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JP2008051017A - 予混合圧縮自着火内燃機関 - Google Patents

予混合圧縮自着火内燃機関 Download PDF

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JP2008051017A
JP2008051017A JP2006228758A JP2006228758A JP2008051017A JP 2008051017 A JP2008051017 A JP 2008051017A JP 2006228758 A JP2006228758 A JP 2006228758A JP 2006228758 A JP2006228758 A JP 2006228758A JP 2008051017 A JP2008051017 A JP 2008051017A
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JP2006228758A
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Tatsuo Kobayashi
辰夫 小林
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Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】 残留ガスを用いて失火を生じない自着火燃焼を行わせつつ逆流ガスを用いて混合ガス温度を精度良く調整することが可能な予混合圧縮自着火内燃機関を提供すること。
【解決手段】 排気弁電磁駆動機構及び吸気弁電磁駆動機構は、第1排気弁開弁期間EX1及び吸気弁開弁期間INの負のオーバーラップにより既燃ガスの一部を残留ガスとして燃焼室内に残留させる。排気弁電磁駆動機構は吸気行程内の第2排気弁開弁期間EX2における排気弁の開弁により、既燃ガスの他の一部を逆流ガスとして排気ポートから燃焼室内へと逆流させる。逆流ガスの温度は残留ガスよりもやや低い。アクセル開度センサはアクセル操作量を検出し、この操作量は機関の負荷を表す。CPUは高負荷側運転時において、逆流ガス量に対する残留ガス量の比率が低負荷側運転時よりも小さくなるように、第1排気弁開弁期間EX1及び第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングを遅角させる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、圧縮行程にて燃焼室内の混合ガスを圧縮することにより自着火(自己着火)させ、膨張行程にてこの自着火した混合ガスを燃焼させる予混合圧縮自着火内燃機関(以下、単に「機関」ということがある。)に関する。
従来から知られたこの種の機関の一つは、空気、燃料及び既燃ガス(排ガス)を含むガスを燃焼させることにより、自着火燃焼を制御するようになっている。より具体的に述べると、この機関は外部EGRシステム又は内部EGRシステムを利用している。
外部EGRシステムは、排気還流用管路、EGR弁及び熱交換器等を備える周知のシステムである。この外部EGRシステムは、燃焼室から排出された既燃ガスを熱交換器により冷却し、冷却された既燃ガスを排気還流用管路を通して機関の吸気系に戻す(還流させる)ことにより、燃焼室へと既燃ガスを流入させる。以下、この外部EGRシステムにより燃焼室に導入されるガスを「還流ガス」という。燃焼室へと流入する還流ガスの量は、EGR弁の開度を変更することにより調整される。
内部EGRシステムの一つは、吸気動作中の所定の開弁期間において排気弁を開くことにより、排気ポートから燃焼室へと既燃ガスを逆流させるようになっている。この逆流する既燃ガスを「逆流ガス」という。逆流ガスの量は、吸気動作中の開弁期間を変更することにより調整される。また、内部EGRシステムの他の一つは、排気動作を終了するため排気弁を閉じた後に吸気動作を開始するため吸気弁を開き、この所謂「排気弁及び吸気弁の負のオーバーラップ」を利用して燃焼室に既燃ガスを残留させる。ここで燃焼室に残留する既燃ガスを「残留ガス」という。残留ガスの量は、負のオーバーラップ期間を変更することにより調整される。
例えば特許文献1に開示されている機関は、これら冷却された還流ガス及びより高温の逆流ガスの双方を用いる機関であって、還流ガス量及び逆流ガス量の比率を機関の負荷に応じて変化させるようになっている。即ち、この従来の機関は低負荷運転時に逆流ガスをより多くすることによって、自着火すべきタイミングにおける燃焼室内の混合ガスの温度(混合ガスが燃焼し始める圧縮端温度)をより高めて失火を防ぎ自着火による燃焼を安定させる。一方、この機関は高負荷運転時に還流ガスをより多くすることによって、自着火のタイミング前後における燃焼室内の過度の温度上昇を抑えて異常燃焼(過早着火又はノッキング等)を防いでいる。また、この特許文献1において、逆流ガスと残留ガスとを互いに置換可能な内部EGRガスとして扱うことができることが開示されている。即ち、その開示されている機関は、還流ガス量と逆流ガス量との比率に代えて、還流ガス量と残留ガス量との比率を機関の負荷に応じて変更するようになっている。
しかしながら、従来の機関において燃焼室内へと高負荷運転時により多く流入させる還流ガスは冷却されているから、燃焼室内の混合ガスの温度はその流入させる還流ガスの量が僅かに増大しただけで大きく低下してしまう。つまり、自着火のタイミングを制御するために混合ガスの温度を精度良く調整することが重要であるにもかかわらず、従来の機関では混合ガスの温度を微調整することが難しく、その結果、混合ガスが圧縮端温度に至って自着火するタイミングを十分精密に制御することが困難になっている。
特開2005−16407号公報
従って、本発明の目的の1つは、残留ガスを用いて失火等を生じない安定した自着火燃焼を行わせつつ、逆流ガスを用いて混合ガスの温度をより細やかに調整することが可能な予混合圧縮自着火内燃機関を提供することにある。
本発明に係る予混合圧縮自着火内燃機関は、吸気、圧縮、膨張及び排気の各動作を順に含む燃焼サイクルを所定数のシリンダにて順次実行する。本機関は各シリンダ内に形成された燃焼室において、空気と燃料とを含む混合ガスを圧縮することにより自着火させて燃焼させるようになっており、残留ガス生成手段と、逆流ガス生成手段と、出力状態検出手段と、比率制御手段とを備える。
残留ガス生成手段は、前回の燃焼サイクルにおいて混合ガスの燃焼により燃焼室内に生じた既燃ガスのうちの一部が残留ガスとして、前回の次ぎになる今回の燃焼サイクルにおいて燃焼する混合ガス中に含まれるように、この既燃ガスの一部を燃焼室内に残留させる。
逆流ガス生成手段は、前回の燃焼サイクルにおいて生じた後に排気動作により燃焼室から排気ポートへと一旦排出されたガスの一部となる既燃ガスのうちの他の一部が逆流ガスとして、今回の燃焼サイクルにおいて燃焼する混合ガス中に含まれるように、この既燃ガスの他の一部を燃焼室内に逆流させる。排気ポート内やバルブシートは燃焼室内よりも温度が低いから、逆流ガスは排気ポートやバルブシートに熱を奪われ、その温度は上記残留ガスよりもやや低くなる。その一方、逆流ガスの温度は前述した還流ガスの温度よりも高い。
出力状態検出手段は、機関の出力に応じて変化する出力状態値を検出する。具体的には、後述のように、この出力状態値として機関の負荷又は回転速度を用いる。更に、この出力状態値に機関のトルク、燃焼室内のガス又は排ガスの温度、圧縮上死点又は燃焼時前後における燃焼室内のガスの圧力などを用いてもよい。比率制御手段は、この検出された出力状態値に応じた機関の出力が大きくなるほど、上記逆流させられる逆流ガスの量に対する上記残留させられる残留ガスの量の比率がより小さくなるように、上記残留ガス生成手段及び上記逆流ガス生成手段の少なくとも一方を制御する。
本機関によれば、機関の出力が大きくなるほど、上記逆流させられる逆流ガスの量に対する上記残留させられる残留ガスの量の比率がより小さくなるように調整される。その結果、低出力運転時において残留ガス量の比率はより大きいから、失火を生じさせることなく自着火による燃焼をより安定させることができる。また、高出力運転時において、本機関は異常燃焼を防ぐために従来のように冷却された還流ガスの比率を高めるのではなく、残留ガスよりもやや温度が低い逆流ガスの比率を高めている。そのため、混合ガスの温度をより細やかに精度良く調整することが可能となる。これにより、低出力運転時か高出力運転時かに関わらず自着火のタイミングを適切に制御することができる。
本発明の予混合圧縮自着火内燃機関において、出力状態検出手段は出力状態値として機関の負荷を検出してよい。機関の負荷は、例えば吸入空気量、スロットル弁開度、アクセルペダルの操作量若しくは燃料噴射量などにより表すことが可能であるから、出力状態検出手段はこれらの何れかを検出する。ここでは、比率制御手段は上記残留ガス生成手段及び上記逆流ガス生成手段の少なくとも一方を、検出された機関の負荷が大きくなるほど逆流ガス量に対する残留ガス量の比率がより小さくなるように制御する。
