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JP2007283184A - 水素分離薄膜及びその製造方法。 - Google Patents

水素分離薄膜及びその製造方法。 Download PDF

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JP2007283184A JP2006111847A JP2006111847A JP2007283184A JP 2007283184 A JP2007283184 A JP 2007283184A JP 2006111847 A JP2006111847 A JP 2006111847A JP 2006111847 A JP2006111847 A JP 2006111847A JP 2007283184 A JP2007283184 A JP 2007283184A
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Hideo Kameyama
秀雄 亀山
Masato Sone
正人 曽根
Seizo Miyata
清藏 宮田
Takayuki Hirai
嵩之 平井
Mohammed Mizanur Rahman
ラーマン・モハッマド・ミザヌル
Masahiro Seshimo
雅博 瀬下
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Tokyo University of Agriculture
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Tokyo University of Agriculture and Technology NUC
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Abstract

【課題】ピンホールがなく、パラジウム層の膜厚が0.1μm〜1.0μmであり、かつその水素透過率等の諸物性に優れた超高性能水素分離膜を提供すること。
【解決手段】酸化アルミニウム表面を備えた基体と、前記酸化アルミニウム表面上にパラジウム層を有する水素分離膜であって、前記酸化アルミニウム表面は、アルミニウム層を有する基体のアルミニウム表面を除きマスキングし、前記基体のアルミニウム層の表面を陽極酸化し、これより形成される酸化アルミニウム表面を熱水和処理することによって形成されたことを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、水素分離薄膜に関する。より詳しくは、超微細な多孔質構造を有する酸化アルミニウム層上に超薄膜パラジウム層を備えた水素分離薄膜に関するものである。さらに、本発明は、上記水素分離薄膜の製造方法及び上記水素分離薄膜を使用した水素ガスの分離方法に関する。
パラジウム等に代表される貴金属の薄膜は、水素の選択透過性を有しており、この性質を利用して、支持体と組み合わせ、水素分離膜として使用されている(例えば、特許文献1)。このような水素分離膜を使用した水素ガスの製造は、水素を溶解する上記貴金属を使用しているため、製造効率に優れている。また、上記水素分離膜は、燃料電池自動車やディーゼルエンジン、ボイラー等に搭載される水素改質器に使用することができ、しかもその水素選択透過性に優れているため水素改質器のコンパクト化も可能である。しかしながら、この水素分離膜は、支持体としてアルミニウムに陽極酸化を施したアルマイトをそのまま使用しているだけであるためパラジウム層の薄膜化が十分ではない。
一方、例えば燃料電池自動車やディーゼルエンジン等に搭載される水素改質器に使用される水素ガスの品質は、きわめて高純度(純度99.999%以上)であり、かつ、一酸化炭素濃度が0.2ppm以下であることが要求されている。したがって、水素ガスの製造において、水素改質器に使用される水素分離膜を超高性能なものとすることが一層強く求められているところである。
ところで、高性能な水素分離膜の製造方法として、超臨界二酸化炭素を使用し、これを電気化学的反応における電解欲として使用することにより(超臨界ナノプレーティング法「SNP法」ともいう)、高硬度かつピンホールレスパラジウム薄膜を製造したことが開示されている(例えば、特許文献2)。上記水素分離薄膜の製造方法は、高い拡散定数を有する超臨界液体物質により、電解浴が均一化され、電極の周辺にイオンが効率良く供給され反応性が高まることを特徴としているものである。しかしながら、この製造方法においては、電気化学反応を施す前に電極等の前処理が必要であるため、金属皮膜形成の工程を緻密に設計しなければならないという不具合があった。
また、水素分離膜を構成する支持体についても研究・開発がなされている。たとえば、特許文献3には、アルミニウムを陽極酸化することによって空隙率が高く、耐食性に優れた多孔質アルミナ皮膜を製造し、触媒反応の効率化を可能にしたことが開示されている(例えば、特許文献3)。
さらに、焼結金属からなる多孔質支持体と、該支持体表面に形成された、該焼結金属の構成元素と固溶体を形成しない金属からなる薄膜、及び該薄膜上に形成されたパラジウムの薄膜からなる水素分離膜が開示されている(例えば、特許文献4)。しかしながら、支持体にはステンレスを採用しているためパラジウム層と支持体を接着させるための薄膜の形成が必須となる。また、この水素分離膜は、基板である焼結金属構成元素のパラジウム薄膜への拡散を防止することができるものであるが、そのパラジウム層の厚みは、2μm〜10μm程度であり、水素分離膜の超高性能化という観点からすれば不十分であると考えられる。このような水素分離薄膜には、ピンホールのないこと及びその水素透過速度の更なる増大が要求される。
