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JP2007270661A - サーモスタットの異常判定装置 - Google Patents

サーモスタットの異常判定装置 Download PDF

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JP2007270661A
JP2007270661A JP2006094637A JP2006094637A JP2007270661A JP 2007270661 A JP2007270661 A JP 2007270661A JP 2006094637 A JP2006094637 A JP 2006094637A JP 2006094637 A JP2006094637 A JP 2006094637A JP 2007270661 A JP2007270661 A JP 2007270661A
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Hideki Miyahara
秀樹 宮原
Tokiji Itou
登喜司 伊藤
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】サーモスタットの異常を的確に判定することのできるサーモスタットの異常判定装置を提供する。
【解決手段】この装置は、ウォータジャケットと、ラジエータと、それらウォータジャケットおよびラジエータの間に冷却水を循環させるための循環通路と、同循環通路に設けられたサーモスタットとからなる機関冷却系を有する内燃機関に適用される。機関冷却系の内部には、機関駆動式のウォータポンプの作動を通じて強制的に冷却水が循環する。内燃機関の始動完了後におけるウォータジャケット内の冷却水温度THWの推移に基づいて、サーモスタットの異常の有無を判定する(S104〜S109)。判定の実行中に、内燃機関が高回転領域で運転された延べ期間が所定期間以上になったときに(S103:YES)、同判定の実行を中止する。
【選択図】図6

Description

本発明は、内燃機関のラジエータに流れる冷却水の流量を調節するサーモスタットの異常の有無を判定する異常判定装置に関するものである。
内燃機関の冷却系としては、内燃機関の内部に形成されたウォータジャケットと、熱交換器であるラジエータと、それらウォータジャケットおよびラジエータの間に冷却水を循環させるための循環通路と、同循環通路の途中に設けられたサーモスタットとを備えた水冷式のものが知られている。こうした機関冷却系は内燃機関の出力軸に駆動連結された機関駆動式のウォータポンプを備えており、このウォータポンプの作動を通じて機関冷却系内に冷却水が強制的に循環される。
上記機関冷却系では、そのサーモスタットが、内燃機関の始動直後における暖機運転時等、冷却水の温度が所定温度(通常、80℃程度)より低いときには閉弁している。このときラジエータ側への冷却水の循環が停止されて、ウォータジャケット内の冷却水温度の速やかな上昇、ひいては内燃機関の早期暖機が図られる。一方、サーモスタットは、冷却水温度が所定温度より高くなると開弁する。このときにはラジエータ側への冷却水の循環が行われて、ウォータジャケット内の冷却水温度、ひいては機関温度の過度な上昇が抑制される。こうしたサーモスタットの作動を通じて機関温度が適正な温度に調節される。
ところで、サーモスタットが開弁状態のまま固着すると、機関始動直後の暖機運転時にも冷却水がラジエータ側に循環するようになって内燃機関が過冷却状態となり、機関始動から暖機完了までに要する時間が不要に長くなる。機関制御では通常、内燃機関が低温状態にあるときにおいて燃料噴射量を増量する、いわゆる暖機増量が行われる。そのためサーモスタットが開弁状態で固着した場合には、暖機増量が長い時間実行されるようになって、燃料消費量の増大やエミッションの悪化を招いてしまう。
そのため従来、そうした不都合に対処するために、サーモスタットの異常の有無を判定する装置が種々提案されている。例えば特許文献1に記載の異常判定装置では、機関運転状態に基づいてウォータジャケット内の冷却水の基準温度を設定して、その基準温度の推移と冷却水の実温度の推移とを比較することによって、サーモスタットに異常が生じているか否かを判定するようにしている。
具体的には、基準温度が所定温度に達する前に実温度が所定温度に到達したときには、サーモスタットが閉弁状態になっており速やかに実温度が上昇したとして、サーモスタットに異常が生じていないと判定される。一方、基準温度が所定温度に達しているにもかかわらず、実温度が所定温度に達していないときには、サーモスタットが開弁状態で固着しているために実温度の上昇が鈍くなっているとして、同サーモスタットに異常が生じていると判定される。
なお、本発明にかかる先行技術文献としては、上記特許文献1の他に以下の特許文献2が挙げられる。
特開2000−220456号公報 特開2004−27989号公報
ここで前記機関冷却系では、サーモスタットの一方側がウォータポンプに連通されるとともに他方側がラジエータに連通される。そのため、サーモスタットの閉弁時において同サーモスタットを境に圧力差が生じることが避けられない。そして、機関回転速度が高いときほど、ウォータポンプの吐出量が多くなるために、上記圧力差は大きくなる。
こうした機関冷却系にあっては、冷却水温度に対するサーモスタットの動作特性が正常であり、且つ冷却水温度がサーモスタットの閉弁されるべき温度であるときであっても、機関回転速度が高くなって上記圧力差が大きくなった場合に、同圧力差によってサーモスタットが強制的に開弁されてしまうことがある。
そしてこの場合には、サーモスタットが開弁状態で固着した場合と同様に、ラジエータ側の冷却水がサーモスタットを介して内燃機関のウォータジャケット内に流入するようになり、その分だけウォータジャケット内の冷却水の実温度の上昇速度が遅くなる。そのため場合によっては、このときサーモスタット単体の機能は正常であるにも関わらず、同サーモスタットが異常であると誤って判定されてしまう。
なお、上述した異常判定装置に限らず、内燃機関の始動完了後における冷却水温度の推移に基づいてサーモスタットの異常の有無を判定する異常判定装置にあっては同様に、上記誤判定は生じうる。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、サーモスタットの異常を的確に判定することのできるサーモスタットの異常判定装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段およびその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ウォータジャケットと、ラジエータと、それらウォータジャケットおよびラジエータの間に冷却水を循環させるための循環通路と、同循環通路に設けられたサーモスタットとからなる機関冷却系の内部に機関駆動式のウォータポンプの作動を通じて強制的に冷却水を循環させる内燃機関に適用され、前記内燃機関の始動完了後における冷却水の実温度の推移に基づいて前記サーモスタットの異常の有無を判定する異常判定装置において、前記判定の実行中に前記内燃機関が高回転領域で運転された延べ期間が所定期間以上になったときに、同判定の実行を中止することをその要旨とする。