通常、高負荷運転時には吸入空気量及び燃料噴射量が多くなり燃焼室内はより高温となるから、異常燃焼が生じやすくなる。これに対して、本機関では、高負荷運転時において残留ガス量の比率がより小さく調整されており、これによって高負荷運転時において混合ガスの圧縮端温度が過度に上昇して過早着火等の異常燃焼が起きることを防ぐことができる。
また、本発明の予混合圧縮自着火内燃機関において、出力状態検出手段は出力状態値として機関の回転速度を検出してもよい。ここでは、比率制御手段は上記残留ガス生成手段及び上記逆流ガス生成手段の少なくとも一方を、検出された機関の回転速度が大きくなるほど逆流ガス量に対する残留ガス量の比率がより小さくなるように制御する。
通常、高速運転時には排気動作のため排気弁を開く時間が短くなるから、既燃ガス自体が燃焼室内に留まろうとする慣性により既燃ガスが排気ポートへと排出され難くなる。そのため、高速運転時に残留ガス量が増加する。これとともに高速運転時には既燃ガスから燃焼室の側壁面への伝熱時間が短くなる。これらにより高速運転時に混合ガスの温度がより高くなる。これに対して、本機関では、高速運転時において残留ガス量の比率がより小さく調整されており、これによって高速運転時における異常燃焼が防がれている。
この機関は、検出された機関の回転速度が大きいほど燃焼室に吸入される空気の量をより多くするガス量調節手段を更に備えていることが好ましい。例えば、この高速運転時における吸入ガスの増量は、アクセル開度に対するスロットル弁開度を通常時よりも大きくするように補正することにより、またターボチャージャにより上昇される過給圧を通常時よりも大きな値に補正することにより行われる。これによると、高速運転時において、残留ガス又は逆流ガスよりも低温の空気が燃焼室内に多量に吸入されるから、混合ガスの圧縮端温度をより有効に低下させて異常燃焼を防ぐことができる。
本機関において、残留ガス生成手段は、前回の燃焼サイクル中の排気動作を行う期間である第1排気弁開弁期間にて排気弁を開くとともに今回の燃焼サイクル中の吸気動作を行う期間である吸気弁開弁期間にて吸気弁を開くことにより、混合ガスの燃焼により燃焼室内に生じた上記既燃ガスのうちの一部を上記残留ガスとして燃焼室内に残留させることが望ましい。そして、逆流ガス生成手段は、今回の燃焼サイクル中の吸気弁開弁期間内に開始タイミングを有する第2排気弁開弁期間にて排気弁を開くことにより、燃焼室から一旦排出されたガスの一部となる上記既燃ガスの他の一部を上記逆流ガスとして燃焼室内へと逆流させることが望ましい。これによると、混合ガスの温度を微調整する等といった効果が、排気弁及び吸気弁の開閉タイミングを変更するための簡便な構成により達せられ、複雑な構造を要しない。そのため、機関の製造コストを低く抑えることができる。
上述した機関においてシリンダは、(1)直列型に3気筒又はV型に各列3気筒ずつ6気筒配置してよい。以下、上述した機関において、このようなシリンダ配置を有する機関を単に「直列3気筒等の機関」と称する。この直列3気筒等の機関において、上記比率制御手段は上記逆流ガス生成手段を制御することによって、上記出力状態検出手段により検出された出力状態値(即ち、負荷又は回転速度等)が大きくなるほど第2排気弁開弁期間の終了タイミングをより遅らせるようになっていることが好ましい(図5の(A)を参照。)。
ところで、一のシリンダにおける第2排気弁開弁期間は一般に吸気行程の中期から後期にかけての期間が設定される。そのため、直列3気筒等の機関においてこの第2排気弁開弁期間の初期は、他のシリンダの排気弁が開かれた直後にブローダウンが生ずるタイミングと略前後して重なり、その排気圧力(排気ポート、排気マニホールド及び排気管の近傍の圧力)は急激に変動して安定しない。一方、この第2排気弁開弁期間の後期における排気圧力は比較的安定している。
この第2排気弁開弁期間についてより具体的に説明する。本機関を直列3気筒機関として、各シリンダを、機関の出力を取り出す側と離れた位置から順に第1シリンダ、第2シリンダ、第3シリンダと特定する。第1シリンダにおける第2排気弁開弁期間(図4のシリンダ#1の第2排気弁開弁期間EX2)の初期は、第3シリンダにおける第1排気弁開弁期間(同図4のシリンダ#3の排気弁開弁期間EX1)の初期と重なり、この第3シリンダによるブローダウンが生じた直後のタイミングとなっている(同図4のBD#3の実線を参照。)。ブローダウンによって排気圧力(同図4の排気圧力PE)は急激に上昇し、その後急激に下降する。このブローダウン前後のタイミングにて燃焼室内へと吸入される逆流ガスの量を調整しようとしても、その逆流ガスの量はその排気弁を開く度に大きく変動する可能性があり、また排気弁を開くタイミングの僅かな変化に対してその逆流ガス量は大きく変動してしまう。即ち、第2排気弁開弁期間における逆流ガス量を、その第2排気弁開弁期間の開始タイミングを変更することによって微調整することは難しい。これに対し、第2排気弁開弁期間の後期において排気圧力は比較的変化が乏しく安定しているから、このタイミングの前後にて逆流ガスを吸入すると、その逆流ガス量は安定している。つまり、第2排気弁開弁期間における逆流ガス量を、その第2排気弁開弁期間の終了タイミングを変更することによって微調整することが可能である。
従って、直列3気筒等の機関において上記検出された出力状態値(例えば負荷)が大きいほど、第2排気弁開弁期間の終了タイミングをより遅らせて逆流ガスを増やすことによって、他のシリンダのブローダウンによる影響が防がれつつ混合ガスの温度が微調整される。
また、直列3気筒等の機関において開始タイミング制御手段を更に設けてもよい。この開始タイミング制御手段は上記残留ガス生成手段を制御することによって、上記検出された出力状態値が大きくなるほど第1排気弁開弁期間の開始タイミングをより遅らせるようにこの開始タイミングを調節する(図5の(B)を参照。)。この場合、比率制御手段は上記逆流ガス生成手段を制御することによって、第2排気弁開弁期間の開始タイミングを、開始タイミング制御手段により調節される第1排気弁開弁期間の開始タイミングに対し予め調整されているタイミングまで遅らせる。
開始タイミング制御手段による第1排気弁開弁期間の開始タイミングの上述した調整は、例えば機関の膨張比を変更することを目的として行われる。即ち、ここでは、高負荷運転時において第1排気弁開弁期間の開始タイミング(及び終了タイミング)を低負荷側自着火運転時よりも遅角させ、これにより膨張比をより大きくする。このように膨張比を大きくすることにより熱効率が高められる。一方、低負荷側自着火運転時においてこの第1排気弁開弁期間の開始タイミング(及び終了タイミング)を高負荷運転時よりも進角させ、これにより膨張比を小さくする。既燃ガスを十分に断熱膨張させると温度が低下してしまうが、この第1排気弁開弁期間の進角によってその温度低下が抑えられる。また、この第1排気弁開弁期間の開始タイミングの調整は、残留ガス量を調整することを目的として行ってもよい。
更に、前述したように、直列3気筒又はV型6気筒等の機関では、一のシリンダにおける第2排気弁開弁期間の初期は他のシリンダにおける排気行程の初期と重なり、逆流ガス量(第2排気弁開弁期間における排気ポートからの既燃ガスの吸入量)を安定させることは難しい。これに対し、本機関のように、開始タイミング制御手段による第1排気弁開弁期間の開始タイミングの変更に合わせて、第2排気弁開弁期間の開始タイミングを予め調整されたタイミングまで遅らせれば、他のシリンダのブローダウンにより逆流ガス量が変動することを抑えることができる。(当然ながら、機関が有する複数のシリンダは同じように排気弁開弁期間の開始タイミングを調節され、また同じように第2排気弁開弁期間を変更されることを前提としている。)
加えて、先述した機関においてシリンダは、(2)直列型に4気筒又はV型に各列4気筒ずつ8気筒配置してもよい。以下、先述した機関において、このようなシリンダ配置を有する機関を単に「直列4気筒等の機関」と称する。直列4気筒等の機関において、上記比率制御手段は上記逆流ガス生成手段を制御することによって、上記出力状態検出手段により検出された出力状態値が大きくなるほど第2排気弁開弁期間の開始タイミングをより進めるようになっていることが望ましい(図5の(C)を参照。)。
第2排気弁開弁期間につきより具体的に説明する。本機関を直列4気筒機関として、上述と同様に、各シリンダを、出力側と離れた位置から順に第1シリンダ、第2シリンダ、第3シリンダ、第4シリンダと特定する。このとき、第1シリンダにおける第2排気弁開弁期間(図8のシリンダ#1の第2排気弁開弁期間EX2)の後期は、第4シリンダにおける第1排気弁開弁期間(同図8のシリンダ#4の第1排気弁開弁期間EX1)の初期と重なる。即ち、第1シリンダの第2排気弁開弁期間の後期は、第4シリンダによるブローダウンが生ずるタイミングとなっている。このブローダウン前後に排気圧力は激しく上下する(同図8のBD#4の実線を参照。)。これに対して、第2排気弁開弁期間の初期における排気圧力は比較的安定している。