一方、上記水素分離膜の製造方法は、焼結金属からなる多孔質支持体の表面に無電解めっき法等を施し拡散防止膜を形成後、無電解めっき等により拡散防止膜上にパラジウム金属膜を形成するものである。しかしながら、上記製造方法においては、その工程が多段階に亘るため製造工程が複雑となってしまうという問題点があった。
なお、本件特許出願人は、先行技術文献として以下のものを開示する。
特開平05−137979号公報 特開2003−321791号公報 特開平08−246190号公報 特開2005−262082号公報
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、ピンホールがなく、パラジウム層の膜厚が0.1μm〜1.0μmであり、かつその水素透過率等の諸物性に優れた超高性能水素分離膜を提供することにある。加えて、本発明の課題は、支持体層と超薄膜パラジウム層との間に、熱水和処理をした緻密な構造を持つ多孔質アルミナ層を備えたことにより、高い強度を有し、かつ耐久性に優れた水素分離膜を提供することにある。また、本発明の課題は、上記超高性能水素分離膜を簡略化された製造工程により、簡易かつ安価に提供することにある。さらに、本発明の課題は、該水素分離膜を使用し、一酸化炭素等の不純物を含有する混合ガス中の水素ガスの分離方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、基体表面のアルミニウムを陽極酸化後、熱水和封孔処理し、基体表面の酸化アルミニウムを超微細な多孔質構造とすることによって、パラジウム層の超薄膜化と、基体との高い密着性を得ることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の事項に関する。
少なくとも、酸化アルミニウム表面を備えた基体と、前記酸化アルミニ
ウム表面上にパラジウム層を有することを特徴とする水素分離膜。
前記酸化アルミニウム表面は、アルミニウム層を有する基体のアルミニ
ウム表面を除きマスキングし、前記基体のアルミニウム層の表面を陽極酸化し、これより形成される酸化アルミニウム表面を熱水和処理することによって形成されることを特徴とする(1)に記載の水素分離膜。
(3)前記パラジウム層の厚みが0.1〜1.0μmであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の水素分離薄膜。
(4)(1)〜(3)いずれかに記載の水素分離膜を備えたことを特徴とする
水素改質器。
(5)アルミニウム層を有する基体のアルミニウム表面を除きマスキングし、前記基体のアルミニウム層の表面を陽極酸化し、これより形成される酸化アルミニウム表面を水和処理した後、前記基体の酸化アルミニウム層にパラジウム層を形成させることを特徴とする水素分離薄膜の製造方法。
(6)前記パラジウム層は、めっき法又は超臨界ナノプレーティング法により形成されるものであることを特徴とする(5)に記載の水素分離薄膜の製造方法。
(7)保護金属基体表面のパラジウム層を形成する部分を除きマスキングし、
前記パラジウム層を形成する部分にパラジウム層を形成し、前記パラジウム層
に酸化アルミニウム層を接着し、前記保護金属、パラジウム層及び酸化アルミ
ニウム層を有する積層体を形成し、次いで前記積層体の保護金属を溶解させる
ことを特徴とする水素分離膜の製造方法。
(8)前記前記パラジウム層は、前記パラジウム層は、めっき法又は超臨界ナノプレーティング法により形成されるものであることを特徴とする(7)に記載の水素分離薄膜の製造方法。
(9)前記保護金属は、銅、銀、ニッケル、鉛、スズから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする(7)又は(8)に記載の水素分離薄膜の製造方法に関する。
本発明によれば、ピンホールが全く存在せず、しかもパラジウム層の膜厚が0.1μm〜1.0μmであり、かつ水素透過率等の諸物性に優れた超高性能水素分離膜を提供することができる。さらに本発明によれば、その水素透過率及び水素分離係数のいずれにおいても良好な値を示し、かつその耐久性にもきわめて優れた超高性能水素分離膜を提供することができる。このように、本発明の水素分離膜は、きわめて優れた水素ガス分離能を有するので、高品質な水素ガスの供給が必要とされる燃料電池自動車やディーゼルエンジン用水素改質器等に好適に適用することができる。
また、本発明の水素分離膜の製造方法によれば、基体表面の酸化アルミニウムを熱水和封孔処理し、基体表面の酸化アルミニウムを超微細な多孔質構造とし、その基体表面にパラジウム層を積層しているので、基体とパラジウム層間を接着するためのバインダー等の接着剤を全く必要とせず、しかも製造工程の簡略化が可能となる。さらに、本発明の水素分離膜の製造方法によれば、複雑な前処理を施すことなく製造工程を簡略化することができ、超極薄のパラジウム層を備えた水素分離膜を簡易かつ安価に提供することができる。
本発明の水素分離膜を使用した混合ガスの分離方法によれば、本発明の優れた水素ガス分離能を有する水素分離膜を使用しているので、効率良く混合ガス中の水素ガスを精度良く分離することができ、高純度の水素ガスを製造することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
<水素分離膜について>
