以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書又は図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書又は図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書又は図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
本発明の第1の側面の音声出力装置は、振動することで音声を出力する第1の振動材(例えば、図1の振動材31−1)および第2の振動材(例えば、図1の振動材31−2)と、前記第1の振動材に装着され、音声信号に基づいて前記第1の振動材を振動させる第1の振動子(例えば、図1の振動子41−1および振動子41−2)と、音声信号に基づいて前記第2の振動材を振動させる第2の振動子であって、前記第2の振動材上の、前記第1の振動材における前記第1の振動子の位置に対応する位置とは異なる位置に装着された第2の振動子(例えば、図1の振動子42−1および振動子42−2)とを備える。
音声出力装置には、前記第1の振動子または前記第2の振動子に入力される音声信号の成分のうち、所定の周波数帯域の成分を通過させるフィルタ処理手段(例えば、図12のフィルタ処理部122)をさらに設けることができる。
音声出力装置には、前記第1の振動子または前記第2の振動子に入力される音声信号のゲインを調整するゲイン調整手段(例えば、図12のゲイン調整部123)をさらに設けることができる。
本発明の第1の側面の音声出力方法は、振動することで音声を出力する第1の振動材(例えば、図1の振動材31−1)に、音声信号に基づいて前記第1の振動材を振動させる第1の振動子(例えば、図1の振動子41−1および振動子41−2)を装着し、振動することで前記音声を出力する第2の振動材(例えば、図1の振動材31−2)に、音声信号に基づいて前記第2の振動材を振動させる第2の振動子(例えば、図1の振動子42−1および振動子42−2)を、前記第2の振動材上の、前記第1の振動材における前記第1の振動子の位置に対応する位置とは異なる位置に装着し、前記第1の振動子および前記第2の振動子に音声信号を入力し、前記第2の振動材の起振位置が、前記第1の振動材の起振位置に対応する位置とは異なる位置となるように、前記第1の振動材および前記第2の振動材を振動させて音声を出力する(例えば、図19のステップS14およびステップS15)ステップを含む。
本発明の第2の側面の音声出力装置は、振動することで音声を出力する第1の振動材(例えば、図20の振動材201−1)および第2の振動材(例えば、図20の振動材201−2)と、前記第1の振動材に装着され、音声信号に基づいて前記第1の振動材を振動させる第1の振動子(例えば、図20の振動子202−1および振動子202−2)と、音声信号に基づいて前記第2の振動材を振動させる第2の振動子であって、前記第2の振動材上の、前記第1の振動材における前記第1の振動子の位置に対応する位置に装着された第2の振動子(例えば、図20の振動子203−1および振動子203−2)とを備え、前記第1の振動材の厚さ、大きさ、または材質と、前記第2の振動材の厚さ、大きさ、または材質とのうち、少なくともいずれか1つが異なる。
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態の衝立スピーカ装置11の外観を示す図である。衝立スピーカ装置11は、スピーカの機能と同時に、衝立としての役割も果たす、本発明の音声出力装置の一例である。
衝立スピーカ装置11は、ベース21、車輪22A乃至車輪22D、装置支え23A乃至装置支え23D、フレーム24、加重方向振動材支え25A、加重方向振動材支え25B、前後方向振動材支え26A−1乃至前後方向振動材支え26B−3、振動材31−1乃至振動材31−3、および振動子42−1乃至振動子43−2を含むようにして構成される。
ベース21は、例えば、鉄、アルミニウム、マグネシウム、またはチタニウムなどの金属など、フレーム24を支える十分な強度を得ることのできる素材から形成される。ベース21の図中、下側には、その四隅に、車輪22A乃至車輪22D(車輪22Dは図示せず)のそれぞれが設けられ、さらにその近傍に、装置支え23A乃至装置支え23D(装置支え23Cおよび装置支え23Dは図示せず)のそれぞれが設けられている。例えば、部屋の中に設置された衝立スピーカ装置11は、ユーザにより押された場合、車輪22A乃至車輪22Dのそれぞれが床面上を回転することにより、押された方向に移動する。また、装置支え23A乃至装置支え23Dのそれぞれは、床面と接することにより、衝立スピーカ装置11を支える。
すなわち、ユーザは、衝立スピーカ装置11を所望の位置に移動させて設置することができる。
ベース21の上側には、例えば、溶接により、フレーム24が固定されており、フレーム24は、ベース21上に直立するように配置されている。
また、詳細は後述するが、フレーム24は、振動材31−1乃至振動材31−3を加重のかかる方向(図中、下方向)に固定するための、加重方向振動材支え25Aおよび加重方向振動材支え25Bと、振動材31−1乃至振動材31−3を図中、前後方向に固定するための、前後方向振動材支え26A−1乃至前後方向振動材支え26B−3とを固定している。振動材31−1乃至振動材31−3は、それらの支えにより着脱自在に固定されている。
すなわち、振動材31−1は、加重方向が加重方向振動材支え25Aにより支えられ、前後方向が前後方向振動材支え26A−1および前後方向振動材支え26B−1により支えられている。また、振動材31−2は、振動材31−1と同様に、加重方向が加重方向振動材支え25B、並びに前後方向振動材支え26A−2および前後方向振動材支え26B−2により支えられ、振動材31−3は、フレーム24の上側、並びに前後方向振動材支え26A−3および前後方向振動材支え26B−3により支えられている。
このように、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれが、フレーム24に沿って垂直方向に着脱自在に固定されることで、衝立スピーカ装置11は、床面から所定の高さとなる衝立としての役割を果たす。
また、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれは、例えば、衝立スピーカ装置11から出力される音声を聴取する聴取者の耳の位置(図中、縦方向の高さ)に、振動材31−2が位置するように、縦方向に並べられて配置される。
振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれは、例えば、石膏ボード、MDF(Medium Density Fiberboard)などの木材、アルミプレート、カーボン、若しくはアクリルなどの樹脂、またはガラスなどの素材から板状に形成される。また、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれは、異なる素材を組み合わせた(積層させた)複合材料により形成するようにしてもよい。
