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JP2007254174A - 酸化ガリウム単結晶及びその製造方法、並びに窒化物半導体用基板及びその製造方法 - Google Patents

酸化ガリウム単結晶及びその製造方法、並びに窒化物半導体用基板及びその製造方法 Download PDF

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JP2007254174A JP2006077459A JP2006077459A JP2007254174A JP 2007254174 A JP2007254174 A JP 2007254174A JP 2006077459 A JP2006077459 A JP 2006077459A JP 2006077459 A JP2006077459 A JP 2006077459A JP 2007254174 A JP2007254174 A JP 2007254174A
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重男 大平
Satohito Suzuki
悟仁 鈴木
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Nippon Light Metal Co Ltd
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Abstract

【課題】結晶性及び導電性が共に優れた酸化ガリウム単結晶及びその製造方法、並びに窒化物半導体をエピタキシャル成長させるのに好適な窒化物半導体用基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】酸化ガリウム粉末にSn、Ge、Si又はこれらの酸化物から選ばれた1種以上からなる添加物を添加した粉末材料を圧縮成形し、これを1400〜1600℃で焼結して酸化ガリウム焼結体を得て、この酸化ガリウム焼結体を原料棒としてFZ法により酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、成長速度vを5mm/h<v<15mm/hとして酸化ガリウム単結晶を育成させる。また、この単結晶の表面を窒化処理して窒化物半導体用基板を得る。
【選択図】なし

Description

この発明は、導電性及び結晶性が共に優れた酸化ガリウム単結晶とその製造方法、並びにこの酸化ガリウム単結晶を用いて得た窒化物半導体用基板とその製造方法に関する。
酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶は、可視領域で透明であり、かつ、4.8eVのワイドバンドギャップを有することから、紫外領域における光学材料をはじめとして、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等を得るための半導体用基板、フラットパネルディスプレー、光学的エミッター、太陽電池等で使用される透明導電体、レーザ光共振キャビティ等の光学材料、高温酸素ガスセンサ材料等のほか、各種電極、基板、導電体、ガスセンサ、光記録材料等の高性能デバイスへの応用が種々検討されている。
従来において、LEDやLD等の発光素子を得る際には、サファイア(α-Al2O3)やシリコンカーバイド(SiC)が基板として使われている。しかしながら、サファイアは透明ではあるが、電気的には絶縁性であるため、発光素子の構造はいわゆる水平型となる。水平型の素子構造では、基板上に形成した発光層をエッチングやマスキングによりその一部を露出させた上で、別途電極を取り付ける必要があることから、素子を形成するための工程数が多くなってしまう問題がある。一方、SiCは導電性ではあるが、着色があって透明性に難があるため、光を取り出す側の面とは反対側に発せられた光の一部を基板が吸収してしまい、素子としての発光効率が上がらないといった問題がある。
このような状況のもと、基板として透明性に優れた酸化ガリウム単結晶を用いて、垂直型の素子構造からなる発光素子を得ることが報告されている(特許文献1参照)。酸化ガリウム単結晶は、結晶中に酸素欠損が生ずることでn型半導体としての挙動を示すことから、酸化ガリウム単結晶からなる基板上に化合物半導体膜(発光層)を設けることで、垂直構造の発光素子が可能となる。このような垂直型の構造であれば、水平型の場合のような電極の取り付けが不要となり、素子作製の工程が短縮されて、プロセスコストを低減することができる。また、基板が透明であることから、発光層とは反対側に発せられた光を反射させるなどの手段を講ずれば、素子全体としての発光効率を向上させることができる。
