従って、本発明の目的は、平衡型弾性表面波フィルタの平衡度(振幅平衡度および位相平衡度)を改善した弾性表面波装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、感度の優れた通信装置を提供することにある。
本発明の弾性表面波装置は、IDT電極を具備する前段の弾性表面波共振子と、前記弾性表面波共振子に並列接続された、3個以上の奇数個のIDT電極をそれぞれ具備する後段の第1および第2の弾性表面波素子と、前段側の前記IDT電極および後段側の前記IDT電極を接続する信号引き出し配線と、後段側の前記IDT電極と基準電位用電極とを接続する接地用引き出し配線と、前記信号引き出し配線の一部、該信号引き出し配線の一部と対向する接地用引き出し配線の一部、および両配線の一部で挟持された絶縁体から構成される容量と、前段側の前記IDT電極に接続された1つの不平衡入出力端子と、後段側の前記IDT電極に接続された2つの平衡出入力端子と、を具備するものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、前記容量における前記接地用引き出し配線の幅および前記信号用引き出し配線の幅が異なるものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、前記絶縁体が、酸化シリコンまたはポリイミド系樹脂で形成されているものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、前記絶縁体が、該絶縁体と誘電率の異なる絶縁体粒子または金属粒子を含むものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、前記基準電位用電極は、前記前段の弾性表面波共振子、前記後段の弾性表面波素子、前記信号引き出し配線、前記接地用引き出し配線、前記容量、前記不平衡入出力端子および前記平衡出入力端子を取り囲むように形成された環状電極であるものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、前記第1および第2の弾性表面波素子の一方に前記接地用引き出し配線が設けられているものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、前記第1および第2の弾性表面波素子の両方に前記接地用引き出し配線が設けられており、該2つの接地用引き出し配線がそれぞれ容量を形成するものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、2つの前記容量を構成する前記絶縁体の材料が互いに異なっているものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、2つの前記容量を構成する前記絶縁体の厚みが互いに異なっているものである。
本発明の通信装置は、本発明の弾性表面波装置を有する通信装置であって、送信信号を搬送波信号に重畳させてアンテナ送信信号とするミキサと、前記アンテナ送信信号の不要信号を減衰させる前記弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、前記アンテナ送信信号を増幅するとともに増幅された前記アンテナ送信信号をデュプレクサを介してアンテナへ出力するパワーアンプとを具備するものである。
本発明の通信装置は、本発明の弾性表面波装置を有する通信装置であって、アンテナと、該アンテナで受信され、デュプレクサを通ったアンテナ受信信号を増幅するローノイズアンプと、前記ローノイズアンプにて増幅された前記アンテナ受信信号の不要信号を減衰させる前記弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、該バンドパスフィルタを通過した前記アンテナ受信信号の搬送波信号から受信信号を分離するミキサとを具備するものである。
本発明の弾性表面波装置は、3個以上の奇数個のIDT電極をそれぞれ具備する前段および後段の弾性表面波素子と、前段側の前記IDT電極および後段側の前記IDT電極を接続する信号引き出し配線と、前段側および後段側の前記IDT電極の少なくとも一方と基準電位用電極とを接続する接地用引き出し配線と、前記信号引き出し配線の一部、該信号引き出し配線の一部と対向する接地用引き出し配線の一部、および両配線の一部で挟持された絶縁体から構成される容量と、前段側の前記IDT電極に接続された1つの不平衡入出力端子と、後段側の前記IDT電極に接続された2つの平衡出入力端子と、を具備するものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、前記容量における前記接地用引き出し配線の幅および前記信号用引き出し配線の幅が異なるものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、前記絶縁体が、酸化シリコンまたはポリイミド系樹脂で形成されているものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、前記絶縁体が、該絶縁体と誘電率の異なる絶縁体粒子または金属粒子を含むものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、前記基準電位用電極は、前記前段および前記後段の弾性表面波素子、前記信号引き出し配線、前記接地用引き出し配線、前記容量、前記不平衡入出力端子および前記平衡出入力端子を取り囲むように形成された環状電極であるものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、2つの前記容量を構成する前記絶縁体の材料が互いに異なっているものである。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、2つの前記容量を構成する前記絶縁体の厚みが互いに異なっているものである。
本発明の通信装置は、本発明の弾性表面波装置を有する通信装置であって、送信信号を搬送波信号に重畳させてアンテナ送信信号とするミキサと、前記アンテナ送信信号の不要信号を減衰させる前記弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、前記アンテナ送信信号を増幅するとともに増幅された前記アンテナ送信信号をデュプレクサを介してアンテナへ出力するパワーアンプと、を具備するものである。