上記構成によれば、内燃機関の高回転領域での運転によってサーモスタットの不要な開弁が発生してラジエータ側からウォータジャケット内に低温の冷却水が流入した場合に、その延べ期間が長くなって同サーモスタットの異常判定における誤判定の可能性が高くなったときには、同判定の実行を中止することができる。そのため、上述のようにサーモスタットが不要に開弁されることに起因してこれが異常であると誤って判定されることを抑制することができ、同サーモスタットの異常を的確に判定することができる。
なお、請求項2によるように、前記延べ期間が所定期間以上になったことは、機関回転速度が所定速度より高くなった延べ時間が所定時間以上になったことをもって判断することができる。
通常、サーモスタットが不要に開弁した際に同サーモスタットを介してラジエータ側から内燃機関側に流入した冷却水の総量が多いほど、冷却水の実温度が低くなるために、上述した誤判定の可能性が高くなる。
この点、請求項3に記載の発明は、前記延べ期間が所定期間以上になったことを、前記サーモスタットを通過した冷却水の総量が所定量以上になったことをもって判断するようにしている。
同構成によれば、サーモスタットを通過した冷却水の総量が多くなったことをもって誤判定の可能性が高くなったことを精度良く判断した上で、前記判定の実行を中止することができる。
なおサーモスタットを通過する冷却水の量は、サーモスタットの前後における圧力差と同サーモスタットの開弁量とによって定まる。そして前述のように機関回転速度が高いほど上記圧力差は大きく、しかも同圧力差が大きいほどサーモスタットの開弁量は大きくなる。そのため、そのときどきにサーモスタットを通過する冷却水の量は、機関回転速度に基づいて推定することが可能である。
したがって請求項4によるように、前記サーモスタットを通過した冷却水の総量を機関回転速度の推移に基づき推定することにより、同総量を精度良く推定することができる。
請求項5に記載の発明は、ウォータジャケットと、ラジエータと、それらウォータジャケットおよびラジエータの間に冷却水を循環させるための循環通路と、同循環通路に設けられたサーモスタットとからなる機関冷却系の内部に機関駆動式のウォータポンプの作動を通じて強制的に冷却水を循環させる内燃機関に適用され、前記内燃機関の始動完了後における冷却水の実温度の推移と基準温度の推移との比較に基づいて前記サーモスタットの異常の有無を判定する異常判定装置において、前記内燃機関が高回転領域で運転された履歴があるときに、同履歴がないときと比較して、低い温度で推移する態様で前記基準温度を設定することをその要旨とする。
上記構成によれば、内燃機関の高回転領域での運転によってサーモスタットの不要な開弁が発生してラジエータ側からウォータジャケット内に低温の冷却水が流入し、同サーモスタットが開弁されないときと比較して冷却水の実温度が低い温度で推移するようになったときに、同実温度の比較対象である基準温度についてもこれを低い温度で推移するように設定することができる。そのため、サーモスタットの不要な開弁が発生した場合であっても、これに起因して同サーモスタットが異常であると誤って判定されることを抑制することができ、サーモスタットの異常を的確に判定することができる。
なお、請求項6によるように、内燃機関の始動完了後において所定期間毎に、機関運転状態に基づいて直前の所定期間における冷却水の温度上昇量を算出するとともに該算出した温度上昇量の積算値を前記基準温度として設定する異常判定装置にあっては、内燃機関が高回転領域で運転されているときの温度上昇量として、内燃機関が低回転領域で運転されているときの温度上昇量より少ない量を算出することによって、前記低い温度で推移する態様で基準温度を設定することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のサーモスタットの異常判定装置において、前記高回転領域で運転されているときの前記温度上昇量として、機関回転速度が高いときほど少ない量を算出することをその要旨とする。
通常、サーモスタットが不要に開弁した際に同サーモスタットを介してラジエータ側から内燃機関側に流入した冷却水の量が多いほど、前記所定期間における冷却水の実温度の上昇量は少なくなる。サーモスタットを通過する冷却水の量は、サーモスタットの前後における圧力差と同サーモスタットの開弁量とによって定まる。そして前述のように機関回転速度が高いほど上記圧力差は大きく、しかも同圧力差が大きいほどサーモスタットの開弁量は大きい。そのためサーモスタットを通過する冷却水の量は機関回転速度が高いほど多いと云える。
上記構成では、機関回転速度が高いときほど、言い換えれば、サーモスタットを通過する冷却水の量が多く、前記所定期間における冷却水の実温度の上昇量が少ないときほど、前記温度上昇量として少ない量が算出される。したがって上記構成によれば、サーモスタット単体の機能が正常である場合における実温度の上昇度合いに合わせて基準温度が上昇するように上記温度上昇量を算出することができ、サーモスタットの異常をより的確に判定することができる。
前記低い温度で推移する態様で基準温度を設定するといった請求項5に記載の構成は、請求項8によるように、内燃機関の始動完了後において所定期間毎に、機関運転状態に基づいて直前の所定期間における冷却水の温度上昇量を算出するとともに該算出した温度上昇量の積算値を基準温度として設定する異常判定装置にあって、内燃機関が高回転領域で運転されているときに前記積算値を減算補正するといった構成により実現することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のサーモスタットの異常判定装置において、機関回転速度が高いときほど前記減算補正の度合いを大きくすることをその要旨とする。
上記構成では、機関回転速度が高いときほど、言い換えれば、サーモスタットを通過する冷却水の量が多く、前記所定期間における冷却水の実温度の上昇量が少ないときほど、低い温度になるように前記基準温度が補正される。したがって上記構成によれば、サーモスタット単体の機能が正常である場合における実温度の上昇度合いに合わせて基準温度が上昇するように上記温度上昇量を算出することができ、サーモスタットの異常をより的確に判定することができる。
前記低い温度で推移する態様で基準温度を設定するといった請求項5に記載の構成は、請求項10によるように、内燃機関の始動完了後において所定期間毎に、機関運転状態に基づいて直前の所定期間における冷却水の温度上昇量を算出するとともに該算出した温度上昇量の積算値を基準温度として設定する異常判定装置にあって、内燃機関が高回転領域で運転されているときに前記積算値への前記温度上昇量の加算を禁止するといった構成により実現することができる。