従って、直列4気筒機関等においては検出された出力状態値が大きいほど第2排気弁開弁期間の開始タイミングをより進めることにより逆流ガスを増やすことによって、第2排気弁開弁期間が他のシリンダのブローダウンと重なり、第2排気弁開弁期間における逆流ガス量がそのブローダウンの影響を受けて急激に変動することを防ぐことができる。
また、直列4気筒等の機関において別の開始タイミング制御手段を更に設けてもよい。この開始タイミング制御手段は上記残留ガス生成手段を制御することによって、上記検出された出力状態値が大きくなるほど第1排気弁開弁期間の開始タイミングをより遅らせるようにこの開始タイミングを調節する(図5の(D)を参照。)。このとき、比率制御手段は上記逆流ガス生成手段を制御することによって、第2排気弁開弁期間の終了タイミングを、開始タイミング制御手段により調節される第1排気弁開弁期間の開始タイミングに対し予め調整されているタイミングまで遅らせる。これによって、他のシリンダのブローダウンによる悪影響を回避することができる。
以下、本発明による予混合圧縮自着火内燃機関の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
a.第1実施形態
図1は第1実施形態に係る内燃機関の概略構成を示している。この内燃機関10は4ストローク直列3気筒機関である。即ち、機関10が有する3つのシリンダは(紙面と垂直な方向に)一列に並べて配置されており、各シリンダにおいて順次実行される1つの燃焼サイクルは順に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を含んでいる。また、機関10は自着火運転方式と火花点火運転方式とを切り替えて運転するようになっている。なお、この図1には1つのシリンダの縦断面のみを示しているが、他のシリンダも同様の構成を備えている。
機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20に空気(新気)を供給するための吸気系40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、この往復動がコンロッド23を通じてクランク軸24に伝達され、これによりクランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21の側壁面とピストン22の頂面とは、シリンダヘッド部30の下面とともにペントルーフ型の燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、混合ガス(少なくとも空気と燃料とを含む。)を燃焼室25内へと吸入させるための燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉するための吸気弁32、駆動回路33に接続されていてこの駆動回路33からの駆動信号に応答して吸気弁32を電磁的に開閉する吸気弁電磁駆動機構32aを備えている。この吸気弁電磁駆動機構32aは吸気弁32の開閉に先立って予め設定された開閉タイミング(クランク角度)にてまた予め設定されたリフト量VLだけ吸気弁32を開くようになっている。CPU71はこの開閉タイミング及びリフト量VLを機関10の負荷に応じて可変に設定することが可能である。後述する排気弁電磁駆動機構38aについても同様である。
また、シリンダヘッド部30は、燃焼室25内に、吸気行程中の所定のタイミングにて、混合ガスを形成するための燃料をこの燃焼室25内の上部に向けて直接噴射する直噴弁34、及び、燃焼室25内の上部に露呈した電極部における火花放電より混合ガスに火花点火する点火プラグ35を備えている。直噴弁34には図示しない蓄圧室、燃料ポンプ及び燃料タンクが順に接続されている。これら蓄圧室、燃料ポンプ及び燃料タンクは機関10に1つずつ設けられ、3つのシリンダに設けられた各直噴弁の間で共用される。燃料ポンプは燃料タンク内の燃料を高圧にしてから蓄圧室に供給し、蓄圧室は高圧の燃料を貯蔵するようになっている。直噴弁34は、駆動信号(燃料噴射信号)に応答して開いたとき、蓄圧室から燃焼室25内へと高圧の燃料を噴射するようになっている。点火プラグ35には、この点火プラグ35に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ36が接続されている。点火プラグ35は火花点火運転時に混合ガスへの火花点火を行い、自着火運転時に火花点火を停止するように制御されるようになっている。
更に、シリンダヘッド部30は、既燃ガス(混合ガスの燃焼により生じたガス)を燃焼室25から排出させるための燃焼室25に連通した排気ポート37、排気ポート37を開閉するための排気弁38、及び、駆動回路33に接続されていて駆動回路33からの駆動信号に応答して排気弁38を電磁的に開閉する排気弁電磁駆動機構38aを備えている。
吸気系40は、下流側となる各シリンダの吸気ポート31へとそれぞれ枝分かれして連通した吸気マニホールド41、この吸気マニホールド41の上流側への集合部となるサージタンク42、サージタンク42に一端が接続された吸気ダクト43、吸気ダクト43の他端部から下流に向けて吸気マニホールド41側へと順に吸気ダクト43に配設されたエアフィルタ44、ターボチャージャ81のコンプレッサ81a、バイパス流量調整弁45、インタークーラ46及びスロットル弁47を備えている。
加えて、吸気系40は、インタークーラ46をバイパスするためのバイパス通路48を備えている。このバイパス通路48の一端はバイパス流量調整弁45と接続されており、その他端はインタークーラ46とスロットル弁47の間の位置にて吸気ダクト43に接続されている。バイパス流量調整弁45は、駆動信号に応答してバルブ開度を変更することにより、インタークーラ46へと流入する空気量と、バイパス通路48へと流入する空気量(インタークーラ46をバイパスする空気量)とを調整できるようになっている。このインタークーラ46は本例では水冷式であって、吸気ダクト43を通過していく空気を冷却するようになっている。
スロットル弁47は吸気ダクト43内においてこの吸気ダクト43に回動可能に支持されており、スロットルモータ47aに接続されている。スロットルモータ47aはスロットル弁47を回転駆動し、これにより吸気ダクト43の開口断面積を変更するようになっている。
排気系50は、上流側となる各シリンダの排気ポート37へとそれぞれ枝分かれして連通した通路と、この各通路を下流側にて合流させる集合部とからなる排気マニホールド51、排気マニホールド51の集合部の下流にてこの集合部から連通した排気管52、排気管52内に配設されたターボチャージャ81のタービン81b、排ガスがタービン81bをバイパスするように両端がこのタービン81bの上流及び下流にて排気管52に連通したウェイストゲート通路53、ウェイストゲート通路53に配設された過給圧調整弁53a、及び、タービン81bの下流の排気管52に配設された三元触媒54を備えている。
これらのように吸気系40と排気系50との各部を配置することによって、ターボチャージャ81のタービン81bは排ガスのエネルギーにより回転し、このタービン81bの回転がタービン81bと同軸上のコンプレッサ81aへと伝わり、この伝えられた回転によりコンプレッサ81a内の空気が圧縮される。ターボチャージャ81はこのようにして機関10に空気を過給するようになっている。また、過給圧調整弁53aはタービン81bへと流入していく排ガスの量を駆動信号に応答して調整し、これにより吸気マニホールド41内の圧力(過給圧)を調整するようになっている。
機関10はエアフローメータ61、クランクポジションセンサ62及びアクセル開度センサ63を備えている。エアフローメータ61は吸入されていく空気量Gaを表す信号を出力するようになっている。クランクポジションセンサ62は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにクランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この幅広のパルス信号が機関10の回転速度NEを表す。アクセル開度センサ63は、運転者により操作されるアクセルペダル82の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバス接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともにこの格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、並びに、ADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース75は上記センサ61〜63と接続され、CPU71にセンサ61〜63からの信号を供給するようになっている。また、インターフェース75は駆動回路33、直噴弁34、イグナイタ36、バイパス流量調整弁45、スロットルモータ47a及び過給圧調整弁53aと接続されていて、CPU71の指示に応じてこれらに駆動信号を送出するようになっている。
