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JP2007524594A - ガンマ−トコトリエノールによる放射線防護 - Google Patents

ガンマ−トコトリエノールによる放射線防護 Download PDF

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Abstract

本発明は、γ−トコトリエノール、α−コハク酸トコフェロールまたはγ−コハク酸トコトリエノールを使った、放射線誘発性内部損傷からの哺乳動物の予防および治療方法に関する。特に、本発明は、(1)治療として有効な量のγ−トコトリエノールの皮下注射、筋肉内注射、腹膜内注射、または血管内注射;あるいは(2)治療として有効な量のα−コハク酸トコフェロールもしくはγ−コハク酸トコトリエノールまたはその両方の経口投与によって、哺乳動物における放射線誘発性損傷を予防および治療する方法に関する。

Description

本願発明はアメリカ合衆国政府の援助によっておこなわれた。政府は本発明に一定の権利を有する。
当該出願は、2003年2月14日に出願された米国仮特許出願番号第60/447,298号からの優先権を主張する。その仮出願の全体を本明細書中に援用する。
本発明の分野
本発明は、哺乳動物における放射線によって誘発される内部損傷および死亡の予防および治療のための放射線防護剤(radioprotectants)としてのトコトリエノールおよびトコフェロール化合物の使用方法に向けられる。
本発明の背景
電離放射線は、物質との相互作用によってイオン対を生じることができる電磁放射線または微粒子放射線である。典型的な電離放射線は、エックス線、ガンマ線、アルファ粒子、ベータ粒子(電子)、中性子、および帯電した原子核を含む。ヒトにおいて、過度の放射線によって生じる危険は、(致死量の放射にさらされた場合の)短期の死亡から(長期間にわたる低いレベルの放射線にさらされた場合の)長期の発癌を含む病変におよぶ。損傷を与える放射線または致命的な電離放射線に対する被曝は、種々の様式、例えば治療のための放射線医学、原子力発電所の事故、核廃棄物の廃棄、宇宙飛行士による宇宙探険、およびテロリストまたは好戦的な国による核兵器の使用の可能性、において生じるかもしれない。これらの状況の多くからの被曝は予測可能であり、そのため、予防の様式が放射線防護において重要な役割を担う。例えば、癌の放射線療法において腫瘍組織を死滅させるために使用される放射線量は、より高い照射量に伴って正常組織の致死性が見込まれるために、現在制限されている。これらの曝露の結果は、放射に対する被曝の程度に依存し、そしていずれかの認識できる即座の影響の非存在から長期および短期の死亡まで異なるかもしれない。たとえ、低レベルの曝露の場合で、いずれかの認識できる即座のまたは短期の影響がないかもしれなくても、その影響は、例えば癌のように遅れて生じる病変として現れることがある。
広範囲な調査研究が政治レベルでも民間企業レベルでも実施されてきたが、ごくわずかな薬物しか放射線損傷を防ぐのに有効であると確認されなかった。しかし、これらの薬物は全て、ヒトにおけるそれらの使用を妨げる望ましくはい副作用を持っている。このように、ヒトでの放射線損傷の予防および治療において有効と安全が証明された組成物の必要性が今もなお存在する。
ここ数年で、遊離基が重要な細胞の成分、例えばDNAまたは細胞膜と反応して、極めて重要な細胞機能を減少させるかまたは損なわせるので、遊離基の存在が人体への重度の損傷を引き起こすかもしれないことが認識された。いくつか挙げるだけでも、神経変性症(ALS、パーキンソン病、アルツハイマー病)、白内障発生、アテローム硬化症、糖尿病、虚血再灌流傷害、クワシオルコル、および特定の毒性を含む多くの病気に酸素遊離基が関係している。
遊離基は抗酸化剤によって中和されうる。栄養学的に提供された抗酸化剤の1つが、生物系の遊離基の伝播を中断するかまたは防ぐことができる脂溶性の油性物質であるビタミンE(α−トコフェロール)である。放射線損傷が放射線によって誘発された遊離基によって介在されるので、ビタミンEが放射線によって誘発された損傷からの保護のために使用されてきた。
例えば、Weberら[Free Radical Biology & Medicine, 22:761-769, (1997)]は、UV照射によって誘発された酸化損傷からのマウス皮膚の保護におけるトコフェロールおよびトコトリエノールの局所適用の効能を調査した。特に、ヤシ油のトコトリエノールに富んだ画分(TRF)がマウス皮膚に適用され、そしてUV光に対する暴露前後の抗酸化剤(すなわち、αおよびγトコフェロール、ならびにαおよびγトコトリエノール)の含有量が計測された。Weberは、マウス皮膚へのTRFの事前の適用が皮膚のビタミンEの保存をもたらすことを見出した[Weber et al., 上記(1997)]。
