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JP2007325650A - 体内臓器吊上げ用具 - Google Patents

体内臓器吊上げ用具 Download PDF

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JP2007325650A
JP2007325650A JP2006157362A JP2006157362A JP2007325650A JP 2007325650 A JP2007325650 A JP 2007325650A JP 2006157362 A JP2006157362 A JP 2006157362A JP 2006157362 A JP2006157362 A JP 2006157362A JP 2007325650 A JP2007325650 A JP 2007325650A
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Koichi Hayakawa
浩一 早川
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Terumo Corp
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Abstract

【課題】腹壁と内臓壁とを固定する際に、簡単な操作で適正な密着面を形成でき、患者への負担を軽減させることが可能な体内臓器吊上げ用具を提供する。
【解決手段】体内臓器吊上げ用具10は、体内臓器を吊り上げるためのアンカー部材16と、該アンカー部材16を体内に挿入するための穿刺具22とを有する。アンカー部材16は、剛性を有し且つ一方の端部に傾斜カット面18aが形成されたロッド18と、ロッド18の内腔18b内で係合され且つ傾斜カット面18a側から内腔18bの外部へと延在するワイヤ20とを備え、前記ロッド18には、傾斜カット面18aの終端部Bから軸方向にスリット18cが形成されている。また、穿刺具22は、ロッド18及びワイヤ20を挿通可能なシース34と、該シース34に摺動可能に挿入される穿刺針36とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、体内の臓器の側壁を体外から吊り上げて保持するために使用する体内臓器吊上げ用具に関する。
例えば、高齢や疾病のために経口摂食が困難な患者に対しては、胃瘻形成管を用いて流動食や栄養剤等の流体飲食物を直接胃内に供給することが行われている。該胃瘻形成管は、通常、内視鏡を利用し、患者の腹部に穴部を形成して取り付けられる(内視鏡を用いた胃瘻造設術)。一般に、このような胃瘻形成管の取り付けを適正に行うため、予め腹壁と胃壁とを医療用具を用いて固定することが行われている。
このような医療用具の一つとして、棒状のロッドの中央にワイヤを取り付けたT字形状のアンカー部材(Tバー)を備える体内臓器吊上げ用具が挙げられる。該体内臓器吊上げ用具を用いた手技では、アンカー部材を穿刺具により胃内に挿入し、外部からワイヤを引き上げることによりロッドで胃壁を吊り上げ、胃壁を腹壁に密着させた状態とする。その後、該密着させた部分から胃瘻形成管を胃内に導入して留置している。
特許文献1に記載の体内臓器吊上げ用具(内臓アンカー)は、スプリングで被覆されたロッドの中央及び端部からワイヤが伸びた形態からなる。この用具では、先ず、腹壁及び胃壁を貫通して針を刺し、シース(管状体)を留置する。次いで、ロッドを胃内に導入し、T字変形させた後、シースを抜去し、ロッド中央のワイヤを体外から引き上げ、胃壁を吊り上げて腹壁に接触させている。
また、特許文献2に記載の体内臓器吊上げ用具は、剛性を有するロッド及びその中央部にループ状に係合されたワイヤからなるアンカー部材と、前記ループ状のワイヤに沿ってスライド可能に係留されたプッシングチューブと、ロッドとプッシングチューブの先端部近傍を収納するシースとにより構成されている。この場合、ロッドはシースに収納され、さらにプッシングチューブはロッドの後端に当接してシース内に収納されている。そして、プッシングチューブは、胃内にロッドを突き入れる押し棒の機能と、ロッドにより胃壁を吊り上げる際の把持部の機能とを兼ねている。