さらに、振動材31−1には、振動子41−1および振動子41−2が、振動材31−2には、振動子42−1および振動子42−2が、図中、横方向に並べられて取り付けられている。図1では、振動子42−1から振動子42−2までの距離が、振動子41−1から振動子41−2までの距離よりも短くなるように、振動子が振動材31−1および振動材31−2に取り付けられている。さらに、また、振動材31−3には、振動子43−1および振動子43−2が、図中、縦方向に並べられて取り付けられている。なお、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれに装着される振動子の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
衝立スピーカ装置11においては、例えば、アンプリファイアなどの音源(図示せず)に駆動された振動子41−1乃至振動子43−2のそれぞれが、音源から入力されてくる音声信号に応じて、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれを振動させることで、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれは、音声を出力する。すなわち、衝立スピーカ装置11は、音声信号を音声に変換するスピーカとしての役割を果たす。
また、振動子41−1乃至振動子43−2のそれぞれは、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれの振動特性にしたがって、所定の位置に着脱自在に配置される。
なお、図1の例において、衝立スピーカ装置11は、振動材31−1乃至振動材31−3の3枚の振動材を固定しているが、本発明においては、振動材の数は3枚に限らず、1または複数枚、着脱自在に固定することができる。すなわち、ユーザは、振動材を垂直方向に自由に組み合わせることにより、衝立スピーカ装置11を所望の高さにすることができる。
また、図1の例では、同じ大きさの振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれが、図中、縦方向に並べられて配置されているが、横方向や斜め方向に並べられて配置されるようにしてもよい。但し、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれから出力された音声が、聴取者の左右の耳に同時に到達するように、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれが並べられて配置されることが望ましい。
したがって、例えば、聴取者が図中、縦方向に立って、手前側から衝立スピーカ装置11を見るような位置で出力された音声を聴取する場合には、図1に示したように、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれを図中、縦方向に並べて配置することが望ましい。
以下の説明においては、加重方向振動材支え25Aおよび加重方向振動材支え25Bを個々に区別する必要がない場合、単に、加重方向振動材支え25と称する。また、前後方向振動材支え26A−1乃至前後方向振動材支え26B−3を個々に区別する必要がない場合、単に、前後方向振動材支え26と称し、前後方向振動材支え26A−1乃至前後方向振動材支え26A−3のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、単に、前後方向振動材支え26Aと称し、前後方向振動材支え26B−1乃至前後方向振動材支え26B−3のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、単に、前後方向振動材支え26Bと称する。
また、以下、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれを個々に区別する必要のない場合、単に振動材31と称する。さらに、また、以下、振動子41−1および振動子41−2を個々に区別する必要のない場合、単に振動子41と称し、振動子42−1および振動子42−2を個々に区別する必要のない場合、単に振動子42と称し、振動子43−1および振動子43−2を個々に区別する必要のない場合、単に振動子43と称する。
次に、図2を参照して、フレーム24の詳細について説明する。図2の上側は、図1に示したフレーム24を、図1の正面(手前側)から見たときの図を示し、図2の下側は、図1に示したフレーム24を、図1の上側から見たときの図を示す。図2の下側に示すように、フレーム24は、振動材31−1乃至振動材31−3を固定する面の断面がコの字型の形状をしている。
フレーム24は、図2の上側で示すように、メインフレーム51A乃至メインフレーム51F、およびサブフレーム52A乃至サブフレーム52Fを含むように構成される。
メインフレーム51A乃至メインフレーム51Fのそれぞれは、例えば、金属などの素材から形成され、メインフレーム51Dとベース21とが溶接により固定されることにより、フレーム24がベース21上で直立する。
また、メインフレーム51A乃至メインフレーム51Fのそれぞれには、サブフレーム52A乃至サブフレーム52Fのそれぞれを自由に配置できるように、所定の位置に長穴(または丸穴)が設けられており、それらの長穴は、メインフレーム51A乃至メインフレーム51Fのそれぞれを等分割する所定の位置にそれぞれ設けられる。例えば、メインフレーム51(メインフレーム51A乃至メインフレーム51F)の一部を拡大して見た場合、メインフレーム51には、図3に示すように、横長の長穴である長穴53−1乃至長穴53−4のそれぞれが、所定の間隔で切られている。
すなわち、フレーム24においては、図2に示すように、メインフレーム51A乃至51Fのうち、図中、水平方向(横方向)のメインフレーム51A乃至メインフレーム51Dのそれぞれには、縦長の長穴が設けられ、垂直方向(縦方向)のメインフレーム51Eおよびメインフレーム51Fには、横長の長穴が設けられることになる。
メインフレーム51Eおよびメインフレーム51Fは、L字アングル材として形成され、直線型となるメインフレーム51A乃至メインフレーム51Dのそれぞれと、例えば、溶接により固定される。例えば、フレーム24においては、図4に示すように、直線型のメインフレーム51Aと、L字型のメインフレーム51Eとが溶接により固定されることにより、図2の下側で示すように、その断面がコの字型の形状となる。
すなわち、詳細は後述するが、フレーム24は、その断面がコの字型の形状をしているので、図2中、正面側からだけでなく、左右の側面側からも、メインフレーム51Eおよびメインフレーム51Fのそれぞれに設けられた長穴を利用することができる。
また、メインフレーム51A乃至メインフレーム51Fには、それぞれに設けられた長穴に対して、例えば、ボルトまたはナットなどの留め具により、図5に示すような、サブフレーム52(サブフレーム52A乃至サブフレーム52F)のそれぞれを固定することができ、サブフレーム52A乃至サブフレーム52Fのそれぞれは、留め具により、メインフレーム51A乃至メインフレーム51Fのそれぞれに取り付けられている。
すなわち、ユーザは、留め具を外すことにより、メインフレーム51A乃至メインフレーム51Fのそれぞれに取り付けられているサブフレーム52A乃至サブフレーム52Fのいずれかを自由に取り外しすることができるとともに、留め具により、メインフレーム51A乃至メインフレーム51Fのそれぞれに、例えば、新しいサブフレーム52G(図示せず)を自由に取り付けることもできる。
