JP2007126794A - 多孔質アクリル繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 繊維製品とした場合でも中空率が高くかつ中空率のばらつきが小さい多孔質アクリル繊維を特別な加工条件、設備投資を必要とせず、高い生産性で得る。
【解決手段】 アクリロニトリル系ポリマー(A)とアルカリ溶液に可溶である成分(B)との混合体からなるアクリル繊維から、アルカリ溶液により成分(B)を溶出することを特徴とする多孔質アクリル繊維の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】 アクリロニトリル系ポリマー(A)とアルカリ溶液に可溶である成分(B)との混合体からなるアクリル繊維から、アルカリ溶液により成分(B)を溶出することを特徴とする多孔質アクリル繊維の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は多孔質アクリル繊維の製造方法に関する。
アクリル繊維は柔軟性、保温性、発色性、耐候性などに優れることから、衣料や寝装具等に幅広く使用されている。しかしながら吸湿性、吸水性については天然繊維に比べ劣ることから、肌着、靴下、毛布などの用途においてはムレ感、べとつき感が生じ、商品価値に劣るものとなっている。
このため、従来よりアクリル繊維の吸水性の改善技術が多数提案されており、その一つにアクリル繊維の横断面内に多数の微細孔を持つ多孔質アクリル繊維がある。多孔質アクリル繊維は内部の孔および単繊維間の微細な空隙での毛細管現象により吸水性を向上させるものであり、吸収した水は広大な表面に存在するため水は速やかに蒸発し、速乾性に優れるという利点もある。
この多孔質アクリル繊維を製造する技術も従来より提案されており、例えば水溶性高分子を添加し製糸工程中で除去する方法(特許文献1参照)、異種成分を添加し界面でボイドを形成させる方法(特許文献2参照)、低分子量添加剤を発泡させる方法(特許文献3参照)などが公知技術として知られている。
しかしこれらの手法は製糸工程中に多孔質化することに問題があった。すなわち、多孔質アクリル繊維を得ても、その後の捲縮加工やセット、カット、カードの工程や精紡から織り編み、染色加工までの工程の間に孔がつぶれてしまい、多孔質形状による特性発現を損なうという問題があった。また加工方法の改善により多孔質形状をある程度までなら維持することも可能であるが、その場合には特別な加工条件が必要となり、設備投資を要する、生産性が低下するなどの点から製造コストが高くなるという課題があった。
ところで、帯電防止の観点からアクリルにエステル系ポリマーを添加する技術が提案されている(特許文献4参照)。しかし該技術はエステル系ポリマーの特性を利用する帯電防止技術であり、多孔質化するための技術ではない。
なお特許文献1には多孔質アクリル繊維を製造した後、アルカリで処理する技術が開示されている。この技術はアルカリ処理により側鎖を加水分解し、遷移金属を導入する技術であり、多孔質化するための技術ではない。
特開平03−124811号公報(第4頁)
特公昭60−011124号公報(第4頁)
特開2001−131821号公報(第2頁)
特開昭49−116327号公報(第1頁)
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決できる多孔質アクリル繊維の製造方法を提供することにある。
本発明はアクリロニトリル系ポリマー(A)とアルカリ溶液に可溶である成分(B)との混合体からなるアクリル繊維から、アルカリ溶液により成分(B)を溶出することを特徴とする多孔質アクリル繊維の製造方法である。
本発明の多孔質アクリル繊維の製造方法により、製糸工程以降の繊維製品製造工程における孔のつぶれを抑制し、繊維製品とした場合でも中空率が高くかつ中空率のばらつきが小さい多孔質アクリル繊維が得られる。
以下、本発明の多孔質アクリル繊維の製造方法について詳細に説明する。
本発明に用いる、多孔質アクリル繊維を形成するための前駆体繊維はアクリロニトリル系ポリマー(A)とアルカリ溶液に可溶である成分(B)との混合体からなる(以下、これをアクリル混合体繊維と呼ぶ)。両者の混合状態は、アルカリ溶液により成分(B)を溶出した後に多孔質化すなわち独立した孔を多数存在させるために、繊維横断面内において(A)成分が海、(B)成分が島となっている海島繊維であることが好ましい。さらには(A)成分からなる海部の中に(B)成分からなる独立相が繊維軸方向に筋状に伸びて微分散して島部を形成しているモルホロジーを有する海島ブレンド繊維であることが、多孔質アクリル繊維とした際に繊維軸方向に伸びた微細孔を多数形成し得ることからより好ましい。
繊維中でのアクリロニトリル系ポリマー(A)とアルカリ溶液に可溶である成分(B)の混合比率は、(B)成分が少ないと溶出後に十分多孔質化せず、また原料コスト低減の点から(B)成分の添加量は少ない方が好ましいため、アクリル混合体繊維全体に対し(B)成分が5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜40重量%である。
