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JP2007107407A - エンジンシステムおよびそれを備える車両 - Google Patents

エンジンシステムおよびそれを備える車両 Download PDF

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JP2007107407A JP2005296990A JP2005296990A JP2007107407A JP 2007107407 A JP2007107407 A JP 2007107407A JP 2005296990 A JP2005296990 A JP 2005296990A JP 2005296990 A JP2005296990 A JP 2005296990A JP 2007107407 A JP2007107407 A JP 2007107407A
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Minoru Iida
実 飯田
Takahiro Watanabe
敬弘 渡辺
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Abstract

【課題】高回転においても安定した自己着火燃焼を行うことができるエンジンシステムおよびそれを備える車両を提供することである。
【解決手段】エンジンシステム200は、ECU50およびエンジン100を含む。エンジン100がHCCI燃焼を行っている場合に、ECU50は、目標燃焼時期で自己着火燃焼が行われるようにエンジンシステム200の各部を制御する。目標燃焼時期は、エンジン100の回転数の増加に伴い増加しかつ圧縮上死点から目標燃焼時期までの時間が常に一定になるように設定される。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジンシステムおよびそれを備える車両に関する。
エンジンの熱効率を改善するために、混合気の燃料の濃度を薄くすること(空燃比のリーン化)、または排気ガスをシリンダ内へ再導入することによりエンジンの熱損失およびポンプ損失を低減する手法が知られている。
しかしながら、点火プラグを用いて混合気を着火させる火花点火方式のエンジンにおいては、空燃比をリーン化または排気ガスを大量に再導入した場合、混合気の燃焼速度が低下し、燃焼状態が不安定になる。そのため、エンジンの熱効率を大幅に向上させることができない。
上記のような燃焼状態の不安定化を防止する技術としては、HCCI(Homogeneous-Charge Compression-Ignition combustion;予混合圧縮自己着火)方式が知られている。HCCI方式は、混合気を圧縮することにより筒内温度を上昇させ、火花点火を行うことなく混合気を自己着火させるものである。HCCI方式によれば、混合気の複数の箇所から燃焼反応が生じるため、燃焼速度が低下せず、安定した燃焼が可能となる。
ところで、混合気の燃焼反応においては、燃焼期間が過度に長期化すると燃焼が不安定化し、また、過度に短期化すると打音およびノッキング振動が増加することが知られている。そこで、例えば、特許文献1の圧縮自己着火式内燃機関においては、主たる燃焼時期および主たる燃焼期間を定義し、主たる燃焼期間が第1限界期間と第2限界期間との間に収まるように燃焼時期および燃焼期間を制御している。
特開2001−355484号公報
ここで、特許文献1においては、主たる燃焼期間は、主たる燃焼時期に対し燃焼安定性より決定される長期側の第1限界期間と、打音またはノッキングにより決定される短期側の第2限界期間との間に設定しなければならない。また、主たる燃焼時期の遅角限界は機関回転数の上昇に伴い進角側に変化するように設定されている。この場合、機関回転数が増加することにより、主たる燃焼期間および主たる燃焼時期の成立範囲は減少する。つまり、特許文献1の圧縮自己着火式内燃機関においては、機関回転数の上昇に伴い自己着火燃焼が可能な領域が狭くなる。
本発明の目的は、高回転においても安定した自己着火燃焼を行うことができるエンジンシステムおよびそれを備える車両を提供することである。
(1)第1の発明に係るエンジンシステムは、機械装置を駆動するエンジンシステムであって、シリンダを有し、シリンダ内の混合気が自己着火燃焼を行うエンジンと、エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、エンジンが自己着火燃焼を行っているときに混合気の自己着火の時期を制御する制御手段とを備え、制御手段は、回転数検出手段により検出されるエンジンの回転数の増加に伴い混合気の自己着火の時期が遅角するように混合気の自己着火の時期を制御するものである。
本発明に係るエンジンシステムにおいては、回転数検出手段によりエンジンの回転数が検出される。制御手段は、エンジンの回転数の増加に伴い、混合気の自己着火の時期を遅角させる。
この場合、エンジンの回転数の増加に伴い燃焼時期が遅角するので、エンジンが高回転で作動しても混合気の燃焼期間が短くなることが防止される。それにより、エンジンが高回転で作動している場合においても、打音およびノッキング等が防止された安定した自己着火燃焼が可能になるとともに、エンジンの破損を防止することができる。
(2)制御手段は、圧縮上死点から自己着火までの時間が常に等しくなるように混合気の自己着火の時期を制御してもよい。
この場合、シリンダ内の温度および圧力とそれらの保持時間もほぼ一定に維持される。自己着火燃焼における燃焼安定性は、シリンダ内の温度および圧力とそれらの保持時間とに大きく影響を受ける。したがって、圧縮上死点から自己着火までの時間が常に等しくなるように混合気の自己着火の時期を制御することにより、常に良好な燃焼安定性を得ることが可能になる。
(3)エンジンシステムは、混合気の燃焼時期を計測する燃焼時期計測手段と、エンジンの回転数に応じた混合気の最適な燃焼時期を記憶する記憶手段とをさらに備え、制御手段は、燃焼時期計測手段により計測された燃焼時期と記憶手段に記憶された最適な燃焼時期との誤差が小さくなるように混合気の自己着火の時期を制御してもよい。
この場合、記憶手段に記憶された最適な燃焼時期に近づくように混合気の自己着火の時期が制御される。それにより、より安定した自己着火燃焼が可能になるとともに、エンジンの破損を確実に防止することができる。
(4)エンジンシステムは、混合気を火花点火燃焼させる点火手段をさらに備え、制御手段は、誤差の絶対値が所定の値より大きい場合に点火手段により混合気を火花点火燃焼させてもよい。
この場合、燃焼時期計測手段によって実際に測定された燃焼時期が記憶手段に記憶された最適な燃焼時期と大きく異なっている場合には、火花点火燃焼が行われる。それにより、混合気の早期着火および失火等の不整燃焼を防止することができる。
(5)最適な燃焼時期は、シリンダから排出される排気に含まれる窒素酸化物、シリンダ内の圧力の変化率の最大値および混合気の燃焼安定性に基づいて決定されてもよい。
この場合、燃焼安定性が良好でかつ窒素酸化物、打音およびノッキングが減少された自己着火燃焼が可能になる。
(6)エンジンシステムは、空気を吸気としてシリンダに導く吸気通路と、シリンダから排出される排気の少なくとも一部を吸気としてシリンダ内へ導く再循環通路と、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気の量および再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量の少なくとも一方を調整する吸気量調整手段と、シリンダから排出される排気の量を調整する排気量調整手段と、機械装置の運転状態に関する情報を検出する運転情報検出手段とをさらに備え、制御手段は、運転情報検出手段により検出された運転状態に関する情報に基づいて、吸気量調整手段および排気量調整手段の少なくとも一方を制御することにより、自己着火燃焼前に、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気の量、再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量およびシリンダ内に残存する既燃ガスの量を制御するとともに、混合気の空燃比を理論空燃比に設定してもよい。