ところで、上記のような体内臓器吊上げ用具を用いて胃瘻形成管を取り付ける際には、通常、ロッドで胃壁を吊り上げる操作を2回以上行っている。すなわち、胃壁を2個所以上で吊り上げている。そして、複数のロッドにより胃壁と腹壁との間に密着面を形成した後、胃瘻形成管を胃内に導入して留置している。この場合、前記密着面は、胃瘻チューブが導入可能な必要最小限の面積が確保し易い長方形(正方形含む)とすることが望ましい。すなわち、図21Aに示すように、ロッド同士が平行に配置された密着面A1とすることが望ましい。
しかしながら、上記特許文献1、2に記載の構成では、ロッドをシースに通して胃内に挿入する際は、ワイヤがロッドと並列するようにロッド外表面の係合部において屈曲させた状態で、シース内を通過させるので、シース通過後のロッドはワイヤとの角度が略直角にはなりずらく、T字形状に変形させることが難しい。T字形成が不完全な状態ではロッドの軸が胃壁に対して水平にならないため、胃内でのロッドの方向制御も困難となる。このため、例えば、2個のロッドで胃壁と腹壁を固定する場合には、図21Bに示すように、ロッド同士が平行とならず、密着面A2のような歪んだ面が形成され、胃瘻チューブが導入可能な必要最小限の面積が確保できない場合がある。従って、胃壁と腹壁との間に適正な密着面を得るためには、体内にロッドを過剰に留置させる等の処置が必要となる。
また、上記引用文献1、2に記載の構成は、ロッドとワイヤとを並列させた状態でシース内に収納して胃内に挿入する形態である。つまり、シース内径をロッド及びワイヤの外径の合計よりも大きくする必要があり、このため、シースや挿入具(穿刺具)の外径が大きくなってしまう。従って、患者への負担が一層増加してしまうことになる。
特公平6−7831号公報 特開平8−71074号公報
本発明は、係る従来の課題を考慮してなされたものであり、腹壁と内臓壁とを固定する際に、簡単な操作で適正な密着面を形成でき、さらに、患者への負担を軽減させることが可能な体内臓器吊上げ用具を提供することを目的とする。
本発明の体内臓器吊上げ用具は、体内臓器を吊り上げるためのアンカー部材と、前記アンカー部材を体内に挿入するための穿刺具とを有する体内臓器吊上げ用具であって、前記アンカー部材は、剛性を有し且つ一方の端部に傾斜カット面が形成されたロッドと、前記ロッドの軸方向に形成された内腔内で係合され且つ前記傾斜カット面が施された端部から前記内腔の外部へと延在するワイヤとを含み、前記ロッドには、前記傾斜カット面の終端部から軸方向に、前記内腔とロッド外表面を連通するスリットが形成されており、前記穿刺具は、前記ロッド及び前記ワイヤが挿通するシースと、該シースに摺動可能に挿入され且つ生体に刺通可能な先端が設けられた針体とを含むことを特徴とする。
このような構成によれば、穿刺具によりアンカー部材のロッドを体内に挿入した後、ワイヤを引き上げると、傾斜カット面がシース先端に当接してロッドが次第に傾斜する。そして、前記ワイヤがロッドに形成されたスリットに挟まれながら移動するため、ロッドとワイヤとが体内でT字状に変形する。このように、本発明に係る体内臓器吊上げ用具によれば、体内で前記アンカー部材のロッドとワイヤを容易且つ迅速にT字変形させることができ、該T字を形成したロッドとワイヤにより内臓壁を吊り上げることができるようになる。従って、例えば、患者に胃瘻を造設する際の胃前壁の吊り上げ作業を容易且つ確実に施すことができると共に、作業時間の短縮や作業工数の低減が可能となり、患者への負担を大幅に軽減させることができる。
この場合、ワイヤ及びロッドは前記シース内に挿通するので、ワイヤを腹壁からの圧迫の影響を受けることなく回転トルクを確実にロッドに伝達することができ、ロッドの方向を自在に制御することができる。
また、前記アンカー部材が、さらに、前記ワイヤに前記ロッド側から順に配設されたクッションと留具とを有していると、前記アンカー部材により体内臓器を吊り上げた後、クッションを体外から患者の皮膚に当接させた状態で留具をワイヤに固定することができ、患者の腹壁と内臓壁の密着状態を確実に保持することが可能となる。
さらに、前記シースが、外力により軸方向に分断可能であると、例えば、該シース内を挿通するワイヤの基部側に前記クッション及び留具が設けられているために、体内へのアンカー部材挿入後に不要となったシースをワイヤの基部側から抜去することが困難な場合であっても、該シースを軸方向に分断することで、ワイヤから容易に取り外すことができる。このため、作業時間が一層短縮され、患者への負担も一層軽減される。
