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JP2007255779A - 温冷熱供給システム - Google Patents

温冷熱供給システム Download PDF

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JP2007255779A JP2006079852A JP2006079852A JP2007255779A JP 2007255779 A JP2007255779 A JP 2007255779A JP 2006079852 A JP2006079852 A JP 2006079852A JP 2006079852 A JP2006079852 A JP 2006079852A JP 2007255779 A JP2007255779 A JP 2007255779A
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Abstract

【課題】各種の電力と各種の熱源を総合して有効に利用し冷房、暖房、給湯の3種の熱を総合して効率的に生み出す為の温冷熱技術と、それを用いた熱生成、蓄熱、熱搬送方式の具体化を行い、新しい温冷熱機器システムを実現する。
【解決手段】種々な熱と電力を動力源とした小能力のハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルを構成し、その長時間運転で得られた温冷熱とその他外部から得られる各種排熱を蓄熱タンクに貯留するシステムを提示する。かつシステムのエネルギー利用効率の更なる向上とより安全で安心なシステムとするための補完技術を提示する。もって市場における余剰エネルギーを有効に活用し、地球温暖化に優しい、1次エネルギー消費量の少ない、温冷水蓄熱を主体的に利用した冷暖房給湯が可能な温冷熱供給システムを実現する。
【選択図】図1

Description

この発明は、家庭、アパート、マンション、店舗、オフィスビル、作業場、工場等、人が活動する建物内で利用される50〜60℃程度以下の温熱、即ち冷房、暖房、給湯等の主に生活用温熱エネルギーの生成と供給システムに関した発明である。その着眼点は、その為に消費されるガス、石油、電力などの一次、二次エネルギー消費量の削減、地球環境保全、地震や火災に対する安全確保、実用性向上、商品寿命長期化など、次世代商品として要請されるサービス向上に向けての基本的な社会及び個人のニーズの高まりに応えられる商品システムを提供しようとするものであり、従って本発明の目的はそのニーズに応え、それを達成するための次世代熱エネルギー関連の商品システムとそれを実現するための関連する基本技術を明示しようとするものである。特に火災や地震時の安全性の面では火災助長、毒性ガス発生、ガスによる窒息などの危険を伴なう冷凍サイクル冷媒や燃焼ガス、石油などのパイプラインを建物内に設置する事が無い、基本的に安全なエネルギーライフラインシステムを実現しようとするものである。
今後、この民生用分野の温熱エネルギーの消費量は国内はもとより世界的に見て全ての国々で一層の増加をたどる事は避けがたく、従って現在まで地球的エネルギー問題、環境問題の解決のための有望な対象分野として多くの技術、発明が提案、検討、具体化されてきた。例えば発電所の発電効率を補う形の深夜電力利用機器、種々の排熱利用温水装置、究極の熱変換システムとしての地域発電を担うコージェネレイション装置、燃料電池、さらには自然エネルギー利用としての太陽熱温水器、地熱利用、など、更にはこれらの展開した事例などを含めて多くの研究検討が実施されて来ている。それはエネルギーの質という側面で見れば高温度燃焼ガス、ふんだんに安定してライン供給される最も使いやすい形態の電力などの高密度エネルギー利用から地域単位に供給され、使った後に環境負荷になりにくいエネルギーである所謂時間制約エネルギーや低温度低蜜度エネルギー利用への移行のための活動という風に捉える事が出来る。
しかしながら現在、家庭、事務所、店舗、作業場などで実際に使われている温熱供給装置である石油ガス暖房機、石油ガス給湯器、電動冷暖房機、電動ヒートポンプ給湯器等などの熱機器に比べて前述した新しい取組みの目指す方式は実用上に多くの課題があり現在の所主力の機器にはなっていない。その理由としては前述した様にエネルギーの供給が時間帯、季節、地域に寄らずに安定して得られ難いい事、さらにはエネルギーが石油ガスの燃焼熱や電力などと比べ低蜜度であるため変換し難く利用し難いエネルギーである事である。この結果、器機が複雑で大型化してコストが高くなり、品質特性が不十分で、かつエネルギー出力効率が悪い乃至は必要な時に必要な種類の温熱が供給し難いという課題を克服する充分な技術が確立できていない。
以上の状況を鑑み、今後、エネルギー効率が極めて高く、簡単でコンパクトなシステムを提供する為の新しい商品技術として100℃以下の低温度の熱源を利用するランキンシステム及び蓄熱材による温冷水を蓄熱して有効利用するシステムが提案され、検討されて来ている。ランキンシステムは熱源を利用して液冷媒を蒸発させ高圧力のガス冷媒とし、それにより膨張機を駆動して動力を得、その動力でヒートポンプ式冷凍サイクルの圧縮機を駆動しそれにより温熱と冷熱を得るシステムあり、大気の熱をこのヒートポンプで汲み上げて暖房を行う方式はその一つである。このランキンシステムと冷凍サイクルの組み合わせの方式では中間温度(90〜120℃)の熱源から熱を受けて蒸発して得られた高圧のガス冷媒が膨張して仕事をした後の膨張後のガスから再び上記熱源から受け取った熱量にほぼ等しい低温度の熱量(50℃近い温度)を放熱させる事ができ、かつ膨張仕事により作動されるヒートポンプ冷凍サイクル側からは室外熱交喚器に於いて室外気から吸収した熱量をやはり50℃に近い温度で放熱する事が出来る事になり、両方を合わせて前期中間温度の熱源の倍の熱量を獲得する事ができる等、極めてエネルギー効率の高い熱量の増幅を可能にするシステムである。
また、このヒートポンプ冷凍サイクルは冷却に利用することが可能であり、従って熱源により作動される冷暖房機の実現も可能である。しかしながら数百度の高温度の水蒸気を利用する蒸気機関などとは異なり、100℃前後の低温度の熱源を用いたランキンサイクルはエネルギー効率が悪く入力熱エネルギーに対しその出力動力エネルギーは10%に満たない。それを打開する為に高い温度の熱源を利用しようとすると、利用したい排熱熱源などのうち利用できない熱源が多くなり、利用可能熱源の確保が難しくなる。また一方では効率を上げる為にランキンサイクル装置とヒートポンプ冷凍サイクルの作動温度を高めるためには装置として耐熱性の向上などの新たな技術開発が必要となる事などからその実用化はあまり進んでいない。本発明はかかる状況に鑑み、100℃前後の熱源による作動する事が出来る簡便な熱システムとしてのランキンサイクルと一定の動力の供給があれば極めて効率よく作動する熱変換装置としての冷凍サイクルの最適な融合を図り、従来高密度エネルギーである石油、ガス、電力などが使用されていた低蜜度温熱を出力する民生用機器の分野にランキンサイクル駆動のヒートポンプ冷凍サイクルの適用を可能にし、新しい低密度エネルギー利用ライフライン実現しようとするものである。
同時に熱源の供給側と利用側の時間的ギャップと熱量の供給量と消費量のギャップを補うための技術として蓄熱材を利用した蓄熱システムとのドッキングにより低密度エネルギー利用ライフラインの完成度を高め実用化の道を開こうとするものである。そしてまた同時に、その新しい方式では前述した安全性の面でも飛躍的な向上を達成しようとするものである。
以上をまとめて概説すると、本発明の背景となる技術領域は、低蜜度の種々のエネルギーを利用して有効な熱源を作り出して供給する方式に関するもので、各種のヒートポンプ冷凍サイクルを作動させて利用可能な種々な形態の熱を出力させる熱変換技術とこの出力熱を蓄えるシステムをコア技術として温冷水を蓄え且つ利用する方式を確立し、さらに生活廃熱や冷房機排熱などの回収を図り且つ太陽熱やコージェネレイション装置の排熱等の次世代において着目される60℃程度の低温度の熱源を有効に利用するシステムを具体化する事である。このシステムを応用して建物内の総合的な熱供給ライフラインを開発するもので、これによってエネルギー使用効率の高い、火災や地震に対し基本的安全性を備えた、小さな家庭から大きなビルなどに渡って適応可能で、年間を通して便利に利用できる次世代型の熱のライフラインを確立しようとするものである。
現在の空調機器及び給湯器に利用される冷凍サイクルは、その大半が電動モータによって駆動される圧縮機が用いられている。ここで、電力駆動によるヒートポンプ式空調機の省エネルギー特性につき概論すれば、電力会社の火力発電と送電効率総合で約37%、ヒートポンプ運転での年間効率は外気温度が東京地区の場合、約400%程度であるため、この二つの値の積である総合効率は148%程度となり、暖房時に石油、燃料ガスを直に燃やす機器が約78〜95%程度であることに比べ、かなりの高いレベルの一次エネルギー消費量の改善、即ち、ガス石油消費量の低減に寄与しており、その効率は約1.6〜1.8倍となる。冷房運転に於いてもその効率が高いことは同様である。この事が空調機器や給湯器に電動モータ駆動圧縮機が使われている大きな理由である。
しかしながら、この方式では総合エネルギー効率では評価に値するが、それでも世界中で冷房運転に於ける排熱が大量にそのまま大気へと破棄されている現実の改善はこれからの大きな取組み課題となる。また運転費用と言う点では電力の単位エネルギーコストはガス石油の数倍高価であり、そのため割安な料金設定の深夜電力で運転して電気代を補う方式が考えられている。例えば深夜に氷を生成して蓄熱し、昼間の冷房時にそれを利用する、乃至は深夜にヒートポンプ運転を行い貯湯タンクに温水をため、このお湯を昼間に利用するなどの機器が実用化され一部で使用されているのはこの理由からであるが、大勢の商用電力利用機器では電気代が高価であることから来る運転費用のハンデイは大きい。その意味で夜間の安い電力を利用して温熱をつくりそれを昼利用する方式や技術の開発は電力負荷平準化という大きな視点から見て重要であり未だ不十分である。それは近年夏の昼間の冷房装置の一斉作動による電力会社の出力不足、所謂ピーク電力をどの様に解消していくかという視点と重なる。
また将来のエネルギー危機、地球温暖化防止の観点から開発が進められているコージェネレイション発電排熱装置、その一つである燃料電池などへの適応という観点でも、動力源に商用電力のみを用いる従来の冷暖房装置はこの流れにそぐわないため今後大きな壁に直面していくと考えられる。
しかして、本発明の実現化を進める上で背景となる現有技術は多方面に渡り、現在商品化又は具体化されている関連商品及び関連技術は、ガス石油燃焼給湯器及び暖房機、電力利用ヒートポンプ冷暖房機、太陽熱温水器、深夜電力利用ヒートポンプ蓄熱給湯器、深夜電力ヒートポンプ氷蓄熱冷暖房機、排熱利用吸収式冷房機、ガスエンジン駆動ヒートポンプ冷暖房機などがある。また具体化が開始され乃至は研究されている技術及び商品はマイクロガスタービンコージェネレイション(非特許文献194ページ)、燃料電池コージェネレイション排熱利用吸収式冷凍機(非特許文献201ページ、特許文献6)及び同蓄熱給湯器、排熱利用デシカント(非特許文献50ページ、特許文献7)、排熱及び太陽熱を熱源としたランキンサイクル駆動冷凍サイクル、各種ランキンサイクル応用技術などがある。
一方温冷熱を蓄熱して冷暖房給湯に利用するための多くの基礎技術も検討され、一部実用化されている。蓄冷熱タンクに温水と冷水を切り替える方式(特許文献8)や温冷水の水の流れを工夫したものなど(特許文献9)がある。更には熱の有効利用を目指したアイデアもあり、例えば冷房運転の排熱を利用した給湯(特許文献10)、風呂の排熱を利用した蓄熱層への蓄熱(特許文献11)、フィンチューブ熱交換器を利用した潜熱蓄熱方式(特許文献12)、給湯と空調を提供しようとする考案(特許文献13)等がある。
電動モータにより圧縮機を駆動する方式に代わって、温熱を利用して液冷媒を蒸発させ高圧冷媒をつくり膨張機を駆動するというランキンサイクルを作動させその出力により圧縮機を駆動し、ヒートポンプ冷凍サイクルを作動させる方式はいまだ広く商品化に利用されてはいないが、技術は既に公知である(特許文献1、2、4など)。また、膨張機として用いるスクロール膨張機、乃至はローリングピストン膨張機などについても公知例が見られる(特許文献3など)。燃料電池の低温度の排熱を利用してランキンエンジンを駆動し、その出力により圧縮機と冷凍サイクルを作動させる方式が見られる(特許文献5)。さらにランキンサイクル駆動冷凍サイクルによる空調システムの研究報告が見られる(非特許文献1)。
以上に見られる様に、従来30年以上昔から最近まで、多くの検討取り組みが見られる。その結果、明確になっている事の中に以下の二つがある。100℃前後の熱源によるランキンサイクル駆動冷凍サイクルにより得られる冷房能力は熱源1.0に対しほぼ0.4程度であり、電力駆動冷凍サイクルの場合ではその値が電力エネルギー1に対し4.0〜5.0であり、電力を石油燃焼熱から発電する為の効率を35%としてもその値は1.4〜1.75であり、前述の0.4は尚大きく劣っているためランキンサイクル駆動冷凍サイクルの方式は実用化する効果が無い。従って原理の研究は兎も角、今までこのシステム実用化のための具体的な構成、技術、装置の構成構造、設計などがほとんど検討されておらず、実用化に向けて多くの課題は手付かづの状態にあると言える。この結果として前述したエネルギー効率の改善もまた殆ど進んでおらず、鼬ごっこ状態にあると言えよう。
現在、低密度エネルギーである低温度温熱特に電力と熱を出力するコージェネレイション装置の排熱を利用して冷房を行う技術として吸収式冷凍サイクルとデシカント式温湿度調整機が実用化乃至は提案されているが、何れも冷媒を直に圧縮する方式ではないため、熱交換装置が大型化する、さらにはメンテナンス費用が高くなるという問題があり、吸収式ではそれによるコスト増、デシカント式ではさらに空気処理デシカント部材の劣化、安全性更には熱源の供給量が不足した時に電力でバックアップできないなど動力源を自由に選択できない等の課題があり本発明ではこれ等の技術は対象と考えない。ガスエンジンの軸出力で冷凍サイクル圧縮機を駆動し該ガスエンジンの排熱で温水を供給する所謂GHPと呼ばれる装置も実用化されているが、やはり動力源が燃料に限定されてしまう事、コスト、軸シール部分からの冷媒漏れ、装置の大型化などの点が課題でありその台数は少なく、自身の排熱の利用や外部排熱の利用も難しくやはり対象とは考えない(非特許文献2)。