本発明の通信装置は、本発明の弾性表面波装置を有する通信装置であって、アンテナと、該アンテナで受信され、デュプレクサを通ったアンテナ受信信号を増幅するローノイズアンプと、前記ローノイズアンプにて増幅された前記アンテナ受信信号の不要信号を減衰させる前記弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、該バンドパスフィルタを通過した前記アンテナ受信信号の搬送波信号から受信信号を分離するミキサと、を具備するものである。
本発明の弾性表面波装置は、IDT電極を具備する前段の弾性表面波共振子と、弾性表面波共振子に並列接続された、3個以上の奇数個のIDT電極をそれぞれ具備する後段の第1および第2の弾性表面波素子と、前段側のIDT電極および後段側のIDT電極を接続する信号引き出し配線と、後段側のIDT電極と基準電位用電極とを接続する接地用引き出し配線と、信号引き出し配線の一部、信号引き出し配線の一部と対向する接地用引き出し配線の一部、および両配線の一部で挟持された絶縁体から構成される容量と、前段側のIDT電極に接続された1つの不平衡入出力端子と、後段側のIDT電極に接続された2つの平衡出入力端子と、を具備することにより、寄生容量を発生させる要因となる周辺の電極パターン等の構造が異なっていると、平衡出入力端子に伝わる信号が互いに振幅が異なり、また位相が逆相からずれてしまって平衡度が劣化することがあるが、本発明の上記の構成により、弾性表面波共振子と第1及び第2の弾性表面波素子との間に形成された容量により、弾性表面波素子の等価回路において導入される電気的な容量を、第1及び第2の弾性表面波素子において調整することが可能となり、振幅平衡度及び位相平衡度を向上させることができる。
また、上記の構成により、弾性表面波共振子と第1及び第2の弾性表面波素子(縦結合共振器型弾性表面波フィルタ)との間に接地用パッド電極等を配設する必要がなくなり、弾性表面波共振子と縦結合共振器型弾性表面波フィルタとを極力近づけることができ、接地用パッド電極等のパターンを、弾性表面波素子間や弾性表面波共振子と弾性表面波素子との間の外側にレイアウトすることが可能となり、弾性表面波素子、弾性表面波共振子及び配線パターンが占める面積を極力低減して弾性表面波装置を大幅に小型化することが可能となる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、容量における接地用引き出し配線の幅および信号引き出し配線の幅が異なることにより、容量に生じる電気的な容量をより細かく制御することができる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、絶縁体が、酸化シリコンまたはポリイミド系樹脂で形成されていることにより、信号引き出し配線と接地用引き出し配線の交差部において、絶縁性を確実に確保することができる。さらに、弾性表面波共振子と第1及び第2の弾性表面波素子との間に、適切な容量を挿入することができ、第1の弾性表面波素子と第2の弾性表面波素子との間で信号の平衡度を調整することが可能となり、弾性表面波装置の平衡度を向上させることができる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、絶縁体が、絶縁体と誘電率の異なる絶縁体粒子または金属粒子を含むことにより、容量に生じる電気的な容量をより細かく制御することができる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、基準電位用電極は、前段の弾性表面波共振子、後段の弾性表面波素子、信号引き出し配線、接地用引き出し配線、容量、不平衡入出力端子および平衡出入力端子を取り囲むように形成された環状電極であることにより、弾性表面波素子の周囲に形成されている環状電極に接地用引き出し配線が接続されているので、弾性表面波素子間に接地パッド電極を配置する必要がなくなり、さらには基準電位用電極を1つにまとめることが可能となり、弾性表面波共振子、弾性表面波素子及び配線パターンが占める面積を極力低減して弾性表面波装置を小型化することが可能である。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、第1および第2の弾性表面波素子の一方に接地用引き出し配線が設けられていることにより、第1および第2の弾性表面波素子の一方に容量を設けて、振幅平衡度及び位相平衡度を向上させることができる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、第1および第2の弾性表面波素子の両方に接地用引き出し配線が設けられており、2つの接地用引き出し配線がそれぞれ容量を形成することから、振幅平衡度及び位相平衡度をより向上させることができる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、2つの容量を構成する絶縁体の材料が互いに異なっていることから、それぞれの容量に生じる電気的な容量を各別に制御することができる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、2つの容量を構成する絶縁体の厚みが互いに異なっていることから、それぞれの容量に生じる電気的な容量を各別に制御することができる。
本発明の通信装置は、本発明の弾性表面波装置を有する通信装置であって、送信信号を搬送波信号に重畳させてアンテナ送信信号とするミキサと、アンテナ送信信号の不要信号を減衰させる弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、アンテナ送信信号を増幅するとともに増幅されたアンテナ送信信号をデュプレクサを介してアンテナへ出力するパワーアンプとを具備することにより、従来より要求されていた厳しい挿入損失及び平衡度を満たすことができるものが得られ、消費電力が低減されかつ感度が格段に良好な通信装置を実現することができる。
本発明の通信装置は、本発明の弾性表面波装置を有する通信装置であって、アンテナと、アンテナで受信され、デュプレクサを通ったアンテナ受信信号を増幅するローノイズアンプと、ローノイズアンプにて増幅されたアンテナ受信信号の不要信号を減衰させる弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、バンドパスフィルタを通過したアンテナ受信信号の搬送波信号から受信信号を分離するミキサとを具備することにより、従来より要求されていた厳しい挿入損失及び平衡度を満たすことができるものが得られ、消費電力が低減されかつ感度が格段に良好な通信装置を実現することができる。