このエンジンシステムにおいては、混合気の自己着火燃焼後にシリンダ内の既燃ガスの少なくとも一部が排気としてシリンダから排出される。このとき、シリンダから排出される排気の量が排気量調整手段により調整される。次いで、空気が吸気通路を通してシリンダ内に導かれ、シリンダから排出される排気の少なくとも一部が再循環通路を通してシリンダ内に導かれる。このとき、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気の量および再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量の少なくとも一方が吸気量調整手段により調整される。
その後、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれた空気、再循環通路を通してシリンダ内へ導かれた排気およびシリンダ内に残存する既燃ガスがシリンダ内において圧縮される。それにより、シリンダ内が高温高圧の状態となり、空気および燃料からなる混合気が自己着火燃焼する。
この場合、運転情報検出手段により機械装置の運転状態に関する情報が検出され、検出された情報に基づいて制御手段により吸気量調整手段および排気量調整手段の少なくとも一方が制御される。それにより、自己着火燃焼前に、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気の量、再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量およびシリンダ内に残存する既燃ガスの量が制御される。
シリンダ内に残存する既燃ガスは、燃焼直後の高温の状態にある。一方、再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気は、シリンダ内に残存する既燃ガスよりも低温である。
したがって、シリンダ内に残存する既燃ガスの量および再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量を制御することにより、シリンダ内を最適な温度に制御することができる。それにより、混合気の自己着火の時期を容易に調整することができる。その結果、熱効率が向上されるとともに、安定した自己着火燃焼を行うことができる。
また、シリンダ内の混合気の空燃比が理論空燃比に設定される。この場合、混合気の自己着火燃焼により生じる既燃ガス中の酸素濃度がほぼ0となる。すなわち、シリンダから排出される排気中の酸素濃度がほぼ0となる。そのため、触媒を用いることにより、排気中の窒素酸化物を十分に還元することが可能となり、排気中の窒素酸化物の量を低減することができる。その結果、排気中の窒素酸化物の量の増加を抑制しつつ自己着火燃焼による運転領域を拡大することが可能となる。
(7)吸気量調整手段は、吸気通路内の流量を調整する第1の吸気量調整手段と、再循環通路内の流量を調整する第2の吸気量調整手段とを含み、制御手段は、運転情報検出手段により検出された運転状態に関する情報に基づいて、第1の吸気量調整手段、第2の吸気量調整手段および排気量調整手段の少なくとも1つを制御することにより、自己着火燃焼前に、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気の量、再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量およびシリンダ内に残存する既燃ガスの量を制御してもよい。
この場合、第1の吸気量調整手段により吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気の量が調整され、第2の吸気量調整手段により再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量が調整される。第1の吸気量調整手段、第2の吸気量調整手段および排気量調整手段の少なくとも1つが制御されることにより、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気の量、再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量およびシリンダ内に残存する既燃ガスの量が制御される。それにより、シリンダ内の温度が制御される。その結果、混合気の自己着火燃焼の時期を容易に調整することができる。
(8)吸気量調整手段は、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気と再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気とを含む吸気の量を調整する第3の吸気量調整手段を含み、制御手段は、運転情報検出手段により検出された運転状態に関する情報に基づいて、第3の吸気量調整手段および排気量調整手段の少なくとも一方を制御することにより、自己着火燃焼前に、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気の量、再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量およびシリンダ内に残存する既燃ガスの量を制御してもよい。
この場合、第3の吸気量調整手段によりシリンダ内に導入される吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気と再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気とを含む吸気の量が調整される。第3の吸気量調整手段および排気量調整手段の少なくとも一方が制御されることにより、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気の量、再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量およびシリンダ内に残存する既燃ガスの量が制御される。それにより、シリンダ内の温度が制御される。その結果、混合気の自己着火燃焼の時期を容易に調整することができる。
(9)吸気量調整手段は、吸気通路内の流量を調整する第1の吸気量調整手段、再循環通路内の流量を調整する第2の吸気量調整手段、および吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気と再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気とを含む吸気の量を調整する第3の吸気量調整手段を含み、制御手段は、運転情報検出手段により検出された運転状態に関する情報に基づいて、第1の吸気量調整手段、第2の吸気量調整手段、第3の吸気量調整手段および排気量調整手段の少なくとも1つを制御することにより、自己着火燃焼前に、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気の量、再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量およびシリンダ内に残存する既燃ガスの量を制御してもよい。
この場合、第1の吸気量調整手段、第2の吸気量調整手段、第3の吸気量調整手段および排気量調整手段の少なくとも1つが制御されることにより、吸気通路を通してシリンダ内へ導かれる空気の量、再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気の量およびシリンダ内に残存する既燃ガスの量が制御される。それにより、シリンダ内の温度がより正確に制御される。その結果、混合気の自己着火燃焼の時期を容易に調整することができる。
