JP2008069724A - 触媒診断装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 内燃機関の排気通路に、排気中の有害成分を吸着又は放出する吸着材を担持してなる排気浄化触媒1の劣化状態を診断する触媒診断装置であって、排気通路に設けられ排気中の酸素濃度状態を検知するO2センサ2が介装され、排気が還元雰囲気にある時のO2センサ2の出力から排気浄化触媒1からのカリウムの飛散量を推定し、カリウムの飛散量に基づいて排気浄化触媒の劣化状態を診断する。
【選択図】図1
Description
このようなNOXパージ制御に関して、特許文献1には、エンジンのリーン燃焼中においてトラップ剤へのNOX吸着量を推定するとともに、排気空燃比をリーンからリッチへ反転させるのに要する時間(遅れ時間)を計測し、これらのNOX吸着量及び遅れ時間に基づいて触媒の能力低下を診断する構成が記載されている。この場合、遅れ時間はトラップ剤における実際のNOX吸着量に相関しているため、NOX吸着量が増加するに連れて排気空燃比の反転時間が長くなることになる。このような特性を利用して、トラップ剤の吸着能力を診断し、NOXパージ制御に応用している。
このような課題に対して、特許文献2には、NOX吸着材に蓄積された硫黄被毒量を推定する硫黄被毒量推定手段を備えた構成が開示されている。これにより、ある程度の硫黄成分がNOX吸着材に蓄積されたと推定された場合に、昇温処理にて触媒全体を高温化し硫黄成分を放出する回復制御(いわゆるSパージ制御)を実施するようになっている。
なお、エンジンのリーン運転時にNOXを吸着し、エンジンのストイキ運転時又はリッチ運転時にNOXを放出する該吸着材の機能変化は、主に、排気中の酸素濃度の変動に由来する。
この場合、該O2センサは、該排気が還元雰囲気である場合に起電力が高くなり、該診断手段は、該O2センサから出力された該起電力の代表値が予め設定された閾値未満になったら、該吸着材の飛散量が過剰になり該排気浄化触媒が該劣化状態にあると診断することが好ましい(請求項3)。
また、該排気浄化触媒は、酸化雰囲気でNOXを吸着し還元雰囲気でNOXを放出するNOXトラップ触媒であって、所定の条件下(例えば、NOX吸着量が上限値に達したと推定しうる場合)で、排気を還元雰囲気とするとともに排気中に燃料を供給されてNOX放出を行なうように構成され、該診断手段は、該排気浄化触媒からの該NOX放出時に、該劣化状態を診断することが好ましい(請求項5)。
また、例えば浄化能力低下が吸着材の飛散に起因するのか、それとも硫黄被毒等に起因するのか、といった排気浄化触媒の劣化の原因を特定することが可能となり、劣化の原因に応じてNOXパージ制御やSパージ制御、あるいは触媒交換時期を示す報知ランプの表示といった適切な制御を実施することができ、これらの制御精度を向上させることができる。
また、本発明の触媒診断装置(請求項4)によれば、排気浄化触媒の劣化の程度を判断することができ、排気浄化触媒の劣化状況に応じたNOXパージ制御やSパージ制御を行うことが可能である。また、同時にO2センサの出力変化を把握できるので、O2センサの交換時期の目安としても役立てることができる。
また、本発明の触媒診断装置(請求項6)によれば、カリウム(K)は高温域でのNOXトラップ性能に優れるので、高温となる排気通路に設けるNOXトラップ触媒に適しているが、この反面、カリウムは高温下でNOXトラップ触媒から飛散して下流のO2センサに付着しては、O2センサの検出特性能を低下させてしまうが、O2センサの表面に付着したカリウムの付着量とカリウムの飛散量との相関関係を利用して、排気浄化触媒の劣化状態の診断を行うことができる。
(1)排気浄化触媒
図1に示すように、本発明の触媒診断装置4の診断対象となる排気浄化触媒(NOXトラップ触媒)1は、車両に搭載されたエンジンEの下流側の排気通路に介装されて、エンジンEから排出される排気中の有害成分を浄化する装置である。この排気浄化触媒1は、コーディエライト,メタル等からなるハニカム状の担体を備えるとともに、その表面にアルミナと、プラチナ,ロジウム,パラジウム等の貴金属触媒(以下、単に触媒と呼ぶ)6と、吸着材としてのトラップ剤7とを担持して構成されている。なお、本実施形態では、トラップ剤7としてカリウム(K)が用いられている。