なお、請求項5〜10のいずれか一項に記載の発明において前記高回転領域で運転されているとは、請求項11によるように、機関回転速度が所定速度より高いことをもって判断することができる。
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかるサーモスタットの異常判定装置を具体化した第1の実施の形態について説明する。
ここでは先ず、図1を参照して、本実施の形態にかかる異常判定装置が適用される車載内燃機関の冷却系について説明する。
図1に示すように、内燃機関10の冷却系は、同内燃機関10の内部に形成されたウォータジャケット12や、熱交換器であるラジエータ14、それら上記ウォータジャケット12およびラジエータ14の間に冷却水を循環させるための循環通路20、同循環通路20の途中に設けられるサーモスタット30等によって構成されている。サーモスタット30は接触する冷却水の温度に応じて開弁量が変化する弁を有し、同弁の開閉によって前記ラジエータ14を通過する冷却水の流量を自動的に調節する。
上記循環通路20は、詳しくは、以下の各通路を備えて構成されている。
・「通路22」:ウォータジャケット12からラジエータ14に冷却水を供給する。
・「通路24」:ラジエータ14にて冷却された後の冷却水をウォータジャケット12に還流する。
・「バイパス通路26」:上記通路22から分岐されて上記ラジエータ14を通過しない冷却水をウォータジャケット12に還流する。
・「通路28」:上記通路24から供給される冷却水、およびバイパス通路26から供給される冷却水の何れか一方を選択して、若しくは両冷却水を混合してウォータジャケット12に還流する。
なお、上記通路28は、内燃機関10の出力軸(図示略)に駆動連結された機関駆動式のウォータポンプ16を介して上記ウォータジャケット12に接続されている。内燃機関10の運転に伴う上記ウォータポンプ16の作動を通じて、循環通路20(詳しくは、上記通路28)内の冷却水がウォータジャケット12に強制的に還流されるようになっている。また、上記サーモスタット30は、上記循環通路20にあって上記通路24とバイパス通路26とが合流する部分に設けられている。
一方、本実施の形態にかかる異常判定装置には、内燃機関10の運転状態や冷却系の作動状態を検出するための各種センサが設けられている。
例えば、内燃機関10には、その出力軸の回転速度(機関回転速度NE)を検出するための回転速度センサ42や、その吸気通路を通過する空気の量(吸入空気量GA)を検出するための吸入空気量センサ44、ウォータジャケット12内の冷却水の実温度(冷却水温度THW)を検出するための水温センサ46等が設けられている。また車両には、その走行速度(車速SPD)を検出するための車速センサ48や、外気温度THAを検出するための外気温センサ50等が設けられている。
本実施の形態にかかる異常判定装置は、例えばマイクロコンピュータ等からなる電子制御装置40を備えている。この電子制御装置40は、上記各種センサの出力信号を取り込むとともに各種の演算を行い、その演算結果に基づいて内燃機関10が低温状態にあるときにおいて燃料噴射量を増量する処理(暖機増量処理)や、サーモスタット30の異常の有無を判定する処理を実行する。
次に、図2を参照して、上記サーモスタット30の構造および配設態様について詳細に説明する。
サーモスタット30は、サーモスタット本体32と感温部34とを備えている。サーモスタット本体32は循環通路20に固定されている。このサーモスタット本体32と上記感温部34とは、感温部34に接触する冷却水の温度に応じて相対移動するようになっている。そして上記感温部34には弁体36aと弁体38aとがそれぞれ取り付けられている。
上記サーモスタット本体32にあって上記弁体36aに対応する位置には弁座36bが形成されており、この弁座36bと弁体36aとによってメイン弁36が構成される。そして、弁体36aの弁座36bへの着座時(メイン弁36の閉弁時)には上記通路24と通路28との連通が遮断される一方、同弁体36aの弁座36bからの離間時(メイン弁36の開弁時)には、それら通路24,28が連通される。
また、上記バイパス通路26にあって弁体38aに対応する位置には弁座38bが形成されており、同弁座38bと弁体38aとによってバイパス弁38が構成される。そして、弁体38aの弁座38bからの離間時(バイパス弁38の開弁時)には上記バイパス通路26と通路28とが連通され、弁体38aの弁座38bへの着座時(バイパス弁38の閉弁時)には、それらバイパス通路26と通路28の連通が遮断される。
なお、上記弁体36aと弁座36bとの間隙(メイン弁36の開弁量)および上記弁体38aと弁座38bとの間隙(バイパス弁38の開弁量)は、上記感温部34の相対移動に伴ってそれぞれ変化する。また、それら間隙は、接触する冷却水の温度に応じて互いに逆方向に変化するようになっている。そして、それらメイン弁36およびバイパス弁38の開閉を通じて、ラジエータ14を通過する冷却水の流量とバイパス通路26を流れる冷却水の流量とがそれぞれ可変にされ、ウォータジャケット12に流入する冷却水の温度が制御される。
次に、図3を併せ参照しつつ、サーモスタット30の作動態様について詳細に説明する。
なお、図3は内燃機関10の冷却系における冷却水の流通態様を示す図であり、同図(a)は冷却水温度が低いときにおける流通態様を、同図(b)は冷却水温度が適温であるときにおける流通態様を、同図(c)は冷却水温度が高いときにおける流通態様をそれぞれ示している。
先ず、例えば内燃機関10の冷間始動時等、上記感温部34に接触する冷却水の温度がごく低いときには、メイン弁36(図2)が閉弁された状態で維持され、バイパス弁38が開弁された状態(図2に示される状態)で維持される。したがって、図3(a)に示すように、このとき上記バイパス通路26および通路28を通じてラジエータ14を通過しない冷却水のみがウォータジャケット12に還流されるようになり、ウォータジャケット12内の冷却水温度、ひいては機関温度が速やかに上昇される。
その後、内燃機関10の運転が継続されて上記感温部34に接触する冷却水の温度がある程度上昇すると、メイン弁36が開弁され、更にはその開弁量が徐々に大きくなる。また、これに伴い、バイパス弁38の開弁量が徐々に小さくなる。そして、効率の良い機関運転の可能な機関温度となるように、メイン弁36およびバイパス弁38の開弁量がそれぞれ調節され、ウォータジャケット12に環流される冷却水の温度が自動的に調節される。このときには、図3(b)に示すように、上記ラジエータ14通過後の低温の冷却水と同ラジエータ14を通過しない高温の冷却水とがそれぞれ調量されるとともに混合され、ウォータジャケット12に還流される。
さらに、その後において内燃機関10の高負荷状態での運転が継続される等して上記感温部34に接触する冷却水の温度が極めて高くなると、メイン弁36の開弁量が最大になり、バイパス弁38が閉弁される。これにより、図3(c)に示すように、ラジエータ14を通過しない高温の冷却水のウォータジャケット12への流入が停止されるとともに、上記ラジエータ14を通過して冷却された低温の冷却水のみがウォータジャケット12に還流される。したがって、このとき内燃機関10の冷却系の冷却効率が最も高くなる。
