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JP2007297489A - 層間化合物及び複合材料 - Google Patents

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JP2007297489A JP2006125906A JP2006125906A JP2007297489A JP 2007297489 A JP2007297489 A JP 2007297489A JP 2006125906 A JP2006125906 A JP 2006125906A JP 2006125906 A JP2006125906 A JP 2006125906A JP 2007297489 A JP2007297489 A JP 2007297489A
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Tsutomu Kunieda
勉 国枝
Tatsuya Aoki
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Abstract

【課題】高分子材料と複合化することによって得られる複合材料の物性を高めることのできる層間化合物を提供する。また、層間化合物による複合化に基づいて高められた物性を発揮することのできる複合材料を提供する。
【解決手段】層間化合物は、無機層状物質の層間に有機化合物が挿入されているものである。この層間化合物は、交換性のイオンが層間に存在するイオン交換性無機物質の層間に、有機化合物を非イオン化状態で挿入して構成される。複合材料は、層間化合物と高分子材料とを複合化した材料である。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機層状物質の層間に有機化合物が挿入されている層間化合物及びその層間化合物と高分子材料と複合化した複合材料に関する。
層間化合物としては、無機層状物質の層間に陽イオン性有機化合物が挿入されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。この種の層間化合物は、無機層状物質の層間に存在する金属陽イオンと、陽イオン性有機化合物とをイオン交換することによって得られる。このような無機層状物質の層間に対する化学種の挿入は、一般にインターカレーションと呼ばれている。例えば特許文献1の珪酸トリアジン塩複合体は、膨潤性層状珪酸塩の層間にトリアジン系化合物誘導体が挿入されているものである。このトリアジン系化合物誘導体は、正電荷を有する基を少なくとも1つ有するトリアジン系化合物であって、トリアジン系化合物に対してルイス酸化合物を酸・塩基反応させることによって得られる。そして、珪酸トリアジン塩複合体は、膨潤性層状珪酸塩の層間に存在する金属陽イオンと、トリアジン系化合物誘導体とをイオン交換することによって得られる。この珪酸トリアジン塩複合体と熱可塑性樹脂と混合して得られる樹脂複合体は、機械的物性及び耐熱性に優れるとされている。
特開平10−81510号公報
高分子材料と層間化合物とを複合化して得られる複合材料では、物性の更なる向上が所望されている。この発明は、本発明者の鋭意研究の結果、複合材料の物性を高めることのできる新規な層間化合物を見出すことによりなされたものである。
本発明の第1の目的は、高分子材料と複合化することによって得られる複合材料の物性を高めることのできる層間化合物を提供することにある。また、第2の目的は、層間化合物による複合化に基づいて高められた物性を発揮することのできる複合材料を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の層間化合物は、無機層状物質の層間に有機化合物が挿入されている層間化合物であって、交換性のイオンが層間に存在するイオン交換性無機物質の層間に、前記有機化合物を非イオン化状態で挿入してなることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の層間化合物において、前記無機層状物質において前記イオン交換性無機物質の有する前記交換性のイオン量が保持されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の層間化合物において、前記イオン交換性無機物質の有するイオン交換容量と、前記無機層状物質の有するイオン交換容量との差が10ミリグラム当量/100g未満であることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の層間化合物において、前記イオン交換性無機物質の有するイオン交換容量が、25〜195ミリグラム当量/100gであることを要旨とする。
請求項5に記載の発明の複合材料は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の層間化合物と、高分子材料とを複合化したことを要旨とする。
本発明の層間化合物によれば、高分子材料と複合化することによって得られる複合材料の物性を高めることができる。また、本発明の複合材料によれば、層間化合物による複合化に基づいて高められた物性を発揮することができる。
