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JP2007287613A - 有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法 Download PDF

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JP2007287613A
JP2007287613A JP2006116527A JP2006116527A JP2007287613A JP 2007287613 A JP2007287613 A JP 2007287613A JP 2006116527 A JP2006116527 A JP 2006116527A JP 2006116527 A JP2006116527 A JP 2006116527A JP 2007287613 A JP2007287613 A JP 2007287613A
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Tetsuo Osono
哲郎 大薗
Akio Nakamura
彰男 中村
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Abstract

【課題】
保護膜として吸湿し酸化しやすい易酸化性窒化シリコン膜と、緻密で、防湿性の高い防湿性窒化シリコン膜をCVD法によって製膜することにより、容易に吸湿性と防湿性を持ち合わせた保護膜を形成でき、それを用いた薄型で経年変化のない優れた有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
少なくとも基材と基材上に設けられた第一電極と有機発光層と第二電極と保護膜と保護板と、を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子において、上記保護膜は少なくとも防湿性窒化シリコン膜と易酸化性窒化シリコン膜からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ディスプレイやその他所定のパターン等の発光表示などに用いられる有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法に関するものである。
有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも陽極と有機発光層と陰極を含み、電極間に電界を印加するにより該有機発光層に電子と正孔を注入し発光させる素子であり、自発光型素子であることから、液晶ディスプレイのようにバックライトを用いなくても表示が可能である。また、構造が単純であるため薄く、軽量な素子を作製することができ、現在活発に研究が行われている。
有機エレクトロルミネッセンス素子の代表的な構成は、ガラス等からなる透明な基板上に、ITO(Indium−Tin−Oxide)のような透明電極を所望の形状にパターニングし、その上部に有機発光層を形成し、さらにその上に陰極を形成したものである。この陰極や有機発光層を構成する有機材料は水または酸素に対して非常に反応しやすく、その反応が起きた結果ダークスポットと呼ばれる非発光点が発生し、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命を悪化させるという問題があった。
そのため一般的には、特許文献1にあるように、陰極の上部を覆うように厚めのガラス中央部を凹状に加工したガラス(以下ザグリガラス)をエポキシ樹脂などの接着剤で接着することにより、水蒸気や酸素などを遮断する方法が行われている。しかし、このザグリガラスを用いた手法は、有機エレクトロルミネッセンス素子が本来持っている薄型という特長を十分に生かすことができない。
また、情報表示端末として、より大きく、より画素数が多くさらには、応答速度が速く、消費電力の小さいディスプレイが望まれている。これらの問題に対応するためには、有機EL素子を薄膜トランジスタ(TFT)を用いた、いわゆるアクティブマトリクス駆動とし、TFT基板とは反対側から光を取り出す、いわゆるトップエミッション構造が必須であると言われている。このトップエミッション構造を実現するためには上述したような金属缶やざぐりガラスによる封止では、上面から光を取り出すのは構造上不可能であった。
そこで、特許文献2にあるように電極上を透明なバリア膜付き高分子フィルムで被覆する方法が提案されているが、高分子フィルムで被覆する場合は、高分子フィルム自身の透湿性を高めるために薄膜を形成する必要があることから工程数の増加につながり、また張り合わせる際に気泡を含んでしまい、気泡の内部にある活性気体により素子がダメージを受けることがあった。
このことから特許文献3にあるように保護板として平板ガラスに接着剤を塗布し、それを陰極上に張り合わせることによって素子を封止する構造が提案されている。この構造では素子面は硬いガラスの板で覆われているため、機械的強度に優れ、また作製も容易であるなど優れた点が多い。しかし、接着剤自体の透湿性の高さから、素子の封止性能においては従来のキャップ封止に劣ることが多く、特許文献4にあるように接着剤中に乾燥剤を混ぜたりして防湿性を高めているが根本的な解決には至っていない。