ところで、上記のような垂直構造の発光素子では、透明性と共に、基板が優れた導電性を備えていることが重要になってくる。上記特許文献1の酸化ガリウム基板はn型導電性を有し、0.1Ω・cm程度の電気抵抗率(比抵抗)を示すとしている。しかしながら、発光素子用の基板として用いるためには、駆動電圧の低減、電流密度低減による発熱抑制、素子寿命等の観点から、0.05Ω・cm以下程度の電気抵抗率であることが望まれる。
そこで、例えば、酸化ガリウム単結晶を浮遊帯域溶融法(floating zone method: FZ法)によって得る際、酸素量を制限した雰囲気下で結晶成長させることで、酸素欠損を強制的に作り出して、低い電気抵抗率の酸化ガリウム単結晶が得られることが報告されている(例えば非特許文献1参照)。この文献によれば、酸素と窒素の混合ガス雰囲気下で単結晶の育成を行う際に、混合ガスの窒素の割合を増やすことで、酸化ガリウム単結晶の電気抵抗率が下がることが示されている。ところが、強制的に酸素欠損を作り出した単結晶は結晶性が劣るため、発光素子等の高性能デバイスを作製するのには適さない。
上記の問題を解決するために、Snを添加して得た酸化ガリウム単結晶が報告されている(例えば非特許文献1及び非特許文献2参照)。これらの文献では、いずれも、酸化ガリウムの粉末に3mol%のSnO2を添加したものを圧縮成形し、これを焼結したものを原料棒にして、FZ法によって酸化ガリウム単結晶の育成を行っている。これによって得られた酸化ガリウム単結晶は、結晶中にドープされたSnによる作用、あるいは単結晶が育成する際にSnO2が蒸発して形成された酸素欠損により、単結晶の電気抵抗率が低下するものと考えられる。
しかしながら、これらの文献においてSnを添加して得た酸化ガリウム単結晶は、いずれも前述したような電気抵抗率を満足できるものではない。一方で、SnO2が蒸発して酸素欠損が生じた状態であると前述の通り結晶性が劣るおそれがあり、また、得られた酸化ガリウム単結晶中にSnがドープされたままの状態であると、バンドギャップ中に酸素欠損に起因する不純物準位の他にSnに起因する準位が形成されることで、光吸収が増加する。一般に、結晶性が劣り着色した酸化ガリウム単結晶は、焼き鈍しすることにより結晶性を確保することも可能であるが、このような単結晶では酸素欠損が再び酸素によって塞がれ、逆に導電性が失われてしまう。すなわち、酸化物半導体では、導電性と結晶性はいわば相反する特性であり、導電性を付与すべく酸素欠損を強制的につくるとその結晶性は劣り、反対に結晶性を向上させようとすると酸素欠損が少なくなり絶縁体になってしまう。なお、前述の特許文献1においてもSn等を添加してFZ法により酸化ガリウム単結晶を得ることが示唆されているが、その電気抵抗率は上述した値であって十分に満足できるものではない。
ところで、特許文献2には、紫外線領域から可視光領域にかけて透明であり、かつ、導電性を備えた酸化ガリウムからなる紫外透明導電膜が開示されているが、その電気抵抗率は前述した値を満足できるものではなく、また、この文献に係る導電膜は石英ガラスやサファイア等の異種基板上に成膜して得るものであり、バルク結晶のような結晶品質を得るのは困難である。
特開2004−56098号公報 特開2002−93243号公報 Naoyuki Ueda et al. Appl. Phys. Lett. 70(26), 3561-3563 (1997) Mitsuo Yamaga et al. PHYSHICAL REVIEW B 68, 155207 (2003)
以上のように、これまでのところ、結晶性と導電性とを同時に満たし、発光素子等の高性能デバイスの作製に適した酸化ガリウム単結晶は、発明者らが知る限りでは報告された例はない。そこで本発明者らは、結晶性及び導電性のいずれをも同時に満たす酸化ガリウム単結晶を得る方法について鋭意検討した結果、驚くべきことには、添加物を含んだ酸化ガリウム粉末を焼結して得た焼結体を原料棒にして、浮遊帯域溶融法(FZ法)によって酸化ガリウム単結晶を育成する際、焼結温度と単結晶の成長速度とを所定の条件で組み合わせて最適化を行なうことで、結晶性及び導電性が共に優れてこれらの性能を同時に満たすバルクの酸化ガリウム単結晶が得られることを見出し、本発明を完成した。