サブフレーム52A乃至サブフレーム52Fのそれぞれは、メインフレーム51A乃至メインフレーム51Fのそれぞれに取り付けることにより、フレーム24の強度を上げることはもちろん、振動材31のサイズを変更する場合や、振動材31の共振点に合わせて振動材31を押さえる役割を果たして音の歪みを少なくさせる、すなわち、出力する音声の周波数の共振点を押さえることで音質を変えることが可能となる。また、サブフレーム52A乃至サブフレーム52Fのそれぞれは、振動子41−1乃至振動子43−2を背後から支えることにより、より確実に振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれに振動を伝達させることも可能となる。
すなわち、サブフレーム52A乃至サブフレーム52Fのそれぞれは、例えば、音声の共振点のピークを押さえたり、共振点の周波数をずらしたりするために設けられる。
このように、衝立スピーカ装置11は、メインフレーム51A乃至メインフレーム51Fのそれぞれに、サブフレーム52A乃至サブフレーム52Fのそれぞれを取り付けることにより、周波数の低い音声から高い音声までを確実に出力することができる。
なお、以下の説明においては、メインフレーム51A乃至メインフレーム51Fを個々に区別する必要がない場合、単に、メインフレーム51と称し、サブフレーム52A乃至サブフレーム52Fを個々に区別する必要がない場合、単に、サブフレーム52と称する。
また、上述した例において、フレーム24は、6本のメインフレーム51A乃至メインフレーム51Fと、6本のサブフレーム52A乃至サブフレーム52Fとから構成されるとして説明したが、本発明においては、任意の本数のメインフレーム51およびサブフレーム52を設けるとともに、それらのメインフレーム51およびサブフレーム52のそれぞれを任意の位置に配置することができる。
さらに、サブフレーム52は、メインフレーム51に対して、斜め方向に取り付けるようにしてもよい。また、サブフレーム52は、その形状を直線状とせずに、例えば、L字型、T字型、またはU字型などの形状とするようにしてもよい。
次に、図6および図7を参照して、加重方向振動材支え25の詳細について説明する。図6は、加重方向振動材支え25をフレーム24のメインフレーム51に固定するときの斜視図を示し、図7は、図6の加重方向振動材支え25およびメインフレーム51を上側から見た場合の図を示す。
加重方向振動材支え25は、例えば、金属などの素材から形成される。加重方向振動材支え25は、図6に示すように、L字アングル材からなり、そのL字型アングル材には、メインフレーム51に設けられている長穴に嵌めることが可能となるボルト61Aおよびボルト61Bのそれぞれが設けられている。
フレーム24は、図7に示すように、加重方向振動材支え25のボルト61Aおよびボルト61Bのそれぞれを、メインフレーム51の所定の長穴に嵌め込ませて、嵌め込まれたボルト61Aおよびボルト61Bを、それぞれ、ナット62Aおよびナット62Bにより固定する。
すなわち、フレーム24においては、L字アングル材である加重方向振動材支え25に設けられているボルト61Aおよびボルト61Bが、ナット62Aおよびナット62Bにより、メインフレーム51に固定され、加重方向(垂直方向)の振動材31を支える。その結果、衝立スピーカ装置11において、振動材31は、加重方向振動材支え25により加重方向に支えられているので、加重方向に落ちない構造となっている。
次に、図8乃至図11を参照して、前後方向振動材支え26の詳細について説明する。
前後方向振動材支え26は、例えば、金属などの素材から形成される。前後方向振動材支え26は、図8に示すように、コの字型の形状で形成され、フレーム24に着脱自在に取り付けられる。
前後方向振動材支え26は、図9乃至図11に示すように、そのコの字型の形状を利用して、前後方向振動材支え26Aと前後方向振動材支え26Bとにより振動材31を挟み込むことで、挟み込んだ振動材31を前後方向で支える。
図9乃至図11は、図1の衝立スピーカ装置11を上側から見た場合の図を示す。
図9に示すように、前後方向振動材支え26Aおよび前後方向振動材支え26Bのそれぞれには、例えば、フレーム24(のメインフレーム51)に設けられている長穴に嵌めることが可能となる所定の個数のボルト(図示せず)がそれぞれ設けられており、それらのボルトは、メインフレーム51の長穴に嵌め込まれ、ボルトの個数に対応した個数のナット(図9の例ではナット73Aおよびナット73B)により固定されている。
また、前後方向振動材支え26Aおよび前後方向振動材支え26Bのそれぞれは、振動材31を挟み込む場合、振動材31とともに、振動材31をさらに挟むようにして所定の形状の緩衝材(図9では、緩衝材71A、緩衝材71B、緩衝材72A、および緩衝材72B)も一緒に挟み込む。
緩衝材71A、緩衝材71B、緩衝材72A、および緩衝材72Bのそれぞれは、例えば、ウレタン(スポンジ)またはゴムなどの素材により形成され、その硬さは、所望の音質や音量に合わせて硬いものから柔らかいものまで調整することができる。緩衝材71Aおよび緩衝材71Bのそれぞれは、振動材31の前方に設けられ、緩衝材72Aおよび緩衝材72Bのそれぞれは、振動材31の後方に設けられて、振動材31にかかる衝撃を吸収して保護している。
すなわち、緩衝材71A、緩衝材71B、緩衝材72A、および緩衝材72Bのそれぞれは、振動材31またはフレーム24などを緩衝させることにより、振動材31による振動を行い易くし、音声を発生し易くしている。
また、衝立スピーカ装置11において、振動材31を取り外す場合、図10に示すように、前後方向振動材支え26Aに設けられたボルト74Aからナット73Aを取り外し、自由に動かせるようになったボルト74Aを、メインフレーム51の長穴に沿って水平方向にスライドさせることで、前後方向振動材支え26Aは、図中右側に移動する。また、同様に、前後方向振動材支え26Bは、ボルト74Bからナット73Bを取り外して、メインフレーム51の長穴に沿って水平方向にスライドさせることで、図中左側に移動する。
このとき、ユーザは、衝立スピーカ装置11から振動材31を外し易い状態となっているので、簡単に、振動材31を取り外すことができる。
また、ユーザは、図11に示すように、前後方向振動材支え26Aおよび前後方向振動材支え26Bのそれぞれを水平方向にスライドさせるだけでなく、前後方向振動材支え26Aおよび前後方向振動材支え26Bのいずれかを取り外してから、振動材31を取り外すようにしてもよい。
このように、衝立スピーカ装置11においては、振動材31を自由に取り外すことができるので、ユーザは、振動材31の厚み(奥行)を、所望の厚さに変更することが可能となる。
図12は、本発明を適用した衝立スピーカ装置11の構成例を示すブロック図である。なお、図12において、図1における場合と対応する部分には、同一の符号が付してあり、その説明は適宜省略する。また、図12においては、図1に示した振動材31等は、その図示が省略されている。
衝立スピーカ11装置は、音声入力端子101、制御部102、信号処理部103、および振動子41−1乃至振動子43−2を含むように構成される。