(10)第2の発明に係る車両は、第1の発明に係るエンジンシステムと、エンジンシステムにより発生される動力を駆動輪に伝達する伝達機構とを備えたものである。
本発明に係る車両においては、第1の発明に係るエンジンシステムにより発生される動力が、伝達機構により駆動輪に伝達され、駆動輪が駆動される。
この場合、第1の発明に係るエンジンシステムにより、エンジンの回転数の増加に伴い燃焼時期が遅角するので、エンジンが高回転で作動しても混合気の燃焼期間が短くなることが防止される。それにより、エンジンが高回転で作動している場合においても、打音およびノッキング等が防止された安定した自己着火燃焼が可能になるとともに、エンジンの破損を防止することができる。
本発明によれば、エンジンの回転数の増加に伴い燃焼時期が遅角するので、エンジンが高回転で作動しても混合気の燃焼期間が短くなることが防止される。それにより、エンジンが高回転で作動している場合においても、打音およびノッキング等が防止された安定した自己着火燃焼が可能になるとともに、エンジンの破損を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態に係るエンジンシステムについて図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態のエンジンシステムは、HCCI(Homogeneous-Charge Compression-Ignition combustion;予混合圧縮自己着火)方式および火花点火方式による燃焼を行う。
(1)エンジンシステムの構成
図1は、本発明の一実施の形態に係るエンジンシステムを示す模式図である。図1に示すように、エンジンシステム200は、ECU50(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)、エンジン100、吸気管11、排気管12および排気再循環装置13を含む。
エンジン100はシリンダ1を有し、シリンダ1内には、ピストン2が上下動可能に設けられる。また、シリンダ1内の上部には燃焼室3が設けられる。燃焼室3は吸気ポート4および排気ポート5を介してエンジン100の外部に連通する。燃焼室3の吸気口に開閉自在に吸気弁6が配置され、燃焼室3の排気口に開閉自在に排気弁7が配置される。吸気弁6の上端には、吸気弁6を駆動するための吸気弁駆動装置6aが設けられる。排気弁7の上端には、排気弁7を駆動するための排気弁駆動装置7aが設けられる。燃焼室3の上部には、燃焼室3内で火花点火を行うための点火プラグ8が設けられる。
シリンダ1には、シリンダ1内に燃料を噴射するためのインジェクタ9およびシリンダ1内の混合気の燃焼時期を計測するための燃焼時期計測器10が設けられる。
エンジン100には、吸気ポート4と連通するように吸気管11が取り付けられ、排気ポート5と連通するように排気管12が取り付けられる。吸気管11および排気管12には、排気再循環装置13が設けられる。排気再循環装置13は、吸気管11と排気管12とを連通させる配管13a、および配管13a内に設けられた排気再循環バルブ13bを有する。
エンジン100が作動する際には、空気が吸気管11を通して吸気ポート4からシリンダ1内に吸入される。シリンダ1内において混合気の燃焼により生じた既燃ガスは、排気ポート5から排気管12を通して排出される。このとき、排気管12を通る排気の少なくとも一部は、排気再循環装置13により吸気管11へと導かれる。排気管12から吸気管11へと導かれる排気の流量は、排気再循環バルブ13bにより調整される。
また、吸気管11内で配管13aとの合流部より上流側にスロットルバルブ14が設けられる。図示しないアクセルを操作することにより直接的または間接的にスロットルバルブ14の開度が調整される。それにより、空気の流量が調整される。本実施の形態においては、運転者は、アクセルの操作量(以下、アクセル開度と呼ぶ)を調節することにより要求トルクを決定することができる。したがって、エンジン100のトルクを大きくしたい場合すなわち高負荷運転時にはアクセル開度を大きくし、エンジン100のトルクを小さくしたい場合すなわち中低負荷運転時には、アクセル開度を小さくする。なお、本実施の形態においては、ECU50によってもスロットルバルブ14の開度が調整される。
ECU50は、運転領域判定部51、火花点火燃焼制御部52、HCCI燃焼制御部53、燃料性状判定部54および記憶部55を含む。なお、図1においては、機能的な構成を示すブロック図によりECU50を示している。運転領域判定部51、火花点火燃焼制御部52、HCCI燃焼制御部53、燃料性状判定部54および記憶部55は、マイクロコンピュータおよびその制御プログラムにより実現されてもよく、これら各機能部の一部または全てが電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
ECU50には、エンジン回転数センサ31からエンジン回転数ERが与えられ、アクセル開度センサ32からアクセル開度AOが与えられ、油温センサ33から油温OTが与えられ、水温センサ34から水温WTが与えられ、燃焼時期計測器10から燃焼時期BPが与えられる。また、ECU50には、図示しないスロットル開度センサからスロットル開度TOが与えられる。なお、スロットル開度TOとはスロットルバルブ14の開き角度を示す。
ECU50は、吸気弁駆動装置6aに吸気弁制御信号IVを与え、排気弁駆動装置7aに排気弁制御信号EVを与え、排気再循環バルブ13bに排気再循環バルブ制御信号EGRを与え、点火プラグ8に点火信号SIを与え、インジェクタ9に噴射制御信号FIを与え、スロットルバルブ14にスロットルバルブ制御信号TVを与える。これにより、ECU50は、吸気弁駆動装置6a、排気弁駆動装置7a、点火プラグ8、インジェクタ9、排気再循環バルブ13bおよびスロットルバルブ14を制御する。
(2)エンジンの動作
次に、エンジン100の動作について説明する。本実施の形態においては、指定された負荷領域に応じてHCCI方式による燃焼(以下、HCCI燃焼と呼ぶ)および火花点火方式による燃焼(以下、火花点火燃焼と呼ぶ)が選択的に行なわれるように、ECU50によりエンジン100の動作が制御される。以下、火花点火燃焼、HCCI燃焼およびECU50による制御動作について説明する。
(2−1)火花点火燃焼
まず、火花点火燃焼について説明する。図2は、エンジン100の火花点火燃焼の動作を説明するための図である。
図2(a)に示すように、吸気弁6が吸気口を閉塞するとともに、排気弁7が下方向にリフトし、ピストン2が略BDC(Bottom Dead Center;下死点)から略TDC(Top Dead Center;上死点)まで上昇する。それにより、シリンダ1内の既燃ガスが排気ポート5から排出される。以下、図2(a)に示す上記の行程を、排気行程と呼ぶ。
次に、図2(b)に示すように、排気弁7が排気口を閉塞するとともに、吸気弁6が下方向にリフトし、ピストン2が略TDCから略BDCまで下降する。それにより、空気が吸気ポート4からシリンダ1内に吸入される。
このとき、インジェクタ9によりシリンダ1内に燃料が噴射され、空気および燃料からなる混合気が形成される。以下、図2(b)に示す上記の行程を、吸気行程と呼ぶ。
ここで、火花点火燃焼においては、図2(a)の排気行程から図2(b)の吸気行程に移行する際に、吸気弁6および排気弁7が共にリフトした状態となる期間が設けられる。このような期間を、一般的にオーバーラップ期間と呼ぶ。
次に、図2(c)に示すように、吸気口および排気口が閉塞された状態で、ピストン2が上昇し、シリンダ1内の混合気が圧縮される。以下、図2(c)に示す上記の行程を、圧縮行程と呼ぶ。
