着剤組成物を用いた接着剤は、特に、炭素繊維やガラス繊維で強化されたプラスチック類に好適に適用できる。さらには、炭素繊維強化プラスチックとアルミニウム合金の接合などのように、炭素繊維よりも電解質溶液中でイオンになりやすい金属と炭素繊維強化プラスチックとを接合する際に、強い接着性を示すのは当然であるが、電池の生成を抑制し金属の電気腐食を防止して、水中や塩水中のような電解質溶液中でも強力な接着性を維持し、発揮する。
本発明の組成物を用いた接着剤は、2液混合型としても使用することができるが、基本的に1液型接着剤であり、良好な貯蔵安定性と硬化特性を両立するものである。
本発明は、下記構造式で示される繰り返し単位を分子中に有する数平均分子量2〜50万のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、および、硬化剤とからなる接着剤組成物である。
Figure 2008074969
(ただし、Rは炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10の整数を表す。)
下記の構造式(1)で示される繰り返し単位(以下VBGEユニットとも言う)は、
Figure 2008074969
(ただし、Rは炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10の整数を表す。)
本発明ではきわめて重要で有用な機能、作用を発現する。すなわち、VBGEユニットは、アクリル樹脂鎖同士の架橋(以下アクリルポリマーネットワークとも言う)点として作用し、アクリル樹脂とエポキシ樹脂とが硬化時に相互侵入高分子網目構造(以下IPNとも言う)を形成する際に、アクリルポリマー鎖とエポキシポリマー鎖との強固な絡み合いを促進し、接着剤の機械的強度、強靱性、耐衝撃性を向上する傾向が強く、接着剤、特に構造接着剤としての有用性を高める。さらにまた、VBGEユニットは接着剤が硬化する際、アクリル樹脂とエポキシ樹脂とのグラフト点として作用し、アクリル樹脂、エポキシ樹脂間に適度な相溶性と同時に非相溶性を提供し、またこれによりアクリル樹脂、エポキシ樹脂を一体化し、機械的強度、接着強度の高い構造接着剤を提供する。さらに適度な相溶性は接着剤の透明性を高め、光学用塗への適用性をも可能とする。
さらに驚くべきことには、VBGEユニットは、フィラーの分散性、分散安定性を飛躍的に向上し、例えばモンモリロナイトなどのナノサイズ機能性フィラーのナノ分散をも可能とし、接着剤の機械的強度、耐熱性、耐湿熱性、耐水性などを向上する作用がある。
本発明において、下記構造式で示される繰り返し単位を分子中に有する数平均分子量2〜50万のアクリル樹脂は、
Figure 2008074969
(ただし、Rは炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10の整数を表す。)
好ましくは、アクリル単量体とともに、下記の構造式で示される単量体をラジカル共重合することにより製造できる。
Figure 2008074969
(ただし、Rは炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10の整数を表す。)
上記の構造式で示される単量体(以下VBGEとも言う)としては、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルブチルグリシジルエーテルなどが例示される。これらの単量体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
VBGEユニットは、好ましくは、VBGEをアクリル単量体と共重合することにより導入できる。VBGEユニットを導入するため、VBGEはアクリル樹脂中に好ましくは0.02〜50重量%、より好ましくは0.2〜30重量%、さらに好ましくは0.2〜25重量%共重合されるのが望ましい。VBGEの共重合量が0.02重量%未満の場合には、アクリルポリマー間でのネットワーク、エポキシ樹脂とのグラフトが少なくなる傾向が見られ、接着剤の機械的強度や接着力がやや不足する場合が見られる。VBGEが50重量%を超えて共重合される場合には、接着剤が硬化する際に接着剤に硬化歪みが残りやすくなる傾向が見られ、接着剤の割れやひけが見られる場合がある。
本発明の接着剤組成物では、アクリル樹脂は、数平均分子量(以下Mnとも言う)が、2〜50万であり、好ましくは、5〜30万、より好ましくは、8〜25万、さらに好ましくは、8.5〜22.5万であることが推奨される。
本発明では、アクリル樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製「HLC−8220 GPC」システム)を使用し、分子量が定められたポリスチレンスタンダード(例えば、ジーエル サイエンス社製の標準POLYSTYRENE)を分子量標準として測定した。
アクリル樹脂の数平均分子量Mnが2万未満の場合には、分子鎖の絡み合い不足に由来し、例えば80℃以上などの比較的高温使用時での接着力の急激な低下が観察される。また、耐衝撃性などの機械的性質が十分に発現されず、衝撃試験後の接着力が悪化するなどの不具合が見られる。アクリル樹脂の数平均分子量Mnが50万を超える場合には、接着剤のエントロピー弾性があまりにも強くなりすぎ、被着体へのなじみ、ヌレ性、浸透性が悪化する傾向が見られ、接着力が低下する。
アクリル樹脂のMnを最適にコントロールすることはきわめて重要であり、Mnがコントロールされていないアクリル樹脂をブレンドしIPN化をはかる手法、あるいはまたアクリル単量体で希釈した後アクリル単量体の重合でIPN化をはかる手法とは全く異なる機能、性質が発現される。
本発明では、アクリル樹脂の最良の数平均分子量Mn範囲は8.5〜22.5万である。数平均分子量Mnが、2〜50万、最も好ましくは、8.5〜22.5万であれば、アクリル樹脂の最適な絡み合いが実現され、接着剤のレオロジーが適切なチキソトロピー範囲にコントロールされる傾向が見られる。この結果、接着剤の塗布作業性はもとより、被着体に対するヌレ性、なじみが大きく改善され接着力の飛躍的な向上が見られる傾向にある。極端な場合には油脂や水分で汚染された被着面の接合も可能となる場合がある。また、最適な絡み合い構造の発現は、接着剤の機械的強度を向上し、強靱で耐衝撃性、耐水性、耐熱性などに優れた接着剤、接着物品が製造可能となる。
本発明では、アクリル樹脂は、接着剤に適度な粘着性を付与し、接着をより強力なものへと変えるために、および接着剤に耐衝撃性を与えるためにガラス転移温度(以下Tgとも言う)が、好ましくは−80〜50℃、より好ましくは−55〜40℃、さらに好ましくは−55〜30℃であることが推奨される。