従って、本発明の目的は、結晶性及び導電性が共に優れた酸化ガリウム単結晶を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、結晶性及び導電性が共に優れた酸化ガリウム単結晶の製造方法を提供することにある。
更に、本発明の別の目的は、窒化物半導体をエピタキシャル成長させるのに好適な窒化物半導体用基板を提供することにある。
更にまた、本発明の別の目的は、上記窒化物半導体用基板の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、電気抵抗率が0.05Ω・cm以下であり、かつ、厚さ0.4mmにおける300〜620nmの波長領域での内部透過率が80%以上であることを特徴とする酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶である。
また、本発明は、酸化ガリウム粉末にSn、Ge、Si又はこれらの酸化物から選ばれた1種以上からなる添加物を添加した粉末材料を圧縮成形し、これを1400〜1600℃で焼結して酸化ガリウム焼結体を得て、この酸化ガリウム焼結体を原料棒としてFZ法により酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、成長速度vを5mm/h<v<15mm/hとして酸化ガリウム単結晶を育成することを特徴とする酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶の製造方法である。
先ず、本発明における酸化ガリウム単結晶について説明する。
本発明における酸化ガリウム単結晶は、電気抵抗率(比抵抗)が0.05Ω・cm以下、好ましくは0.02Ω・cm以下である。電気抵抗率が0.05Ω・cm以下であれば、例えばLEDやLD等の発光素子を形成するための基板のほか、酸化物透明導電体、高温酸素ガスセンサ材料等の高性能デバイス作成に供する透明導電性材料として好適に用いることができる。この電気抵抗率については、以下の実施例で説明するように、例えばホール係数等の測定によって求めることができ、本発明においては室温における値を言うものとする。
また、本発明における酸化ガリウム単結晶は、厚さ0.4mmにおける300〜620nmの波長領域での内部透過率が80%以上、好ましくは300〜800nmの波長領域での内部透過率が85%以上、より好ましくは300〜800nmの波長領域での内部透過率が90%以上である。ここで、内部透過率とは、薄膜表面における光の反射の寄与を取り除いた透過率であり、紫外可視分光光度計を用いて測定した光透過率Tと反射率Rを用い、下記式(1)に従い算出される値(Tint)である。すなわち、薄膜中に入射した光が薄膜中を透過した比率を百分率で示したものである。
int=100×T/(100−R) … …(1)
上記波長領域での内部透過率が80%以上であれば、特に可視域における垂直構造の発光素子を形成するための基板として好適であり、また、種々の発光素子やセンサ等の高性能デバイス作製に供する透明導電性材料として好適に用いることができる。
また、上記酸化ガリウム単結晶は、X線ロッキングカーブ測定により得られるX線ロッキングカーブの半値幅が好ましくは180arcsec(0.05°)以下、より好ましくは60arcsec以下であるのがよい。このような半値幅を有する酸化ガリウム単結晶は、回折ピークがシングル(すなわち結晶ドメインがシングル)であって、より完全性が高い優れた結晶性を有することから、特に、GaN系窒化物半導体膜を成長させる基板やレーザ光共振キャビティ等における応用で極めて有利である。
X線ロッキングカーブ測定は、一般に、半導体単結晶等の結晶組成、格子歪み、ドメイン構造等の評価に用いられるものであり、被検査結晶に対しX線を照射し、回折角度を中心に所定の範囲で被検査結晶を回転させてX線カウンターの検出値をモニタリングして、回折角度に対するX線検出値の関係を示すスペクトルであるロッキングカーブを得る。このロッキングカーブについて、ピークを与える角度(ピーク角度:θ)からは格子定数の情報を得ることができ、このピーク角度(θ)は回折面によって決まることから、これが揺らぐ場合には結晶面が傾いていることを示すことになる。また、ピークにおけるX線強度はその面における回折の強さを示すものであり、このピーク強度によって結晶化度の情報を得ることができる。更に、ピークの半値幅(FWHM)はその回折面の角度の揺らぎを表すものであることから、この半値幅がより小さければ格子面の傾き(misorientation)がより小さく、かつ、格子歪み(lattice strain)もより小さいことを示す。
次に、本発明における酸化ガリウム単結晶の製造方法について説明する。