本発明の弾性表面波装置は、3個以上の奇数個のIDT電極をそれぞれ具備する前段および後段の弾性表面波素子と、前段側のIDT電極および後段側のIDT電極を接続する信号引き出し配線と、前段側および後段側のIDT電極の少なくとも一方と基準電位用電極とを接続する接地用引き出し配線と、信号引き出し配線の一部、信号引き出し配線の一部と対向する接地用引き出し配線の一部、および両配線の一部で挟持された絶縁体から構成される容量と、前段側のIDT電極に接続された1つの不平衡入出力端子と、後段側のIDT電極に接続された2つの平衡出入力端子と、を具備することにより、前段と後段とで、寄生容量を発生させる要因となる周辺の電極パターン等の構造が異なっていると、平衡出入力端子に伝わる信号が互いに振幅が異なり、また位相が逆相からずれてしまって平衡度が劣化することがあるが、上記の構成により、前段と後段との間に形成された容量により、弾性表面波素子の等価回路上導入される電気的な容量を、前段及び後段において調整することが可能となり、振幅平衡度及び位相平衡度を向上させることができる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、容量における接地用引き出し配線の幅および信号用引き出し配線の幅が異なることにより、容量に生じる電気的な容量をより細かく制御することができる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、絶縁体が、酸化シリコンまたはポリイミド系樹脂で形成されていることにより、信号引き出し配線と接地用引き出し配線の交差部において、絶縁性を確実に確保することができる。さらに、前段及び後段の弾性表面波素子間に、適切な容量を挿入することができ、前段及び後段の弾性表面波素子間で信号の平衡度を調整することが可能となり、弾性表面波装置の平衡度を向上させることができる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、絶縁体が、絶縁体と誘電率の異なる絶縁体粒子または金属粒子を含むことにより、容量に生じる電気的な容量をより細かく制御することができる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、基準電位用電極は、前段および後段の弾性表面波素子、信号引き出し配線、接地用引き出し配線、容量、不平衡入出力端子および平衡出入力端子を取り囲むように形成された環状電極であることにより、弾性表面波素子の周囲に形成されている環状電極に接地用引き出し配線が接続されているので、弾性表面波素子間に接地パッド電極を配置する必要がなくなり、さらには基準電位用電極を1つにまとめることが可能となり、弾性表面波素子及び配線パターンが占める面積を極力低減して弾性表面波装置を小型化することが可能である。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、2つの容量を構成する絶縁体の材料が互いに異なっていることにより、それぞれの容量に生じる電気的な容量を各別に制御することができる。
また、本発明の弾性表面波装置は好ましくは、2つの容量を構成する絶縁体の厚みが互いに異なっていることにより、それぞれの容量に生じる電気的な容量を各別に制御することができる。
本発明の通信装置は、本発明の弾性表面波装置を有する通信装置であって、送信信号を搬送波信号に重畳させてアンテナ送信信号とするミキサと、アンテナ送信信号の不要信号を減衰させる弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、アンテナ送信信号を増幅するとともに増幅されたアンテナ送信信号をデュプレクサを介してアンテナへ出力するパワーアンプと、を具備することにより、従来より要求されていた厳しい挿入損失及び平衡度を満たすことができるものが得られ、消費電力が低減されかつ感度が格段に良好な通信装置を実現することができる。
本発明の通信装置は、本発明の弾性表面波装置を有する通信装置であって、アンテナと、アンテナで受信され、デュプレクサを通ったアンテナ受信信号を増幅するローノイズアンプと、ローノイズアンプにて増幅されたアンテナ受信信号の不要信号を減衰させる弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、バンドパスフィルタを通過したアンテナ受信信号の搬送波信号から受信信号を分離するミキサと、を具備することにより、従来より要求されていた厳しい挿入損失及び平衡度を満たすことができるものが得られ、消費電力が低減されかつ感度が格段に良好な通信装置を実現することができる。
本発明の弾性表面波装置の実施形態について、図面を参照にしつつ詳細に説明する。また、簡単な構造の共振器型の弾性表面波フィルタを例にとり説明する。各電極の大きさや電極間の距離等、電極指の本数や間隔等については、説明のために模式的に図示している。
本発明の弾性表面波装置の一実施形態は、図1に示すように、前段に設けられた弾性表面波共振子16と、後段に設けられた2つの弾性表面波素子とを具備する。前段の弾性表面波共振子16は、後段の2つの弾性表面波素子と並列に接続されている。
前段の弾性表面波共振子16は、圧電基板1上に設けられたIDT電極11と反射器電極12、13とで構成される。IDT電極11および反射器電極12、13は、圧電基板1の表面を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、その伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えている。反射器電極12および反射器電極13は、IDT電極11の左側および右側にそれぞれ配置されている。
後段の2つの弾性表面波素子は、第1の弾性表面波素子14および第2の弾性表面波素子15で構成される。第1および第2の弾性表面波素子は、3個以上の奇数個のIDT電極群と、そのIDT電極群の両側に設けられた反射器電極で構成される。
第1の弾性表面波素子14は、圧電基板1上に、圧電基板1の表面を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、その伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えたIDT電極2、3、4で構成されるIDT電極群を具備する。また、そのIDT電極群の左側には反射器電極8が、右側には反射器電極29が設けられている。