音声入力端子101は、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などから音声を再生する再生装置、ラジオ、マイクロホンなどに接続され、接続されている再生装置、ラジオ、マイクロホンなどから供給(入力)された音声信号を信号処理部103に供給する。音声入力端子101には、例えば、2チャンネルや5.1チャンネルの音声信号のうち、1つのチャンネルの音声信号が入力される。
制御部102は、振動材31のそれぞれが出力する音声のゲインを制御するための制御信号を生成し、信号処理部103に供給する。
信号処理部103は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)などから構成される。信号処理部103は、制御部102の制御の基に、音声入力端子101から入力されてくる音声信号に、所定の処理を施し、処理により得られた音声信号を振動子41−1乃至振動子43−2のそれぞれに供給する。
振動子41−1乃至振動子43−2のそれぞれは、信号処理部103から供給された音声信号を基に、自分が装着されている振動材31を振動させる。その結果、振動材31は、音声を出力することになる。
また、信号処理部103は、ディレイ処理部121、フィルタ処理部122、およびゲイン調整部123を含むように構成される。
ディレイ処理部121は、ディレイ処理部141−1乃至ディレイ処理部141−3を含むように構成される。ディレイ処理部141−1乃至ディレイ処理部141−3のそれぞれは、音声入力端子101から供給された音声信号に対して、所定の遅延量だけ遅延させる処理(遅延処理)を施し、遅延処理が施された音声信号をフィルタ処理部122に供給する。
フィルタ処理部122は、フィルタ処理部142−1乃至フィルタ処理部142−3を含むように構成される。フィルタ処理部142−1乃至フィルタ処理部142−3のそれぞれは、ディレイ処理部141−1乃至ディレイ処理部141−3のそれぞれから供給される音声信号に対して、FIR(Finite Impulse Response)フィルタやIIR(Infinite Impulse Response)フィルタなどのフィルタにより、所定の周波数帯域の音声信号を通過させたり、阻止したりするフィルタ処理を施す。フィルタ処理部142−1乃至フィルタ処理部142−3のそれぞれは、フィルタ処理が施された音声信号をゲイン調整部123に供給する。
ゲイン調整部123は、ゲイン調整部143−1乃至ゲイン調整部143−3を含むように構成される。ゲイン調整部143−1乃至ゲイン調整部143−3のそれぞれは、制御部102から供給される制御信号を基に、フィルタ処理部142−1乃至フィルタ処理部142−3のそれぞれから供給される音声信号に対して、入力されてくる音声信号を基にゲインを調整し、出力する音声信号のレベルの範囲を制限するゲイン調整処理を施す。
ゲイン調整部143−1は、ゲイン調整処理が施された音声信号を振動子41−1および振動子41−2に供給し、ゲイン調整部143−2は、ゲイン調整処理が施された音声信号を振動子42−1および振動子42−2に供給し、ゲイン調整部143−3は、ゲイン調整処理が施された音声信号を振動子43−1および振動子43−2に供給する。
なお、以下の説明において、ディレイ処理部141−1乃至ディレイ処理部141−3のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、単に、ディレイ処理部141と称し、フィルタ処理部142−1乃至フィルタ処理部142−3のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、単に、フィルタ処理部142と称する。また、ゲイン調整部143−1乃至ゲイン調整部143−3のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、単に、ゲイン調整部143と称する。
さらに、以上においては、振動子41−1乃至振動子43−2のそれぞれに供給される音声信号に対して、ディレイ処理部141、フィルタ処理部142、およびゲイン調整部143のそれぞれが所定の処理を施すとして説明したが、本発明においては、全ての処理を施す必要はなく、例えば、音声信号に対して、ディレイ処理部141による遅延処理のみを施すようにしてもよい。
さらに、また、上述した例においては、説明を分かり易くするために、ディレイ処理部121に、ディレイ処理部141−1乃至ディレイ処理部141−3を設け、フィルタ処理部122に、フィルタ処理部142−1乃至フィルタ処理部142−3を設け、ゲイン調整部123に、ゲイン調整部143−1乃至ゲイン調整部143−3を設ける構成としたが、それぞれの処理を1つの処理部(例えば、ディレイ処理部121、フィルタ処理部122、またはゲイン調整部123)が行うようにしてもよい。
ところで、図1に示したように、衝立スピーカ装置11は、3つの振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれを含むように構成されているが、取り付けられる振動子の位置は振動材31ごとに異なる。
例えば、振動材31の縦方向(図1の上下方向)の長さをHとし、横方向(図1の左右方向)の長さをWとすると、振動子は、図13に示す振動材31上の位置に配置される。ここで、図13Aは、振動材31−1に配置される振動子41の位置を示しており、図13Bは、振動材31−2に配置される振動子42の位置を示しており、図13Cは、振動材31−3に配置される振動子43の位置を示している。
図13Aでは、振動子41−1は、振動子41−1から振動材31−1の図中、左端までの距離が(1/4)Wであり、振動材31−1の図中、上端までの距離が(1/2)Hとなる位置に配置されている。また、振動子41−2は、振動子41−2から振動材31−1の図中、右端までの距離が(1/4)Wであり、振動材31−1の図中、上端までの距離が(1/2)Hとなる位置に配置されている。
すなわち、振動子41−1および振動子41−2は、振動材31−1上において(1/2)Wだけ離され、図中、横方向に並べられて配置されている。
また、図13Bに示すように、振動子42−1は、振動子42−1から振動材31−2の図中、左端までの距離が(1/3)Wであり、振動材31−2の図中、上端までの距離が(1/2)Hとなる位置に配置されている。また、振動子42−2は、振動子42−2から振動材31−2の図中、右端までの距離が(1/3)Wであり、振動材31−2の図中、上端までの距離が(1/2)Hとなる位置に配置されている。
すなわち、振動子42−1および振動子42−2は、振動材31−2上において(1/3)Wだけ離され、図中、横方向に並べられて配置されている。
さらに、図13Cに示すように、振動子43−1は、振動子43−1から振動材31−3の図中、左端までの距離が(1/2)Wであり、振動材31−3の図中、上端までの距離が(1/3)Hとなる位置に配置されている。また、振動子43−2は、振動子43−2から振動材31−3の図中、左端までの距離が(1/2)Wであり、振動材31−3の図中、下端までの距離が(1/3)Hとなる位置に配置されている。
すなわち、振動子43−1および振動子43−2は、振動材31−3上において(1/3)Hだけ離され、図中、縦方向に並べられて配置されている。