次に、図2(d)に示すように、ピストン2がTDC近傍まで上昇し、シリンダ1内の混合気が十分に圧縮された状態で、点火プラグ8によりシリンダ1内の混合気に火花が点火される。それにより、シリンダ1内の混合気が燃焼する。その燃焼のエネルギーによりピストン2が下方向へ駆動される。以下、図2(d)に示す上記の行程を、燃焼行程と呼ぶ。
ピストン2が略BDCまで下降した後、図2(a)の排気行程に移行し、図2(a)の排気行程から図2(d)の燃焼行程を繰り返す。
(2−2)HCCI燃焼
次に、次に、HCCI燃焼について説明する。図3は、エンジン100のHCCI燃焼の動作を説明するための図である。
図3(a)に示すように、吸気弁6が吸気口を閉塞するとともに、排気弁7が下方向にリフトし、ピストン2が略BDCから上昇する。それにより、シリンダ1内の既燃ガスが排気ポート5から排出される。図3(a)に示す行程は、図2(a)に示す行程と同様に、排気行程と呼ぶ。
ここで、HCCI燃焼においては、図3(b)に示すように、ピストン2がシリンダ1のTDCまで上昇する前、すなわち、シリンダ1内に既燃ガスが残留した状態で、排気弁7が排気口を閉塞する。このため、ピストン2が略TDCまで上昇することにより、シリンダ1内の既燃ガスが圧縮される。
このとき、インジェクタ9によりシリンダ1内の既燃ガス中に燃料が噴射される。シリンダ1内の既燃ガスはピストン2により圧縮されているので、高温高圧の状態である。それにより、既燃ガス中に噴射された燃料は、高温高圧のもとで反応が進み、反応性が高い状態に改質される。以下、図3(b)に示すように、排気行程後に吸気口および排気口が共に閉塞される上記の期間を、密閉期間と呼ぶ。また、密閉期間における燃料の反応を、燃料の予反応と呼ぶ。
次に、図3(c)に示すように、ピストン2が略TDCから下降するとともに、吸気弁6が下方向にリフトする。このため、吸気が吸気ポート4からシリンダ1内に吸入される。ここで、吸気は、吸気管11を通して吸気ポート4に導かれた空気、および排気管12から配管13aを介して吸気管11内へ導かれた排気(以下、再循環排気と呼ぶ)を含む。それにより、シリンダ1内において空気および燃料からなる混合気が形成される。図3(c)に示す行程は、図2(b)に示す行程と同様に、吸気行程と呼ぶ。その後、ピストン2が略BDCまで下降し、吸気弁6は吸気口を閉塞する。
次に、図3(d)に示すように、吸気口および排気口が閉塞された状態で、ピストン2が上昇し、シリンダ1内の混合気が圧縮される。図3(d)に示す行程は、図2(c)に示す行程と同様に、圧縮行程と呼ぶ。
次に、図3(e)に示すように、ピストン2がTDC近傍まで上昇し、シリンダ1内の混合気が十分に圧縮されたときに、混合気に自己着火が起こる。このとき、自己着火は燃焼室3内の複数の箇所においてほぼ同時に起こる。それにより、燃焼室3内の混合気は瞬時に燃焼する。その燃焼のエネルギーによりピストン2が下方向へ駆動される。図3(e)に示す行程は、図2(d)に示す行程と同様に、燃焼行程と呼ぶ。
特に、本例では、図3(b)の密閉期間が設けられるので、燃焼後の高温の状態である既燃ガスがシリンダ1内に残留する。それにより、シリンダ1内の混合気の温度が火花点火燃焼の場合と比べて高温になる。さらに、密閉期間において、シリンダ1内の燃料は反応性の高い状態に改質されている。これらの結果、図3(e)の燃焼行程において容易に自己着火が起こる。
ピストン2が略BDCまで下降した後、図3(a)の排気行程に移行し、図3(a)の排気行程から図3(e)の燃焼行程を繰り返す。
このように、HCCI燃焼では、上記の火花点火燃焼とは異なり、図3(a)の排気行程と図3(c)の吸気行程との間に、吸気口および排気口が共に閉塞される図3(b)の密閉期間が設けられる。
火花点火燃焼においては、図2(b)の吸気行程において、吸気ポート4からシリンダ1内に空気が吸入されるとともに、インジェクタ9によりシリンダ1内に燃料が噴射され、空気および燃料からなる混合気が形成される。それに対し、HCCI燃焼においては、図3(b)の密閉期間でインジェクタ9によりシリンダ1内に燃料が噴射された後、図3(c)の吸気行程で空気および再循環排気を含む吸気がシリンダ1内に吸入される。それにより、シリンダ1内においては、空気および燃料からなる混合気と、再循環排気と、既燃ガスとが混在する状態となる。
(2−3)火花点火燃焼およびHCCI燃焼時の弁リフト
図4は、図2の火花点火燃焼および図3のHCCI燃焼の各行程における吸気弁6および排気弁7の弁リフト量を示した図である。図4(a)は、HCCI燃焼における弁リフト量の最大値と火花点火燃焼における弁リフト量の最大値とが等しくなる場合を示し、図4(b)は、HCCI燃焼における弁リフト量の最大値と火花点火燃焼における弁リフト量の最大値とが異なる場合を示す。
図4において、縦軸は弁リフト量を示し、横軸はクランク角度を示す。曲線a1は、火花点火燃焼における排気弁7の弁リフト量を示し、曲線a2は、火花点火燃焼における吸気弁6の弁リフト量を示す。曲線b1は、HCCI燃焼における排気弁7の弁リフト量を示し、曲線b2は、HCCI燃焼における吸気弁6の弁リフト量を示す。
また、図4において、火花点火燃焼における各行程の期間を実線の矢印で示し、HCCI燃焼における各行程の期間を点線の矢印で示す。
図4(a)に示すように、火花点火燃焼においては、排気行程と吸気行程との間に、吸気弁6および排気弁7のリフト量が共に0となる密閉期間がなく、排気弁7のリフト量が0になる前に、吸気弁6のリフト量が正の値になる。すなわち、TDC近傍において吸気弁6および排気弁7のリフト量が共に正の値となる。
HCCI燃焼においては、排気行程において排気弁7のリフト量が正の値となり、吸気行程において吸気弁6のリフト量が正の値となる。排気行程と吸気行程との間の密閉期間においては、吸気弁6および排気弁7のリフト量が0となる。
吸気行程後の圧縮行程においては、吸気弁6および排気弁7のリフト量が共に0となり、TDC近傍において、燃焼行程に移行する。
図4(b)に示す例では、HCCI燃焼における弁リフト量が火花点火燃焼における弁リフト量と比べて小さくなるように吸気弁6および排気弁7が駆動される。
この場合、エンジン100がHCCI燃焼を行う中低負荷運転時には、エンジン100が火花点火燃焼を行う高負荷運転時と比べて、シリンダ1内に吸入される吸気の量、およびシリンダ1から排出される排気の量が減少する。
エンジン100の負荷に応じて弁リフト量を切り替える装置としては、例えば、カムノーズの長さが異なる高負荷用および低負荷用の2種類のカムを負荷に応じて切り替えるカム切り替え機構、または電磁力により吸気弁6および排気弁7の開閉を制御する電磁駆動弁等が用いられる。
(2−4)ECUによる制御動作
次に、図1のECU50の制御動作について説明する。
図5は、ECU50の制御動作を示すフローチャートである。
まず、図5に示すように、ECU50が運転情報を取得する(ステップS1)。ここで、運転情報とは、エンジンシステム200の動作状態に関する情報であり、例えば、アクセル開度AO、エンジン回転数ER、油温OT、水温WT、噴射制御信号FI、スロットル開度TO、吸気弁6および排気弁7の開閉タイミング、ならびに排気再循環バルブ13bの開度等を含む。
次に、ECU50の運転領域判定部51は、ステップS1で取得されたアクセル開度AOが、指定範囲内であるか否かを判定する(ステップS2)。なお、ステップS2で用いられる指定範囲は、エンジン100が安定したHCCI燃焼を行うことができるように任意に決定することができる。
アクセル開度AOが指定範囲内の場合、ECU50のHCCI燃焼制御部53がHCCI燃焼処理を行う(ステップS3)。その後、ステップS1に戻る。
ステップS2において、アクセル開度AOが指定範囲外の場合、ECU50の火花点火燃焼制御部52が火花点火燃焼処理を行う(ステップS4)。この場合、通常の理論空燃比による火花点火燃焼の制御が行われる。その後、ステップS1に戻る。