このように、内燃機関10の冷却系にあっては、その冷却能力がサーモスタット30の感温部34に接触する冷却水の温度、換言すれば、ウォータジャケット12内の冷却水温度に応じて調節される。
ここでサーモスタット30が開弁状態で固着すると、内燃機関10が過冷却状態となるために、前述した暖機増量が不要に長い時間にわたって実行されるようになり、燃料消費量の増大やエミッションの悪化を招いてしまう。本実施の形態では、そうした不都合に対処するために、サーモスタット30の異常の有無を判定する処理(異常判定処理)が実行される。
以下、この異常判定処理の概要について説明する。
この処理は、内燃機関10の始動が完了したことを条件にその実行が開始される。そして同処理では先ず、機関運転状態(詳しくは、機関負荷KL、車速SPDおよび外気温度THA)に基づいて冷却水温度THWについての基準温度Tbse1が設定される。なお、機関負荷KLとしては、吸入空気量GAと最大吸入空気量GAmax(そのときの機関回転速度NEにおいて得られる最大の吸入空気量)との比(GA/GAmax)が用いられる。また、上記基準温度Tbse1としては、正常なサーモスタット30の中で最も冷却水温度THWの上昇率が低くなるものを用いた場合における冷却水温度THWと同様に推移する値が算出される。
そして、このように設定された基準温度Tbse1の推移と冷却水温度THWの推移とが比較され、その比較結果に基づいてサーモスタット30に異常が生じているか否かが判定される。
図4は、そうした異常判定処理の実行時における冷却水温度THWと基準温度Tbse1との関係の一例を示している。なお図4において、線Aはサーモスタット30が正常な場合の冷却水温度THWの推移を示し、線Bはサーモスタット30に異常が生じている場合の冷却水温度THWの推移を示し、線Cは基準温度Tbse1の推移を示している。なお、同図4に示す所定温度Taは、正常なサーモスタット30が開弁状態となる温度であり、その部品公差等、個体差を考慮して最も低い温度(例えば、75℃)に設定されている。
図4に示すように、サーモスタット30が正常な場合には、内燃機関10の始動完了後しばらくの間はラジエータ14に冷却水が循環されないため、冷却水温度THW(線A)は速やかに上昇する。したがって、基準温度Tbse1(線C)が所定温度Taに達する前に冷却水温度THWが所定温度Taに到達したことをもって(時刻t11)、サーモスタット30が閉弁状態になっており速やかに冷却水温度THWが上昇したと判断することができる。そしてこの場合には、サーモスタット30に異常が生じていないと判定される。
一方、サーモスタット30が開弁状態で固着している場合には、内燃機関10の始動完了直後からラジエータ14に冷却水が循環されるため、冷却水温度THWの上昇が鈍くなる。したがって、基準温度Tbse1(線C)が所定温度Taに達しているにもかかわらず、冷却水温度THW(線B)が所定温度Taに達していないことをもって(時刻t12)、サーモスタット30が開弁状態で固着しているために冷却水温度THWの上昇が鈍くなっていると判断することができる。そしてこの場合には、サーモスタット30に異常が生じていると判定される。
ここで上記機関冷却系にあって、サーモスタット30の一方側(詳しくは通路28側)はウォータポンプ16の吸入口に連通されている。そのため、この通路28側の圧力は、サーモスタット30の閉弁時においてウォータポンプ16の作動に伴って低くなる。
これに対し、サーモスタット30の他方側(詳しくは通路24側)はラジエータ14に連通されている。そのため、このラジエータ14側の圧力は、サーモスタット30の閉弁時においてウォータポンプ16の作動する状況であっても、同ウォータポンプ16の吐出口からサーモスタット30に至るまでの経路(具体的には、ウォータジャケット12→通路22→ラジエータ14→通路24)の通路抵抗の影響により、殆ど変化しない。
このように上記機関冷却系にあっては、サーモスタット30の閉弁時において同サーモスタット30を境に圧力差が生じることが避けられない。そして、機関回転速度NEが高いときほど、ウォータポンプ16の吐出量が多くなるために、そうした圧力差は大きくなる。
上記機関冷却系にあっては、冷却水の温度に対するサーモスタット30の動作特性が正常であり、且つ冷却水の温度がサーモスタット30の閉弁されるべき温度であるときであっても、機関回転速度NEが高くなって上記圧力差が大きくなった場合に、同圧力差によってサーモスタット30が強制的に開弁されてしまうことがある。
図5に、そのようにサーモスタット30が開弁されたときにおける冷却水温度THWの推移の一例を示す。
サーモスタット30が不要に開弁されると、サーモスタット30が開弁状態で固着した場合と同様に、内燃機関10が過冷却状態になる。そのため図5に示すように、サーモスタット30が不要に開弁されている間(時刻t21〜t22)、サーモスタット30が開弁されない場合と比較して(同図中に一点鎖線で示す)、冷却水温度THWの上昇速度が遅くなる。これにより、同図に示す例のように、場合によっては冷却水温度THWが所定温度Taに達する前に基準温度Tbse1が所定温度Taに達するようになり(時刻t23)、その場合にはサーモスタット30単体の機能は正常であるにも関わらず、同サーモスタット30が異常であると誤って判定されてしまう。
そうした誤判定を抑制するために、本実施の形態では、異常判定処理の実行中において、機関回転速度NEが所定速度α(例えば5000回転/分)より高くなった延べ時間が所定時間Ti以上になったときに、サーモスタット30の異常の有無についての判定の実行を中止するようにしている。なお所定時間Tiは、サーモスタット30を介してラジエータ14側からウォータジャケット12内に流入する冷却水の総量が多くなって上記誤判定の可能性が高くなったことを判定するための時間であり、実験結果などに基づいて予め設定される。
これにより、内燃機関10の高回転領域での運転によってサーモスタット30が不要に開弁した場合に、その延べ期間が長くなって異常判定処理における誤判定の可能性が高くなったときには、異常の有無の判定の実行が中止されるようになる。そのため、サーモスタット30が不要に開弁されることに起因してこれが異常であると誤って判定されることを抑制することができ、同サーモスタット30の異常を的確に判定することができる。
以下、本実施の形態にかかる異常判定処理について図6を参照しつつ詳細に説明する。
図6は異常判定処理の具体的な処理手順を示すフローチャートであり、このフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の処理として、電子制御装置40により実行される。
図6に示すように、この処理では先ず、実行許可フラグがオン操作されているか否かが判断される(ステップS100)。なお上記実行許可フラグは、内燃機関10の始動に際してオン操作され、サーモスタット30の異常の有無の判定が完了したときにオフ操作されるフラグである。この実行許可フラグがオン操作されていることをもって、内燃機関10が始動された後に、サーモスタット30の異常の有無の判定が完了していないと判断することができる。