図13(図13A乃至図13C)に示した振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれは、例えば、図中、縦方向の長さ(Hの大きさ)が745mm、横方向の長さ(Wの大きさ)が910mm、厚さ(図13の奥行の長さ)が5mmである板状のMDFにより構成されている。
このように、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれの材質および大きさを同じものとしても、所定の位置(例えば、振動材31の中心)を基準とする、振動材31上の振動子の位置を振動材31ごとに異なる位置とすることで、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれにおける起振位置を異なる位置とすることができる。したがって、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれが振動して出力する音声の周波数特性は異なるものとなる。
以下、図14乃至図18を参照して、衝立スピーカ装置11の周波数特性について説明する。
衝立スピーカ装置11の周波数特性は、例えば、図14に示すように、音量(レベル)が一定であり、時間の経過とともにその周波数が直線的に変化するスイープ波形の音声信号を、音声入力端子101(図12)に入力して、振動材31から音声を出力させ、出力された音声を計測することにより得られる。
図14の例では、音声入力端子101に入力される音声信号の周波数は、時刻t0において20000Hzであり、時間の経過とともに周波数が直線的に減少して、時刻t1において20Hzとなる。このような音声信号を音声入力端子101に入力して、信号処理部103を介して振動子41乃至振動子43に供給させ、衝立スピーカ装置11から音声を出力させて、その音声を計測すると、図15乃至図18に示す計測結果(周波数特性)が得られる。
なお、このとき、信号処理部103において、遅延処理、フィルタ処理、およびゲイン調整処理は行われないものとする。また、計測に用いられた振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれは、図13A乃至図13Cに示した振動材31とされ、それぞれの振動材31の縦方向の長さ(図13のHの大きさ)は745mmであり、横方向の長さ(図13のWの大きさ)は910mmであり、厚さ(図13の奥行の長さ)は5mmであり、振動材31は、MDFにより形成されているものとする。
図15は、図14に示した音声信号に基づいて、振動子41−1および振動子41−2が、図13Aに示した振動材31−1を振動させることにより出力された音声を計測して得られた、振動材31−1の周波数特性を示す図である。なお、音声の計測位置は、図1の振動材31−1の中心から手前側に1mの位置とされる。
図15において、縦軸は計測された音声のレベル(音量)を示し、横軸は計測された音声の周波数を示す。図15の例では、63Hz付近のレベルが他の周波数のレベルよりも高くなっており、63Hz付近の音声が他の周波数の音声よりも大きい音量で出力されることが分かる。また、3000Hz乃至8000Hz付近では、比較的レベルの変化が少なく、他の周波数帯域と比べてよりフラットに近い周波数特性が得られている。
さらに、150Hzおよび250Hzにおいて、急激にレベルが変化しており、150Hz乃至250Hzのレベルは、周辺の周波数のレベルと比較して大幅に低くなっている。同様に、300Hzおよび500Hzにおいても、急激にレベルが変化しており、300Hz乃至500Hzのレベルは、周辺の周波数のレベルと比較して大幅に低くなっている。このように、ある程度の幅の周波数帯域のレベルが、周囲の周波数のレベルと比較して大きく下がっていると、聴取者には、周囲の周波数のレベルよりも下がっている周波数帯域の音声が知覚されなくなってしまう。
図16は、図14に示した音声信号に基づいて、振動子42−1および振動子42−2が、図13Bに示した振動材31−2を振動させることにより出力された音声を計測して得られた、振動材31−2の周波数特性を示す図である。なお、音声の計測位置は、図1の振動材31−2の中心から手前側に1mの位置とされる。
図16において、縦軸は計測された音声のレベル(音量)を示し、横軸は計測された音声の周波数を示す。図16の例では、175Hzおよび300Hzにおいて、急激にレベルが変化しており、175Hz乃至300Hzのレベルは、周辺の周波数のレベルと比較して大幅に低くなっている。また、1000Hz乃至5000Hz付近では、比較的レベルの変化が少なく、他の周波数帯域と比べてよりフラットに近い周波数特性が得られている。
人間の聴覚特性上、人間の聴覚は1000Hz乃至3000Hz付近の音声に対して最も敏感であるので、聴取者の耳の高さ(図1の上下方向の高さ)に配置される振動材31−2の1000Hz乃至3000Hz付近の周波数特性を比較的フラットに近いものとすることで、聴取者に、衝立スピーカ装置11から出力される音声の周波数特性がよりフラットに近いものであるように知覚させることができる。また、振動材31−1および振動材31−3から音声を出力させず、振動材31−2だけから音声を出力させる場合においても、同様に、衝立スピーカ装置11から出力される音声の周波数特性がよりフラットに近いものであるように知覚させることができる。
図17は、図14に示した音声信号に基づいて、振動子43−1および振動子43−2が、図13Cに示した振動材31−3を振動させることにより出力された音声を計測して得られた、振動材31−3の周波数特性を示す図である。なお、音声の計測位置は、図1の振動材31−3の中心から手前側に1mの位置とされる。
図17において、縦軸は計測された音声のレベル(音量)を示し、横軸は計測された音声の周波数を示す。図17の例では、図15および図16に示した、振動材31−1および振動材31−2の周波数特性と比較して、全体的に、音声のレベルが激しく変化しているが、200Hz付近(150Hz乃至300Hz)のレベルが、周囲のレベルと比較して高くなっている。
図18は、図14に示した音声信号に基づいて、振動子41、振動子42、および振動子43のそれぞれが、図13A乃至図13Cに示した振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれを同時に振動させることにより出力された音声を計測して得られた、衝立スピーカ装置11の周波数特性を示す図である。なお、音声の計測位置は、図1の振動材31−2の中心から手前側に1mの位置とされる。
図18において、縦軸は計測された音声のレベル(音量)を示し、横軸は計測された音声の周波数を示す。図18の例においては、図15乃至図17に示した振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれの周波数特性と比較して、全体的にレベルの変化が少なくフラット(平坦)に近いものとなっている。具体的には、衝立スピーカ装置11が出力する音声のレベルは、50Hz乃至10000Hzにおいてほぼ27dBVとなっている。
