以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る電波遮蔽窓の全体構成を模式的に示しており、この電波遮蔽窓は、建物の外壁に設けられたガラス窓の窓枠に嵌め込まれた第1の面材としての窓ガラス1と、ガラス窓を室内側(同図の左側)から覆うように設けられた第2の面材としての布製のカーテン2とを備えており、それら窓ガラス1およびカーテン2に、それぞれ、特定周波数帯の異なる電波を選択的に遮蔽する周波数選択膜3が形成されている。尚、窓ガラス1は、ガラス窓に対し移動不能に固定されているものとする。
上記の各周波数選択膜3は、規則的に配列された複数の導電部としてのアンテナ4,4,…でもって特定周波数帯の電波を選択的に反射するという周波数選択性を有しており、よって、周波数選択膜3は、特定周波数帯の電波のみを遮蔽する一方、それ以外の周波数の電波を透過させるようになっている。具体的には、窓ガラス1上の周波数選択膜3は、略2500MHzの周波数の電波を選択的に遮蔽するようになっており、カーテン2上の周波数選択膜3は、それよりも少しだけ低い略2300MHzの周波数の電波を選択的に遮蔽するようになっている。
具体的には、特定周波数帯の電波に対するアンテナ4の電波反射率は、該アンテナ4の導電率と相関する。つまり、アンテナ4の導電率が高い(アンテナ4の電気抵抗が小さい)ほど、アンテナ4の電波反射率が高くなる。したがって、アンテナ4の導電性を高めることによって、アンテナ4の特定周波数帯の電波に対する電波反射率を高くすることができる。そのような導電材料としては、アルミニウム,銀,銅,金,白金,鉄,カーボン,黒鉛,酸化インジウムスズ(ITO),インジウム亜鉛酸化物(IZO),これらの混合物又は合金などが挙げられる。アンテナ4は、銅,アルミニウム,および銀のうちの何れかを含んでいることが好ましい。その理由は、銅,アルミニウム,銀は、導電材料の中でも比較的電気抵抗が低く、しかも廉価であるからである。より高い電波遮蔽性および低コストを実現する観点からは、上記の導電材料の中でも、特に銀が好ましい。
また、各アンテナ4は、銅,アルミニウム,銀などの導電材料の微粒子を含有してなるものであってもよく、例えば、粉末状の導電材料がバインダに含有されてなる導電性ペーストを所定パターンが形成されるように均一に塗布し、その後乾燥させることにより得ることができる。具体的には、導電性ペーストを所定のパターン形成した後、例えば100℃以上でかつ200℃以下の雰囲気下で、10分以上でかつ5時間以下の時間に亘って乾燥させることによりアンテナ4を得ることができる。そのような導電性ペーストとしては、粉末状の導電材料(例えば、銀など)をポリエステル樹脂中に分散混入させたものであってもよい。この場合、導電材料の含有率は、40重量%以上でかつ80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは、50重量%以上でかつ70重量%以下である。導電材料の含有率が40重量%未満であると、アンテナ4の導電性が低下する傾向となる。一方、導電材料の含有率が80重量%よりも多いと、樹脂中に均一に分散混入させることが困難となる傾向がある。また、アンテナ4は、導電材料からなる導電膜と、その導電膜を被覆する酸化防止膜とからなるものであってもよい。
尚、アンテナ4の形成方法については、上記の方法に限定されるものではなく、他の方法により形成してもよい。例えば、蒸着法,スパッタ法,化学気相蒸着法(CVD法)などの成膜方法により導電膜(例えば、アルミニウム膜,銀膜など)を成膜し、フォトリソグラフィなどのパターニング方法により所定の形状寸法にパターニングするようにしてもよい。その他、アンテナ4の形成は、例えば、シルク印刷法,パターン圧着法,エッチング加工法,スパッタ法,蒸着法(例えば、化学気相蒸着法(CVD法)),ミスト塗装法,型の嵌込みによる埋込法などによっても行うことができる。また、アンテナ4の厚さTは、10μm以上でかつ20μm以下(10μm≦T≦20μm)であることが好ましい。つまり、アンテナ4の厚さTが10μmよりも小さい(T<10μm)とアンテナ4の導電性が低下する傾向にあり、一方、アンテナ4の厚さTが20μmよりも大きい(T>20μm)と、アンテナ4の形成性が低下する傾向にある。
本実施形態では、アンテナ4,4,…は、図2に示すように、マトリクス状に配列されている。これらアンテナ4,4,…は、隣接するアンテナ4,4同士が接触しないように一定の間隔をおいて配列されている。各アンテナ4は、図3に拡大して示すように、3本の第1エレメント部4a,4a,…と、3本の第2エレメント部4b,4b,…とを有する。3本の第1エレメント部4a,4a,…は、アンテナ中心Cから放射状に延びており、相互に120°の角度をなす直線状に形成されている。各第2エレメント部4bは、対応する第1エレメント部4aに直交する方向に直線状に延びており、その長さ方向中央において該第1エレメント部4aの外側端に結合されている。図示する例では、第1および第2エレメント部4a,4bの長さL1,L2は、互いに同じ(L1=L2)であり、また、第1エレメント部4aの幅W1および第2エレメント部4bの幅W2についても、互いに同じ(W1=W2)である。