第2の弾性表面波素子15は、IDT電極5、6、7で構成されるIDT電極群を具備する。IDT電極5、6、7は、圧電基板1の表面を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、その伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備える。このIDT電極群の左側に反射器電極30が、右側に反射器電極10が設けられている。
前段の弾性表面波共振子16を構成するIDT電極11には不平衡入出力端子17(不平衡入力端子または不平衡出力端子)が接続されている。後段の第1の弾性表面波素子14を構成するIDT電極群のうち、中央のIDT電極3に平衡入出力端子18(平衡入出力端子または平衡入力端子)が接続されている。後段の第2の弾性表面波素子15を構成するIDT電極群のうち、中央のIDT電極6にも平衡入出力端子19が接続されている。
第1の弾性表面波素子14を構成する3つのIDT電極2〜4のうち2つのIDT電極2、4は、信号用引き出し配線22によって、前段側のIDT電極11と並列に接続している。第1の弾性表面波素子15構成する3つのIDT電極のうち2つのIDT電極5、7は、信号用引き出し配線23によって、前段側のIDT電極11と並列に接続している。
第1の弾性表面波素子14を構成するIDT電極群のうち、中央のIDT電極3には接地用引き出し配線20が接続されている。第2の弾性表面波素子15を構成するIDT電極群のうち、中央のIDT電極6にも接地用引き出し配線21が接続されている。
接地用引き出し配線20,21はそれぞれ、後段側のIDT電極3,6と基準電位用電極(環状電極)28とを接続している。基準電位用電極28は、接地電極等であるが、必ずしも接地電極である必要はなく、ある程度の電位に保持された電極であってもよい。
接地用引き出し配線20と信号用引き出し配線22とは、絶縁体24を介して交差している。接地用引き出し配線21と信号用引き出し配線23とは、絶縁体25を介して交差している。これらの交差部に容量26、27がそれぞれ形成されている。すなわち、容量26は、信号引き出し配線22の一部と、信号引き出し配線22の一部と対向する接地用引き出し配線20の一部と、両配線20、22の一部で挟持された絶縁体24で構成される。同様にして、容量27は、信号引き出し配線23の一部と、信号引き出し配線23の一部と対向する接地用引き出し配線21の一部と、両配線21、23の一部で挟持された絶縁体25で構成される。
従来の構成では、寄生容量を発生させる要因となる第1および第2の弾性表面波素子周辺の電極パターン等の構造がそれぞれ異なっている場合、平衡出力端子に伝わる信号が互いに振幅が異なり、また位相が逆相からずれてしまって平衡度が劣化していた。ところが、本発明の一実施形態では、容量26、27を設けるにより、弾性表面波装置の等価回路において導入される容量を、第1の弾性表面波素子14および第2の弾性表面波素子15において調整することが可能となり、振幅平衡度および位相平衡度を向上させることができる。
図14は、図1に示す本発明の弾性表面波装置について、容量26,27を等価回路で示した平面図である。図14に示すように、信号引き出し配線22,23の一部と、信号引き出し配線21,23の一部と対向する接地用引き出し配線20,21の一部との間に、電気的な容量が形成される。
さらに、弾性表面波共振子16を介して第1の弾性表面波素子14および第2の弾性表面波素子15が並列接続された構成により、弾性表面波素子14、15の通過帯域内における挿入損失が劣化することなく、平衡型弾性表面波素子を実現することができる。この平衡方弾性表面波素子は、不平衡−平衡変換機能または平衡−不平衡変換機能を有する不平衡入力−平衡出力型弾性表面波フィルタまたは平衡入力−不平衡出力型弾性表面波フィルタを示すものである。
本発明の一実施形態の構成によれば、弾性表面波共振子16と弾性表面波素子14、15との間に接地用パッド電極等を配設する必要がない。その結果、弾性表面波共振子16と第1および第2の弾性表面波素子14、15を極力近づけることができ、接地用パッド電極等のパターンを弾性表面波共振子16と第1および第2の弾性表面波素子14、15との間に挟まれた領域の外側、および第1および第2の弾性表面波素子14、15間に挟まれた領域の外側にレイアウトすることが可能となる。よって、弾性表面波共振子16、第1および第2の弾性表面波素子14、15および配線パターンが占める面積を極力低減して、弾性表面波装置を小型化することが可能となる。
容量に用いる絶縁体24、25としては、酸化シリコンまたはポリイミド系樹脂を用いることが良い。これにより、信号用引き出し電極22、23と接地用引き出し電極20、21との間の絶縁性を良好に保つことができる。引き出し電極の面積および絶縁体24、25の厚みを調整することにより、所望の容量を弾性表面波共振子16と第1および第2の弾性表面波素子14、15との間に形成することができ、付加した容量により弾性表面波装置の平衡度を向上させることができる。
接地用引き出し配線20、21は、その一部が圧電基板1上に弾性表面波装置の周囲を囲って形成された環状電極28に接続されている。これにより、同様に弾性表面波共振子16と第1および第2の弾性表面波素子14、15との間に形成された容量26、27により、弾性表面波装置の等価回路に導入される容量を、第1の弾性表面波素子14および第2の弾性表面波素子15において調整することが可能となり、振幅平衡度および位相平衡度を向上させることができる。
さらに、この構成により、弾性表面波共振子16および第1および第2の弾性表面波素子14、15の周囲に形成されている環状電極28に接地用引き出し電極20、21が接続されているので、弾性表面波共振子16と第1および第2の弾性表面波素子14、15との間および第1および第2の弾性表面波素子14、15間に接地用パッド電極を配置する必要がなくなり、さらには基準電位用電極を1つにまとめることが可能となり、弾性表面波共振子16、第1および第2の弾性表面波素子14、15および配線パターンが占める面積を極力低減して、弾性表面波装置を小型化することが可能となる。
また、外部の回路基板における環状電極28に対向する箇所に環状導体のパターンを形成して、環状電極28と環状導体とを半田接続体等で接合して弾性表面波装置をフェースダウン構造で回路基板上に実装し、それらの外周部を半田接続体等で封止した構成とすることもできる。この場合、弾性表面波装置について充分な気密性を確保することができ、小型で信頼性に優れた弾性表面波装置を提供することができる。
また、図1に示すように、第1の弾性表面波素子14または第2の弾性表面波素子15の少なくとも一方に、容量26、27を形成した状態で、接地用引き出し電極20、21を環状電極28に接続してもよい。