この場合、前記シースが、高分子材料により構成されていると、金属製等により構成されたシースに比べて引き裂き易いため、術者の手等によりシースを分断して除去することができ、作業効率を向上させることができる。
しかも、前記ロッドに形成された前記スリットの幅が、前記ワイヤの外径よりも小さいと、アンカー部材を体内でT字変形させた際に、スリットにワイヤが確実に挟み込まれる。このため、T字形状への変形時にワイヤがスリット内でずれることがなく、また、より確実にT字状態を保持することができるようになる。
なお、前記ワイヤが、塑性変形性を有していると、上記T字変形時に略直角をなしたワイヤの屈曲状態を一層確実に維持することができるため、T字状態の保持がより確実なものとなる。
さらに、前記ワイヤの外径が、前記ロッドに係合されている先端側よりも反対側の基部側の方が太く異径であると、術者が体外でワイヤの基部側に回転トルクを与えた際のワイヤのねじれ等を抑制することができる。従って、ワイヤの基部側からの回転トルクを確実にロッド側へ伝達することができるため、ロッドの方向制御を行うためのワイヤ操作を一層容易且つ確実に行うことができる。このため、ロッドの方向をより確実に適正なものとすることができる。
また、前記ワイヤに、前記ロッドの前記スリットの方向を示すマークが設けられていると、体内でのロッドの方向制御時、該ロッドの方向を体外側にてマークで確認しつつ迅速に制御することができるため好ましい。
本発明の体内臓器吊上げ用具では、穿刺具によりアンカー部材のロッドを体内に挿入した後、ワイヤを引き上げることにより、傾斜カット面がシース先端に当接した状態でロッドが次第に傾斜する。これにより、前記ワイヤがロッドに形成されたスリットに挟まれながら移動して、ロッドとワイヤとが体内でT字状に変形される。
すなわち、本発明によれば、体内でアンカー部材のロッドとワイヤを容易且つ迅速にT字変形させることができ、該T字を形成したロッドとワイヤによる内臓壁の吊り上げが可能となる。このため、例えば、患者に胃瘻を造設する際の胃壁の吊り上げ作業、及びその後の腹壁と胃壁との間での密着面の形成作業等を容易且つ確実に施すことができ、作業時間の短縮や作業工数の低減が可能となると共に、患者への負担を大幅に軽減させることができる。
以下、本発明に係る体内臓器吊上げ用具について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る体内臓器吊上げ用具10を説明するための斜視図である。体内臓器吊上げ用具10は、腹壁と内臓壁の一例として、前腹壁12と胃前壁14とをアンカー部材16に備えられるロッド18を用いて密着させるための医療用具である。
体内臓器吊上げ用具10は、体内臓器を吊り上げるためのアンカー部材16と、前記アンカー部材16を体内に挿入するための穿刺具22とを有して構成されている。
前記アンカー部材16は、剛性を有し且つ一方の端部に傾斜カット面18aが形成されたロッド18と、前記ロッド18の軸方向に形成された内腔18b内で係合され且つ前記傾斜カット面18aが施された端部から前記内腔18bの外部へと延在するワイヤ20とを備える。前記ロッド18には、前記傾斜カット面18aの終端部Bから軸方向に、前記内腔18bとロッド18外表面を連通するスリット18cが形成されている(図3A〜図3D参照)。
また、前記穿刺具22は、前記ロッド18及び前記ワイヤ20が挿通するシース34と、該シース34に摺動可能に挿入され且つ生体に刺通可能な先端が設けられた穿刺針36(針体)とを備える。
このような体内臓器吊上げ用具10において、アンカー部材16(Tバー)は、ワイヤ20の先端がロッド18の内腔18bの略中央部に係合されるように構成されている。そして、穿刺具22により体内(胃内)に挿入される際には、ロッド18の軸方向とワイヤ20の軸方向とが一致するように、同軸上に配設される(図1及び図3A〜図3C参照)。一方、ロッド18により胃前壁14を吊り上げる際には、ロッド18の軸方向とワイヤ20の軸方向とが略直角になるようにT字状に変形される(図2、図3D及び図4参照)。
前記ワイヤ20の後端側(基部側)は、ロッド18を胃前壁14及び前腹壁12に対して固定する際に用いる円柱状のクッション24と、前記クッション24の周壁に当接するディスク26と、前記ディスク26(ワッシャ)を押圧する留具28とに挿通されている。クッション24及びディスク26は、例えば、高分子材料等により構成される。留具28は、鉗子等で押し潰され、ワイヤ20に圧着固定可能なように、例えば、金属製材料により構成される。