米国特許第5,376,361号は、放射線の誘発された皮膚損傷の予防および/または治療の方法について同様に述べている。前記方法は、皮膚にトコトリエノールまたはトコトリエノールを高めたビタミンE調製物の局所適用を含む。しかし、ビタミンEは内服的に使用される場合、放射線防護剤として有効ではない。
本発明の概要
本発明は、哺乳動物における放射線によって誘発された内部損傷の予防および治療の方法に向けられ、上記方法は、γ−トコトリエノール、α−コハク酸トコフェロール、およびγ−コハク酸トコトリエノールの少なくとも1つを含む治療として有効な量の医薬組成物をその哺乳動物に投与することを含む。本発明の1つの側面は、治療として有効な量のγ−トコトリエノール、α−コハク酸トコフェロールまたはγ−コハク酸トコトリエノールをその哺乳動物に投与することによって、例えば造血系の抑制のような放射線によって誘発された内部損傷を哺乳動物で予防する方法に関する。
本発明の他の側面は、治療として有効な量のγ−トコトリエノール、α−コハク酸トコフェロールまたはγ−コハク酸トコトリエノールをその哺乳動物に投与することによって放射線によって誘発された損傷で苦しんでいる哺乳動物を治療する方法に関する。
1つの態様において、γ−トコトリエノールが、放射線によって誘発された損傷を防ぐかまたは治療するために、哺乳動物に、皮下、筋肉内、腹腔内、または血管内注射される。
他の態様において、放射線によって誘発された損傷を防ぐかまたは治療するために、α−コハク酸トコフェロールまたはγ−コハク酸トコトリエノール、あるいはその両方が、経口投与によって哺乳動物に与えられる。同様に、α−コハク酸トコフェロールまたはγ−コハク酸トコトリエノール、あるいはその両方は、哺乳動物内に、皮下、筋肉内、腹腔内、または血管内注射されうる。
本発明の詳細な説明
本発明の主な目的は、放射線によって誘発された致死の危険のある哺乳動物の阻止方法を提供することである。本発明の他の目的は、放射線によって誘発された内部損傷からの哺乳動物の治療を提供することである。本発明の第3の目的は、癌治療のための放射線療法中の非癌性組織の放射線被曝の副作用を最小限にする特定の目的のためにトコトリエノール化合物を使用することである。放射線療法からの副作用は最小限におさえられることができ、および/または放射線療法の効果は、トコトリエノール化合物の投与によって高められうる。本発明は、放射線によって誘発された造血系の抑制、ならびに他の損傷の予防および/または治療に特に有用である。
当該方法の1つの態様は、哺乳動物に治療として有効な量のトコトリエノール、またはその誘導体(今後、言及の容易さのために、集合的に「トコトリエノール」と言及した)を注射することを含む方法を提供する。
用語「トコトリエノール」は、不飽和末端をもつトコフェロール(ビタミンE)の対応物を含み、そしてこれだけに制限されることなく、α−、β−、γ−およびδ−トコトリエノール、デスメチル−トコトリエノール、ジデスメチル−トコトリエノール(ヒマワリ種、植物油、大麦、ビールの醸造粕、オート麦、およびアフリカスミレに生じる)、それらの合成対応物、メチル化またはジメチル化されたクロマン環を有するそれらの対応物、およびそれらの混合物を含む。二重結合は、シスまたはトランス、あるいはそれらの混合物であるかもしれない。先に記載したとおり、用語「トコトリエノール」は同様にトコトリエノール誘導体をも含む。
組成物中にトコトリエノールを利用している多くの態様において、そのトコトリエノールは天然起源から分離される。しかし、合成の調製物、ならびに天然と合成のトコトリエノールの混合物が同様に利用される。有用なトコトリエノールは、例えば高速液体クロマトグラフィーを使って小麦胚芽油、ヌカ、もしくはヤシ油から単離されたか、または大麦、ビールの醸造粕、もしくはオート麦からのアルコール抽出および/または分子蒸留によって単離された天然の産物である。本明細書中において、用語「トコトリエノール」は、これらの天然の産物から得られたトコトリエノールに富む画分、ならびに純粋な化合物を含む。トコトリエノール誘導体が利用される場合、それらは機能においてトコトリエノールと同等でなくてはならない。好ましい誘導体は、クロマノール核と、炭化水素末端の3つの二重結合との両方を含む。
一般的に、トコトリエノールは、皮下、筋肉内、腹腔内、または血管内注射される。