本触媒診断装置4は、上記の排気浄化触媒1を診断するための装置であって、以下に詳述するO2センサ2,診断装置(診断手段)3及び報知ランプ5を備えて構成される。
排気浄化触媒1よりも下流側の排気通路上には、排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサの一例として、O2センサ(酸素濃度検出手段、以下単にセンサとも呼ぶ)2が備えられている。排気浄化触媒1に担持されているトラップ剤7が飛散した場合には、トラップ剤7を含んだ排気が下流側へ流れるため、トラップ剤7の一部がセンサ2の表面に付着することになる。つまり本触媒診断装置4では、センサ2の表面に付着したトラップ剤7の付着量とトラップ剤7の飛散量との相関関係を利用して、排気浄化触媒1の劣化状態を診断するようになっている。
排気浄化触媒1に担持されているトラップ剤(ここでは、カリウム)7が排気浄化触媒1から飛散するとO2センサにどのように影響するか確かめたところ、リッチ時のO2センサの出力がカリウムの飛散に応じて低下することを確認した。図5は空気過剰率λに対するO2センサの起電力、及びO2センサ表面の酸素濃度を、プラチナ(Pt)電極の触媒作用あり及びなしで比較したものである。電極として触媒作用のあるプラチナ(Pt)を使用することで電極表面に接触した未燃焼ガスを完全燃焼させたり、非平衡の各種ガスは平衡状態まで反応を進行させて最後に残った酸素量を検出する機能を持っている。ここで、図5の下図に実線で示すグラフは、プラチナ電極を用いた場合でのO2センサ2の出力であり、飛散したカリウムの付着による被毒がない場合に相当する。一方、図5の下図に破線で示すグラフは、プラチナ電極を用いない場合でのO2センサ2の出力であり、飛散したカリウムの付着による被毒が進むにつれてこれと同様な出力特性が現れる。
排気浄化触媒1の下流にO2センサ2を配置した場合に、排気浄化触媒1から飛散したカリウムがO2センサ2に付着することで、O2センサ2のリッチ出力結果に及ぼす影響について実験を行った。
本来の排気浄化システムは、図6(a)に示すように排気通路上に上流側から排気浄化触媒として三元触媒9とNOXトラップ触媒(本発明にかかる排気浄化触媒)1とを順に備え、さらに、三元触媒9の上流にフロントO2センサ(F−O2センサ)10と、NOXトラップ触媒1の下流にリアO2センサ(R−O2センサ;本発明にかかるO2センサ)2とを備える構成である。本実験では、一つの排気浄化触媒ケース内に三元触媒9及び排気浄化触媒(NOXトラップ触媒)1をいずれも1つずつ、あるいは、いずれかを二つ備えることのできる構成としてモデル化し、図6(a)に示す本来の排気浄化システムを模式的に再現できる3つの構成パターンで実験を行い、O2センサ(R−O2センサ)2の出力を比較した。
診断装置3は、排気浄化触媒1の劣化状態を診断するための電子制御装置(コンピュータ)であり、内部に判定部3aを備えて構成されている。なお、診断装置3には、図示しない検出手段(任意の公知手段)を利用して把握されたエンジンEの運転状態が随時入力される。本実施形態ではこの運転状態として、NOXパージ制御条件が入力されるようになっている。
まず、センサ出力のピーク値Vが第1基準値V1以上の場合には、排気浄化触媒1が劣化していないと診断する。また、センサ出力のピーク値Vが第1基準値V1よりも小さくかつ第2基準値V2以上である場合には、排気浄化触媒1の劣化の度合いが小さいと診断する。センサ出力のピーク値Vが第2基準値V2よりも小さい場合には、排気浄化触媒1の劣化の度合いが大きいと診断する。つまり、トラップ剤7の飛散が進行するほど排気中へ飛散するトラップ剤7の量が増加するため、センサ2に付着して堆積するトラップ剤7の量も増加する。このようなセンサ出力のピーク値Vとトラップ剤7の飛散現象との相関関係を利用して排気浄化触媒1の劣化診断がなされているのである。なお、ここでは、一旦センサ2に付着したトラップ剤7はセンサ2に捕捉されて、再びセンサ2の内部から飛散することがないものと見做されている。