この対策として、接着剤を設ける前に保護膜を形成する構造も提案されている。保護膜としては透明性とバリア性の兼ね合いからAl23、SiO2,Si34などの無機物が
多く用いられている。しかし、保護膜の封止能力が十分でなかった場合には結局素子が劣化してしまうなど有機エレクトロルミネッセンス素子の保護層としてはまだ不十分であった。
特許文献は以下の通り。
特開平05−109482号公報 特開2004−79292号公報 特開2002−216950号公報 特開2003−303680号公報
以上の様に、従来提案されてきた平板ガラスを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の保護層は、有機エレクトロルミネッセンス素子の封止に対する要求に十分こたえるものではなかった。
そこで本発明では、容易に吸湿性と防湿性を持ち合わせた保護膜を形成でき、また、薄型で経年変化のない優れた有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明では、保護膜として吸湿し酸化しやすい易酸化性窒化シリコン膜と、緻密で、防湿性の高い防湿性窒化シリコン膜をCVD法によって製膜することにより、上記課題を解決する。すなわち、
本発明の請求項1に係わる有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも基材と基材上に設けられた第一電極と有機発光層と第二電極と保護膜と保護板と、を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、上記保護膜は少なくとも易酸化性窒化シリコン膜と防湿性窒化シリコン膜からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子は基材側から防湿性窒化シリコン膜、易酸化性窒化シリコン膜、の順に少なくとも1層以上積層されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子は枠状にパターニングされた易酸化性窒化シリコン膜と、その枠内部および有機エレクトロルミネッセンス素子を被覆するように形成された防湿性窒化シリコン膜からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子が、前記基板と反対側から有機発光層より放出された光を取り出すことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子保護膜が、プラズマCVDによって薄膜形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造法である。
以上のように本発明によれば、基板上面からも下面からも表示光を取り出すことができ、長期的に安定して発光することができる有機エレクトロルミネッセンス素子を簡便に作
製することができる。
本発明の有機EL素子の最良の形態の一例について説明する。
有機EL素子は、有機発光層3を含む発光層を、陽極2と陰極4で挟んだ単純な基本構造からなる。この電極間に電圧を印加し、一方の電極から注入されるホールと、他方の電極から注入される電子とが発光層内で再結合する際に生じる光を画像表示や光源として用いる。
本発明の有機EL素子の一例として、基材1/陽極層2/有機発光層3/陰極層4/保護膜5/保護板6をこの順に積層した場合を、図に基づいて説明するが、本発明はこの構成に限定されたものではない。
ここで、本実施の形態において、基材1としては透光性と絶縁性を有する基板であれば如何なる基板も使用することができる。例えば、ガラスや石英、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシート、または、これらプラスチックフィルムやシートに酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物や、弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等の金属弗化物、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコン膜樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子樹脂膜を単層もしくは積層させた透光性基材や、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、シート、板や、前記プラスチックフィルムやシートにアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属膜を積層させた非透光性基材などを用いることができる。