アクリロニトリル系ポリマー(A)はアクリロニトリルホモポリマー及び/又は用途に応じてアクリロニトリルモノマーと他種モノマーとのアクリロニトリル系共重合体を用いることができる。他種モノマーの例としては、アクリル繊維の風合いや染色性を変える目的でスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマー類、さらにp−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。そのほか、多孔質アクリル繊維を炭素繊維前駆体として用いる場合は、耐炎化工程でのアクリロニトリル系ポリマー(A)の環化の進行を促進する目的でカルボン酸基、もしくはそのエステル化物を有するモノマーもしくはアクリルアミド系モノマーを共重合してもよい。アクリロニトリルモノマーと他種モノマーとの比率は繊維の用途に応じて適宜選択可能であるが、好ましくはアクリロニトリル系共重合体中のアクリロニトリルモノマーが50重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。アクリロニトリルモノマーの比率を上げることで、多孔質アクリル繊維においてもアクリル繊維独自の特性が保たれる。
またアクリロニトリル系ポリマー(A)は、分子量の指標となる45℃における20重量%ジメチルスルホキシド溶液の粘度が100〜2000poiseであることが、優れた力学特性を得る点から好ましい。
アルカリ溶液に可溶である成分(B)はアルカリ溶液に可溶であれば無機物、有機物、低分子、高分子などを使用することができるが、繊維製品の製造工程での孔のつぶれを抑制するためには製糸および高次加工での熱水を用いる工程で溶出されないことが好ましく、水には溶けずアルカリに可溶である酸化亜鉛や高級脂肪酸などが好適に用いられる。
さらには(B)成分を繊維軸方向に筋状に微分散させるために、(B)成分はエステル系ポリマーであることが最も好ましい。このエステル系ポリマーとは主鎖にエステル結合を有しているポリマーであれば分子種、分子量に特に制限はないが、製糸工程においてエステル系ポリマーを筋状に分散させるためには、45℃における15重量%ジメチルスルホキシド溶液の粘度が2000poise以下であることが好ましい。
エステル系ポリマーはアルカリ溶液による溶出速度を高める点からポリオール、特にはポリアルキレングリコールを共重合したブロックポリエーテルエステルとすることがより好ましい。さらに、アクリロニトリル系ポリマー(A)との相溶性を改善し、紡糸原液の安定性を向上する目的でこのブロックポリエーテルエステルにアクリロニトリル系ポリマー(A)と相溶性のよいモノマーをグラフト共重合することが最も好ましい。
エステル系ポリマーに共重合させるポリアルキレングリコールの分子量は、ポリエステルとの重合性の点から1000〜20000が好ましく、溶媒への溶解性の点、およびブロックポリエーテルエステルを均一な構造とするために3000〜6000とすることがより好ましい。またポリアルキレングリコールの混合比率は、エステル系ポリマーの全重量に対して1〜60重量%が好ましい。1重量%以上とすることで、アルカリ処理時の分解速度が促進され、60重量%以下とすることで得られる海島繊維の耐水性が向上する。ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられるが、中でも重合性およびアルカリ分解性の面からポリエチレングリコールを使用することが特に好ましい。
ブロックポリエーテルエステルのポリエステル部の組成については、エステル系ポリマーの結晶性を抑え、原液調整時の溶媒への溶解性を向上させ、またアルカリ処理時の分解性を向上させる目的で、脂肪族ジオールに対し脂肪族ジカルボン酸、あるいは脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の混合物を組み合わせたものが好ましい。脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸などがあげられる。また、ポリアルキレングリコールとの重合性を向上する目的でC6以下の脂肪族ジカルボン酸成分を含むことがより好ましい。
ブロックポリエーテルエステルにグラフト共重合するモノマーとしては、1種または2種以上のアクリロニトリル系ポリマー(A)と相溶性のよいモノマーであればよく、例えばアクリロニトリル、メタクリル酸メチルなどが挙げられる。
本発明のアクリロニトリル系ポリマー(A)とアルカリ溶液に可溶である成分(B)との混合体からなるアクリル繊維は、製糸、高次加工の工程通過性の観点から単糸繊度1.0〜100dtex、強度1.0〜10cN/dtex、伸度10〜100%が好ましい。