本発明の好ましい態様において、トコトリエノールは、γ−トコトリエノールまたはその誘導体である。
本発明の他の好ましい態様において、トコトリエノールは、注射後の吸収を容易にするための医薬として許容される担体との混合物で用いられる。
注射用用途に好適な医薬担体は、無菌の注射用溶液または分散液の即時調整のための無菌の溶液または分散液を含む。あらゆる場合に、注射用組成物は無菌であるべきであり、かつ、扱いやすい注入可能性で存在する程度に流動的であるべきである。製造および保存条件下で安定でなくてはならず、例えば細菌およびカビのような微生物の汚染作用に対して持続されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)、ならびにその好適な混合物を含む溶剤または分散媒質であるかもしれない。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、そして界面活性剤の使用によって維持されることができる。微生物作用の予防は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤および抗真菌剤によって達成されることができる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば糖、例えばマンニトール、ソルビトールといった多価アルコール類、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期間の吸収は、吸収を遅らせる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン、を組成物に含むことによって引き起こされることができる。
無菌の注射用溶液は、必要とされる場合、1つのまたは組み合わせた先に列挙された成分を伴う適切な溶剤中に必要とされている量で活性な化合物(例えば、トコトリエノールまたはトコトリエノールに富んだビタミンE)を組み込み、続いてろ過滅菌することによって準備されうる。一般的に、分散液は、基本的な分散媒質、および先に列挙されたものから必要とされる他の成分を含む無菌の担体中に活性な化合物を組み込むことによって準備できる。
本発明の他の態様は、治療として有効な量のコハク酸トコフェロールまたはコハク酸トコトリエノールを哺乳動物に経口投与することを含む。
好ましい態様において、コハク酸トコフェロールは、α−コハク酸トコフェロールである。
他の好ましい態様において、コハク酸トコトリエノールは、γ−コハク酸トコトリエノールである。
さらに他の好ましい態様において、コハク酸トコフェロールまたはコハク酸トコトリエノールは経口の組成物で投与される。
経口組成物は、一般に不活性な希釈剤または食用担体を含む。それらはゼラチン・カプセル中に封入されるか、または錠剤に固められることができる。経口治療向け投与の目的のために、活性な化合物は賦形剤と組み合わされて、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用されることができる。経口組成物は、流動性担体を使って同様に準備されることもでき、流動性担体中の化合物が経口で用いられて、飲み込まれる。医薬として適合する接着剤、および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含まれることができる。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、以下の成分または類似した性質の化合物:例えば微細結晶性セルロース、トラガントガムまたはゼラチンのような結合剤;賦形剤、例えばスターチまたはラクトース、例えばアルギン酸、Primogelまたはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸塩のような潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;ショ糖またはサッカリンのような甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ・フレーバーのような調味料のいずれかを含むことができる。
本発明の放射線によって誘発された損傷の予防または治療のための他の態様は、治療として有効な量のコハク酸トコフェロールまたはコハク酸トコトリエノールを皮下、筋肉内、腹膜内または血管内注射によって哺乳動物に与えることを含む。