先ず、酸化ガリウム(β-Ga2O3)の粉末、好ましくは純度99.99%以上の酸化ガリウム粉末にSn、Ge、Si又はこれらの酸化物から選ばれた1種以上からなる添加物を添加した粉末材料を用意し、これを圧縮成形して1400〜1600℃、好ましくは1500〜1550℃で焼結して酸化ガリウム焼結体を得る。粉末材料を圧縮成形する際には、例えばラバープレスに粉末材料を封入して、静水圧50〜600MPaで1〜3分間程度ラバープレスして成形するのがよく、焼結時間については10〜20時間程度でよい。また、焼結雰囲気としては、大気雰囲気で行なうことができる。
酸化ガリウム粉末に添加する添加物については、酸化ガリウム焼結体を形成した際には酸化ガリウムの置換サイトに取り込まれるものであり、かつ、この焼結体を原料棒としてFZ法により酸化ガリウム単結晶を形成した際には蒸発するものである。すなわち、焼結体に含まれた添加物は、焼結体が酸化ガリウムの融点(約1740℃)以上に熱せられた溶融状態で、添加物はその蒸気圧に応じて蒸発し、得られる酸化ガリウム単結晶には酸素欠損が形成されて導電性が付与される。例えば、添加物がSnO2粉末の場合、SnO2の沸点は1850℃(融点は1127℃)であるため、焼結体に含まれたSnO2は、FZ法による酸化ガリウム単結晶の育成の際に蒸発し、得られた酸化ガリウム単結晶には酸素欠損が形成される。
ところで、本発明においては、FZ法で用いる原料棒を得るのに比較的高い1400〜1600℃で焼結するため、原料棒のかさ密度が大きくなり単結晶の密度に近づく。そして、この焼結体を原料棒にしてFZ法による単結晶育成を行なえば、集光加熱の際に反射が抑えられて効率的に熱を吸収するため、単結晶育成時に原料棒が溶けやすくなる。また、焼結体中の隙間が減少することで、隙間にあったガスが溶融帯に気泡として混入する量が減るため、溶融帯の体積及び表面積の変動が抑えられ、溶融帯が安定する。その結果、得られる酸化ガリウム単結晶に形成される酸素欠損のムラが抑えられて均一に存在するようになる。つまり、導電性が付与された酸化ガリウム単結晶の結晶性の低下を可及的に抑制し、結晶性に優れた酸化ガリウム単結晶を得ることができる。焼結温度が1400℃より低いと得られる焼結体の密度が低くなり、溶融帯と焼結体の界面で溶融した原料が毛細管現象により原料棒中の隙間に吸い上がる。また、原料棒中に含まれていたガスが気泡として溶融帯中に取り込まれ、ガスが溶融帯から排出される度に溶融帯の体積・表面積が変動し、添加物の蒸発が一定でなくなり、得られる単結晶の酸素欠損にムラが生じ、均質な結晶性の単結晶が得られない。反対に1600℃より高いと、焼結体から添加元素が蒸発してしまい、単結晶を得た際に導電性が付与されないおそれがある。上記焼結温度が、特に1500℃〜1550℃であれば、より優れた結晶性及び導電性の酸化ガリウム単結晶を得ることができるため好ましい。
添加物の添加量については、元素量(2種以上の元素が添加される場合にはその合計量)がガリウム元素に対して0.05〜5at%とするのが好ましい。添加物の量がガリウム元素に対して5at%以下であれば、酸化ガリウムの置換サイトに添加物の元素が取り込まれた焼結体を得ることができ、導電性及び結晶性がより優れた酸化ガリウム単結晶を形成することができる。5at%を超えると、添加した元素の一部が焼結体中で置換サイトに入らずに、得られる単結晶の結晶性に影響を及ぼすおそれがある。また、結晶成長の際に添加元素の蒸発が不完全となり、結晶性に優れた酸化ガリウム単結晶を得ることが難しくなる。成長速度を落とせばこの問題は回避可能だが、原料の約1割程度が蒸発するのは無駄が多く、結晶成長の制御も難しくなる。一方、添加量が0.05at%より少ないと酸化ガリウム単結晶の導電性向上の効果が得られ難い。
添加物については、元素の状態のまま酸化ガリウム粉末に添加してもよく、酸化物の状態で添加してもよいが、添加物が酸化物の状態で添加される場合には、元素量が上記範囲となるようにすればよい。例えば添加物がSnO2の場合には、酸化ガリウム粉末に対してSnO2を0.1〜10mol%となるように添加するのがよい。また、添加物は、純度が99.99%以上のものを用いるのが好ましい。