本発明の水素分離膜は、超微細な多孔質構造を有する酸化アルミニウム表面上にパラジウム層を有することを特徴とするものである。本発明の水素分離膜を構成する基体とは、その表面にアルミニウム層を有するものである。具体的には、その表面にアルミニウム層を有し、陽極酸化により酸化アルミニウム層を設けることができればよく、特に制限されるものではないが、例えば、アルミニウムのほか、アルミニウム層を有するアルミニウム合金、鉄、銅、ニッケル、クロム、チタン、マグネシウム、タングステン、マンガン、ジルコニウム、バナジウム、銀、亜鉛、ビスマス、スズ、鉛、アンチモン等の金属又はアルミニウム層を有する上記金属の組み合わせによる合金を例示することができる。なお、基体には、上記複数の金属を重合させた金属又はスポンジ状金属の表面にアルミニウム層を設けたものも含まれる。
上記アルミニウム層を有する基体としては、形成されるアルミナ層との接着性及び経済性の観点から、好ましくはアルミニウム又はアルミニウム層を有する鉄、銅等を使用することができる。特に、鉄―ニッケル―クロム合金、ニッケル―クロム合金が好ましい。
上記基体の形態は、特に限定されるものではないが、板状、棒状、筒状、リボン状、線状、糸状、中空細管上、網状、布状、メッシュ状、ハニカム状等とすることができる。
本発明の水素分離膜を構成する基体表面に存在する酸化アルミニウム層は、極力薄い膜とすることが好ましく、このような薄膜化により、水素分離膜を構成するパラジウム層の膜厚を超極薄とすることができる。酸化アルミニウム層の厚みとしては、0.1μm〜1.0μmであることが好ましい。0.1μm未満であると、基体表面の酸化アルミニウム微細構造を構成する突起よりも薄い層となってしまうためパラジウム層の形成が困難となり好ましくなく、1.0μmを超えると、パラジウム層の膜厚が大きくなり過ぎてしまい好ましくない。
ここで、本発明の水素分離膜を構成する基体表面の酸化アルミニウム層は、通常の陽極酸化により得られる酸化アルミニウム層の構造とは全く異なった超微細な多孔質構造を有することを特徴とするものである。
一般に、アルミニウムの陽極酸化により形成される酸化アルミニウムからなる酸化皮膜は、皮膜表面に表出している多数の被膜セルから構成されている。被膜セルは、多孔質層からなる六角柱形状を有しており、セルは基体素地界面のバリヤー層まで形成されている。それぞれの被膜セルは、ほぼ中心に微細孔を有し、その微細孔は基体のバリヤー層の上面に達するまで連通した、いわゆるシリンダー構造を有している。
本発明においては、陽極酸化後に得られる酸化アルミニウム層に、更に熱水和処理を施しているので、基体表面の微細構造は、アルミニウム原子が環状構造を形成し、かつ比表面積が増大したものとなっている。同時にアルマイト皮膜の被膜セルが有する微細孔は、封孔化されたものとなっている。本発明のアルマイト皮膜表面の超微細構造は、単にアルミニウムを陽極酸化したものとは、まったく異なり水和処理を行った結果、超微細な多孔質構造を有することになる。このような超微細な多孔質構造を有することによって、パラジウム層を構成するパラジウム成分が酸化アルミニウムの微細孔の奥まで行き亘ることがないものとなる。この結果、超微細な多孔質構造を有する酸化アルミニウム上に超極薄のパラジウム層を形成することが可能となる。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明について説明する。図1には、本発明の水素分離膜を構成する基体表面の酸化アルミニウムの超微細な多孔質構造を示した。図1に示すように本発明の水素分離膜を構成する酸化アルミニウム層は、熱水和処理により3次元からなるスポンジ状構造に変化し、不定形な構造を有する。例えば、熱水和処理後の孔径は約1〜2nmとなっており、この数値は、処理前の孔径約10〜20nmの約10分の1となっている。
本発明の水素分離膜においては基体表面に、このような超微細加工された多孔質構造を有する酸化アルミニウム層を採用しているので、その後の工程においてパラジウム層の超薄膜化を図ることができるものである。また、基体表面を超微細な多孔質構造とすることにより、基体とパラジウム層との接着にバインダーを使用することなく、パラジウム層を強固に接着して基体表面上に積層することができる。
本発明の水素分離膜を構成する金属層成分としては、パラジウムを採択する。金属膜成分であるパラジウムは、パラジウム及び/又はパラジウム化合物溶液として超微細な多孔質構造を有する酸化アルミニウム層に担持され、パラジウム層を形成する。
上記パラジウム及び/又はパラジウム化合物としては、パラジウム成分を有していれば特に制限されるものではないが、パラジウム金属単体は勿論のこと、パラジウムの酸化物、水素化物の他、金属塩である臭化物、塩化物、ヨウ化物、硝酸化合物、硫化物、シアン化物、アンモニア塩、EDTA塩、有機化合物を用いることができる。特に、上記パラジウム化合物の中でも水溶性の金属塩である塩化パラジウムが好ましい。なお、本発明の趣旨を損なわない範囲でパラジウム以外の金属成分を加えてもよい。
本発明の水素分離膜は、そのパラジウム層の膜厚が0.1μm〜1.0μmであることを特徴とするものである。パラジウム層の膜厚が0.1μm未満であると、水素を充分に吸着することができないため好ましくなく、1.0μm以上であると、水素分離膜全体の膜厚が大きくなってしまうため好ましくない。
また、前記パラジウム層は、ピンホールを有するものでなく、ほぼ均一な膜厚を有することを特徴とするものである。すなわち、水素分離膜を構成する基体として、超微細な多孔質構造を有する酸化アルミニウム層を有する基体を採択しているため、パラジウム核を分散させる工程においてパラジウム成分が均一に行きわたりパラジウム層を形成し、この結果パラジウム層には、ピンホールが存在しないこととなる。