本発明の弾性表面波装置の他の実施形態を図2に示す。図1に記載の弾性表面波装置は2つの容量を具備するが、図2に記載の弾性表面波装置は1つの容量を具備する。すなわち、弾性表面波共振子16と第1の弾性表面波素子14との間または弾性表面波共振子16と第2の弾性表面波素子15との間のどちらか一方の接地用引き出し配線に容量が設けられていれば良い。
図2では、第1の弾性表面波素子14のIDT電極3に接続された接地用引き出し電極20と、弾性表面波共振子16と弾性表面波素子14とを接続した信号用引き出し配線22との交差部に、容量26を形成してもよい。この場合、図1の場合と同様に第1の弾性表面波素子14または第2の弾性表面波素子15のどちらか一方に付加する容量を調整することより、弾性表面波装置の平衡度を向上させることができる。なお、図2において符号35は、基準電位用電極を示す。
図2における接地用引き出し電極20および信号引き出し配線22に代えて、第2の弾性表面波素子15のIDT電極6に接地用引き出し電極を接続し、弾性表面波共振子16と弾性表面波素子15とを信号用引き出し配線で接続し、これらの交差部に、容量を形成してもよい。
本発明の弾性表面波装置の他の実施の形態を図3に示す。図1では反射器電極29および30が、図3では一つの反射器電極31として形成されている。すなわち、第1および第2の弾性表面波素子14、15は、それらが隣り合う箇所における反射器電極が一体的に形成された1つの反射器電極31からなる。2つの弾性表面波素子14、15で励振された弾性表面波は、反射器電極31において、位相がそれぞれプラス側、マイナス側となって打ち消し合い、反射特性が良好になる。その結果、通過帯域内の微小リップルの発生をさらに抑制することができる。
また、第1および第2の弾性表面波素子14、15の隣接する箇所に1つの反射器電極31を形成して共通化することにより、第1および第2の弾性表面波素子14、15の占める面積を小さくすることができ、弾性表面波装置を小型化することができる。
本発明の他の弾性表面波装置の実施形態は、図4に示すように、前段および後段に弾性表面波素子111、112を具備する。前段および後段の弾性表面波素子111、112が縦続接続されている。
圧電基板101上に、圧電基板1の表面を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、IDT電極102〜107と反射器電極108〜111が設けられている。IDT電極102〜107は、IDT電極102〜104および105〜107が、それぞれ3個で1組となり、それぞれの組の外側に反射器108、109および110、111が配置されている。
すなわち、圧電基板101上に、圧電基板101の表面を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた3個のIDT電極102〜104および105〜107と、IDT電極102〜104および105〜107の両側にそれぞれ配置され、伝搬方向に直交する方向に長い電極指を複数備えた反射器電極108、109および110、111とからなる前段および後段の弾性表面波素子112、113が縦続接続されて、弾性表面波装置が構成されている。
前段の弾性表面波素子112には不平衡入出力端子122が接続されている。不平衡入出力端子を介して信号の入出力がある。例えば、不平衡入出力端子122に不平衡入力信号が入力する、または不平衡出力端子122から不平衡出力を出力する。
後段の弾性表面波素子113には2つの平衡入出力端子が接続されておいる。前段の弾性表面波素子112に不平衡入力端子122が接続されている場合には、後段の弾性表面波素子113には2つの平衡出力端子が接続される。また、前段の弾性表面波素子112に不平衡出力端子122が接続されている場合には、後段の弾性表面波素子113には2つの平衡入力端子が接続される。
前段または後段の弾性表面波素子113のIDT電極106に接続された接地用引き出し配線114が設けられている。前段の弾性表面波素子112および後段の弾性表面波素子113を縦続接続する信号用引き出し配線115が設けられている。
接地用引き出し配線114と信号用引き出し配線115とが絶縁体117を介して立体的に交差し、容量118は、信号引き出し配線の一部、信号引き出し配線の一部と対向する接地用引き出し配線の一部、および両配線の一部で挟持された絶縁体によって形成されている。
すなわち、後段の弾性表面波素子113のIDT電極106に接続された接地用引き出し配線114と、前段の弾性表面波素子112および後段の弾性表面波素子113を縦続接続する信号用引き出し配線115とが、絶縁体117を介して交差して配設されている。この交差部に、接地用引き出し配線114と信号用引き出し配線115とで絶縁体117を挟持する構造を有する容量118が設けられている。
前段の弾性表面波素子112と後段の弾性表面波素子113とで、寄生容量を発生させる要因となる周辺の電極パターン等の構造が異なっていると、平衡出力信号端子に伝わる信号が互いに振幅が異なり、また位相が逆相からずれてしまって平衡度が劣化することがある。ところが、本発明の一実施形態である弾性表面波装置が容量118を具備することによって、等価回路上導入される容量を、平衡出力(または平衡入力)間で調整することが可能となる。つまり、2つの平衡出力信号端子123、124の出力信号の振幅や位相を調整することができるため、振幅平衡度および位相平衡度を向上させることができる。
また、上記の構成により、前段の弾性表面波素子112と後段の弾性表面波素子113との間に接地用パッド電極等を配設する必要がなくなり、前段の弾性表面波素子112と後段の弾性表面波素子113を極力近づけることができ、接地用パッド電極等のパターンを弾性表面波素子間に挟まれた領域の外側にレイアウトすることが可能となり、弾性表面波素子面積を極力低減して弾性表面波装置を小型化することが可能となる。
絶縁体117の厚みは0.5〜6μm程度がよく、0.5μm未満では大きな電気的容量を発生するため、弾性表面波素子に対して電気特性に悪影響を与えることとなる。また、6μmを超えると、上部配線電極が断線する可能性が大きくなる。
絶縁体117は、ビルドアップ法等の方法で形成される。絶縁体117を形成する際に、複数の絶縁層117を積層させた構成としてもよい。また、絶縁体117中にアルミナセラミックス等からなる絶縁体粒子や銀等からなる金属粒子を混入させることによって、あるいは絶縁体117を多数の気泡が形成された多孔質体とすることによって、絶縁体117の誘電率を所望のものに調整することができる。