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態における層間化合物は、無機層状物質の層間に有機化合物が挿入されているものである。この層間化合物は、イオン交換能力を有するイオン交換性無機物質の層間に、有機化合物を非イオン化状態で挿入して構成される。このような層間化合物は、高分子材料と複合化されることで物性の高められた複合材料を得ることができる。
<イオン交換性無機物質>
イオン交換性無機物質は、高分子材料と複合化することが可能な無機物質であって、陽イオン交換性無機物質及び陰イオン交換性無機物質から選ばれる少なくとも一種である。
陽イオン交換性化合物は、層間に交換性の陽イオンが存在している無機物質であって、例えば膨潤性雲母(膨潤性マイカ)、スメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト族粘土鉱物、ゼオライト、セピオライト等が挙げられる。
膨潤性雲母としては、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等が挙げられる。スメクタイト族粘土鉱物としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトナイト、スティブンサイト等が挙げられる。バーミキュライト族粘土鉱物としては、3八面体型バーミキュライト、2八面体型バーミキュライト等が挙げられる。
また、陽イオン交換性無機物質としては、例えば下記一般式(1)で示される膨潤性層状珪酸塩を挙げることもできる。
〔A(X)(Si4−dAl)O10(OH2−e)〕 ・・・(1)
一般式(1)中におけるaの値は0.2≦a≦1.0、bの値は0≦b≦3、cの値は0≦c≦2、dの値は0≦d≦4、及びeの値は0≦e≦2である。
一般式(1)中のAは、交換性陽イオンを示し、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群から選ばれる少なくとも1個の陽イオンである。Aで示される交換性金属イオンの金属原子としては、例えばLi、Na等が挙げられる。
一般式(1)中におけるX及びYは、膨潤性層状珪酸塩の構造内における八面体シートに入る陽イオンであって、XはMg、Fe、Mn、Ni、Zn及びLiから選ばれる少なくとも一つの金属原子が構成する陽イオンであり、YはAl、Fe、Mn及びCrから選ばれる少なくとも一つの金属原子が構成する陽イオンである。
陰イオン交換性無機物質は、層間に陰イオンが存在している無機物質であって、例えばハイドロタルサイト、及びハイドロタルサイト状化合物を含むハイドロタルサイト類が挙げられる。ハイドロタルサイト類は、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide:LDH)の一種であって、例えば下記一般式(2)で示される。
〔M2+ 1−x3+ (OH)x+〔An− x/n・yHO〕x− ・・・(2)
一般式(2)中におけるM2+は二価の金属原子、M3+は三価の金属原子、An−はn価の交換性の金属イオン、x=0.2〜0.33、yは環境湿度によって変化するため特に限定されないが、例えば0<y<1である。M2+としては、例えばMg2+、Mn2+、Ni2+、Zn2+等が挙げられる。M3+としては、例えばAl3+、Cr3+、Fe3+、Co3+等が挙げられる。An−としては、例えばOH、Cl、NO 、SO 、CO 2−等が挙げられる。なお、ハイドロタルサイトはMgAl(OH)16CO・4HOで示される。
イオン交換性無機物質の層間に存在する交換性のイオンのイオン量は、例えばカラム浸透法(「粘土ハンドブック」第二版 日本粘土学会編、第576〜577項、技法堂出版)やメチレンブルー吸着法(日本ベントナイト工業会標準試験法、JBAS−107−91)等の方法によって、イオン交換性無機物質のイオン交換容量として示される。このイオン交換容量は、陽イオン交換性無機物質の場合には、陽イオン交換容量(Cation−Exchange Capacity,CEC)と呼ばれ、陰イオン交換性無機物質の場合には、陰イオン交換容量(Anion−Exchange Capacity,AEC)と呼ばれる。
本実施形態で示すイオン交換容量は、平衡法によって測定した値をいう。この平衡法は、以下の(手順1)〜(手順4)による方法である。
(手順1)所定量のイオン交換性無機物質を塩溶液で飽和させた後、イオン交換性無機物質と上澄みとを分離する。
(手順2)飽和処理したイオン交換性無機物質を(手順1)と同じ種類、かつ低濃度の塩溶液によって洗浄し、この濃度でイオン交換性無機物質を平衡にする。
(手順3)次いで、イオン交換性無機物質を純水で洗浄した後、乾燥及び粉砕する。
(手順4)層間に存在する元素を蛍光X線分析によって定量し、この定量値からイオン交換容量を求める。
イオン交換性無機物質のイオン交換容量は、好ましくは25〜195ミリグラム当量/100g、より好ましくは50〜150ミリグラム当量/100gである。このイオン交換容量が25〜195ミリグラム当量/100gである場合、こうしたイオン交換性無機物質から得られる層間化合物では層間剥離が生じ易くなるため、高分子材料と層間化合物とを複合化してなる複合材料の物性をより高めることができる。
