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JP2007173454A - 固体電解コンデンサ - Google Patents

固体電解コンデンサ Download PDF

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JP2007173454A
JP2007173454A JP2005367915A JP2005367915A JP2007173454A JP 2007173454 A JP2007173454 A JP 2007173454A JP 2005367915 A JP2005367915 A JP 2005367915A JP 2005367915 A JP2005367915 A JP 2005367915A JP 2007173454 A JP2007173454 A JP 2007173454A
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Masako Oya
昌子 大家
Setsu Mukono
節 向野
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NEC Tokin Corp
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Abstract

【課題】 高周波領域でのインピーダンスが小さく、漏れ電流特性が良く、かつ高耐電圧化が可能な固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】 陽極側電極としての弁作用金属体2と、前記弁作用金属体2の表面を酸化して得た誘電体酸化皮膜1と、前記誘電体酸化皮膜に電圧印加により酸素を供与する固体層7と導電性高分子層3を含む電解質層とを含む。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電解質として導電性高分子を用いた固体電解コンデンサであって、特に、漏れ電流特性および耐電圧特性に優れた固体電解コンデンサに関する。
近年、電子機器の小型化、高速化、デジタル化および多機能化に伴って、コンデンサの分野においても小型大容量で、高周波領域でのインピーダンスが低いコンデンサが強く要求されている。
従来、100kHz〜数十MHzの高周波領域で使用されるコンデンサには、マイカコンデンサ、積層セラミックコンデンサがあるが、これらのコンデンサでは形状が大きくなり大容量化が難しい。一方、大容量のコンデンサとしてはアルミニウム電解コンデンサやタンタル固体電解コンデンサなどの電解コンデンサが存在する。しかし、これらの電解コンデンサは用いられている電解質、即ち、アルミニウム電解コンデンサでは電解液、タンタル電解コンデンサでは二酸化マンガンの電気伝導度が低いことから、高周波領域でのインピーダンスが十分に低いコンデンサを得ることは困難である。
この課題を解決するために、電解質として電気伝導度の高いポリピロールやポリチオフェンなどの導電性高分子を用いたアルミニウムおよびタンタル固体電解コンデンサが開示されている(例えば特許文献1)。この導電性高分子を用いた固体電解コンデンサは、固体電解質の電気伝導度が高いため、高周波領域でのインピーダンスが十分に低いという大きな特徴を持ち、その有用性を更に高めるため、特に漏れ電流と高耐電圧特性を良くするために様々な改良が加えられている。
すなわち、誘電体酸化皮膜と導電性高分子層との間に、シランカップリング剤、チタンカップリング剤あるいはアルミニウムカップリング剤などのカップリング層を介在せしめた固体電解コンデンサが開示されている(例えば、特許文献2、特許文献3)。
また、特許文献4には、特に85℃程度の高温化での漏れ電流を減少させることを目的として、誘電体酸化皮膜と導電性高分子層との間にカップリング層として電子供与性有機化合物層を設けた固体電解コンデンサが開示されている。また、特許文献5には、作動特性を安定に確保するために電解質層が導電性高分子とともに水溶性高分子および電解質を含む構成の固体電解コンデンサが開示されている。
しかしながら、従来技術には以下に掲げる問題があった。第一に、特許文献2や特許文献3に開示されている固体電解コンデンサでは、高周波領域でのインピーダンス特性を低く保ちつつ漏れ電流を低減し、かつ高耐電圧化をするのが困難であった。
一般に漏れ電流が高く、また耐電圧が低下するのは、誘電体酸化皮膜上の欠陥部が原因だと言われている。そしてこの欠陥部は、誘電体酸化皮膜内部の結晶化などで発生する内部的要因とハンドリングや外装樹脂形成時の圧力によるストレス、熱ストレスなどの外的要因が挙げられる。