尚、第1エレメント部長さL1と、第2エレメント部長さL2は、互いに異なって(L1≠L2)いてもよく、その場合には、0<L2<2×31/2 ×L1という関係式を満たすことになる。つまり、L2≧2×31/2 ×L1であると、隣接する第2エレメント部4b,4b同士が接触することになり、所望の電波遮蔽効果が得られなくなる。さらに、特定周波数帯の高い遮蔽率を実現する観点からすれば、第2エレメント部長さL2が、第1エレメント部長さL1の0.5倍以上でかつ2倍以下(0.5×L1≦L2≦2×L1)であることが好ましく、より好ましいのは、0.75倍以上でかつ2倍以下(0.75×L1≦L2≦2×L1)である。また、第1および第2エレメント部幅W1,W2についても、互いに異なって(W1≠W2)いてもよい。また、本実施形態では、第1および第2エレメント部4a,4bを互いに直交させるようにしているが、90°以外の角度でもって交差させるようにすることもできる。また、第1エレメント部4aに対する第2エレメント部4bの結合位置は、該第2エレメント部4bの長さ方向における中央以外の位置であってもよい。
ところで、アンテナ4の第1および第2エレメント部4a,4bの長さL1,L2と、該アンテナ4が反射する電波の周波数帯(特定周波数帯)とは相関する。このため、第1エレメント部4aの長さL1および第2エレメント部4bの長さL2は、遮蔽しようとする電波の周波数帯に応じて適宜決定することができる。例えば、第1エレメント部4aの長さL1と第2エレメント部4bの長さL2とが同一(L1=L2)である場合は、アンテナ4のエレメントの総長さL(L=3×L1+3×L2。以下、エレメント長Lという)を長くすることによって特定周波数帯を低くすることができる。また、逆に、エレメント長Lを短くすることによって特定周波数帯を高くすることができる。
以下、第1および第2エレメント部4a,4bの長さL1,L2による電波遮蔽特性について詳しく説明する。尚、ここでは、第1および第2エレメント部幅W1,W2は、共に0.7mm(W1=W2=0.7mm)である。
先ず、第1エレメント部4aの長さL1と第2エレメント部4bの長さL2とが互いに同じ(L1=L2)である場合に、第1エレメント部長さL1を、L1=10.6mmとすると、図4の特性図に示すように、2.7GHz付近の周波数の電波の透過率が選択的に低下する。つまり、略2.7GHzの電波が選択的に遮蔽される。これは、周波数選択膜3におけるアンテナ4が、入射した種々の周波数の電波のうち、略2.7GHzの周波数の電波を選択的に反射するからである。尚、透過減衰量の測定には、米国アジレント社製の「ネットワークアナライザ」を用いている。
次に、アンテナ4の第1エレメント部4aの長さL1と、該アンテナ4により反射される電波の周波数との関係を、図5に示す。この特性図から判るように、アンテナ4が反射する電波の周波数帯は、エレメント長L(ここでは、L=6×L1)が長くなるほど、低くなる。換言すれば、エレメント長Lが長くなるほど、そのアンテナ4により反射される電波の波長は長くなる。したがって、エレメント長Lが短くなるほど、そのアンテナ4により反射される電波の周波数帯は高くなる(波長は短くなる)ということになる。ところで、反射される電波の周波数帯は第1および第2エレメント部4a,4bのそれぞれの幅W1,W2とは大きく相関しない。すなわち、反射される電波の周波数帯は、主として、エレメント長Lによって決定される。したがって、同図の特性図に基づいて、アンテナ4により反射させたい電波の周波数帯(特定周波数帯)から適正なエレメント長Lを得ることができる。例えば、周波数が略5GHzである電波を遮蔽するには、第1エレメント部4aの長さL1を、L1≒6mmにすればよいことが判る。
一方、第1および第2エレメント部長さL1,L2が互いに異なる場合(L1≠L2)には、例えば、第1エレメント部4aの長さL1を固定して第2エレメント部4bの長さL2のみを変更することによっても、換言すると、第2エレメント部長さL2の第1エレメント部長さL1に対する比(L2/L1)を変更することによっても、特定周波数帯を調整することができる。具体的には、第2エレメント部4bの長さL2を長くすることにより特定周波数帯を低くすることができ、一方、第2エレメント部4bの長さL2を短くすることにより特定周波数帯を高くすることができる。
つまり、例えば、Y字形状をなすアンテナ(図17参照)の場合には、第1エレメント部長さL1を変更することによってしか特定周波数帯を調整することができない。これに対し、本実施形態では、上述のように、第1エレメント部4aの長さL1および第2エレメント部4bの長さL2の両方を変更することによっても特定周波数帯を調整できるのみならず、第2エレメント部長さL2の第1エレメント部長さL1に対する比(L2/L1)を変更することによっても特定周波数帯を調整することができ、よって、設計の自由度を拡大することができる。