イオン交換性無機物質の電荷密度は、好ましくは70×10〜250×10[nm/charge]、より好ましくは70×10〜200×10[nm/charge]である。この電荷密度が70×10〜250×10[nm/charge]である場合、こうしたイオン交換性無機物質から得られる層間化合物の層間剥離が生じ易くなるため、高分子材料と層間化合物とを複合化してなる複合材料の物性をより高めることができる。この電荷密度は、透過型電子顕微鏡観察による構造解析の結果、又は粉末X線回折のリーベルト法による構造解析の結果から格子定数を決定し、その格子定数及び上記イオン交換容量から単位格子当りに存在するイオンの電荷を示している。
<有機化合物>
有機化合物は、上述したイオン交換性無機物質の層間に非イオン化状態で挿入されることで、イオン交換性無機物質の層間は改質される。こうした有機化合物としては、複合化する高分子材料に対して機能性を付与することができるという観点から、高分子材料の添加剤であることが好適である。本実施形態の有機化合物として使用可能な添加剤としては、例えば難燃剤、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、減衰性付与剤等が挙げられる。
有機化合物の具体例としては、トリアジン系化合物、リン化合物、及びα−アミノ酸類から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。また、トリアジン系化合物又はリン化合物は、高分子材料の難燃剤であるため、高分子材料と層間化合物とを複合化してなる複合材料の難燃性を高めることも可能であるという観点から好適である。
トリアジン系化合物としては、メラミン化合物、シアヌル酸化合物等が挙げられる。メラミン化合物としては、メラミン、N−エチレンメラミン、N,N′,N″−トリフェニルメラミン、硫酸メラミン、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等が挙げられる。シアヌル酸化合物としては、シアヌル酸、イソシアヌル酸、トリメチルシアヌレート、トリスメチルイソシアヌレート、トリエチルシアヌレート、トリスエチルイソシアヌレート、トリ(n−プロピル)シアヌレート、トリス(n−プロピル)イソシアヌレート、ジエチルシアヌレート、N,N′−ジエチルイソシアヌレート、メチルシアヌレート、メチルイソシアヌレート等が挙げられる。
リン化合物としては、芳香族リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類、ハロゲンリン酸エステル類、ハロゲン縮合リン酸エステル類、赤リン等が挙げられる。芳香族リン酸エステル類としては、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(t−ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(i−プロピル化フェニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等が挙げられる。芳香族縮合リン酸エステル類としては、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。ハロゲンリン酸エステル類としては、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート等が挙げられる。ハロゲン縮合リン酸エステル類としては、2,2−ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2−クロロエチル)ホスフェート)、ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェート等が挙げられる。有機ハロゲン化合物としては、テトラブロモビスフェノールA(TBA)、デカブロモジフェニルオキサイド(DBDPO)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、トリブロモフェノール(TBP)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、TBAポリカーボネートオリゴマー、臭素化ポリスチレン、TBAエポキシオリゴマー、エチレンビスペンタブロモジフェニル等の臭素系化合物、塩素化パラフィン等の塩素系化合物等が挙げられる。
α−アミノ酸類は、α−アミノ酸又はα−アミノ酸塩を含む。α−アミノ酸は、分子内にアミノ基(−NH)とカルボキシル基(−COOH)とを有し、カルボキシル基及びアミノ基が同一の炭素原子に結合しているアミノ酸である。α−アミノ酸としては、例えばアラニン、アルギニン、グリシン、システイン、セリン、チロシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、トリプトファン、メチオニン、トレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リシン、及びフェニルアラニンが挙げられる。α−アミノ酸塩は、例えばα−アミノ酸のカリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。
