JP2007131682A - 導電性高分子膜及び回路基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリチオフェン又はポリチオフェン誘導体を含む化合物と、少なくとも1種類以上のカーボネート又は環状エステルを含む化合物とを含有するものとする。カーボネートや環状エステルを添加することによって、従来着目されず、また検討されていなかったポリチオフェンのイオン伝導性を高めることができ、それにより導電性を向上させることができる。
【選択図】なし
Description
一般に導電性高分子と言われているのは電子伝導性の導電性高分子であり、この電子伝導性の導電性高分子として、例えばポリアニリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール等があげられる。
特許文献1にはPEDOT/PSS水溶液に非プロトン性化合物を溶媒として添加することにより、高温のアニーリングを不要とし、かつ導電性を向上させることが記載されている。非プロトン性化合物はスルホン、スルホキシド、有機リン酸エステル、有機ホスホネート、有機ホスファミド、尿素、尿素の誘導体及びそれらの混合物から選択することが記載されており、具体的な例として例えばN−メチルピロリドン等が示されている。
しかしながら、ポリチオフェンは電子伝導性の導電性高分子と一般に言われているものの、それとは反する挙動を示す。例えば、有機半導体のポリチオフェンにおいて、大気中に暴露すると電子伝導であれば移動度(半導体の導電性)が低下するはずなのに、なぜか移動度が上昇する。また、極性の高い溶媒ほど導電性が向上するのであるならば、非常に高い極性をもつ酸では導電性が著しく向上するはずなのに、そのようにならないと報告されている。
以上の結果をふまえ、ポリチオフェンにおいて溶媒添加によりなぜ導電性が向上するのかについて考えてみると、ポリチオフェンの挙動は電子伝導性だけでなく、イオン伝導性も関与している可能性が高いことになる。そうであるならば、イオン伝導性を高めることができる構造にすれば、導電性を向上させることができることになる。
請求項2の発明では請求項1の発明において、ポリチオフェン誘導体が3,4−エチレンジオキシチオフェン骨格を含むものとされる。
請求項3の発明によれば、回路基板は請求項1又は2の導電性高分子膜によって回路パターンが形成されているものとされる。
請求項5の発明によれば、導体パターンとその導体パターンに接続されている抵抗体パターンとが基板上に形成されている回路基板は、導体パターン及び抵抗体パターンが共に請求項1又は2の導電性高分子膜よりなり、それら導体パターン及び抵抗体パターンは少なくとも1種類以上のカーボネート又は環状エステルを含む化合物の混合比を変えることによって形成されているものとされる。
導電性高分子膜の形成はポリチオフェン又はポリチオフェン誘導体を含む化合物と、少なくとも1種類以上のカーボネート(炭酸エステル)又は環状エステルを含む化合物とが混合されてなる溶液を使用して行われる。
導電性高分子としてポリチオフェンを含有していればよく、可溶化するためにポリスチレンスルホン酸(PSS)等のアニオン性高分子電解質を混ぜたものが簡便に用いられる。特に、ポリチオフェン誘導体であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)及びその誘導体が水性分散液として販売されており、簡便に利用できる。
混合溶液を用いた導電性高分子膜の形成にはスピンコート、ディップコート、インクジェット、ディスペンサ、スクリーン印刷等、各種方法を用いることができる。
実施例1
バイエル社より販売されているPEDOT/PSSコロイド分散型水溶液(Baytron P)を予めよく攪拌し、分散させた上で、所定量のカーボネート又は環状エステルを少量ずつ添加し、十分に分散させた。カーボネートにはエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートを用い、環状エステルにはγ−ブチロラクトンを用いた。
γ−ブチロラクトン 1wt% γ−ブチロラクトン 10wt%
体積抵抗率 0.11Ω・cm 体積抵抗率 0.014Ω・cm
エチレンカーボネート 1wt% エチレンカーボネート 10wt%
体積抵抗率 0.083Ω・cm 体積抵抗率 0.02Ω・cm
プロピレンカーボネート 1wt% プロピレンカーボネート 10wt%