このようなアクリル混合体繊維は公知の手法により製造することが可能であり、例えば45℃における20重量%ジメチルスルホキシド溶液の粘度が100〜2000poiseであるアクリロニトリル系ポリマー(A)のジメチルスルホキシド溶液に対し、アルカリ溶液に可溶である成分(B)を、(A)成分と(B)成分との合計重量に対する(B)成分の分率が5〜50重量%となるように混合させ、かつ20〜90℃における混合溶液の溶液粘度が20〜1000poiseとなるように調製する。この混合溶液を5〜70℃で20〜80重量%のジメチルスルホキシド/水混合溶液からなる凝固浴へと湿式あるいは乾湿式紡糸し、得られるアクリル混合体繊維を1〜100m/minで引き取り、続いて浴中で2〜20倍多段延伸させて、水洗、乾燥を行った後、スタッフィングなどの捲縮加工を行い、さらにスチームセットを行うことで得られる。
本発明では、アクリロニトリル系ポリマー(A)とアルカリ溶液に可溶である成分(B)との混合体からなるアクリル混合体繊維から、アルカリ溶液により成分(B)を溶出することで多孔質アクリル繊維を得る。本発明で言う「溶出することで多孔質アクリル繊維を得る」とはアルカリ処理により繊維の重量が減少し、かつアルカリ処理前には繊維横断面内に実質的に孔が存在しない状態から、アルカリ処理後に繊維横断面内に多数の孔が存在する状態に変わることを指す。本発明ではアルカリ処理前は実質的に孔が存在せず、通常のアクリル混合体繊維と同様の製糸および高次加工を行っても孔がつぶれることはない。またアクリル混合体繊維の製糸条件によってはアクリル混合体繊維そのものにわずかな微細孔が存在する場合もあるが、本発明で用いる(A)成分と(B)成分の混合アクリル混合体繊維においても(A)成分部分にそのような微細孔を含んでも構わない。
さらに本発明ではアルカリ溶液により(B)成分を溶出するが、(B)成分がエステル系ポリマーである場合、アルカリ処理によりエステル系ポリマーの主鎖は加水分解し溶出されるため、溶出速度は飛躍的に向上する。これは公知技術である水溶性高分子の熱水溶出に比べて処理時間の大幅な短縮をもたらし、設備や用役、エネルギーの大幅な削減が可能となるため最も好ましい形態である。
本発明に用いるアルカリ溶液とはpHが7よりも大きい溶液であり、処理速度向上の観点からpH12以上が好ましく、pH13以上がより好ましい。アルカリ溶液としては水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化銅、水酸化アルミ、アンモニア、炭酸水素ナトリウムなどの水溶液などを用いることができるが、強アルカリであり、電離度が高く、工業的に安価である水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いた水溶液とすることが最も好ましい。
アルカリ溶液の濃度はアルカリ種、アルカリの電離度により異なるが、処理速度向上と工業的な歩留まり向上の観点から、0.03〜10重量%が好ましく、0.1〜6重量%がより好ましい。
アルカリ溶液による処理時間は繊維の形態、アルカリ溶液のpHにより異なるが、1〜180minが工業的な実用性から好ましく、10〜120minがより好ましい。また処理温度は10〜98℃、好ましくは20〜70℃とすることが溶出時間短縮とアルカリ溶液からの水の蒸発抑制の観点から適している。
アルカリ処理は連続糸、捲縮糸、カット綿、紡績糸、布帛、不織布などの形態で行うことができる。またアルカリ処理は繊維をアルカリ溶液の浴に連続して通過させても良く、液浴に繊維のかせや原綿、紡績糸チーズ、布帛を浸すバッチ処理でも良い。
アルカリ処理を行う工程は製糸後、捲縮加工後、カット後、紡績後、製織編後、精練後などが挙げられるが、多孔質化した後の孔のつぶれを抑制する点からは捲縮加工後およびそれ以降の工程が好ましい。
本発明で得られる多孔質繊維とは横断面内に50個以上、好ましくは100個以上の空孔を有する繊維であり、繊維表面とつながっている孔があることが吸水性向上の観点からより好ましい。それぞれの空孔の円相当径の平均値(Dv)は空孔としての機能を発現するために0.05μm以上、吸水性を高めるためには5.0μm以下であることが好ましく、また最大の空孔の円相当径(Dmax)と空孔の円相当径の平均値(Dv)との比(Dmax/Dv)は1〜20、好ましくは1〜10であることが高い力学特性と吸水性を両立できる点からより好ましい。繊維横断面での空孔の面積の合計(Sv)と単繊維の外周により囲まれる面積(Sf)との比の百分率で表される中空率も高い力学特性と吸水性を両立できる点から5〜50%であることが好ましく、10〜40%がより好ましい。本発明における空孔の個数、空孔の円相当径、最大の空孔の円相当径(Dmax)、空孔の円相当径の平均値(Dv)、繊維横断面での空孔の面積の合計(Sv)、単繊維の外周により囲まれる面積(Sf)および中空率は実施例記載の手法により求められる値とする。
本発明により得られる多孔質アクリル繊維は衣料、寝装具などの用途に用いるため単糸繊度1.0〜100dtex、強度1.0〜10cN/dtex、伸度10〜100%であることが好ましい。なお本発明で得られる多孔質アクリル繊維は、粗大な空孔が存在せず、微細な空孔からなるため、多孔質化しても優れた強度が得られる点も特徴である。