以下、ステップS3におけるHCCI燃焼処理ついてさらに詳細に説明する。本実施の形態においては、エンジン100の回転数に応じて目標となる燃焼時期(以下、目標燃焼時期と呼ぶ)が予め定められており、燃焼時期計測器10によって検出される燃焼時期BPが目標燃焼時期と等しくなるように各部が制御される。目標燃焼時期は、記憶部55(図1参照)に記憶される。
まず、燃焼時期BPおよび目標燃焼時期ついて説明する。
上述したように、燃焼時期BPは燃焼時期計測器10によって検出される。例えば、燃焼時期BPは、シリンダ1内の熱発生率が最大となる時期(dQ/dθが最大となる時期)、または燃焼によるシリンダ1内の圧力の変化率が最大となる時期(dP/dθが最大となる時期)のいずれかとして検出することができる。なお、上記Qはシリンダ1内の発熱量を示し、Pはシリンダ1内の圧力を示し、θはクランク角度を示す。
また、燃焼質量割合が50%となる時期を燃焼時期BPとして用いてもよい。図6は、シリンダ1におけるクランク角度と熱発生率との関係、およびクランク角度と燃料質量割合との関係の一例を示したものである。燃焼質量割合が50%となる時期はdP/dθが最大となる時期に比べてやや遅角側の値となるが、図6に示すように、燃焼質量割合が50%となる時期とdQ/dθが最大となる時期とはほぼ同一である。したがって、燃焼質量割合が50%となる時期を燃焼時期BPとしてもよい。
また、エンジン100の1サイクルにおけるイオン電流を積算した場合に、その積算値の50%となる時期は燃焼質量割合が50%となる時期とほぼ同一であるので、このイオン電流の積算値の50%となる時期を燃焼時期BPとしてもよい。
本実施の形態においては、燃焼時期計測器10として、例えば、イオンプローブ等によってイオン電流を測定することができる装置を用いる。そして、測定されたイオン電流の積算値の50%の時期を燃焼時期BPとする。
ここで、本発明者らは、種々の実験等により、燃焼時期BPとNOX との関係、燃焼時期BPと燃焼によるシリンダ1の内の圧力の変化率との関係、および燃焼時期BPと燃焼安定性との関係を以下のように導き出した。
図7は、エンジン100がある一定の回転数で作動している場合の、燃焼時期BPとエンジン100から排出されるNOX との関係を示した図である。図7において、横軸は燃焼時期BPを示し、縦軸は排出されるNOX の量を示す。図7に示すように、エンジン100から排出されるNOX の量は、燃焼時期BPが圧縮上死点近傍である場合には多く、圧縮上死点から遅角側になるにつれて減少している。つまり、燃焼時期BPを遅角側に設定することにより、エンジン100から排出されるNOX を低減できることが分かる。
図8は、エンジン100がある一定の回転数で作動している場合の、燃焼時期BPとシリンダ1内の圧力の変化率の最大値との関係を示した図である。図8において、横軸は燃焼時期BPを示し、縦軸はシリンダ1内の圧力の変化率の最大値を示す。図8に示すように、シリンダ1内の圧力の変化率の最大値は、燃焼時期BPが圧縮上死点近傍である場合には大きく、圧縮上死点から遅角側になるにつれて低下している。ここで、燃焼に起因する打音およびノッキングを減少させるためには、シリンダ1内の圧力の変化率の最大値を低下させる必要がある。つまり、燃焼時期BPを遅角側に設定することにより、燃焼に起因する打音およびノッキングを減少させることができる。
図9は、エンジン100がある一定の回転数で作動している場合の、燃焼時期BPと燃焼安定性との関係を示した図である。図9において横軸は燃焼時期BPを示し、縦軸は燃焼安定性を示す。図9に示すように、燃焼安定性は、燃焼時期BPが圧縮上死点近傍である場合には悪く、圧縮上死点から遅角側になるにつれて良くなるが、ある時期を越えて遅角側になると再び悪化する。なお、燃焼安定性は、例えば、図示熱効率の変動率またはシリンダ1内の圧力のピーク値の変動率等に基づいて算出することができるが、これに限定されず、他の要素に基づいて燃焼安定性を算出してもよい。
本実施の形態においては、図7〜図9に示した関係を考慮して、燃焼安定性が良好でかつNOX 、打音およびノッキングを減少させることができるように最適な目標燃焼時期を決定する。
また、本実施の形態においては、圧縮上死点から目標燃焼時期までの時間が一定となるように、エンジン100の回転数に応じて目標燃焼時期を変化させる。この場合、目標燃焼時期は、図10に示すようにエンジン100の回転数の増加に伴い遅角側に変化する。
つまり、本実施の形態においては、まず、エンジン100の任意の回転数において基本となる目標燃焼時期を決定し、圧縮上死点から目標燃焼時期までの時間を算出する。そして、算出された圧縮上死点から目標燃焼時期までの時間が維持されるように、エンジン100の回転数に応じた目標燃焼時期を決定する。ここで、HCCI燃焼における燃焼安定性は、シリンダ1内の温度および圧力とそれらの保持時間とに大きく影響を受ける。したがって、本実施の形態のように、圧縮上死点から目標燃焼時期までの時間を常に一定に制御することにより、常に良好な燃焼安定性を得ることが可能になる。なお、基本となる目標燃焼時期は、例えば、エンジン100が最も高頻度で使用される回転数において求めることが好ましい。
次に、HCCI燃焼処理時のECU50の制御動作について説明する。
図11は、図5のステップS3に示されるHCCI燃焼処理の詳細を示すフローチャートである。
図11に示すように、ECU50のHCCI燃焼制御部53(図1参照)は、図5のステップS1で取得したエンジン回転数ER(運転情報)に応じた目標燃焼時期を記憶部55から読込む(ステップS11)。
次に、HCCI燃焼制御部53は、図5のステップS1で取得した運転情報に基づいて燃料噴射量および空気量を決定する(ステップS12)。なお、空気量は、混合気の空燃比が理論空燃比(約14.5:1)となるように決定される。
次に、HCCI燃焼制御部53は、ステップS11で読込んだ目標燃焼時期およびステップS12で決定した空気量に基づいて既燃ガス量および再循環排気量を決定する(ステップS13)。なお、この処理においては、既燃ガス量および再循環排気量を調整することにより、シリンダ1内の温度を調整することができる。詳細は後述する。
次に、HCCI燃焼制御部53は、1サイクル前の処理において補正係数が算出されたか否かを判別する(ステップS14)。なお、補正係数は、後述するステップS20の処理において算出される。
補正係数が算出されている場合、HCCI燃焼制御部53は、ステップS13で決定された既燃ガス量および再循環排気量に補正係数を乗算する(ステップS15)。
次に、HCCI燃焼制御部53は、ステップS12で決定された燃料噴射量および空気量ならびにステップS15で算出された既燃ガス量および再循環排気量に基づいて、吸気弁6の開閉タイミング、排気弁7の開閉タイミング、排気再循環バルブ13bの開度、およびスロットルバルブ14の開度を決定する(ステップS16)。なお、ステップS14において補正係数が算出されていない場合は、ステップS12で決定された燃料噴射量および空気量ならびにステップS13で決定された既燃ガス量および再循環排気量に基づいて、吸気弁6の開閉タイミング、排気弁7の開閉タイミング、排気再循環バルブ13bの開度、およびスロットルバルブ14の開度を決定する。
次に、HCCI燃焼制御部53は、ステップS16で決定された吸気弁6の開閉タイミング、排気弁7の開閉タイミング、排気再循環バルブ13bの開度、およびスロットルバルブ14の開度に基づいて混合気を自己着火燃焼させるとともに、燃焼時期計測器10から実際の燃焼時期BPを取得する(ステップS17)。
次に、HCCI燃焼制御部53は、ステップS11で読込んだ目標燃焼時期とステップS16で取得した実際の燃焼時期BPとの誤差を算出する(ステップS18)。次に、HCCI燃焼制御部53は、ステップS18で算出された誤差の絶対値が予め設定されたしきい値以上か否かを判別する(ステップS19)。