図2には、水素分離膜の断面図の写真を示した。本発明の水素分離膜は、酸化アルミニウム層とパラジウム層が密着して形成され、かつそのパラジウム層は1.0μm以下の薄膜であることを特徴としている。また、図4に示すように本発明の水素分離膜を構成するパラジウム層表面は、ピンホールを有するものでなく、ほぼ均一な薄膜から構成されている。
<水素分離膜の製造方法>
本発明の水素分離膜の製造方法は、アルミニウム層を有する基体のアルミニウム表面を除きマスキングし、前記基体のアルミニウム層の表面を陽極酸化し、これより形成される酸化アルミニウム表面を水和処理した後、前記基体の酸化アルミニウム層にパラジウム層を形成させることを特徴とするものである。
(マスキング処理)
本発明においては、まず、陽極酸化を行うアルミニウム表面以外にマスキング処理を施す。上記のマスキング処理により、パラジウム膜を形成するアルミニウム表面以外を保護し、その後の陽極酸化処理により酸化されることを防ぐものである。例えば、本発明の水素分離膜の製造においては、基体片面にのみパラジウム層を形成する必要があるため陽極酸化を行うアルミニウム表面以外にマスキング処理を施す必要がある。なお、上記マスキング処理は、適宜必要に応じて行なうことができ、必要に応じてマスキング処理を行う基体の箇所を変更することができる。
マスキング処理は、陽極酸化処理による酸化を防止することができれば、特に制限されるものではないが、例えば陽極酸化を行うアルミニウム表面以外に有機溶剤等のマスキング剤を塗布することにより容易に行なうことができる。マスキング剤としては、例えばゴム系マスキング材(トルエン溶剤)等の有機溶媒が好ましい。具体的には、マスキング塗料MR-54(トーカン社製)を例示することができる。
マスキング処理の方法としては、特に制限されるものではなく、水素分離膜の用途に応じて適宜採択することができる。例えば、インクジェット方式、スクリーン印刷方式、ドライオフセット印刷方式、パット印刷方式、グラビア印刷方式、凸版印刷方式等の半導体技術において使用されている公知の技術を使用することができる。
(陽極酸化)
本発明の水素分離膜の製造方法においては、上記基体表面のアルミニウム層を陽極酸化することにより酸化アルミニウム層を形成させる。ここで陽極酸化とは、水の電気分解と同じ原理を利用したもので、陽極にアルミニウムを使用して酸素との反応により酸化アルミニウムの皮膜を作製することをいう。陽極酸化の条件は特に制限されるものではないが、上記基体をシュウ酸、硫酸等の酸性溶液に浸漬し、公知の方法に従って行えばよい。
本発明において、パラジウム金属成分の酸化アルミニウム表面への蒸着を効率よく行ない、かつアルマイト皮膜とパラジウム層との接着性を向上させるため、酸化アルミニウム層のBET吸着表面積が最大になるように設定することが好ましい。このため、陽極酸化の処理温度を0℃〜50℃、好ましくは10℃〜40℃に設定するのが好ましい。0℃未満である場合には、陽極酸化が困難であり、50℃を超えると酸化アルミニウム層が溶解してしまい、酸化反応によるアルミナ層の形成が困難となる。
(熱水和処理)
本発明においては、陽極酸化された基体表面の酸化アルミニウムの表面積を増大させるために、更に熱水和処理を施し、基体表面を封孔化し、さらに焼成することを特徴とする。すなわち、上記熱水和処理及び焼成により、基体表面の酸化アルミニウムは、超微細な多孔質構造となり、パラジウム膜の薄膜化及び基体表面とパラジウム層との接着性及び水素分離膜の強度が改善されることとなる。この結果、超極薄パラジウム層を有する水素分離膜の提供が可能となる。
上記熱水和処理は、好ましくは、50℃〜350℃の熱水又は水蒸気によって行うことができる。熱水和処理は、上記陽極酸化された基板表面に熱水をかけるか又は、水蒸気を噴射することによって行なう。熱水和処理に使用する熱水又は水蒸気の温度は、基板表面の酸化アルミニウムが超微細構造を形成することができれば特に制限されるものはない。作業性、処理効果の観点から70〜95℃で行うことが好ましい。
上記熱水和処理は、1時間〜2時間行うことが好ましい。1時間未満であると、基体表面に十分な酸化アルミニウム層の超微細な多孔質構造を形成することができず、2時間を超えて処理を施しても酸化アルミニウム層の表面積の増大にほとんど関係ないため好ましくない。なお、熱水和処理の後には、室温で4時間以上自然乾燥することが好ましい。
さらに、上記熱水和処理を施した酸化アルミニウム層の表面積を更に増大させるために、酸化アルミニウム層をγ―アルミナに変化させるためには高温焼成処理することが好ましい。焼成温度としては、表面積と作業性の観点から450℃〜550℃が好ましい。最も好ましくは500℃である。450℃未満であると、γ―アルミナに変化しないため好ましくなく、550℃を超えると作業性の観点から好ましくない。
上記高温焼成処理をする時間は、酸化アルミニウム層の表面積を増大させるために1時間〜5時間処理することが好ましい。最も好ましくは、3時間である。
(パラジウム成分の吸着)
次に上記熱水和処理した後の酸化アルミニウムを有する基体表面にパラジウム層の薄膜を形成する際に、パラジウム層を形成する薄膜の核となるパラジウム金属を吸着させる。パラジウム金属の吸着させる方法としては、パラジウムを含有する触媒液を基板表面に含浸法又は電解法に行なえばよい。上記処理方法により、酸化アルミニウム基体表面上にパラジウム層を形成するパラジウム層の核を拡散して配置することができる。
触媒液としては、パラジウム金属成分を含有していれば特に制限されるものではないが、例えば塩化パラジウム溶液、硝酸パラジウム溶液(石福金属工業株式会社製)を使用することができる。なお、パラジウム金属成分を安定化させるために、微量のスズ等金属成分を含有するものであってもよい。