本発明により得られる多孔質アクリル繊維は多数の孔により高い中空率を持つことから吸水速乾性、軽量保温性に優れ、またアクリル繊維として使用し得る高い力学特性を持ち、さらに空孔の表面との連通部分により繊維表面に微細な凹凸が存在することから清涼感にも優れ、かつアルカリ処理によりアクリル側鎖が変性し、カチオン染料の吸着性も向上することから発色の鮮明性にも優れるため多様な用途に好適に用いられる。また多孔質アクリル繊維は単体で用いても良く、綿、麻、ウールなどの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの化学繊維、ポリエステルやナイロンとの合成繊維と混紡あるいは混繊、交織、交編して用いることも可能である。用途例としては足ふきマット、タオル、ドライヤーカンバス、肌着、靴下などが挙げられる。また微細孔および多孔質繊維の表面に機能剤を吸着させることで、抗菌衣料、薬液徐放素材、細胞培地などにも用いることができる。
本発明の多孔質アクリル繊維の製造方法において最も好適な例は、アルカリ溶液に可溶である成分(B)としてアクリロニトリルをグラフト共重合したブロックポリエーテルエステルを用い、アクリロニトリル系ポリマー(A)成分が海、(B)成分が島であるアクリル混合体繊維を得て、スタッフィングなどの捲縮加工およびスチームセットを行った後に、pHが12以上の水酸化ナトリウム水溶液に20〜70℃、5〜120min浸漬させることで、横断面内の空孔の数が50個以上であり中空率が5〜50%の多孔質アクリル繊維を得る方法である。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
A.ポリマー溶液の粘度
BROOKFIELD社製DV−II+Pro VISCOMETERを用い、温度をBROOKFIELD製 TC500にて一定に制御した条件下で、せん断速度10〜20sec−1で測定した粘度値を溶液粘度とした。
B.繊維断面の形態および孔の計測
試料となる繊維をエポキシ樹脂に含浸した後にミクロトームを用いて繊維軸に垂直な面(縦断面の場合は繊維軸に水平な面)の超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡((株)日立製作所、H−7100FA)により4000倍の倍率で観察を行い、得られた画像から形態を観察し、また空孔あるいは繊維外周部の計測には画像処理ソフト(三谷商事(株)製、Winroof)で円形図形分離を行い、以下の計測を行った。
空孔の個数:観察像から独立した孔の個数を計測した。
空孔の円相当径:それぞれの空孔について円相当径を画像処理ソフトにより求めた。
最大の空孔の円相当径(Dmax):空孔の円相当径が最大のものを採用した。
最小の空孔の円相当径(Dmin):空孔の円相当径が最小のものを採用した。
空孔の円相当径の平均値(Dv):全ての空孔の円相当径を平均したものを求めた。
繊維横断面での空孔の面積の合計(Sv):全ての空孔の面積を合計した数値を用いた。
単繊維の外周により囲まれる面積(Sf):画像内の空孔全てを塗りつぶし、繊維の外周によって囲まれる部分の面積を画像処理ソフトにより求めた。
なお中空率は以下の式により求めた。
中空率(%)=(Sv/Sf)×100
C.単繊維繊度、強度、伸度
単繊維繊度はサーチ社製DenierComputerを用いて測定し、10本の単糸繊度の平均値をもって単繊維繊度とした。強度、伸度はオリエンテック社製テンシロンUTC−100を用いて初期長20mm、引張速度20mm/minで測定し、5回の測定の平均値をもって強度、伸度とした。
D.捲縮数
単繊維に対し1.8mg/dtexの荷重をかけた状態で長さL(mm)と山数(M)を測定し、以下の式で捲縮数を求める。
捲縮数(山/25mm)=M×25/L
実施例1
ジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒とする溶液重合法により、アクリロニトリル94重量%、アクリル酸メチル5重量%、メタリルスルホン酸ソーダ1重量%からなるアクリロニトリル系ポリマー(A)を重合し、(A)成分の20重量%DMSO溶液(SA)を得た。(SA)の45℃における粘度は200poiseであった。
A.ポリマー溶液の粘度
BROOKFIELD社製DV−II+Pro VISCOMETERを用い、温度をBROOKFIELD製 TC500にて一定に制御した条件下で、せん断速度10〜20sec−1で測定した粘度値を溶液粘度とした。
B.繊維断面の形態および孔の計測
試料となる繊維をエポキシ樹脂に含浸した後にミクロトームを用いて繊維軸に垂直な面(縦断面の場合は繊維軸に水平な面)の超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡((株)日立製作所、H−7100FA)により4000倍の倍率で観察を行い、得られた画像から形態を観察し、また空孔あるいは繊維外周部の計測には画像処理ソフト(三谷商事(株)製、Winroof)で円形図形分離を行い、以下の計測を行った。