図1及び図3A〜図3Cに示すように、ロッド18は内腔18bを有する略円筒形状であって、一方の端部は湾曲部を有して斜めにカットされ、傾斜カット面18aを形成している。前記傾斜カット面18aの終端部Bから前記スリット18cがロッド18の軸方向長さの略中央部まで延在している。ロッド18の内腔18bには、傾斜カット面18a側の開口部からワイヤ20が挿入され、ワイヤ20の先端部はロッド18(内腔18b)の略中央部(図3Aにおけるロッド18の長さLの中心付近)で、例えば、接着剤21により係合(固着)されている(図3D及び図4参照)。なお、ワイヤ20のロッド18への係合方法としては、前記接着剤21を用いる以外にも、例えば、ロッド18を外表面からかしめ(押し潰し)、圧着させるようにしてもよい。
傾斜カット面18aの形状(傾斜角度)は、図3D及び図4に示すようなロッド18とワイヤ20によるT字変形時、傾斜カット面18aの端部が生体に損傷を与えるのを防止するため、図3Aに示すように、ロッド18の軸方向に対する傾斜角度が終端部Bから先端部Aにかけて、例えば、θ1からθ2へ変化するように、次第に鈍角に変化する形状であることが好ましい。
スリット18cの幅wは、図3Dに示すようにT字変形させた際に、スリット18c内でワイヤ20が確実に挟み込まれるようにするため、ワイヤ20の外径よりも小さい(狭い)ものとされることが好ましく、ワイヤ20の外径よりも0.05〜0.1mm程度小さい幅とすることが好ましい。
ロッド18の材質は、ステンレス等の金属が好ましいが、例えば、無機化合物やプラスチックとしてもよい。なお、ロッド18には、後述するように、ワイヤ20を引き上げて、臓器(胃)を吊り上げた状態でも形態を保持可能な硬度(剛性)が要求される。このため、例えば、ショアD硬度60以上の材料が好ましい。このような材料の一例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、又はこれらニ種以上の混合物等)、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の高分子材料又はこれらの混合物等が挙げられる。
ロッド18の大きさは、体内に挿入して臓器を吊り上げ及び保持可能であって、所望の密着面を得ることが可能であれば特に限定されないが、外径は、0.5〜2mm程度、特に0.75〜1.25mm程度が好ましい。また、長さ(軸方向)は、5〜15mm程度が好ましい。
ワイヤ20の材質は、高分子材料が好ましい。このような高分子材料の一例としては、ナイロン(ポリアミド)やポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、又はこれらニ種以上の混合物等)や、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。なお、ワイヤ20の材質としては、ロッド18との間でT字変形した後、該T字状態を保持するために、塑性変形性を有するものが一層好ましい。塑性変形性の基準としては、ワイヤを外径10mmの棒に複数回、例えば、3回巻きつけ、外力を開放した状態において形成されたループ径の平均値が30mm以下となることが好ましく、20mm以下となることがより好ましい。そのような性質を有するワイヤとしては、ダイニーマ(東洋紡績株式会社の登録商標、超高強力ポリエチレン繊維、外径0.15〜0.21mm、前記基準において形成されるループ径:13mm)が挙げられる。
ワイヤ20の外径は、ロッド18の内腔18b内に収納できる径であれば特に限定されない。ただし、スリット18cに挟まれた状態でのT字形状の保持性能をスリット18cの幅wとの関連で考慮した場合に、少なくともスリット18cに挟まれる先端部付近は、0.1〜0.4mm程度、特に0.1〜0.25mm程度が好ましい。
一方、穿刺具22は、図5及び図6に示すように、中空形状の円筒(外筒)である管状体30の後端に把持部32が連結されたシース34(分割シース、分割カニューレ)と、シース34の内部に挿通され、生体に刺通可能な針体である穿刺針36とから構成される。
図5に示すように、シース34は、ロッド18及びワイヤ20を生体内に挿入するための用具であり、その内部に穿刺針36、ロッド18及びワイヤ20を挿入可能且つ摺動可能に構成されている。