加えて、電気制御装置70は、自着火運転方式と火花点火運転方式との切り替え制御を機関10の負荷L及び回転速度NEに応じて行い、更に、各運転方式に応じて吸気弁32及び排気弁38の開閉タイミング及びリフト量VL、直噴弁34による燃料の噴射タイミング及び噴射量、点火プラク35による火花点火の有無などを設定するようになっている。本例では機関10の負荷Lをアクセルペダル82の操作量Accpにより表す。
この運転方式の切り替えについてより具体的に説明する。先ず電気制御装置70のROM72には図2に示した運転領域マップが記憶されている。この運転領域マップは低負荷側自着火運転方式、高負荷側(中高負荷側)自着火運転方式及び火花点火運転方式と、機関10の負荷L(アクセルペダル82の操作量Accp)及び回転速度NEとの関係を規定する。運転領域マップ中に示した低負荷側自着火領域R1及び高負荷側自着火領域R2において自着火運転方式による運転及び火花点火運転方式による運転が可能である。低負荷側自着火領域R1は全運転領域のうち、低負荷であって且つ低回転速度から中回転速度の領域であり、高負荷側自着火領域R2は低負荷側自着火領域R1よりも高負荷側となる領域である。低負荷側自着火領域R1及び高負荷側自着火領域R2は、運転中に大きな燃焼騒音や失火が発生しないこと等に基づいてその範囲が予め設定されている。後述するように、低負荷側自着火領域R1と高負荷側自着火領域R2との間では、吸気弁32及び排気弁38を開閉するタイミングが異なっている。
また、運転領域マップ中の火花点火領域R3においては火花点火運転方式による運転のみが可能である。火花点火領域R3は全運転領域から自着火領域R1,R2を除いた領域であって、全運転領域のうち「極低負荷又は高負荷であって且つ低回転速度から中回転速度の領域」及び「極低負荷から高負荷であって且つ高回転速度の領域」である。
(残留ガス量及び逆流ガス量の比率の調整)
機関10の特徴の1つは自着火運転時において、低負荷側での運転(低負荷側自着火領域R1における運転)と高負荷側での運転(高負荷側自着火領域R2における運転)との間で吸気弁32及び排気弁38の開閉タイミングを異ならせることにある。これによって、燃焼室25内における残留ガスの量と逆流ガスの量との比率を調整する。ここで、残留ガスとは排気行程において排気を終了したタイミングにて燃焼室25内に残留している既燃ガスをいう。また、逆流ガスとは吸気行程内に開始タイミングを有する所定期間において排気弁38を開くことによって排気ポート37から燃焼室25内へと逆流する既燃ガスをいう。
図3は自着火運転時における各シリンダの吸気弁32及び排気弁38のクランク角度CAに応じたリフト量VLの変化を模式的に示している。曲線C1は、低負荷側自着火運転時における排気動作のために開閉させる排気弁38のリフト量VLの変化を表しており、曲線C2は、高負荷側自着火運転時における排気動作のために開閉させる排気弁38のリフト量VLの変化を表している。曲線C3は、低負荷側自着火運転時及び高負荷側自着火運転時における吸気動作のために開閉させる吸気弁32のリフト量VLの変化を表している。曲線C4は、低負荷側自着火運転時における逆流ガスの吸入のために開閉させる排気弁38のリフト量VLの変化を表しており、曲線C5は、高負荷側自着火運転時における逆流ガスの吸入のために開閉させる排気弁38のリフト量VLの変化を表している。
1つの燃焼サイクルは上述のように吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を順に含んでいる。これら4つの行程のそれぞれはクランク角にして180°毎の行程であり、且つピストン位置にしてTDC(上死点)からBDC(下死点)まで又はBDCからTDCまでの行程である。ここでは、1つのシリンダにおける吸気弁32及び排気弁38等の作動について説明するが、他のシリンダにおいても吸気弁及び排気弁等が同様に作動するようになっている。機関10が有する3つのシリンダについて、機関10の出力が取り出される側から離れた位置にあるシリンダから順に第1シリンダ、第2シリンダ、第3シリンダという。機関10における燃焼順序は、第1シリンダ→第3シリンダ→第2シリンダである。連続して燃焼を迎える2つのシリンダの間の位相差はクランク角にして240°と全て等しい。先ず低負荷側自着火運転時について、便宜上、前回の燃焼サイクルの後半における膨張行程及び排気行程から説明を始め、今回の燃焼サイクルの前半における吸気行程及び圧縮行程へと順に説明を続ける。
膨張行程は同図3に示したように圧縮TDCから膨張BDCまでの行程である。この膨張行程においてはその初期から燃焼室25内にて自着火した混合ガスが燃焼して既燃ガスとなっていき、この燃焼の際に生じたガスの圧力がピストン22を押し下げていく。そして、膨張行程後期にてクランク角が所定のクランク角度CAeo1となったとき、CPU71は駆動回路33に駆動信号を送出して排気弁電磁駆動機構38aを駆動することにより、閉じていた排気弁38を開く。この排気弁38の開弁によって高温高圧となっている既燃ガスが燃焼室25内から排気ポート37へと排出される。排気弁38を開いた直後から少しの間においてブローダウンが生じる。即ち、既燃ガスが排気ポート37を通じて排気系50へと一気に噴出し、排気圧力PE(排気ポート37から排気管52にかけての圧力)が一時的に急上昇する。この排気弁38が開かれるタイミングCAeo1の直後当たりまでに、燃焼して膨張するガスがピストン22を押し下げる仕事が終わる。つまり、このタイミングCAeo1により膨張比が決まる。
排気行程は膨張BDCから排気TDCまでの行程である。この排気行程においてその初期から既燃ガスが排気ポート37へと排出され続けている。そして、排気行程後期に入りクランク角が所定のクランク角度CAec1となったとき、CPU71は排気弁電磁駆動機構38aを駆動することにより、その開いていた排気弁38を閉じる。この排気弁38の閉弁により燃焼室25内にある既燃ガスの排出が終わる。排気行程における排気弁38の開弁期間、即ち排気弁38が開かれるタイミングCAeo1から閉じられるタイミングCAec1までの期間を第1排気弁開弁期間EX1という。次いで、排気行程末期にてクランク角が所定のクランク角度CAioとなったとき、CPU71は駆動回路33に駆動信号を送出して吸気弁電磁駆動機構32aを駆動することにより、閉じていた吸気弁32を開く。この吸気弁32の開弁により、吸気ポート32から燃焼室25内へと空気が吸入され始める。
ここで、排気行程の後期にて排気弁38が閉じられるタイミングCAec1と、この排気行程の末期にて吸気弁32が開かれるタイミングCAioとは、燃焼室25内に所定量の残留ガスが生成されるように予め調整されている。つまり、先の膨張行程にて生じた既燃ガスの一部が残留ガスとして、続く排気行程にて燃焼室25内から排出されることなく吸気弁開弁期間INの開始タイミングCAioまで残留し、この残留ガスがこれ以降の行程に供されるようになっている。この吸気弁開弁期間INとは、吸気行程における吸気弁32の開弁期間、言い換えれば吸気弁32が開かれるタイミングCAioから閉じられる所定のタイミングCAicまでの期間をいう。そして、排気TDCに対して第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミングCAec1及び吸気弁開弁期間INの開始タイミングCAioを調整することによって、即ち、排気TDC前後において第1排気弁開弁期間EX1と吸気弁開弁期間INとの間で負又は正のオーバーラップを調整することによって、燃焼室25内に残る残留ガスの量を増減することが可能である。
吸気行程は排気TDCから吸気BDCまでの行程である。吸気行程初期より空気が吸気ポート31から燃焼室25内へと吸入され続けている。その後、吸気行程中期に入る直前頃に、クランク角が所定のクランク角度CAdとなったとき、CPU71は直噴弁34を開くことにより、燃焼室25内に向けて燃料を噴射させる。この噴射された燃料と燃焼室25内の空気とによって混合ガスが形成される。その後、吸気行程の中頃にてクランク角が所定のクランク角度CAeo2となったとき、CPU71は排気弁電磁駆動機構38aを駆動することにより、閉じていた排気弁38を再び開く。この排気弁38の再開弁により、既燃ガスが排気ポート37から燃焼室25内へと逆流ガスとして吸入され始める。一方、この間においても吸気ポート31から燃焼室25内へと空気が吸入され続けている。逆流ガスと空気と混合ガスとは交じり合って略均質なガスとなっていく。次いで、吸気行程後期にてクランク角が所定のクランク角度CAec2となったとき、CPU71は上述と同様にしてその開いていた排気弁38を閉じる。この排気弁38の閉弁により、燃焼室25内への逆流ガスの吸入が終わる。吸気行程におけるこの排気弁38の開弁期間、即ち排気弁38が開かれるタイミングCAeo2から閉じられるCAec2までの期間を第2排気弁開弁期間EX2という。この第2排気弁開弁期間EX2を調整することによって、燃焼室25内へと吸入される逆流ガスの量を増減することが可能である。