上記で得た酸化ガリウム焼結体については、これを原料棒にしてFZ法により酸化ガリウム単結晶を育成する。この際、成長速度vについては5mm/hより速く15mm/h未満、好ましくは10mm/h以上15mm/h未満、より好ましくは10〜12.5mm/hで<001>方向に酸化ガリウム単結晶を育成する。一般に、FZ法では、成長速度が遅い方が品質の良い単結晶を得ることができるとされるが、本発明においては上記のような比較的速い成長速度で酸化ガリウム単結晶を成長させる。このような条件は、導電性及び結晶性を同時に満たす酸化ガリウム単結晶を得るために本発明者らが系統的に行なった結果見出されたものである。この理由については次のように推測される。本発明においては、上述したように、焼結体を得る際の焼結温度を比較的高くすることによって比較的高いかさ密度の焼結体を形成しており、この焼結体を原料棒にしてFZ法を行なえば、原料棒は比較的溶けやすい。そして、均一な状態で存在する添加物が蒸発することによって、結晶品質を落とさずに酸素欠損を生じさせることができる。この際、成長速度が5mm/h以下だと酸素欠損が雰囲気ガス中の酸素(O)で補われて、得られる酸化ガリウム単結晶の電気抵抗率が高くなるおそれがある。反対に15mm/h以上だと添加物の蒸発が不完全となり、結晶性に優れた酸化ガリウム単結晶を得ることが難しくなる。
また、酸化ガリウム単結晶を成長させる際の雰囲気については、酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気とする。酸素を含有した雰囲気とすることによって、酸化ガリウム自体の蒸発が抑えられて、結晶性に優れた酸化ガリウム単結晶を得ることができる。不活性ガスについては窒素、アルゴン、ヘリウム等から選ばれた1種以上とするのがよい。このような混合ガスとして、例えば空気やドライエアを使用することができる。
一方、FZ法で用いる種結晶については、別途FZ法で得た酸化ガリウム単結晶を用いるのが好ましい。また、原料棒及び種結晶の回転速度については、それぞれ10〜60rpmであるのがよく、互いに逆向きに回転させるのが好ましい。
本発明における酸化ガリウム単結晶の用途については特に制限されず、発光素子を得るための基板やガスセンサ等の高機能デバイス用の各種半導体材料として用いることができるが、例えば酸化ガリウム単結晶の表面を窒化処理して、酸化ガリウム単結晶の表層部に窒化ガリウム(GaN)層を備えた窒化物半導体用基板としてもよい。本発明の酸化ガリウム単結晶は結晶性に優れるため、その表面を窒化処理することによって欠陥の少ない高品質の窒化ガリウム層を得ることができる。このような窒化ガリウム層を備えた基板であれば、例えば窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、又はこれらの混晶からなるような窒化物半導体を成長させる基板として好適であり、既存の基板であるサファイアやシリコンカーバイド等と比較して格子不整合が少なく、高品質の窒化物半導体をエピタキシャル成長させることができる点で有利である。
窒化処理の手段については特に制限されないが、例えばアンモニアガス雰囲気中で酸化ガリウム単結晶を加熱するアンモニアガス加熱処理、ECR(電子サイクロトロン共鳴:Electron Cyclotron Resonance)プラズマ又はRF(高周波:Radio Frequency)プラズマで励起した窒素プラズマを用いる窒素プラズマ処理、窒素イオンをイオン注入する窒素イオン注入処理等を具体例として挙げることができる。
このうち、アンモニアガス加熱処理では、酸化ガリウム単結晶をアンモニアガス雰囲気中で例えば700〜1000℃の温度で加熱すればよい。この際、アンモニアガスと共に窒素ガスを含むようにするのがよい。アンモニアガスが窒素ガスによって希釈されることによって、アンモニアが容器内中に残留する水分と反応するのを抑制することができる。
一方、窒素プラズマ処理では、例えば窒素源として用いる窒素ガス、アンモニアガス、窒素に水素を添加した混合ガス等を所定の磁場で励起して窒素プラズマを発生させて、酸化ガリウム単結晶の表面を処理するようにすればよい。例えば窒素源として窒素ガスを用いてECR−MBE(molecular beam epitaxy)装置のチャンバーでプラズマ処理する場合、分子状窒素(N2)に2.45GHzの磁場(875G)をかけて励起したプラズマを発生させ、マイクロ波パワー100〜300W、窒素流量8〜20sccm(standard cc/min)、基板温度(酸化ガリウム単結晶の温度)300〜800℃、及び処理時間3〜120分の各条件でGaN層を形成することができる。
窒素イオン注入処理では、窒素を陽イオン化したN2 +を酸化ガリウム単結晶の表面にイオン注入すればよい。この際、イオン注入を行う注入室を2×10-6〜5×10-6Torr程度になるまで排気し、窒素イオンの加速エネルギーを10〜100keV、窒素イオンの注入量を1×1017〜1×1018ions/cm2としてイオン注入を行えばGaN層を形成することができる。