用量単位形態で組成物を処方することは、投与の容易さ、および用量の統一のために特に有利である。本明細書中において、用量単位形態は、治療すべき対象のための単一の用量として適する物理的に別個の単位を含み;各々の単位が必要とされる医薬担体との関係で所望の治療効果を生じるように計算された活性な化合物の所定の分量を含む。本発明の用量単位形態に関する詳述は、活性な化合物の独特の特徴、および達成される特別な治療効果、そして個人の治療のためのそのような活性な化合物を混ぜ合わせる技術分野に固有な制限によって指示され、そしてそれらに直接的に依存する。
そのような化合物の毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に致命的な量)およびED50(集団の50%に治療としてに有効な量)を測定するための、細胞培養または実験動物における標準的な医薬手法によって決定されることができる。有毒と治療効果の間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。有毒な副作用を示す化合物が使われる間、未感染細胞への潜在的な損傷を最小限にするために病気に冒された組織部位にそのような化合物を狙うデリバリー・システムを設計し、それによって、副作用を減らすように注意が払われるべきである。
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトでの使用のための用量の範囲の処方において使用されうる。そのような化合物の用量は、少ししか、または少しの毒性も持たないED50を含む循環濃度の範囲内に好ましくはある。用量は、利用される剤形、および使用した投与経路に依存するこの範囲内で変わるかもしれない。本発明の方法で使用されたあらゆる化合物について、治療としての有効な量は最初に細胞培養アッセイから見積もられることができる。服用量は、細胞培養で決定されたIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含めた循環血漿濃度範囲を達成するために動物モデルで処方されうる。そのような情報が、ヒトにおける有用な服用量をより正確に決定するために使用されることができる。血漿中レベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって計測されうる。
本発明の他の側面は、放射線に関連した組織損傷の影響を受けやすいか、またはそれと診断される、危険性がある哺乳動物を治療する予防方法および治療方法の両方を提供する。1の態様において、本発明は、トコフェロールまたはトコトリエノールを含む治療として有効な量の医薬組成物を哺乳動物に投与することによって、放射線関連内部損傷から哺乳動物を予防する方法を提供する。他の態様において、本発明は、治療として有効な量の医薬組成物を哺乳動物に投与することによって、哺乳動物の放射線関連内部損傷の治療方法を提供する。
放射線によって誘発された損傷の予防および/または治療的処置をもたらすのに必要な有効な量のトコトリエノール、トコフェロール、コハク酸トコトリエノール、またはコハク酸トコフェロールは、それ自体は固定されない。治療として有効な量は、利用されるトコトリエノール、トコフェロール、コハク酸トコトリエノールまたはコハク酸トコフェロールの同一性および形態、必要とされる防護の程度、あるいは治療すべき放射線損傷の重さに必然的に依存している。
放射線関連内部損傷を予防するかまたはその進行が遅れるように、医薬組成物の投与は放射への被曝前に生じる可能性がある。医薬組成物の適切な服用量および投与経路は、放射線被曝のレベル、または放射の見込まれる危険性に基づいて決定されることができる。
予防的および治療的処置方法に関して、そのような治療は、ファーマコゲノミクスの分野から得られた知識に基づいて、特異的に個々に合わせるか、または修飾されうる。本明細書中において、「ファーマコゲノミクス」は、臨床開発および市場の薬物に、例えば遺伝子配列決定、統計遺伝学、および遺伝子発現分析のようなゲノミクス技術の適用を含む。より特に、前記用語は、対象者の遺伝子が薬物に対する彼または彼女の応答をどのように決定するかの研究を参照する(例えば、対象者の「薬物応答の表現型」または「薬物応答の遺伝子型」である)。したがって、本発明の他の側面は、個人の薬物応答に従って医薬組成物による個人の予防および治療処置を目的に合わせる方法を提供する。ファーマコゲノミクスは、臨床医または内科医に、予防または治療処置を治療から最も多くの利益を受ける対象者に向け、そして有毒な薬物関連副作用を経験するであろう対象者の治療を回避することを可能にする。