上記窓ガラス1上の周波数選択膜3は、透光性を有する。つまり、本実施形態では、その周波数選択膜3の各アンテナ4は、図6(a),(b)および図7に拡大して示すように、略矩形状をなす多数の微細な透光孔4h,4h,…を有するメッシュ状の金属膜(好ましくは、金属薄膜)でもって形成されており、透光孔4h,4h,…は、アンテナ4の全領域に分散配置されている。この構成によれば、アンテナ4に或る程度の透光性が付与されるので、該アンテナ4を目立ちにくくすることができ、したがって、視界の妨げになりにくいというメリットがある。具体的には、アンテナ4の全領域面積に対する金属膜の占める面積(透光孔4h,4h,…を除いた領域の面積)の割合は、視界良好性の観点からすれば、2.5%以上でかつ30%以下であることが好ましい。
さらに、上記導電性(電波遮蔽性)と透光性との関係からすると、メッシュの線幅w(図7参照)は、5μm以上でかつ70μm以下(5μm≦w≦70μm)であることが好ましく、より好ましくは、8μm以上でかつ30μm以下(8μm≦w≦30μm)である。また、線間ピッチp(同図参照)は、50μm以上でかつ400μm以下(50μm≦p≦400μm)であることが好ましく、より好ましくは、100μm以上でかつ300μm以下(100μm≦p≦300μ)である。つまり、線幅wが5μmよりも小さい(w<5μm)と導電性が必要以上に低下する一方、線幅wが70μmを超える(w>70μm)と透光性が必要以上に低下する。また、ピッチpが50μmよりも小さい(p<50μm)と透光性が必要以上に低下する一方、ピッチpが400μmを超える(p>400μm)と導電性が必要以上に低下する。尚、アンテナの製作容易性の点からすれば、線幅wおよびピッチpは共に大きい方が好ましいことは言うまでもない。具体的には、線幅wは、50μm以上(50μm≦w)であることが好ましく、ピッチpは、300μm以上(300μm≦p)であることが好ましい。
そして、本実施形態では、各アンテナ4を、さらに目立たなくさせるべく、図8(a)に模式的に示すように、周波数選択膜3のアンテナ4,4,…以外の領域に、非導電材料からなっていてアンテナ4,4,…の場合と同形状であるメッシュ状の非導電部8が設けられている。つまり、非導電部8は、アンテナ4,4,…の場合と同様に、略矩形状をなす多数の微細な透光孔8h,8h,…を有するメッシュ状の膜(好ましくは、薄膜)でもって形成されており、透光孔8h,8h,…は、非導電部8の略全領域に分散配置されている。これにより、同図(b)に示すようにアンテナ4,4,…以外の領域を透明のままにしておく場合に比べて、アンテナ4,4,…の被視認性を大幅に低下させることができ、よって、それらアンテナ4,4,…の規則的な配列による幾何学模様を視覚的に周囲に溶け込ませることができる。この場合、非導電部8のメッシュの線間ピッチおよび線幅を、アンテナ4の場合と同程度することで一層の効果を上げることができる。
尚、上記のような非導電部8を設ける方法としては、特に限定されるものではなく、変形例としては、一例として、銅などの金属材料を使用して周波数選択膜3の略全領域にメッシュ状の金属膜を形成し、その後、非導電部8とすべき金属膜の部分のみを、酸化させるなどの手段により非導電化することが挙げられる。
一方、上記カーテン2上の周波数選択膜3のアンテナ4,4,…は、先に述べたような導電材料を含有してなるインキが該アンテナ4の形状に印刷されてなっている。その際に、本実施形態では、カーテン2におけるアンテナ配置側の表面には、コーティング層10が設けられており、各アンテナ4は、そのコーティング層10をカーテン2との間に挟んで該カーテン2上に配置されている。これにより、カーテン2上にアンテナ4,4,…を形成する際に、インキがカーテン2に染み込むこと(特に、拡がる方向の染込み)により所定形状のアンテナ4を得ることが困難になって所定の電波遮蔽特性が実現されなくなる、という問題を回避することができる。
具体的には、上記インキの溶媒としては、樹脂(例えば、ポリエステル樹脂など)や溶液(有機溶剤,水など)などが挙げられる。この場合、樹脂は、導電材料をカーテン2側に導電材料を接着する接着剤としての役割を持ったものであってもよい。因みに、導電材料などの微粒子を樹脂に分散混入させる場合には、導電材料の含有率は、40重量%以上でかつ80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは、50重量%以上でかつ70重量%以下である。ここで、導電材料の含有率が40重量%未満であると、アンテナの導電性が低くなり過ぎ、一方、80重量%を超えると、樹脂中に均一に分散混入させることが困難である。また、印刷(塗布)されたインキの乾燥条件は、インキの組成などにもよるが、例えば、100℃以上でかつ200℃以下の温度でもって10分間以上でかつ5時間以下の時間に亘って乾燥させることが挙げられる。