この実行許可フラグがオン操作されているときには(ステップS100:YES)、上述した機関回転速度NEが所定速度αより高くなった延べ時間が所定時間Ti以上であるか否かが判断される(ステップS101〜S103)。
具体的には、機関回転速度NEが所定速度αより高いときにおいて(ステップS101:YES)判定保留カウンタのカウント値Cnrがインクリメントされ(ステップS102)、このカウント値Cnrが所定値β以上であるときに(ステップS103:YES)、上記延べ時間が所定時間Ti以上であると判断される。
そして、判定保留カウンタのカウント値Cnrが所定値β未満であるとき(ステップS103:NO)、すなわち上記延べ時間が所定時間Ti未満であるときには、前述した冷却水温度THWの推移と基準温度Tbse1の推移との比較に基づいてサーモスタット30の異常の有無を判定する処理が実行される(ステップS104〜S109)。
具体的には先ず、冷却水温度THWが前記所定温度Ta以上であるか否かが判断される(ステップS104)。
そして、冷却水温度THWが所定温度Ta以上である場合には(ステップS104:YES)、サーモスタット30に異常が生じていないと判断される。この場合には、実行許可フラグがオフ操作された後(ステップS105)、本処理は一旦終了される。
一方、冷却水温度THWが所定温度Ta未満である場合には(ステップS104:NO)、基準温度Tbse1(詳しくは、基準温度カウンタのカウント値Cnt1)が算出される。
詳しくは先ず、機関負荷KL、車速SPDおよび外気温度THAに基づいてマップから、加算量ΔCntが算出される(ステップS106)。なお本実施の形態では、図7に示すように、上記マップとして、機関負荷KLと外気温度THAと加算量ΔCntとの関係を定めたマップが車速SPD毎に複数設定されている。それらマップは、実験結果などから、基準温度Tbse1を上述した態様で変化させることの可能な機関負荷KL、外気温度THA、車速SPD、および加算量ΔCntの関係が求められた上で、予め設定されている。
上記加算量ΔCntとしては、直前の所定期間(ここでは本処理の実行タイミング間)における基準温度Tbse1の上昇量に相当する値が以下のような概念に基づき算出される。
まず、機関負荷KLが大きいほど、燃料の燃焼に伴う発生熱量が多いために、冷却水温度の上記所定期間における上昇量が大きい。そのため、本処理では機関負荷KLが大きいときほど、上記加算量ΔCntとして大きい値が算出される。
また、車両走行時には、内燃機関10に走行風が吹き付けられるようになるために、この走行風による奪熱によって内燃機関10が冷却される。そして、車速SPDが大きいほど、そうした走行風の風量が多く内燃機関10の温度が上昇し難いために、冷却水温度の上記所定期間における上昇量が小さい。そのため本処理では、車速SPDが大きいときほど、上記加算量ΔCntとして小さい値が算出される。
さらに、内燃機関10にあっては、外気温度THAが低いときほど、冷却水の放熱が促進されるため、冷却水温度の上記所定期間における上昇量が大きい。そのため本処理では、外気温度THAが低いときほど、上記加算量ΔCntとして小さい値が算出される。
このように加算量ΔCntが算出された後、その加算量ΔCntが基準温度カウンタのカウント値Cnt1に加算されて、新たなカウント値Cnt1が算出される(ステップS107)。なお、このカウント値Cnt1は内燃機関10の始動に際して「0」にリセットされる値である。
その後、上記カウント値Cnt1が所定値γ以上であるか否かが判断される(ステップS108)。この所定値γは前記所定温度Taに対応する値であり、本処理では基準温度カウンタのカウント値Cnt1が所定値γ以上であることをもって、基準温度Tbse1が所定温度Ta以上であると判断される。
そして、基準温度カウンタのカウント値Cnt1が所定値γ以上であるときには(ステップS108:YES)、このとき冷却水温度THWが所定温度Ta未満であり(ステップS104:NO)且つ基準温度Tbse1が所定温度Ta以上であるとして、サーモスタット30が異常であると判定される(ステップS109)。その後、実行許可フラグがオフ操作されて(ステップS105)、本処理は一旦終了される。
一方、基準温度カウンタのカウント値Cnt1が所定値γ未満であるときには(ステップS108:NO)、このとき冷却水温度THWおよび基準温度Tbse1が共に所定温度Ta未満であるとして、実行許可フラグをオフ操作することなく、本処理は一旦終了される。この場合には、その後において冷却水温度THWが所定温度Ta以上になるまで(ステップS104:YES)、あるいは基準温度カウンタのカウント値Cnt1が所定値γ以上になるまで(ステップS108:YES)、ステップS100〜S108の処理が繰り返し実行される。
また、本処理の実行中において判定保留カウンタのカウント値Cnrが所定値β以上になると(ステップS103:YES)、サーモスタット30を介してラジエータ14側からウォータジャケット12内に流入した冷却水の総量が多くなっており、本処理における誤判定の可能性が高くなっていると判断される。そしてこの場合、実行許可フラグがオフ操作された後(ステップS105)、本処理は一旦終了される。すなわち、このとき誤判定の可能性が高いとして、これを回避するべく、サーモスタット30の異常の有無の判定の実行が中止される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
・異常判定処理の実行中において、機関回転速度NEが所定速度αより高くなった延べ時間が所定時間Ti以上になったときに、サーモスタット30の異常の有無についての判定の実行を中止するようにした。そのため、サーモスタット30が不要に開弁されることに起因してこれが異常であると誤って判定されることを抑制することができ、同サーモスタット30の異常を的確に判定することができる。
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態では、機関回転速度NEが所定速度αより高くなった延べ時間を計時し(図6のステップS101およびS102)、同延べ時間が所定時間Ti以上になったときに(図6のステップS103:YES)サーモスタット30の異常の有無についての判定の実行を中止するようにした。これに代えて、サーモスタット30を通過した冷却水の総量を算出し、同総量が所定量以上になったときに上記判定の実行を中止するようにしてもよい。
具体的には、上記実施の形態にかかる異常判定処理の変形例を図8に示すように、機関回転速度NEに基づいて前記所定期間における冷却水の通過量ΔWを算出するとともに(ステップS201)、その通過量ΔWの積算値(前回のΣΔW+ΔW)を上記総量ΣΔWとして算出する(ステップS202)。そして、総量ΣΔWが所定量V未満である場合には(ステップS203:NO)上記判定を継続する一方、総量ΣΔWが所定量V以上である場合には(ステップS203:YES)上記判定を中止する。なお、上記通過量ΔWとしては、機関回転速度NEが高いほど多い量が算出される。また、上記総量ΣΔWは内燃機関10の始動に際して「0」に設定される値である。