空孔の個数:観察像から独立した孔の個数を計測した。
空孔の円相当径:それぞれの空孔について円相当径を画像処理ソフトにより求めた。
最大の空孔の円相当径(Dmax):空孔の円相当径が最大のものを採用した。
最小の空孔の円相当径(Dmin):空孔の円相当径が最小のものを採用した。
空孔の円相当径の平均値(Dv):全ての空孔の円相当径を平均したものを求めた。
繊維横断面での空孔の面積の合計(Sv):全ての空孔の面積を合計した数値を用いた。
単繊維の外周により囲まれる面積(Sf):画像内の空孔全てを塗りつぶし、繊維の外周によって囲まれる部分の面積を画像処理ソフトにより求めた。
なお中空率は以下の式により求めた。
中空率(%)=(Sv/Sf)×100
C.単繊維繊度、強度、伸度
単繊維繊度はサーチ社製DenierComputerを用いて測定し、10本の単糸繊度の平均値をもって単繊維繊度とした。強度、伸度はオリエンテック社製テンシロンUTC−100を用いて初期長20mm、引張速度20mm/minで測定し、5回の測定の平均値をもって強度、伸度とした。
D.捲縮数
単繊維に対し1.8mg/dtexの荷重をかけた状態で長さL(mm)と山数(M)を測定し、以下の式で捲縮数を求める。
捲縮数(山/25mm)=M×25/L
実施例1
ジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒とする溶液重合法により、アクリロニトリル94重量%、アクリル酸メチル5重量%、メタリルスルホン酸ソーダ1重量%からなるアクリロニトリル系ポリマー(A)を重合し、(A)成分の20重量%DMSO溶液(SA)を得た。(SA)の45℃における粘度は200poiseであった。
次にアジピン酸5部、アゼライン酸12部に対してエチレングリコールを12部仕込み、エステル化反応を行い、プレポリマーを得た。このプレポリマーにポリエチレングリコール(分子量4000)48部を加えて重縮合を行い、ポリアジペート、ポリアゼレート、ポリエチレングリコールからなるブロックポリエーテルエステルを得た。このブロックポリエーテルエステル100部をDMSO737部に溶解し、アクリロニトリル30部をグラフト重合したエステル系ポリマー(B)の15.0重量%DMSO溶液(SB)を得た。(SB)の粘度は45℃において15poiseを示した。(SB)を水に吐出して得たエステル系ポリマー(B)をpH13.5である水酸化ナトリウム水溶液に60℃、60min浸漬させたところ、ポリマーは完全に溶解したことからエステル系ポリマー(B)はアルカリ溶液に可溶であると言える。
これらを(SA)は630g/min、(SB)は360g/minとなるようそれぞれ独立してギアポンプで計量吐出し、両者を段数14のミキサーで混合した。なお混合原液(S)の粘度は45℃で140poiseであった。この混合原液(S)を孔径0.06mmφ、ホール数30000の紡糸口金を使用し、40℃の40重量%DMSO/水混合溶液からなる凝固浴中に吐出し凝固させ、5.0m/minで引き取った後、70℃の30重量%DMSO/水混合溶液、90℃の10重量%DMSO/水混合溶液からなる2段の延伸浴で6.0倍延伸した後、25℃の水浴で水洗し、続いて160℃のホットドラムを通過させ60000dtex/30000fのアクリル混合体繊維を得た。このアクリル混合体繊維は(A)成分:(B)成分の重量比が70:30であり、単繊維繊度2.0dtex、強度2.1cN/dtex、伸度25%であった。
このアクリル混合体繊維を入口圧力0.06MPa、出口圧力0.01MPaのスタッフィングボックスに導入した後、バッチセッターで105℃、30minのスチームセットを行った。スチームセット後の繊維横断面観察では(A)成分が海、(B)成分が島である海島構造が見られたが明確な孔は観察されず、この時点ではアクリル混合体繊維は多孔質化していなかった。またこの繊維の繊維縦断面観察では(A)成分の海部の中に(B)成分が独立した島部を形成し、繊維軸方向に筋状に伸びて微分散していることが確認された。このアクリル混合体繊維は捲縮数12山/25mm、単繊維繊度2.1dtex、強度1.8cN/dtex、伸度40%であった。
このアクリル混合体繊維をかせとして1.5重量%(pH13.5)の水酸化ナトリウム水溶液(明成化学社製マーセリンPESを浴に対し0.4wt%添加)に浴比が1:100以上になるよう浸漬し、60℃、120minのアルカリ処理を行った。アルカリ処理前後で繊維(かせ)の重量は25wt%減量した。アルカリ処理後の繊維横断面観察を行ったところ、横断面内には190個の空孔が発生し多孔質化しており、また表面と連通している孔も見られた(連通孔は空孔とは見なさず、単繊維の外周の一部と見なす)。空孔の円相当径は最大(Dmax)で2.9μm、最小(Dmin)で0.072μm、平均値(Dv)は0.54μmであり、Dmax/Dvは5.4であった。また中空率は24%と高い中空率を示した(表1)。