窒化処理する酸化ガリウム単結晶の表面については、酸化ガリウム単結晶の(100)面であるのが好ましい。酸化ガリウム単結晶の(100)面は酸化ガリウム単結晶の成長方向に対して平行な面であることから、酸化ガリウム単結晶は(100)面にへき開しやすく、また、例えば半導体レーザ等のレーザ発振するときに用いる光共振器のミラーをGaN結晶のへき開面で形成する場合に好適である。また、窒化処理に先駆けて、当該表面を研磨処理してもよい。研磨しておくことで欠陥形成を抑えてGaN層を形成することができる。このような研磨については一般的に行なわれる手段を用いることができるが、好ましくは砥粒などの粒子による機械的な除去作用と加工液による化学的な溶去作用を重畳させた化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)であるのがよい。
窒化処理により形成されるGaN層の膜厚については、成長させる窒化物半導体膜を良質なものにせしめる観点から、好ましくは1〜3nmであるのがよい。1nmより少ないと結晶性に優れた窒化物半導体を成長させるのには別途バッファー層を形成する必要が生じるおそれがあり、反対に3nmより厚くなると、窒化物半導体を結晶成長させる基板としては効果が飽和し、処理時間やコストの面で不利となる。なお、GaN層の膜厚については、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)等による深さ方向分析から算出することができ、あるいは電子顕微鏡による断面観察から算出することもできる。
本発明における酸化ガリウム単結晶は、従来においてその両立が難しいとされた優れた結晶性及び導電性を同時に兼ね備える。すなわち、本発明においては、酸化ガリウム粉末を焼結して得た焼結体を原料棒にしてFZ法により酸化ガリウム単結晶を得る際、酸化ガリウム粉末に特定の添加物を加えて、焼結温度及び結晶成長時の速度を所定の範囲で組み合わせることで、酸化物半導体では相反する特性であるとされた結晶性と導電性とを両立させることに成功した。そして、本発明における酸化ガリウム単結晶は、結晶性に優れて可視域における透明性に優れ、かつ、電気抵抗率が低くて導電性も優れる。
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
[酸化ガリウム単結晶の作製]
純度99.99%の酸化ガリウム粉末(株式会社高純度化学研究所製)に対して純度99.99%のSnO2粉末(株式会社高純度化学研究所製)が10mol%となるようにそれぞれ秤量し混合して粉末材料を用意した。この粉末材料を直径10mmのラバーチューブに入れ、プレス機を用いて静水圧60MPaで3分間プレス成形して円柱状に固めた。次いで、この円柱状に固めた粉末材料をラバーチューブから取り出し、これを電気炉に入れて大気中1500℃で10時間焼結し、酸化ガリウム焼結体を得た。
酸化ガリウム単結晶を作製するために、双楕円の赤外線集光加熱炉を用いて光FZ(フローティングゾーン:浮遊帯域溶融)法により酸化ガリウム単結晶の育成を行った。
上記で得た酸化ガリウム焼結体を原料棒として赤外線集光加熱炉の上軸に設置し、下軸には種結晶として酸化ガリウム単結晶の[001]方向が軸方向に向くように設置した。なお、この種結晶は、予め酸化ガリウム多結晶に対して光加熱帯域溶融を施して得た単結晶部分を切出したものである。
結晶育成雰囲気については窒素と酸素との混合ガス(N2:79vol%、O2:21vol%)となるようにして、赤外線集光加熱炉の透明石英管内にこの混合ガスを500ml/minで供給した。また、原料棒と種結晶のそれぞれの先端を炉中心になるように移動させて溶解接触させ、原料棒と種結晶とをそれぞれ20rpmの回転速度で互いに逆向きに回転させながら、<001>方向に結晶成長速度が10mm/hとなるように上下軸を移動させて1気圧下で酸化ガリウム単結晶の育成を行った。これにより、長さ37mm×幅7mm×厚さ5mmの酸化ガリウム単結晶を得た。
[物性評価]
上記で得られた酸化ガリウム単結晶について、スズの組成分析を水素化物発生原子吸光法にて行なった。この分析には還元気化装置(Varian社製VGA77)を用いて水素化物発生させ、原子吸光光度計(Varian社製 SpectrAA-220)で評価した。ガリウムについてはICP発光分光分析装置(SII ナノテクノロジー社製SPS 3100)を用いて評価した。その結果、Sn:0.006%(m/m)、Ga:77.9%(m/m)であった。