圧縮行程は吸気BDCから圧縮TDCまでの行程である。圧縮行程初期からピストン22が上昇していき、これに伴い燃焼室25内にて混合ガスが圧縮されていく。クランク角がクランク角度CAicとなったとき、CPU71は吸気弁電磁駆動機構32aを駆動することにより、その開いていた吸気弁32を閉じる。燃焼室25内への空気の流入は空気の慣性により吸気BDC通過後も少しの間だけ続くが、この流入も吸気弁32の閉弁によって終わる。本例では、この吸気弁開弁期間INの一部として第2排気弁開弁期間EX2が含まれている。その後、圧縮行程後期にかけて燃焼室25内の混合ガスは圧縮されることにより高温高圧となる。この混合ガスは圧縮TDC直前に自着火し、膨張行程にて激しく燃焼する。この混合ガスの自着火による燃焼がピストン22を押し下げ、機関10の動力を生み出す。
これらのようにして1サイクル分の燃焼サイクルが終わる。上述のように膨張行程後期から、この燃焼により生じた既燃ガスの排出が始まり、この燃焼サイクルが繰り返し実行されていく。
以上に示した低負荷側自着火運転時のシリンダにおける吸気弁32及び排気弁38の作動に対し、高負荷側自着火運転時には、同図3の曲線C1及び曲線C2に示したように第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミング(排気弁38が閉じられるタイミング)CAec1が低負荷側自着火運転時の終了タイミングCAec1よりも遅角される(遅らされる)。この終了タイミングCAec1の遅角によって、燃焼室25内の残留ガス量が低負荷側自着火運転時よりも少なくなる。加えて、高負荷側自着火運転時には、同図3の曲線C4及び曲線C5に示したように第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2も低負荷側自着火運転時から遅角される。この終了タイミングCAec2の遅角によって、燃焼室25内へと吸入される逆流ガス量がより多くなる。
つまり、本機関10では、低負荷側運転時において、逆流ガス量に対する残留ガス量の比率が第1所定値となるように、第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミングCAec1及び第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2が予め設定されている。そして、高負荷側運転時において、その残留ガス量の比率が上記第1所定値よりも小さな第2所定値となるように、第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミングCAec1及び第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2が予め設定されている。ここで、低負荷側運転時及び高負荷側運転時におけるタイミングCAec1、CAec2の各値は実験又はシミュレーション等によって定められている。CPU71は、アクセルペダル82の操作量Accpにより例えば低負荷側から高負荷側へと移行したことを検出すると、残留ガス量の比率が第1所定値から第2所定値となるように、低負荷側運転時における第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミングCAec1及び第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2を、それぞれ、高負荷側運転時における第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミングCAec1及び第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2に遅角させる。
更に具体的に高負荷側運転時における第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2の遅角につき図4を用いて説明する。同図4はクランク角度CAに応じた排気圧力PEの変化を示している。ここで、シリンダ#1、シリンダ#2及びシリンダ#3はそれぞれ第1シリンダ、第2シリンダ及び第3シリンダを表す。例えば第1シリンダの第2排気弁開弁期間EX2が開始する前後は、第3シリンダによりブローダウンが生じたタイミングの直後に重なっている。そのため、排気圧力PE(排気マニホールド51から排気管52にかけての圧力)は急激に変動して安定しない(同図4のBD#3の実線を参照。)。このブローダウン前後のタイミングにて燃焼室内へと吸入される逆流ガスの量を調整しようとしても、その逆流ガスの量はその排気弁38を開く度に大きく変動する可能性があり、また排気弁38を開くタイミングの僅かな変化に対してその逆流ガス量は大きく変動してしまう。一方、第1シリンダの第2排気弁開弁期間EX2の後期において第3シリンダのブローダウンによる急激な排気圧力PEの変動は収まっており、排気圧力PEは比較的安定している。従って、第2排気弁開弁期間EX2における逆流ガス量を、その第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2を変更することにより微調整することが可能である。
本例では高負荷側運転時において逆流ガス量をより多くするために第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2が遅角されるから、他のシリンダのブローダウンによりその逆流ガス量が不安定となることが防がれている。つまり、例えばその開始タイミングCAeo2を変更するよりも精密に逆流ガス量を調整することができる。
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る機関10によれば、逆流ガス量に対する残留ガス量の比率は機関10の負荷Lに応じて調整される。具体的に、この調整は、図5(A)に示したように高負荷側運転時における第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミングCAec1及び第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2が低負荷側運転時よりも遅角されることにより行われる。
このように本機関は残留ガスを燃焼室25内に残留させておくことにより圧縮端温度を高めるため、低負荷側自着火運転時において、失火を生じさせることなく自着火による燃焼をより安定させることができる。また、高負荷側自着火運転時において、本機関10は異常燃焼又は異常燃焼による燃焼騒音が発生することを防ぐために従来のように冷却された還流ガス(周知の外部EGRシステムにより再循環されるガス)を用いることなく、残留ガスよりもやや温度が低い逆流ガスを用いている。そのため、混合ガスの温度をより細やかに精度良く調整することが可能となる。また、負荷Lが低負荷側であるか高負荷側であるかに応じて適切に残留ガス量及び混合ガス量が調整され、負荷Lの大きさに関わらず自着火のタイミングを適切に制御することができる。結果的に、従来よりも高負荷限界を拡大することができる。更に、これらの効果は、吸気弁32及び排気弁38の開閉タイミングを変更するための吸気弁電磁駆動機構32a、排気弁電磁駆動機構38a及びCPU71等という簡便な構成により達せられ、複雑な構造を要しない。そのため、機関の製造コストを低く抑えることができる。
なお、上記実施形態に係る機関10は、「吸気、圧縮、膨張及び排気の各動作を順に含む燃焼サイクルを所定数のシリンダにて順次実行し、各シリンダ内に形成された燃焼室において空気と燃料とを含む混合ガスを圧縮することにより自着火させて燃焼させる予混合圧縮自着火内燃機関」である。吸気弁32、吸気弁電磁駆動機構32a、排気弁38、排気弁電磁駆動機構38a及びCPU71等が、「前回の燃焼サイクルにおいて混合ガスの燃焼により燃焼室内に生じた既燃ガスのうちの一部が残留ガスとして、前回の次ぎになる今回の燃焼サイクルにおいて燃焼する混合ガス中に含まれるように、既燃ガスの一部を燃焼室内に残留させる残留ガス生成手段」に相当する。また、排気弁38、排気弁電磁駆動機構38a及びCPU71等が、「前回の燃焼サイクルにおいて生じた後に排気動作により燃焼室から排気ポートへと一旦排出されたガスの一部となる既燃ガスのうちの他の一部が逆流ガスとして、今回の燃焼サイクルにおいて燃焼する混合ガス中に含まれるように、既燃ガスの他の一部を燃焼室内に逆流させる逆流ガス生成手段」に相当する。
アクセル開度センサ63が「機関の出力に応じて変化する出力状態値を検出する出力状態検出手段」に相当し、CPU71等が「検出された出力状態値に応じた機関の出力が大きくなるほど逆流させられる逆流ガスの量に対する残留させられる残留ガスの量の比率がより小さくなるように、残留ガス生成手段及び逆流ガス生成手段の少なくとも一方を制御する比率制御手段」に相当する。