本発明では、アクリル樹脂のガラス転移温度は成書「高分子の力学的性質」(J.E.NIELSEN著、小野木重治訳、化学同人(1975年発行))に記載されている方法(p15〜p27)に準じて算出した。すなわち、
1/Tg=Σ(wi/Tgi)
(ここで、Tgはアクリル樹脂のTg(絶対温度 K)、Wiはi単量体の共重合量(重量分率)、Tgiはi単量体から作製されたホモポリマーのガラス転移温度を表す。)
により算出した。また、共重合する単量体から作製されるホモポリマーのTgは前記文献に「高分子の力学的性質」記載されている値、およびアクリル単量体製造会社(例えば、三菱レイヨン、東亞合成、日本触媒工業、日本油脂など)のカタログ記載値を採用し、用いた。
本発明では、アクリル樹脂のTgが−80℃未満の場合には、接着剤が可塑化されすぎる傾向が見られ、十分な接着強度が得られない場合が見られる。アクリル樹脂のTgが50℃を超える場合には、アクリル樹脂粘度が高くなるため塗布作業性の観点からアクリル樹脂分子量を低めに押さえる必要があり、結果的に接着剤の耐衝撃性が悪化する傾向が見られる。
本発明では、アクリル樹脂を構成するその他のアクリル単量体として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸グリシジル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが例示される。これらのアクリル酸単量体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
アクリル酸単量体の中では、好ましくはアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、ジシクロペンタニルオキシアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、ジシクロペンタニルオキシメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレートなどのシクロアルキル基含有アクリル単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有アクリル単量体、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルエチルジエトキシシランなどのアルコキシシラン基含有アクリル単量体が、ポリオレフィン、ナイロン、エポキシ樹脂、ガラス、金属など種々被着体の接着性向上、改善のため、およびアクリルポリマーネットワークを形成し接着剤の機械的強度や耐衝撃性を高め、より強力な接着強度を発現するために推奨される。
本発明の接着剤組成物では、シクロアルキル基含有アクリル単量体は、種々被着体への接着性を向上するために有用な単量体である。特に、シクロアルキル基含有アクリル単量体がアクリル酸シクロヘキシルであるときポリプロピレンアロイ、ポリエチレンなどのポリオレフィンの接着性が向上する傾向が見られ、推奨される。同時に、接着剤の耐水性や耐薬品性も改善、向上する傾向が見られる。シクロアルキル基含有アクリル単量体は、アクリル樹脂中に、好ましくは2〜99.98重量%、より好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは5〜60重量%共重合されるのが望ましい。シクロアルキル基含有アクリル単量体の共重合量が2重量%未満の場合には、ポリオレフィンの接着性がやや悪化する傾向が見られる。シクロアルキル基含有アクリル単量体アクリル単量体が99.98重量%を超えて共重合される場合には、接着剤が脆くなる傾向が見られ、耐衝撃後の接着力が低下する場合がある。
本発明の接着剤組成物では、アルコキシシラン基含有アクリル単量体は、アクリルポリマーネットワークを形成するために機能的に作用する。また、同時に、アクリルポリマーネットワークが結合力の強いシロキサン結合で形成されるため、接着剤の強靱性、機械的強度、耐熱性(高温で使用される際の接着力保持)、化学的安定性が飛躍的に向上する傾向が見られ、推奨される。アルコキシシラン基含有アクリル単量体は、アクリル樹脂中に好ましくは0.2〜20重量%、より好ましくは0.2〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%共重合されるのが望ましい。アルコキシシラン基含有アクリル単量体の共重合量が0.2重量%未満の場合には、アクリルポリマーネットワーク形成が不十分で緩やかな架橋構造となるため接着強度、耐熱性がやや悪化する傾向が見られる。アルコキシシラン基含有アクリル単量体の共重合量が20重量%を超える場合には、接着剤を1液型として設計した場合、接着剤の貯蔵安定性が悪化する傾向が見られる。また、アルコキシシランの加水分解、シロキサン架橋によって発生するメタノール、エタノールなどのアルコール蒸気に由来し接着剤に気泡が包含されて接着剤が脆くなったり、発生ガスのため接着層に割れが発生する場合が見られる。
本発明の接着剤組成物では、水酸基含有アクリル単量体は、接着剤にさらにヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物を配合することで、アクリルポリマーネットワークの形成を簡単に、効率よく進めることができる。特に、接着剤を保護、再剥離可能なフィルムではさみシート状にして使用する際に有用な手段である。アクリル樹脂は接着剤フィルムを作成する段階でアクリルポリマーネットワークを形成し、アクリル樹脂の高分子量と相まって強度の高いリワーク可能な粘着剤へと変化する。この接着剤フィルムを使用することで、被着体への貼り直し(リワーク)が可能で、加熱または光照射によりエポキシ樹脂が硬化するため作業性の良好なシート状接着剤が作製できる。水酸基含有アクリル単量体は、アクリル樹脂中に好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜18重量%、さらに好ましくは3〜12重量%共重合されるのが望ましい。水酸基含有アクリル単量体の共重合量が2重量%未満の場合には、アクリルポリマーネットワークの形成がやや不十分となり、接着剤の機械的強度発現が不足する場合がある。水酸基含有アクリル単量体の共重合量が20重量%を超える場合には、ポリイソシアネート化合物と等量比で反応させた場合にはアクリル樹脂の架橋密度が高くなりすぎ接着剤が脆くなって接着強度が悪化する傾向が見られる。ポリイソシアネート化合物の配合量が等量比以下の場合には、アクリル樹脂の水酸基が未反応で多く残り、接着剤の耐水性、耐湿熱性が悪化する傾向が見られる。
本発明の接着剤組成物では、アクリル樹脂は、好ましくは、ラジカル共重合で製造され、塊状重合、懸濁重合、分散重合、沈殿重合、溶液重合、乳化重合などいずれの重合方法で製造されても目的を達成することができる。