例えば、上述したように、図15および図16に示した、振動材31−1および振動材31−2の周波数特性は、200Hz付近では、周囲の周波数と比較してレベルが低くなっているが、図17に示した振動材31−3の周波数特性は200Hz付近において、周囲の周波数と比較してレベルが高くなっているので、これらの振動材31−1乃至振動材31−3を組み合わせて同時に音声を出力することで、図18に示したように、衝立スピーカ装置11の200Hz付近のレベルを、その周辺の周波数のレベルとほぼ同じレベルとすることができる。
このように、衝立スピーカ装置11においては、出力する音声の周波数特性が異なる3つの振動材31を組み合わせることで、衝立スピーカ装置11の周波数特性を、よりフラットに近いものとすることができる。衝立スピーカ装置11を構成する3つの振動材31のそれぞれに配置される振動子の位置は、それぞれの振動材31から同時に音声を出力した場合に、衝立スピーカ装置11が出力する音声の周波数特性がよりフラットに近くなるように定められる。
また、衝立スピーカ装置11においては、所定の振動材31(に装着された振動子)に入力される音声信号のゲインを調整するだけで、より簡単に特定の周波数帯域のレベルを増幅させたり、減衰させたりすることができる。
例えば、図15に示した振動材31−1の63Hz付近のレベルが他の周波数のレベルよりも高くなっているので、振動材31−2および振動材31−3に装着された振動子に入力される音声信号に対しては、ゲイン調整処理を行わず、振動材31−1に装着された振動子41に入力される音声信号に対してゲイン調整処理を施すことによって、衝立スピーカ装置11が出力する音声の63Hz付近のレベルを増幅させたり、減衰させたりすることができる。
従来の技術においては、音声出力装置が出力する音声の所定の周波数帯域のレベルを増幅または、減衰させる場合、調整したい周波数帯域のレベルを相対的に所定の高さだけ増幅または、減衰させるためのフィルタ係数を予め保持しておき、そのフィルタ係数を用いてフィルタ処理を行うことによって、その周波数帯域のレベルの調整を行っていた。この場合、音声出力装置は、同じ周波数帯でも、レベルを調整する調整量ごとに異なるフィルタ係数が必要であった。
これに対して、衝立スピーカ装置11では、3つの振動材31のうち、調整したい周波数帯域のレベルが最も高い振動材31に装着された振動子に入力される音声信号に対してゲイン調整処理を行うだけで、簡単に所望する周波数帯域のレベルの調整を行うことができる。
さらに、衝立スピーカ装置11においては、周波数特性の異なる複数の振動材31を組み合わせるだけで、音声信号に対してフィルタ処理を施すことなく、衝立スピーカ装置11の周波数特性をよりフラットに近いものとすることができる。したがって、フィルタ処理を施すことによる音声信号の遅延が生じることもない。
しかも、衝立スピーカ装置11を構成する振動材31のそれぞれの周波数特性は、振動材の材質、固定方法、大きさ、若しくは形状、または振動材31に固定される振動子の位置、若しくは振動子の数を変えることによって、簡単に変化させることができる。
次に、図19のフローチャートを参照して、衝立スピーカ装置11による音声出力処理について説明する。
この音声出力処理は、音声入力端子101に音声信号が入力され、その音声信号が、ディレイ処理部141(ディレイ処理部141−1乃至ディレイ処理部141−3)に供給されると開始される。
音声入力端子101からディレイ処理部141に音声信号が入力されると、ステップS11において、ディレイ処理部141は、音声入力端子101から供給された音声信号に遅延処理を施し、遅延された音声信号をフィルタ処理部142に供給する。
ステップS12において、フィルタ処理部142は、ディレイ処理部141から供給された音声信号に、所定の周波数帯域の音声信号を通過させたり、阻止したりするフィルタ処理を施し、フィルタ処理が施された音声信号をゲイン調整部143に供給する。
なお、ステップS12において、フィルタ処理部142−1乃至フィルタ処理部142−3のそれぞれに入力された音声信号のそれぞれに対して、同じフィルタ処理が施されるようにしてもよく、または異なるフィルタ処理が施されるようにしても良い。
例えば、フィルタ処理部142−1に入力された音声信号に対して、5000Hzより高い周波数の音声信号だけを通過させるフィルタ処理を施し、フィルタ処理部142−2に入力された音声信号に対して、500Hz以上5000Hz以下の周波数の音声信号だけを通過させるフィルタ処理を施し、フィルタ処理部142−3に入力された音声信号に対して、500Hzより低い周波数の音声信号だけを通過させるフィルタ処理を施すようにしてもよい。
このように、フィルタ処理部142のそれぞれにおいて、フィルタ処理部142ごとに異なる周波数帯域の音声信号だけを通過させるようにフィルタ処理を行うことによって、振動材31のそれぞれが、振動材31ごとに異なる所定の周波数帯域の音声だけを出力することができる。
したがって、後段のゲイン調整部143のそれぞれにおいて、ゲインの調整を行うだけで、より簡単に衝立スピーカ装置11が出力する音声の周波数特性をよりフラットに近いものとしたり、所望する周波数帯域の音声のレベルを調整したりすることができる。この場合、フィルタ処理部142は、予め定められた1つのフィルタ係数を保持しておくだけでよく、複数のフィルタ係数を保持しておく必要はない。
ステップS12において、音声信号にフィルタ処理が施されると、ステップS13において、ゲイン調整部143は、制御部102から供給された制御信号を基に、フィルタ処理部142から供給された音声信号に、出力する音声信号のレベルの範囲を制限するゲイン調整処理を施し、振動材31に装着されている振動子に供給する。
すなわち、ゲイン調整部143−1は、ゲイン調整処理を施した音声信号を振動子41−1および振動子41−2に供給し、ゲイン調整部143−2は、ゲイン調整処理を施した音声信号を振動子42−1および振動子42−2に供給し、ゲイン調整部143−3は、ゲイン調整処理を施した音声信号を振動子43−1および振動子43−2に供給する。
ステップS14において、振動子41乃至振動子43のそれぞれは、ゲイン調整部143−1乃至ゲイン調整部143−3のそれぞれから供給された音声信号を基に、振動材31−1乃至振動材31−3のそれぞれを振動させる。
ステップS15において、振動材31−1、振動材31−2、および振動材31−3のそれぞれは、振動子41、振動子42、および振動子43のそれぞれに振動させられることにより、音声を出力して音声出力処理は終了する。
なお、ステップS11の処理乃至ステップS13の処理において行われる、遅延処理、フィルタ処理、およびゲイン調整処理のそれぞれの処理は、特に必要のない場合には行わないようにしてもよい。
このようにして、衝立スピーカ装置11は、入力された音声信号に対して必要に応じて所定の処理を施し、音声信号に基づいて周波数特性の異なる複数の振動材31のそれぞれを振動させて音声を出力する。
このように、周波数特性の異なる複数の振動材31のそれぞれを振動させて音声を出力することで、出力する音声の周波数特性をよりフラットに近いものとすることができる。また、所定の振動材31に装着された振動子に入力される音声信号のゲインを調整することで、所望する周波数帯域の音量をより簡単に調整することができる。