近年販売台数が伸張している機器に深夜電力利用ヒートポンプ給湯器がある。(非特許文献3)。特徴は低価格の深夜供給電力で外気熱源汲み上げヒートポンプにより温水を作りタンクに貯湯して翌日利用するもので、その運転費用の安い事、安全である事、ヒートポンプによる高いエネルギー効率が地球温暖化に有効であることなどが評価されている。しかしながら大きな温水タンクが必要で、冷房機能が別途に追加が必要であることなどの課題も抱えている。
他方、安全という面でもここで取り上げる必要がある。現在、家庭、アパート、店舗、病院、オフィスなどのエネルギー供給ライフラインは電力、水道管、ガス管、石油管ライン等と並んで空調機用の冷媒配管が重要な役割を果たしている。ガス管は料理用、瞬間湯沸し用、暖房用、風呂の湯沸し用などのため建屋内にパイプがひかれている。一部の寒冷地域では、家庭、アパート、オフィスビル等では石油、灯油用のパイプが建屋内に導入されている。空調機器の屋外機と室内機を結ぶ銅管の中はフロン冷媒が封入されている。これ等の燃料や冷媒はその管路がリークしたり、火災や地震の発生により破損したり高温度の炎などに晒された場合には各種の危険の原因になる可能性がある。しかしながら現在のエネルギー装置技術、商品設計技術のもとでは、現状の方式が安全を含めた上で最適なシステムと考えられていると言える。一部には、特に電力供給会社によりオール電化住宅という謳い文句で燃料ガス、石油を用いないシステムが宣伝され、販売されている。なるほど安全の点では評価に値する方式であるが、深夜電力を利用するシステムの利用を広めるには昼間に利用する温冷熱を如何に小さな容積で蓄熱させるかが課題であり、現在では深夜電力を利用した冷房は少ないのもこれが理由と言えよう。しかしながら、安全という視点では大都会に置いてすら建物内外には石油ガス冷媒などの配管、貯蓄量を少なくし、むしろ緊急時のライフラインとしての水の貯留をすべきであるという考え方、認識は未だ不足しているといわざるを得ない。
さらには温水のみでは無く冷水も別々のタンクに同時に貯留して翌日に冷房に利用する機器も商品化されている。しかしながら建物周囲に設置が許される大きさのタンク容量では理想的な熱量の1/3〜1/4程度しか貯留する事ができない事が多く熱量が不十分な事から市場は広まっていない。一方、最近では地球温暖化を和らげるため、空調・冷凍・冷蔵などの機器に用いられる冷媒についても根本的な変革が望まれている。このため、地球温暖化指数であるGWP値の小さな新しい冷媒を用いる事、及び封入冷媒量を少なくする事、さらに封入冷媒が機器の据え付け、使用、廃却過程で大気中に漏れないで回収されるという3つの要素を改善しようとする要求が強まってきている。しかしながら空調機器及び冷凍機器に使用されている冷凍サイクルの中に封入されている作動冷媒はその大半がフッ素成分を含んだフロンガスが使われている。一部冷蔵庫用に水素と炭素を成分とした自然冷媒が、また深夜電力ヒートポンプ給湯器には炭酸ガスが使われているが全体の使用量から見れば極めて少量である。今後自然冷媒への転換乃至は使用量の大幅な削減と装置使用終了時点での全量回収が検討されているが、地球温暖化、火災などの完全安全化の要請を踏まえ、さらに今後の中国、インドなどの新興国での空調冷凍装置の急速な普及を地球規模で考えると改善スピードは充分とは言えない。ここで考えるべき技術の方向は冷媒を含んで作動するユニットを建物外に設置し、建物内に熱出力をどの様な媒体でどの様に安全に運搬するかを課題にしている。
特開昭57−26365号公報 特開平9−156358号公報 特開昭58−110885号公報 特開平10−220911号公報 特開2004−60550号公報 特開平7−217951号公報 特開2000−274734号公報 特開2005−37095号公報 特開2003−232569号公報 特開2000−179985号公報 特開2000−130885号公報 特開平5−5582号公報 特開平9−126501号公報 日本冷凍空調学会論文集 Vol16、No1、P11〜22、1999 日本建築学界偏「建築の次世代エネルギー偏」井上書院P40、図3-4 「建築の次世代エネルギー源」井上書院 P79、図5−9
冷暖房と給湯を必要な時に出力するシステムは、現在既に確立され商品化されており殆どの家庭で、これ等の熱出力の恩恵に浴して生活していると言える。しかしながら、以上、概説してきた様に、ここで検討しようとするものは将来に渡りより安全なライフラインシステムを提供するための技術分野であり、より1次エネルギー使用量を減じるためエネルギー効率を高め、排熱を利用し、太陽エネルギーを活用し、コージェネレイション装置の排熱と電力出力を利用することができ、且つそれらどんな形のエネルギー形態でも制約なしに作動でき、且つ安全性に断然優れた次世代のライフラインシステムに関するものである。その実現のための最初の課題は、低密度エネルギーを含むどの様な形態、更には広範囲の温度に渡る温熱エネルギーでも利用ができて、尚且つ冷房、暖房、給湯など使用者に要望される主に3種類に渡るエネルギー形態の熱を、どの様なタイミングでも効率良く安全に出力できるシステムを新しいライフライン構想の形で確立するため、その基本構成を明確にして提示する事である。
このシステムを確立する時に最も重要な事としてエネルギー効率の問題がある。例えばガス暖房機の様に、エネルギー量1の燃焼熱を用いてエネルギー量1の出力熱を得る標準的なシステムを考える。この燃焼暖房機に対して本発明で提示するシステムではどれだけ効率よく1.0を上回る熱出力を実現できるか? この課題に応える事が本発明の中心課題であり、それは外気を熱源としてヒートポンプ効果によりそれを汲み上げるという仕掛けと、
エネルギー発生と熱使用の時間的ギャップを埋めるための蓄熱システムの二つを基本技術に用いて次のような視点で課題解決できる新しい技術を提供する。その視点は深夜の安価な商用電力の効果的活用、冷房運転排熱の有効再利用、建物内で発生する排熱(風呂排水、他)の有効再利用、次世代エネルギー源となるコージェネレイション装置排熱や太陽熱の有効利用などであり、それを実現するための簡素でコンパクトで実用性ある装置に仕上げる事にある。
特に上記のような低密度エネルギーや、価格の安いエネルギーは特定の時間帯に特定のエネルギー密度で予測できないエネルギー量が得られる事が多い。その時間に特定され且つ変動する供給エネルギーを消費者が利用する時間帯に必要な濃度乃至は温度で必要な量を得られる様にする事が必須の課題となる。以下幾つかの事例を挙げる。深夜の安い電力を用いて利用者が必要とする時間帯で冷暖房や給湯を行う実用装置。発電と熱供給を同時に実現するコージェネレイション装置の排熱は発電運転される時に同時に発生するが、発電の要請により運転時間が設定されがちで、同時に発生する熱は余剰になったり不足したりするばかりでなく熱が余剰なために発電運転自体が制約される事も発生するなど、機器の有効利用への障害。また、昼間の太陽光を利用してそれが必要になる時間帯でその発電電力乃至は太陽熱温水を利用する為のより高度な装置。さらに関連する課題として、これらの1次エネルギーはその時間帯が違うばかりでなく、エネルギー密度も時間当たりの供給エネルギー量も必要な利用量にマッチングしていない事が多い。これらの供給と消費側のアンマッチを解消する技術や仕掛けは広範囲で高いレベルのものが必要である。その解決の為の1つの施策は熱の蓄熱であり、また冷房暖房給湯を総合的に制御するための熱変換技術である。この二つの課題は本発明の解決目標として捉えている。蓄熱などの高度な実用的な技術のより今まで使用し難かったエネルギーを利用して、必要な時に必要な形の温冷熱を必要なだけ得る事ができるシステムの実現こそが目標と言える。
このシステムを実現しようとする時、使用者の要望を叶えた仕様のシステムを実現するためのシステムコスト、及びその設置に必要なスペースなどが、使用者が投資出来るレベルに収めることが出来るか否かが大きな課題となる。この解決の為には作動熱密度の高いコンパクトな装置構成、簡略化された全体システムと各機構部品、信頼性の高い構成と設計、等が不可欠で、これ等の根幹のアイデアが完成度の高い簡略化された全体の熱システムを作り上げる上での最重要要素である事は論を待たない。本発明ではこれに該当する個々の重要な技術分野についても課題と捉えて明確に提示していく。
本発明が捉えている検討分野の実現には、安全と安心いう面でも大きな課題が横たわっている。先に述べた様に、現在、家庭、アパート、店舗、病院、オフィスなどのライフラインは電力、水道管、ガス管、石油管ライン等と並んで空調機用の冷媒配管が重要な役割を果たしている。火災、地震などの際の安全という側面で見ると水道管を除いて何れのライフラインも危険性が存在する。それは平時の有用性は勿論正当に評価されるが、同時に火災、地震などの緊急時には火災の助成、爆発、毒性ガス発生乃至はリーク、窒息などの形で人の安全を時には脅かす存在でもある。熱関連機器としての冷媒配管込みの空調機もまた同じリスクを負っている。そこで例えば、供給に余裕を持った電力ラインと空気、水道水及び温水のみのライフラインが実現出来れば地震発生などの緊急時の安全性は飛躍的に高まる。特に大都会の安全性は格段に高まると想定される。従って石油、ガス、冷媒等を建屋内に導入せずに、かつ屋外設置の熱源装置から建物内に水乃至は空気により安全に温冷熱供給するのに適した熱変換、貯留、搬送方式を実現する事が極めて重要な課題となる。合わせて水の貯留は緊急時のライフラインである水供給源としての価値も無視できない。
前述した様に、装置作動媒体としての冷媒についても根本的な変革が望まれている。 このため、地球温暖化指数であるGWP値の小さな新しい冷媒を用いる事、及び封入冷媒量を少なくする事、さらに封入冷媒が機器の据え付け、使用、廃却過程で大気中に漏れないで回収されるという3つの要素を改善しようとする要求が強まってきている。そこで本発明ではより安全な冷媒を、屋外に設置されるユニット内にのみ制約して用い、かつその漏れのチャンスを最小化し、しかも地震、火災などの際にも少なくとも建屋内には被害が及ばない構成と方式に立脚したシステムを確立することが重要な目標であり、それを満たした上で前述してきた多くの課題に対する施策を提示する。
以上の課題を解決するために一連の技術手段を提示する。発明1、2、9は本発明の温冷熱供給システムの最も実現し易い基本的な形態で、種々な電力により駆動される圧縮機により作動されるヒートポンプ冷凍サイクルを組み込んだ温熱乃至は温冷熱供給装置を利用した二つの異なった方式を示している。ここで言う電力とは通常の商用電力、時間帯別電灯契約などと呼ばれる特殊な時間帯別の価格設定された電力、割安な価格設定された夜間のみ供給される通称深夜電力と呼ばれる電力、ガスエンジンなどの各種コージェネレイション装置で発電される電力、太陽光により発電される電力など種々の電力を対象に考えている。深夜電力は電力供給会社の価格体系の下では電力価格が極めて安価であるという利点があり、コージェネレイション装置の出力電力は石油、ガス燃料などの1次エネルギーの利用効率が高くその活用は地球温暖化防止の点などで優れており、太陽光発電は自然エネルギー活用の視点で理想的である。しかしながら夫々の電力は供給できる時間帯が制約されている事が多く、従ってこれらのエネルギー源をその供給される時間帯で利用して温熱をつくり、その出力を温冷水の形で貯留し、それを利用者が必要な時間帯に利用することが本発明の発想の最初のキーポイントとなる。請求項1では温冷熱供給装置内に組み込んだ電動ヒートポンプ冷凍サイクルを運転して同時に温冷熱を供給し、温水タンクと冷水タンクに同時に温水と冷水を貯留させる為の実用的な新しい方式を発明1として提示している。
この方式は一つのヒートポンプ冷凍サイクルの運転により温冷熱の両方を温水タンクと冷水タンクに貯留する方式であるから動力となるエネルギーの利用効率は極めて高く、且つ請求項9に示したように価格が割安に設定された深夜電力などを利用して圧縮記を駆動して得た熱をタンクに蓄えて、冷暖房乃至は給湯を利用する時間帯にそれを利用する事は極めて容易であり、エネルギー活用の点で合理的であるといえる。請求項1から請求項21にわたって示した温冷熱供給システムに関する技術がもたらす地球エネルギーと環境の視点での効果は以下の様な技術とシステムの側面から捉える事ができる。1、各種排熱熱源の活用ができる(蓄熱に置き換える)、2、各種の電力を有効に利用できる(蓄熱に置き換える)、3、ヒートポンプを利用しているのでエネルギー効率が高く、出力エネルギーが大きい、4、給湯用の低温度水道水を利用したヒートポンプの熱効率が高い、5、冷暖給湯の間の相互エネルギーシナジーが得られる(各熱を蓄熱する)、6、ヒートポンプ用圧縮機の出力を小さく出来、その分ヒートポンプエネルギー効率が高くなる、などの項目である。6、の圧縮機の出力に関する項目について説明すれば以下の様になる。本発明のシステムは温水タンクと冷水タンクなどの熱蓄熱を前提としており、例えば家庭のエアコン暖房の場合で比較すると、通常4台程度の冷暖房エアコンは1〜1.5馬力程度の機種を4台利用している家庭を考える。その運転時間は真冬でも各部屋のエアコンの運転時間は平均で4時間程度であり、4台合わせて16時間となる。本発明のシステムで同程度の全暖房熱量を得ようとすると約1.2馬力のヒートポンプシステムを約16時間運転してその出力熱を温水タンクと冷水タンクに貯留する事ができる。従って現在エアコンを4台所有する方式に比べて総計の馬力数は約4分の1で済み、熱交換器など他の装置を3馬力程度と大きめに設計する事によりそのヒートポンプユニットのエネルギー効率は著しく向上できる、という事から来ている。以上、本発明システムの六つのエネルギー視点でのポイントを挙げた、1〜5の内容は以下順次取り上げて説明していきたい。