製造されたポリマーを使っての後工程を考慮した場合には、塊状重合、分散重合、沈殿重合、溶液重合などの無溶剤系または非水溶媒系で実施されるのが望ましい。
アクリル樹脂の製造は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス置換された重合系で実施されるのが望ましい。この際、重合系の酸素濃度は、好ましくは5vol%以下、より好ましくは2vol%以下、さらに好ましくは0.5vol%以下であることが望ましい。重合系中の酸素濃度が5vol%を超える場合には、ラジカル重合反応が系中の酸素の影響を受け、十分に進行しない場合が見られる。すなわち、重合速度が著しく遅くなり、酸素によるテロメリゼーションを受け低重合度のポリマーが多く生成する場合があり、アクリル樹脂の着色や接着剤の耐水性の低下を招く傾向が見られる。
アクリル樹脂の製造は、重合温度が好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜140℃で実施されるのが望ましい。重合温度が50℃未満では、重合率が上がりにくく、製造にきわめて長時間を要する場合がある。さらに懸念されることは、製造されたポリマーの耐熱性が悪化する場合があることである。150℃を超えて重合が実施される場合には、ポリマー末端ラジカルの安定性が低下する傾向にあり、希望する分子量、分子量分布を有するポリマーの製造が困難となる場合がある。
溶液重合の際溶媒として使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、などが例示される。これらの有機溶媒は単独でも、2種類以上の混合物であってもよい。
これらの溶媒の中では、ポリマーの着色や耐熱性の低下を予防する上で、また接着剤を製造する際脱溶媒を必要とする場合には、酢酸エチル、酢酸n−プロピルのような連鎖移動定数の小さいものが推奨される。
本発明では、アクリル樹脂は、望ましくはヒンダードアミン化合物と有機過酸化物の存在下にVBGEを含むアクリル単量体をラジカル共重合し製造されるのが推奨される。より望ましくは、ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物との反応生成物の存在下に、VBGEを含むアクリル単量体をラジカル共重合し製造されるのが望ましい。
本製造方法によって製造されたアクリル樹脂を使用したとき、ラジカル共重合で製造されるにもかかわらずアクリル樹脂の分子量分布が狭くなり、接着剤のレオロジーコントロールが容易で最適化され、塗布作業性が改善されるばかりでなく、被着体へのヌレ性、浸透性が改善され、接着剤の強靱性、機械的強度、耐熱性、接着力が向上する傾向が強く見られる。
ヒンダードアミン化合物としては、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N−メチル−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが例示される。該ヒンダードアミン化合物は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどが例示される。該有機過酸化物は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物とは、ヒンダードアミン化合物1モルに対して有機過酸化物が、好ましくは1×10−4モル〜2.5モル、より好ましくは5×10−4モル〜2.0モルの割合となるよう使用される。
有機過酸化物の使用量が、ヒンダードアミン化合物1モルに対して1×10−4モル未満の場合には、重合率が上がりにくくなり、重合効率が悪く、また分子量も小さいものしかできなくなる傾向にある。
有機過酸化物の使用量が、ヒンダードアミン化合物1モルに対して2.5モルを超えて使用される場合には、重合のリビング性が失せられ、低分子量ポリマーが大きい割合で生成する傾向にあり、アクリル樹脂の分子量分布が広がる傾向が見られる。
ヒンダードアミン化合物は、VBGEを含むアクリル単量体100重量部に対して、好ましくは0.002〜20.0重量%、より好ましくは0.005〜15.0重量%、さらに好ましくは0.02〜12.0重量%使用されるのが望ましい。
ヒンダードアミン化合物の使用量が、VBGEを含むアクリル単量体100重量部に対して、0.002重量%未満の場合には、重合率が上がりにくく、重合に長時間を必要とし実用性が失われる傾向にある。
ヒンダードアミン化合物の使用量が、VBGEを含むアクリルル単量体100重量部に対して、20.0重量%を超えて使用される場合には、ポリマーに着色が見られる場合があり、実用上問題になる場合がある。
ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物との反応生成物は、例えば、窒素ガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス置換された容器中で、ヒンダードアミン化合物と有機過酸化物とを混合し、所定重合温度に昇温するだけで製造することができる。
以下に、アクリル樹脂製造の好ましい態様の一例を示す。当然ながら、本発明がこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついたフラスコに重合溶媒(例えば酢酸エチル/酢酸n−プロピル(80/20重量比)の混合溶媒)を仕込む。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持する。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.5vol%未満であることを確認する。
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに所定量のヒンダードアミン化合物、例えば4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを仕込み、均一になるよう溶解する。溶解ができれば、有機過酸化物、例えば過酸化ベンゾイルをヒンダードアミン化合物と等モル量仕込み攪拌を継続する。
昇温を開始し、30分間で80℃に昇温、以下80℃に温度を保持する。
モノマー、例えばメタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/p−ビニルベンジルグリシジルエーテル/γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン/γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(=20/78/1/0.5/0.5重量比)の混合モノマー、を2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了直後からサンプリングを行い、数平均分子量と重合率を測定する。重合率が100%になった時点で重合を終了し、冷却を開始する。