また、これら基材は、必要に応じて、薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、駆動用基板として用いても良い。TFTの材料としては、ポリチオフェンやポリアニリン、銅フタロシアニンやペリレン誘導体等の有機TFTを用いてもよく、アモルファスシリコン膜やポリシリコン膜TFTを用いてもよい。
また、これらの基材は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基材内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基材上に積層される材料におうじて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施すことが好ましい。また、これら基材には、必要に応じてカラーフィルター層や光散乱層、光偏向層などを設けてもよい。
始めに、基材1の上に第一電極として陽極2を製膜し、必要に応じてパターニングをおこなう。ここで、陽極2の材料としては、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物や、金、白金などの金属材料や、これら金属酸化物や金属材料の微粒子をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などに分散した微粒子分散膜を、単層もしくは積層したものをいずれも使用することができる。また、必要に応じて、陽極2の配線抵抗を低くするために、銅やアルミニウムなどの金属材料を補助電極として併設してもよい。陽極2の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式製膜法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式製膜法などを用いることができる。陽極2のパターニング方法としては、材料や製膜方法に応じて、マスク蒸着法、フォトリソグラフィー法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などの既存のパターニング法を用いることができる。
次に、有機発光層3を形成する(図1)。本発明における有機発光層3としては、発光物質を含む単層膜、あるいは多層膜で形成することができる。多層膜で形成する場合の構成例としては、正孔輸送層、電子輸送性発光層または正孔輸送性発光層、電子輸送層からなる2層構成や正孔輸送層、発光層、電子輸送層からなる3層構成、さらには、必要に応じて正孔(電子)注入機能と正孔(電子)輸送機能を分けたり、正孔(電子)の輸送をブロックする層などを挿入することにより、さらに多層形成することがより好ましい。
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料の例としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
発光層を構成する発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス〔8−(パラ−トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料や、ポリフルオレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリスピロなどの高分子材料や、これら高分子材料に前記低分子材料の分散または共重合した材料や、その他既存の発光材料を用いることができる。
電子輸送層を構成する電子輸送材料の例としては、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。
有機発光層3の膜厚は、単層または積層により形成する場合においても1000nm以下であり、好ましくは50〜150nmである。特に、高分子EL素子の正孔輸送材料は、基材や陽極層の表面突起を覆う効果が大きく、50〜100nm程度厚い膜を製膜することがより好ましい。
有機発光層3を構成する各層の形成方法としては、材料に応じて、真空蒸着法や、スピンコート、スプレーコート、フレキソ、グラビア、マイクログラビア、凹版オフセットなどのコーティング法、印刷法やインクジェット法などを用いることができる。高分子有機
発光層を溶液化する際には、形成方法に応じて、溶剤の蒸気圧、固形分比、粘度などを制御することが好ましい。溶剤としては、水、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの単独溶媒でも、混合溶媒でも良い。また、塗工性向上のために、必要に応じて界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤などの添加剤を適量混合することがより好ましい。塗布液の乾燥方法としては、EL特性に支障のない程度に溶剤を取り除ければ良く、加熱しても、減圧しても、加熱減圧しても良い。