ここでサーモスタット30が不要に開弁した際に同サーモスタット30を介してラジエータ14側からウォータジャケット12内に流入した冷却水の量が多いほど、上記所定期間における冷却水温度の上昇量は少なくなる。サーモスタット30を通過する冷却水の量は、サーモスタット30の前後における圧力差と同サーモスタット30の開弁量とによって定まる。
前述のように機関回転速度NEが高いほど上記圧力差は大きく、しかも同圧力差が大きいほどサーモスタット30の開弁量は大きい。そのため、そのときどきにサーモスタット30を通過する冷却水の量は、機関回転速度NEが高いほど多い量として、機関回転速度NEに基づいて推定することが可能であると云える。
したがって上記構成のように、機関回転速度NEに基づいて通過量ΔWおよび総量ΣΔWを算出することにより、サーモスタット30を通過した冷却水の総量を精度良く推定することができる。
なお、上記所定期間における冷却水の通過量は、機関回転速度NEに基づき算出することの他、サーモスタット30の前後の圧力差を検出するとともに同圧力差から算出すること等も可能である。
その他、高回転領域(具体的には、サーモスタット30が不要に開弁される可能性のある回転領域)で内燃機関10が運転された延べ期間が所定時間以上になったときに上記判定の実行が中止されるのであれば、同判定の実行を中止する条件は任意に変更可能である。
・本発明は、内燃機関の始動完了後における冷却水の実温度の推移に基づいてサーモスタットの異常の有無を判定する異常判定装置であれば、適用することができる。そうした異常判定装置としては、例えば次の(イ)〜(ハ)に記載する装置を挙げることができる。(イ)内燃機関の始動後において所定時間経過したときの冷却水の実温度が所定の判定温度未満であることをもって、サーモスタットが異常であると判定する異常判定装置。(ロ)内燃機関の始動後において冷却水の実温度が所定温度に達するまでの時間が所定の判定時間より長いことをもって、サーモスタットが異常であると判定する異常判定装置。(ハ)冷却水の実温度が低いときに、同実温度の単位時間当たりの上昇量が所定量未満であることをもって、サーモスタットが異常であると判定する異常判定装置。
・本発明にかかる異常判定装置は、バイパス通路を備えていない循環通路とバイパス弁を備えていないサーモスタットとを有する機関冷却系にも、適宜適用可能である。
(第2の実施の形態)
以下、本発明にかかるサーモスタットの異常判定装置を具体化した第2の実施の形態について、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
本実施の形態と第1の実施の形態とは、以下の点が異なる。
第1の実施の形態にかかる異常判定処理では、機関回転速度NEが所定速度αより高くなった延べ時間が所定時間Ti以上になったときに、サーモスタット30の異常の有無についての判定の実行を中止するようにした(図6のステップS101〜S103)。
これに対して本実施の形態にかかる異常判定処理では、機関回転速度NEの推移にかかわらず、冷却水温度THWまたは基準温度が所定温度Taに達するまで上記判定の実行が継続される(図6のステップS101〜S103の処理が実行されない)。
そして本実施の形態にかかる異常判定処理では、機関回転速度NEが所定速度αより高いときの加算量ΔCntとして、機関回転速度NEが所定速度α以下であるときの加算量ΔCntより少ない量を算出するようにしている。
以下、本実施の形態にかかる異常判定処理について説明する。
図9は本実施の形態にかかる異常判定処理の具体的な処理手順を示すフローチャートであり、このフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎に実行される処理として、電子制御装置40により実行される。
なお図9にあって先の図6に示した処理と同様の内容の処理については、同一の符号を付して示すとともに、以下での詳細な説明を割愛する。
図9に示すように、この処理では先ず、実行許可フラグがオン操作されていることを条件に(ステップS100:YES)、冷却水温度THWが前記所定温度Ta以上であるか否かが判断される(ステップS104)。そして、冷却水温度THWが所定温度Ta以上である場合には(ステップS104:YES)、サーモスタット30に異常が生じていないと判断されて、実行許可フラグがオフ操作された後(ステップS105)、本処理は一旦終了される。
一方、冷却水温度THWが所定温度Ta未満である場合には(ステップS104:NO)、基準温度Tbse2(詳しくは、基準温度カウンタのカウント値Cnt2)が算出される。
詳しくは先ず、機関負荷KL、車速SPDおよび外気温度THAに基づいてマップ(図7参照)から、加算量ΔCntが算出される(図9のステップS106)。その後、機関回転速度NEが所定速度αより高いか否かが判断される(ステップS301)。
そして、機関回転速度NEが所定速度αより高いときには(ステップS301:YES)、機関回転速度NEに基づいてマップから補正量Kaが算出される(ステップS302)。なお、この補正量Kaは、サーモスタット30を通過した冷却水の量に応じて上記加算量ΔCntを減量補正するための値である。また、前述したようにサーモスタット30が不要に開弁したときにおいて同サーモスタット30を通過する冷却水の量は機関回転速度NEが高いほど多いために、上記補正量Kaとしては、図10に示すように、機関回転速度NEが高いほど多い量が算出される。
その後、この補正量Kaを上記加算量ΔCntから減算することによって、同加算量ΔCntが補正される(ステップS303)。
一方、機関回転速度NEが所定速度α以下であるときには(ステップS301:NO)、上記補正量Kaが算出されず、また加算量ΔCntが更新されない(ステップS302およびS303の処理がジャンプされる)。
本処理では、こうした上記補正量Kaによる加算量ΔCntの補正を通じて、内燃機関10が高回転領域で運転されているときに(具体的には、機関回転速度NEが所定速度αより高いときに)、低回転領域で運転されているとき(具体的には、機関回転速度NEが所定速度α以下であるとき)と比較して、少ない量が加算量ΔCntとして算出される。しかも、機関回転速度NEが所定速度αより高いときには、加算量ΔCntとして、機関回転速度NEが高いときほど少ない量が算出される。
このように加算量ΔCntが算出された後、その加算量ΔCntが基準温度カウンタのカウント値Cnt2に加算されて、新たなカウント値Cnt2が算出される(ステップS107)。
そして、この基準温度カウンタのカウント値Cnt2が所定値γ以上であるときには(ステップS108:YES)、サーモスタット30が異常であると判定される(ステップS109)。この場合、実行許可フラグがオフ操作されて(ステップS105)、本処理は一旦終了される。