本発明において、上記パラジウム金属成分を陽極酸化された酸化アルミニウム層に担持させる方法としては、特に制限されるものではないが、公知の含浸法や電解担持等を採用することができる。
まず、含浸法は、上記の製法により酸化アルミニウム層を有する担体にパラジウム金属成分を含有する溶液を加え、所定時間攪拌し、含浸操作を行うことにより、金属成分を容易に担持することができるものである。また、金属成分を含有する溶液にシアン化イオン、アンモニア、EDTA等の配位剤を添加することにより、溶液のPHを調製し、金属成分を担持することもできる。
一方、電解担持法は、上記の製法により酸化アルミニウム層を有する担体にパラジウム金属成分を含有する溶液を加え、その後水溶液に所定の電圧の直流又は交流電を所定時間流すことにより、パラジウム金属成分を容易に担持することができるものである。
電圧は1×10〜3×10V/m2であることが好ましい。電圧が1×10V/m2未満であると金属成分の担持に長時間を要するため好ましくなく、3×10V/m2を超えると金属成分の担持が均一になり難いため好ましくない。
電解担持は50〜900Hzの交流電場で行われることが好ましい。50Hz未満であると金属成分の均一担持が困難であり、900Hzを超えると、担持された金属成分が再剥離するため好ましくない。
電流密度は、10〜200A/m2であることが好ましい。10A/m2未満であると、パラジウム成分の担持に長時間を要するため好ましくなく、200A/m2を超えるとパラジウム成分の担持が均一になり難いため好ましくない。
パラジウム及び/又はパラジウム化合物を溶液として、陽極酸化された酸化アルミニウム層に担持させる場合、その溶液の濃度は、0.1mol/L(リットル)〜0.4mol/Lであることが好ましい。溶液の濃度が、0.1mol/L未満であると、十分なパラジウム金属成分を酸化アルミニウム層に担持することができないため好ましくなく、0.4mol/Lを超えると、パラジウム金属成分が多くなり、薄膜を形成することができないため好ましくない。
上記濃度のパラジウム化合物等の溶液を酸化アルミニウム層に、所定量のパラジウム成分が担持され、パラジウム層を形成することができるように必要に応じて、1〜10回行うことができる。
上記パラジウム層を基体表面に形成させた後、さらに焼成することが好ましい。焼成によって、パラジウム等成分は、上記酸化アルミニウムに強固に担持されることとなり、安定化する。担持後の焼成温度は、350℃〜650℃であり、好ましくは450℃〜550℃である。350℃未満であると、触媒成分を担持することができず、650℃を超えると担体等の変形を生じてしまうので好ましくない。なお、上記担体の焼成時間は、好ましくは1時間〜3時間である。
本発明の水素分離膜の製造方法の第2の態様としては、保護金属のパラジウム層を形成する部分を除き、マスキングを行い、前記パラジウム層を形成する部分にパラジウム層を形成し、前記パラジウム層に酸化アルミニウム層を形成し、前記保護金属、パラジウム層及び酸化アルミニウム層を有する積層体を形成し、次いで前記積層体の保護金属を溶解させることを特徴とするものである。
(保護金属のマスキング処理)
本発明においては、保護金属のパラジウム層を形成する部分を除き、マスキングを行う。上記のマスキング処理により、パラジウム膜を形成する部分以外を保護し、その後の陽極酸化処理により酸化されることを防ぐものである。例えば、本発明の水素分離膜の製造においては、保護金属の形態を基板とし、その一面にのみパラジウム層を形成する場合には、パラジウム層を形成する必要表面以外のすべての面にマスキング処理を施す必要がある。なお、上記マスキング処理は、適宜必要に応じて行なうことができ、必要に応じてマスキング処理を行う保護金属基体の部分、面等のマスキング処理箇所を適宜変更することができる。
本発明において、保護金属は、パラジウム金属を物理的又は化学的に吸着することができる諸物性を有する金属であって、その表面に超極薄のパラジウム層を形成することができるものであり、かつその後、容易に溶解させることができる金属であることが必要となる。具体的には、銅、銀、スズ、ニッケル、鉛等を例示することができる。これらの中でも酸に対する溶解性およびマスキングの容易さの観点から、銅が最も好ましい。
保護金属の形態は、特に制限されるものではないが、基体となる金属の形態に応じて、板状、棒状、筒状、リボン状、線状、糸状、中空細管上、網状、布状、メッシュ状、ハニカム状等とすることができる。
マスキング処理は、陽極酸化処理による酸化を防止することができれば、特に制限されるものではないが、例えばパラジウム層を形成する以外の部分に有機溶剤等のマスキング剤を塗布することにより容易に行なうことができる。マスキング材としては、前述したものと同様のものを例示することができる。また、マスキング処理の方法としても、前述した方法と同様の方法を例示することができる。
次に、本発明の水素分離膜の製造方法の第2の態様においては、保護金属表面の上記マスキング処理を行わなかった部分にパラジウム層を形成することを特徴とするものである。形成されたパラジウム層は、保護金属を溶解させることにより水素分離膜の表面層となる。本発明においては、保護金属表面にパラジウム層を形成させるので、パラジウム層を均一かつ超極薄に形成することができる。
保護金属表面上にパラジウム層を形成させるための方法としては、パラジウム層を形成することができれば特に制限されるものではなく、公知の方法を採択することができる。例えば、無電解めっき法、電解めっき法、無電解超臨界ナノプレーティング法(無電解SNP法)、電解超臨界ナノプレーティング法(電解SNP法)を例示することができ、またこれらを組み合わせて採用することもできる。