次に、第二電極として陰極4を形成する(図1(c))。陰極4の材料としては、有機発光層3への電子注入効率の高い物質を用いる。具体的には、Mg,Al,Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li,LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いてもよい。または、電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数が低いLi,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb等の金属1種以上と、安定なAg,Al,Cu等の金属元素との合金系を用いてもよい。具体的にはMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。陰極4を透光性電極として利用する場合には、仕事関数が低いLi,Caを薄く設けた後に、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物を積層してもよく、前記有機発光層3に、仕事関数が低いLi,Caなどの金属を少量ドーピングして、ITOなどの金属酸化物を積層してもよい。
陰極4の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。陰極の厚さに特に制限はないが、10nm〜1000nm程度が望ましい。また、陰極4を透光性電極層として利用する場合、CaやLiなどの金属材料を用いる場合の膜厚は0.1〜10nm程度が望ましい。
こうして形成した陰極4上に保護層7を形成する。保護層7とは、保護膜5と保護板6からなり、外部の水分、酸素、その他機械的ダメージなどから陰極金属および素子を保護し劣化を防止する役割を果たす。
保護膜5としては、請求項1に示したとおり易酸化性窒化シリコン膜5bと防湿性窒化シリコン膜5aを用いる。保護膜5の主構製膜として、窒化シリコン膜を用いることにより高いバリア性と透明性を両立することができる。これによって封止基板6側から光を取り出すことができる。また、製膜手法としてはスパッタリング、光CVD、プラズマCVDなどがあるが、本用途においてはプラズマCVDが最も望ましい。プラズマCVD法では製膜種が発生する反応はすべて気相中で行われるため、基板表面で反応を起こす必要がなく、本用途に求められるような低温製膜に最も適している製膜法であり、さらには、使用するガスの流量、基板温度、製膜時のガス圧力、投入電力などを制御することによりさまざまな条件で薄膜が形成できる。本発明においても、投入する原料ガスの流量や基板の温度を制御することによって、易酸化性窒化シリコン膜と防湿性窒化シリコン膜を自由に作ることができる。
ここで、具体的に易酸化性窒化シリコン膜5bとは、製膜後に85℃90%RH下のような高温高湿下で、24時間程度の短時間で吸湿酸化し窒化シリコン膜から窒化酸化シリコン膜へと変化するような膜である。易酸化性窒化シリコン膜はCVD製膜時の条件を変えることによって作製可能である。具体的にはCVD法としてプラズマCVD法をもちい、原料ガスとしてシラン、アンモニア、窒素、水素を用いた場合には、水素の流量を減ら
すことにより易酸化性窒化シリコン膜となる。また、製膜時における基板温度を室温から100℃以下にすることによっても易酸化性窒化シリコン膜となる。
さらに、防湿性窒化シリコン膜5aとは製膜後85℃90%RHのような高温高湿下において1000時間以上変化なく、また水蒸気透過率が10-2g/m2/day以下であるような膜である。このような膜は、製膜条件の調整を行うことにより得ることができる。例えばプラズマCVD法ではシラン、アンモニア、窒素などで窒化シリコン膜を作製する従来の系に対し、水素を添加することにより防湿性が向上する。また、有機発光材料との兼ねあいもあるが、作成時の温度を高くすることによっても得ることが可能となる。
また、保護膜5は、基材1側から防湿性窒化シリコン膜5a、易酸化性窒化シリコン膜5bの順に積層されていることが望ましい。積層することによって、接着剤側から侵入してきた水分は易酸化性窒化シリコン膜5bにおいて吸収され、吸収し切れなかった水分は、防湿層によって浸入が遮断され素子には到達しない、また、積層は何回繰り返してもよいが、2回程度積層すれば保護膜として充分な性能を発揮する。
また、請求項3に記載した通り、有機発光層の周囲を取り囲むよう枠状にパターニングされた易酸化性窒化シリコン膜5bと其の上部および有機エレクトロルミネッセンス素子を被覆するように陰極上に形成された防湿性窒化シリコン膜5aの構造をとる事もまた望ましい。枠状に配置された易酸化性窒化シリコン膜5bによって接着剤端面より進入して来た水分は吸収され、さらには其の内側および上面に形成されている防湿性窒化シリコン膜5aによって水分が素子に到達するのを防ぐことが出来る。
さらに請求項2に記載の保護膜5の厚さは、特に限定するものではないが、防湿性窒化シリコン膜5aで100−500nm、易酸化性窒化シリコン膜5bで50−300nm程度が望ましい。こうする事によって防湿性窒化シリコン膜に於いては、膜自身のピンホールなどの欠陥を補填することが可能となり酸素や水分の浸入に対するバリア性が大きく向上する。また、易酸化性窒化シリコン膜に於いては吸湿酸化前後の体積変化の影響を小さくするために上記の膜厚が望ましい。