b.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関について説明する。本機関も第1実施形態と同様に4ストローク直列3気筒内燃機関であり、図2と同様の運転領域マップに基づき低負荷側自着火運転方式と高負荷側自着火運転方式と火花点火運転方式とを切り替えて運転することが可能である。第2実施形態の機関において、低負荷側自着火運転時の各シリンダにおける吸気弁32及び排気弁38の作動は上記第1実施形態の機関と同様である。第2実施形態の本機関は同図5(B)に示したように、高負荷側自着火運転時において第1排気弁開弁期間EX1(その開始タイミングCAeo1及び終了タイミングCAec1の双方)を低負荷側自着火運転時より遅角させ、これに連動させて第2排気弁開弁期間EX2を遅角させる点において同図5(A)に示した第1実施形態と相違する。以下、かかる相違点を中心として説明する。
図6は自着火運転時における各シリンダの吸気弁32及び排気弁38のクランク角度CAに応じたリフト量VLの変化を模式的に示している。同図6において、図3と同様に、曲線C1、曲線C3及び曲線C4は、低負荷側自着火運転時における排気弁38及び吸気弁32のリフト量VLの変化を表しており、また曲線C2及び曲線C5は、高負荷側自着火運転時における排気弁38のリフト量VLの変化を表している。
CPU71は、図6の曲線C1及び曲線C2に示したように高負荷側運転時において第1排気弁開弁期間EX1を遅角させる。これにより、残留ガス量が低負荷側運転時より少なくなり、逆流ガス量に対する残留ガス量の比率がより小さくなっている。つまり、低負荷側運転時において、逆流ガス量に対する残留ガス量の比率が第1所定値となるように、低負荷側運転時における第1排気弁開弁期間EX1の開始タイミングCAeo1及び終了タイミングCAec1が予め設定されている。その一方、高負荷側運転時において、その残留ガス量の比率が上記第1所定値よりも小さな第2所定値となるように、第1排気弁開弁期間EX1の開始タイミングCAeo1及び終了タイミングCAec1が予め設定されている。CPU71は、アクセルペダル82の操作量Accpにより例えば低負荷側から高負荷側へと移行したことを検出すると、残留ガス量の比率が第1所定値から第2所定値となるように、低負荷側運転時における開始タイミングCAeo1及び終了タイミングCAec1を遅角させる。
そして、CPU71は高負荷側運転時において、上述した第1排気弁開弁期間EX1の遅角に合わせて、同図6の曲線C4及び曲線C5に示したように第2排気弁開弁期間EX2(その開始タイミングCAeo2及び終了タイミングCAec2の双方)を低負荷側運転時よりも遅角させる。これにより、後に詳述するように低負荷側運転時と高負荷側運転時とにおいて第2排気弁開弁期間EX2における逆流ガス量を略一定に維持することができる。ここで、第1シリンダ、第2シリンダ及び第3シリンダのそれぞれにおいて第1排気弁開弁期間EX1及び第2排気弁開弁期間EX2のそれぞれが同様に遅角されることを前提としている。
具体的にこの第2排気弁開弁期間EX2の遅角によりどのように逆流ガス量が略一定に維持されるのかについて図4を用いて説明する。第1排気弁開弁期間EX1の開始タイミングCAeo1を膨張BDC前45°とした場合、排気圧力PEは同図4の実線で示したように推移する。この場合、例えば第3シリンダのブローダウンが生ずるタイミングは第1シリンダの排気弁38が第2排気弁開弁期間EX2において開かれる直前となり、第2排気弁開弁期間EX2の間、排気圧力PEはそれほど急激には変化せず略安定している。これに対して、第1排気弁開弁期間EX1の開始タイミングCAeo1を膨張BDC前15°と遅角させた場合、排気圧力PEは同図4の点線で示したように推移する。この場合、第3シリンダによるブローダウンのタイミングは第1シリンダの排気弁38が第2排気弁開弁期間EX2において開かれた直後となり、第2排気弁開弁期間EX2の間、排気圧力PEは急激に上下し安定しない。これによると、高負荷側運転時において第1排気弁開弁期間EX1の開始タイミングCAeo1を膨張BDC前45°とした場合、燃焼室25内へと吸入される逆流ガスの量は、低負荷側運転時において第1排気弁開弁期間EX1の開始タイミングCAeo1を膨張BDC前15°とした場合よりも著しく多くなる。
そこで、本機関は高負荷側運転時において、第1排気弁開弁期間EX1の開始タイミングCAeo1の遅角に応じて遅角するブローダウンによる排気圧力PEの推移に合わせて、このブローダウンが第2排気弁開弁期間EX2に重ならないように、第2排気弁開弁期間EX2を低負荷側運転時から遅角させる。この第2排気弁開弁期間EX2の遅角により高負荷側運転時においても低負荷側運転時においても逆流ガス量を略一定に維持しつつ、上記した第1排気弁開弁期間EX1の遅角によって残留ガス量及び逆流ガス量の比率を精度良く調整することが可能となる。
c.第3実施形態
続いて、本発明の第3実施形態に係る内燃機関について説明する。本機関は第1実施形態及び第2実施形態とは異なり、4ストローク直列4気筒内燃機関である。また、本機関は第1実施形態及び第2実施形態と同様、運転領域マップに基づき低負荷側自着火運転方式と高負荷側自着火運転方式と火花点火運転方式とを切り替えて運転することが可能である。更に、第3実施形態の機関において、低負荷側自着火運転時の各シリンダにおける吸気弁32及び排気弁38等の作動は上記第1実施形態と同様である。直列4気筒機関である第3実施形態の本機関は図5(C)に示したように、高負荷側運転時における第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミングCAec1の遅角に対して、第2排気弁開弁期間EX2の開始タイミングCAeo2を低負荷側運転時よりも進角させる(進める)点において図5(A)に示した第1実施形態と相違する。かかる相違点を中心に説明する。
図7は図3及び図6と同様に、自着火運転時における各シリンダの吸気弁32及び排気弁38のクランク角度CAに応じたリフト量VLの変化を模式的に示している。図3及び図6と同様に、曲線C1、曲線C3及び曲線C4は低負荷側自着火運転時における排気弁38及び吸気弁32のリフト量VLの変化を表しており、また曲線C2及び曲線C5は、高負荷側自着火運転時における排気弁38のリフト量VLの変化を表している。
CPU71は、図7の曲線C1及び曲線C2に示したように高負荷側運転時において第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミングCAec1を遅角させることにより、残留ガス量を低負荷側運転時より少なくする。加えて、CPU71は、同図7の曲線C4及び曲線C5に示したように第2排気弁開弁期間EX2の開始タイミングCAeo2を進角させることにより、燃焼室25内へと吸入される逆流ガス量をより多くする。つまり、本機関では、低負荷側運転時において、逆流ガス量に対する残留ガス量の比率が第1所定値となるように、第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミングCAec1及び第2排気弁開弁期間EX2の開始タイミングCAeo2が予め設定されている。そして、高負荷側運転時において、その残留ガス量の比率が上記第1所定値よりも小さな第2所定値となるように、高負荷側運転時における第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミングCAec1及び第2排気弁開弁期間EX2の開始タイミングCAeo2が予め設定されている。CPU71は、アクセルペダル82の操作量Accpにより例えば低負荷側から高負荷側へと移行したことを検出すると、残留ガス量の比率が第1所定値から第2所定値となるように、低負荷側運転時における第1排気弁開弁期間EX1の終了タイミングCAec1を遅角させるとともに第2排気弁開弁期間EX2の開始タイミングCAeo2を進角させる。
具体的に高負荷側運転時における第2排気弁開弁期間EX2の開始タイミングCAeo2の進角につき図8を用いて説明する。例えば第1シリンダの第2排気弁開弁期間EX2が終了する前後は、第4シリンダによりブローダウンが生ずるタイミングの前後に重なっており、排気圧力PEは急激に変動して安定しない(同図8のBD#4を参照。)。従って、このブローダウン前後のタイミングにて燃焼室内へと吸入される逆流ガスの量を調整しようとしても、その逆流ガスの量はその排気弁38を開く度に大きく変動する可能性があり、また排気弁38を開くタイミングの僅かな変化に対してその逆流ガス量は大きく変動する。即ち、このブローダウン前後のタイミングにて逆流ガス量を微調整することは困難である。一方、第1シリンダの第2排気弁開弁期間EX2の初期において排気圧力PEは比較的安定している。そこで、本例では高負荷側運転時において第2排気弁開弁期間EX2の開始タイミングCAeo2が低負荷側運転時よりも進角されることによって逆流ガス量がより多くなるように調整し、これによって他のシリンダのブローダウンの影響を受けて逆流ガス量が不安定となることを防いでいる。