以上により、本発明で好ましく使用されるアクリル樹脂が製造できる。
本発明の第2の成分であるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、異節環状型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂など分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物が例示され、これらのエポキシ樹脂は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。(参考文献;「14705の化学商品(2005年発行)」(化学工業日報社、p1126〜p1135)
本発明では、これらのエポキシ樹脂の中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のような芳香族系エポキシ樹脂、あるいは、脂環式エポキシ樹脂が、接着剤の貯蔵安定性、硬化性、接着強度の点で望ましく、推奨される。ビスフェノールA型エポキシ樹脂のような芳香族系エポキシ樹脂を使用した場合には、硬化温度ガヤや高め(80〜150℃程度)になり、硬化時間がやや長め(10〜120分程度)になる傾向が見られるが、接着剤の貯蔵安定性に優れ1液型接着剤の設計が可能となる場合が多い。脂環式エポキシ樹脂を使用した場合には、比較的低温(60〜120℃程度)で速硬化性(1分〜120分程度)を発揮する接着剤が設計できるが、貯蔵安定性にやや不安が残るため(ポットライフは23℃で1週間程度/接着剤200gスケール)、2液型として設計するのが望ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂のような芳香族系エポキシ樹脂、あるいは脂環式エポキシ樹脂を使用するいずれの場合にも、接着剤が硬化する際の収縮(線膨張係数、体積膨張係数)が少なく、ひけ、接着不良などの不具合を最小限に回避できる傾向が見られる。
本発明では、エポキシ樹脂とアクリル樹脂の合計量を100重量部として、エポキシ樹脂は好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜85重量%、さらに好ましくは20〜80重量%配合されるのが望ましい。エポキシ樹脂の配合量が5重量%未満の場合には、接着剤のエポキシ樹脂による架橋割合が低く、接着強度、接着剤の機械的性質に満足できるものが得られない場合が見られる。エポキシ樹脂の配合量が98重量%を超える場合には、アクリル樹脂が有する高分子量、高い強靱性、IPN化のためのアクリルポリマーネットワーク機能が十分に活かされることがなく、接着剤が脆くなる傾向が見られ、機械的強度、接着力などが不足する場合がある。
本発明では、アクリル樹脂とエポキシ樹脂を所定割合で配合した後、これを架橋させるための硬化剤が配合される。
硬化剤としては、フェニルジメチルウレア、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、シアノグアニジン、アミノエチルピペラジン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、ヘキサヒドロ無水フタル酸、トリメリット酸などのアミン類、フェノール類、酸無水物類が例示される。これらの硬化剤は単独でも、2種類以上の混合物であってもよい。
本発明では、硬化剤として、好ましくはイミダゾール化合物、または、特定構造を有する芳香族スルホニウム塩が推奨される。
本発明で硬化剤として好ましく使用されるイミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールなどが例示される。これらのイミダゾール化合物は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
本発明で硬化剤としてより好ましく使用されるスルホニウム塩化合物としては、
Figure 2008074969
(ただし、R1、R2、R3は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
Figure 2008074969
(ただし、R1、R2、R3は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)、
p−メチルフェニル−ジメチル−スルホニウムのヘキサフルオロアンチモン塩、p−エチルフェニル−ジメチル−スルホニウムのヘキサフルオロアンチモン塩、メチルフェニル−ジメチル−スルホニウムのヘキサフルオロホスフェート塩などが例示される。これらのスルホニウム塩は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
これらの硬化剤は、接着剤の貯蔵安定性、ポットライフと硬化特性のバランスを取る上で機能的に作用する傾向が見られる。ひいては、1液型として低中温度域(−20〜40℃程度)での長期貯蔵安定性を有しながら、中高温域(80〜150℃程度)での安定で良好な硬化特性を発揮する傾向が見られる。
これらの硬化剤は、アクリル樹脂とエポキシ樹脂の合計量に対して、好ましくは、0.2〜10phr、より好ましくは0.5〜8phr、さらに好ましくは1〜6phr配合されるのが望ましい。硬化剤の配合量が0.2phr未満の場合には、貯蔵安定性は飛躍的に改善されるものの硬化性が極端に悪くなる傾向が見られ、接着剤の機械的強度、接着力が低下する場合が見られる。硬化剤の配合量が10phrを超える場合には、貯蔵安定性が悪化する傾向が見られ、またポットライフ調整が困難となる場合がある。さらに、硬化の際、硬化が急激に進むため接着剤に大きい歪みが生じ接着性が悪化する傾向が見られる。
これらの硬化剤を使用し架橋反応が実施される場合には、接着剤組成物中のエポキシ樹脂、エポキシ基は主としてエーテル結合でネットワークを形成するため、耐水性や耐薬品性に優れたものとなる傾向が見られる。
本発明の接着剤組成物は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤を混合することにより製造できる。
製造の一例を挙げれば、溶液重合で作製されたアクリル樹脂を真空脱溶媒可能なプラネタリーミキサーに仕込み、これに所定量のエポキシ樹脂を仕込んで攪拌、混合する。この後、真空下に接着剤の脱溶剤化を行う。これに硬化剤を所定量仕込み、さらに攪拌、混合して接着剤を製造する。