以上においては、衝立スピーカ装置11を構成する複数の振動材31の材質および大きさを同一のものとし、振動材31に装着する振動子の位置を変化させることにより、それぞれの振動材31の周波数特性を異なるものとする例について説明したが、衝立スピーカ装置11を構成する複数の振動材上に配置される振動子の位置を同じ位置とし、それぞれの振動材の材質を異なるものとすることによって、振動材の周波数特性を異なるものとしてもよい。
そのような場合、例えば、図20に示すように、衝立スピーカ装置11を構成する振動材201−1乃至振動材201−3のそれぞれは、同じ大きさであり、材質だけが異なるものとされる。
また、振動材201−1上には、振動子202−1および振動子202−2が、図中、横方向に並べられて配置されている。さらに、振動材201−2上には、振動子203−1および振動子203−2が、それぞれ振動材201−1上の振動子202−1および振動子202−2に対応する位置に、図中、横方向に並べられて配置されている。同様に、振動材201−3上には、振動子204−1および振動子204−2が、それぞれ振動材201−1上の振動子202−1および振動子202−2に対応する位置に、図中、横方向に並べられて配置されている。
なお、以下、振動材201−1乃至振動材201−3のそれぞれを個々に区別する必要のない場合、単に振動材201と称する。また、以下、振動子202−1および振動子202−2を個々に区別する必要のない場合、単に振動子202と称し、振動子203−1および振動子203−2を個々に区別する必要のない場合、単に振動子203と称し、振動子204−1および振動子204−2を個々に区別する必要のない場合、単に振動子204と称する。
ここで、振動材201のそれぞれの材質は、振動材201が出力する音声のどの周波数帯域の周波数特性をよりフラットに近いものとするか、どの周波数帯域のレベルを他の周波数よりも高くしたいかなどにより選択することができる。
例えば、振動材201を合板、発泡ポリスチレンなどにより形成すると、出力する音声の高域、具体的には5000Hz以上の周波数特性を他の材質の振動材よりもよりフラットに近いものとし、かつ5000Hz以上の音声のレベルを他の周波数のレベルよりも高いものとすることができることが、本出願人により確かめられている。
また、振動材201をアクリル板、木材などにより形成すると、出力する音声の中域、具体的には500Hz以上5000Hz以下の周波数特性を他の材質の振動材よりもよりフラットに近いものとし、かつ500Hz以上5000Hz以下の音声のレベルを他の周波数のレベルよりも高いものとすることができることが、本出願人により確かめられている。
さらに、振動材201を塩化ビニルなどの合成樹脂により形成すると、出力する音声の低域、具体的には500Hz以下の周波数特性を他の材質の振動材よりもよりフラットに近いものとし、かつ500Hz以下の音声のレベルを他の周波数のレベルよりも高いものとすることができることが、本出願人により確かめられている。
さらに、また、振動材201のそれぞれの大きさ、厚さ、形状などを変化させることによって、振動材201の周波数特性を変化させるようにしてもよい。
振動材201の図中、縦方向および横方向の長さにより定まる振動材201の大きさを大きくするほど、振動材201が出力する音声のより低い周波数帯域の周波数特性をよりフラットに近いものとすることができ、かつより低い周波数帯域のレベルを他の周波数のレベルよりもより高くすることができる。
換言すれば、振動材201の大きさを小さくするほど、振動材201が出力する音声のより高い周波数帯域の周波数特性をよりフラットに近いものとすることができ、かつより高い周波数帯域のレベルを他の周波数のレベルよりもより高くすることができる。
また、振動材201の厚み(図20の奥行)を厚くするほど、振動材201が出力する音声のより高い周波数帯域の周波数特性をよりフラットに近いものとすることができ、かつより高い周波数帯域のレベルを他の周波数のレベルよりもより高くすることができる。
換言すれば、振動材201の厚みを薄くするほど、振動材201が出力する音声のより低い周波数帯域の周波数特性をよりフラットに近いものとすることができ、かつより低い周波数帯域のレベルを他の周波数のレベルよりもより高くすることができる。
さらに、また、振動材201のそれぞれを固定する固定端(固定箇所)を変化させることによって、振動材201の周波数特性を変化させるようにしてもよい。
すなわち、振動材201を固定する箇所をより多くすると、振動材201が出力する音声のより高い周波数帯域の周波数特性をよりフラットに近いものとすることができ、かつより高い周波数帯域のレベルを他の周波数のレベルよりもより高くすることができる。
例えば、図21Aに示すように、振動材201−1の図中、上下左右の端を支持部材221によって固定すると、振動材201−1が出力する音声は、高域(5000Hz以上)の周波数特性がよりフラットに近いものとなり、かつ高域(5000Hz以上)の音声のレベルが他の周波数のレベルよりも高いものとなる。
また、図21Bに示すように、振動材201−1と、支持部材221との間には、緩衝材222が配置される。ここで、図21Bは、図21Aに示した振動材201−1を、図中、下方向から上方向に見た振動材201−1および支持部材221の断面図を示している。
図21Bでは、振動材201−1の端が緩衝材222に挟み込まれ、さらに、緩衝材222が支持部材221に挟み込まれて、振動材201−1が支持部材221に固定されている。ここで、緩衝材222の弾性が大きく、緩衝材222が硬いほど、振動材201−1が出力する音声は、高域(5000Hz以上)の周波数特性がよりフラットに近いものとなり、かつ高域(5000Hz以上)の音声のレベルが他の周波数のレベルよりもより高いものとなる。
これに対して、振動材201を固定する箇所をより少なくすると(振動材201に自由端が多いほど)、振動材201が出力する音声のより低い周波数帯域の周波数特性を、よりフラットに近いものとすることができ、かつより低い周波数帯域のレベルを他の周波数のレベルよりも高くすることができる。
例えば、図22Aに示すように、振動材201−3の図中、左右の端を支持部材223によって固定すると、振動材201−3が出力する音声は、低域(500Hz以下)の周波数特性がよりフラットに近いものとなり、かつ低域(500Hz以下)の音声のレベルが他の周波数のレベルよりも高いものとなる。
また、図22Bに示すように、振動材201−3と、支持部材223との間には、緩衝材224が配置される。ここで、図22Bは、図22Aに示した振動材201−3を、図中、下方向から上方向に見た振動材201−3および支持部材223の断面図を示している。
図22Bでは、振動材201−3の端が緩衝材224に挟み込まれ、さらに、緩衝材224が支持部材223に挟み込まれて、振動材201−3が支持部材223に固定されている。ここで、緩衝材224の弾性が小さく、緩衝材224が柔らかいほど、振動材201−3が出力する音声は、低域(500Hz以下)の周波数特性がよりフラットに近いものとなり、かつ低域(500Hz以下)の音声のレベルが他の周波数のレベルよりも高いものとなる。
さらに、衝立スピーカ装置11を構成する振動材のそれぞれの大きさと、それぞれの振動材に配置される振動子の位置とを変化させて、各振動材が出力する音声の周波数特性を異なるものとするようにしてもよい。