一方、本発明方式の問題点の一つは温冷水の二つのタンクが嵩張る事である。例えば温水タンクは平均的な家庭の一日の暖房負荷を全て蓄熱で賄おうとすれば2立方メーター以上の温水タンクが必要となり、実際に機器を据付る際には、据付スペース及び据付費用が嵩むという問題があり、家庭では400立方メーターが最大限と言われている。そこで請求項1では水タンクに潜熱蓄熱材を設置して小さなタンク容量でも目標の効果を発揮させるというものである。ここで重要なことは高価な潜熱蓄熱材の使用量を如何に減らして同時に蓄熱タンクの容積を小型にするかという命題である。其の為に請求項1では温熱用の潜熱蓄熱材を温水タンクに設置して暖房と給湯に利用し、請求項19では冷熱用の蓄熱材は冷水タンクの氷蓄熱を利用する方法を提示している。また請求項18は深夜電力の時間帯にも冷房乃至は暖房運転させる制御を取り込んで、建物の外壁の断熱効果が十分である場合には、建物に冷熱乃至は温熱が蓄熱されるから結果的に潜熱蓄熱材の所要量が低減できる。平均的な140平方メートルの4人家族の家ではこれ等の施策により400リッター程度の総タンク容積で冷暖房と給湯が賄える事がわかっている。潜熱蓄熱材を利用せず、制御上の工夫が無い場合に必要なに3立方メーターの容積に比べて約10分の1の容積で済む。 その際に蓄熱材の融点温度と蓄熱材の設定選択が重要である。温水タンク用は通常の給湯利用温度である44℃以上で、ヒートポンプ冷凍サイクルで温水を供給する時の冷凍サイクルの高いエネルギー効率と10年以上の信頼性の高い運転を保障するための凝縮器放熱温度限界として60℃以下が選定されるべきであり、これらの使用を満たす潜熱蓄熱材はパラフィン等の有機化合物乃至はチオ硫酸ナトリウムなどの無機水和物など広く応用されている材料を利用できるのも利点である。
冷水タンク用としては水を利用した氷蓄熱方式では低温度作動が余儀なくされて、エネルギー効率上の問題があるとするならば、他の潜熱蓄熱材を使う方法を検討する。蓄えられた冷熱で冷房運転ができるように4℃〜20℃の範囲に融解温度を持つ潜熱蓄熱材を設置するのが一般的である。4℃以下では冷水の凍結領域に入り安定した運転ができないし冷水温度が高いほど蓄冷の時の運転熱効率は高まる事を考慮している。また20℃以上では冷房能力と冷房時の冷房される空間の温湿度制御状の問題があるからである。一方25〜30℃の温排熱を得ることができる場合にはこの冷水タンクにそれを蓄熱して利用するという観点からは10℃〜25℃程度の融解温度とする事が理想的である。さらに以下の効果を考慮して実際の利用形態にあわせて融解温度を設定する。請求項19に示す様にこの冷水タンクは当然冬季には温水タンクとして転換して利用するので双方のタンクの蓄熱材により暖房と給湯の熱負荷に応えるに十分なだけの温熱用のタンク容量を得やすいという大きな利点がある。尚且つこの方式の最大の利点として、温熱用のタンクと冷熱用のタンクに夫々融解温度の違う2種類の潜熱蓄熱材を設置できるから、請求項8に示すように外部からのその他各種温排熱を利用する時にはその温熱の温度の違いにより二つのタンクを選択的に活用する事が出きる事が温熱利用上の大きな効果を得る事となる。即ち例えば30℃程度の温熱廃熱が外部から得られた時は例えば20℃の潜熱蓄熱材を設置した冷水タンクの方に連通し、20℃で蓄熱させ、後にこの蓄熱された20℃の温熱を利用して前述した電動ヒートポンプの作動効果により例えば55℃まで加熱し、それを50℃の温水タンク側の潜熱蓄熱材に蓄熱して必要な時に利用する事ができるわけで、今後市場で急増すると推定される各種温度帯の温熱源を蓄熱して有効に利用できるという効果を産むものである。
費用の節約が出きる氷蓄熱の方式と上記の潜熱蓄熱材の双方を組み込んで小容積で十分な潜熱量を得る方式も魅力的な方式である。外気等を熱源とし、深夜電力などの電力を利用して温熱供給装置に組み込んだ電動ヒートポンプ冷凍サイクルを作動させて温水タンクに温熱を貯留し、その温熱により給湯や暖房に利用する事は通常良く行われているが、この種の温熱で冷房する方式は一般的に利用されていない。他方、熱源を利用した方式では吸収式や吸着式と言われる技術は冷房を実現しており、特許文献6、7はその事例である。しかしながらこれ等の方式の問題点は機器構成が複雑でメンテナンス費用などが嵩むこと及び熱源の熱量が不足した時に電力で補って運転を継続する事が出来ないという不安があり、ここでは対象と考えていない。請求項2では別の新しい冷房出力の方式を特定して提示している。即ち一般にランキンサイクルと呼ばれるところの熱源を利用して高圧ガスを発生させその動力を出力させるサイクルであり、この動力を利用した冷凍サイクル即ち熱源駆動圧縮式ヒートポンプ冷凍サイクルを取り上げている。この方式で冷房効果を実現出来ることは特許文献1乃至5などに見られるが、このランキンサイクルは利用できる熱源の温度が低い時にはそのエネルギー効率は低く、熱源駆動ヒートポンプは前述した通り熱源1に対し0.4程度の冷凍能力しかエネルギー出力として得られないため実用的価値が低く実際の商品化の技術開発はほとんど行われていないと言える。
そこで請求項2では電力特に料金の安い深夜電力などで温水を貯留し、利用側熱変換装置に組み込んだランキンサイクルを組み合わせてその出力で少なくとも冷房を行わせるシステムを発明として提示している。割安な電力で且つ高いエネルギー効率のヒートポンプにより格安に貯留された温熱を利用することによりランキンサイクルのエネルギー効率の悪さは薄められ、吸収式などと比較して簡単でコンパクトで電力でもバックアップができ且つメンテナンスのほとんど不要なランキンサイクルと冷凍サイクルを組み合わせたハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルを利用することにより、より実用的な冷暖房給湯を行える水熱源システムを提供できる。
ここでランキンサイクルとは、温熱を用いて高圧の液媒体を蒸発してガス化し、その高圧ガスを膨張機で膨張させるとともに動力を出力するものを意味し、その出力である動力を用いて冷凍サイクルの圧縮機を駆動するものである。この時、圧縮機の駆動用動力として膨張機とともに電動モータの出力を組み合わせて利用する即ちハイブリッドとする事も含めて提示するものである。この請求項2の発明は温水タンクを中央に挟んだ電動ヒートポンプと熱源利用ヒートポンプの相乗効果を上記のように実現しようとするものであり、さらに請求項3と13で示される冷房排熱の利用、請求項8に示される外部から供給される各種排熱の取り込み利用、さらには請求項7に示す様に温熱供給装置のヒートポンプ冷凍サイクルと利用側熱変換装置のヒートポンプ冷凍サイクルを一つのハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルとし、温熱供給装置と利用側熱変換装置を1つの装置にする応用発明の基盤となるものである。
利用側熱変換装置での冷房運転におけるエネルギー効率を高めるための1つの技術を請求項3と13に提示する。即ち、ヒートポンプ冷凍サイクルによる冷房運転においてはその冷房熱量に等しい温熱と圧縮機を駆動するために要したエネルギーの和が温熱として排熱される。熱源駆動圧縮式ヒートポンプの場合圧縮機を駆動するために要したエネルギーとは温水タンクの熱源を利用して使った熱量であり、結果としてこの熱量と冷房として得た熱量に等しい熱量の和が凝縮器から放熱される。この放熱量を再度温水タンクに蓄えて利用する為には請求項3と13に示した技術が必要である。即ち、利用した熱源側の温水は例えば95℃から80℃程度に温度を下げて同量の温水が再び温水タンクに戻される。一方前記凝縮器からの40℃前後の放熱熱量は、温水タンク内に貯留しておいた低温度の水道水に蓄熱させるか、予め温水タンクに空きスペースを設けておいて、この放熱量で40℃程度になった水を温水用の供給水源として利用するなど、何れかの方法が採られる。
ここに述べた冷房の排熱利用に関する一般の技術は幾つかの事例で既に検討されている(特許文献10)が、ここでは本発明のシステムに於けるその効果を最適な方法で具体化する技術と構成について提示するものである。その最も重要な視点は低温度の熱源と成る水道水か温水タンク内の低温度の水を利用して熱源駆動圧縮式ヒートポンプ冷凍サイクル(略して熱源駆動ヒートポンプと記す)の凝縮器を冷却する事にある。熱源駆動ヒーポンのエネルギー効率は前述したように0.4程度であり電動式ヒートポンプの4.0〜5.0に比べて極めて低い。この効率を高めるための最も確実で効果ある方法は凝縮圧力即ち凝縮温度を下げることであり、それによりランキンサイクルの出力を高める事が可能で同時に駆動される冷凍サイクルの圧縮機の負荷が軽減され、結果として駆動出力増加と駆動負荷軽減で相乗効果的にエネルギー効率は高まり、冷房能力を増加させる事ができる。
この凝縮温度を下げる最も確実な方法は請求項3に示した様に、実際に得られる最低温度の温水(冷水)で冷却する方法であり、最低温度の温水とは新しい水道水またはそれを温水タンクに貯留したものである。そしてまたこの冷却熱量は温水タンクの温水化熱源として有効に利用される事になる。例えばコージェネレイション装置の排熱や太陽熱などで得られる熱源温水が70℃、前記凝縮器を35℃の室外空気で冷却すると凝縮温度は50℃程度となるが、夏場の23℃の水道水で冷却すれば凝縮温度は約34℃と低くできる。この結果ランキンサイクルの駆動原動力となる温度差は70℃と50℃の差が70℃と34℃との差即ち20℃が36℃となり、駆動力の源泉となる倍近い温度差を与える事ができる。他方冷凍サイクル側では冷房用の冷却器の蒸発温度は12℃程度であるから圧縮機の負荷となる圧縮比の原因である温度差は50℃と12℃の差が34℃と12℃との差即ち38℃が22℃となり温度差をほぼ半分近くに軽減できる。即ち負荷が大幅に軽減できる。
この結果室外空気冷却では20℃の温度差でランキンサイクルを作動しその出力で38℃の温度差の熱を汲み上げる冷凍サイクルを駆動させなければならないのに対し、水道水で冷却する場合は36℃の温度差でランキンサイクルを作動しその出力で22℃の温度差の冷凍サイクルを駆動させれば良く、熱源温水エネルギー消費量1.0に対して得られる冷房熱量の比である冷房エネルギー効率COPは机上では0.35から0.55に向上した結果が得られている。さらにこの凝縮熱を温水をつくるための熱源として利用される熱量を有効な熱出力とみなせば、冷房運転時のエネルギー効率COP0.55は駆動熱源1.0の全てと冷房熱量が回収されて足されるから2.10(0.55、1.0、0.55の三つの和)となる。電動ヒートポンプ冷凍サイクルでのCOPは発電所効率0.35を含めると装置全体として1.40〜1.75程度であり、1次エネルギー基準のエネルギー効率は数十年の歴史を持ち現在最高レベルの技術水準にある電動式の単一冷房機に対し20%〜50%上回り、実用化に効果あるレベルの値となる。本発明になるシステムで圧縮機の駆動源として電力を利用する場合でも低温度の水道水を利用する方式は勿論有効で、ヒートポンプ作動効率は1.6〜1.8倍に向上する事がわかっている。従って外部から50℃以上の熱源が得られる場合にはヒートポンプにより水道水を36℃程度の温水とし、其の後前記排熱を利用して50℃程度まで加熱する方法は極めて有効で実用的な技術である。
請求項3の発明は以上のエネルギー向上効果とともに次の効果が重要である。即ち従来は60℃程度の低温度熱源を利用した冷房方式は吸収式、吸着式などの方式でも技術的にも冷房能力確保が難しく、エネルギー効率も充分でないため商品化の動きも広まっていない。この熱源利用ヒートポンプ冷凍サイクルをベースにした発明はその点をブレイクスルーするものであり、今後全地球的に益々有効利用が求められる低温度熱源利用に大きく貢献するものである。この発明も請求項12の具体性があって始めて実現できるものである。凝縮温度を低温度の水道水で冷却して下げる効果は冷房のみではなく暖房運転の時にも有効な事は勿論である。
請求項4の発明はさらに温冷熱供給システム全体のエネルギー効率を高める方式を提示している。これは温水タンクへの温熱供給装置と、この温水を利用した利用側熱変換装置の双方に熱源駆動ヒートポンプを利用したもので、請求項1、2に対し温熱供給装置にも熱源駆動ヒートポンプを利用し、屋外空気からヒートポンプにより熱を汲み上げる効果を加えたものである。
例えば100℃のガス燃焼熱を動力源として温熱供給装置の熱源駆動ヒートポンプを作動して室外空気を熱源として24℃の水道水を70℃まで加熱し温水タンクに貯留し、この温水を動力源として熱源駆動ヒートポンプを作動させて24℃の水道水を12℃まで冷却して冷房用に利用し排熱は温水タンクに戻すというシステム構成が代表事例である。このような場合2回のヒートポンプ作動効果により100℃の燃焼熱源の熱量1.0に対し約0.70程度の冷熱量が冷却された12℃の冷却水として得られる事が試算されている。この二段の熱源駆動ヒートポンプ方式は単段のものに比べて極めて高い効率を達成できる事が知れる。それは一段目で熱源である室外空気から熱を汲み上げ、二段目は請求項3の効果を実現できるからである。暖房や給湯の熱を得ようとする時にも二段の熱源駆動ヒートポンプを作動させる事は有効で、単段で温熱を得る場合に比べ二度室外空気から熱を汲み上げる効果により室外空気温度が15℃の条件の時の試算では1.0の熱源を利用して約0.75程度の温熱獲得となっている。但し出力温熱の温水温度は48℃程度に下がって出力される。
炊事、入浴用の温水温度として必要な最低温度を48℃に設定しているわけで、それはこの温度を高めれば全体のエネルギー効率は低下するからである。室外空気温度が7℃程度より下がる時期には70℃の温水を熱源にして熱源駆動ヒートポンプの動力源として作動させてもエネルギー向上効果は少なく、従って厳冬期には高い温度の熱源を利用した単段方式の方が実用性が高い事が多い。
請求項5ではハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルにより温冷水をつくり温水タンクと冷水タンクに別々に貯留し、それを利用して冷房暖房給湯を行うシステムを提示している。石油やガスの燃焼熱、発電と熱生成を行うコージェネレイション装置の排熱、太陽熱、バイオマスによる生成熱、生活廃熱などを動力源用の熱源に用い必要により電力を利用して冷凍サイクルの圧縮機を駆動するものである。構成したシステムに於いて、冬季などにおける冷房が不要な時はその出力冷熱はシステム外の部分例えば屋外空気や外部機器の排水等に放熱させながら前記ハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルを作動させて温熱のみを貯留する。且つ前記冷水タンクも温水タンクとして使用出来る様に切り替えて利用する。