治療薬の代謝の相違は、服用量と薬理学的に活性な薬物の血中濃度の関係を変えることによって重度の毒性または治療の失敗をもたらす可能性がある。したがって、内科医または臨床医は、例えばアミフォスチンおよびビタミンEを投与するかどうかを決定するのに、ならびにアミフォスチンおよびビタミンEによる治療の用量および/または投薬計画を目的に合わせるのに、関係するファーマコゲノミクス研究で得られた知識を適用することを考えるかもしれない。
ファーマコゲノミクスは、病気に冒されたヒトの変化した薬物動態、および異常な作用による薬物への応答の臨床的に顕著な遺伝的な変化に対応する。一般的に、2タイプの遺伝薬理学的条件に区別されることができる。遺伝子条件は、身体への薬物の作用様式を変える単一の因子として伝達されるか(変えられた薬物作用)、あるいは遺伝子の条件は、薬物に対して身体の作用様式が変わる単一の因子として伝達される(変えられた薬物代謝)。これらの遺伝薬理学的条件は、希な遺伝的欠陥として、または天然に生じる多様性として生じることが可能である。例えば、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ欠乏(G6PD)は、主な臨床的合併症が酸化薬の摂取(抗マラリア、サルファ薬、鎮痛薬、ニトロフラン)、およびソラマメの消費後の溶血である、一般的な遺伝性酵素病である。
「全ゲノム関連性(a genome-wide association)」として知られる、薬物応答を予測する遺伝子を同定するための1つのファーマコゲノミクス・アプローチは、すでに知られていて遺伝子に関連する部位から成るヒト遺伝子の高分解能マップに主に頼る(例えば、その各々が2つの変異体を有するヒト遺伝子上の60,000〜100,000の多様性または可変部位から成る「2対立遺伝子の」遺伝子マーカー・マップ)。そのような高解像度の遺伝子マップは、特別な観察されている薬物応答または副作用に関係している遺伝子を確認するためのフェーズII/III臨床試験に参加している対象者の相当数の各々のゲノムのマップに例えることができる。または、そのような高分解能マップは、ヒト遺伝子で約1千数百万が知られる一塩基多型(SNPs)の組み合わせから産まれることができる。本明細書中において、「SNP」は、一続きのDNA中の一つのヌクレオチド塩基に生じる共通の変更である。例えば、SNPは、DNAの1000塩基ごとに一度生じる。SNPが病気の過程に係わっているかもしれない。しかし、大部分のSNPsは、病気に関係しないかもしれない。そのようなSNPsの発生に基づいた遺伝子マップを考えると、個体は彼らの個々のゲノム中のSNPsの特異的なパターンによって遺伝子のカテゴリーに分類されることができる。そのようなやり方で、治療の投薬計画が、そのような発生学的に類似した個体の中に共通した特徴を考慮して、発生学的に類似した個体のグループに適合させることができる。
あるいは、「候補遺伝子アプローチ」と呼ばれる方法を、薬物応答が予測される遺伝子を同定するために利用することができる。この方法によると、薬物のターゲットをコードする遺伝子が知られている場合、その遺伝子の全ての共通の変異体を集団中で非常に容易に同定することができて、そして他のものと対比して前記遺伝子の1つの変異を持っていることが特別な薬物応答に関係するかどうかを決定することができる。
実例となる態様として、薬物代謝酵素の活性は、薬物作用の強さおよび継続時間の主な決定因子である。薬物代謝酵素の遺伝的多型の発見(例えば、N−アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)、ならびにシトクロムP450酵素CYP2D6およびCYP2C19)は、なぜ、標準的なおよび安全な服用量の薬物を飲んだ後に、一部の対象者が期待された薬効を獲得しないのか、または過剰薬物応答および深刻な毒性を示すのかの説明を提供した。これらの多様性は、個体群内の2つの表現型、高代謝者(extensive metabolizer)と低代謝者(poor metabolizer)で表される。低代謝者表現型の罹患率は、異なる集団間で異なる。例えば、CYP2D6をコードする遺伝子は、高度に多様性であり、そしてその全てが機能性CYP2D6の欠損をもたらす、いくつかの突然変異が低代謝者で同定された。彼らが標準的な服用量を用いた場合、CYP2D6およびCYP2C19の低代謝者は、非常に高い頻度で過剰薬物応答および副作用を経験する。代謝産物が活性な治療的部分ならば、そのCYP2D6によって形成された代謝産物モルヒネを介したコデインの鎮痛効果に関して証明されるとおり、低代謝者は治療的応答を示さない。両極端のもう一方は、標準的な服用量に応答しない、いわゆる超高速代謝者(ultra-rapid metabolizers)である。最近、超高代謝の分子基盤は、CYP2D6遺伝子増幅によることが確認された。