誤差の絶対値がしきい値以下の場合、HCCI燃焼制御部53は、再循環排気量および既燃ガス量に対する補正係数を算出する(ステップS20)。その後、HCCI燃焼制御部53は図5のステップS1に戻る。
ステップS19において誤差の絶対値がしきい値より大きい場合、火花点火燃焼制御部52(図1参照)が火花点火燃焼処理を行う(ステップS21)。その後、図5のステップS1に戻る。これらステップS19およびステップS21の処理を設けることにより、実際の燃焼時期BPが目標燃焼時期と大きく異なっている場合には、HCCI燃焼を行わずに火花点火燃焼を行うことができる。それにより、混合気の早期着火および失火等の不整燃焼を防止することができる。
なお、ステップS20において算出される再循環排気量および既燃ガス量に対する補正係数は、目標燃焼時期と実際の燃焼時期BPとの誤差が小さくなるように算出される。具体的には、実燃焼時期が目標燃焼時期よりも遅い場合には、再循環排気に対する既燃ガスの割合を大きくし、実燃焼時期が目標燃焼時期よりも早い場合には、既燃ガスに対する再循環排気の割合を大きくするように補正係数を算出する。
ここで、燃焼時期は、シリンダ1内の温度に依存し、シリンダ1内の温度が高くなると燃焼時期が早くなる。
シリンダ1内に残留する既燃ガスは、燃焼直後の高温の状態にある。一方、吸気ポート4からシリンダ1内に吸入される吸気は、吸気管11を通して吸気ポート4からシリンダ1内に吸入される空気、および排気再循環装置13を通してシリンダ1内に吸入される再循環排気を含む。排気は、燃焼行程から所定の時間が経過したものであるので、既燃ガスよりも低温となる。
本実施の形態においては、空気量、既燃ガス量および再循環排気量との割合を調整することにより、シリンダ1内の温度を調整することが可能となる。空気量は、混合気が理論空燃比になるように決定され、決定された空気量に対して既燃ガス量および再循環排気量がそれぞれ最適となるように吸気弁6、排気弁7、排気再循環バルブ13bおよびスロットルバルブ14を制御することにより、シリンダ1内の温度を調整することができる。その結果、シリンダ1内における燃焼時期を調整することができる。
なお、シリンダ1内に残留する既燃ガスの温度を検出するための温度センサ、およびシリンダ1内に導入される吸気の温度を検出するための温度センサを所定の位置に設けてもよい。この場合、ECU50は、温度センサにより検出された温度に基づいて既燃ガス量と吸気量との割合を決定することができる。それにより、シリンダ1内の温度をより正確に調整することができる。
また、吸気管11からシリンダ1内に吸入される空気の温度を検出するための温度センサと、排気再循環装置13によりシリンダ1内に吸入される排気の温度を検出するための温度センサと別々に設けてもよい。この場合、シリンダ1内の温度をさらに正確に調整することができる。
(2−5)理論空燃比の設定
上記のように、本実施の形態では、HCCI燃焼においてシリンダ1内の空燃比が理論空燃比となるようにステップS12でシリンダ1内の空気量を決定している。この理由について以下に説明する。
まず、HCCI燃焼を行う場合の熱効率と密閉期間におけるシリンダ1内の酸素濃度との関係について説明する。
図12は、密閉期間における酸素濃度と熱発生量との関係を示す図である。図12において、横軸はシリンダ1内の既燃ガス中の酸素濃度を示し、縦軸は密閉期間中の熱発生量を示す。
密閉期間においては、図3(b)に示したように、密閉されたシリンダ1内において燃料の予反応が起こる。これにより、シリンダ1内には反応熱が発生する。また、シリンダ1内の酸素濃度が上昇することにより、燃料の予反応が進みやすくなる。したがって、図12に示すように、酸素濃度の上昇に伴い、燃料の予反応による熱発生量は増加する。
図13は、クランク角度とシリンダ1内の圧力との関係を示す図である。
密閉期間、圧縮行程および燃焼行程においては、図3(b)、(d)、(e)および図4に示したように、吸気弁6および排気弁7のリフト量が0となり、シリンダ1の吸気ポート4および排気ポート5が閉塞される。シリンダ1内の気体はピストン2により圧縮されるので、図13に示すように、密閉期間、圧縮行程および燃焼行程において、シリンダ1内の圧力は高くなる。
また、図3に示すように、図3(a)の排気行程から図3(b)の密閉期間へ移行する際のピストン2の位置は、図3(c)の吸気行程から図3(d)の圧縮行程へ移行する際のピストン2の位置よりもTDCに近い状態にある。これにより、密閉期間におけるシリンダ1内の圧力は、圧縮行程および燃焼行程(以下、圧縮燃焼行程と呼ぶ)におけるシリンダ1内の圧力よりも小さくなる。すなわち、密閉期間におけるシリンダ1内の実圧縮比は、圧縮燃焼行程におけるシリンダ1内の実圧縮比よりも小さくなる。ここで、実圧縮比とは、密閉期間または圧縮行程へ移行するときにシリンダ1内でピストン2の上方に形成される空間の容積と、ピストン2がTDCに位置するときにシリンダ1内でピストン2の上方に形成される空間の容積(燃焼室3の容積)との比である。
実圧縮比が小さくなることにより熱効率は低下するので、密閉行程の熱効率は、圧縮燃焼行程の熱効率より低くなる。
図14は、密閉期間中の熱発生量とHCCI燃焼における熱効率との関係を示す図である。
シリンダ1内では、密閉期間における燃料の予反応、および燃焼行程における混合気の燃焼により、熱が発生する。この熱により、ピストン2が駆動される。すなわち、シリンダ1内に噴射される燃料が、予反応および燃焼反応により熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーが、ピストン2に対して仕事を行う。このとき、シリンダ1内の熱効率が高いほど、ピストン2に対してより大きな仕事を行うことができる。すなわち、エンジン100の熱効率が高いほど、ピストン2は、より大きい駆動力を得ることができる。
上記のように、圧縮燃焼行程の熱効率は密閉行程の熱効率より高いため、ピストン2は、圧縮燃焼行程において、熱エネルギーからより効率良く駆動力を得ることができる。
また、燃料から得られる熱エネルギーは一定であるため、予反応による熱発生量と燃焼による熱発生量との和は一定となる。
したがって、図14に示すように、密閉期間中の熱発生量が増加することにより、密閉期間および圧縮燃焼行程を含むHCCI燃焼全体における熱効率は低下する。
図12に示したように、密閉期間中の熱発生量は、酸素濃度の上昇に伴い増加する。したがって、HCCI燃焼における熱効率は、密閉期間中の酸素濃度の上昇に伴い低下する。
本実施の形態においては、圧縮燃焼行程におけるシリンダ1内の空燃比は理論空燃比となるように設定される。この場合、空気中の酸素は燃焼によりほぼ全て消費される。それにより、密閉期間においてシリンダ1内に残留する既燃ガス中の酸素濃度はほぼ0となる。したがって、HCCI燃焼における熱効率の低下を防止することができる。
(2−6)本実施の形態の効果
上記のように、本実施の形態に係るエンジンシステム200においては、目標燃焼時期はエンジン100の回転数の増加に伴い遅角するように設定され、設定された目標燃焼時期で自己着火燃焼が行われるようにエンジンシステム200の各部が制御される。この場合、エンジン100が高回転で作動しても混合気の燃焼期間が短くなることが防止される。それにより、エンジン100が高回転で作動している場合においても、打音およびノッキング等が防止された安定したHCCI燃焼が可能になるとともに、エンジン100の破損を防止することができる。
また、圧縮上死点から目標燃焼時期までの時間が常に一定になるように目標燃焼時期が設定される。それにより、より広範囲の運転領域において良好な燃焼安定性を得ることが可能になる。
なお、上記実施の形態において、より広範囲の運転領域でHCCI燃焼を行いたい場合には、図5のステップS2における指定範囲を大きくすればよい。