請求項1のシステムは温熱と冷熱の出力量の比は温熱が僅かに大目であるが殆ど等しい。しかしながらこのシステムでは温熱と冷熱の出力の量は圧倒的に温熱が多く、冷熱量は熱源の温度によって大きく変わるが70℃の温熱の場合には冷熱の割合は10%前後であり、
このシステムは給湯需要の大きなかつ年間の気温が低く冷房負荷の小さい寒冷地域に適したシステムである。その意味で、冷水タンクは温水タンクに切り替えて暖房用に利用できるのが利点である。この技術の最大の利点はどんな種類の温熱源でも利用して冷房暖房給湯が出力できる事にある。
請求項6は温水タンクと冷水タンクを持った上記のシステムに於いて主熱源以外の温熱の供給を受けられる場合にその活用を図る事のできる方式を提示する発明である。即ち給湯と暖房を行う時期には冷水タンクにも温熱を貯留するように切り替え、そこには温水タンクより低い温度の温熱を蓄熱する事を提示する。実際にこのシステムを運転すると、主熱源では無い副熱源たとえば太陽熱の温水などを利用する事は有効である。例えば太陽熱は日照によりその得られる熱量と温度が大きく変わり、主熱源に比較すると多くの時間帯で低温度熱源である事が多い。そこで冷水タンクにこれを貯留し、冷水を作るときに利用した熱交換器でこの温熱を汲み上げて高温度にして温水タンクに熱供給することは極めて容易である。この方式を利用すれば種々な温度帯の熱源でもこの冷水タンクに一端受け入れて利用する事が可能になる。
温水タンクと冷水タンクの構造としては別々のタンクでも良いが、一体のタンクで上部が温水タンクで下部が冷水タンクとし、その間は発泡断熱材などで水自体も熱も移動できない仕切り壁を設けた構造などが実用的である。請求項3の事例では温水タンクの中で請求項13に示されるような温度領域を設ける場合も似たような構造が採られる。但しこの場合は該断熱壁には水が少しずつ出入りできる流通口が開けられた構造となる。請求項6に該当する温度帯の温熱は他にゴミ燃焼器の冷却排熱、他の空調機器の冷房運転排熱、暖房に於ける換気排熱、スーパーマーケットの冷凍装置排熱、など多くの中間温度の温熱が対象となる。
請求項7は前述の二つの装置を一体化する発明である。一体化された装置にはガス膨張機と電動モータの双方によって駆動される電力膨張圧縮機を内蔵したヒートポンプ冷凍サイクルから成る熱源利用ヒートポンプユニットを組み込んであり、温熱供給装置として作動する時は各種エネルギー源を利用して温水をつくり温水タンクに貯留させる。一方利用側熱変換装置として作動する時は該温水や外部から供給される電力を利用して温冷熱をつくり、暖房、給湯、冷房を出力する。いずれの場合も屋外空気を熱源にしてそこから熱を吸収して前記エネルギーの熱量にプラスして出力させる所謂ヒートポンプ効果があり、尚且つ温水を作るときと温水を利用して暖房、給湯、冷房を出力する時の二回に渡り屋外空気から熱を吸収するから総合の熱効率は1.4〜2.4にも達する。ここでこの熱効率は石油、ガス等の1次エネルギー総燃焼熱量に対するシステムの出力熱量の比である。この計算の中には発電所で電力を作る時の発電と送電による悪化分である効率0.35も含まれている。
但し、冷房を出力する時には上記のような屋外空気熱源とした運転はおこなわず、請求項3に示したように、冷房排熱を再び温水タンクに蓄える様に作動させる方が得でこの場合の方が熱の取得効率は高くなる。二つの装置を一つの装置で兼用したからその運転は双方の装置の機能を交互に果たす様に運転制御することになる。従って先ずは利用者の暖房、給湯、冷房などの要望を優先させて該装置を利用側熱変換装置として作動させ、その運転の合間に温熱供給装置として作動させ、温水タンクに温水を貯留させておく。しかしながら、暖房、給湯、冷房の運転の要望が永く続いた時に温水タンクの温水の温度が限界値より低下した時は商用電力を利用した運転乃至は温熱供給装置としての作動を優先せざるを得ない。従ってこのような事が発生しないようにシステムの運転制御に事前予測を取り込んだ高度な制御を実現するとともに装置容量と温水タンク容量を正しく設定する事が必要なことは言うまでも無い。
請求項8の発明は熱源で加熱して温水を発生させて前記温水タンクに貯留させる方式の温熱供給装置についての技術に関し、種々の熱源を有効に用いて温水を生じる方式として最も簡便で確実な方式である。この方式では熱源の温度が例えばコージェネレイション発電排熱、太陽熱などの場合の様に30〜60℃程度と低温でもその温度の温水を前記温水タンクに貯留し、それを室外空気を熱源としたヒートポンプ冷凍サイクルで再度加熱するものである。通常は上記の低温度の温水は温水タンクの中間部分に貯留され、再加熱して60℃以上の高温度温熱にして温水タンクの上部に貯留する。他方100℃程度の熱源たとえば燃焼熱、太陽集光熱などで追い炊きすることにより95℃程度の温水を得ることは可能である。従って低温度の前記の熱源が得られて、かつガス石油燃焼熱、太陽集光熱、深夜電力ヒーター熱など高温度が得られる熱源によって求める温度にまで前記の低温度の温熱を加熱昇温できる場合にはヒートポンプ冷凍サイクルに頼らずにエネルギー効率の高い温熱供給装置を得る事が出来る。その効果は装置の低コスト化と各種熱源の有効利用にある。しかしながらこの様な熱源が無い場合はヒートポンプ冷凍サイクルにより屋外気から熱を奪って再加熱できればそのエネルギー効率上の効果は大きい。
請求項9の発明はすでに提案して来た前記の電動ヒートポンプ乃至はハイブリッドヒートポンプにおける圧縮機駆動用のモータの電力として優遇された割安な電力、例えば深夜電力を利用して温熱と冷熱を出力するもので、電力駆動ヒートポンプの作動効率の高さと安い電力コストという優れた二つの利点を活かした方式であり、特に日本国内では主力商品の1つになるという可能性を秘めている。温熱供給装置と利用側熱変換装置の両方にヒートポンプ冷凍サイクルのエネルギー向上効果があり高いシステムエネルギーを達成する事ができるため、この安い深夜電力を合わせて利用すれば今後重要になる地球温暖化に効果がありエネルギーコストの安いシステムとして有望である。例えば暖房運転時のエネルギー効率を説明すれば、火力発電所で発電された電力が家庭や店舗等に配電される経路でのエネルギー効率を36%とし、95℃の温水を出力する電力駆動ヒートポンプ装置の効率を350%とし、その温水を用いてヒートポンプを駆動し50℃の温水を出力する効率を135%とすると、総合効率はその三つの効率の積となり、170%となる。即ち1次エネルギー消費量1に対し1.7の利用可能エネルギーを得る事ができる。
これは石油、ガス燃料を家庭、店舗で直に燃焼させて熱を取り出す装置の効率である85〜95%に比べ2倍近くのエネルギー効率となる事がわかる。その上、深夜電力を利用する事による電力コストの大幅低減達成と、日中の必要な時にそれを利用できる利便性が同時に達成できる。昼間の電力を利用したヒートポンプエアコンの暖房運転の場合と同等のエネルギー効率のシステムが深夜電力を利用する事によって4分の1程度の運転コストで実現出来るわけである。一方給湯用の水道水によってヒートポンプ運転の凝縮器を冷却する請求項3、13の発明による技術が同時に応用される。この場合、詳細は省略するが総合エネルギー効率はやはり170%程度となり暖房時と同等の効果が達成できる。冷房時には昼間電力利用に於いて問題となるピーク電力問題も解消される。
深夜電力やコージェネレイション装置により発電された電力、乃至は太陽光発電装置により発電された電力はその発生時間帯が種々な理由により限定されており、太陽光発電ではその発電量事態がその日により変動する。従って冷房暖房給湯に蓄えられた温熱を利用した場合その日の使用量により温熱量が不足する事が発生する。そこで請求項9では常に利用できる商用電力を補充的に利用するもので、これにより全体のシステムは安定して作動できる様になる。温水タンクと冷水タンクの容量を大きくするとコストが増加し、据付けスペースの制約が問題になる。従って最適な容量の選択が行われる必要があるが、商用電力でバックアップされるシステムであればその容量は比較的小型に選定する事が可能に成るし、これをベースに更に温水タンクに潜熱蓄熱材を利用すれば都会のアパートのベランダにも据え付けられるコンパクトなシステムが実現できる。その容量の実際の選択は例えば太陽光発電の場合は一日の最大発電量によって発生させることができる温冷熱量を貯留できる容量で充分であり、通常その容量の80%程度の大きさに設定される。それは太陽光発電装置の大きさと設置条件などから設定できる。但しそれ以外にプラスに貯留できる温冷熱がある場合はその量も勘案する必要がある。
請求項10にはそのような動力源としての熱源の活用の仕方に関する技術を提示している。太陽熱ならばその太陽の照度により温度と熱量が変化し、コージェネレイション装置も作動条件により排熱の温度と熱量は異なる。また、温水タンクに貯留されている温水の温度と量も時により変化する。
例えば熱源として60℃の低温度のコージェネレイション排熱を利用する場合には、膨張機の出力は充分には得られないし、使用した熱源の熱量に比べ膨張機が出力することができる圧縮機駆動用動力即ちエネルギーの出力効率は極めて低くなるから、この場合は電力モータも作動させて双方の出力を合わせて圧縮機を駆動する方が望ましい。本発明はこれらの安定して得ることができない温熱をうまく利用して高圧ガスを発生させ、膨張機を作動させて圧縮機を駆動するものであるから、その原動力となる熱源の温度、供給され得る熱量、貯留されている熱量などによりその駆動力は変化する。これを電動モータで補って安定して圧縮機を駆動するには電動モータの駆動力を制御する必要がある。従って冷凍サイクルの作動状態などを検知した上で供給電力の出力電圧、周波数、その他必要な因子が適切に制御される必要がある。そこで究極の動力源として考えられるのが太陽光発電による電力と太陽熱による温熱とを利用して本システムの温冷熱供給システムに於いて温水タンクと冷水タンクに温冷熱を貯留させておき、尚且つそれでもその温冷熱が不足する時のために商用電力も利用できるようにする方式が考えられる。一般家庭の場合には12平方メートル程度の有効面積の太陽光発電装置と8平方メートル程度の有効面積の太陽熱装置を設ければこの方式で年間に渡りほぼ60〜80%以上の冷房暖房給湯のエネルギーを賄う事ができると試算されている。太陽光が充分に得られない日などを含めて残りの20〜40%は深夜電力を含めた商用電力の補助が必要になる。
ここで太陽熱装置を使うのは太陽光発電装置に比べ単位面積あたりのエネルギー取得効率が高く装置金額が安いため得られる総エネルギー量に対しトータルの装置金額が安くなるためである。一方太陽光発電装置を使うのは主に夏期の冷房のための冷熱を得る為圧縮機を作動させる際のエネルギー効率が電動モータが膨張機に比べて10倍程度高く、熱と比べて電力は少ないエネルギー量で冷熱が得られるからである。さらに、現在では太陽光発電装置の冷却をしながら同時に太陽熱を取り出す複合機能の装置の研究が進んできており、空気冷却方式乃至はヒートパイプ冷却方式などが検討されている。この装置を利用した場合には総受光面積は50パーセント程度も小型に設定できる事も勘案している。以上の本発明の方式では太陽光により発電された電力と発熱された熱量の双方を同時に利用して温水タンクと冷水タンクに温冷熱乃至は双方に温熱を溜め込んでおき、必要な時間帯にその熱を利用して冷房暖房給湯を行う。理想的には夜の12時前に温冷熱を使い切り、次の日の熱量の需要を推定し深夜電力を用いてその不足分を供給して置く事が望ましい。夏冬のピーク負荷の時にも深夜電力を利用することにより商用電力利用費用を最小限に抑える事が可能となる。潜熱蓄熱材を温水タンクと冷水タンクに用いた温熱貯留技術と太陽光発電と太陽熱の双方を用いたエネルギー確保技術とこれ等を結び付けた本発明の温冷熱供給システムが将来のガス石油エネルギー消費ゼロの民生用熱エネルギーシステムを実現する最有力候補となっている。
請求項11は利用側熱変換装置の技術に関し、特に温熱を出力させる、即ち暖房や給湯運転の時に、屋外の大気を熱源とした蒸発器を用いてヒートポンプ運転い、一方冷房を行う時は直接に室内空気を冷却する乃至はそのための冷水を冷却する蒸発器を用いてヒートポンプ運転を行う方法を提示している。低圧側の三つの流路を電動切り替え弁で切り替えることにより低温度の冷媒を暖房時と給湯時は外気との熱交換器、冷房時には屋内空気又は冷水との熱交換器に切り替えて連通させるものである。特にこの三つの蒸発器としての熱交換器の内部の作動冷媒は常に低圧側にあり、従って周囲の空気温度が変化してもその冷媒が液化して回路内に貯留してしまって作動している冷凍サイクル中での冷媒不足になるなどの支障を起こさない事が利点である。さらにヒートポンプ冷凍サイクルの凝縮器からの排熱を低温度の水道水に放熱させその熱を暖房や給湯に用いる方式がヒートポンプ運転のエネルギー効率向上、冷凍サイクルの安定性などで優れている(請求項3参照)。
請求項12は以上をさらに具体化したもので、温水タンク内の異なる温度の温水を有効に利用する技術である。温水タンク内を少なくとも二つのゾーンに分ける事によりエネルギー効率の良いかつ簡略化された温水貯留と活用の方式を実現しようとするものである。本発明の温冷熱供給システムでは温水タンクに種々の温度の温水を貯留するが、最上部の温度を熱源温水としての95℃程度の高温度温水を、最下部は水道水温度である20℃程度の低温度温水を貯留し、その中間部分には種々な熱源からの種々な温度の温水を貯留する。冬季は温熱供給装置は温水タンク内最下部の低温水乃至は中間部の中間温度の温水を加熱して60〜95℃の最高温度の温熱に加熱して最上部に貯留する。
例えば、ヒートポンプ冷凍サイクルによる冷房運転においてはその冷房熱量に等しい温熱とともに圧縮機を駆動するために要したエネルギーに相当する熱の和が温熱として排熱される。熱源駆動圧縮式ヒートポンプの場合圧縮機を駆動するために要したエネルギーとは温水タンクの熱源の使用熱量であり、結果としてこの熱量と冷房熱量に等しい熱量の和が凝縮器から放熱される。利用側熱変換装置で利用された熱源温水は例えば95℃から80℃程度に温度を下げて再び温熱供給装置で加熱され温水タンクの最上部の高温度部分に貯留される。一方前記凝縮器からの35〜40℃前後の放熱熱量は、温水タンク内の最下部に貯留しておいた20℃程度の水道水を加熱して中間温度例えば35〜40℃の温水にしてタンクの中間部分に貯留するか、前記温熱供給装置で更に加熱して前記高温度部分に熱源温水として貯留される。
