JP2007204798A - 耐焼き割れ性に優れた部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.35〜0.7mass%、Si: 0.80mass%以下、Mn:0.2〜2.0mass%、Al: 0.25mass%以下、Ti:0.005〜0.1mass%、Mo:0.05〜0.6mass%、B:0.0003〜0.006mass%、S:0.06mass%以下、P:0.020mass%以下およびCr:2.5mass%以下を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になる鋼材を加工して部品形状とし、その後、焼入れを施す部品の製造方法において、該焼入れ前の加工直後の部品に対して、高周波焼入れを施した後に、焼き割れの発生しやすい部位を強制冷却し、該部位の温度がAr1点〜(Ar1−50)℃になった時点で強制冷却を中止し、該部位をAc1点以上に復熱させる。
【選択図】なし
Description
その結果、焼入れ組織の旧オーステナイト粒の平均粒径に着目し、旧オーステナイト粒の平均粒径を微細化することにより、焼割れ性が改善することを見出し、本発明を完成するに到った。
(1)C:0.35〜0.7mass%、Si: 0.80mass%以下、Mn:0.2〜2.0mass%、Al: 0.25mass%以下、Ti:0.005〜0.1mass%、Mo:0.05〜0.6mass%、B:0.0003〜0.006mass%、S:0.06mass%以下、P:0.020mass%以下およびCr:2.5mass%以下を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になる鋼材を加工して部品形状とし、その後、焼入れを施す部品の製造方法において、該焼入れ前の加工直後の部品に対して、高周波焼入れを施した後に、焼き割れの発生しやすい部位を強制冷却し、該部位の温度がAr1点〜(Ar1−50)℃になった時点で強制冷却を中止し、該部位をAc1点以上に復熱させる耐焼き割れ性に優れた部品の製造方法。
C:0.30〜0.7mass%
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて疲労強度の向上に有効に寄与する。しかしながら、含有量が0.30mass%に満たないと、必要とされる疲労強度を確保するために焼入れ硬化層深さを飛躍的に高めねばならず、その際焼割れの発生が顕著となり、またベイナイト組織も生成し難くなるため、0.3mass%以上を添加する。一方、0.7mass%を超えて含有させると、粒界強度が低下し、それに伴い疲労強度も低下し、また、切削性、冷間鍛造性および耐焼割れ性も低下する。このため、Cは0.3〜0.7mass%の範囲に限定した。好ましくは0.4〜0.6mass%の範囲である。
Siは脱酸剤として作用するだけでなく、強度の向上にも有効に寄与するが、含有量が0.8mass%を超えると、被削性および鍛造性の低下を招くため、Si量は0.8mass%以下にすることが必要である。
なお、強度向上のためには0.05mass%以上とすることが好ましい。
Mnは、焼入れ性を向上させ、焼入れ時の硬化層深さを確保する上で有用な成分であるため、添加できる。含有量が0.2mass%未満ではその添加効果に乏しいので、0.2mass%以上必要である。好ましくは、0.3mass%以上である。一方、Mn量が2.0mass%を超えると焼入れ後の残留オーステナイトが増加し、かえって表面硬度が低下し、ひいては疲労強度の低下を招くので、Mnは2.0mass%以下にすることが必要である。
Alは、脱酸に有効な元素である。また、焼入れ加熱時におけるオーステナイト粒成長を抑制することによって焼入れ硬化層の粒径を微細化する上でも有用な元素である。しかしながら、0.25mass%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、Alは0.25mass%以下の範囲で含有させることが必要である。好ましくは0.01〜0.10mass%の範囲である。
Tiは、不可避不純物として混入するNと結合することで、BがBNとなってBの焼入れ性向上効果が消失するのを防止し、Bの焼入れ性向上効果を十分に発揮させる作用を有する。この効果を得るためには、0.005mass%以上添加する必要がある。一方、0.1mass%を超えて含有されるとTiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって疲労強度の著しい低下を招くため、Tiは0.1mass%以下とすることが好ましい。好ましくは0.01〜0.07mass%の範囲である。
Moは、オーステナイト粒の成長を抑制する上で有用な元素であり、そのためには0.05mass%以上添加する必要がある。0.6mass%を超えて添加すると、被削性の劣化を招くため、Moは0.6mass%以下とすることが好ましい。
Bは、粒界強化により疲労特性を改善するだけでなく、強度を向上させる有用な元素であり、0.0003mass%以上添加するが、0.006mass%を超えて添加しても、その効果は飽和するため、0.006mass%以下に限定した。
Sは、鋼中でMnSを形成し、切削性を向上させる有用元素であるが、0.06mass%を超えて含有させると粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、Sは0.06mass%以下に制限した。好ましくは0.04mass%以下である。
Pは、不純物元素として粒界に偏析し、粒界強度を低下させるために0.020mass%以下にする必要がある。