また、HCCI燃焼において、目標燃焼時期と実際の燃焼時期BPとの誤差が小さくなるように、ECU50が吸気弁駆動装置6a、排気弁駆動装置7a、排気再循環バルブ13bおよびスロットルバルブ14を制御する。それにより、既燃ガス量と再循環排気量との割合が調整され、シリンダ1内の温度が調整される。したがって、HCCI燃焼における最適な燃焼時期を得ることができる。その結果、熱効率が向上されるとともに、安定したHCCI燃焼を行うことができる。
また、HCCI燃焼において、圧縮燃焼行程におけるシリンダ1内の空燃比が理論空燃比となるように設定される。この場合、混合気中の酸素は燃焼によりほぼ全て消費される。それにより、密閉期間においてシリンダ1内に残留する既燃ガス中の酸素濃度がほぼ0となる。したがって、HCCI燃焼における熱効率の低下を防止することができる。
また、理論空燃比でHCCI燃焼を行うことにより、シリンダ1から排出される排気中の酸素濃度がほぼ0となる。したがって、三元触媒を用いることにより、排気中のNOXを低減することができる。その結果、HCCI燃焼による運転領域を拡大することが可能となる。
また、本実施の形態においては、空気と再循環排気とがシリンダ1内に同時に吸入される。通常、空気量は吸気弁駆動装置6aおよびスロットルバルブ14により調整されるが、本実施の形態の場合、さらに、排気再循環バルブ13bにより再循環排気の流量を調整することによって、再循環排気量に対する空気量の割合をより正確に調整することができる。
(車両全体の構成)
図15は、上記実施の形態に係るエンジンシステム200を備えた自動二輪車の模式図である。
この自動二輪車600においては、本体フレーム601の前端にヘッドパイプ602が設けられる。ヘッドパイプ602にフロントフォーク603が左右方向に揺動可能に設けられる。フロントフォーク603の下端に前輪604が回転可能に支持される。ヘッドパイプ602の上端にはハンドル605が取り付けられる。
本体フレーム601の中央部には、図1のエンジンシステム200が設けられる。図15には、エンジンシステム200に含まれるエンジン100、吸気管11、排気管12および排気再循環装置13が示される。エンジンシステム200の上部には燃料タンク606が設けられ、燃料タンク606の後方にはシート607が設けられる。
エンジンシステム200の後方に延びるように、本体フレーム601にリアアーム608が接続される。リアアーム608は、後輪609および後輪ドリブンスプロケット610を回転可能に保持する。また、エンジンシステム200の排気管12には三元触媒616が介挿され、排気管12の後端にはマフラー612が取り付けられる。
エンジンシステム200のエンジン100にドライブシャフト613が取り付けられ、ドライブシャフト613には後輪ドライブスプロケット614が取り付けられる。後輪ドライブスプロケット614は、チェーン615を介して後輪609の後輪ドリブンスプロケット610に連結される。
この自動二輪車600は、上記第実施の形態のエンジンシステム200を備えるので、エンジン100が高回転で作動している場合においても、打音およびノッキング等が防止された安定した自己着火燃焼が可能になるとともに、エンジン100の破損を防止することができる。
また、圧縮上死点から目標燃焼時期までの時間が常に一定になるように目標燃焼時期が設定される。それにより、常に良好な燃焼安定性を得ることが可能になる。
また、HCCI燃焼においてシリンダ1内の温度が調整され、最適な燃焼時期を得ることができる。その結果、熱効率が向上されるとともに、安定したHCCI燃焼を行うことができる。
また、HCCI燃焼による運転において、圧縮燃焼行程におけるシリンダ1内の空燃比が理論空燃比となるように設定される。この場合、混合気中の酸素は燃焼によりほぼ全て消費される。それにより、密閉期間においてシリンダ1内に残留する既燃ガス中の酸素濃度がほぼ0となる。したがって、HCCI燃焼における熱効率の低下を防止することができる。
また、理論空燃比でHCCI燃焼を行うことにより、シリンダ1から排出される排気中の酸素濃度がほぼ0となる。したがって、三元触媒を用いることにより、排気中のNOXを低減することができる。その結果、HCCI燃焼による運転領域を拡大することが可能となる。
(請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応)
上記実施の形態においては、自動二輪車600が機械装置に相当し、エンジン回転数センサ31が回転数検出手段に相当し、ECU50が制御手段に相当し、燃焼時期計測器10が燃焼時期計測手段に相当し、記憶部55が記憶手段に相当し、点火プラグ8が点火手段に相当する。
また、吸気管11が吸気通路に相当し、配管13aが再循環通路に相当し、吸気弁6、吸気弁駆動装置6a、排気再循環バルブ13bおよびスロットルバルブ14が吸気量調整手段に相当し、排気弁7および排気弁駆動装置7aが排気量調整手段に相当し、運転情報が運転状態に関する情報に相当し、エンジン回転数センサ31、アクセル開度センサ32、油温センサ33、水温センサ34およびスロットル開度センサが運転情報検出手段に相当し、スロットルバルブ14が第1の吸気量調整手段に相当し、排気再循環バルブ13bが第2の吸気量調整手段に相当し、吸気弁6および吸気弁駆動装置6aが第3の吸気量調整手段に相当する。
また、後輪609が駆動輪に相当し、後輪ドリブンスプロケット610、ドライブシャフト613、後輪ドライブスプロケット614およびチェーン615が伝達機構に相当する。
(変形例)
なお、上記実施の形態においては、運転情報としてアクセル開度AO、エンジン回転数ER、油温OT、水温WT、噴射制御信号FI、燃料量、スロットル開度TO、吸気弁6および排気弁7の開閉タイミング、ならびに排気再循環バルブ13bの開度等の情報のいずれか1つまたは複数を取得してもよく、あるいは、エンジン温度または燃料の種類等の他の情報を運転情報として取得してもよい。
また、上記実施の形態では、エンジン100の負荷を決定するためのパラメータとしてアクセル開度AOを用いるが、これに限定されず、エンジン回転数ERまたはエンジン温度等の他の条件を用いてもよい。また、これらの条件の複数を用いてエンジン100の負荷を決定してもよい。
また、図5のステップS2においては、アクセル開度AO(要求トルク)に基づいて、HCCI燃焼を行うか、あるいは火花点火燃焼を行うかを決定しているが、実際に測定されたエンジン100の負荷(トルク)に基づいて、HCCI燃焼処理を行うか、あるいは火花点火燃焼処理を行うかを決定してもよい。
また、図5のステップS2において、さらにエンジン100の回転数およびエンジン100の暖気状態等に基づいて、HCCI燃焼処理を行うか、あるいは火花点火燃焼処理を行うかを決定してもよい。
また、排気再循環装置13には、配管13a内の排気の温度を調整するための冷却装置が設けられてもよい。この場合、吸気に含まれる排気の温度を調整することができる。それにより、シリンダ1内の温度をより正確に調整することができる。
また、上記実施の形態では、HCCI燃焼の燃焼行程において、点火プラグ8による火花点火は行われないが、点火プラグ8による火花点火を行ってもよい。これにより、燃焼行程において燃料の着火がより確実に行われる。
また、上記実施の形態では、シリンダ1内に吸入される空気の量は、吸気弁駆動装置6aおよびスロットルバルブ14により調整されるが、これに限定されず、過給機等の他の装置を用いて空気の量を調整してもよい。
また、上記実施の形態では、図2に示されるECU50,50aの各機能部がプログラムにより実現されるが、各機能部の一部または全てを電子回路等のハードウェアにより実現してもよい。
また、上記実施の形態では、シリンダ1内に直接燃料が噴射される構造のシリンダ内燃料直噴型エンジンが用いられるが、これに限定されず、吸気ポート4内に燃料が噴射される構造を有するエンジンを用いてもよい。この場合、排気行程と吸気行程との間の密閉期間に燃料を噴射しないので、燃料の予反応は行われない。
また、図3(d)に示されるHCCI燃焼の圧縮行程において、インジェクタ9により2回目の燃料の噴射が行われてもよい。