接地用引き出し配線114と信号用引き出し配線115とが絶縁体117を介して交差して配設されている部位、即ち容量118において、接地用引き出し配線114および信号用引き出し配線115のうち絶縁体117の上に配置された方の幅(幅bとする)を、その残部の幅(幅aとする)よりも大きく形成し、容量を調整する際に、幅bをレーザ光やエッチングにより小さくしていくこともできる。
あるいは、最初に幅bを幅aと同じにしておき、容量を調整する際に、幅bの部位にハンダ層を形成したり、金属層を形成したりすることによって、幅bを幅aよりも大きくしていくこともできる。
即ち、弾性表面波装置の容量の容量調整方法は、1)絶縁体中にそれと誘電率の異なる絶縁体粒子または金属粒子を混入させる方法、2)容量の部位における接地用引き出し配線の幅及び信号用引き出し配線の幅の少なくとも一方を変更する方法、3)第1の弾性表面波素子の側に第1の容量、第2の弾性表面波素子の側に第2の容量を形成し、第1の容量の絶縁体の材料または厚みと第2の容量の絶縁体の材料または厚みとを異なるものとする方法等である。
本発明の弾性表面波装置の他の実施形態を図5に示す。図4に記載の弾性表面波装置においては、接地用引き出し電極114は、後段の弾性表面波素子113の中央のIDT電極106に接続されているが、図5の例においては、接地用引き出し電極114が、前段の弾性表面波素子112の中央のIDT電極103の共通電極に接続されている。この場合、図4に記載の弾性表面波装置と同様に、前段の弾性表面波素子112と後段の弾性表面波素子113との間に形成された容量118により、等価回路上導入される容量を、平衡出力(または平衡入力)間で調整することが可能となり、振幅平衡度および位相平衡度を向上させることができる。また、上記と同様に、前段の弾性表面波素子112と後段の弾性表面波素子113との間に接地用パッド電極等を配設する必要がなくなり、前段の弾性表面波素子112と後段の弾性表面波素子113を極力近づけることができ、接地用パッド電極等のパターンを弾性表面波素子間以外の外側にレイアウトすることが可能となり、弾性表面波素子面積を極力低減して弾性表面波装置を小型化することが可能となる。
さらに、図6に本発明の弾性表面波装置に関する他の実施形態の平面図を示す。上記の構成において、前段の弾性表面波素子112と後段の弾性表面波素子113との間に、接地用引き出し配線114、118と、前段の弾性表面波素子112と後段の弾性表面波素子113とを縦続接続した信号用引き出し配線115、116との交差部に2つの容量118、121を形成している。この場合、上記と同様に、2つの縦続接続された箇所の両方に付加した容量を調整することより、弾性表面波装置の平衡度を向上させることができる。
容量に用いる絶縁体117、120としては、酸化シリコンまたはポリイミド系樹脂を用いることがよい。これにより、信号用引き出し電極115、116と接地用引き出し電極114、118との間の絶縁性を良好に保つことができ、引き出し電極の面積および絶縁体117、120の膜みを調整することにより、所望の容量を平衡出力(または平衡入力)間に形成することができ、付加した容量により弾性表面波装置の平衡度を向上させることができる。
図6に示すように、上記の構成において、接地用引き出し配線114は、その一部が圧電基板101上に弾性表面波装置の周囲を囲って形成された環状電極128に接続されている。これにより、上記と同様に、前段の弾性表面波素子112と後段の弾性表面波素子113との間に形成された容量118により、弾性表面波素子の等価回路上導入される容量を、2つの平衡出力(または平衡入力)おいて調整することが可能となり、振幅平衡度および位相平衡度を向上させることができる。
さらに、この構成により、弾性表面波装置の周囲に形成されている環状電極128に接地用引き出し電極114が接続されているので、弾性表面波素子間に接地パッド電極を配置する必要がなくなり、さらには基準電位用電極を1つにまとめることが可能となり、弾性表面波素子面積を極力低減して弾性表面波装置を小型化することが可能となる。
また、環状電極128に対向する回路基板上の箇所に環状導体パターンを形成して、フェースダウン構造で弾性表面波装置を実装して、半田接続体等で封止した構成により弾性表面波装置を形成した場合、弾性表面波装置に充分な気密性を確保することができ、小型で信頼性に優れた弾性表面波装置を提供することができる。
また、図6に示すように、前段の弾性表面波素子112と後段の弾性表面波素子113の両方の縦続接続部に、容量118、121を形成した状態で、接地用引き出し電極114および119を環状電極128に接続してもよい。
また、弾性表面波装置用の圧電基板としては、36°±3°YカットX伝搬タンタル酸リチウム単結晶、42°±3°YカットX伝搬タンタル酸リチウム単結晶、64°±3°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム単結晶、41°±3°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム単結晶、45°±3°XカットZ伝搬四ホウ酸リチウム単結晶が好ましい。これらは電気機械結合係数が大きく、かつ、周波数温度係数が小さいため、圧電基板として好ましい。
これらの焦電性圧電単結晶のうち、酸素欠陥やFe等の固溶により焦電性を著しく減少させた圧電基板が、デバイスの信頼性の点において良好である。圧電基板の厚みは0.1〜0.5mm程度が、脆いというデメリットが少なく、材料コストも低く、部品寸法を小さくし易い点において好ましい。
圧電基板の弾性表面波素子が形成される一方の主面において、弾性表面波装置を外部回路基板等にフェースダウンでフリップチップ接続するためのAu、ハンダ等から成る導体バンプ等の導電接続体を、不平衡入出力端子17、平衡入出力端子18、19、基準電位用電極(環状電極28)等の上に形成する。
また、IDT電極および反射器電極は、AlもしくはAl合金(Al−Cu系、Al−Ti系)からなり、蒸着法、スパッタリング法、またはCVD法等の薄膜形成法により形成する。電極厚みは0.1〜0.5μm程度とすることが弾性表面波フィルタとしての特性を得る上で好適である。
なお、弾性表面は装置の実施形態におけるIDT電極の電極指、反射器電極の電極指および弾性表面波共振子の電極指の数は数本〜数100本にも及ぶので、簡単のため、図においてはそれらの形状を簡略化して図示している。
さらに、弾性表面波装置の実施の形態では、電極および圧電基板表面の弾性表面波の伝搬部に、SiO2、SiNx、Si、Al2O3を保護膜として形成して、導電性異物による通電防止や耐電力向上を図ることもできる。