本発明の水素分離膜は、該膜を構成するパラジウム層の膜厚が0.1〜1.0μmの膜厚であることを特徴とするので、上記列挙した中でも無電解めっき法を採択することが好ましい。また、本発明においては、上記パラジウム層の形成方法によって、表面ミクロ構造が滑らかな保護金属上にパラジウム層が形成されるので、パラジウム層の膜厚を超極薄膜かつ均一なものとすることができ、しかもパラジウム層を簡易且つ容易に作製することができる。
本発明の水素分離膜の製造方法においては、前記パラジウム層に酸化アルミニウム層を形成することを特徴とするものである。パラジウム層に酸化アルミニウム層を形成する際には、バインダーをパラジウム層表面に塗布することにより、接着面とし、この接着面に酸化アルミニウムを積層する。上記バインダーとしては、パラジウム層と酸化アルミニウム層とを接着することができるものであれば良く、特に制限されるものではないが、セラミック接着剤、シリカ系接着剤を例示することができる。
バインダー層の厚みは、パラジウム層と酸化アルミニウム層を接着することができる厚みを有するものであればよく、通常は、0.01μm〜0.1μmであることが好ましい。0.01μm未満であると接着が不十分となり、0.1μmを超えると、水素分離膜が厚くなってしまい好ましくない。
本発明の水素分離膜の製造方法においては、このようにして、保護金属、パラジウム層及び酸化アルミニウム層を有する積層体を形成することを特徴とするものである。上記積層体は、保護金属、パラジウム層及び酸化アルミニウム層を有するものであればよく、その形態は、保護金属の形態により種々の形態を取り得るものであり、特に限定されるものではない。
例えば、保護金属の形態を基板とすると、基板のパラジウム層を形成する一面を除き、残りの面すべてをマスキングし、該パラジウム層に酸化アルミニウム層を形成し板状の積層体とすることができる。また、保護金属の形態を基板とし、基板のパラジウム層を形成する面を対向する二面とし、該二面を除き、残りの面すべてをマスキングし、該二面に形成されたパラジウム層に酸化アルミニウム層を形成し、表と裏の二面に保護金属、パラジウム層及び酸化アルミニウム層を有する積層体とすることができる。
また、使用する保護金属の形態を棒状とすると、長軸方向に垂直な上面と下面をマスキングし、その長軸方向側面にパラジウム層を形成し、パラジウム層に酸化アルミニウム層を形成することもできる。また、長軸方向側面をマスキングし、長軸方向に垂直な上面と下面にパラジウム層を形成し、パラジウム層に酸化アルミニウム層を形成することもできる。このように積層体の形態は、保護金属のマスキング処理により適宜変更することができる。
保護金属の溶解方法としては、保護金属をすべて溶解することができれば良く特に制限されるものではないが、例えば化学的処理又は電気化学的処理が例示される。化学的処理は、上記積層体を構成している保護金属面と酸又はアルカリ溶液を反応とを反応させることにより行なう。使用できる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が例示される。アルカリ溶液としては、アンモニア、水酸化ナトリウムが例示される。なお、これら溶液に使用する溶媒としては、特に制限されるものではないが四塩化炭素等の無極性溶媒が好ましい。
電気化学的処理は、上記積層体を構成している保護金属の表面を露出させ、保護金属の表面を陽極とし、一方、上記積層体を構成している保護金属と同種類の金属を陰極として採択し、陽極と陰極を電源に接続し、これらを回路とし、所定の電流を流すことにより電解精錬により行なうことができる。
陽極となる保護金属と陰極の組み合わせは、上記積層体と構成する保護金属の種類により異なるものであるが、陽極となる保護金属は、陰極となる金属よりも卑な金属であるか、又は同等であることが必要となる。上記電解精錬の条件は、特に制限されるものではなく、適宜、電流、電圧、時間を設定することができる。このように所定条件にて、電気分解を行なうことにより、陽極として使用した積層体を構成する保護金属は、陽イオンとなって電解液に溶出し、陰極の金属表面にて金属として析出することになる。
上記電解精錬を応用した方法を採用することにより、簡易な工程により、積層体を構成するパラジウム層表面の保護金属をすべて溶解させて除去することができ、これによって積層体を構成するパラジウム層が表出し、その結果、パラジウム層と酸化アルミニウムを有する水素分離膜が製造される。
更に別の観点においては、保護金属、パラジウム層及び酸化アルミニウム層を有する積層体を形成し、その形態を適宜採択することによって、効率よく水素分離膜を製造することができる。例えば、保護金属の形態を基板とすると、基板のパラジウム層を形成する一面を除き、残りの面すべてをマスキングし、該パラジウム層に酸化アルミニウム層を形成し板状の積層体とした場合に積層体を構成する保護金属を溶解させることにより、一枚の水素分離膜を製造することができる。これに対し、保護金属の形態を基板とし、基板のパラジウム層を形成する面を対向する二面とし、該二面を除き、残りの面すべてをマスキングし、該二面に形成されたパラジウム層に酸化アルミニウム層を形成し、表と裏の二面に保護金属、パラジウム層及び酸化アルミニウム層を有する積層体とした場合には、積層体を構成する保護金属を溶解させることにより、表と裏の両面からそれぞれ一枚ずつの2枚の水素分離膜を簡易かつ容易に製造することができる。
さらに、本発明においては保護金属の形態を適宜変更し、マスキング処理を施す部分及びその形状、処理する面を変化させることにより、パラジウム層の形成位置を変化させることによって、製造される水素分離膜の形状、枚数等を自由に制御することができる。