d.第4実施形態
本発明の第4実施形態に係る内燃機関について説明する。本機関も第3実施形態と同様に4ストローク直列4気筒内燃機関であり、同様に、運転領域マップに基づき低負荷側自着火運転方式と高負荷側自着火運転方式と火花点火運転方式とを切り替えて運転することが可能である。更に、第4実施形態の機関において、低負荷側自着火運転時の各シリンダにおける吸気弁32及び排気弁38等の作動は上記第3実施形態と同様である。第4実施形態の機関は図5(D)に示したように高負荷側自着火運転時において第1排気弁開弁期間EX1を低負荷側自着火運転時より遅角させ、これに連動させて第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2を遅角させる点において図5(C)に示した第3実施形態と相違する。
図9は図3等と同様に、自着火運転時における各シリンダの吸気弁32及び排気弁38のクランク角度CAに応じたリフト量VLの変化を模式的に示している。図3等と同様に、曲線C1、曲線C3及び曲線C4は低負荷側自着火運転時における排気弁38及び吸気弁32のリフト量VLの変化を表しており、また曲線C2及び曲線C5は、高負荷側自着火運転時における排気弁38のリフト量VLの変化を表している。
CPU71は、図9の曲線C1及び曲線C2に示したように高負荷側運転時において第1排気弁開弁期間EX1を遅角させる。これにより、残留ガス量が低負荷側運転時より少なくなり、逆流ガス量に対する残留ガス量の比率がより小さくなっている。更に、CPU71は、この第1排気弁開弁期間EX1の遅角に合わせて、同図9の曲線C4及び曲線C5に示したように第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2を低負荷側運転時よりも遅角させる。これにより、以下に述べるように低負荷側運転時と高負荷側運転時とにおいて第2排気弁開弁期間EX2における逆流ガス量を安定して燃焼室25内に流入させることができる。
具体的にこの第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2の遅角によりどのようにして逆流ガス量が安定させられるのかについて図8を用いて説明する。例えば低負荷側運転時の第1排気弁開弁期間EX1の開始タイミングCAeo1を膨張BDC前30°とした場合、排気圧力PEは同図8に示したように推移する。この場合、例えば第4シリンダのブローダウンが生ずるタイミングは第1シリンダの排気弁38が第2排気弁開弁期間EX2において閉じられる直前となり、そのブローダウンが生じている期間の一部が第2排気弁開弁期間EX2の一部に重なっている。これに対して、高負荷側運転時において第1排気弁開弁期間EX1を膨張BDC前30°よりも遅角させた場合、第4シリンダのブローダウン期間も遅角し第1シリンダの第2排気弁開弁期間EX2と重ならなくなる。そこで、本機関はこのブローダウン期間の一部が高負荷側運転時においても低負荷側運転時と同様に第2排気弁開弁期間EX2内に含まれるように、第2排気弁開弁期間EX2の終了タイミングCAec2を遅角させる。これにより、高負荷側運転時と低負荷側運転時との間で逆流ガス量が急変することを防ぐことが可能となる。
以上説明したように各実施形態の機関は、残留ガスを用いて失火等を生じない安定した自着火燃焼を行わせつつ、逆流ガスを用いて混合ガスの温度をより細やかに調整することができる。即ち、各実施形態の機関においては従来のように冷却された還流ガスを用いることなく、残留ガスよりもやや温度が低い逆流ガスを用いることによって、高負荷運転時における残留ガスの異常燃焼を防いでいるため、混合ガスの温度をより細やかに精度良く調整することが可能である。
なお、本発明は上記実施形態(第1〜第4実施形態)に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態において、電気制御装置70は排気弁38の開閉タイミングを変更することによって、残留ガス量又は逆流ガス量を調整している。これら開閉タイミングに加えて、排気弁のリフト量VLを適宜変更してもよい。当然ながら、第2排気弁開弁期間EX2における排気弁のリフト量VLの変更については排気圧力PEを考慮する。
また、上記実施形態において吸気弁開弁期間INの開始タイミングCAioは排気行程内に固定的に設定している。この開始タイミングCAioは、吸気行程内に設定してもよい。更に、残留ガス量を調整すること等を目的としてこの開始タイミングCAioを可変に設定してもよい。
上記実施形態において、電気制御装置70は、第1排気弁開弁期間EX1及び第2排気弁開弁期間EX2の開始タイミング及び終了タイミングを、機関10の負荷Lに応じて低負荷側自着火運転時と高負荷側自着火運転時との2段階に進角させ又は遅角させている。機関の負荷Lの段階数について、これを3段階以上に設定し、設定された段階に応じた排気弁開弁期間EX1,EX2の開始タイミング又は終了タイミングの調整を行ってもよい。機関の負荷Lについての閾値は機関の回転速度NEに応じて変化させてよい。
また、負荷Lに応じた排気弁開弁期間EX1,EX2の開始タイミング及び終了タイミングの調整とは異なりまたこれに加えて、これら排気弁開弁期間EX1,EX2の開始タイミング及び終了タイミングを、機関10の回転速度NEに応じて進角させ又は遅角させてもよい。この場合、回転速度NEが大きいほど、燃焼室への吸入空気量をより多くするようになっていることが好ましい。具体的には、電気制御装置がスロットル弁開度又は過給圧を通常より大きめの値に補正することにより、吸入空気量を増量することができる。これによると、高速運転時において、残留ガス又は逆流ガスよりも低温の空気が燃焼室内に多量に吸入されるから、混合ガスの圧縮端温度をより有効に低下させて異常燃焼を防ぐことができる。
更に、回転速度NEに応じた排気弁開弁期間EX1,EX2の開始タイミング及び終了タイミングの調整とも異なり、例えば温度センサ(出力状態検出手段)により排ガスの温度を検出して、この検出温度に応じた排気弁開弁期間EX1,EX2の開始タイミング又は終了タイミングの進角又は遅角を行ってもよい。この場合、その検出温度が予め設定した目標温度よりも低ければ逆流ガス量に対する残留ガス量の比率が現在値よりも大きくなるように、排気弁開弁期間EX1,EX2の開始タイミング又は終了タイミングを調整する。その一方、その検出温度が目標温度よりも高ければ残留ガス量の比率が現在値よりも小さくなるように、排気弁開弁期間EX1,EX2の開始タイミング又は終了タイミングを調整する。排ガスの温度に代えて、燃焼室内のガスの温度、機関のトルク、燃焼時(圧縮BDC)前後における燃焼室内のガスの圧力などを用いてもよい。
上記実施形態において、吸気弁電磁駆動機構32a及び排気弁電磁駆動機構38aが電磁的に吸気弁32及び排気弁38を開閉させている。これに代えて、周知の可変バルブタイミングリフト機構を用いることができる。例えば吸気弁及び排気弁を機械的制御により又は更に油圧を用いた制御により開閉するようになっていてよい。機械的制御による場合、吸気弁駆動機構はカム及びカム軸を含んでおり、所定のタイミングにてまた所定のリフト量VLだけ吸気弁を開閉させるようになっている。更に油圧を用いた制御による場合、吸気弁駆動機構は、機関の運転状態に応じ油圧を用いてカム軸を進角又は遅角方向に回転させる機構を含んでいる。排気弁駆動機構についても同様である。開閉タイミング又はリフト量VLを可変に設定するために、ロッカーアームの支点の位置を変化させるようになっていてもよい。また、例えば機関が低回転速度のときに用いるカムプロフィールを有するカムと、機関が高回転速度のときに用いるカムプロフィールを有するカムとの2種のカムを切り換えるようになっていてもよい。更に、吸気弁及び排気弁の形状についてポペット状でなく、ロータリー型等であってもよい。
上記実施形態において、電気制御装置70は自着火運転時に火花点火を停止するようにイグナイタ36を制御している。これとは異なり、混合ガスの自着火をアシストするように所定のタイミングで火花点火してもよい。
上記実施形態において直噴弁34による燃料噴射は吸気行程中に1回だけ行っている。燃料噴射は圧縮行程中に1回としてもよく、吸気行程中と圧縮行程中とで合わせて複数回としてもよい。また、高負荷運転時には吸気行程中に噴射し、低負荷運転時には圧縮行程中に噴射する等のように切り替えることも可能である。更に、直噴弁に代えて、ポート噴射弁を用いてよく、また直噴弁及びポート噴射弁の双方を用いてもよい。
本発明において、第2排気弁開弁期間EX2についてはその開始タイミングが吸気行程内にあればよく、終了タイミングは例えば吸気行程後期にあっても圧縮行程初期にあってもよい。
第1実施形態及び第2実施形態は直列3気筒機関とした。これら実施形態の機関は、吸気弁及び排気弁の開閉タイミングが同様となるV型6気筒機関等としてもよい。また、第3実施形態及び第4実施形態は直列4気筒機関とした。これら実施形態の機関は、吸気弁及び排気弁の開閉タイミングが同様のV型8気筒機関等としてもよい。