本発明の接着剤組成物は、剪断速度10−1〜剪断速度10−1のときチキソトロピック流体であることが望ましい。ここで、本発明で言うチキソトロピック流体とは、チキソトロピー流動を有する流体を指す。チキソトロピー流動に関しては、成書「レオロジーの世界」(尾崎邦宏著、工業調査会(2004年発行)、p114)に詳細に記載されているが、攪拌・振動などによる流体粘度の低下を指す。すなわち、攪拌、振動、ズリ速度などの増加により、流体粘度が低下する減少を指す。接着剤が適度なチキソトロピー性を有していると、接着剤を被着体に塗布する際、接着剤のタレや流れを抑制でき、また適度で比較的均一な膜厚を容易に得ることができる。さらに、適度なチキソトロピー性は、接着剤の被着体へのヌレ性やなじみ、浸透性を促進、向上し、仮に被着体が複雑な形状をしていたとしても自己構造化の働きにより接着剤と被着体との間の空隙を最小限に抑制する作用があり、接着力を改善、向上する機能が発現される傾向が見られる。
接着剤のチキソトロピー性を判断するためのレオロジー測定は、ジャスコインタナショナル製「VAR型ビスコアナライザー」を使用し、25℃で行った。測定条件は以下の通りである。
〔レオロジー測定条件〕
マニュアル 測定回数 1回、測定インターバル 2.000E4+0 s
剪断速度テーブル 剪断速度 1.000E+0 − 1.000E+3 1/s
ディレイタイム 1.015E+0 − 1.6000E+1 s
積算時間 1.030E+0 − 3.100E+1 s 。
接着剤のレオロジー、特に流動特性を厳密に規定することは、単にチキソトロピー性を付与し接着膜厚を確保する以上に、接着剤のセルフレベリング性、自己構造化を設計する上できわめて重要な要件である。
本発明者らは、鋭意研究の結果、接着剤を、好ましくは、適切なチキソトロピック流体とすることで、接着剤がセルフレベリング性、自己構造化機能を発揮し、接着剤を塗布する素地の傷、凹凸などに自己浸透し、これを平滑化して接着力を向上することを見出した。
塗料や粘着剤、接着剤のレオロジーは測定結果のグラフをもとにアナログで評価、考察、判断されるのが一般的である。あえてこれをデジタル化すれば、本発明では、この接着剤のチキソトロピー流動を次に述べる関係により表現することもできる。
すなわち、剪断速度が、5.5±0.5s−1のときの粘度をPa、剪断速度が、550±50s−1のときの粘度をPbとすれば、PaとPbとの関係は、Pa/Pbの値が、好ましくは、1.02〜10.0、より好ましくは、1.05〜8.0、さらに好ましくは、1.10〜6.5であり、PaとPbの最良の関係は、1.23〜6.0である。Pa/ Pbの値が1.005未満の場合には、接着剤のセルフレベリング性、自己構造形成能が不足するため、浸透性の高い接着剤を得られない場合があり、複雑な形状の被着体である場合に安定した接着強度を得られない場合がある。Pa/Pbの値が10.0を超える場合には、接着剤のチキソトロピー性が強すぎて、粘着剤の塗布工程で均一塗布が難しくなる場合があり、また流動性が悪化するため被着体を完全に覆うことができなくなる傾向が見られ、接着力がやや悪化する場合が見られる。特に、耐水性などの浸漬試験で、接着剤と被着体との空隙に水が入り、接着破壊を招く場合がある。
本発明の接着剤組成物は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤の他にも、タルク、ベントナイト、モンモリロナイト、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ石粉、ガラス粉、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、グラスウール、炭素繊維などの補強、充填用フィラー類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤などを配合することができる。
本発明の接着剤組成物は、液状で被着体に塗布し、加熱硬化させ接着物品を得ることができる。また、接着剤を剥離可能な保護フィルム上に塗布し、好ましくは適切な温度、好ましくは60〜120℃、で適切な時間、好ましくは30秒〜10分、加熱しBステージを経た後、これを被着体に圧着した後、加熱硬化し接着物品を得ることもできる。
本発明の接着剤組成物を用いた接着剤は、自動車、バイク、自転車部品用(構造)接着剤として、ゴルフクラブ、釣り竿などのレジャー、スポーツ用品用接着剤として、船舶、航空機用構造接着剤として、その他、接着強度、接着剤の機械的性質、強靱性、耐水性などの耐薬品性が要求される用途に好適に適用されるものである。
さらにまた、ディスプレイやフラットパネルディスプレイ(FPD)の光学フィルタ、電磁波シールドフィルムなどの電子情報機器用粘・接着剤としても、高い透明性、低ヘイズ、接着剤の浸透性など優れた機能を活かし、好ましく使用される。
以下、実施例を持って本発明を詳細に説明する。
なお、実施例、比較例中、特に断りがなければ組成比は重量比を表す。また、分子量は標準ポリスチレンを分子量標準として、GPCにより測定した。加熱残分はJIS K 5400−1997に準拠し測定した。
接着剤のレオロジーは、ジャスコインタナショナル製「VAR型ビスコアナライザー」を使用し、25℃で測定した。測定条件は以下の通りである。
〔レオロジー測定条件〕
マニュアル 測定回数 1回、測定インターバル 2.000E4+0 s
剪断速度テーブル 剪断速度 1.000E+0 − 1.000E+3 1/s
ディレイタイム 1.015E+0 − 1.6000E+1 s
積算時間 1.030E+0 − 3.100E+1 s 。
本測定により、剪断速度が、5.5±0.5s−1のときの粘度Pa、剪断速度が、550±50s−1のときの粘度Pbをもとめた。
接着剤の引張り試験は、JIS K 7113−1995(プラスチックの引張試験方法)に準拠して行った。引張り速度は300mm/min.とした。
接着試験は、A−2017Pアルミニウム板(サイズ;長さ50mm、幅25mm、厚さ2mm)を使用し、JIS K 6850−1999(剛性被着材の引張剪断接着強さ試験方法)に準拠して行った。引張り速度は1.0mm/min.で行い、特に断りがない限り試験温度は23℃とした。
〔アクリル樹脂の製造例〕
〔アクリル樹脂(1)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.4重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始する。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル/p−ビニルベンジルグリシジルエーテル(=10/85/5)の混合モノマー400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後2時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(1)を製造した。図1にアクリル樹脂(1)の重合挙動を示した。