管状体30には、穿刺針36やロッド18等が挿入される内腔30aが軸方向に貫通している。また、管状体30の先端(図1における下端)は、ロッド18やワイヤ20との接触時での破損や食い込みによる引っ掛かり等を防止し、胃後壁等へ接触した際の影響を抑えるため、生体に刺通不能に、例えば、端部に曲面を有して構成される。
管状体30の後端に連結される把持部32は、中心線32aに対して左右対称の部材であって、術者が手で把持しやすい形状である。把持部32の管状体30側とは反対側の後端には、穿刺針36、ロッド18及びワイヤ20の挿入口を成すと共に、穿刺針36のハブ38と係合可能なように下方に向かって縮径したテーパ状の孔部40が形成される。孔部40の下端は、管状体30の内腔30aに連通している。
そして、管状体30及び把持部32は、後述する分断(分割)時、把持部32の割れ目32bを始点(作用点)として、軸方向に容易に分断できるように、高分子材料により形成されることが好ましい。ただし、穿刺針36を介して生体内に挿入され、その形態を一時的に保持できる硬度が要求されるため、例えば、ショアD硬度60以上であるものが好適である。このような高分子材料の一例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、又はこれら3種以上の混合物等)、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド等、又はこれらの混合物等が挙げられる。
なお、管状体30は軸方向に容易に分割できるよう、分子が配向した高分子材料とすることが望ましい。
図6に示すように、穿刺針36は、生体に刺通可能な鋭利な先端を有し、ステンレス等の金属製材料から構成される中実な棒形状の針部42と、針部42の後端に連結されるハブ38とから構成される。ハブ38は、先端(針部42との連結部)方向に縮径したテーパ形状を有し、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート等の合成樹脂により形成される。
従って、針部42がシース34内に挿入され、所定距離前進させられると、ハブ38のテーパ形状部位が把持部32のテーパ状の孔部40に着座して、それ以上前進できなくなる(前進限度)。つまり、穿刺針36(針部42)の長さは、穿刺針36が前進限度に到達した状態で、その鋭利な先端が管状体30の先端から所定距離突出するように設定される(図5参照)。そして、穿刺針36は、針部42の先端が突出するようにシース34内に挿入されることで、前腹壁12及び胃前壁14を穿刺する機能を果たす。
次に、基本的には以上のように構成される体内臓器吊上げ用具10の実施態様として、体内臓器吊上げ用具10を用いて前腹壁12と胃前壁14との密着面を形成する手技について例示し、図7のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、図7のステップS1において、術者の一人が患者の胃内に内視鏡を挿入し、さらに、十分に送気して胃内に空気を充満させることにより、胃前壁14を前腹壁12に密着させる。そして、他の術者が腹部皮膚を消毒し、内視鏡からの透過光により胃の位置を確認し、この部位(前腹壁12)に局所麻酔を行う。
次に、ステップS2において、図8に示すように、シース34に穿刺針36を前進限度まで押し込んだ状態とする。すなわち、管状体30の先端から針部42を所定長さ突出させる。
そして、穿刺針36にシース34を装着した状態で、前腹壁12及び胃前壁14に穿刺し、胃内に穿刺針36及び管状体30の先端を突出させる。
ステップS3において、胃内に穿刺針36及び管状体30の先端が突出している状態を内視鏡で確認した後、術者は、穿刺針36をシース34から抜去する(図9参照)。
次いで、ステップS4において、図10に示すように、アンカー部材16のロッド18及びワイヤ20を、把持部32の孔部40からシース34(管状体30)内に挿入する。この際、ロッド18の軸方向とワイヤ20の軸方向とを一致させた状態、すなわち、前記ロッド18とワイヤ20とが同軸上でありワイヤ20がスリット18cに挟まれていない状態としておく。従って、体内臓器吊上げ用具10において、ロッド18やワイヤ20が挿通する管状体30の内腔30aの径は、ロッド18が軸方向に摺動可能な大きさであればよく、管状体30の外径を最小限のものとすることができる。このため、上記従来構成等に比べて、管状体30を体内に挿入する際の患者への負担を大幅に軽減することができる。