Crは、焼入れ性の向上に有効であり、硬化深さを確保する上で有用な元素である。しかし、過度に含有されると炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を助長し、粒界強度を低下させて疲労強度を劣化させる。従って、Crの含有は極力低減することが望ましいが、2.5mass%までは許容できる。好ましくは1.5mass%以下である。
Cu:1.0mass%以下
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶し、この固溶強化によって、疲労強度を向上させる。さらに、炭化物の生成を抑制することにより、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる。しかしながら、含有量が1.0mass%を超えると熱間加工時に割れが発生するため、1.0mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.5mass%以下である。なお、0.03mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.05mass%以上含有させることが望ましい。
Niは、焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入れ性を調整する場合に用いる。また、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制して、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Niは極めて高価な元素であり、3.5mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、3.5mass%以下の添加とすることが好ましい。なお、0.05mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.05mass%以上含有させることが望ましい。さらに、好ましくは0.1〜1.0mass%である。
Coは、炭化物の生成を抑制して、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる元素である。しかしながら、Coは極めて高価な元素であり、1.0mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、1.0mass%以下の添加とする。なお、0.01mass%未満の添加では、粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.01mass%以上添加することが望ましい。好ましくは0.02〜0.5mass%である。
Nbは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、鋼中でC,Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.1mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005mass%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005mass%以上添加することが望ましい。さらに好ましくは0.01〜0.05mass%である。
Vは、鋼中でC,Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果により疲労強度を向上させる。しかしながら、0.5mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.5mass%以下とすることが好ましい。なお、0.01mass%未満の添加では、疲労強度の向上効果が小さいので、0.01mass%以上添加することが望ましい。さらに好ましくは0.03〜0.3mass%である。
Wは、オーステナイト粒の成長を抑制する上で有用な元素であり、そのためには0.005mass%以上で含有することが好ましいが、1.0mass%を超えて添加すると、被削性の劣化を招くため、Wは1.0mass%以下とすることが好ましい。
Zrは、焼入れ性向上効果があるだけでなく、鋼中でC,Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素であり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するため、0.1mass%以下とすることが好ましい。なお、0.005mass%未満の添加では、析出強化作用および焼もどし軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005mass%以上添加することが望ましい。さらに、好ましくは0.01〜0.05mass%である。
Taは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化を防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.5mass%を超えて含有を増加させても、それ以上強度向上に寄与しないので、0.5mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.02mass%以上とすることが好ましい。
Hfは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.5mass%を超えて含有量を増加させても、それ以上強度向上に寄与しないので、0.5mass%以下とする。なお、疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.02mass%以上とすることが好ましい。