<層間化合物>
層間化合物を構成する無機層状物質の層間には、非イオン化状態で挿入された有機化合物が介在している。
有機化合物の層間挿入量は、好ましくは1ミリグラム当量/100g以上、より好ましくは5ミリグラム当量/100g以上、さらに好ましくは10ミリグラム当量/100g以上である。有機化合物の層間挿入量が1ミリグラム当量/100g未満の場合、イオン交換性無機物質の層間が十分に改質されないおそれがある。一方、有機化合物の層間挿入量の上限は特に限定されないが、例えば200ミリグラム当量/100g以下である。
無機層状物質では、イオン交換性無機物質が本来有している特性を確保するという観点から、イオン交換性無機物質の有する交換性のイオン量が保持されていることが好ましい。そして、原料として用いたイオン交換性無機物質の有するイオン交換容量と、層間化合物を構成する無機層状物質の有するイオン交換容量との差は、例えば10ミリグラム当量/100g未満であることが好適である。
イオン交換性無機物質の層間に対する有機化合物の挿入には、イオン交換性無機物質と固体状態の有機化合物とが接触した状態で、そのイオン交換性無機物質及び有機化合物に対して、例えば剪断力や衝撃力を加えることで製造することができる。すなわち、イオン交換性無機物質の層間に存在するイオンのイオン交換を利用せずに、イオン交換性無機物質及び有機化合物に外力を加えることで、イオン交換性無機物質の層間に有機化合物を挿入する。このようにして得られた層間化合物では、無機層状物質の層間において、イオン交換性無機物質の有する交換性のイオン量が保持されている。こうした有機化合物の挿入には、ボールミル、ハンマーミル、ジェットミル、ニーダー等が好適に使用される。また、イオン交換性無機物質を予め電子供与性の有機溶媒に接触させる処理を実施することにより、イオン交換性無機物質の層間に有機化合物が挿入され易くなり、有機化合物の層間挿入量を高めることが可能である。すなわち、電子供与性の有機溶媒によって、イオン交換性無機物質の外表面や層間内面が活性化され、イオン交換性無機物質と、層間に挿入する有機化合物との親和性が高められると推測される。こうした電子供与性の有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフランが好適である。
イオン交換性無機物質に対する有機化合物の配合量は、イオン交換性無機物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.1〜70質量部、さらに好ましくは0.1〜50質量部である。この配合量が0.1質量部未満の場合、有機化合物の層間挿入量を十分に確保することが困難となるおそれがある。一方、100質量部を超えて配合した場合、層間挿入量の向上率の低下を招くため、不経済となるおそれがある。
<複合材料>
複合材料は、上述した層間化合物と高分子材料とを複合化した材料である。高分子材料は複合材料の母材として含有され、高分子材料は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴム類に分類される。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン・アクリロニトリル系樹脂の他、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、各種ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、非晶性ポリアミド、ポリメタクリルイミド等が挙げられる。スチレン・アクリロニトリル系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
ゴム類としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
これらの高分子材料は、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせたポリマーアロイやブロック共重合体として使用してもよい。
複合材料中における層間化合物の配合量は、高分子材料100質量部に対して、好ましくは0.1〜200質量部、より好ましくは0.5〜100質量部、さらに好ましくは1〜60質量部である。この配合量が0.1質量部未満の場合、複合材料の物性が顕著に向上され難くなるおそれがある。一方、200質量部を超えて配合した場合、複合材料の成形性が十分に得られないおそれがある。
この複合材料には、層間化合物以外の成分として充填剤、難燃剤、腐食防止剤、着色剤、制電剤、湿潤剤等を必要に応じて含有させることもできる。
高分子材料と層間化合物との複合化は、例えば高分子材料に層間化合物を配合し、高分子材料と層間化合物とを混合することによって行うことができる。また例えば、単量体に層間化合物を配合し、その単量体を重合することによって行うこともできる。なお、複合材料は、高分子材料と層間化合物とを複合化したマスターバッチとして構成し、そのマスターバッチを高分子材料で希釈して使用してもよい。