<水素分離膜による水素ガス分離>
次に、本発明の水素分離膜を使用した水素ガスの分離方法について説明する。
本発明の水素ガスの分離方法は、水素分離膜を一酸化炭素等の不純物と水素ガスを含有する混合ガスに接触させることを特徴とするものである。
本発明の水素ガスの分離方法を適用することができる混合ガスとは、特に限定されるものではないが、まず水素ガス成分を主成分とし、その他の構成成分として、高濃度の一酸化炭素、炭化水素、水蒸気、硫黄酸化物、二酸化窒素及び窒素を含有するものである。
水素分離膜の表面となるパラジウム層に供給された混合ガスが接触するように本発明の水素分離膜を設置し、混合ガスを水素分離膜のパラジウム層側から供給する。混合ガス中の水素ガスは、水素分離膜のパラジウム層により分離される。その後水素分離膜の裏面となる基体の側から水素ガスを分離した後のガスを排出する。本発明の水素分離膜により、その構成成分として水素ガス成分以外の一酸化炭素等他の成分を0.0001体積%含有する混合ガスであっても分離することができる。
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は何らこれに制限されるものではない。
(実施例1)
<水素分離膜の製造>
(1)基体の表面前処理
厚み0.3mm、長方形の市販のアルミニウム板(JIS A1050)を20%の水酸化ナトリウム水溶液を用い、室温にて3分間アルカリ洗浄し、次いで30%の硝酸水溶液で1分間洗浄して表面処理を行った。
(2)基体のマスキング処理
上記表面処理を行った基体について、その表面を除いてマスキング処理を行った。マスキング処理は、パラジウムを担持する基体表面を除き行なうものである。マスキング処理は、上記アルミニウム基板にマスキング材を直接塗布することにより行なった。マスキング材としては、マスキング塗料MR-54(トーカン社製)を使用した。
(3)アルミニウム層の陽極酸化及び基板処理
次に、4%のシュウ酸水溶液を用いて、液温20℃、電圧密度50.0A/m2
で16時間陽極酸化を行った。その後、陽極酸化されたアルミニウム層である酸化アルミニウム層に残存するシュウ酸を除去するために、350℃で1時間焼成した。更に、基体を80℃で1時間、イオン交換水による熱水和処理を行い、得られた基体を室温で4時間、自然乾燥し、500℃で3時間焼成後、本発明の水素分離膜の酸化アルミニウム表面を有する基体を得た。基体表面を観察した結果を図1に示す。なお、基体表面の観察は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM、日立製作所株式会社製、商品名S−4500)により行なった。
図1からも明らかなように、本発明の水素分離膜を構成する基板表面は、熱水和処理を行った結果、超微細な多孔質構造を有するものであることが明瞭に理解される。すなわち、本発明の水素分離膜を構成する基板表面は、熱水和処理前のシリンダー構造とは全く異なり、不規則かつ異方性のスポンジ状の構造から構成されることが明らかとなった。
(4)パラジウム金属成分の担持
次に、上記操作により得られた水素分離膜の基体表面に、濃度0.05mol/Lのパラジウムイオンを含有する硝酸パラジウム水溶液を添加し、イオン交換水中で含浸担持を行い、パラジウムイオンを上記基体に担持した。その後、パラジウムを担持させた担体を500℃で3時間焼成し、本発明の水素分離膜を得た。
(試験例1)
<水素分離膜の水素透過係数等の測定>
実施例1で得られた本発明の水素分離膜について、水素透過率及び水素選択率を算出した。
使用する混合ガスとして、水素ガスと窒素ガスとの混合ガスを用い、その流量
をそれぞれ水素ガス50ml/分、窒素ガス50ml/分に設定した。上記混合ガスを実施例1で得られた水素分離膜を構成するパラジウム膜表面(パラジウム層側)に供給した。その後、水素分離膜を透過した水素を主成分とする混合ガスをアルゴンガスでスイープした。なお、アルゴンガスの流量は、水素ガス、窒素ガスと同様に50ml/分に設定した。
水素分離膜の表側及び裏側それぞれの混合ガスを採取し、ガスクロマトグラフィーによって分析し、水素分離膜の表側と裏側それぞれのガス濃度(単位)から、水素透過率、水素選択率を求めた。なお、本試験のガス濃度測定は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC−8A)により行った。
水素透過率は、上記混合ガスを本件発明の水素分離膜に透過した後の水素ガス及び窒素ガス混合出口総流量を石鹸膜流量計により測定し、その後、上記ガスクロマトグラフィーによって水素ガス及び窒素ガスの出口流量を測定した。得られた水素ガスの出口流量(mol/s)の測定値により以下の式によって水素透過率を算出した。すなわち、水素ガスの出口流量を水素分離膜の有効面積と供給側水素分圧で割ることにより水素透過率を算出した。
水素分離率は、上記と同様にして窒素透過率を算出し、その値に基づいて以下の式により算出した。
(試験例2)
<パラジウム層の厚み及びピンホールの有無の測定>
また、製造例のパラジウム層と基体から構成される水素分離膜の断面構造を観察した結果を図2及び図3(拡大図)に示す。なお、水素分離膜の断面構造の観察は、同様に電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM、日立製作所株式会社製、商品名S−4500)により行なった。
図2に示したように、本発明の水素分離膜のパラジウム薄膜は、1.0μm以下のパラジウム層と熱水和処理により形成された超微細構造を有する酸化アルミニウム層から構成されており、パラジウム層は酸化アルミニウム層に強固に