例えば温水タンクを三つの温度部分に分けた方式の場合 温水タンクの最上部から最下部に渡りタンク内に二つの発泡材製の断熱壁を設けて三つの温度部分に分割しても良いしタンクそのものを3分割しても良い。一体のタンク内に上記の断熱壁を設けて三つの温度部分に分割しかつ低温度部分には前記凝縮器を配置して低温度水を加熱し、中間温度となった温水を高温度部分の下方位置の部分ないしは三つに分割した方式ではその中間温度部分に戻して貯留し、そこに熱源からの放熱用熱交換器を配置して該温水や一度熱源温水として利用した温水を高温度の熱源温水へと再度加熱させる。加熱された温水が最上部から給湯用に出湯されるに従い前記の断熱壁に設けられた小穴から上部の部分に流れ上がり、その分新しい水道水が最下部から補給されるように構成する方式が前述の効果を高めるための具体例でありこれがコスト低減、信頼性確保及びタンク全体の小型化等の点で実用的であり優れている。この結果前述した冷房運転の排熱を容易に低温度の水道水を利用して冷却して冷房運転の総合エネルギー効率を向上させる事ができるばかりでなく、少なくとも複数に分かれた温度部分に分割して順次温水を貯留するようにしたこの発明はそのタンクの複数の温度部分の水貯留容量と相互間の水の流し方を適正に設定する事により、理想的な温水貯留方式を実現出来る。凝縮器の放熱を低温度の水道水で冷却する事による冷凍サイクルの性能向上の効果は冷房運転の時だけでなく暖房の時にも効果があるのは勿論である。
本発明のシステムは冷房、暖房、給湯を出力するため、例えば給湯のみを出力するシステムに比べ温水タンクの体積容量は通常150〜200%程度に大きくなる。従って建物内外の据付けスペースの制約を考慮すると蓄熱効率の良い温熱貯留方式が強く望まれる。請求項13、14、15、19はそれに応える為の技術で、潜熱蓄熱材に温熱を蓄熱させるものである。例えば約95℃の熱源から得られる熱を安定的に貯湯するための蓄熱材の融解温度は熱源温度より若干低温度のもの例えば90℃のものを選定し、95℃の熱源温水が供給されている時は蓄熱材は加熱されて融解され液状になり融解潜熱を蓄熱する。他方温水が利用されてその温度が下がると蓄熱材は融解潜熱を放熱して固体となる。この融解潜熱により出力される温水は90℃より若干低い温度状態を保つ事が出来る。この為には蓄熱材の融解温度と高い融解潜熱、温水と良好に伝熱できる構造配置、蓄熱材の使用総量などを適正に設定する必要がある。
この場合、蓄熱材の材料特性、蓄熱材と温水乃至は熱源媒体回路との相対構造などにより熱の授受そして蓄熱材の相変化のスピードなどが大きく異なるから熱源温度と蓄熱材の融解温度の相対関係の設定は重要で、これが蓄熱材にからむ熱特性に影響する。パラフィンや糖アルコール類等の有機材料を蓄熱材に用いた検証では一般に蓄熱材の融解温度は熱源の温度より1〜10℃低く設定する事がのぞましい。ここでいう熱源の温度とは蓄熱材周辺に供給される熱源の時間変化を考慮した最低温度という意味である。即ち最低熱源温度より低い設定が必要である。また蓄熱材の設置位置はそれが熱の授受をする対象である温水の主流路内にある事が望ましい。そうでなければ温水を循環ポンプにより蓄熱材と連通させる装置などが追加で必要となるからである。
主流路とは温水タンク内に於いて熱供給のために温水が出力されて再度タンクに戻りタンク内を循環する流路であり、または給湯のために出湯された温水の出口とその補給用の水がタンクに供給される供給口の間でタンク内を水が連通する流路を意味する。この水の流れの中に蓄熱材と熱交換器を設置する構造が最も構成が簡略化できる為である。請求項14には冷水用の蓄熱材に関する発明を示している。設置場所については請求項13の温水用と考え方は同じである。蓄熱材は貯留温冷水と伝熱関係にすると同時に熱源媒体、出力温冷水等とも伝熱関係にある事が必要で、これ等を一体の構造に組み込む技術を請求項15に提示した。
間隔を持って積層された多数のフィン材を貫通する多数本のパイプで構成されたフィンチューブ熱交換器を潜熱蓄熱材の中に浸漬した構造が代表事例である。U字状パイプはその端部をリターンベンドで接続して2〜3の連通する管路を構成して媒体や水の連通回路とし、各管路を連通する媒体や水は管路外のフィンを通して蓄熱材や他の管路内の媒体との間で伝熱を行う。この構成を持った蓄熱方式の熱交換器の特徴は関連する全ての熱媒体が蓄熱材を含めて一体の構造体で相互に熱交換できる事にあり、これを温水タンクと冷水タンク内に設置してコンパクトで蓄熱容量が多く、熱交換特性の高いという理想的な蓄熱タンクを供給できる事である。
パラフィンなど一般に使われる潜熱蓄熱材は熱伝導性が悪く、熱媒体との間の伝熱を如何に促進するかが実機での問題となる。このため熱媒体のパイプ本数を増やしてパイプ相互間の距離を狭める、乃至はパラフィンに炭素繊維や金属繊維の混ぜ物をするなどの改善が図られている。請求項15は二つ以上の熱媒体相互間と潜熱蓄熱材との間の伝熱を促進し、かつパイプ本数を余り増加させることなく、しかも全体をパイプ組み立て構造体として仕上げるための潜熱蓄熱熱交換器の技術を提示している。蓄熱材に熱を供給する熱源の熱源媒体の管路と出力側の熱媒体及び蓄熱材との間の伝熱を促進させるため、例えばフィンチューブ構造を0.15mm厚さのアルミ製フィンの場合はそのフィン間隔を5〜20mm程度に設ける事が推奨される。熱媒体間及び蓄熱材との伝熱の為にはフィン間隔を狭める事が望ましいが、蓄熱材の融解前後の体積変化によるフィンやパイプへのストレスを低減させる事と材料コスト低減の為には一定以上のフィン間隔が選定される。フィンチューブ以外の案では引き抜きアルミ板材の両面に多数の切り起こしを設けて置き、隣り合う切起こし片の間に蛇行状に繰り返してU字に曲げたパイプをパイプ側面から押し込んで固定された状態にした前記のアルミ板材を多数重ね合わせて全体を構成した構造のものでも良い。
この場合はアルミ板材の裏表の両表面には熱源媒体のパイプと出力媒体のパイプを切り起こし片に挟まれた状態で固定し相互間の伝熱を促進する。他の事例では蛇行状に繰り返してU字成形された連続したパイプを多数枚数の短冊状のアルミフィンの側端面に設けたパイプ断面形状の切り欠き穴に挿入してできる所謂カチコミフィンチューブ熱交換器状の構造も、接続箇所の少ない連続パイプが使用できるという利点があり採用可能である。
この潜熱蓄熱熱交換器方式を実現するための主要な技術の一つは蓄熱材の相変化による容積変化を吸収する機構を有効に実現して熱交換器等の構成部材の破損を防止する事である。その機構とは、中に空気等の気体を封じ込めた直系0.5〜5mm程度の柔らかな樹脂カプセルを蓄熱材の中に分散して混入させておく方法、薄いポリプロピレンセルでパラフィンを包み込んで1cm程度の大きさの蓄熱材ブロックセルを水乃至はエチレングリコール等の液媒体とともに前述のパイプとフィンで出来た空間に充填させる方法、水などの溶液中にポリマーによるゲル状粒子としたパラフィンなどの蓄熱材を分散させる方法、これらアルミフィンの端部とタンク内壁面との間を隙間のある状態に構成して且つフィン自体に多数の蓄熱材逃がし穴を設ける乃至はそれと同じ効果のあるパイプ間の連結部材を用いる方法、パイプを水平にしてフィンを鉛直になるようにして液状の蓄熱材を上下方向に抜け易くする方法、などが採られる。どの方法が適するかは蓄熱材の選定、製造コストなどの絡みで選択する。
この体積変化の問題を完全な形で解決したものとして常に液状で作動する潜熱蓄熱材がある。それは水などの安全な媒体に潜熱蓄熱効果のある材料を微粒子状態にして混入させる技術で、例えばTBAB(テトラブチルアンモニウムブロマイド)の水溶液やパラフィンを20ミクロン以下の粒子径の水親和性樹脂製カプセルに封入して水に混入させてエマルジョン状にしたもの等がある。さらに必要なもう一つの技術は給湯用の水道水の安全を確保するため水道水中に蓄熱材や溶液などの浸入を防ぐ方法に関する。この有効策として水道水圧を常に高く保っておく方法と請求項17に提示した様にリークした冷媒がタンク内に充満して部分的に高い圧力部分をつくり、冷媒や蓄熱材等が水道水に混入する事が生じないようにする方法である。前者は水道水をプラスの給水圧力がかかった状態で回路を構成することが最も実用的である。以上の技術を背景にした潜熱蓄熱は温水タンクと冷水タンクの単位容積当たりの蓄熱量と伝熱特性を飛躍的に向上させ、タンク容量を1/2〜1/5に小型化できる。この結果現地での据付スペースの制約を解決しかつ現地への搬入工事を容易化できる。かつまた、例えば蓄熱温度を低くしても充分な蓄熱量が得られやすいから熱を供給するための装置の運転効率は向上するし、蓄熱した状態でタンク周囲の放熱量が低減できるため熱ロスが減少でき、総合的なエネルギー効率は上昇する。試算によれば装置全体の効率向上率は20%を超える事例もある。冷熱蓄熱タンクの場合の効果も同様である。
請求項16は蓄熱タンクに連通する水道水の上水としての安全衛生を確保するための構造に関する技術を提示している。蓄熱材と直接接触し且つその内部に利用者の飲料用水などに供される所謂上水を連通するパイプは内外管が互いに熱的に密着し且つ相互間に隙間を持った二重管構造とし腐食その他の原因でこのパイプにリークなどが発生しても蓄熱材や上水では無い温水などが上水の中に入り込み利用者の安全衛生を脅かす事のないように構成する技術である。二重管の間の隙間は基本的には屋外空気と連通させてリークなどは屋外空気へと漏れてリーク発生が判別できるように考えられている。
請求項18は深夜時間帯など料金が優遇された時間帯に温冷水をタンクに貯留する場合、昼間の熱負荷が大きい為水の顕熱を利用しただけではそのタンク容積は極めて大きなものとなり、その製品価格の高騰、建物内外に設置場所が無い等の基本的な問題がある。従って請求項13〜15に示される様な潜熱蓄熱材を利用して蓄熱タンクの容積を大幅に減少させ得ることがわかっている。しかしながら潜熱蓄熱材の価格はシステム全体の価格
の上昇となり商品化する上で大きな課題である。そこで請求項18は深夜電力時間帯が修了する前の一定の時間で冷房乃至は暖房運転を行う制御を導入し、建物の筐体や構造体を冷却乃至は加熱しておけば建物の筐体や構造体が蓄熱材の役目を果たし、前述した蓄熱タンクの所要量を20〜40%程度低減できる事がわかっている。この制御は総エネルギー消費量の面では若干の悪化を招くが、断熱構造の高い建物の場合はその割合は小さく、むしろ建物内の温度環境が安定して快適性が増すと言う点でよりすぐれた効果をもたらす。
請求項19では冷水タンクに温水用と冷水用の温度の違う潜熱蓄熱材の双方を設置すれば全体のタンク容積を最小化できる技術を示している。最下部に冷水タンク、その上に温水タンク更にその上に利用側熱変換装置乃至は温熱供給装置を載せて全体の設置スペースを最小化する時などに潜熱蓄熱材によりタンク容積を縮小する事ができれば、多くの設置スペース上の問題は回避できる事となる。この技術の優位制は冷水用潜熱蓄熱材は温水用の顕熱蓄熱材として働く効果を有することであり、温水用の潜熱蓄熱材はその逆の効果がある事であり、それが全体の小型化その他の効果を拡大する。請求項17は使用する冷媒に関する安全性についての発明である。本発明では地球環境を重視して例え漏洩しても地球温暖化に影響の少ない自然冷媒を採用する事を前提としている。この場合、冷媒例えばイソブタン、プロパン、アンモニアなど可燃性、爆発性、毒性があるものが多いが、本発明の装置では冷媒を封入した冷凍サイクルは一体の形で建物外に設置した空気調和機や温熱供給装置及び利用側熱変換装置内に収納する事を大前提としたから封入冷媒が自然冷媒であっても建物内の利用者にとっての安全性は高い。ここで一体とは膨張機側の作動冷媒回路とヒートポンプ式冷凍サイクルが機械的接合部が無く、金属熔接接合などを用いて一体とし、冷媒が漏洩し難いように構成されているという意味である。
このシステムの温冷熱出力は一体のユニット内に設置された密閉型の冷媒回路からユニット内で水、空気、二酸化炭素などの媒体へと出力される。そこからユニット外にはこれ等の、途中で漏れた時も安全でかつ補充などのメンテナンスが容易な自然媒体を用いて熱搬送される。この安全性に関する明確な技術構想が、一体のユニットに全ての密閉型冷媒回路を収納乃至はこれに準拠して少なくとも全ての冷媒回路が建物の外部に設置された構造とし、建物内に対し安全で、長期的信頼性が高いシステムを提供する事にあり。 現在世界の冷媒安全基準を審議する国際団体では、毒性、可燃性のある自然冷媒の使用基準として、室内空気に接する部分を持つ冷媒回路の場合はその回路に封入できる冷媒量に関する規制を設けている。即ち自然冷媒の特徴であるところの、燃えやすく、毒性のある物質の使用量には規制があるわけである。従って冷媒量の削減は勿論、該冷媒回路が室内に開放する乃至は室内空気と接する部分で冷媒の漏洩が無く、例え漏洩が生じても屋内空気への侵入が起きない構造が次世代の基準としての目標となると考えられる。
チューブを二重管とし、銅製の内管を内部に微細な立ち上がり凸部を設けたアルミ製の外管に挿入した状態で外管に外圧をかけて内管と圧接させる。内管外周と外管内周は該凸部を通じて熱的に接触し且つ内管から冷媒がリークした時には凸部によって構成される両管の間隙を通じて銅管の端部から直に屋外空気へと排出される。このため室内に冷媒を導入しそこでのリークに対応する場合に比べて極めて確実に屋外空気へとリークした冷媒を排気できる事になる。従って万が一リークした場合にもその冷媒が屋内空気に混入する可能性は極めて少なく、屋内での火災、毒性の影響を少なくしている。
一方、液体の熱媒体により屋内に熱を運搬する方法として伝熱特性に優れた潜熱効果のある冷媒以外に空気、水乃至はエチレングリコール等の顕熱を利用する媒体も使われている。これ等の媒体はフロンなどの冷媒の環境負荷や火災時の危険性が無い利点があるが、熱が顕熱により保持されることでその温度差及びそれが原因となる搬送動力が大きいという二つがシステムの総合熱エネルギー効率を低下させる。そこで水などの安全な媒体に潜熱効果のある材料を微粒子状態にして混入させた潜熱蓄熱材水溶液などの技術開発が進められているのは前述した。そこで請求項20の技術は潜熱蓄熱材を設置した蓄熱タンクとその熱を外部に熱搬送するための潜熱熱輸送媒体としての潜熱蓄熱式熱搬送媒体による方式の組み合わせを提示するもので、この組み合わせがエネルギー効率向上、熱処理量の増大、装置の小型化などに極めて大きな効果を生むものである。この効果を実現する為のキーは請求項に示した温度の設定である。この熱搬送媒体には潜熱蓄熱材としてのパラフィンを1〜20ミクロン直径の樹脂製微粒子カプセル内に充填させ、それを水に混入させてエマルジョン状態にしたもの等が利用できる。