次に、上記で得られた酸化ガリウム単結晶の(100)面を切り出し、図1に示すように、厚さ(d)が0.4mmであって、約8mm×7mmの酸化ガリウム単結晶試料基板1を用意した。この試料基板1について、紫外可視分光光度計(島津製作所製 UV-3100PC)を用い、室温にて内部透過率を測定した。結果を図2に示す。
図2から明らかなように、本実施例1で得られた酸化ガリウム単結晶はas grownの状態で300〜620nmの波長領域での内部透過率が80%以上であり、透明性に優れていることが確認された。
また、上記酸化ガリウム単結晶基板1を用いてVan Der Pauw法によってホール係数の測定を行なった。上記基板1の電気抵抗率、キャリア濃度、及び移動度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2007254174
表1で明らかなように、本実施例1で得た酸化ガリウム単結晶は電気抵抗率が極めて低い値であって、導電性に優れることが確認された。
上記で得られた酸化ガリウム単結晶について、X線ロッキングカーブ測定の結果を図3に示す。これによれば、(400)面に対する回折があり、その半値幅(FWHM)は162arcsecと小さく、ピークもシングルであり、かつ、ピーク割れもないことから、この酸化ガリウム単結晶は結晶ドメインがシングルであり、結晶性もかなり良いことが確認された。
更にまた、上記で得られた酸化ガリウム単結晶について、カソードルミネッセンス測定(CL測定)を行った。測定は島津製作所EPMA装置EPMA-1600に搭載されたCL-900を用い、室温にて行った。電子ビームの加速電圧を15kV、測定波長範囲は300〜600nmとした。得られた結果を図4に示す。波長390nmの位置に鋭い発光ピークを示す青色発光が確認され、スペクトルからも結晶性も優れていることが読み取れた。
酸化ガリウム粉末に対するSnO2粉末の割合が2mol%となるように粉末材料を用意し、直径12mmのラバーチューブを用いる以外は実施例1と同様にして焼結体を得た。そして、得られた焼結体を成長速度12.5mm/hで単結晶育成する以外は実施例1と同様にして単結晶育成を行い、直径約10mm×長さ約30mmの酸化ガリウム単結晶を得た。得られた酸化ガリウム単結晶について、実施例1と同様にして、組成分析、透過率測定、ホール係数測定、X線ロッキングカーブ測定、及びカソードルミネッセンス測定を行なった。
組成分析の結果、本実施例2で得られた酸化ガリウム単結晶に含まれるSnは0.003%(m/m)、Gaは76.0%(m/m)であった。また、透過率測定の結果は図2に示すとおりであり、as grownの状態で波長300〜864nmの領域における内部透過率は85%を超えており、可視域における透明性は優れていることが確認された。X線ロッキングカーブ測定の結果は図3に示すように(400)面に対応するピークの半値幅(FWHM)43arcsecであり、不純物無添加で高品質の単結晶と同等の結晶性を示した。更に、ホール係数の測定から得られた結果は表1に示すとおりであり、電気抵抗率が極めて低い値であって、導電性に優れることが確認された。更にまた、カソードルミネッセンス測定の結果は図4に示すとおりであり、波長390nmの位置に鋭い発光ピークを示す青色発光が確認され、スペクトルからも結晶性も優れていることが読み取れた。
[比較例1]
酸化ガリウム粉末に対するSnO2粉末の割合が3mol%となるように粉末材料を用意し、1300℃で16時間焼結して酸化ガリウム焼結体を得た以外は実施例1と同様にして酸化ガリウム焼結体を得た後、実施例1と同様にしてFZ法を行い、直径約9mm×長さ約55mmの酸化ガリウム単結晶を得た。この得られた酸化ガリウム単結晶は、全体的に青色に着色しており、結晶成長方向に青みの濃淡部分が縞状に分布していた。
ところで、上記で得られた焼結体は、外観上、焼結による収縮が殆どなかったため、その焼結密度は低く、実際に、原料棒とした焼結体の先端を集光加熱して溶融させた際、溶融部直上が収縮してクラックが発生した。また、単結晶を成長させる際には溶融帯が焼結体(原料棒)に吸い上がってしまい、当該部分が膨張してクラックが発生した。このような状況から推測すると、焼結体に含まれていたガスやSnO2が気泡として溶融帯中に取り込まれ、この溶融帯中の気泡が消滅するたびに溶融帯の体積及び表面積が大きく変動したため、結晶性及び透明性が低下し、また、表1からも明らかなように導電性も劣るものと考えられる。
[比較例2]