あるいは、「遺伝子発現プロファイリング」と呼ばれる方法は、薬物応答を予測する遺伝子を同定するために利用されることができる。例えば、薬物を与えられた動物の遺伝子発現(例えば、アミフォスチンに対する応答における遺伝子発現)が、毒性に関連する遺伝子経路が作動したかどうかの指標を与えることができる。
上述のファーマコゲノミクス・アプローチの1つ以上から産まれた情報を、個人の病気を予防的または治療的処置のための適切な用量および処置投薬計画を決定することに使用することができる。薬物を投与することまたは薬物の選択に適用される場合、この知識は、薬害反応または治療不全を回避し、それにより、放射線防護トコフェロールまたはトコトリエノールを用いて対象者を治療する時に治療または予防の効率を高めることができる。
標準的な技術による、先に述べた本発明の組成物および方法に対する修飾は、当業者にとって容易に明白となり、本発明に含まれることになっている。
トコトリエノール、コハク酸トコフェロール、およびコハク酸トコトリエノールによる放射線によって誘発された致死からの保護は、以下の実施例で説明される。本明細書中ではマウスに関して結果は示されるが、トコトリエノールおよびトコフェロールはヒトの栄養補助食品として使われているので、ヒトへの展開に直接的に適用できるかもしれない。
本発明は、制限的なものではない、以下の実施例によってさらに説明される。本願出願、ならびに図面および表の全体にわたって引用された全ての参考文献、特許、および公開特許出願の内容を本明細書中に援用する。
実施例1.動物
ジャクソン・ラボから調達したCD2F1雄マウス、6〜8週齢(約25 g)を、この研究全体にわたって使用し、21±0.5℃に維持した部屋で飼育した。到着した動物を、時間病原体による汚染に関する血清学試験をおこなっている10日間隔離の状態を維持した。全ての動物にペレット食と水の自由摂取を提供した。
実施例2.γ−トコトリエノールの準備
1 mlの終量のγ−トコトリエノールの準備を、0.11 mlのγ−トコトリエノールを、0.85 mlのPEG−400(ポリエチレングリコール−400)と0.05 mlのvital−E−placebo可溶化剤(Schering-Plough)と混ぜることによって作製した。1 mlの製剤は8匹のマウスに十分である。γ−トコトリエノールの終濃度は、100 mg/mlである。対照動物への注射のための媒質を、0.11 mlのオリーブ油をγ−トコトリエノールの代わりに使用した以外は厳密にγ−トコトリエノールと同様に準備した。
実施例3.動物の注射および放射
各動物に、0.1 mlのγ−トコトリエノールまたは溶媒製剤を(襟首に)皮下注射した。注射を照射の20〜24時間前におこなった。
動物を、十分に換気されたリューサイト・ボックス(区画に分けられたボックス中に8匹の動物)にセットし、10.5および11 Gyの総放射線量のための0.6 Gy/分の放射線率のコバルト60施設において照射した。使用された放射線量は超致死量(super lethal dose)である。溶媒単独による、このマウス系統のLD50/30の放射線量は、8.9 Gyである。放射線量および線量率は、同じものであってそれがα-トコフェロール研究に使われた。
実施例4.γ−トコトリエノールの効果の観察
放射後に、マウスを元の檻に返して、食物と水を自由摂取させた。30日間毎日、マウスを計量し、そして生存しているマウスを監視した。30日の終わりの時点の生存しているマウスの百分率を放射線損傷からの保護におけるγ−トコトリエノールの効果の尺度として使用する。
実施例5.放射線防護剤としてのγ−トコトリエノールの効果
2つの実験を、各実験に8匹の動物を用いておこなった。図2で示されるように、実験1において、γ−トコトリエノールで処置した動物の100%が10.5 Gyの放射で生き残ったが、しかし溶媒で処置した動物の12.5%しか生き残らなかった。実験2において、γ−トコトリエノールで処置した動物の75%が放射線致死から保護されて、そして溶媒で処置した群の中に生存しているマウスはいなかった。
実施例6.α−トコフェロールとγ−トコトリエノールの効果の比較
2つの異性体の効果を比較して、結果を図3で示す。10.5 Gyの放射線量を両方の場合で使用して、そして2つの実験を各実験に8匹のマウスで実施した。γ−トコトリエノールによる防護が、両方の実験において一貫して25%高かった。γ−トコトリエノールは、100%と75%を保護して、そしてα−トコフェロールは、それぞれ75%と50%に防護をもたらした。溶媒は、少しの効果もなかったか、または非常にわずかな影響しか与えなかった。