さらにこの多孔質アクリル繊維は単糸繊度1.6dtex、強度2.3cN/dtex、伸度40%であり、優れた力学特性を有していた。
実施例2〜5
実施例1で用いた(A)成分、(B)成分からなるスチームセット後のアクリル混合体繊維を、アルカリ処理条件を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様の手法でアルカリ処理を行った。処理後の横断面観察結果を表1内に併せて示すが、pH、処理温度、処理時間を変更しても中空率の高い多孔質アクリル繊維が得られることが分かる。
実施例1で用いた(A)成分、(B)成分からなるスチームセット後のアクリル混合体繊維を、アルカリ処理条件を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様の手法でアルカリ処理を行った。処理後の横断面観察結果を表1内に併せて示すが、pH、処理温度、処理時間を変更しても中空率の高い多孔質アクリル繊維が得られることが分かる。
実施例6
実施例1で用いた(SA)を61部、(SB)を14部の割合で仕込み、攪拌翼を用いて攪拌して混合原液(S)を得た。この混合原液の45℃での粘度は170poiseであった。この混合原液を7.5g/minとなるようギアポンプで計量し、孔径0.06mmφ、ホール数400の紡糸口金を使用し、45℃の45重量%DMSO/水混合溶液からなる凝固浴中に吐出し凝固させ、6.0m/minで引き取った後、75℃の30重量%DMSO/水混合溶液、95℃の15重量%DMSO/水混合溶液からなる2段の延伸浴で4.0倍延伸した後、25℃の水浴で水洗し、続いて140℃のホットドラムを通過させ600dtex/400fのアクリル混合体繊維を得た。このアクリル混合体繊維は(A)成分:(B)成分の重量比が85:15であり、単繊維繊度1.5dtex、強度1.8cN/dtex、伸度20%であった。
実施例1で用いた(SA)を61部、(SB)を14部の割合で仕込み、攪拌翼を用いて攪拌して混合原液(S)を得た。この混合原液の45℃での粘度は170poiseであった。この混合原液を7.5g/minとなるようギアポンプで計量し、孔径0.06mmφ、ホール数400の紡糸口金を使用し、45℃の45重量%DMSO/水混合溶液からなる凝固浴中に吐出し凝固させ、6.0m/minで引き取った後、75℃の30重量%DMSO/水混合溶液、95℃の15重量%DMSO/水混合溶液からなる2段の延伸浴で4.0倍延伸した後、25℃の水浴で水洗し、続いて140℃のホットドラムを通過させ600dtex/400fのアクリル混合体繊維を得た。このアクリル混合体繊維は(A)成分:(B)成分の重量比が85:15であり、単繊維繊度1.5dtex、強度1.8cN/dtex、伸度20%であった。
このアクリル混合体繊維を入口圧力0.06MPa、出口圧力0.01MPaのスタッフィングボックスに導入した後、バッチセッターで105℃、45minのスチームセットを行った。スチームセット後の繊維横断面観察では(A)成分が海、(B)成分が島である海島構造が見られたが明確な孔は観察されず、この時点ではアクリル混合体繊維は多孔質化していなかった。またこの繊維の繊維縦断面観察では(A)成分の海部の中に(B)成分が独立した島部を形成し、繊維軸方向に筋状に伸びて微分散していることが確認された。このアクリル混合体繊維は捲縮数12山/25mm、単繊維繊度1.7dtex、強度1.7cN/dtex、伸度22%であった。
このアクリル混合体繊維をかせとして実施例1と同様のアルカリ溶液に浸漬し、60℃、120minのアルカリ処理を行った。アルカリ処理前後で繊維(かせ)の重量は11wt%減量した。アルカリ処理後の繊維横断面観察を行ったところ、横断面内には104個の空孔が発生し多孔質化しており、また表面と連通している孔も見られた。空孔の円相当径は最大(Dmax)で2.8μm、最小(Dmin)で0.11μm、平均値(Dv)は0.35μmであり、Dmax/Dvは8.0であった。また中空率は10%と高い中空率を示した。
さらにこの多孔質アクリル繊維は単糸繊度1.5dtex、強度2.0cN/dtex、伸度21%であり、優れた力学特性を有していた。
比較例1
重合度1700、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール(PVA)をDMSOに溶解し、PVAの15重量%溶液(SC)を調整した。(SC)の45℃での粘度は2000poiseであった。
重合度1700、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール(PVA)をDMSOに溶解し、PVAの15重量%溶液(SC)を調整した。(SC)の45℃での粘度は2000poiseであった。