ここで、図9に基づき、上記のように構成された電波遮蔽窓の電波遮蔽特性について説明する。窓ガラス1上の周波数選択膜3により選択的に遮蔽される電波の周波数は、略2500MHzであり、カーテン2上の周波数選択膜3により選択的に遮蔽される電波の周波数は、略2300MHzである。そして、カーテン2が窓ガラス1を略全面的に覆った状態では、無線LANの2400MHz帯に相当する略2500MHz帯の電波と、略2300MHz帯の電波とが,共に、50dB以上の減衰量でもって減衰している。つまり、それら2つの帯域の電波が高い電波遮蔽率でもって遮蔽されている。
また、上記の特性図から判るのは、図1に仮想線で示すように、カーテン2を水平方向片側(同図の下側)に寄せてガラス窓を開放すると、そのガラス窓の開放された部分では、窓ガラス1上の周波数選択膜3による電波遮蔽作用のみを受けることになり、そのときは、略2500MHz帯の電波がのみ選択的に遮蔽されることとなり、略2300MHz帯の電波については、透過しやすくなる。
したがって、本実施形態によれば、ガラス窓の窓枠に嵌め込まれた窓ガラス1と、そのガラス窓を覆うように設けられたカーテン2とに、それぞれ、特定周波数帯の電波を選択的に遮蔽する周波数選択膜3を設ける際に、窓ガラス1上の周波数選択膜3について、アンテナ4,4,…以外の領域に設けられていて、該アンテナ4,4,…と同程度の透光性を有する非導電部8により、各アンテナ4周りの領域との間における透光性の違いによる該アンテナ4の被視認性を低下させることができ、よって、多数のアンテナ4,4,…が規則的に配列されることで形成される幾何学模様を、視覚的に周囲に溶け込ませて目立たなくすることができる。
さらに、上記2つの周波数選択膜3,3を、互いに異なる周波数帯の電波を選択的に遮蔽するようにしたので、特定周波数帯以外の周波数の電波を使用する機器の電波環境の悪化を伴わずに、上記特定周波数帯の電波を遮蔽して情報の漏洩を防止することができるのみならず、各電波に対する遮蔽率の低下を招くことなく、2つの遮蔽対象周波数帯の電波に対応することができる。
また、カーテン2をガラス窓が開放されるように片側に寄せたり、そのカーテン2でガラス窓を覆うようにすることで、窓ガラス1の周波数選択膜3およびカーテン2の周波数選択膜3の2つによる2つの特定周波数帯の電波の遮蔽と、窓ガラス1の周波数選択膜3のみによる1つの特定周波数帯の電波の遮蔽とに切り換えることができる。
−実験例−
ここで、周波数選択膜3における各アンテナ4の第1エレメント部4aの長さL1を、L1=12.24mmに固定する一方、第2エレメント部4bの長さL2を種々変化させるようにして、5種類の周波数選択膜を作製した。尚、第1エレメント部4aの幅W1および第2エレメント部4bの幅W2は、W1=W2=1.2mmである。
具体的には、銀ペーストを所定の形状に塗布して乾燥させることにより、それぞれ、実施例1〜4および比較例の5種類のアンテナを形成した。その際に、実施例1では、第2エレメント部長さL2を、L2=24.48mm(L1:L2=1:2)とした。実施例2では、第2エレメント部長さL2を、L2=15.30mm(L1:L2=1:1.25)とした。実施例3では、第2エレメント部長さL2を、L2=12.24mm(L1:L2=1:1)とした。実施例4では、第2エレメント部長さL2を、L2=9.2mm(L1:L2≒1:0.75)とした。実施例5では、第2エレメント部長さL2を、L2=0mmとした。すなわち、「Y字形アンテナ」である。
上記の実施例1〜5における周波数と透過減衰量との関係を、図10の特性図に併せて示す。また、実施例1〜5における第1エレメント部長さL1と第2エレメント部長さL2との各比(L2/L1)と、整合周波数との関係を、図11の特性図に併せて示す。
図10から判るように、第2エレメント部4bを有する実施例1〜4では、実施例5のものよりも電波遮蔽率が高かった。この結果から、実施例1〜4の場合には、実施例5の場合よりも高い電波遮蔽率でもって特定周波数帯の電波を遮蔽できるということが判る。また、実施例1〜4の場合には、実施例5の場合よりも鋭いピークを有している。すなわち、実施例1〜4の場合には、実施例5の場合よりも周波数選択性が高く、特定周波数帯の電波をより高い選択性でもって遮蔽するということも判る。
さらに、図11から判るように、第1エレメント部長さL1と第2エレメント部長さL2との比(L2/L1)が大きくなるにつれて整合周波数が小さくなる傾向にある。このことより、第2エレメント部4bの長さL2を変更することにより整合周波数を調整できるということが判る。
−変形例−
次に、アンテナについての変形例1〜3を示す。
図12に示す変形例1では、相隣接する2つのアンテナ4,4の各対は、図13に拡大して示すように、それぞれ、1組の第2エレメント部4b,4b同士が互いに平行に対向するように近接配置されてなるアンテナユニット5aを形成している。さらに、相隣接する3つのアンテナユニット5a,5a,…は、対応する3組の第2エレメント部4b,4b同士が互いに平行に対向するように近接配置されて二次元に連続展開した正六角形状のアンテナ集合体5(配列ユニット)を形成している。言い換えれば、アンテナ集合体5は、相対応する6組の第2エレメント部4b,4b同士が互いに平行に対向する状態の正六角形状に配列された6つのアンテナ4からなっており、このように、アンテナ集合体5が正六角形状であるので、様々な入射角でもって入射される電波に対し、比較的安定した電波遮蔽性能を発揮することができる。