また、診断装置3の判定部3aにおける診断結果を報知するための手段として報知ランプ5が備えられている。本実施形態では、上記の3種類の診断結果に対応して、3個の報知ランプ5が車両のインパネ部に取り付けられている。
[排気浄化のメカニズム]
次に、排気浄化触媒1における排気中の有害成分の浄化のしくみについて、図2(a),(b)を用いて簡単に説明する。
ここで生成されたNO2や排気中に含まれていたNO2等の窒素酸化物(NOX)は、触媒6上でさらに酸化され、硝酸イオン(NO3 -)の形でトラップ剤7中に拡散しながらカリウム(K)に吸着される。このような化学反応は、排気中の酸素濃度が高い状態であれば、継続的に観察される。また、吸着されうるNO3 -の量(最大吸着量)はこれに結合しうるカリウムの量に対応し、排気浄化触媒1の最大トラップ能力はトラップ剤7の担持量に比例する。
ここで放出されたNO2や排気中に含まれていたNO2は、触媒6の表面上において排気中の未燃燃料(HC)や一酸化炭素(CO),水素(H2)によって窒素(N2)に還元されるとともに、COやH2が酸化されて、二酸化炭素(CO2),水蒸気(H2O)として排気中に放出される。このようにして、排気中のNOXとCOとが共に浄化される。
次に、図8,図9を用いて本触媒診断装置4における劣化判定に係るフローチャートを説明する。図8に示すフローチャートは、排気浄化触媒のNOXパージ制御であり、図9に示すフローチャートは、センサ2へのカリウムの付着堆積によるリッチ運転時のセンサ出力の変化と排気浄化触媒1からのカリウムの飛散量との相関関係を利用して劣化判定を行うものである。なお、図9に示す劣化判定は、図8に示す排気浄化触媒のNOXパージ制御の際に繰り返し実行されている。
そして、続くステップS130において、ステップS120で行われたA/Fリッチ化及び追加噴射処理の経過時間が所定時間以上であるか否かの判断がタイマカウント値に基づいてなされ、ステップS130でA/Fリッチ化及び燃料の追加噴射処理の経過時間が所定時間以上であると判断されるまでステップS120の処理が繰り返される。そして、A/Fリッチ化及び燃料の追加噴射処理の経過時間が所定時間以上であると判断された場合に、ステップS140では、A/Fリッチ化処理が行われる。このステップS140の開始時にはタイマが起動する。
つまり、ステップS210では、NOXパージ制御の間は順次O2センサ2の検出値が読込まれ、NOXパージ制御が終了した後、続くステップS220では、O2センサ2の検出値の極大値(ピーク値)の判定が行われる。この判定処理は、NOXパージ制御の完了まで行われ、この間、O2センサ2の検出値が増加から減少に転じた点の出力値をピーク値候補として記憶しておき、ステップS225でNOXパージの完了が判定されたら、その時点で記憶されている複数のピーク値候補の中の最大値を、今回のNOXパージ制御におけるO2センサの検出値ピーク値とする。もちろん、ピーク値候補として一つしか記憶されていない場合は、その値を今回のNOXパージ制御におけるO2センサ2の検出値ピーク値とする。
また、ステップS230においてO2センサ2のピーク値が第1基準値V1よりも小さいとする場合には、ステップS250へ進み、更にO2センサ2のピーク値に対して第2基準値V2以上であるか否かの判断がされ、O2センサ2のピーク値が第2基準値V2である場合には、ステップS260でトラップ能力劣化度合い小と判断される。
なお、ステップS220において、NOXパージ制御の間でもO2センサ2の検出値のピーク値が明確に検出できる場合は、NOXパージ制御の終了を待たずして排気浄化触媒の劣化状態を診断してもよい。
以上のような制御により、本触媒診断装置4によれば、O2センサ2のセンサ出力を利用して排気浄化触媒1からのトラップ剤7の飛散量を診断することができるため、排気浄化触媒1上に飛散せずに残存しているトラップ剤7の担持量を把握することができる。これにより、排気浄化触媒1の吸着能力の上限値(すなわち、最大トラップ能力)を診断することができる。