請求項3に記載の場合においては枠状に配置する易酸化性窒化シリコン膜5bの膜厚は1〜5μm程度が望ましい。この膜厚にすることによって端面から侵入してきた水分を捕獲することができる。
次に上述した保護膜5の上に保護板7を張り合わせる。保護板7を張り合わせることによって、さらにバリア性が向上するだけでなく、上述した保護膜5のみでは持ち得ない機械的なダメージに対する耐性を持つことができる。保護板としては、ガラス、防湿処理を施したプラスチック板等が挙げられるが、防湿性の点からガラス基板が好ましい。
保護板7を張り合わせる際には、保護板7側に一様に接着剤を塗布してもよいし、周囲を囲むようにして塗布してもよい。またシート状に形成した接着層を熱転写する方法をとってもよい。接着層の材料としてはエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン膜樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの酸変性物からなる熱可塑性接着性樹脂などを単層もしくは積層して用いることができる。特に、耐湿性、耐水性に優れ、硬化時の収縮が少ないエポキシ系熱硬化型接着性樹脂を用いることが望ましい。また、接着層の光透過を妨げない程度に接着層内部の含有水分を除去するために、酸化バリウムや酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入したり、接着層の厚みをコントロールするために数%程度の無機フィラーを混入してもよい。
こうして、作製した接着層付保護板で張り合わせ、接着剤層の硬化の処理を行う。この一連の保護層形成プロセスは窒素雰囲気下で行うことが望ましいが、保護膜5が作製された後であれば短時間ならば大気下においても大きな影響はない。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を説明する。本実施例においては、ガラス基材1上にボトムエミッション素子を作製した例を取り上げるが、本発明はこれに限定するものではなく、基材としてTFTが形成されたものでもよく、封止側から光を取り出すトップエミッション素子も作製することもできる。
まず、はじめに、ITO膜2のついたガラス基材1上に、有機発光層3としては、高分子正孔輸送層としてポリチオフェン誘導体(50nm)と、高分子発光層としてポリフルオレン(80nm)をこの順に製膜した。ポリチオフェンは水とアルコール分散インク、ポリフルオレンはトルエン等の芳香族溶媒に溶かしたインクを、それぞれ凸版印刷法を用いて製膜した。
次に、陰極層4として、蒸着法を用いてCa(10nm)とAl(100nm)を積層製膜した。其の後、平衡平板型プラズマCVD装置を用いて保護膜5を形成した。まず、陰極まで作製した基板を真空槽の内部に投入し、内部圧力が10-2Paになるまで減圧した。この後基板を、基板ヒーターを用いて130℃まで加熱し、原料ガスとしてシラン20standard cc/min(以下sccmと称する)、窒素500sccm、水素200sccmを導入し、圧力を75Paとした。圧力が75Paに到達後速やかにRF電源に300Wの電力を投入し製膜を行い300nm堆積した。こうして作製された層は防湿性窒化シリコン膜5aとなる。次に有機EL素子を真空槽に入れたまま基板の温度を80℃まで下げ、原料ガスとしてシラン30sccm、窒素500sccm、水素50sccmを導入し内部圧力を75Paとした後速やかにRF電源に300Wの電力を投入し製膜を行い全膜厚は110nmとなった。こうして作られた層は易酸化性窒化シリコン膜5bとなる。
以上の工程を2回繰り返し合計4層構造として保護膜5を形成した。
上記保護膜5の上にダイコーターによって熱硬化性樹脂を全面に塗布したガラス基板を、100℃の温度をかけながら熱ロールラミネーターを用いて素子基板と張り合わせた。張り合わせた後に、さらに100℃で1時間硬化した。
こうして作製した素子の耐湿性に付いて評価するために85℃90%RHの環境下に置いて試験を行った。その結果本構造で作製した素子は3000h経過後に於いても発光面積の縮小が無く、ガラスキャップに乾燥剤を張りつけ封止した場合と同様の封止能力を確認した。
実施例1の保護膜5として枠状に形成した易酸化性窒化シリコン膜5bと、その枠を被覆するように形成された防湿性窒化シリコン膜5aを用いた。まず陰極まで形成された基板の有機発光層が形成された部分をアルミナ製マスクでマスキングした後真空槽に投入し、内部圧力が10-2Paになるまで減圧した。この後基板温度を80℃とし、原料ガスとしてシラン30sccm、窒素500sccm、水素50sccmを導入し、圧力を75Paとした。圧力が75Paに到達後速やかに高周波電力300Wを投入し製膜を行った。端部から侵入してくる水分を効果的に捕獲できるように保護膜5の膜厚3μmとした。こうして作製された層は易酸化性窒化シリコン膜5bとなる。次に基板からマスクを取り除いた後、基板の温度を130℃に加熱し、原料ガスとしてシラン20sccm、窒素5