この(SC)を(SB)の代わりに用いること以外は、実施例6と同様の手法で混合原液(S)の調整、製糸、捲縮加工を行った。混合原液(S)の45℃での粘度は1900poiseであった。また捲縮加工後のアクリル混合体繊維は捲縮数12山/25mm、単繊維繊度1.5dtex、強度2.1cN/dtex、伸度21%であった。このアクリル混合体繊維の横断面観察では横断面内に明確な海島構造は見られなかったが、断面内に22箇所の孔が存在した。この時点での空孔の円相当径は最大(Dmax)で0.9μm、最小(Dmin)で0.35μm、平均値(Dv)は0.55μmであり、Dmax/Dvは1.6であった。また中空率は2.2%であった。
この繊維を実施例6と同様の手法でアルカリ処理を行った。アルカリ処理前後での重量減少は0.5wt%であり、実質的に重量は減少していなかった。アルカリ処理後の繊維横断面観察を行ったところ、横断面内には19個の空孔が見られたが、空孔の円相当径は最大(Dmax)で1.0μm、最小(Dmin)で0.41μm、平均値(Dv)は0.50μm、Dmax/Dvは2.0、中空率は2.0%であり、アルカリ処理による多孔化は行われなかった。
この実験に用いたPVAは熱水可溶であり、製糸工程中でPVAが溶出したため捲縮加工後のアクリル混合体繊維では空孔が見られたが、アルカリ処理では溶出する成分が残存していなかったため、アルカリ処理により多孔質化しなかったものと推測する。
実施例7
実施例1で用いた(SA)を83部、(SB)を90部の割合で仕込み、攪拌翼を用いて攪拌して混合原液(S)を得た。この混合原液の45℃での粘度は110poiseであった。この混合原液を17.3g/minとなるようギアポンプで計量し、孔径0.12mmφ、ホール数100の紡糸口金を使用し、引取速度(凝固浴出のローラー速度)を6.5m/min、延伸倍率を4.6倍とすること以外は実施例6と同様の手法で製糸、捲縮加工を行った。製糸後のアクリル混合体繊維は1000dtex/100fであり、(A)成分:(B)成分の重量比が55:45であり、単糸繊度10dtex、強度1.3cN/dtex、伸度30%であった。また捲縮加工後のアクリル混合体繊維は捲縮数12山/25mm、単糸繊度12dtex、強度1.1cN/dtex、伸度34%であった。捲縮加工後の繊維横断面観察では(A)成分が海、(B)成分が島である海島構造が見られたが明確な孔は観察されず、この時点ではアクリル混合体繊維は多孔質化していなかった。またこの繊維の繊維縦断面観察では(A)成分の海部の中に(B)成分が独立した島部を形成し、繊維軸方向に筋状に伸びて微分散していることが確認された。
実施例1で用いた(SA)を83部、(SB)を90部の割合で仕込み、攪拌翼を用いて攪拌して混合原液(S)を得た。この混合原液の45℃での粘度は110poiseであった。この混合原液を17.3g/minとなるようギアポンプで計量し、孔径0.12mmφ、ホール数100の紡糸口金を使用し、引取速度(凝固浴出のローラー速度)を6.5m/min、延伸倍率を4.6倍とすること以外は実施例6と同様の手法で製糸、捲縮加工を行った。製糸後のアクリル混合体繊維は1000dtex/100fであり、(A)成分:(B)成分の重量比が55:45であり、単糸繊度10dtex、強度1.3cN/dtex、伸度30%であった。また捲縮加工後のアクリル混合体繊維は捲縮数12山/25mm、単糸繊度12dtex、強度1.1cN/dtex、伸度34%であった。捲縮加工後の繊維横断面観察では(A)成分が海、(B)成分が島である海島構造が見られたが明確な孔は観察されず、この時点ではアクリル混合体繊維は多孔質化していなかった。またこの繊維の繊維縦断面観察では(A)成分の海部の中に(B)成分が独立した島部を形成し、繊維軸方向に筋状に伸びて微分散していることが確認された。
このアクリル混合体繊維を実施例6と同様の手法でアルカリ処理を行った。アルカリ処理前後で繊維(かせ)の重量は36wt%減量した。アルカリ処理後の繊維横断面観察を行ったところ、横断面内には212個の空孔が発生し多孔質化しており、また表面と連通している孔も多数見られた。空孔の円相当径は最大(Dmax)で4.6μm、最小(Dmin)で0.10μm、平均値(Dv)は0.82μmであり、Dmax/Dvは5.6であった。また中空率は31%と高い中空率を示した。
さらにこの多孔質アクリル繊維は単糸繊度7.7dtex、強度2.1cN/dtex、伸度20%であり、優れた力学特性を有していた。
実施例8
実施例1で用いたポリアジペート、ポリアゼレート、ポリエチレングリコールからなるブロックポリエーテルエステル15部をDMSO85部に溶解し(アクリロニトリルを加えない)エステル系ポリマー(B)の15.0重量%DMSO溶液(SB)を得た。(SB)の45℃での粘度は12poiseであった。この(SB)を用いること以外は実施例1と同様の手法で製糸、捲縮加工を行った。なお混合原液の粘度は130poiseであった。製糸後のアクリル混合体繊維は60000dtex/30000fであり、(A)成分:(B)成分の重量比が70:30であり、単糸繊度2.0dtex、強度2.0cN/dtex、伸度26%であった。また捲縮加工後のアクリル混合体繊維は捲縮数12山/25mm、単糸繊度2.2dtex、強度1.9cN/dtex、伸度28%であった。捲縮加工後の繊維横断面観察では(A)成分が海、(B)成分が島である海島構造が見られたが明確な孔は観察されず、この時点ではアクリル混合体繊維は多孔質化していなかった。またこの繊維の繊維縦断面観察では(A)成分の海部の中に(B)成分が独立した島部を形成し、繊維軸方向に筋状に伸びて微分散していることが確認された。