高分子材料と層間化合物とを複合化する際には、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、グレンミル、ニーダー等の公知の混合機の他に、ディゾルバー、各種押出機を使用することが可能である。また、複合化は、必要に応じて加熱して行うことができる。
こうした複合化では、層間化合物の一部又は全体が層間剥離することで、層間化合物の一部又は全体が微粒子となり、こうした微粒子が高分子材料中にナノオーダーレベルで分散(ナノ分散)する。このとき、本実施形態の層間化合物の層間には、交換性のイオンが存在するとともに、有機化合物が非イオン化状態で挿入されている。そして、層間化合物を構成する無機層状物質において、イオン交換性無機物質の有する交換性のイオン量が保持されている。このため、層間化合物が層間剥離し易くなるとともにその層間剥離によって形成される微粒子の分散性が改善されたり、ナノ分散した微粒子と高分子材料との界面状態が改質されたりすると推測される。
このようにして得られた複合材料は、各種成形品として例えば電気・電子分野、自動車分野、建築分野等において使用することができる。この複合材料から成形された成形品では、優れた機械的物性が発揮される。
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) この実施形態の層間化合物の層間には、交換性のイオンが存在するとともに有機化合物が非イオン化状態で挿入されている。すなわち、この層間化合物を構成する無機層状物質の層間には、交換性のイオンと非イオン化状態で挿入された有機化合物とが共存している。このため、層間化合物が層間剥離し易くなるとともにその層間剥離によって形成される微粒子の分散性が改善されたり、ナノ分散した微粒子と高分子材料との界面状態が改質されたりすると推測される。よって、この層間化合物と高分子材料と複合化することによって得られる複合材料の物性を高めることができる。
(2) 層間化合物を構成する無機層状物質では、イオン交換性無機物質の有する交換性のイオン量が保持されていることが好ましい。この場合、原料として用いたイオン交換性無機物質が本来有している特性を確保することができる。そして、イオン交換性無機物質の有するイオン交換容量と、無機層状物質の有するイオン交換容量との差は、10ミリグラム当量/100g未満であることが好適である。
(3) イオン交換性無機物質の有するイオン交換容量は、25〜195ミリグラム当量/100gであることが好ましい。この層間化合物では、層間剥離が生じ易くなるため、高分子材料と層間化合物とを複合化してなる複合材料の物性をより高めることができる。
(4) 本実施形態の複合材料では、上述の層間化合物と高分子材料とを複合化して構成されている。こうした複合材料では、層間化合物による複合化に基づいて高められた物性を発揮することができる。従って、この複合材料から成形された成形品では例えば機械的物性等を高めることができるため、この複合材料の利用価値は極めて高い。
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記イオン交換性無機物質が、膨潤性雲母(膨潤性マイカ)、スメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト族粘土鉱物、ゼオライト、セピオライト、及びハイドロタルサイト類から選ばれる少なくとも一種である層間化合物。
・ 前記有機化合物が、高分子材料用の添加剤である層間化合物。
・ 前記有機化合物が、トリアジン系化合物又はリン化合物である層間化合物。
・ 前記無機層状物質に対する有機化合物の層間挿入量が1ミリグラム当量/100g以上である層間化合物。
・ 前記高分子材料が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴム類から選ばれる少なくとも一種である複合材料。
・ 前記高分子材料100質量部に対して、前記層間化合物が0.1〜200質量部配合されてなる複合材料。
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
<A.層間化合物>
(実施例1−A)
イオン交換性無機物質として合成マイカ[Na型テトラシリシックフッ素雲母:ソマシフ(商品名)ME−100、コープケミカル(株)製]100質量部に対して、テトラヒドロフラン(THF、試薬一級、和光純薬工業(株)製)10質量部配合し、ボールミルを用いて室温で45分間合成マイカを粉砕した。次に、有機化合物としてのメラミンを150ミリグラム当量数/100g配合し、ボールミルを用いて合成マイカとメラミンとを室温で2時間共粉砕した。これにより、合成マイカの層間に対してメラミンを非イオン化状態で挿入することで、層間化合物を調製した。
(比較例1−A)
イオン交換性無機物質として合成マイカ[Na型テトラシリシックフッ素雲母:ソマシフ(商品名)ME−100、コープケミカル(株)製]1kgを20Lのイオン交換水中に投入し、合成マイカを無限膨潤させて、5%マイカ懸濁液を調製した。一方、イオン交換水2.5Lに対して濃塩酸91.7mLを溶解した酸溶液に、メラミン138.8gを溶解させることにより、メラミン塩酸溶液を調製した。このメラミン塩酸溶液を、60℃に保温したマイカ懸濁液に対して滴下し、2.5時間攪拌することにより、合成マイカの層間に存在する交換性のイオンと、メラミンの塩酸塩とをイオン交換させた。その後、上澄みを除去するとともにろ過することにより、湿潤状態の層間化合物を得た。得られた層間化合物を80℃で20時間乾燥した後、ブレンダーミキサーを用いて粉砕することで、層間化合物を得た。