さらに発展した形を示す請求項21では請求項15に於ける蓄熱材空間を冷暖房用の熱輸送媒体回路として解放連通させて、潜熱蓄熱材と熱輸送媒体を兼用させた流動性のある潜熱蓄熱媒体として潜熱蓄熱式熱搬送媒体を用いるもので、タンク内の蓄熱と屋内を冷暖房するための熱輸送媒体とを共有させる事で請求項20に示した2〜10℃の温度差を不要にし、また、請求項15に示した優れた熱交換特性とタンクの小型化を実現し、且つ蓄熱材の相変化による容積変化の問題を完全に払拭し、総合的なシステム熱効率の向上とシステムの構造の簡略化を実現するものである。以上は水を基本としたシステムであるから従来のフロン冷媒を基本としたシステムに比べ安全性と信頼性の高いシステムを実現できるものであり且つフロンなどの気液の蒸発潜熱に対し固液の融解選熱を利用するもので、その熱搬送性能は殆ど遜色ない。極めて有効な未来技術としてここでは商品化のための具体的な技術を提示している。
本発明の対象分野は民生用の建物内での冷房、暖房、給湯を提供する次世代のシステムに関するものである。一次エネルギーである石油、ガスが欠乏して安価には入手困難な時代の到来に備えて、各種排熱エネルギーや自然エネルギーを有効に活用して冷暖房給湯を安定して安全に供給するための新しい総合システムである。その主な商品化目標は高いエネルギー効率、不安定な排熱や自然エネルギーの有効利用、安全安心なシステムであり、次世代の燃焼ガス石油などを消費しない所謂1次エネルギー消費ゼロのシステム実現の方向を目指したものである。排熱は冷房運転装置排熱、建物内温熱排熱、換気排熱、建物外コージェネレイション装置排熱など様々なものが対象であり、新エネルギーは太陽熱、太陽光発電、ゴミ焼却炉排熱などやはり多くの種類がある。今現在、この時間的にも温度的にも量的にも不安定なエネルギー源を用い且つ一時エネルギーを使わずに安定して冷暖房給湯を提供する民生用の温冷熱装置は実現出来ていない。本発明はこの実現に一歩近づくため、冷暖房給湯を総合して効率を高め、熱源を利用して冷房できる実用的な装置の利用方法を明確にし、不安定に供給される熱を蓄熱して安定供給する温冷熱蓄熱及び供給方式を実現し、これらを安全安心なシステムで実現する方法と技術を提示している。
従来、以上に述べた様な効果即ち一時エネルギーの消費を限りなくゼロに近つけるための総合的な民生用エネルギーシステム技術は体系的なものが無く、また個々の効果が得られる細部技術はアイデアとしては散見されるが、それを如何に具体化して全体の民生用エネルギーシステムを纏め上げるかというシステム技術の確立はこれからの課題である。本発明は民生用の熱エネルギーシステムの将来の技術の方向を明確にし、それに向かうための次世代の具体的なシステム技術を提示した。きたるべきエネルギー不足と地球環境と資源の制約の時代の中でもより快適でエネルギー供給と安全の面で安心な冷暖房給湯システムの実現の端緒を拓こうとするものである。いわば次世代の建物内熱供給ライフラインシステムの確立の方向を担う技術を提供し、今後現在のガス、石油、冷媒を主軸とした民生用熱ライフラインシステムを未来志向のものへと転換し、商品化への端緒を拓くものと確信している。
以下、本発明の実施形態を、図1〜図6に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態である温水タンクと冷水タンクを持った温冷熱供給システムの全体構成図であり請求項5、6、10の発明を利用したシステムの代表実施事例である。請求項1では電力のみを動力源として利用するため図1の事例とはその点のみが異なるがその点を変更すれば図1は請求項1の技術を用いた事例といえる。請求項5では図1で分るとおり、電力と熱源媒体10を動力源4として用いて電動膨張圧縮機33を駆動してヒートポンプ冷凍サイクルを作動させる。このヒートポンプ冷凍サイクルはランキンサイクルと冷凍サイクルを一体にして構成されるもので図3に該サイクルの冷媒回路を示す。温冷熱供給装置2には上記に説明したヒートポンプ冷凍サイクルの主要部分が組み込まれており、図3に示すように動力源4として外部から電力が電動モータ24に供給され、また別の動力源4として燃焼ガス、石油の燃焼熱又はコージェネレイション装置などの排熱が90〜110℃の温水の熱源媒体供給104として熱源熱交換器103に供給されランキンサイクルを構成する膨張機冷媒回路114内の高圧力下にある液冷媒を加熱蒸発させる。本事例では冷媒として作動圧力が低く、冷凍サイクル熱効率が高いイソブタン乃至はプロパンを用いている。いずれも水素と炭素を成分とする自然冷媒であり地球温暖化に悪影響があるとして懸念されるフロン冷媒はここでは用いていない。蒸発した高圧力のイソブタン乃至はプロパンガスは膨張機22を駆動しながら自ら膨張し膨張機出力である軸109を回転駆動させる。
この結果、膨張機22乃至は電動モータ24の出力軸109は圧縮機23を駆動し冷凍サイクル115を作動させる。圧縮機23で圧縮されたガスと膨張機22で膨張したガスは電動膨張圧縮機33のケース内で合流して吐出111からケース外へ吐出され熱冷媒回路25の出口側を経由して温水タンク1に入る。この温水タンクの構造は図5に示され、吐出された高温度のイソブタン乃至はプロパン冷媒ガスは熱出力熱交換器112に於いて放熱して凝縮し温熱蓄熱器27の潜熱蓄熱材である49℃の融解温度に調整された炭素鎖数24のパラフィン乃至はポリエチレングリコールを溶融してそこに蓄熱する。図5の温水タンクは請求項13、15、16に示された夫々の技術の実施例としてここに提示されている。請求項20、21の技術も図5の事例をベースに他の技術に発展させたもので、図5を使って理解するのが分りやすい。
凝縮して液冷媒と成ったイソブタン乃至はプロパンは熱冷媒回路25を経由して再び温冷熱供給装置2に戻り、図3に於ける分流器113に於いてランキンサイクルである膨張機冷媒回路114と冷凍サイクル115とに分流され、膨張機冷媒回路側に分流された冷媒は液冷媒ポンプ116で昇圧され熱源熱交換器103に戻り再度蒸発しガス冷媒となりこれを繰り返す。冷凍サイクル側に分流された冷媒は冷媒制御弁119で適正な圧力まで膨張され低圧力低温度の液ガス混合状態となる。ここまでは冷房時も暖房時も同じ作動をするが、これ以下は夫々冷凍サイクルを作動させる状態が違うので先ず請求項1、5、6における冷房運転の場合について説明する。低温度の液ガス混合状態となった冷媒は冷却冷媒回路26を経由して温冷熱供給装置2から冷水タンク17に送られる。この冷水タンクには請求項14に提示された技術が利用されており、9℃の融解温度を持つ炭素鎖数15のパラフィンが潜熱蓄熱材として約150リッター使用されている。融解潜熱は約200キロジュール/キログラムであるから、その蓄熱量は約6700キロカロリーとなり、標準的な小家庭での4〜6時間の冷房運転の冷却熱を提供できる。これを冷水の顕熱で同等の効果を得るには600〜1000リーター程度の冷水タンクが必要に成る。
冷水タンク17内で冷熱蓄熱器28に組み込まれた冷水用熱交換器125を通して該蓄熱器28を冷却し前記潜熱蓄熱材であるパラフィンを冷却して潜熱を奪い固体化させる。この過程で蒸発したイソブタン乃至はプロパンは冷却冷媒回路26を経由して温冷熱供給装置2に戻り圧縮機23に吸引されて再圧縮され、以下これを繰り返す。一方温水タンク1に供給された水道水5は49℃に保たれた温熱蓄熱材27と熱出力熱交換器112により約47℃に加熱され給湯用温水15として建物内に供給される。以下更に詳細な作動内容を説明する。動力源4は請求項10に提示されている様に多くの種類のエネルギー源を表しており、これらを利用してハイブリッドヒートポンプを駆動する。此処で言う動力源4は電力、コージェネレイション排熱、燃焼熱などから生じる、システムの駆動用に利用できるエネルギー源の総称であり、その実際のものは具体例毎に異なり、熱源温水10であったり、熱源媒体104であったり、電動モータ24に供給される電力であったりする。電動膨張圧縮機33は電動モータ24及び膨張機107の出力によりシャフト109を経て圧縮機23を駆動するもので、所謂モータと膨張機の二つの出力で作動するハイブリッド駆動方式をとっている。
この電動膨張圧縮機を利用した方式が、現地で供給される種々な動力源を何時でも有効に使いこなすためのキー技術の一つである。熱源媒体供給104の供給量が不十分であれば電力を補助に利用して一緒に作動させてシャフト9の軸出力を維持するし、場合によっては都市ガスでさらに追い炊きしてさらに高温度の熱源にして膨張機22の作動だけでシャフトを駆動させることもできる。また、温度の高い100℃を超える熱源が豊富に供給される時には熱源温水10だけで作動させる事ができる。温水タンク1と冷水タンク17を設けたので、温冷熱供給装置2に小型容量のものを用いてもその運転を継続して温冷熱を時間をかけて蓄熱することにより2−3時間の大きなピーク負荷にも対応できるため温冷熱供給装置の小型化低コスト化に有利であるし、夜間の深夜電力や日中の太陽熱を利用して夕方のピーク負荷の時に備えて温冷熱を蓄えて置く事が出来る。図3で示すようにランキンサイクル114と冷凍サイクル115は同一冷媒を利用しかつ膨張圧縮機33から分流器113の間は共通の回路に構成したから全体の冷媒回路構成は著しく簡略化する事が出来る。以上の結果、実用化できる装置により高いエネルギー効率、電力容量低減、コストダウンなどで大きな効果を産む。
両サイクルの冷媒制御の要を担うのが分流器113と液冷媒ポンプ116及び冷媒制御弁119である。両サイクルへの分流流量はポンプ116と制御弁119の流量制御によって制御される。冷媒切り替え弁123は三つの蒸発器としての熱交換器を選択して何れかの熱交換器に冷媒を連通させる。室内熱交換器120はダクト経由で室内空気を直接冷却し、冷水用熱交換器125は冷水タンク17内に設置されて冷水タンク内の冷房に使われる冷水を冷却する。冬季など冷房を行わない場合は室外熱交換器121に於いて屋外空気の熱をヒートポンプ作動により汲み上げる。この三つの熱交換器で汲み上げられた熱は熱出力熱交換器112で放熱され温水タンクに蓄熱される。図3には示されていないが、熱交換器125に於いてこの放熱を行わせて冷水タンクにも蓄熱するようにした方式もあり、この場合図3の冷凍サイクルにはその切り替え回路が必要に成る。これは請求項6をさらに発展させたもので、冷水タンクに十分な温熱を貯留して暖房及び給湯野双方の温熱需要増に対応する。
温水タンク1内には図5に見るように熱出力熱交換器112と給湯用水道水5を連通する回路と冷熱出力媒体14である空調用の熱搬送媒体としての水乃至は不凍液等乃至は潜熱蓄熱式熱搬送媒体が連通する回路を構成するパイプが多数枚数のアルミ製フィンを貫通して拡管されてフィンのバーリング穴内径に接触固定された形でフィンチューブ熱交換器を構成しそれをパラフィンの潜熱蓄熱体27に浸漬した形で組み込まれている。このフィンと潜熱蓄熱材が三つの回路を流れる媒体間の伝熱を促しかつフィンが該熱媒体と潜熱蓄熱体27との間の伝熱を良好に保っている。49℃の融解温度のパラフィンの融解潜熱は氷の融解潜熱の60%程度であり、水のみを温冷水として顕熱で蓄熱する場合に比べ単位容積当たり約5〜6倍の蓄熱容量をもっている。このため蓄熱タンクとしては水に比べ約三分の一から五分の一の大きさで必要な蓄熱量を得る事ができる。このため現地での機器の据付スペース確保、工事性の向上には大きな効果を産む。とともに、容積の減少と潜熱による蓄熱温度を高く乃至は低くして蓄熱量を稼ぐ必要が無くなる事によりタンクから外界への放熱ロスは減少する。従って潜熱蓄熱材と熱媒体間の良好な関係を実現するための高い実用性を獲得する技術として図5に示す構成があり、これは媒体や蓄熱体の間の伝熱性を確保すると同時に相変化時の収縮、膨張の吸収、さらには全体の小型化、簡単な構造による高い製造性を実現するものである。
図5にはパイプ回路の中間部を簡略化して書いてあるため回路の全体は示されていないが、フィンチューブ熱交換器のパイプは三つの媒体回路を成すように構成され、前述の3種の媒体をパイプの中に連通させ、フィンとパラフィンがそれら媒体間の伝熱を促進している。パラフィンが融解するときの体積変化を逃がすためパラフィンには約2mm直径の空気を封入した柔らかな容積変化吸収用の空気カプセルが容積比で約10%混入されている。また熱出力熱交換器112は二重管が使われており、冷媒のリークにも安全である。
また前述したフィンに設けた穴にパイプ挿入するフィンチューブ方式と異なり、フィンを短冊状にしてフィンの両サイドに設けたパイプ断面形状の切り欠き部に、連続して蛇行状にU字成形したパイプをカチコミする方式のカチコミフィンチューブもパイプを接続のない連続した一本パイプで構成できる利点がある。他の方式として既に述べたように多数枚のアルミ板の両表面にパイプをはめ込む為の切起こしを設けてそこに蛇行状に成型したパイプを嵌めこんでアルミ板と熱的に且つ機械的に接触させた構造のもの等各種方式が考案されるが、用途や潜熱蓄熱材の特性その他で最適な方式が設計される必要があり、此処ではその細部は特定しない。前述した効果を生む様に連続したパイプ回路とパイプ間を連結しかつ伝熱を促進するためのフィンなどとその空間に充填された潜熱蓄熱材から成る構成がこの潜熱蓄熱熱交換器としての重要な要件となる。
5図に於いて下部の空間に水道水予熱熱交換器35が設けられている。これは外部から供給される排熱を温水として下部の空間に取り込んで細線の矢印で示す様に循環させ、低温度の水道水5と熱交換させて水道水を予熱するための仕掛けである。例えば30℃の家庭の風呂排熱で20℃の水道水を30℃近くまで予熱して排熱の利用を図ろうとする場合等に利用されるものである。