添加物を加えずに純度99.99%の酸化ガリウム粉末(株式会社高純度化学研究所製)からなる粉末材料を用意し、実施例1と同様にして酸化ガリウム焼結体を得た。この焼結体を原料棒として、結晶育成雰囲気を窒素と酸素との混合ガス(N2:500ml/min、O2:20ml/min)、成長速度を17.5mm/hとした以外は実施例1と同様にして酸化ガリウム単結晶を育成し、直径約9mm×長さ約50mmの単結晶を得た。得られた酸化ガリウム単結晶について、実施例1と同様にして、内部透過率測定(図2)及びホール係数測定(表1)を行なった。図2より、得られた酸化ガリウム単結晶の透過率は優れた結果であったが、電気抵抗率は実施例1及び2と比べて一桁大きい値であった。
本発明における酸化ガリウム単結晶は、結晶性に優れた酸化ガリウム単結晶であって透明性に優れ、かつ、電気抵抗率が低く導電性に優れるため、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)をはじめとした種々の発光素子を得るための半導体用基板や、フラットパネルディスプレー、光学的エミッター、太陽電池等で使用される透明導電体、レーザ光共振キャビティ等の光学材料、高温酸素ガスセンサ材料等のほか、各種電極、基板、導電体、ガスセンサ、光記録材料等の高性能デバイス用の半導体材料として極めて有用である。特に、その表層部にGaN層を形成して窒化物半導体用基板とすれば、例えば窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、又はこれらの混晶からなるような窒化物半導体を成長させる基板として好適であり、いわゆる垂直型素子構造の発光素子を得ることができる。すなわち、窒化物半導体用基板がそのまま電極になり得て、素子作製のプロセスが簡略化でき工業的に極めて有用であり、発光効率を従来のものより向上させることができる。
図1は、本発明の実施例に係る酸化ガリウム単結晶基板を示す斜視説明図である。 図2は、本発明の実施例に係る酸化ガリウム単結晶(厚さ0.4mm時)の透過率(及び反射率)を示すグラフである。 図3は、本発明の実施例に係る酸化ガリウム単結晶の放射光を用いて測定したX線ロッキングカーブである。 図4は、本発明の実施例に係る酸化ガリウム単結晶の発光スペクトル(CL測定)である。
符号の説明
1 酸化ガリウム単結晶試料基板

Claims (9)

  1. 電気抵抗率が0.05Ω・cm以下であり、かつ、厚さ0.4mmにおける300〜620nmの波長領域での内部透過率が80%以上であることを特徴とする酸化ガリウム単結晶。
  2. X線ロッキングカーブ測定により得られるX線ロッキングカーブの半値幅が180arcsec以下である請求項1に記載の酸化ガリウム単結晶。
  3. 請求項1又は2に記載の酸化ガリウム単結晶の表層部にGaN層を設けたことを特徴とする窒化物半導体用基板。
  4. 酸化ガリウム粉末にSn、Ge、Si又はこれらの酸化物から選ばれた1種以上からなる添加物を添加した粉末材料を圧縮成形し、これを1400〜1600℃で焼結して酸化ガリウム焼結体を得て、この酸化ガリウム焼結体を原料棒としてFZ法により酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、成長速度vを5mm/h<v<15mm/hとして酸化ガリウム単結晶を育成することを特徴とする酸化ガリウム単結晶の製造方法。
  5. 添加物がSnO2粉末であり、酸化ガリウム粉末に対して上記SnO2粉末を0.1〜10mol%添加する請求項4に記載の酸化ガリウム単結晶の製造方法。
  6. 得られる酸化ガリウム単結晶が、電気抵抗率0.05Ω・cm以下、かつ、厚さ0.4mmにおける300〜620nmの波長領域での内部透過率が80%以上である請求項4又は5に記載の酸化ガリウム単結晶の製造方法。
  7. 得られる酸化ガリウム単結晶が、X線ロッキングカーブ測定により得られるX線ロッキングカーブの半値幅が180arcsec以下である請求項4〜6のいずれかに記載の酸化ガリウム単結晶の製造方法。
  8. 請求項4〜7のいずれかに記載の方法により得られた酸化ガリウム単結晶の表面を窒化処理して、酸化ガリウム単結晶の表層部にGaN層を形成することを特徴とする窒化物半導体用基板の製造方法。
  9. 窒化処理が、アンモニアガス雰囲気中で加熱するアンモニアガス加熱処理、ECR又はRFで励起した窒素プラズマを用いる窒素プラズマ処理、又は窒素イオンをイオン注入する窒素イオン注入処理のいずれかである請求項8に記載の窒化物半導体用基板の製造方法。
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