また、アンテナ集合体5を構成する6つのアンテナ4は、該6つのアンテナ4の有する18本の第2エレメント部4bのうちの12本の第2エレメント部4bについて、相対応する6組の第2エレメント部4b,4b同士を近接させた状態に配置されているので、アンテナ4を高密度に配列することができ、その結果、特定周波数帯の電波に対する電波反射率(電波遮蔽率)をより向上させることができ、特定周波数帯の電波に対する高い電波遮蔽率を実現することができる。
アンテナ4,4,…の密度は、相対向する第2エレメント部4b,4b間の距離Xが小さいほど高くなる。具体的には、第2エレメント部4b,4b間の距離Xは、3.0mm以下(X≦3.0mm)であることが好ましい。つまり、距離Xが3.0mmよりも大きい(X>3.0mm)と電波遮蔽率が低下する傾向にある。尚、距離Xが小さ過ぎると、アンテナ4の形成方法によっては第2エレメント部4b,4b同士が不所望に接触することになり易いので、0.05mm以上(X≧0.05mm)に抑えておくことが好ましい。
さらに、その他の変形例2,3を上記の変形例1と対比させつつ、図14〜図18を参照しながら具体的に説明する。
先ず、図14は、変形例1の周波数選択膜の電波遮蔽特性を示す特性図である。同図から判るように、この場合には、整合周波数F0に対する10dB帯域幅の比〔{(F2−F1)/F0}×100(%)〕が、10.4%と非常に小さい。つまり、周波数選択性が非常に高い。
一方、例えば、図15に示す変形例2のように、いわゆる、エルサレムクロス形状をなすアンテナ104,104,…の場合には、その電波遮蔽特性は、図16に示すように、整合周波数に対する10dB帯域幅の比が、17.0%(>10.4%)であり、本実施形態の場合よりも大きい。
また、図17に示す変形例3のように、マトリクス状に配列されたY字形アンテナ204,204,…の場合には、その電波遮蔽特性は、図18に示すように、整合周波数に対する10dB帯域幅の比が、33.0%(>10.4%)であり、本実施形態の場合よりもさらに大きい。尚、上記3つの特性図(図14,図16,図18)では、整合周波数(F0)が互いに異なるが、10dB帯域幅は整合周波数に依存するものではないので、比較する上で特に問題はない。また、変形例3の配列距離(縦横距離)は変形例2の場合と同じである。
尚、上記の実施形態では、窓ガラス1をガラス窓に対し移動不能に固定する場合について説明しているが、窓ガラス1についても、カーテン2の場合と同様に、ガラス窓に対し移動可能であってもよい。
また、上記の実施形態では、窓ガラス1とカーテン2とを備えたものについて説明しているが、本発明は、結露防止や防音などの対策のために2枚の窓ガラスを備えた二重窓のように複数枚の窓ガラスを備えたものや、それに他の面材を組み合わせたものに適用することができる。
さらに、上記の実施形態では、窓ガラス1上の周波数選択膜3について、各アンテナ4および非導電部8を、共に、略矩形状をなす多数の透光孔4h,8hがマトリクス状に分散配置された状態のメッシュ状とするようにしているが、透光孔4h,8hの形状やその配置などは特に限定されるものではなく、また、アンテナ4と非導電部8とで互いに異なっていてもよい。
(実施形態2)
図19は、本発明の実施形態2に係る電波遮蔽窓の周波数選択膜3の構成を示しており、本実施形態では、実施形態1の電波遮蔽窓における窓ガラス1上の周波数選択膜3およびカーテン2上の周波数選択膜3のうち、窓ガラス1上の周波数選択膜3は、相異なる2つの周波数帯の電波を遮蔽するように設けられた大小2種類のアンテナ4,6を有する。尚、大アンテナ4については、そのサイズおよび形状が上記実施形態1のアンテナ4と略同じであるので、実施形態1の場合と同じ部分には同じ符号を付して示し、説明は省略する。
本実施形態において、周波数選択膜3は、各々、一定のパターンを形成するようにマトリクス状に配置された複数の大アンテナ4,4,…および複数の小アンテナ6,6,…を備えている。これら大アンテナ4,4,…および小アンテナ6,6,…は、互いに干渉しないように一定の間隔をおいて配置されている。
小アンテナ6は、大アンテナ4と略同様の形状をなしており、大アンテナ4とはサイズの点で大きく異なっている。具体的には、小アンテナ6は、図20に拡大して示すように、大アンテナ4の場合と同じく、3本の第1エレメント部6a,6a,…と、3本の第2エレメント部6b,6b,…とを有する。3本の第1エレメント部6a,6a,…は、アンテナ中心Csから放射状に直線状に延びており、相互に120°の角度をなしている。各第2エレメント部6bは、対応する第1エレメント部6aに直交する方向に直線状に延びており、その長さ方向の中央において第1エレメント部6aの外側端に結合されている。図示する例では、第1および第2エレメント部6a,6bの長さLs1,Ls2は、互いに同じ(Ls1=Ls2)であり、また、第1エレメント部6aの幅Ws1および第2エレメント部6bの幅Ws2についても,互いに同じ(Ws1=Ws2)である。