また、本発明の弾性表面波装置を通信装置に適用することができる。即ち、少なくとも受信回路および送信回路の一方を備え、これらの回路に含まれるバンドパスフィルタとして用いる。例えば、送信回路から出力された送信信号をミキサでキャリア周波数にのせて、不要信号をバンドパスフィルタで減衰させ、その後、パワーアンプで送信信号を増幅して、デュプレクサを通ってアンテナより送信することができる送信回路を備えた通信装置、または、受信信号をアンテナで受信し、デュプレクサを通った受信信号をローノイズアンプで増幅し、その後、バンドパスフィルタで不要信号を減衰させて、ミキサでキャリア周波数から信号を分離し、この信号を取り出す受信回路へ伝送するような受信回路を備えた通信装置に適用可能である。従って、本発明の弾性表面波装置を採用すれば、弾性表面波装置の挿入損失が改善されるため消費電力が低減された通信装置を提供できる。また、挿入損失が改善されることによってSN比が向上するため、通信装置の感度を改善することができる。
図15に、通信装置である携帯電話に組み込まれる、バンドパスフィルタを有する高周波回路のブロック回路図の1例を示す。送信信号(高周波信号)をミキサ220によって搬送波信号に重畳させてアンテナ送信信号とし、バンドパスフィルタである弾性表面波装置221によりその不要信号が減衰され、パワーアンプ222で増幅された後、アイソレータ223と弾性表面波分波器(デュプレクサ)215を通り、アンテナ214から放射される。また、アンテナ214で受信されたアンテナ受信信号は、弾性表面波分波器215を通りローノイズアンプ216で増幅され、バンドパスフィルタである弾性表面波装置217でその不要信号が減衰された後、アンプ218で再増幅され、ミキサ219で低周波信号に変換される。
なお、上述した実施の形態では、簡単のために、圧電基板上を伝搬する弾性表面波の伝搬方向に沿って、この伝搬方向に対して直交する方向に長い電極指を多数本有する3つのIDT電極を配設した弾性表面波素子の例を示した。しかし、これに限定されるものではなく、IDT電極を5個以上の奇数個配設するようにしてもよい。その他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することは可能である。
図1に示す弾性表面波装置を具体的に作製した実施例について説明する。
38.7°YカットのX方向伝搬とするLiTaO3単結晶の圧電基板(多数個取り用の母基板)1上の多数の弾性表面波装置形成領域に、Al(99質量%)−Cu(1質量%)合金からなる第1および第2の弾性表面波素子14、15等の微細電極パターンを形成した。また、各電極パターンの作製は、スパッタリング装置、縮小投影露光機(ステッパー)、およびRIE(Reactive Ion Etching)装置によりフォトリソグラフィを施すことにより行った。
まず、圧電基板1をアセトン、IPA(イソプロピルアルコール)等によって超音波洗浄し、有機成分を落とした。次に、クリーンオーブンによって充分に圧電基板1の乾燥を行った後、各電極となる金属層の成膜を行った。金属層の成膜にはスパッタリング装置を使用し、金属層の材料としてAl(99質量%)−Cu(1質量%)合金を用いた。このときの金属層の膜みは約0.18μmとした。
次に、金属層上にフォトレジスト層を約0.5μmの厚みにスピンコートし、縮小投影露光装置により、所望形状にパターニングを行い、現像装置にて不要部分のフォトレジスト層をアルカリ現像液で溶解させ、所望パターンを表出させた。その後、RIE装置により金属層のエッチングを行い、パターニングを終了し、弾性表面波装置を構成する各電極のパターンを得た。
次に、電極の所定領域上に保護膜を形成した。即ち、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置により、各電極パターンおよび圧電基板1上にSiO2層を約0.1μmの厚みで形成した。
次に、絶縁体を介して交差させて配設する引き出し電極の形成に対して、フォトリソグラフィによりパターニングを行い、引き出し電極22、23の、接地用引き出し配線20、21との交差部の上に絶縁体を形成した。次に、IDT電極3、6の共通電極から引き出された接地用引き出し配線20、21と環状電極28との接続を取るための接続電極であって、引き出し電極22、23の、接地用引き出し配線20、21との交差部上の絶縁体の上に設けられる接続電極を形成するために、フォトリソグラフィによりパターニングを行った。
そのとき、接続電極と、接地用引き出し配線20、21および環状電極28の接続部では上記SiO2層が電気接続を阻害するため、その部位をRIE装置等でドライエッチング法により、SiO2層に窓部を開けるためのエッチング加工を行った。
さらに、RIE装置等を用いて、圧電基板1の弾性表面波素子が形成される一方の主面に、弾性表面波装置を外部回路基板等にフェースダウンでフリップチップ接続する導電接続体を設けるための窓部を、SiO2層にエッチング加工を施すことによって形成した。その後、スパッタリング装置を使用し、窓部に、Cr層,Ni層,Au層を積層した構成の、不平衡入出力端子、平衡入出力端子、基準電位用電極(環状電極)を成膜した。不平衡入出力端子、平衡入出力端子、基準電位用電極のそれぞれの厚みは約1.0μmとした。その後、フォトレジストおよび不要箇所のCr層,Ni層,Au層をリフトオフ法により同時に除去し、導電接続体を形成するための、不平衡入出力端子、平衡入出力端子、基準電位用電極を完成した。
次に、不平衡入出力端子、平衡入出力端子、基準電位用電極のそれぞれの上にハンダからなるフリップチップ接続用の導電接続体を、印刷法により形成した。
次に、圧電基板1に分割線に沿ってダイシング加工を施し、各弾性表面波装置(チップ)ごとに分割した。その後、各チップをフリップチップ実装装置にて基準電位用電極等の形成面を下面にしてパッケージ内に収容し接着した。その後、N2雰囲気中でベーキングを行い、パッケージ化された弾性表面波装置を完成した。パッケージは、セラミック層を多層積層して成る2.5×2.0mm角の積層構造のものを用いた。
また、比較例1のサンプルとして、図7に示すような弾性表面波共振子16と第1および第2の弾性表面波素子14、15とを有する弾性表面波装置であって、信号用引き出し電極22、23と接地用引き出し電極20、21の交差部が形成されておらず、弾性表面波共振子16と第1および第2の弾性表面波素子14、15との間に接地用パッド電極29、30を形成した弾性表面波装置を上記実施例と同様の工程で作製した。
尚、比較例1のサンプルとして用いた弾性表面波装置の上記以外の構成は、本実施例である図1に示す弾性表面波装置の構成と同様である。