体積抵抗率 0.39Ω・cm 体積抵抗率 0.023Ω・cm
同様の方法によりBaytron Pのみによって形成した薄膜の体積抵抗率を算出したところ、13.9Ω・cmとなった。よって、カーボネートや環状エステルを添加することにより、導電性が向上していることが確認できた。
なお、上記においては添加するカーボネートや環状エステルの濃度は10wt%までとしているが、これは10wt%を超えると、上記の方法では混合が困難となることによる。これに対し、例えば自転と公転を使用した攪拌方法や超音波を利用した攪拌方法、機械的な攪拌方法など適切な攪拌方法を用いることにより、あるいは塩、界面活性剤を添加することにより、10wt%を超えても良好に混合することが可能となる。
実施例2
Baytron Pにエチレンカーボネート1wt%を混合した混合溶液を使用し、市販のインクジェット装置を用いて基板上に配線パターンを印刷形成した。形成後、実施例1と同様に加熱乾燥させた。配線パターンの厚さは約0.1μmであった。Baytron Pのみの場合と比較して導電性は向上した。
実施例3
Baytron Pにエチレンカーボネート1wt%を混合した混合溶液を使用し、インクジェット装置を用いて基板上に配線パターン(導体パターン)を印刷形成し、さらにBaytron Pのみで抵抗体パターンを同様に印刷形成して、印刷抵抗付きの回路パターンを形成した。加熱乾燥は実施例1と同様に行った。同種材料であるため、導体パターンと抵抗体パターンとの接続部でのはがれ等の問題も生じず、良好に回路パターンを形成することができた。
実施例4
ITO膜よりなる透明電極をガラス基板上に形成し、その透明電極上にBaytron Pにエチレンカーボネート0.1wt%を混合した混合溶液を用いて薄膜を形成した。実施例1と同様に加熱乾燥後、その薄膜上に発光層としてAlq3(キノリン金属錯体)を蒸着し、さらにその上に電極としてAl(アルミニウム)を蒸着し、ヘテロ構造の有機ELを作製した。発光を確認でき、混合溶液により形成した薄膜は有機半導体として、つまりホール移動体として機能していることを確認した。
また、実施例3に示したように、導体パターンとその導体パターンに接続されている抵抗体パターンとが基板上に形成されているような回路基板において、導体パターンをこの発明による導電性高分子膜で形成し、抵抗体パターンをカーボネートや環状エステルを含まないポリチオフェン誘導体よりなる膜によって形成すれば、導体パターンと同種の材料によって抵抗体パターンを形成することができ、接続部でのはがれ等も生じず、良好な接続状態を得ることができる。
添加するカーボネート又は環状エステルは前述した例では1種類としているが、1種類に限定する必要はなく、複数種類添加するようにしてもよい。
上述したこの発明による導電性高分子膜は各種分野において使用することができる。導電体として、配線、電磁波シールド、透明電極等に用いることができる。また、抵抗体としての使用も可能である。さらに、有機半導体として使用することも有効であり、有機EL構成部材、有機FET、太陽電池等に用いることができる。
Claims (5)
- ポリチオフェン又はポリチオフェン誘導体を含む化合物と、少なくとも1種類以上のカーボネート又は環状エステルを含む化合物とを含有することを特徴とする導電性高分子膜。
- 請求項1記載の導電性高分子膜において、
上記ポリチオフェン誘導体は3,4−エチレンジオキシチオフェン骨格を含むことを特徴とする導電性高分子膜。 - 請求項1又は2記載の導電性高分子膜によって回路パターンが形成されていることを特徴とする回路基板。
- 導体パターンとその導体パターンに接続されている抵抗体パターンとが基板上に形成されている回路基板であって、
上記導体パターンが請求項1又は2記載の導電性高分子膜によって形成され、
上記抵抗体パターンがポリチオフェン誘導体よりなる膜によって形成されていることを特徴とする回路基板。 - 導体パターンとその導体パターンに接続されている抵抗体パターンとが基板上に形成されている回路基板であって、
上記導体パターン及び抵抗体パターンが共に請求項1又は2記載の導電性高分子膜よりなり、それら導体パターン及び抵抗体パターンは上記少なくとも1種類以上のカーボネート又は環状エステルを含む化合物の混合比を変えることによって形成されていることを特徴とする回路基板。
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