尚、第1エレメント部長さLs1と、第2エレメント部長さLs2とは、互いに異なって(Ls1≠Ls2)いてもよく、その場合には、0<Ls2<2×31/2 ×Ls1という関係式を満たすことになる。つまり、Ls≧2×31/2 ×Ls1であると、隣接する第2エレメント部6b,6b同士が接触することになり、所望の電波遮蔽効果が得られなくなる。さらに、特定周波数帯の高い遮蔽率を実現する観点からすれば、第2エレメント部長さLs2が、第1エレメント部長さLs1の0.5倍以上でかつ2倍以下(0.5×Ls1≦Ls2≦2×Ls1)であることが好ましく、より好ましいのは、0.75倍以上でかつ2倍以下(0.75×Ls1≦Ls2≦2×Ls1)である。また、第1および第2エレメント部6a,6bの幅Ws1,W2についても、互いに異なって(Ws1≠Ws2)いてもよい。また、本実施形態では、第1および第2エレメント部6a,6bを互いに直交させているが、90°以外の角度でもって交差させるようにすることもできる。また、第1エレメント部6aに対する第2エレメント部6bの結合位置は、該第2エレメント部6bの長さ方向における中央以外の位置であってもよい。
さらに、本実施形態における周波数選択膜3のアンテナは大アンテナ4および小アンテナ6の2種類のみであるが、大アンテナ4および小アンテナ6とは異なる形状ないし大きさのアンテナを有していてもよい。例えば、3種類以上の周波数帯の電波が使用されるような環境においては、相互に大きさの異なる3種類以上のアンテナにより周波数選択膜3を構成してもよい。
大アンテナ4および小アンテナ6は、それぞれ、周波数選択性を有する。具体的には、大アンテナ4は第1周波数帯の電波を反射し、小アンテナ6は、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯(>第1周波数帯)の電波を反射する。このため、本実施形態では、第1周波数帯および第2周波数帯の両方の電波を共に選択的に遮蔽し、それ以外の周波数の電波は透過するようになっている。
ところで、例えば、無線LANでは、2.45GHz帯および5.2GHz帯の2つの周波数帯の電波が使用されており、このような環境においては、使用される2つの周波数帯の電波のみを選択的に遮蔽して情報の漏洩を防止する一方、使用されないそれ以外の周波数の電波(例えば、携帯電話に使用される電波,テレビ放送に使用される電波など)は透過するような電波遮蔽材が必要とされる。これに対し、本実施形態に係る窓ガラス1上の周波数選択膜3は、上述のとおり、特定の2つの周波数帯の電波を選択的に遮蔽する一方、それ以外の周波数の電波を透過させることができるので、好適である。
ここで、上記のように構成された電波遮蔽窓において、大アンテナ4の第1および第2エレメント部4a,4bの長さL1,L2および幅W1,W2が、それぞれ11.19mm(L1=L2=11.19mm)および0.7mm(W1=W2=0.7mm)であり、小アンテナ6の第1および第2エレメント部6a,6bの長さLs1,Ls2および幅Ws1,Ws2が、それぞれ6.05mm(Ls1=Ls2=6.05mm)および0.7mm(Ws1=Ws2=0.7mm)である場合の電波遮蔽特性を説明する。
図21は、周波数選択膜3に入射する電波の周波数と、該電波が周波数選択膜3を透過した際の透過減衰量との関係を示している。同図から判るように、入射した電波のうち2つの周波数帯の電波、具体的には、2.45GHz帯の電波と、5.2GHz帯の電波とが共に減衰される。換言すれば、入射した電波のうち、2.45GHz帯および5.2GHz帯の2つの電波が選択的に遮蔽される。これは、周波数選択膜3の大アンテナ4および小アンテナ6によって、2つの特定周波数帯の電波が選択的に反射されるためである。具体的には、大アンテナ4が低い第1周波数帯(2.45GHz帯)の電波を反射し、小アンテナ6が高い第2周波数帯(5.2GHz帯)の電波を反射する。
したがって、本実施形態によれば、実施形態1の場合と同様の作用効果の他、窓ガラス1上の周波数選択膜3を、大小2種類のアンテナ4,6でもって互いに周波数帯の異なる2つの電波を選択的に遮蔽することができるので、カーテン2上の周波数選択膜3によるものと併せると、3つの相異なる周波数帯の電波を遮蔽することができる。
−変形例−
ここで、アンテナ形状についての変形例1〜5を説明する。
図22に示す変形例1のように、Y字形アンテナの場合には、無線LANに対応するような大小2種類のアンテナ204,206を効率よく高密度に配列することが困難である。つまり、各々、相隣る6つの大アンテナ204,204,…をエレメント部204a,204a同士が互いに平行に対向する状態に近接配置すると、小アンテナ206,206,…については、エレメント部206a,206a同士が互いに平行に対向する状態はおろか、小アンテナ206,206同士を近接配置すること自体が困難であり、大アンテナ204,204,…は高密度に配置することができるものの、小アンテナ206,206,…は大アンテナ204,204,…よりも単位面積当りの数が少なくならざるを得ず、高密度に配置することが難しい。このため、小アンテナ206,206,…が対象とする電波に対する遮蔽率は、大アンテナ204,204,…が対象とする電波に対する遮蔽率に比べると、かなり低下する。つまり、Y字形アンテナの場合には、大小2種類のアンテナ204,206を共に高密度に配置することが難しく、したがって、周波数帯の異なる複数の電波を、同レベルの高い遮蔽率でもって遮蔽することが困難である。