一方、基準温度カウンタのカウント値Cnt1が所定値γ未満であるときには(ステップS108:NO)、実行許可フラグをオフ操作することなく、本処理は一旦終了される。この場合には、その後において冷却水温度THWが所定温度Ta以上になるまで(ステップS104:YES)、あるいは基準温度カウンタのカウント値Cnt1が所定値γ以上になるまで(ステップS108:YES)、上述した処理が繰り返し実行される。
以下、こうした異常判定処理を実行することによる作用について図11を参照しつつ説明する。
図11は、上記異常判定処理の処理態様の一例を示すタイミングチャートである。
同図11に示すように、サーモスタット30が不要に開弁されてラジエータ14側からウォータジャケット12内に低温の冷却水が流入した場合には(時刻t31〜t32)、同サーモスタット30が開弁されない場合と比較して(同図中に一点鎖線で示す)、冷却水温度THWが低い温度で推移するようになる。
本実施の形態にかかる異常判定処理では、機関回転速度NEが所定速度αより高いとき、言い換えれば、サーモスタット30が不要に開弁されている可能性が高いときの加算量ΔCntとして、機関回転速度NEが所定速度α以下であるときの加算量ΔCntより少ない量が算出される。そのため、サーモスタット30の不要な開弁されることによって冷却水温度THWが低い温度で推移するようになったときに、基準温度Tbse2についてもこれを低い温度で推移するように設定することができる。これにより、サーモスタット30単体の機能が正常である場合には、基準温度Tbse2が所定温度Taに達するより前に冷却水温度THWが所定温度Taに達するようになり(時刻t33)、サーモスタット30に異常が生じていないと判定される。
このように本実施の形態によれば、サーモスタット30の不要な開弁が発生した場合であっても、これに起因して同サーモスタット30が異常であると誤って判定されることを抑制することができ、サーモスタット30の異常を的確に判定することができる。
しかも本実施の形態では、機関回転速度NEが所定速度αより高いときにあって、同機関回転速度NEが高いときほど、言い換えれば、サーモスタット30を通過する冷却水の量が多く、直前の所定期間(異常判定処理の実行タイミング間)における冷却水温度の上昇量が少ないときほど、加算量ΔCntとして少ない量が算出される。そのため、サーモスタット30が不要に開弁されたときに、同サーモスタット30単体の機能が正常である場合における冷却水温度の上昇度合いに合わせて基準温度Tbse2が上昇するように加算量ΔCntを算出することができ、サーモスタット30の異常をより的確に判定することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
・機関回転速度NEが所定速度αより高いときの加算量ΔCntとして、機関回転速度NEが所定速度α以下であるときの加算量ΔCntより少ない量を算出するようにしたために、サーモスタット30の異常を的確に判定することができる。
・機関回転速度NEが所定速度αより高いときにあって、同機関回転速度NEが高いときほど加算量ΔCntとして少ない量を算出するようにしたために、サーモスタット30の異常をより的確に判定することができる。
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・機関負荷KL、車速SPD、外気温度THAに基づき算出した加算量ΔCntを機関回転速度NEに基づき算出した補正量Kaによって補正することに代えて、機関負荷KL、車速SPD、外気温度THAおよび機関回転速度NEに基づいてマップから加算量ΔCntを算出するようにしてもよい。
・上記実施の形態では、機関回転速度NEに基づき算出した補正量Ka(ステップS302)によって加算量ΔCntを補正し(ステップS303)、この加算量ΔCntを基準温度カウンタのカウント値Cnt2に加算することによって、同カウント値Cnt2を算出するようにした(ステップS107)。これに代えて、機関回転速度NEに基づき算出した補正量によって基準温度カウンタのカウント値Cnt2を補正することにより、新たなカウント値Cnt2を算出するようにしてもよい。具体的には、例えば図12に示す異常判定処理を実行すればよい。
図12に示すように、この処理では先ず、加算量ΔCntが算出され(ステップS106)、この加算量ΔCntが基準温度カウンタのカウント値Cnt2に加算されることによって、新たなカウント値Cnt2が算出される(ステップS107)。そして、機関回転速度NEが所定速度αより高いときには(ステップS401:YES)、機関回転速度NEに基づいて補正量Kbが算出されるとともに(ステップS402)、同補正量Kaによって上記カウント値Cnt2が補正される(ステップS403)。
・機関回転速度NEが所定速度αより高いときに上記補正量(KaまたはKb)を算出することに代えて、単位時間(例えば異常判定処理の実行タイミング間)においてサーモスタット30を通過する冷却水の量が所定量以上になったときに上記補正量を算出するようにしてもよい。なお単位時間当たりにサーモスタット30を通過する冷却水の量は、機関回転速度NEに基づき算出することが可能であり、またサーモスタット30の前後の圧力差を検出するとともに同圧力差から算出すること等も可能である。
その他、高回転領域(具体的には、サーモスタット30が不要に開弁される可能性のある回転領域)で内燃機関10が運転されているときに上記補正量が算出されるのであれば、同補正量を算出する条件は任意に変更可能である。
・上記補正量Kaあるいは補正量Kbを機関回転速度NEに基づいて算出することに代えて、単位時間当たりにサーモスタット30を通過する冷却水の量に基づいて算出するようにしてもよい。この場合、通過する冷却水の量が多いときほど、上記補正量として多い量を算出するようにすればよい。
・上記補正量Kaあるいは補正量Kbとして、機関回転速度NEやサーモスタット30を通過する冷却水の量によらず、一定の値を設定するようにしてもよい。こうした構成によっても、サーモスタット30が不要に開弁されることによって同サーモスタット30が開弁されないときと比較して冷却水温度THWが低い温度で推移するようになったときに、基準温度Tbse2についてもこれを低い温度で推移するように設定することができる。
・算出した補正量によって加算量ΔCntまたはカウント値Cnt2を補正することに代えて、図13に示すように、加算量ΔCntの算出(ステップS106)および同加算量ΔCntによる基準温度カウンタのカウント値Cnt2の更新(ステップS107)を機関回転速度NEが所定速度α未満であるときにのみ(ステップS501:YES)実行するようにしてもよい。