アクリル樹脂(1)はリビングラジカル重合で製造されていることが分かる。アクリル樹脂(1)の加熱残分は50.2%、数平均分子量は12万、分子量分布は1.8、Tgは−48℃であった。
〔アクリル樹脂(2)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.4重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始する。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
アクリル酸シクロヘキシル/アクリル酸n−ブチル/p−ビニルベンジルグリシジルエーテル(=20/79/1)の混合モノマー400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後1.5時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(2)を製造した。図2にアクリル樹脂(2)の重合挙動を示した。
アクリル樹脂(2)はリビングラジカル重合で製造されていることが分かる。アクリル樹脂(2)の加熱残分は50.3%、数平均分子量は14万、分子量分布は1.5、Tgは−41℃であった。
〔アクリル樹脂(3)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル/オルト酢酸トリメチル(=50/49/1)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.4重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始する。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
アクリル酸シクロヘキシル/アクリル酸n−ブチル/p−ビニルベンジルグリシジルエーテル/γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(=20/74/1/5)の混合モノマー400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後1,5時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(3)を製造した。図3にアクリル樹脂(3)の重合挙動を示した。
アクリル樹脂(3)はリビングラジカル重合で製造されていることが分かる。アクリル樹脂(3)の加熱残分は50.1%、数平均分子量は12万、分子量分布は1.5、Tgは−43℃であった。
〔アクリル樹脂(4)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.2重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始した。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
アクリル酸シクロヘキシル/アクリル酸n−ブチル/p−ビニルベンジルグリシジルエーテル/アクリル酸4−ヒドロキシブチル(=20/76/1/3)の混合モノマー400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後1.5時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(4)を製造した。図4にアクリル樹脂(4)の重合挙動を示した。
アクリル樹脂(4)はリビングラジカル重合で製造されていることが分かる。アクリル樹脂(4)の加熱残分は50.1%、数平均分子量は22万、分子量分布は1.8、Tgは−52℃であった。
〔アクリル樹脂(5)の製造〕
窒素ガス吹き込み管、温度センサー、コンデンサー、撹拌装置がついた1リットル四つ口フラスコに重合溶媒として酢酸エチル/酢酸n−プロピル(=50/50)を400g仕込んだ。窒素ガスをフラスコ底部に導入し、バブリングしながら30分間保持した。この後、フラスコ内の酸素濃度を酸素濃度計「XO−326ALA」(新コスモス電機(株)の酸素濃度計)で測定し、酸素濃度が0.2vol%未満であることを確認した。
窒素ガスのバブリングは継続したまま、フラスコに4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを混合モノマーの0.4重量%仕込み、均一になるよう溶解した。溶解ができれば、過酸化ベンゾイルを4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと等モル量仕込み、昇温を開始する。30分間で80℃に昇温し、以後80℃に温度を保持した。
メタクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸n−ブチル(=10/90)の混合モノマー400gを2時間でフラスコ内に滴下し、滴下終了後2時間重合を行った後、室温まで冷却してアクリル樹脂(5)を製造した。図5にアクリル樹脂(5)の重合挙動を示した。
アクリル樹脂(5)はリビングラジカル重合で製造されていることが分かる。アクリル樹脂(5)の加熱残分は50.2%、数平均分子量は12万、分子量分布は1.7、Tgは−45℃であった。
〔フィラーの分散例〕
〔分散液M−1の製造〕
200mlガラスビーカーに酢酸エチルを89.5g、「ディスパロン DA−7300」(楠本化成製の顔料分散剤)0.5g仕込み、ディスパーを使用し1000m−1で攪拌しながら(ビーカー内径:攪拌羽根径=50:40)「クニフィル D36」(クニミネ工業製の有機化ベントナイト)の10gを徐々に添加した。この後、60分間攪拌を行い、親有機化モンモリロナイト分散液M−1を製造した。
〔分散液M−2の製造〕
200mlガラスビーカーに酢酸エチルを89.5g、「ディスパロン DA−7300」0.5g仕込み、ディスパーを使用し1000m−1で攪拌しながら(ビーカー内径:攪拌羽根径=50:40)「クニピア−F」(クニミネ工業製の微粉ベントナイト)の10gを徐々に添加した。この後、60分間攪拌を行いベントナイト分散液M−2を製造した。
実施例1
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(1)1.2kgと「jER 828」(ジャパンエポキシレジン社のビスフェノールA型エポキシ樹脂)400gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=60/40)攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止した。これに「サンエイド 80L」(三新化学製のスルホニウム塩系カチオン硬化触媒)を1phr添加し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(1)を製造した。