ステップS5において、図11に示すように、ロッド18が管状体30の先端から突出していることを内視鏡で確認した後、術者は、ワイヤ20を引き上げる。すなわち、図12に示すように、術者は、ワイヤ20を引き上げ、ロッド18の傾斜カット面18aが管状体30の先端に引っかかったことを確認した後、さらに、ワイヤ20を引き上げる。そうすると、傾斜カット面18aが前記管状体30の先端に当接しているので傾斜(形状)に沿ってロッド18が傾斜し始め、同時にワイヤ20がロッド18のスリット18cに挟まれる。その後、術者がワイヤ20を引き上げ続けると、ロッド18はさらに傾斜しつつ、ワイヤ20はスリット18c内をロッド18の中央部に向かって挟まれながら進動する。
そして、最終的には、図3Dや図13に示すように、ロッド18の軸方向とワイヤ20の軸方向とが略直角となる。つまり、アンカー部材16の先端部分(ロッド18及びワイヤ20)がT字変形することになる。この際、ワイヤ20が塑性変形性を有していると、ワイヤ20は略直角に屈曲された状態を保持し易くなるため、T字変形した状態の保持が一層容易である(図3D参照)。
ステップS6において、上記T字変形状態が内視鏡で確認されると、次に、術者は、図14に示すように、アンカー部材16を若干下方に押し下げると共に、ワイヤ20に回転方向のトルクをかけ、ロッド18を回転させて適正な方向に設定する。このようなロッド18の方向制御は、内視鏡でロッド18の方向を確認しながら行われることにより、適正な方向へと確実に回転させることができる。
なお、上記ステップS5、S6におけるT字変形及び方向制御を、一層容易且つ確実に行うため、図15に示すように、ワイヤ20の外径を異径なもので構成してもよい。すなわち、ワイヤ20においてスリット18cに挟まれる先端側付近は屈曲維持をし易いように細径(図15のD1)とし、それよりも基部側は上記トルク伝達をし易いように太径(図15のD2)とするとよい。このようにワイヤ20を異径に構成すれば、ワイヤ20の基部側に術者が上記回転トルクを与えた際におけるワイヤ20のねじれ等が抑制されるため、ワイヤ20の基部側からロッド18側への回転トルク伝達が一層容易且つ確実なものとなる。このため、ロッド18を一層確実に適正な方向に設定することが可能となる。
また、上記ステップS6における方向制御を、さらに容易且つ迅速に行うため、図16に示すように、ワイヤ20においてロッド18のスリット18cを延在させた位置に、例えば、直線状のマーク20a(印)を付しておいてもよい。そうすると、ロッド18の方向制御時、内視鏡で確認することなく、マーク20aに基づき、迅速にロッド18の方向を適正なものに設定することができる。また、マーク20aに基づきロッド18の方向を大体設定し、その後、微調整を内視鏡を用いて行うようにしてもよい。
そして、上記のようにロッド18の方向が設定されると、次に、ステップS7において、上記ステップS6で設定したロッド18の方向がずれないように内視鏡やマーク20aで確認しながら、シース34(管状体30)を引き上げて体外に抜去する(図17参照)。管状体30が抜去された後は、ワイヤ20の周囲が前腹壁12や胃前壁14により圧迫されるため、ロッド18の方向はずれることなく保持される。
ステップS8において、図18に示すように、術者は、把持部32を両手で掴み、割れ目32bから左右に裂くようにして引き、管状体30も含めたシース34を軸方向に分断(2分割)する。そして、シース34をワイヤ20から取り除く。この場合、管状体30及び把持部32は、上記のような高分子材料により形成されているため、手の力(外力)で容易に分断可能となっている。
なお、シース34の分断作業を、さらに容易且つ迅速に行うため、図19に示すように、予め把持部32の中心線32aの延長線上にある管状体30表面に、微細な切込部30b(溝)を形成しておいてもよい。切込部30bは、管状体30の表面に裏表2箇所としてもよいし、1個所のみとしてもよい。
ステップS9において、さらに、ワイヤ20を引き上げて胃前壁14を前腹壁12に一層密着させると共に、クッション24、ディスク26及び留具28を下げ、クッション24を前腹壁12に密着させた状態で、留具28を鉗子等で押し潰す(かしめる)。そうすると、留具28がワイヤ20に圧着固定され、図20に示すような前腹壁12と胃前壁14との密着部aが得られることになる。次いで、ワイヤ20の余剰部分を切除することにより、胃内にロッド18が留置され、前腹壁12と胃前壁14とがロッド18により密着固定されることになる。