また、図15の例では、上記実施の形態のエンジンシステム200を自動二輪車に適用した場合について説明したが、エンジンシステム200を四輪自動車等の他の車両、船舶または発電機等に適用してもよい。
本発明は、二輪自動車、四輪自動車等のエンジンを備える種々の車両、船舶および発電機等に利用することができる。
本発明の一実施の形態に係るエンジンシステムを示す模式図である。 エンジンの火花点火燃焼の動作を説明するための図である。 エンジンのHCCI燃焼の動作を説明するための図である。 図2の火花点火燃焼および図3のHCCI燃焼の各行程における吸気弁および排気弁の弁リフト量を示した図である。 ECUの制御動作を示すフローチャートである。 シリンダにおけるクランク角度と熱発生率との関係の一例を示す図である。 エンジンがある一定の回転数で作動している場合の、燃焼時期とエンジンから排出されるNOX との関係を示した図である。 エンジンがある一定の回転数で作動している場合の、燃焼時期とシリンダ内の圧力の変化率の最大値との関係を示した図である。 エンジンがある一定の回転数で作動している場合の、燃焼時期と燃焼安定性との関係を示した図である。 エンジン回転数と目標燃焼時期との関係を示した図である。 図5のステップS3に示されるHCCI燃焼処理の詳細を示すフローチャートである。 密閉期間における酸素濃度と熱発生量との関係を示す図である。 クランク角度とシリンダ内の圧力との関係を示す図である。 密閉期間中の熱発生量とHCCI燃焼における熱効率との関係を示す図である。 本実施の形態に係るエンジンシステムを備えた自動二輪車の模式図である。
符号の説明
1 シリンダ
2 吸気ポート
5 排気ポート
6 吸気弁
6a 吸気弁駆動装置
7 排気弁
7a 排気弁駆動装置
8 点火プラグ
9 インジェクター
10 燃焼時期計測器
11 吸気管
12 排気管
13 排気再循環装置
13b 排気再循環バルブ
14 スロットルバルブ
31 エンジン回転数センサ
32 アクセル開度センサ
33 油温センサ
34 水温センサ
50 ECU
100 エンジン
200 エンジンシステム
609 後輪
610 後輪ドリブンスプロケット
613 ドライブシャフト
614 後輪ドライブスプロケット
615 チェーン
616 三元触媒

Claims (10)

  1. 機械装置を駆動するエンジンシステムであって、
    シリンダを有し、前記シリンダ内の混合気が自己着火燃焼を行うエンジンと、
    前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、
    前記エンジンが自己着火燃焼を行っているときに前記混合気の自己着火の時期を制御する制御手段とを備え、
    前記制御手段は、前記回転数検出手段により検出される前記エンジンの回転数の増加に伴い前記混合気の自己着火の時期が遅角するように前記混合気の自己着火の時期を制御することを特徴とするエンジンシステム。
  2. 前記制御手段は、圧縮上死点から自己着火までの時間が常に等しくなるように前記混合気の自己着火の時期を制御することを特徴とする請求項1記載のエンジンシステム。
  3. 前記混合気の燃焼時期を計測する燃焼時期計測手段と、
    前記エンジンの回転数に応じた前記混合気の最適な燃焼時期を記憶する記憶手段とをさらに備え、
    前記制御手段は、前記燃焼時期計測手段により計測された燃焼時期と前記記憶手段に記憶された前記最適な燃焼時期との誤差が小さくなるように前記混合気の自己着火の時期を制御することを特徴とする請求項1または2記載のエンジンシステム。
  4. 前記混合気を火花点火燃焼させる点火手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記誤差の絶対値が所定の値より大きい場合に前記点火手段により前記混合気を火花点火燃焼させることを特徴とする請求項3記載のエンジンシステム。
  5. 前記最適な燃焼時期は、前記シリンダから排出される排気に含まれる窒素酸化物、前記シリンダ内の圧力の変化率の最大値および前記混合気の燃焼安定性に基づいて決定されることを特徴とする請求項3または4記載のエンジンシステム。
  6. 空気を吸気として前記シリンダに導く吸気通路と、
    前記シリンダから排出される排気の少なくとも一部を吸気として前記シリンダ内へ導く再循環通路と、
    前記吸気通路を通して前記シリンダ内へ導かれる空気の量および前記再循環通路を通して前記シリンダ内へ導かれる排気の量の少なくとも一方を調整する吸気量調整手段と、
    前記シリンダから排出される排気の量を調整する排気量調整手段と、
    前記機械装置の運転状態に関する情報を検出する運転情報検出手段とをさらに備え、
    前記制御手段は、前記運転情報検出手段により検出された前記運転状態に関する情報に基づいて、前記吸気量調整手段および前記排気量調整手段の少なくとも一方を制御することにより、自己着火燃焼前に、前記吸気通路を通して前記シリンダ内へ導かれる空気の量、前記再循環通路を通して前記シリンダ内へ導かれる排気の量および前記シリンダ内に残存する既燃ガスの量を制御するとともに、混合気の空燃比を理論空燃比に設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエンジンシステム。
  7. 前記吸気量調整手段は、前記吸気通路内の流量を調整する第1の吸気量調整手段と、前記再循環通路内の流量を調整する第2の吸気量調整手段とを含み、
    前記制御手段は、前記運転情報検出手段により検出された前記運転状態に関する情報に基づいて、前記第1の吸気量調整手段、前記第2の吸気量調整手段および前記排気量調整手段の少なくとも1つを制御することにより、自己着火燃焼前に、前記吸気通路を通して前記シリンダ内へ導かれる空気の量、前記再循環通路を通して前記シリンダ内へ導かれる排気の量および前記シリンダ内に残存する既燃ガスの量を制御することを特徴とする請求項6記載のエンジンシステム。
  8. 前記吸気量調整手段は、前記吸気通路を通して前記シリンダ内へ導かれる空気と前記再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気とを含む吸気の量を調整する第3の吸気量調整手段を含み、
    前記制御手段は、前記運転情報検出手段により検出された前記運転状態に関する情報に基づいて、前記第3の吸気量調整手段および前記排気量調整手段の少なくとも一方を制御することにより、自己着火燃焼前に、前記吸気通路を通して前記シリンダ内へ導かれる空気の量、前記再循環通路を通して前記シリンダ内へ導かれる排気の量および前記シリンダ内に残存する既燃ガスの量を制御することを特徴とする請求項6記載のエンジンシステム。
  9. 前記吸気量調整手段は、前記吸気通路内の流量を調整する第1の吸気量調整手段、前記再循環通路内の流量を調整する第2の吸気量調整手段、および前記吸気通路を通して前記シリンダ内へ導かれる空気と前記再循環通路を通してシリンダ内へ導かれる排気とを含む吸気の量を調整する第3の吸気量調整手段を含み、
    前記制御手段は、前記運転情報検出手段により検出された前記運転状態に関する情報に基づいて、前記第1の吸気量調整手段、前記第2の吸気量調整手段、前記第3の吸気量調整手段および前記排気量調整手段の少なくとも1つを制御することにより、自己着火燃焼前に、前記吸気通路を通して前記シリンダ内へ導かれる空気の量、前記再循環通路を通して前記シリンダ内へ導かれる排気の量および前記シリンダ内に残存する既燃ガスの量を制御することを特徴とする請求項6記載のエンジンシステム。
  10. 駆動輪と、
    請求項1〜9のいずれかに記載のエンジンシステムと、
    前記エンジンシステムにより発生される動力を前記駆動輪に伝達する伝達機構とを備えたことを特徴とする車両。
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