以上、本発明について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述の各実施形態では、排気浄化触媒1の担持層に担持されているトラップ剤7としてカリウム(K)が用いられたものが例示されているが、これをその他のトラップ剤7としての機能を有する物質に置き換えてもよい。つまり、ナトリウム(Na)やリチウム(Li)等のアルカリ金属,アルカリ土類金属を適宜利用してもよく、これらを適用した構成の場合も上述の実施形態と同様の作用効果を奏するものとなる。
また、本発明では、排気浄化触媒1の劣化度合いの判断には、センサ2の出力の極大値(ピーク値)を求めて、そのピーク値と第1,2基準値との比較を行っているが、NOXパージ制御が開始してから一定時間後のセンサ出力値やセンサ出力の積分値から排気浄化触媒1の劣化状態を判断しても良い。
また、本発明では、O2センサを使用しているが、リニアA/Fセンサなど酸素濃度を検出できるものであればどのようなセンサでもよい。リニアA/Fセンサを使用して劣化状態を診断する場合は、センサの特性として還元雰囲気では排気ガス中の未燃ガスであるCO、HC、H2を完全燃焼させるのに必要な酸素量に比例した電流を出力としているため、O2センサと同様に還元雰囲気での電流の出力のピーク値あるいは積分値とを比較することによって劣化状態を判断することができる。
2 O2センサ(酸素濃度検出手段,センサ,R−O2センサ)
2a,2b 電極
2c 固体電解質
2d 電極保護層(スピネル層)
2e トラップ層
3 診断装置(診断手段)
3a 判定部
4 触媒診断装置
5 報知ランプ
6 貴金属触媒(プラチナ,触媒)
7 トラップ剤(カリウム,吸着材)
8 硝酸塩
9 三元触媒
10 O2センサ(F−O2センサ)
E エンジン
Claims (6)
- 内燃機関の排気通路に設けられ、排気中の有害成分を吸着又は放出する吸着材を担持してなる排気浄化触媒の劣化状態を診断する触媒診断装置であって、
該排気通路の該排気浄化触媒の下流に設けられ該排気中の酸素濃度状態を検知する酸素濃度検出手段と、
該排気が還元雰囲気にある時の該酸素濃度検出手段の出力から該排気浄化触媒からの該吸着材の飛散量を推定し、該飛散量に基づいて該劣化状態を診断する診断手段とを備えた
ことを特徴とする、触媒診断装置。 - 該排気浄化触媒は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含んだ吸着材を有するとともに、
該酸素濃度検出手段は、該排気が酸化雰囲気にあるか還元雰囲気にあるかを検出するO2センサである
ことを特徴とする、請求項1記載の触媒診断装置。 - 該O2センサは、該排気が還元雰囲気である場合に起電力が高くなり、
該診断手段は、該O2センサから出力された該起電力の代表値が予め設定された閾値未満になったら、該吸着材の飛散量が過剰になり該排気浄化触媒が該劣化状態にあると診断する
ことを特徴とする、請求項2記載の触媒診断装置。 - 該閾値は複数設定され、
該診断手段は、該O2センサから出力された該起電力の代表値を該複数の閾値と比較して該排気浄化触媒の劣化の程度を診断する
ことを特徴とする、請求項3記載の触媒診断装置。 - 該排気浄化触媒は、酸化雰囲気でNOxを吸着し還元雰囲気でNOxを放出するNOxトラップ触媒であって、所定の条件下で、排気を還元雰囲気とするとともに排気中に燃料を供給されてNOx放出を行なうように構成され、
該診断手段は、該排気浄化触媒からの該NOx放出時に、該劣化状態を診断する
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の触媒診断装置。 - 該排気浄化触媒は、酸化雰囲気でNOxを吸着し還元雰囲気でNOxを放出するNOxトラップ触媒であって、該NOxトラップ触媒に担持された該吸着材は、カリウムである
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の触媒診断装置。
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