(接着剤のレオロジー評価)
接着剤のレオロジーを測定した結果、剪断速度5.64s−1の粘度Paは58Pa・s、剪断速度549s−1の粘度Pbは55Pa・s(Pa/Pb=1.06)であった。
(接着剤の引張り試験)
接着剤(1)を膜厚が2mmになるようシート状に塗りのばし、120℃で1時間、加熱硬化させた。この硬化接着剤フィルムを3号ダンベルでカットし引張り試験を行った。
破断強度(以下TSとも言う)は35MPa、破断伸び(以下ESとも言う)は250%であり、強靱性の高い接着剤であった。
(接着力の評価)
(1)初期接着力の評価
接着剤(1)をアルミニウム板に均一に塗布し(膜厚100μm、塗布面積25mm×25mm)、さらに別のアルミニウム板を接着剤表面に圧着し、120℃で1時間、加熱硬化させた。このテストピースを用い剪断接着力(以下Asとも言う)を測定した。剪断接着力は32MPaであり十分に高い値を示した。
(2)耐水試験後接着力の評価
(1)で作製したテストピースを80℃温水中に72時間浸漬した。この後、(1)と同様に接着性試験を行った結果、剪断接着力は30MPaであった。耐水試験で接着力が低下することなく、良好な接着性を示した。
実施例2
実施例1のアクリル樹脂(1)をアクリル樹脂(2)、(3)に変える以外は実施例1と同様にして接着剤(2)、(3)を製造し、同様な試験を行った。試験結果を表1に示した。
Figure 2008074969
実施例3
プラネタリーミキサーにアクリル樹脂(4)1.6kgと「jER 828」400gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=80/20)さらにイソホロンジイソシアネートをアクリル樹脂(4)の水酸基/イソホロンジイソシアネートのNCO基が等モル量となるよう加え、攪拌を継続した。これに「サンエイド 80L」を1phr添加し、さらに30分間攪拌を継続し、接着剤(4)を製造した。接着剤(4)の剪断速度5.64s−1の粘度Paは14Pa・s、剪断速度549s−1の粘度Pbは12Pa・s(Pa/Pb=1.17)であった。
接着剤(4)を剥離フィルム「セラピールWD#50」(東レ・フィルム加工製剥離フィルム)に膜厚が50μmになるよう塗布し、100℃で1分間プレキュアを行った。さらに、接着剤表面に「セラピールWD#50」を貼合し、Bステージ化された接着フィルムを製造した。この接着フィルムを23℃で1週間養生した。
(接着力の評価)
(1)初期接着力の評価 製造した接着フィルムの剥離フィルムを剥がしアルミニウム板に500gの荷重で圧着し、さらに表面の剥離フィルムを剥がし接着剤表面にアルミニウム板を500gの荷重で圧着した。これを120℃で1時間、加熱硬化させた。このテストピースを用い剪断接着力(以下Asとも言う)を測定した。剪断接着力は38MPaであり十分に高い値を示した。
(2)耐水試験後接着力の評価 (1)で作製したテストピースを80℃温水中に72時間浸漬した。この後、(1)と同様に接着性試験を行った結果、剪断接着力は38MPaであった。耐水試験で接着力が低下することなく、良好な接着性を示した。
実施例4
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(3)1.4kgと「jER 828」300gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=70/30)攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止した。これに「サンエイド 80L」を1.0phr添加し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(5)を製造した。
接着剤(5)の試験を実施例1と同様に行った。試験結果を表2に示した。
実施例5
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(3)1.4kgと「ERL−4221」(ユニオンカーバイド社製の脂環式エポキシ樹脂)300gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=70/30)攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止した。これに「サンエイド 80L」を1.0phr添加し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(6)を製造した。
接着剤(6)の試験を、接着剤の硬化を80℃で60分とする以外は、実施例1と同様に行った。試験結果を表2に示した。
実施例6
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(3)1.4kgと「jER 828」300gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=70/30)これに、さらにフィラー分散液M−1をフィラー濃度が接着剤の3phrとなるよう仕込み、攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止した。これに「キュアゾール 2E4MZ」(四国化成製のイミダゾール化合物)を3.0phr添加し、均一に溶解するまで攪拌し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(7)を製造した。
接着剤(7)の試験を実施例1と同様に行った。試験結果を表2に示した。
実施例7
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(3)1.4kgと「jER 828」300gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=70/30)これに、さらにフィラー分散液M−2をフィラー濃度が接着剤の3phrとなるよう仕込み、攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止した。これに「サンエイド 80L」を1.0phr添加し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(8)を製造した。
接着剤(8)の試験を実施例1と同様に行った。試験結果を表2に示した。
Figure 2008074969
さらに、接着剤(5)、接着剤(7)を用いて作製したテストピースを80℃で72時間保管した後、23℃および80℃で剪断接着試験を行った。結果を表3に示した。