潜熱蓄熱体の蓄熱材はパラフィン以外にも多くの有機物、無機物、更にはそれらを親水性プラスチックで内部に閉じ込めた微粒子を水中に混入させてエマルジョン状態にしたものなど、多くの潜熱蓄熱材が実用化されている。特にパラフィンは融解温度の設定の自由度が高く請求項に掲げた温度範囲に設定する事が容易であり特性が安定しているなど多くの利点を持つ。
以上の事例のさらに発展形として、請求項20、21に示した技術を織り込む事はシステム全体の性能向上のために有効である。熱出力媒体14として50℃の融解温度を持つパラフィンを約20ミクロン直径の親水性の有機材料でできた微小カプセルの中に封じ込めて微粒子とし、これを水中に混入させて得られる前述したエマルジョン状態の潜熱蓄熱材を屋内ユニットとの間の潜熱蓄熱式熱搬送媒体としても利用する方法もあり、これによりシステムの熱搬送性能が向上しシステム全体の暖房性能が向上する。
即ち潜熱蓄熱容量を持つこの熱搬送媒体を利用する事により水のみの場合に比べその体積循環流量は約半分以下で同一の熱量を搬送でき、従って循環ポンプ動力は三分の一以下に低減できるし、さらに放熱や授熱した時に潜熱を利用する為顕熱利用の場合に生じる熱交換器内での媒体の温度降下や上昇が殆どなく、従って熱交換器内の伝熱ドライブ温度差は常に大きい値でほぼ一定の状態に保たれるから伝熱量が増加できる。ここでは融解温度を49℃に設定したから、例えば個室用空調機29内の熱交換器内に於いて熱媒体はほぼ49℃に安定状態で室内空気を暖房できるため、通常の水などを利用して出口温度が44℃以下に低下した場合と比べ性能評価した事例では20%も伝熱性能が向上できる事がわかっている。
請求項20に提示したようにこの場合には潜熱蓄熱材の融解温度の値の設定に十分留意する必要がある。これは融解温度が1乃至は4℃程度の温度幅を持つ事が多い潜熱蓄熱材を用いても安定して熱の授受を行うためにはより精度の高い融解温度設定が望ましいわけである。
一方、請求項21で示した様に温熱蓄熱器27に用いた潜熱蓄熱材を廃止し、そこにも上記の潜熱蓄熱式熱搬送媒体を充満及び流動させるようにした事例も発展形として考えられている。この場合、給湯温水15の回路と熱出力熱交換器112はこの潜熱蓄熱式熱搬送媒体の中に浸漬された構成となる。この方式の効果は潜熱式熱搬送媒体が流動することにより三つの熱媒体相互間の伝熱特性向上、さらに該媒体は常に液体状乃至はエマルジョン状態であるから液体が固体化する際に生ずる容積変化により生ずる構造的な歪や圧力分布が生じることが無く、従ってフィンやパイプの変形や破損の心配は無い。また、潜熱蓄熱効果がタンク内の蓄熱のみに留まらずシステム全体の熱交換特性向上に寄与させる事ができる。以上に述べたように多くの効果を実現出来る技術である。
図2は請求項2、3、4、8、10の各技術を利用した温冷熱供給システムの実施例を示す。その特長は温冷熱供給装置2により温水タンク1に温水を貯留し、その熱を利用して利用側熱変換装置3を作動させる構成で、請求項1の方式では必要であった冷水タンクが不要である事である。温冷熱供給装置2は図3の室外熱交換器121で屋外空気から熱を得てこれを温水タンク1に蓄熱する。この温水タンクには水道水5の供給と外部からの排熱供給6が行われる。5、6は実際は水回路の出入りがあるわけであるが、図では省略して供給を示す矢印のみで表示している。使用者の要請があった時に温水タンク1に貯蓄された約60℃以上の温水乃至は外部からの商用電力を動力源4として利用して利用側熱変換装置3の電動膨張圧縮機33を駆動させてオンタイムに冷房暖房給湯を選択して出力させる。動力源の選択の制御は此処では図示しないが、請求工10で示される様に温水タンク1内の温熱の貯流量とその温度の情報などから決定される。勿論温水タンク内の温水が充分にある時はそれを優先して膨張機22の駆動源として利用するように制御される。それが不十分であれば電力によって電動モータ24を作動させて膨張機の動力不足を補う。この冷凍サイクルはやはり図3に示されるものとほぼ同様であるが冷水用熱交換器125は屋内冷房用の冷熱出力媒体13との間の熱交換器として使われる。冷房運転の時は、冷水用熱交換器125などで得た冷媒の蒸発熱量が冷凍サイクル115の回路中を運ばれて熱出力熱交換器112で冷媒の凝縮熱量として放熱され、これが熱源温水戻り11を経由して温水タンク1に戻りそこに蓄熱され給湯の熱源に利用される。冷房排熱を給湯に利用したこの技術は請求項3、12の別事例でも示される。
室内の冷房はダクト12を経由して主空調機16に室内空気を送り循環させる場合と、冷熱出力媒体13即ち冷水を室内の個室用空調機29に導いて行われる場合がある。暖房は熱出力熱交換器112と床暖房パネル18及び個室用空調機29の間で温水を循環させて行う。請求項2、4に示した技術方式は図2に示す様に温冷熱供給装置2と利用側熱変換装置3に組み込まれた冷凍サイクル115により二度ヒートポンプ運転が行われて冷熱乃至は温熱を出力させるからヒートポンプによるエネルギー回収が二度行われ、その結果高いエネルギー効率で作動させる事が出来る。図2の事例ではヒートポンプ冷凍サイクルの作動冷媒としてプロパンを用い、建物内への冷熱と温熱の搬送媒体として冷温水または前述した潜熱蓄熱式熱搬送媒体乃至は空気を用いている。プロパンは所謂自然冷媒で地球温暖化という環境面でも優れている。しかしながらプロパンは可燃性であるから屋内への熱搬送媒体としては火災安全性からみても避けるべきであり、上記の媒体を利用する事によりこれを解決している。この安全性についての技術を請求項17に示しており、図2の事例では図示はされていないがこの構造が採用されているから建物外部にある室内空調用熱交換器からリークした冷媒は直に屋外空気へと廃棄される。即ち空調空気ダクト12と空調空気吹き出し口19には漏れた冷媒が混入する危険性は殆ど回避されている。図2の方式では室内空熱交換器120乃至は室内へと熱搬送する媒体との冷水用熱交換器125が屋外に設置されている利用側熱変換装置3に設置されており、その熱交換器の周囲はリークした冷媒を安全に廃棄できる屋外空気環境であり、この事が安全性の点で重要である。
図2の事例をさらに簡略化したシステムを図4に示す。これは請求項7の技術の代表事例であり、請求項3、8、10に提示された技術も取り込んでいる。予備運転時は温熱供給装置2として温水タンク1へ温水を貯留するために作動していた利用側熱変換装置3は冷房、暖房、給湯を出力する時には本来の利用側熱変換装置として作動する。そこに組み込まれた冷凍サイクル115は矢張り図3で示す事が出来る。動力源4である熱源温水10や熱源媒体供給104により膨張機冷媒回路114を作動させて膨張機22を作動させて圧縮機23を駆動する。動力源の熱量が不足した時は商用電力などによりモータ24を作動させて圧縮機23の駆動を支援する。如かしてヒートポンプ冷凍サイクル115を作動させて温冷熱を夫々出力させて冷暖房給湯を行う。請求項8の技術の具体例として図中の排熱供給6が各種排熱などの熱源を温水タンクに直に投入して利用する方式を示している。勿論図のように温水タンク内の中間温度の温水を外部に循環させて排熱を回収しても良いし、排熱の熱媒体を温水タンクに連通させてそこで温水タンク内の中間温度の温水に放熱させても良い。
以上図2、4に示した二つの代表事例の最大の特徴の一つは、如何なる温度帯、如何なる時間帯、如何なる熱量の排熱も有効に利用する事を可能にした柔軟性のある利用システムを提供できる事にある。それを可能にしているのが熱貯蔵システムとハイブリッドの動力源で駆動される電動膨張圧縮機である。図6は温水タンクに関し、図5とは別の事例で、請求項3に提示した冷房運転排熱の利用に関して、請求項6に提示した温水タンクの具体的構造に関する技術を取り込んだ事例である。温水タンク1内は給湯温水15用の水道水5で満たされており、温水タンク仕切板128により上下二つの空間に仕切られている。約20℃の水道水5は下部から入り熱出力熱交換器で加熱され約35℃になり自然循環して下部空間に貯留される。
給湯温水15が出力された量だけ仕切り板128に設けた子穴から上部空間へと送られ、熱源媒体供給104により加熱された熱源熱交換器温水加熱器118で約60℃に加熱され上部空間を自然循環で上昇し上部空間に貯留され、給湯温水として屋内へ供給される。この時冷房運転の排熱を給湯用に利用している事から一つの動力を利用してヒートポンプ冷凍サイクルを作動させて冷房と給湯の二重の出力を得る事が出来るという効果に加え、冷凍サイクルの凝縮器である熱出力熱交換器を20℃の冷水で冷却する事により凝縮温度を低下させて冷凍サイクルの運転効率を高めるという効果を生み出している。一つの事例計算では給湯運転でのエネルギー効率は一時エネルギー消費に対するCOPで表現すると約1.6程度であり、これが冷房の排熱を温熱として利用する事によるエネルギー効率の向上により約3.0程度となる。さらにこれが前述した凝縮温度を低下させた効果を含めると3.6程度になる事がわかっている。即ち夏場に冷房運転をしながら水道水を加熱し給湯用の温水を供給する運転では1.0の燃料を利用して3.6倍の総熱量を得る事ができることになる。
図中、熱出力媒体14は熱源媒体供給により加熱されて約60℃の温水となり冬季の暖房用に供給されるが、夏場は停止している。図中6は他の排熱供給を示しており例えば太陽熱温水、建物内排熱である換気排熱又は風呂排水排熱、ごみ焼却排熱などが該当する。各種熱源の温度のレベルに合わせて温水タンク1を幾つかに分割し下から順次温度を上昇させていく方式は各種の温熱源を利用して給湯や暖房用温水を得るように構成するのが理想的である。図6の事例は請求項3、12で示した技術を実現するための給湯用温水の加熱を2段階に分割して作動効率を向上させるための温水蓄熱タンクの事例を提示した。この技術は実はさらに基本的な効果をもたらしてくれる事がわかっている。細い線の矢印は水道水の流れを示している。
本発明のシステムは各種熱源を利用して圧縮機を駆動するという技術を基本としている。
しかしながら前述した様に熱源の温度が100℃程度に近い場合は高い圧力の作動ガスを得る事ができるため膨張機を駆動するパワーも充分であるが、60℃程度に低い場合はそのパワーが不足し、場合によれば50%以上を商用電源による電動モータに依存しなければならなくなる。ところが駆動される圧縮機の駆動に必要なパワーは冷凍サイクルの凝縮圧力即ち凝縮温度に著しく影響を受ける。
従って通常設定される50℃以上の凝縮温度では実現出来なかったが、図6に示したシステムにより冷凍サイクルの凝縮温度を40℃程度の低い温度に保つ事が出来れば、電動モータの支援を受けずに60〜70℃程度の比較的低温の熱源によって圧縮機を駆動する事が可能に成る。または電動モータによる駆動の場合も電力消費量が低減できる。このことは比較的低温度の熱源としての太陽熱、コージェネレイション装置排熱等、有効に利用したいと嘱望されている各種エネルギー源をフルに利用してヒートポンプによる冷房暖房給湯が供給できる事になるし、装置の作動効率を高めることが出来るようになる事を意味している。そのためには給湯用に供給される水道水の温度が年間を通じ15℃〜25℃程度に低く、これを利用してこれを加熱するための一段目の熱交換器を冷凍サイクルの凝縮器としてありその凝縮温度を低温度に保ち、そこから得られた中間温度の水道水を他の熱源 例えばガス燃焼熱、太陽熱、コージェネレイション排熱などから得られる熱源媒体供給104で再加熱して60℃程度に加熱してから給湯用に利用する様に構成してある。以上の事例は冷房運転のみでは無く暖房、給湯運転に於いても全く同様な構成が可能である。但し暖房運転の場合は前述した蒸発器は通常は室外熱交換器121になる。以上が請求項3及び12に提示した技術の具体化事例である。
本発明の一実施形態である温冷水貯留タンクを持った温冷熱供給システムの全体構成図 本発明の一実施例である温水貯留タンクを持った温冷熱供給システムの全体構成図 本発明の一実施例である温冷熱供給装置に使われるランキン及びヒートポンプ冷凍サイクル媒体回路図 図2のシステムを簡略化した本発明の一実施例である温冷熱供給システムの全体構成図 本発明の一実施形態である温冷熱供給システムに使われる潜熱蓄熱温水タンクの縦断面図 本発明の一実施形態である温冷熱供給システムに使われる給湯用2段階加熱を可能にする温水タンクの縦断面図
符号の説明
1 温水タンク
2 温冷熱供給装置
3 利用側熱変換装置
4 動力源
5 水道水
6 排熱供給
7 屋外空気
8 低温水供給
9 低温水戻り
10 熱源温水
11 熱源温水戻り
12 空調空気ダクト
13 冷熱出力媒体
14 熱出力媒体
15 給湯温水
16 主空調機
17 冷水タンク
18 床暖房パネル
19 空調空気吹き出し口
20 空調空気吸込み口
21 室外ファン
22 膨張機
23 圧縮機
24 電動モータ
25 熱冷媒回路
26 冷却冷媒回路
27 温熱蓄熱器
28 冷熱蓄熱器
29 個室用空調機
31 熱出力媒体戻り
32 冷熱出力媒体戻り
33 電動膨張圧縮機
34 排熱供給戻り
35 水道水余熱熱交換器
36 切り替え弁
101 ランキン&冷凍サイクル回路
102 熱源回路
103 熱源熱交換器
104 熱源媒体供給
105 熱源媒体戻り
107 膨張機
108 圧縮機
109 シャフト
110 フィン
111 吐出ガス
112 熱出力熱交喚器
113 分流器
114 膨張機冷媒回路
115 冷凍サイクル
116 液冷媒ポンプ
117 熱源熱交換器冷媒パイプ
118 熱源熱交換器温水加熱器
119 冷媒制御弁
120 室内熱交換器
121 室外熱交換器
122 温水出力回路
123 冷媒切り替え弁
124 排熱用熱交換器
125 冷水用熱交換器
126 室内ファン
127 室内空気
128 温水タンク仕切り板
129 温水タンク温水ガイド板

Claims (21)

  1. 建物内の空調、給湯を行う為、電動モータで駆動される圧縮機により作動される電動ヒートポンプ冷凍サイクルを組み込んだ温冷熱共給装置及び温水タンクと冷水タンクを設置して、前記電動ヒートポンプ冷凍サイクルを作動させて前記温水タンクと冷水タンク内の水又は媒体を加熱及び冷却して温冷熱を貯留させ、冷房を行う時期には給湯用に前記温水タンクの温水を利用して冷房用に前記冷水タンクの冷熱を利用し、また冷房を行わない時期には前記温水タンクのみでなく前記冷水タンクにも温熱を貯留させ給湯と暖房に利用するようにしたシステムに於いて、前記温水タンクに40〜60℃の温度範囲に融解温度を持つ潜熱蓄熱材を設置し、前記電動ヒートポンプ冷凍サイクルから供給される温熱を該潜熱蓄熱材に蓄熱し、給湯用の水道水又は暖房用の熱出力媒体乃至はその双方に該温熱を供給する事を特徴とした温冷熱供給システム。