このような事情は、エルサレムクロス形のアンテナを用いる場合でも同様である。つまり、図23に示す変形例2のように、大アンテナ104,104,…を、第2エレメント部104b,104b同士が互いに平行に対向する状態のマトリクス状に近接配置すると、小アンテナ106,106,…については、第2エレメント部106b,106b同士が互いに平行に対向する状態はおろか、小アンテナ106,106同士を近接配置することさえも困難であり、大アンテナ104,104,…は高密度に配置することができるものの、小アンテナ106,106,…は大アンテナ104よりも単位面積当りの数が少なくならざるを得ず、高密度に配置することが難しい。さりとて、図24に示す変形例3のように、横方向に並ぶ小アンテナ106,106,…のみについて、第2エレメント部106b,106b同士が互いに平行に対向するように近接配置したとすると、小アンテナ106,106,…の密度は少しだけ高くなるものの、今度は、その分だけ大アンテナ104の密度が縦方向において低下することとなり、やはり、大小2種類のアンテナ104,106を共に高密度に配置することは困難である。また、この場合には、大小アンテナ104,106の配列方向(図24の左右方向)に沿って入射する特定周波数帯の電波については良好に遮蔽することができるものの、大小アンテナ104,106の配列方向に交差する方向(例えば、同図の上下方向)には、同方向において隣接する大アンテナ104,104同士および小アンテナ106、106同士がそれぞれ離間しているために、電波遮蔽率が低下することになり、電波の入射方向によって電波遮蔽率が大きく変化するという入射角依存性の問題を招くことにもなる。
図25は、変形例4に係る周波数選択膜3の構成を示している。ここでは、大小2種類のアンテナは、それぞれ、規則的に配列されている。尚、大アンテナ4および小アンテナ6の構成は、実施形態3の場合と同じであるので同じ部分については同じ符号を付して示し、説明は省略する。また、大アンテナ4の配列は正六角形状であり、第2エレメント部4b,4b同士を互いに平行に対向させる状態に近接配置された2つの大アンテナ4,4の対が大アンテナユニット5aをなしており、対応する3組の第2エレメント部4b,4b同士を互いに平行に対向させる状態に近接配置された3つの大アンテナユニット5a,5a,…が1つの大アンテナ集合体5をなしている。また、相隣る大アンテナ集合体5は、対応する第2エレメント部4b,4b同士を互いに平行に対向させるように近接配置されており、このようにして、多数の大アンテナ集合体5,5,…が二次元に連続展開している。
本変形例の小アンテナ6も、大アンテナ4,4,…の場合と同様に配列されている。つまり、第2エレメント部6b,6b同士を互いに平行に対向させる状態に近接配置された2つの小アンテナ6,6の対は、小アンテナユニット7aを形成しており、対応する3組の第2エレメント部6b,6b同士を互いに平行に対向させる状態に近接配置された3つの小アンテナユニット7a,7a,…は、小アンテナ集合体7をなしている。但し、小アンテナ集合体7は、各大アンテナ集合体5毎に該大アンテナ集合体5の内側に他の小アンテナ集合体7,7,…から離間した状態で1つずつ配置されている。正確には、小アンテナ集合体7は、各大アンテナ集合体5の内側と、相隣接する3つの大アンテナ集合体5,5,…に囲まれた部位とに1つずつ配置されている。
上記小アンテナ6の電波反射率は、大アンテナ4の場合と同様に、対向する第2エレメント部6b,6b間の距離が小さくなるように小アンテナ6を高密度に配置するほど高くなる。具体的には、図26に拡大して示すように、対向する第2エレメント部6b,6b間の距離Xsは、3.0mm以下(Xs≦3.0mm)であることが好ましく、より好ましい範囲は、1.0mm以下(Xs≦1.0mm)である。つまり、距離Xsが3.0mmよりも大きい(Xs>3.0mm)と電波遮蔽率が低下する傾向にある。尚、距離Xsが小さ過ぎると、小アンテナ6,6,…の形成方法によっては第2エレメント部6b,6b同士が不所望に接触することになり易いので、0.4mm以上(Xs≧0.4mm)、より安全には0.6mm以上(Xs≧0.6mm)に抑えておくことが好ましい。
さらに、大アンテナ4の第2エレメント部長さL2を短くせずに、比較的大きな小アンテナ6を配置できるようにするには、図27に示す変形例5のように、大アンテナ集合体5(第六角形状に並ぶ6つの大アンテナ4,4,…)内の小アンテナ集合体7(同じく六角形状に並ぶ6つの小アンテナ6,6,…)を、該大アンテナ集合体5の六角形の中心回りに少しの角度θ(例えば、θ=10°)だけ相対的に回転移動させるようにしてもよい。こうすることによっても、大アンテナ4の第2エレメント部4bと小アンテナ6の第2エレメント部6bとが互いに干渉するのを回避することができる。