次に、ステップS10において、上記のように形成された密着部aと所定距離(例えば、20mm〜30mm程度)離間した位置に、上記ステップS9等により固定・留置されたロッド18と略平行に、再度、体内臓器吊上げ用具10を用いて、上記ステップS1〜S9と同様な手技を行う。これにより、2個目のロッド18が胃内に固定・留置されることで、前腹壁12と胃前壁14との間に、例えば、図21Aに示すような形状からなる適正な密着面A1が得られることになる。
以上、体内臓器吊上げ用具10によれば、アンカー部材16のロッド18とワイヤ20とを同軸上に構成しておくことにより、シース34の外径をより小さくすることができる。このため、穿刺具22(シース34)を体内(胃内)に挿入する際の患者への負担を軽減することができる。
また、体内臓器吊上げ用具10においてアンカー部材16は、スリット18cを有するロッド18を備えているため、ワイヤ20を引き上げるのみの簡単な操作で、傾斜カット面18aがシース34先端に当接されつつロッド18が傾斜される。そして、ワイヤ20がスリット18cに挟まれながら移動することで、容易且つ迅速に体内でロッド18とワイヤ20とを適正なT字形状に変形させることができる。このため、ロッド18の方向を制御することができると共に、アンカー部材16による胃前壁14の吊り上げ操作を確実に行うことができ、結果として適正な密着面を容易に形成することができる。
さらに、シース34は、外力(例えば、術者の手)により軸方向に容易に分断可能なように構成されている。これにより、上記のように、シース34内を挿通するワイヤ20の基部側にクッション24や留具28が設けられているため、体内へのアンカー部材16挿入後に不要となったシース34をワイヤ20の基部側から抜去することが困難な場合であっても、該シース34を軸方向に分断することで、ワイヤ20から容易に取り外すことができる。このため、作業時間が一層短縮され、患者への負担も一層軽減される。
なお、以上のようにして体内臓器吊上げ用具10を用いた前腹壁12及び胃前壁14に対する密着面の形成作業が完了すると、その後、通常は、以下のようにして内視鏡を用いた胃瘻造設術を施している。
すなわち、上記のように形成される密着面の略中央に、先端に刃面を有する金属針と、該金属針を内部に挿通した軸方向に破断可能な樹脂製チューブとからなる穿刺器具を穿刺し、金属針を抜去した後に、チューブの内部にバルーンカテーテルを挿入する。次いで、バルーンカテーテルのバルーン部分を含む先端部が、胃内に到達したことを内視鏡により確認した後、蒸留水等でバルーンを膨張させると共に、チューブの基端部を外側に2方向より引っ張り、チューブを軸方向に破断させて、患者より除去する。そして、バルーンカテーテルを基端側に引っ張り、膨張したバルーン部分を胃前壁14に密着させ、さらに、皮膚表面より露出する部分のバルーンカテーテルに適度な固定具をあてて縫合し、バルーンカテーテルを前腹壁12に固定する。このようにして、内視鏡を用いた胃瘻造設術(PEG)が完了する(特公平6−24533号公報参照)。
なお、本発明は上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
本発明の一実施形態に係る体内臓器吊上げ用具を説明するための斜視図である。 前記体内臓器吊上げ用具におけるアンカー部材を示す正面図である。 図3Aは、前記アンカー部材におけるロッドとワイヤとの係合部付近を示す正面図であり、図3Bは、前記アンカー部材におけるロッドとワイヤとの係合部付近を示す側面図であり、図3Cは、前記アンカー部材におけるロッドとワイヤとの係合部付近を示す斜視図であり、図3Dは、前記アンカー部材をT字変形させた状態を示す一部断面正面図である。 図3Dの線IV−IVでの断面図である。 前記体内臓器吊上げ用具におけるシースを示す正面図である。 前記体内臓器吊上げ用具における穿刺針を示す正面図である。 前記体内臓器吊上げ用具を用いて胃前壁と前腹壁との密着面を形成する際の手順を示すフローチャートである。 前記穿刺針にシースを装着し、体内へと穿刺する状態を説明するための説明図である。 前記シースから穿刺針を抜去する状態を説明するための説明図である。 前記シース内にアンカー部材を挿入した状態を説明するための説明図である。 