  2. 建物内の空調、給湯を行わせる為、温水を貯湯する温水タンクを設置し、温熱供給装置に組み込んだ電動ヒートポンプ冷凍サイクルを作動させてその出力温熱により該温水タンクに温水を貯留し、その温水を熱源として利用して利用側熱変換装置に組み込んだ熱源利用ヒートポンプ冷凍サイクル、即ち熱源を利用して液媒体を蒸発させて高圧ガスを発生させ該高圧ガスが膨張するときの動力を圧縮機を駆動するときの動力源に利用したヒートポンプ冷凍サイクル、乃至は電力と熱源の双方を利用したハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルを作動させて冷房、暖房、給湯の3通りの温冷熱のうち少なくとも冷房を出力させるようにした事を特徴とした温冷熱供給システム。
  3. 電動ヒートポンプ冷凍サイクル乃至は熱源利用ヒートポンプ冷凍サイクル乃至はその双方の動力を利用したハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルを作動させてその凝縮器に置いて放熱をし、その熱で給湯用として新しく供給される水道水を加熱してこれを温水とし、その温水をさらにコージェネレイション装置の排熱、太陽熱、家庭内排熱など他の熱源で再加熱してから給湯用温水として出力する様に構成した事を特徴とした温冷熱供給システム。
  4. 建物内の冷房、暖房、給湯を行わせる為、温水を貯留する温水タンクを設置し、外部からの熱源乃至は電力を利用して温熱供給装置に組み込んだ熱源利用ヒートポンプ冷凍サイクル乃至はハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルを作動させてその出力により該温水タンクに温水を貯湯し、該温水と外部からの電力を動力源とし利用側熱変換装置に組み込んだハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルを少なくとも冷房を出力させるときに作動させる様に構成した事を特徴とした温冷熱供給システム。
  5. 建物内の空調、給湯を行う為、前記温冷熱共給装置に組み込んだ前記ハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルを作動させて温冷熱を出力させて温水タンクと冷水タンクに貯留させ、該温熱と冷熱を利用して暖房、給湯、冷房を行う様に構成した事を特徴とした温冷熱供給システム。
  6. 建物内の空調、給湯を行う為、電力を利用した前記電動ヒートポンプ冷凍サイクル乃至は前記ハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルを組み込んだ温冷熱共給装置及び前記温水タンクと前記冷水タンクを設置して、前記の何れかのヒートポンプ冷凍サイクルを作動させてその凝縮器と蒸発器から同時に温冷熱を出力させて前記温水タンクと冷水タンクに貯留させ、該温冷熱を利用して暖房、給湯、冷房を行う事ができる様に構成したシステムに於いて、冷房を行わない時期には該冷水タンクに建物内で生じる風呂の排水乃至は屋内換気空気の保有する温廃熱乃至は外部からの太陽熱乃至はコージェネレイション装置の排熱など低温度の温熱を貯留し、前記の何れかのヒートポンプ冷凍サイクルを作動させた時に前記蒸発器を加熱するための温熱源として利用する事を特徴とした温冷熱供給システム。
  7. 前記温熱共給装置と前記利用側熱変換装置とを1つのハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルを組み込んだ1つの装置で兼用させ、利用者が少なくとも冷房運転を要望する時間帯では該装置を前記利用側熱変換装置として作動させて前記温水タンク内の温水を熱源に用いて該ヒートポンプ式冷凍サイクルを作動させて少なくとも冷熱を出力させ、それ以外の時間帯を利用して該装置を前記温熱供給装置として前記温水タンクに温水を貯留させる様に作動させる事を特徴とした請求項2、4の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  8. 太陽熱、各種の燃料を利用したコージェネレイション装置の排熱、バイオマス資源利用装置の排熱、エンジン排熱、建物内の温廃水廃熱、換気による排熱などにより前記温水タンク乃至は前記冷水タンク内にその温熱を温水として貯留させるとともにその温水を、前記温熱供給装置乃至は前記温冷熱供給装置内に置いて前記電動モータ及び膨張機で駆動される電動膨張圧縮機が組み込まれた前記ハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクル又は前記電動ヒートポンプ冷凍サイクルによって再加熱してさらに高温度の温水として前記温水タンク乃至は前記冷水タンクに貯留させる事を特徴とした請求項1、2、3、4、5、6、7の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  9. 前記温熱供給装置及び温冷熱供給装置に置ける電動圧縮機乃至は前記電動膨張圧縮機を駆動するために、動力電源が必要な時は料金を割り安に設定される等優遇された乃至は推奨された時間帯の商用電力乃至は太陽光発電装置により発電された電力乃至は燃料利用コージェネレイション装置により発電された電力を優先的に利用して温冷熱を蓄熱し、前記の時間帯以外の商用電力をそれが必要とされた時のみ、即ち前記の各種電力で作動させて蓄えた温冷熱が不足になり且つ前記の各種電力を利用する事が出来ない時にのみ利用する様に制御した事を特徴とした請求項1、2、3、4、5、6、7、8の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  10. 前記温熱供給装置及び温冷熱供給装置に利用される熱源と動力源として、燃料ガス乃至は灯油などの燃焼熱、又はコージェネレイション装置などの機器の排熱、又は太陽熱などの自然エネルギー収集熱などの熱源と商用電力の双方を利用するシステムに於いて、熱源の温度、消費可能持続時間、蓄熱量などを測定乃至は算定するなどしてその熱源として利用可能容量が充分であるか否かを判定しそれを勘案した上で熱乃至は電力の何れを選択して作動させるか又は熱及び電力をどのような割合で併用してハイブリッド運転するかなど最適な動力源の組み合わせを選択するように制御する事を特徴とした請求項3、4、5、7の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  11. 前記温水タンクに貯留された温水を熱源として利用する前記利用側熱変換装置の前記ハイブリッド式ヒートポンプ冷凍サイクルに於いて、暖房、給湯を行う時に屋外気と熱交換する蒸発器及び冷房を行う時に被冷房空間空気乃至は冷水タンクの冷水と熱交換する蒸発器として別個の熱交換器を設置し、前記冷凍サイクルの低圧側回路の冷媒の流れを切り替える事によって選択して何れかの蒸発器に冷媒を連通させて蒸発器として作動させるように構成した事を特徴とした請求項2、4、7の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  12. 前記温水タンクに異なる温度の少なくとも二つの温水貯留部分を設け、前記温水タンクの高温度の温水貯留部分から出湯させ、その出湯された水量を補うべく新たに補給される水道水を低温度側の貯留部分に供給するように構成した給湯システムに於いて、前記電動ヒートポンプ冷凍サイクル乃至は前記ハイブリッドヒートポンプ冷凍サイクルの凝縮器に於いて生じる熱量を前記の新たに補給される水道水に放熱して温水とし、前記低温度側の貯留部分に貯留させ、さらに該温水をコージェネレイション装置の排熱、太陽熱、家庭内排熱など他の熱源でさらに加熱してそれを高温度の温水貯留部分に貯留させた後に給湯用として出湯させる様に構成した事を特徴とした請求項1、2、3、4、5、6、7の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  13. 前記温水タンク内に温水と伝熱関係に固体と液体間の融解潜熱を利用した潜熱蓄熱材を設置し、且つ該潜熱蓄熱材の融解温度を外部から供給される熱源となる媒体の最低温度より1〜10℃低い温度に設定した事を特徴とした請求項1、2、4、5、6、7、8,12の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  14. 前記冷水タンク内に冷水と伝熱関係に固体と液体間の融解潜熱を利用した潜熱蓄熱材を設置し、且つ該潜熱蓄熱材の融解温度を外部の冷房運転用に供給する冷熱出力媒体の最低温度より1〜10℃低い温度に設定した事を特徴とした請求項1、2、4、5、6、7、8,12の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  15. 多数毎のフィンに多数本のパイプを貫通させて構成した所謂フィンチューブ熱交換器などのように、適宜な間隔で配置したパイプと、アルミニウム等の熱伝導性の良好な材料で作られた該パイプ間の連結部材とを良好な伝熱関係になるように構成した熱交換器をタンク状容器内に収め、前記容器内の該熱交換器が収納された空間を固体液体間の融解潜熱を利用した40〜60℃の範囲にその融解温度を持つパラフィンなどの潜熱蓄熱材で充填し、前記パイプからなる1つのパイプ回路には加熱源となる熱源媒体を連通させ、且つ別のパイプ回路には給湯用の水道水を連通させて、前記連結部材を通じた伝熱により前記水道水及び熱源媒体の間の熱交換のみでは無く前記水道水及び前記熱源媒体と前記潜熱蓄熱材の間の熱交換とを良好な伝熱関係が得られるように構成するとともに前記水道水パイプ回路内を常にプラスの圧力状態とし、且つ潜熱蓄熱材の相変化による容積変化を吸収する機構を備えた事を特徴とした潜熱蓄熱熱交換器を組み込んだ温水タンクを利用した請求項1、2、3、4、5、6、7、8、13、14の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  16. 前記温水タンクと冷水タンク内の上水としての水道水を外管と内管を機械的及び熱的に接触させた状態の二重管の内管内を連通させ、外管と蓄熱材とを熱的に接触させ、且つ該二重管の内外管の接触空隙は蓄熱材に開放する事無く、蓄熱材の外部の屋外空気に連通するところで大気に開放させた構造とした事を特徴とした請求項13、14、15の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  17. ヒートポンプ冷凍サイクルを組み込んだ装置を建物外部に設置し該装置を構成するヒートポンプ冷凍サイクルの作動媒体に炭素、水素、酸素などを主成分として、フッ素、塩素を含まない所謂自然冷媒と呼ばれる冷媒を用い、該装置内に循環させた建物内の空気と該ヒートポンプ冷凍サイクル冷媒間の熱交換を行わせるために該冷凍サイクルにフィンチューブ式空気熱交換器を設けたシステムに於いて、該熱交換器のチューブを冷媒を連通する内管を外管にはめ込んで熱的に接触させ且つその接触面に空隙を設けた状態で接触固定させた二重管とし、該空隙を前記フィンチューブ熱交換器のパイプ端部で直に屋外空気に開放させた事を特徴とした空調システム及び請求項2、4、7、11の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  18. 前記温冷熱供給装置の圧縮機を駆動するための電動モータを作動させる電源として料金を割り安に設定する等優遇された乃至は推奨された時間帯の商用電力を利用して温熱乃至は冷熱を貯留させるシステムに於いて、前記温熱乃至は冷熱を用いて前記時間帯の修了前の一定時間の時間帯においては運転条件を特別に緩和させて暖房乃至は冷房を半強制的に運転させると共にその暖房乃至は冷房運転時は前記温冷熱供給装置のヒートポンプ冷凍サイクルも強制運転するように制御する事を特徴とした請求項1、2、6、9の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  19. 前記冷水タンク内に40〜60℃の温度域に融解温度を持った潜熱蓄熱材による温熱貯留機構と4〜20℃の温度域に融解温度を持った潜熱蓄熱材乃至は前記冷水タンク内の水の潜熱を利用した氷蓄熱の何れかによる冷熱貯留機構との双方の熱貯留機構を設置した事を特徴とした請求項1、5、6、18の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  20. 温熱乃至は冷熱を貯留するために潜熱蓄熱材を設置した温水タンク乃至は冷水タンクと屋内を冷房乃至は暖房するための室内ユニット内に設けた屋内空気熱交換器との間の熱輸送媒体として特定の温度範囲で潜熱蓄熱効果のある潜熱蓄熱材の微粒子を分散混入させた水乃至は水溶液からなる潜熱蓄熱式熱搬送媒体を用いたシステムに於いて、暖房用として前記特定の温度範囲を前記温水タンク内の温熱用潜熱蓄熱材の融解温度より2〜10℃低温度に設定し、または冷房用として前記冷水タンク内の冷熱用潜熱蓄熱材の融解温度より2〜10℃高温度に設定した前記潜熱蓄熱式熱搬送媒体を用いた事を特徴とした請求項1、5、6、7、13、15、16、19の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
  21. 多数毎のフィンに多数本のパイプを貫通させて構成した所謂フィンチューブ熱交換器などのように、適宜な間隔で配置したパイプとアルミニウム等の熱伝導性の良好な材料で作られた該パイプ間の連結部材とを良好な伝熱関係になるように構成した熱交換器を、冷暖房用の熱を搬送及び蓄熱するために潜熱蓄熱材の微粒子を分散混入させた水乃至は水溶液からなる前記潜熱蓄熱式熱搬送媒体を貯留及び流動させたタンク状の容器内に設置した蓄熱タンクに於いて、前記パイプからなる1つのパイプ回路には熱源媒体を連通させ、且つ別の1つのパイプ回路には給湯用水道水を連通させ、且つ前記水道水パイプ回路内を常にプラスの圧力状態とした事を特徴とした蓄熱タンクを前記温水タンクとして用いた請求項1、2、4、5、6、7、8、13、14、16の何れか一項に記載の温冷熱供給システム。
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