Figure 2008074969
接着剤(5)、接着剤(7)ともに、80℃での保管で接着強度の低下は見られず、耐熱性に優れていることが分かった。ことさら、微量ではあるがフィラー(モンモリロナイト)が配合された接着剤(7)は耐熱性および熱時接着力発現においてもきわめて優れていた。
比較例1
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(5)1.2kgと「jER 828」400gを仕込み、攪拌を行った。(アクリル樹脂/エポキシ樹脂=60/40)攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止した。これに「サンエイド 80L」を1phr添加し、さらに30分間攪拌を継続して接着剤(9)を製造した。
(接着剤のレオロジー評価)
接着剤のレオロジーを測定した結果、剪断速度5.64s−1の粘度Paは42Pa・s、剪断速度549s−1の粘度Pbは40Pa・s(Pa/Pb=1.05)であった。
(接着剤の引張り試験)
接着剤(9)を膜厚が2mmになるようシート状に塗りのばし、120℃で1時間、加熱硬化させた。この硬化接着剤フィルムを3号ダンベルでカットし引張り試験を行った。
TSは18MPa、ESは350%であり、柔軟な接着剤であった。p−ビニルベンジルグリシジルエーテルが共重合されたアクリル樹脂(1)を使用している実施例1に比し、破断応力が大きく低下するものとなった。
(接着力の評価)
(1)初期接着力の評価
接着剤(9)をアルミニウム板に均一に塗布し(膜厚100μm、塗布面積25mm×25mm)、さらに別のアルミニウム板を接着剤表面に圧着し、120℃で1時間、加熱硬化させた。このテストピースを用い、剪断接着力(As)を測定した。剪断接着力(As)は15MPaであり比較的良好な値を示した。
(2)耐水試験後接着力の評価
(1)で作製したテストピースを80℃温水中に72時間浸漬した。この後、(1)と同様に接着性試験を行った結果、剪断接着力(As)は2MPaと耐水試験で接着力が大きく低下し、実用性に欠けることがわかった。p−ビニルベンジルグリシジルエーテルが共重合されたアクリル樹脂(1)を使用している実施例1に比し、通常状態の接着力の低下が見られ、特に耐水後接着力は極度に悪化した。
比較例2
溶剤回収トラップが設けられた真空ラインに接続した5Lプラネタリーミキサーにアクリル樹脂(1)1.0kg仕込み、攪拌を行った。(エポキシ樹脂は配合しなかった)攪拌しながら、1300Paに減圧し、接着剤が含有する溶剤をトラップ中に回収した。プラネタリーミキサー内の接着剤が加熱残分98%以上となった時点で真空引きを停止し、さらに「サンエイド 80L」を1phr添加し、30分間攪拌を継続して接着剤(10)を製造した。
(接着剤のレオロジー評価)
接着剤のレオロジーを測定した結果、剪断速度5.64s−1の粘度Paは35Pa・s、剪断速度549s−1の粘度Pbは32Pa・s(Pa/Pb=1.09)であった。
(接着剤の引張り試験)
接着剤(10)を膜厚が2mmになるようシート状に塗りのばし、120℃で1時間、加熱硬化させた。この硬化接着剤フィルムを3号ダンベルでカットし引張り試験を行った。
TSは12MPa、ESは420%であり、非常に柔軟な接着剤であった。実施例1に比し、破断強度(TS)は約1/3に低下し、破断伸び(ES)は約1.7倍となった。非常に柔らかく、駆動部に使用される場合には動力伝達に懸念が残るものとなった。
(接着力の評価)
(1)初期接着力の評価 接着剤(10)をアルミニウム板に均一に塗布し(膜厚100μm、塗布面積25mm×25mm)、さらに別のアルミニウム板を接着剤表面に圧着し、120℃で1時間、加熱硬化させた。このテストピースを用いAsを測定した。Asは22MPaであり比較的良好な値を示した。接着剤がp−ビニルベンジルグリシジルエーテルが共重合されたアクリル樹脂(1)を用いているためと考えられるが、実施例1に比し約70%にまでAsが低下し、衝撃が加わった場合の接着性に懸念が残る結果となった。
(2)耐水試験後接着力の評価 (1)で作製したテストピースを80℃温水中に72時間浸漬した。この後、(1)と同様に接着性試験を行った結果、剪断接着力(As)は15MPaであった。実施例1に比し絶対値が約半分まで低下し、高温高湿下での使用にやや不安が残る結果となった。
実施例および比較例に見られる通り、本発明の接着剤組成物は、接着剤の機械的性質、接着性能、耐熱性、耐水性など、数々の要求に対して優れてバランスのとれた性能を発揮する。
図1は、アクリル樹脂(1)の重合挙動を示す図である。 図2は、アクリル樹脂(2)の重合挙動を示す図である。 図3は、アクリル樹脂(3)の重合挙動を示す図である。 図4は、アクリル樹脂(4)の重合挙動を示す図である。 図5は、アクリル樹脂(5)の重合挙動を示す図である。

Claims (7)

  1. 下記構造式で示される繰り返し単位を分子中に有する数平均分子量2〜50万のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、および、硬化剤とからなる接着剤組成物。
    Figure 2008074969
    (ただし、Rは炭素原子数1〜4個のアルキル基、nは1〜10の整数を表す。)
  2. 接着剤が、剪断速度10−1〜剪断速度10−1のときチキソトロピック流体である請求項1記載の接着剤組成物。
  3. アクリル樹脂が、シクロアルキル基含有アクリル単量体が共重合されたものである請求項1または2記載の接着剤組成物。
  4. シクロアルキル基含有アクリル単量体が、アクリル酸シクロヘキシルである請求項3に記載の接着剤組成物。
  5. アクリル樹脂が、さらにアルコキシシラン基含有アクリル単量体または水酸基含有アクリル単量体が共重合されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
  6. 硬化剤がイミダゾール化合物を含むものである請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物。
  7. 硬化剤が下記構造式(2)または(3)で示される熱または光カチオン重合開始剤を含むものである請求項1〜5いずれかに記載の接着剤組成物。
    Figure 2008074969
    (ただし、R1、R2、R3は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
    Figure 2008074969
    (ただし、R1、R2、R3は炭素原子数1〜12個のアルキル基を表す。)
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