Sbは、ミクロ組織変化の遅延に対して効果があり、疲労強度、特に転動疲労の劣化防止する効果があるので、添加してもよい。しかし、その含有量が0.01mass%を超えて含有量を増加させると靭性が劣化するので、0.01mass%以下とする。疲労強度の向上作用を発現させるためには、0.005mass%以上とすることが好ましい。
Bi:0.1mass%以下
PbおよびBiはいずれも、切削時の溶融、潤滑および脆化作用により、被削性を向上させるので、この目的で添加することができる。しかしながら、Pb:0.1 mass%、Bi:0.1 mass%を超えて添加しても効果が飽和するばかりか、成分コストが上昇するため、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Pbは0.01mass%以上、Biは0.01mass%以上含有させることが好ましい。
Te:0.1mass%以下
SeおよびTeはそれぞれ、Mnと結合してMnSeおよびMnTeを形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、含有量が0.1 mass%を超えると、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、いずれも0.1 mass%以下で含有させるものとした。また、被削性の改善のためには、Seの場合は 0.003mass%以上およびTeの場合は 0.003mass%以上で含有させることが好ましい。
REM:0.1mass%以下
CaおよびREMはそれぞれ、MnSと共に硫化物を形成し、これがチップブレーカーとして作用することにより被削性を改善する。しかしながら、CaおよびREMをそれぞれ、0.01mass%および0.1mass%を超えて含有させても、効果が飽和する上、成分コストの上昇を招くので、それぞれ上記の範囲で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Caは0.0001mass%以上およびREM は0.0001mass%以上含有させることが好ましい。
Mgは、脱酸元素であるだけでなく、応力集中源となって被削性を改善する効果があるので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、過剰に添加すると効果が飽和する上、成分コストが上昇するため、0.01mass%以下で含有させるものとした。なお、被削性の改善のためには、Mgは0.0001mass%以上で含有させることが好ましい。
上記した所定の成分組成に調整した鋼材を、棒鋼圧延後に熱間鍛造などの熱間加工を施して部品形状とし、部品の少なくとも一部に加熱温度:800〜1000℃の条件下で焼入れを施す。この少なくとも一部を疲労強度が要求される部位とする。
[加工条件]
熱間加工の温度を1100〜1250℃としたのは、加工荷重をできる限り低くするためである。その後800℃〜Ar1の温度域を0.5℃/s以上の速度で強制冷却するのは、部品内部の熱をできる限り奪わずに、表面に近い領域を変態させるためである。このとき、冷却停止はAr1直下とするのがよい。冷却速度は、冷却停止後に部品表面近傍がAc1以上に復熱するように、調節する必要がある。そして、Ar1以下の温度で冷却を中止し放冷することにより、部品内部の熱により表面近傍をAc1以上の温度に復熱する。
次いで、得られた棒材から図1に示す焼き割れ調査試験片を採取し、950℃の高周波焼入れを行い、そのまま1日以上放置した後、試験片を6分割し断面内の割れ数を測定した。これらの結果を表2に示す。
また、冷却停止温度が低くなりすぎると、やはり、その後の復熱が不十分となり逆変態が起こらないことが分かる。
Claims (5)
- C:0.35〜0.7mass%、
Si: 0.80mass%以下、
Mn:0.2〜2.0mass%、
Al: 0.25mass%以下、
Ti:0.005〜0.1mass%、
Mo:0.05〜0.6mass%、
B:0.0003〜0.006mass%、
S:0.06mass%以下、
P:0.020mass%以下および
Cr:2.5mass%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になる鋼材を加工して部品形状とし、その後、焼入れを施す部品の製造方法において、該焼入れ前の加工直後の部品に対して、高周波焼入れを施した後に、焼き割れの発生しやすい部位を強制冷却し、該部位の温度がAr1点〜(Ar1−50)℃になった時点で強制冷却を中止し、該部位をAc1点以上に復熱させる耐焼き割れ性に優れた部品の製造方法。 - 請求項1において、前記鋼材の加工を1100℃以上の温度域で行う耐焼き割れ性に優れた部品の製造方法。
- 請求項1または2において、前記鋼材が、さらに
Cu:1.0mass%以下、
Ni:3.5mass%以下、
Co:1.0mass%以下、
Nb:0.1mass%以下、
V:0.5mass%以下および
W:1.0mass%以下
のうちの1種または2種以上を含有する耐焼き割れ性に優れた部品の製造方法。 - 請求項1、2または3において、前記鋼材が、さらに
Zr:0.1mass%以下、
Ta:0.5mass%以下、
Hf:0.5mass%以下および
Sb:0.1mass%以下
のうちの1種または2種以上を含有する耐焼き割れ性に優れた部品の製造方法 - 請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記鋼材が、さらに
Pb:0.1mass%以下、
Bi:0.1mass%以下、
Se:0.1mass%以下、
Te:0.1mass%以下、
Ca:0.01mass%以下、
Mg:0.01mass%以下および
REM:0.1mass%以下
のうちの1種または2種以上を含有する耐焼き割れ性に優れた部品の製造方法
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