実施例1で用いたポリアジペート、ポリアゼレート、ポリエチレングリコールからなるブロックポリエーテルエステル15部をDMSO85部に溶解し(アクリロニトリルを加えない)エステル系ポリマー(B)の15.0重量%DMSO溶液(SB)を得た。(SB)の45℃での粘度は12poiseであった。この(SB)を用いること以外は実施例1と同様の手法で製糸、捲縮加工を行った。なお混合原液の粘度は130poiseであった。製糸後のアクリル混合体繊維は60000dtex/30000fであり、(A)成分:(B)成分の重量比が70:30であり、単糸繊度2.0dtex、強度2.0cN/dtex、伸度26%であった。また捲縮加工後のアクリル混合体繊維は捲縮数12山/25mm、単糸繊度2.2dtex、強度1.9cN/dtex、伸度28%であった。捲縮加工後の繊維横断面観察では(A)成分が海、(B)成分が島である海島構造が見られたが明確な孔は観察されず、この時点ではアクリル混合体繊維は多孔質化していなかった。またこの繊維の繊維縦断面観察では(A)成分の海部の中に(B)成分が独立した島部を形成し、繊維軸方向に筋状に伸びて微分散していることが確認された。
このアクリル混合体繊維を実施例1と同様の手法でアルカリ処理を行った。アルカリ処理前後で繊維(かせ)の重量は28wt%減量した。アルカリ処理後の繊維横断面観察を行ったところ、横断面内には172個の空孔が発生し多孔質化しており、また表面と連通している孔も見られた。空孔の円相当径は最大(Dmax)で3.2μm、最小(Dmin)で0.095μm、平均値(Dv)は0.63μmであり、Dmax/Dvは5.1であった。また中空率は26%と高い中空率を示した。
さらにこの多孔質アクリル繊維は単糸繊度1.6dtex、強度2.3cN/dtex、伸度23%であり、優れた力学特性を有していた。
本発明の多孔質アクリル繊維の製造方法により、繊維製品とした場合でも中空率が高くかつ中空率のばらつきが小さい多孔質アクリル繊維を特別な加工条件、設備投資を必要とせず、高い生産性で得ることができる。得られた多孔質アクリル繊維は優れた吸水速乾性、軽量保温性、清涼感、鮮明発色性を有し、足ふきマット、タオル、ドライヤーカンバス、肌着、靴下、さらには微細孔および多孔質繊維の表面に機能剤を吸着させることで、抗菌衣料、薬液徐放素材、細胞培地などに好適に用いることができる。
Claims (2)
- アクリロニトリル系ポリマー(A)とアルカリ溶液に可溶である成分(B)との混合体からなるアクリル繊維から、アルカリ溶液により成分(B)を溶出することを特徴とする多孔質アクリル繊維の製造方法。
- アルカリ溶液に可溶である成分(B)がエステル系ポリマーであることを特徴とする請求項1記載の多孔質アクリル繊維の製造方法。
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JP2005322441A JP2007126794A (ja) | 2005-11-07 | 2005-11-07 | 多孔質アクリル繊維の製造方法 |
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Cited By (2)
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WO2012073852A1 (ja) | 2010-11-30 | 2012-06-07 | 東レ株式会社 | ポリアクリロニトリル繊維の製造方法および炭素繊維の製造方法 |
WO2013111857A1 (ja) | 2012-01-27 | 2013-08-01 | 三菱レイヨン株式会社 | 金属吸着用アクリル繊維、不織布及びシート状物並びにそれらの金属吸着材としての使用 |
-
2005
- 2005-11-07 JP JP2005322441A patent/JP2007126794A/ja not_active Withdrawn
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US9802177B2 (en) | 2012-01-27 | 2017-10-31 | Mitsubishi Chemical Corporation | Metal adsorption acrylic fiber, non-woven fabric, sheet-like product, and uses thereof as metal adsorbent |
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