実施例7.より高い放射線量におけるγ−トコトリエノールの保護効果
α−トコフェロールもγ−トコトリエノールも10.5 Gyで保護したので、11 Gyのより高い放射線量を、それらの保護効果におけるこれら2つの異性体を区別するのに使用した。図4は、11 Gyの放射線量の効果を比較して、そのような高い放射線量であってもγ−トコトリエノールがα−トコフェロールよりもより良好な放射線防護剤であることを示す。
動物(マウス)を8.5 Gyのコバルト放射にさらした時、動物の約50%が30日で死亡する。放射線量を10.5 Gyに増やした時、生存マウスは存在しないか、または数匹の(15%未満)の生存マウスしか存在しなかった。しかし、動物に照射前にγ−トコトリエノールを与えた時、その動物の75%〜100%が生き残った。親化合物、α−トコフェロールからの保護は、γ−トコトリエノールのそれより25%だけ少なかった。放射線量がさらに11 Gyに上げた場合、α−トコフェロールでも生存マウスはいなかったが、しかしγ−トコトリエノールによって処理した動物の40%が生き残った。したがって、γ−トコトリエノールの使用は、核の曝露からの生存マウスの数を増加させることができる。
実施例8.γ−トコトリエノール処理が放射後の体重減少を回復させる
図5で示されるとおり、10.5 Gyで照射されたマウスの体重を照射後の最初の4日減少させ、そして、4日目と6日目の間に体重が増え始めた。異なる処理の中で、未処理マウス(Untr、Irrad)、および溶媒(Vehicle)処理マウスは、9日目辺りから再び体重が減少し始め、そして15日目までに死んだ。対照的に、ビタミンEまたはトコトリエノールで処理したマウスは、重量が増え続けて、照射で死ななかった。しかしながら、ビタミンEを受けたマウスは、10日目および20日目の間に他の体重減少を経験したことに留意すべきである。
実施例9.α−コハク酸トコフェロール(TS)の準備
0.5 gのTS(Sigma、1210単位/g)を、2.85 mlのPEG−400(ポリエチレングリコール−400)と0.15 mlのvital-E-placebo、可溶化剤(Schering-Plough)と一緒に超音波処理した。前記準備された溶液のTSの終濃度は、200単位/mlである。800単位/kgの服用量で、1 mlの先に記載の準備された溶液は、8匹のマウスに十分である。対照マウスへの注射のための溶媒を、0.5 mlのオリーブ油をTSの代わりに使用した以外、厳密にTS同様に準備した。
実施例10.コハク酸トコフェロールの経口投与および放射線
各々の動物に0.1 mlのTS溶液(200単位/ml)、または溶媒を、球状の先端(blobbed head)をもつ栄養針を使用することによって経口投与した。全ての投与を照射の20〜24時間前におこなった。
そして、動物を、よく換気されたリューサイト・ボックス(区画に分けられたボックス中に8匹の動物)に移し、9、9.5および10 Gyの総放射線量のために、0.6 Gy/分の放射線量率にてコバルト60装置で照射した。使用した9.5および10 Gyの放射線量は致死量である。この系の動物に関するLD50/30放射線量は、溶媒単独で8.9 Gyである。
実施例11.α−コハク酸トコフェロールによる放射線防護
放射線損傷からの保護におけるα−コハク酸トコフェロールの効果を、実施例4で述べたように監視する。図6は、9.5 Gyの放射線量で全ての対照動物が殺されたことを示す。しかし、α−コハク酸トコフェロール処理したマウスの60%が、同じ量の放射線被曝で生き残った。
実施例12.γ−コハク酸トコトリエノールによる放射線防護
γ−コハク酸トコトリエノールを、誘導体化によって合成し、そして経口投与のための実施例9に記載のとおり準備することができる。放射線防護における経口投与したγ−コハク酸トコトリエノールの効果を、実施例10および4に記載のとおり試験することができる。α−コハク酸トコフェロールに比べてγ−トコトリエノールの改善された効果に基づいて、γ−コハク酸トコトリエノールがα−トコフェロールより40〜50%より有効であると予測される(すなわち、同じ実験条件下、生存率を40〜50%増やす)。
上述の説明は、当業者にどのように本発明を実施するか教示する目的のものであって、前記説明を読むことによって技能労働者に明白になるであろう本発明の全ての明らかな修飾およびその変更の詳述を意図していない。しかし、以下の請求項によって規定される全てのそのような明らかな修飾および変更は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。請求項は、その文脈が特に反対を示さない限り、請求した成分およびそこで意図した目的を満たすための有効ないずれかの順序のステップにおよぶことが意図される。