固着しているものであることが理解される。また、図3によれば、パラジウム層(上層)と熱水和処理された酸化アルミニウム層(下層)が強固に接着し、水素分離膜を構成していることが理解できる。
同様に、実施例1で得られた本発明の水素分離膜について、ピンホールの有無について確認した。ピンホールの有無については、同様に電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM、日立製作所株式会社製、商品名S−4500)により行なった。観察結果を図4及び図5に示す。
本発明の水素分離膜のパラジウム層は、均一な表面層を構成しており、ピンホールが全く存在しないものであることが理解できる。
(試験例3)
<耐久性試験(冷却試験)>
実施例1で得られた本発明の水素分離膜について、耐久性試験を行なった。耐久試験は、以下のように行なった。本実施例の水素分離膜を常温(約27℃)から400℃に加熱した後、さらに常温まで冷却し、これを1サイクル(5時間)とした。試験後の水素分離膜の水素透過率を上記同様に算出した。なお、昇温速度及び冷却速度は、共に1.2℃/分とした。この耐久性試験を7サイクル行い、上記試験例の結果を表1及び図6に示す。
表1及び図6からも明らかなように、本実施例の水素分離膜は、5時間におよぶ耐久試験後においても、その水素透過率および水素透過係数の値は全く変化せず、その値は、直線を示し、ほぼ一定の値をとっていることが判る。このことから、本発明の水素分離膜は、温度変化による耐久試験においても、良好な結果を示し、水素分離膜としての機能の劣化は、全く見られないことが明瞭に理解される。
(実施例2〜実施例6)
この耐久性試験時間を変化させた以外は、実施例1と同様に水素分離膜の水素透過率および透過係数を算出した。その結果を表1に、その結果をグラフ化したものを図6に示す。
(比較例1)
水素分離膜に使用する基体として、熱水和処理をしなかったアルミニウム基体を使用した以外は実施例1と同様にして、水素分離膜を製造し、各種試験を行なった。結果を表1に示す。
表1の結果からも明らかなように、本発明の水素分離膜は、その基体として熱水和処理により得られる超微細な多孔質酸化アルミニウムを採択しているので、そのパラジウム層の膜厚を0.1〜1.0μmと超極薄ものとすることができ、その水素透過率および水素透過係数も良好な結果を示した。また、本発明の水素分離膜は、図6に示したように、約40時間にも及ぶ耐久試験後においても、上記水素透過率および水素透過係数についても良好な結果を維持することができるので、混合ガスの水素分離膜としての使用にも充分に耐えうるものであった。
本発明の水素分離膜は、脱水素反応や水蒸気改質反応等の石油化学工業の発展に寄与することができるものである。また、本発明の水素分離膜は、パラジウム層の膜厚が超極薄であり、しかも耐久性に優れたものであり、コンパクト化が可能である。したがって、本発明の水素分離膜は、燃料電池自動車やディーゼルエンジン等に搭載される水素改質器に好適に利用することができる。
本発明の水素分離膜を構成する基体の酸化アルミニウム表面の写真である。 本発明のパラジウム層及び基体から構成される水素分離膜の断面図を示した写真である。 本発明のパラジウム層及び基体から構成される水素分離膜の断面図を示した拡大写真である。 水素分離膜を構成するパラジウム層の表面の写真である。 水素分離膜を構成するパラジウム層の表面の拡大写真である。
本発明の水素分離膜の耐久試験の結果を示した図である。

Claims (9)

  1. 少なくとも、酸化アルミニウム表面を備えた基体と、前記酸化アルミニウム表面上にパラジウム層を有することを特徴とする水素分離膜。
  2. 前記酸化アルミニウム表面は、アルミニウム層を有する基体のアルミニウム表面を除きマスキングし、前記基体のアルミニウム層の表面を陽極酸化し、これより形成される酸化アルミニウム表面を熱水和処理することによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の水素分離膜。
  3. 前記パラジウム層の厚みが0.1〜1.0μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に水素分離薄膜。
  4. 請求項1〜請求項3にいずれかに記載の水素分離膜を備えたことを特徴とする
    水素改質器。
  5. アルミニウム層を有する基体のアルミニウム表面を除きマスキングし、前記基体のアルミニウム層の表面を陽極酸化し、これより形成される酸化アルミニウム表面を水和処理した後、前記基体の酸化アルミニウム層にパラジウム層を形成させることを特徴とする水素分離薄膜の製造方法。
  6. 前記パラジウム層は、めっき法又は超臨界ナノプレート法により形成されるも
    のであることを特徴とする請求項5に記載の水素分離薄膜の製造方法。
  7. 保護金属基体表面のパラジウム層を形成する部分を除きマスキングし、前記パラジウム層を形成する部分にパラジウム層を形成し、前記パラジウム層に酸化アルミニウム層を接着し、前記保護金属、パラジウム層及び酸化アルミニウム層を有する積層体を形成し、次いで前記積層体の保護金属を溶解させることを特徴とする水素分離膜の製造方法。
  8. 前記パラジウム層はめっき法又は超臨界ナノプレート法により形成させるもの
    であることを特徴とする請求項7に記載の水素分離薄膜の製造方法。
  9. 前記保護金属は、銅、銀、ニッケル、鉛、スズから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の水素分離薄膜の製造方法。
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