・本発明は、内燃機関の始動完了後における冷却水の実温度の推移と基準温度の推移との比較に基づいてサーモスタットの異常の有無を判定する異常判定装置であれば、適用することができる。そうした異常判定装置としては、例えば次の(ニ),(ホ)に記載する装置を挙げることができる。(ニ)内燃機関の暖機が完了する前において、機関運転状態に基づき算出した基準温度より冷却水の実温度が低くなったことをもって、サーモスタットが異常であると判定する異常判定装置。(ホ)冷却水の実温度が低いときにおいて、同実温度の単位時間当たりの上昇量が機関運転状態に基づき算出される基準温度の単位時間当たりの上昇量より小さいことをもって、サーモスタットが異常であると判定する異常判定装置。
・本発明にかかる異常判定装置は、バイパス通路を備えていない循環通路とバイパス弁を備えていないサーモスタットとを有する機関冷却系にも、適宜適用可能である。
本発明の第1の実施の形態が適用される車載内燃機関の冷却系の概略構成を示すブロック図。 同実施の形態で用いられるサーモスタット及びその周辺構造を示す部分断面図。 (a)〜(c)同実施の形態の冷却系における冷却水の流通態様を示す略図。 同実施の形態にかかる異常判定処理の実行時における冷却水温度と基準温度との関係の一例を示すタイミングチャート。 サーモスタットが不要に開弁されたときにおける冷却水温度の推移の一例を示すタイミングチャート。 第1の実施の形態にかかる異常判定処理の具体的な処理手順を示すフローチャート。 加算量の算出に用いるマップのマップ構造を示す略図。 第1の実施の形態にかかる異常判定処理の変形例についてその具体的な処理手順を示すフローチャート。 本発明の第2の実施の形態にかかる異常判定処理の具体的な処理手順を示すフローチャート。 補正量と機関回転速度との関係を示す略図。 第2の実施の形態にかかる異常判定処理の実行時における冷却水温度と基準温度との関係の一例を示すタイミングチャート。 同異常判定処理の変形例の具体的な処理手順を示すフローチャート。 同異常判定処理の他の変形例の具体的な処理手順を示すフローチャート。
符号の説明
10…内燃機関、12…ウォータジャケット、14…ラジエータ、16…ウォータポンプ、20…循環通路、22,24,28…通路、26…バイパス通路、30…サーモスタット、32…サーモスタット本体、34…感温部、36…メイン弁、36a,38a…弁体、36b,38b…弁座、38…バイパス弁、40…電子制御装置、42…回転速度センサ、44…吸入空気量センサ、46…水温センサ、48…車速センサ、50…外気温センサ。

Claims (11)

  1. ウォータジャケットと、ラジエータと、それらウォータジャケットおよびラジエータの間に冷却水を循環させるための循環通路と、同循環通路に設けられたサーモスタットとからなる機関冷却系の内部に機関駆動式のウォータポンプの作動を通じて強制的に冷却水を循環させる内燃機関に適用され、前記内燃機関の始動完了後における冷却水の実温度の推移に基づいて前記サーモスタットの異常の有無を判定する異常判定装置において、
    前記判定の実行中に前記内燃機関が高回転領域で運転された延べ期間が所定期間以上になったときに、同判定の実行を中止する
    ことを特徴とするサーモスタットの異常判定装置。
  2. 請求項1に記載のサーモスタットの異常判定装置において、
    前記延べ期間が所定期間以上になったことは、機関回転速度が所定速度より高くなった延べ時間が所定時間以上になったことをもって判断される
    ことを特徴とするサーモスタットの異常判定装置。
  3. 請求項1に記載のサーモスタットの異常判定装置において、
    前記延べ期間が所定期間以上になったことは、前記サーモスタットを通過した冷却水の総量が所定量以上になったことをもって判断される
    ことを特徴とするサーモスタットの異常判定装置。
  4. 請求項3に記載のサーモスタットの異常判定装置において、
    前記総量を機関回転速度の推移に基づき推定する
    ことを特徴とするサーモスタットの異常判定装置。
  5. ウォータジャケットと、ラジエータと、それらウォータジャケットおよびラジエータの間に冷却水を循環させるための循環通路と、同循環通路に設けられたサーモスタットとからなる機関冷却系の内部に機関駆動式のウォータポンプの作動を通じて強制的に冷却水を循環させる内燃機関に適用され、前記内燃機関の始動完了後における冷却水の実温度の推移と基準温度の推移との比較に基づいて前記サーモスタットの異常の有無を判定する異常判定装置において、
    前記内燃機関が高回転領域で運転された履歴があるときに、同履歴がないときと比較して、低い温度で推移する態様で前記基準温度を設定する
    ことを特徴とするサーモスタットの異常判定装置。
  6. 請求項5に記載のサーモスタットの異常判定装置において、
    当該異常判定装置は、前記内燃機関の始動完了後において所定期間毎に、機関運転状態に基づいて直前の所定期間における冷却水の温度上昇量を算出するとともに該算出した温度上昇量の積算値を前記基準温度として設定するものであり、
    前記内燃機関が高回転領域で運転されているときの前記温度上昇量として、同内燃機関が低回転領域で運転されているときの前記温度上昇量より少ない量を算出することによって、前記低い温度で推移する態様で前記基準温度を設定するものである
    ことを特徴とするサーモスタットの異常判定装置。
  7. 請求項6に記載のサーモスタットの異常判定装置において、
    前記高回転領域で運転されているときの前記温度上昇量として、機関回転速度が高いときほど少ない量を算出する
    ことを特徴とするサーモスタットの異常判定装置。
  8. 請求項5に記載のサーモスタットの異常判定装置において、
    当該異常判定装置は、前記内燃機関の始動完了後において所定期間毎に、機関運転状態に基づいて直前の所定期間における冷却水の温度上昇量を算出するとともに該算出した温度上昇量の積算値を前記基準温度として設定するものであり、
    前記内燃機関が高回転領域で運転されているときに前記積算値を減算補正することによって、前記低い温度で推移する態様で前記基準温度を設定する
    ことを特徴とするサーモスタットの異常判定装置。
  9. 請求項8に記載のサーモスタットの異常判定装置において、
    機関回転速度が高いときほど前記減算補正の度合いを大きくする
    ことを特徴とするサーモスタットの異常判定装置。
  10. 請求項5に記載のサーモスタットの異常判定装置において、
    当該異常判定装置は、前記内燃機関の始動完了後において所定期間毎に、機関運転状態に基づいて直前の所定期間における冷却水の温度上昇量を算出するとともに該算出した温度上昇量の積算値を前記基準温度として設定するものであり、
    前記内燃機関が高回転領域で運転されているときに前記積算値への前記温度上昇量の加算を禁止することによって、前記低い温度で推移する態様で前記基準温度を設定する
    ことを特徴とするサーモスタットの異常判定装置。
  11. 請求項5〜10のいずれか一項に記載のサーモスタットの異常判定装置において、
    機関回転速度が所定速度より高いことをもって前記高回転領域で運転されていると判断する
    ことを特徴とするサーモスタットの異常判定装置。
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