00sccm、水素200sccmを導入し圧力を75Paとした後速やかにRF電源に300Wの電力を投入し、製膜した。こうして作られた層は防湿性窒化シリコン膜5aとなる。
実施例1と同様に、上記保護膜5の上にダイコーターによって熱硬化性樹脂を全面に塗布したガラス基板を、100℃の温度をかけながら熱ロールラミネーターを用いて素子基板と張り合わせた。張り合わせた後に、さらに100℃で1時間硬化した。
こうして作製した素子の耐湿性に付いて評価するために85℃90%RHの環境下に置いて試験を行った。その結果、本構造においても作製した素子は3000h経過後に於いても発光面積の縮小が無く、ガラスキャップに乾燥剤を張りつけ封止した場合と同様の封止能力を確認した。
実施例1で用いた保護膜5をガラス基板上に150nmの厚さで形成した。形成した保護膜の透過率を分光光度計によって測定したところ可視光透過率が平均で90%以上であり、RGBでそれぞれR(700nm):95%,G(546nm):94%,B(436nm):87%であった。このことから保護膜5はほぼ透明であり、この保護膜側から光を減衰させることなく取り出すことが可能となる。
<比較例1>
実施例1で用いた保護膜5として実施例1で用いた防湿性窒化シリコン膜5aを用いた。保護膜5の膜厚は800nmとし、同様にガラス基板を貼りつけ封止を行った。その結果実施例1と同様の環境である85℃90%RHに保管したところ800hより発光面積の減少が始まり、1000hで初期発光面積に対して6%、3000hでは60%の縮小が見られた。
<比較例2>
実施例1で用いた保護膜5として実施例1で用いた易酸化性窒化シリコン膜5bのみを成膜して用いた。保護膜5の膜厚は800nmとし、同様にガラス基板を貼りつけ封止を行った。その結果実施例1と同様の環境である85℃90%RHに保管したところ800hより発光面積の減少が始まり、1000hで初期発光面積に対して25%、3000hでは点灯しなかった。
<比較例3>
実施例1で用いた基板に保護膜5を作製せずに陰極上に直接ガラス基板を貼りつけ封止を行った。その結果実施例1,2と同様の環境である85℃90%RHに保管したところ800hより発光面積の減少が始まり、1000hで初期発光面積に対して25%縮小した、3000hでは点灯しなかった。
実施例1で有機発光層まで作製した素子上に陰極としてITO膜を、スパッタリングを用いて100nm形成した。その上部に実施例1と同様の保護膜5を形成した。その結果、基板下部より発光をした場合と、上部より発光した場合の輝度を比較した結果基板下部から発光した場合の輝度を1としたとき、基板下部から取り出し時の輝度は0.95とほぼ変化ないことが確認できた。
本発明の保護膜が基材側から防湿性窒化シリコン膜、易酸化性窒化シリコン膜の順に積層されている例に係わる有機薄膜エレクトロルミネッセンス素子の実施例を示す概念断面図である。 本発明の易酸化性窒化シリコン膜が枠状にパターニングされた例に係わる有機薄膜エレクトロルミネッセンス素子の実施例を示す概念断面図である。
符号の説明
1・・・基板
2・・・陽極
3・・・有機発光層
4・・・陰極
5・・・保護膜
5a・・・防湿性窒化シリコン膜
5b・・・易酸化性窒化シリコン膜
6・・・保護板
7・・・保護板
8・・・有機エレクトロルミネッセンス素子

Claims (5)

  1. 少なくとも基材と基材上に設けられた第一電極と有機発光層と第二電極と保護膜と保護板と、を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子において、上記保護膜は少なくとも防湿性窒化シリコン膜と易酸化性窒化シリコン膜からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 請求項1に記載の保護膜は基材側から防湿性窒化シリコン膜、易酸化性窒化シリコン膜の順に少なくとも1層以上積層されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 請求項1に記載の保護膜は、枠状にパターニングされた易酸化性窒化シリコン膜と、その枠および有機エレクトロルミネッセンス素子を被覆するように形成された防湿性窒化シリコン膜からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 請求項1〜3何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記基板と反対側から有機発光層より放出された光を取り出すことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 請求項1〜4何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子における易酸化性窒化シリコン膜および、防湿性窒化シリコン膜はプラズマCVD法によって形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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