γ−トコトリエノールとα−トコフェロールの間の化学的構造の比較。γ−トコトリエノールの側鎖は不飽和であり、そのフェニル環には追加のメチル基がある。 2つの異なる実験におけるγ−トコトリエノールによる放射線防護を示す。実験1において、γ−トコトリエノール注射後の10.5 Gyへの被曝によって100%生存したが、しかし一方で対照の12.5%しか生き残らなかった。実験2において、γ−トコトリエノール処理された動物のうち75%生存し、対照のいずれも生き残らなかった。 γ−トコトリエノールの生存−防護効果と、α−トコフェロールのそれとの比較であり、γ−トコトリエノール類似体は、1分につき0.6 Gyによって10.5 Gyである。2つの実験において、γ−トコトリエノールが100%および75%の放射からの生存−保護を提供したのに対して、α−トコフェロールは、これらの2つの実験にて、それぞれ75および50%しか提供しなかった。 11 Gyの高放射線量でのγ−トコトリエノールとα−トコフェロールの効果の比較である。この高放射線量において、α−トコフェロールさえ有効ではなかったのに対して、γ−トコトリエノールにより40%の動物が生き残った。 照射後の体重減少を防ぐことにおけるγ−トコトリエノールとα−トコフェロールの効果を示す。マウスに皮下注射(s.c.)でα−トコフェロールまたはトコトリエノールを与えて、1分につき0.6 Gyによって10.5 Gy照射した。 経口投与されたα−コハク酸トコフェロールの保護効果を示す。1分につき0.6 Gyによる9、9.5、および10 Gyのコバルト60放射線に対する被曝の24時間前に経口(p.o.)で400および800 mg/kgのトコトリエノールによって処理された被照射マウスの生存。

Claims (20)

  1. 哺乳動物における放射線誘発性内部損傷の予防および治療方法であって、以下のステップ:
    γ−トコトリエノール、α−コハク酸トコフェロール、およびγ−コハク酸トコトリエノールの少なくとも1つを含む医薬組成物の治療としての有効量を上記哺乳動物に投与する、
    を含む前記方法。
  2. 前記医薬組成物が、医薬として許容される担体を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記医薬組成物が、γ−トコトリエノールを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記医薬組成物を皮下投与する、請求項3に記載の方法。
  5. 前記医薬組成物を筋肉内投与する、請求項3に記載の方法。
  6. 前記医薬組成物を腹腔内投与する、請求項3に記載の方法。
  7. 前記医薬組成物を血管内投与する、請求項3に記載の方法。
  8. 前記医薬組成物が、α−コハク酸トコフェロールを含む、請求項1に記載の方法。
  9. 前記医薬組成物を経口投与する、請求項8に記載の方法。
  10. 前記医薬組成物が、γ−コハク酸トコトリエノールを含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記医薬組成物を経口投与する、請求項10に記載の方法。
  12. 前記医薬組成物が、α−コハク酸トコフェロールおよびγ−コハク酸トコトリエノールを含む、請求項1に記載の方法。
  13. 前記医薬組成物を経口投与する、請求項12に記載の方法。
  14. 前記医薬組成物を皮下投与する、請求項12に記載の方法。
  15. 前記医薬組成物を筋肉内投与する、請求項12に記載の方法。
  16. 前記医薬組成物を腹腔内投与する、請求項12に記載の方法。
  17. 前記医薬組成物を血管内投与する、請求項12に記載の方法。
  18. 前記放射線誘発性内部損傷が、放射線によって誘発された造血系の抑制によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
  19. 哺乳動物における放射線誘発性損傷の予防および治療のための医薬組成物であって、以下の:
    α−コハク酸トコフェロールおよびγ−コハク酸トコトリエノールの少なくとも1つ;ならびに
    医薬として許容される担体、
    を含み、経口投与のために処方される前記医薬組成物。
  20. 前記医薬組成物が可溶化剤をさらに含む、請求項19に記載の医薬組成物。
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