次に、実施例1および比較例1の弾性表面波装置について特性測定を行った。0dBmの信号を入力し、周波数1640〜2140MHz、測定ポイントを801ポイントの条件にて測定した。サンプル数は各30個、測定機器はマルチポートネットワークアナライザ(アジレントテクノロジー社製「E5071A」)である。
測定の結果得られた通過帯域近傍の周波数特性のグラフを図8に示す。図8は、周波数フィルタとしての弾性表面波装置の伝送特性を表す挿入損失の周波数依存性を示すグラフである。実施例1のフィルタ特性は非常に良好であった。即ち、図8の実線で示すように、挿入損失が向上した良好なフィルタ特性が得られた。
一方、図8の波線で示すように、比較例1の通過帯域内のフィルタ特性は、挿入損失が劣化している。実施例1の弾性表面波装置は、比較例1と比較して通過帯域の挿入損失を0.3dB改善させることができた。
また、実施例1および比較例1の弾性表面波装置について、通過帯域近傍の位相平衡度の線図を図9に示す。図9の実線に示すように、実施例1の位相平衡度は、通過帯域内で安定してフラットな特性となり非常に良好であった。図9の波線に示すように、比較例1の位相平衡度は、通過帯域内で安定した特性となっていない。このように本実施例では通過帯域において平衡度を大きく改善することができた。
このように実施例1では、挿入損失を向上させ、かつ平衡度を改善した弾性表面波装置を実現することができた。また、実施例1の弾性表面波装置は、比較例1の弾性表面波装置に比べて、弾性表面波素子等が形成された主面の面積が10%程度小型化された。
図4に示す弾性表面波装置を具体的に作製した実施例について説明する。
38.7°Yカット−X方向伝搬とするLiTaO3単結晶からなる圧電基板101(多数個取り用の母基板)上に、Al(99質量%)−Cu(1質量%)合金からなる微細電極パターンを形成した。
また、各電極のパターン作製には、スパッタリング装置、縮小投影露光機(ステッパー)、およびRIE(Reactive Ion Etching)装置によりフォトリソグラフィを施すことにより行った。
まず、圧電基板101をアセトン、IPA(イソプロピルアルコール)等によって超音波洗浄し、有機成分を落とした。次に、クリーンオーブンによって充分に圧電基板1の乾燥を行った後、各電極となる金属層の成膜を行った。金属層の成膜にはスパッタリング装置を使用し、金属層の材料としてAl(99質量%)−Cu(1質量%)合金を用いた。このときの金属層の膜みは約0.18μmとした。
次に、金属層上にフォトレジストを約0.5μmの厚みにスピンコートし、縮小投影露光装置により、所望形状にパターニングを行い、現像装置にて不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させ、所望パターンを表出させた。その後、RIE装置により金属層のエッチングを行い、パターニングを終了し、弾性表面波装置を構成する各電極のパターンを得た。
この後、電極の所定領域上に保護膜を形成した。即ち、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置により、各電極のパターンおよび圧電基板1上にSiO2層を約1.0μmの厚みで形成した。
その後、フォトリソグラフィによりパターニングを行い、接地用引き出し電極14とIDT電極6の共通電極との接続部に相当するSiO2層の部位を窓部とするためのエッチング加工を、RIE装置等でドライエッチングにより行った。さらに、フォトリソグラフィによりパターニングを行い、RIE装置等により容量18以外の箇所のSiO2層をエッチングして、厚みを0.2μmまでに薄く調整して加工した。
その後、スパッタリング装置を使用し、Al−Cu合金によって接地用引き出し電極14を成膜した。さらに、フォトリソグラフィによりパターニングを行い、RIE装置等でフリップチップ接続用の窓部をSiO2層に開けるためのエッチングを行った。その後、スパッタリング装置を使用し、窓部に、Cr層,Ni層,Au層を積層した構成の、不平衡入出力端子、平衡入出力端子、基準電位用電極(環状電極)を成膜した。不平衡入出力端子、平衡入出力端子、基準電位用電極のそれぞれの厚みは約1.0μmとした。その後、フォトレジストおよび不要箇所のCr層,Ni層,Au層をリフトオフ法により同時に除去し、導電接続体を形成するための、不平衡入出力端子、平衡入出力端子、基準電位用電極を完成した。
次に、不平衡入出力端子、平衡入出力端子、基準電位用電極のそれぞれの上にハンダからなるフリップチップ接続用の導電接続体を、印刷法により形成した。
次に、圧電基板1に分割線に沿ってダイシング加工を施し、各弾性表面波装置(チップ)ごとに分割した。その後、各チップをフリップチップ実装装置にて基準電位用電極等の形成面を下面にしてパッケージ内に収容し接着した。その後、N2雰囲気中でベーキングを行い、パッケージ化された弾性表面波装置を完成した。パッケージは、セラミック層を多層積層して成る2.5×2.0mm角の積層構造のものを用いた。
また、比較例2のサンプルとして、図10に示すような前段の弾性表面波素子12と後段の弾性表面波素子13において、信号用引き出し電極15、16と接地用引き出し電極の交差部が形成されておらず、前段の弾性表面波素子12と後段2のIDT電極13との間に接地用パッド電極25を形成した弾性表面波装置を上記と同様の工程で作製した。
尚、比較例のサンプルにおける弾性表面波装置の上記以外の構成は、実施例2である図4に示す弾性表面波装置の構成と同様である。
次に、実施例2および比較例2の弾性表面波装置の特性測定を行った。0dBmの信号を入力し、周波数840〜1040MHz、測定ポイントを801ポイントの条件にて測定した。サンプル数は30個、測定機器はマルチポートネットワークアナライザ(アジレントテクノロジー社製「E5071A」)である。
実施例2および比較例2の弾性表面波装置における通過帯域近傍の位相平衡度の線図を図11に示す。図11の実線に示すように、実施例2の弾性表面波装置の位相平衡度は、通過帯域内で安定してフラットな特性となり非常に良好であった。図11の波線に示す比較例2の弾性表面波装置の位相平衡度と比較して、実施例2の弾性表面波装置は、通過帯域において平衡度を改善することができた。
このように実施例2では、通過帯域内に発生する微小リップルの発生を抑制して、挿入損失を向上させ、かつ平衡度を改善した弾性表面波装置を実現することができた。また、実施例2の弾性表面波装置は、比較例2の弾性表面波装置に比べて、弾性表面波素子等が形成された主面の面積が10%程度小型化された。