第2実施形態及び第4実施形態において、電気制御装置70は低負荷側運転時と高負荷側運転時との間で第1排気弁開弁期間EX1に係る排気弁38の作動角(作用角)を変化させていない。これと異なり、作動角の大きさを可変に調節してもよく、またその終了タイミングCAec1を変化させず一定のままとしてもよい。同様に、第2実施形態において第2排気弁開弁期間EX2に係る排気弁38の作動角を変化させてもよい。
第2実施形態では、高負荷側自着火運転時において逆流ガス量に対する残留ガス量の比率をより小さくすることを目的として、第1排気弁開弁期間EX1を低負荷側自着火運転時よりも遅角させている。これに対して、膨張比をより大きくすることを目的として、この第1排気弁開弁期間EX1を遅角させてもよい。即ち、この機関は高負荷側自着火運転時において第1排気弁開弁期間EX1を低負荷側自着火運転時よりも遅角させ、これにより膨張比をより大きくする。このように膨張比を大きくすることにより熱効率が高められる。一方、低負荷側自着火運転時においてこの機関はこの第1排気弁開弁期間EX1をより進角させ、これにより膨張比を小さくする。既燃ガスを十分に断熱膨張させると温度が低下してしまうが、この第1排気弁開弁期間EX1の進角によってこの温度低下が抑えられる。
本発明の第1実施形態に係る内燃機関の概略構成図である。 電気制御装置のCPUが参照する運転領域マップである。 自着火運転時の各シリンダにおける吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを模式的に示した説明図である。 直列3気筒機関におけるクランク角に応じた排気圧力の変化を示したグラフである。 第1〜第4実施形態の各機関における第1及び第2排気弁開弁期間の相違を示した図である。 第2実施形態に係る機関の自着火運転時における各シリンダの吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを模式的に示した説明図である。 第3実施形態に係る機関の自着火運転時における各シリンダの吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを模式的に示した説明図である。 直列4気筒機関におけるクランク角に応じた排気圧力の変化を示したグラフである。 第4実施形態に係る機関の自着火運転時における各シリンダの吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを模式的に示した説明図である。
符号の説明
10…内燃機関、25…燃焼室、31…吸気ポート、32…吸気弁、32a…吸気弁電磁駆動機構、34…直噴弁、37…排気ポート、38…排気弁、38a…排気弁電磁駆動機構、70…電気制御装置、71…CPU。

Claims (9)

  1. 吸気、圧縮、膨張及び排気の各動作を順に含む燃焼サイクルを所定数のシリンダにて順次実行し、各シリンダ内に形成された燃焼室において空気と燃料とを含む混合ガスを圧縮することにより自着火させて燃焼させる予混合圧縮自着火内燃機関であって、
    前回の燃焼サイクルにおいて前記混合ガスの燃焼により燃焼室内に生じた既燃ガスのうちの一部が残留ガスとして、前回の次ぎになる今回の燃焼サイクルにおいて燃焼する前記混合ガス中に含まれるように、同既燃ガスの一部を同燃焼室内に残留させる残留ガス生成手段と、
    前記前回の燃焼サイクルにおいて生じた後に排気動作により燃焼室から排気ポートへと一旦排出されたガスの一部となる前記既燃ガスのうちの他の一部が逆流ガスとして、前記今回の燃焼サイクルにおいて燃焼する前記混合ガス中に含まれるように、同既燃ガスの他の一部を同燃焼室内に逆流させる逆流ガス生成手段と、
    前記機関の出力に応じて変化する出力状態値を検出する出力状態検出手段と、
    前記検出された出力状態値に応じた機関の出力が大きくなるほど前記逆流させられる逆流ガスの量に対する前記残留させられる残留ガスの量の比率がより小さくなるように、前記残留ガス生成手段及び前記逆流ガス生成手段の少なくとも一方を制御する比率制御手段と、
    を備えた予混合圧縮自着火内燃機関。
  2. 請求項1に記載の予混合圧縮自着火内燃機関において、
    前記出力状態検出手段は、
    前記出力状態値として機関の負荷を検出し、
    前記比率制御手段は、
    前記残留ガス生成手段及び前記逆流ガス生成手段の少なくとも一方の制御を、前記検出された機関の負荷が大きくなるほど前記逆流ガス量に対する前記残留ガス量の比率がより小さくなるように行う予混合圧縮自着火内燃機関。
  3. 請求項1に記載の予混合圧縮自着火内燃機関において、
    前記出力状態検出手段は、
    前記出力状態値として機関の回転速度を検出し、
    前記比率制御手段は、
    前記残留ガス生成手段及び前記逆流ガス生成手段の少なくとも一方の制御を、前記検出された機関の回転速度が大きくなるほど前記逆流ガス量に対する前記残留ガス量の比率がより小さくなるように行う予混合圧縮自着火内燃機関。
  4. 請求項3に記載の予混合圧縮自着火内燃機関であって、
    前記検出された機関の回転速度が大きいほど燃焼室に吸入される空気の量をより多くするガス量調節手段を更に備えた予混合圧縮自着火内燃機関。
  5. 請求項2乃至請求項4の何れか一項に記載の予混合圧縮自着火内燃機関において、
    前記残留ガス生成手段は、
    前記前回の燃焼サイクル中の排気動作を行う期間である第1排気弁開弁期間にて排気弁を開くとともに前記今回の燃焼サイクル中の吸気動作を行う期間である吸気弁開弁期間にて吸気弁を開くことにより、前記混合ガスの燃焼により前記燃焼室内に生じた前記既燃ガスのうちの一部を前記残留ガスとして同燃焼室内に残留させ、
    前記逆流ガス生成手段は、
    前記今回の燃焼サイクル中の前記吸気弁開弁期間内に開始タイミングを有する第2排気弁開弁期間にて排気弁を開くことにより、前記燃焼室から一旦排出されたガスの一部となる前記既燃ガスの他の一部を前記逆流ガスとして同燃焼室内へと逆流させるように構成された予混合圧縮自着火内燃機関。
  6. 請求項5に記載の予混合圧縮自着火内燃機関において、
    前記シリンダは、
    前記機関にて直列型に3気筒又はV型に各列3気筒ずつ6気筒配置され、
    前記比率制御手段は、
    前記逆流ガス生成手段を制御することによって、前記検出された出力状態値が大きくなるほど前記第2排気弁開弁期間の終了タイミングをより遅らせるように構成された予混合圧縮自着火内燃機関。
  7. 請求項5に記載の予混合圧縮自着火内燃機関であって、
    前記残留ガス生成手段を制御することによって、前記検出された出力状態値が大きくなるほど前記第1排気弁開弁期間の開始タイミングをより遅らせるように同開始タイミングを調節する開始タイミング制御手段を更に備え、
    前記シリンダは、
    前記機関にて直列型に3気筒又はV型に各列3気筒ずつ6気筒配置され、
    前記比率制御手段は、
    前記逆流ガス生成手段を制御することによって、前記第2排気弁開弁期間の開始タイミングを、前記調節される第1排気弁開弁期間の開始タイミングに対し予め調整されているタイミングまで遅らせるように構成された予混合圧縮自着火内燃機関。
  8. 請求項5に記載の予混合圧縮自着火内燃機関において、
    前記シリンダは、
    前記機関にて直列型に4気筒又はV型に各列4気筒ずつ8気筒配置され、
    前記比率制御手段は、
    前記逆流ガス生成手段を制御することによって、前記検出された出力状態値が大きくなるほど前記第2排気弁開弁期間の開始タイミングをより進めるように構成された予混合圧縮自着火内燃機関。
  9. 請求項5に記載の予混合圧縮自着火内燃機関であって、
    前記残留ガス生成手段を制御することによって、前記検出された出力状態値が大きくなるほど前記第1排気弁開弁期間の開始タイミングをより遅らせるように同開始タイミングを調節する開始タイミング制御手段を更に備え、
    前記シリンダは、
    前記機関にて直列型に4気筒又はV型に各列4気筒ずつ8気筒配置され、
    前記比率制御手段は、
    前記逆流ガス生成手段を制御することによって、前記第2排気弁開弁期間の終了タイミングを、前記調節される第1排気弁開弁期間の開始タイミングに対し予め調整されているタイミングまで遅らせるように構成された予混合圧縮自着火内燃機関。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101765630B1 (ko) * 2015-12-10 2017-08-07 현대자동차 주식회사 혼합연소 엔진의 밸브 제어 장치 및 이를 이용한 밸브 제어 방법

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