前記アンカー部材のロッドを体内に挿入させた状態を説明するための説明図である。 前記アンカー部材のワイヤを引き上げ、体内でロッドを傾斜させている状態を説明するための説明図である。 前記アンカー部材をT字変形させた状態を説明するための説明図である。 前記ロッドの方向制御を行っている状態を説明するための説明図である。 前記アンカー部材におけるワイヤの外径を異径なものとした変形例を示す一部省略斜視図である。 前記アンカー部材におけるワイヤにマークを付した変形例を示す側面図である。 前記シースを体外に抜去している状態を説明するための説明図である。 前記シースを分断している状態を説明するための説明図である。 前記シースにおける管状体に切込部を形成した変形例を示す正面図である。 前記体内臓器吊上げ用具を用いて胃前壁と前腹壁とを密着させた状態を説明するための説明図である。 図21Aは、胃壁と腹壁とにより形成された密着面が適正である状態を説明するための説明図であり、図21Bは、胃壁と腹壁とにより形成された密着面が適正でない状態を説明するための説明図である。
符号の説明
10…体内臓器吊上げ用具 12…前腹壁
14…胃前壁 16…アンカー部材
18…ロッド 18a…傾斜カット面
18b、30a…内腔 18c…スリット
20…ワイヤ 20a…マーク
21…接着剤 22…穿刺具
24…クッション 26…ディスク
28…留具 30…管状体
30b…切込部 32…把持部
32a…中心線 32b…割れ目
34…シース 36…針体
38…ハブ 40…孔部
42…針部

Claims (8)

  1. 体内臓器を吊り上げるためのアンカー部材と、前記アンカー部材を体内に挿入するための穿刺具とを有する体内臓器吊上げ用具であって、
    前記アンカー部材は、剛性を有し且つ一方の端部に傾斜カット面が形成されたロッドと、前記ロッドの軸方向に形成された内腔内で係合され且つ前記傾斜カット面が施された端部から前記内腔の外部へと延在するワイヤとを含み、前記ロッドには、前記傾斜カット面の終端部から軸方向に、前記内腔とロッド外表面を連通するスリットが形成されており、
    前記穿刺具は、前記ロッド及び前記ワイヤが挿通するシースと、該シースに摺動可能に挿入され且つ生体に刺通可能な先端が設けられた針体とを含むことを特徴とする体内臓器吊上げ用具。
  2. 請求項1記載の体内臓器吊上げ用具において、
    前記アンカー部材は、さらに、前記ワイヤに前記ロッド側から順に配設されたクッションと留具とを含むことを特徴とする体内臓器吊上げ用具。
  3. 請求項1又は2記載の体内臓器吊上げ用具において、
    前記シースは、外力により軸方向に分断可能であることを特徴とする体内臓器吊上げ用具。
  4. 請求項3記載の体内臓器吊上げ用具において、
    前記シースは、高分子材料により構成されていることを特徴とする体内臓器吊上げ用具。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の体内臓器吊上げ用具において、
    前記ロッドに形成された前記スリットの幅は、前記ワイヤの外径よりも小さいことを特徴とする体内臓器吊上げ用具。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の体内臓器吊上げ用具において、
    前記ワイヤは、塑性変形性を有することを特徴とする体内臓器吊上げ用具。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の体内臓器吊上げ用具において、
    前記ワイヤの外径は、前記ロッドに係合されている先端側よりも反対側の基部側の方が太く異径であることを特徴とする体内臓器吊上げ用具。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の体内臓器吊上げ用具において、
    前記ワイヤには、前記ロッドの前記スリットの方向を示すマークが設けられていることを特徴とする体内臓器吊上げ用具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113727659A (zh) * 2019-02-22 2021-11-30 爱惜康股份有限公司 用于储存缝合针以及使用机器人递送选定的缝合针穿过套管针的系统、装置和方法

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