(イオン交換容量の測定)
原料として用いた合成マイカ及び各例の層間化合物について、イオン交換容量の測定を以下の手順で行った。その測定結果を表1に示す。
(手順1)試料2gを純水100mLに分散させることにより、分散液を調製する。
(手順2)その分散液に2Mの酢酸カリウム溶液100mLを添加し、1時間振とうする。次いで、遠心分離器を用いてその分散液を固液分離し、上澄みを除去するとともに、固体を採取する。
(手順3)得られた固体に1Mの酢酸カリウム溶液100mLを添加し、1時間振とうした後、再度遠心分離器を用いて固液分離を行う。
(手順4)上記手順3を、さらに1回行う。
(手順5)得られた固体に純水100mLを添加し、1時間振とうした後、遠心分離器を用いて固液分離を行う。
(手順6)上記手順5をさらに2回繰り返す。
(手順7)得られた固体を70℃で乾燥した後、粉砕する。
(手順8)蛍光X線装置を用いて、固体中のカリウム(K)を定量する。
(手順9)カリウムをケイ素(Si)4モル当たりのモル数に換算する。試料の式量を390として、そのカリウムのモル数からミリグラム当量(meq)/100gを算出する。
(層間挿入量の測定)
実施例1−A及び比較例1−Aの層間化合物について、有機化合物の層間挿入量を以下の手順で測定した。その測定結果を表1に示す。
層間化合物について、THFを洗浄液として用いて洗浄を行った。まず、層状粘土鉱物100質量部に対してTHF100mlの割合で使用する洗浄を、3回繰り返し、予備洗浄とした。次いで、層間化合物をアスピレータで吸引しながら層状粘土鉱物100質量部に対してTHF100mlの割合で使用する洗浄を3回繰り返し、本洗浄とした。その後、層間化合物を真空乾燥し、層間挿入量測定用の試料とした。その試料を熱重量測定装置(SSC5200、セイコーインスツルメンツ(株)製)にて、室温から10℃/分の昇温速度にて600℃まで加熱した際の重量変化を測定し、有機化合物の層間挿入量を算出した。
Figure 2007297489
実施例1−Aの層間化合物では、合成マイカが有しているイオン交換容量と、原料として用いた合成マイカのイオン交換容量とは同程度である。すなわち、実施例1−Aの層間化合物では、原料として用いた合成マイカの有するイオン交換容量が保持されている。これに対して、比較例1−Aの層間化合物では、原料として用いた合成マイカの有するイオン交換容量は保持されていない。すなわち比較例1−Aの層間化合物は、イオン化したメラミン塩酸塩と合成マイカの層間に存在する交換性イオンとが交換されて構成されているため、原料として用いた合成マイカのイオン交換容量は保持されていない。
<B.複合材料>
(実施例1−B)
高分子材料としてポリアミド6(1911FB、宇部興産(株)製、以下「PA6」という。)97質量部に対して、実施例1−Aの層間化合物3質量部を配合し、二軸押出機(TEX30α、(株)日本製鋼所製)を用いて樹脂温度250℃、スクリュー回転数50回転/分の条件で混練することによって複合材料を調製した。
(比較例1−B)
PA6に配合する層間化合物として、比較例1−Aの層間化合物を使用した以外は、実施例1−Bと同様にして複合材料を調製した。
(比較例2)
PA6(1911FB、宇部興産(株)製)単体を比較例2とした。
(物性の測定)
各例の複合材料の曲げ弾性率、及び比較例2の材料の曲げ弾性率をJIS K 7171−1994に準拠して測定した。その測定結果を表2に示す。
Figure 2007297489
表2の結果から明らかなように、実施例1−Bの曲げ弾性率は、比較例1−Bの曲げ弾性率よりも高い値を示していることから、実施例1−Bの複合材料では、実施例1−Aの層間化合物による複合化に基づいて物性が高められることがわかる。

Claims (5)

  1. 無機層状物質の層間に有機化合物が挿入されている層間化合物であって、
    交換性のイオンが層間に存在するイオン交換性無機物質の層間に、前記有機化合物を非イオン化状態で挿入してなることを特徴とする層間化合物。
  2. 前記無機層状物質において前記イオン交換性無機物質の有する前記交換性のイオン量が保持されている請求項1に記載の層間化合物。
  3. 前記イオン交換性無機物質の有するイオン交換容量と、前記無機層状物質の有するイオン交換容量との差が10ミリグラム当量/100g未満である請求項2に記載の層間化合物。
  4. 前記イオン交換性無機物質の有するイオン交換容量が、25〜195ミリグラム当量/100gである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の層間化合物。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の層間化合物と、高分子材料とを複合化したことを特徴とする複合材料。
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