このような場合、例えば、図23に示すように、衝立スピーカ装置11を構成し、大きさが異なる振動材251−1乃至振動材251−3のそれぞれが、並べられて配置される。
図23では、振動材251−1乃至振動材251−3のそれぞれは、図中、縦方向に並べられて配置されており、振動材251−1乃至振動材251−3のそれぞれの大きさ(図中、縦方向の長さおよび横方向の長さから定まる、振動材の表面の面積)は、振動材251−1乃至振動材251−3の順番に大きいものとされている。
振動材251−1には、図中、横方向に振動子252−1および振動子252−2が、2Lだけ離されて並べられて配置されている。ここで、振動子252−1の振動材251−1上の位置は、振動材251−1の中心から図中、左方向にLだけ離れた位置であり、振動子252−2の振動材251−1上の位置は、振動材251−1の中心から図中、右方向にLだけ離れた位置である。
また、振動材251−1よりも大きい振動材251−2には、図中、横方向に振動子253−1および振動子253−2が、4Lだけ離されて並べられて配置されている。ここで、振動子253−1の振動材251−2上の位置は、振動材251−2の中心から図中、左方向に2Lだけ離れた位置であり、振動子253−2の振動材251−2上の位置は、振動材251−2の中心から図中、右方向に2Lだけ離れた位置である。
さらに、最も大きい振動材251−3には、図中、縦方向に振動子254−1および振動子254−2が、Lだけ離されて並べられて配置されている。ここで、振動子254−1の振動材251−3上の位置は、振動材251−3の中心から図中、上方向に(1/2)Lだけ離れた位置であり、振動子254−2の振動材251−3上の位置は、振動材251−3の中心から図中、下方向に(1/2)Lだけ離れた位置である。
このように、衝立スピーカ装置11を構成する振動材として、それぞれ大きさが異なる振動材251−1乃至振動材251−3を用い、さらに、振動材251−1乃至振動材251−3のそれぞれに配置される振動子の位置を、振動材251−1乃至振動材251−3のそれぞれの中心を基準として、他の振動材上の振動子が配置される位置に対応する位置とは異なる位置とすることでも、振動材251−1乃至振動材251−3のそれぞれが出力する音声の周波数特性を異なるものとすることができる。
このように、異なる周波数特性の振動材251−1乃至振動材251−3を適宜組み合わせることで、衝立スピーカ装置11が出力する音声の周波数特性を、よりフラットに近いものとすることができる。
以上のように、本発明においては、異なる周波数特性の振動材を組み合わせて、それぞれの振動材から音声を出力するようにしたので、出力する音声の周波数特性をよりフラットに近いものとすることができる。これにより、入力された音声をより正確に再現することができる。
また、本発明においては、異なる周波数特性の振動材を組み合わせて、それぞれの振動材から音声を出力するようにしたので、所定の振動材に装着された振動子に入力される音声信号のゲインを調整することで、所望する周波数帯域の音量をより簡単に調整することができる。
図24は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するパーソナルコンピュータの構成の例を示すブロック図である。パーソナルコンピュータ301のCPU(Central Processing Unit)311は、ROM(Read Only Memory)312、または記録部318に記録されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)313には、CPU311が実行するプログラムやデータなどが適宜記憶される。これらのCPU311、ROM312、およびRAM313は、バス314により相互に接続されている。
CPU311にはまた、バス314を介して入出力インターフェース315が接続されている。入出力インターフェース315には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部316、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部317が接続されている。CPU311は、入力部316から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU311は、処理の結果を出力部317に出力する。
入出力インターフェース315に接続されている記録部318は、例えばハードディスクからなり、CPU311が実行するプログラムや各種のデータを記録する。通信部319は、インターネットやローカルエリアネットワークなどのネットワークを介して外部の装置と通信する。
また、通信部319を介してプログラムを取得し、記録部318に記録してもよい。
入出力インターフェース315に接続されているドライブ320は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア331が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータなどを取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記録部318に転送され、記録される。
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
コンピュータにインストールされ、コンピュータによって実行可能な状態とされるプログラムを格納するプログラム記録媒体は、図24に示すように、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスクを含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア331、または、プログラムが一時的もしくは永続的に格納されるROM312や、記録部318を構成するハードディスクなどにより構成される。プログラム記録媒体へのプログラムの格納は、必要に応じてルータ、モデムなどのインターフェースである通信部319を介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を利用して行われる。
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
11 衝立スピーカ装置, 31−1,31−2,31−3,31 振動材, 41−1,41−2,41 振動子, 42−1,42−2,42 振動子, 43−1,43−2,43 振動子, 103 信号処理部, 122 フィルタ処理部, 123 ゲイン処理部, 142−1,142−2,142−3,142 フィルタ処理部, 143−1,143−2,143−3,143 ゲイン処理部, 201−1,201−2,201−3,201 振動材, 202−1,202−2,202 振動子, 203−1,203−2,203 振動子, 204−1,204−2,204 振動子, 251−1,251−2,251−3 振動材, 252−1,252−2 振動子, 253−1,253−2 振動子, 254−1,254−2 振動子, 301 パーソナルコンピュータ, 311 CPU, 312 ROM, 313 RAM, 318 記録部, 331 リムーバブルメディア