尚、上記の実施形態では、窓ガラス1上の周波数選択膜3およびカーテン2上の周波数選択膜3のうち、窓ガラス1上の周波数選択膜3のみを複数種類のアンテナ4,6を有するものとするようにしているが、窓ガラス1上の周波数選択膜3に加えて、又は窓ガラス1上の周波数選択膜3に代えて、カーテン2上の周波数選択膜3を複数種類のアンテナを有するものとすることもできる。
次に、図28および図29に基づき、窓ガラス1上に周波数選択膜3を設ける方法に関する2つの変形例1,2を示す。
変形例1では、図28(a)に示すような周波数選択シート30を使用する。この周波数選択シート30は、図28(b)に示すように、フィルム基材30a上に周波数選択膜3が形成されていて、そのフィルム基材30aにおける周波数選択膜3とは反対側(同図の下側)の面に粘着層30bおよび離型ライナ30cが順に積層されてなっており、ロール状に巻かれている。そして、必要な長さ分だけカットし、図28(c)に示すように、離型ライナ30cを剥がして窓ガラス1に貼着することで、該窓ガラス1に周波数選択膜3を設けられるようになっている。尚、フィルム基材30aとしては、容易にロール状になるように薄く形成することができかつ可撓性に優れた高分子フィルムなどが好ましい。特に、厚さについては、一般には、10〜500μmであり、好ましくは、30〜150μm、より好ましくは、50〜120μmである。
図29に示す変形例2の周波数選択シート30では、フィルム基材30aに対する周波数選択膜3の位置が異なっており、また、これに伴い、窓ガラス1に対する周波数選択膜3の配置が異なる。
つまり、本変形例の周波数選択シート30では、変形例1の場合とは異なり、周波数選択膜3は、図29(b)に示すように、フィルム基材30aにおける粘着層30bおよび離型ライナ30cと同じ側(同図の下側)に配置されており、該周波数選択膜3の上に粘着層30bおよび離型ライナ30cが順に積層されている。そして、周波数選択膜3は、変形例1の場合には、窓ガラス1とは反対の側に面している(図28(c)参照)のに対し、本変形例では、図29(c)に示すように、窓ガラス1の側(同図の下側)に面している。
本変形例のように、周波数選択膜3は、窓ガラス1側に面する場合であっても、特定周波数帯の電波を選択的に反射することができるのは勿論である。但し、アンテナ4が大気に面している場合に比べると、アンテナ4の形状寸法および材料が同一であったとしても、アンテナ4により反射(遮蔽)される電波の周波数帯(特定周波数帯)は異なる。ここで、本変形例に係る周波数選択膜3が窓ガラス1に貼着された状態におけるアンテナ4の第1エレメント部長さL1(エレメント長Lの1/6)と整合周波数との関係を、図30に示す。同図によれば、周波数選択膜3が窓ガラス1に覆われている場合には、周波数選択膜3が空気に接している場合(図5参照)よりも、該周波数選択膜3により反射(遮蔽)される電波の周波数帯は低くなるということが判る。
(実施形態3)
図31は、本発明の実施形態3に係る電波遮蔽材としての電波遮蔽シートの全体構成を模式的に示している。尚、実施形態1および2の場合と同じ部分には同じ符号を付して示している。
本実施形態では、電波遮蔽シートは、透光性を有する1枚の面材11(例えば、PETフィルム)と、この面材11の一方の表面上に配置されていて、透光性を有する複数のアンテナ4,4,…でもって少なくとも1つの周波数帯の電波を選択的に遮蔽する周波数選択膜3′と、面材11の他方の表面上にアンテナ4,4,…以外の領域に亘って設けられていて、該アンテナ4と同程度の透光性を有する非導電部8とを備えている。
つまり、本実施形態では、実施形態1および2の場合には非導電部8が周波数選択膜3中にアンテナ4,4,…と同じ面内に並んで存在しているのと異なり、非導電部8は、周波数選択膜3′中には存在せず、該周波数選択膜3′とは別の位置(アンテナ4,4,…とは異なる面内)に存在している。尚、その他の構成は実施形態1および2の場合と同様であるので説明は省略する。
したがって、本実施形態によれば、実施形態1の場合と同様に、アンテナ4,4,…を目立たなくすることができる他、アンテナ4,4,…と非導電部8とを面材の互いに異なる面に分けて設けることができるので、同一面内に設けるようにする実施形態1および2の場合に比べると、製作が容易である。
尚、上記の実施形態では、1枚の面材11の両方の表面上にそれぞれ周波数選択膜3′および非導電部8を配置するようにしているが、図32に示す変形例のように、第1および第2の2枚の面材11,12を互いに重なり合うように配置し、第1面材11の何れか一方の表面上に周波数選択膜3′を設けるとともに、第2面材12の何れか一方の表面上に周波数選択膜3′のアンテナ4,4,…以外の領域に亘って非導電部8を設けるようにしてもよい。この場合、第1面材11と第2面材12とを、第1面材11の何れの表面が第2面材12の何れの表面に対面するように重ね合わせるかは任意である。