このような皮膜上に欠陥部がある固体電解コンデンサに電圧を印加すると、欠陥部に集中して流れる電流により発生したジュール熱や電位作用により欠陥部に接している導電性高分子層の絶縁化がおこる。欠陥部が小さい場合は、この作用で欠陥部は修復され、インピーダンスを増大させることなく漏れ電流は改善される。しかし、欠陥部が大きい、または広範囲に及ぶ場合は、導電性高分子層の絶縁化が進行するため、漏れ電流は改善されるがインピーダンスが高くなる、或いは、絶縁化が追いつかなくなり漏れ電流が増加するという問題が生じる。
第二に、特許文献2、3に開示されている固体電解コンデンサの場合、漏れ電流特性の向上および高耐電圧化が十分ではないという問題点があった。漏れ電流が高くなり耐電圧が低下するもう1つの原因としては、誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層を形成することで整流作用を生じさせている電子障壁レベルが低下するため電流が流れやすくなることが推測されている。そのため、特許文献4に記載のように誘電体酸化皮膜と導電性高分子層との間にカップリング層を設けた構造にすることで特性の改善を行うことができる。
実際に、カップリング層を設けた構造にすることで誘電体酸化皮膜上に導電性高分子層が直接接触する面積が減少し電子障壁レベルを改善させることができる。しかし、カップリング層ではサブミクロンオーダーの凹凸を有する多孔質内部全体に均一に膜を形成することは困難であり、漏れ電流を元のレベルまで戻すことはできない。また、それ自体に修復機能があるわけではないので、欠陥部が多い場合には従来と同様の問題が発生しあまり顕著な効果があるとはいえない。
これらの問題点を解決する方法として、特許文献5には作動特性を安定に確保するために電解質層が導電性高分子とともに水溶性高分子および電解質を含む構成の固体電解コンデンサが提案されている。
しかしながら、このような構成の固体電解コンデンサでは、以下のような問題が生じ顕著な効果があるとは言えない。例えば、電解質層内へ入れる電解質としてリン酸を使用した場合、弁作用金属がアルミニウムでは修復作用時に水溶性高分子によりイオンとしてリン酸が電離すると欠陥部を修復すると同時にアルミニウムの部分を腐食してしまい特性が低下する可能性が高い。ここで、添加する電解質として酸性の弱い、例えばホウ酸などを使用したとしても電離してくるイオンの濃度を調整することはできないので、部分的に濃度の濃い部分があるとそこでアルミニウムを侵食してしまい特性が低下してしまう。また、実際に電解質層を形成する時に水溶性の高分子と電解質を導電性高分子およびドーパントと一緒に添加しているため、サブミクロンオーダーの凹凸を有する多孔質内部全体に水溶性高分子および電解質を均一に分散させて形成することは困難であり、修復効果も少ない。さらに、一緒に電解質を添加するので、その物資がドーパントの変わりに簡易的にドープしてしまうなどの問題が生じ、安定な特性および信頼性を得ることはかなり困難である。
特公平4ー56445号公報 特開平2−74021号公報 特開2001−326145号公報 特許第3068430号公報 特開2005−136336号公報
本発明は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、高周波領域でのインピーダンスが小さく、漏れ電流特性が良くかつ高耐電圧化が可能な固体電解コンデンサを提供することにある。
前記課題を解決するため本発明の固体電解コンデンサは、陽極側電極としての弁作用金属体と、前記弁作用金属体の表面を酸化して得た誘電体酸化皮膜と、前記誘電体酸化皮膜に電圧印加により酸素を供与する固体層と導電性高分子層を含む固体電解質とを有することを特徴とする。
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記固体層が、前記誘電体酸化皮膜上に形成されていてもよい。
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記固体層が、前記導電性高分子層に混合されていてもよい。
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記固体層が、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アセチル基、ニトロ基、およびその官能基誘導体を少なくとも1つを含んでいてもよく、前記固体層が、吸着水を保持することのできる水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホン酸基およびその官能基誘導体を少なくとも1つ含んでいてもよい。
本発明によれば、誘電体酸化皮膜と導電性高分子層の間に電圧を印加することにより酸化皮膜を成長させる能力を有する固体層を介在させる、もしくは酸化皮膜を成長させる事が可能な吸着水を保持する官能基を有する固体層を介在させることにより固体電解コンデンサを組み立てた後でも、誘電体酸化皮膜上の欠陥部を修復することが可能となり、インピーダンス特性を低下させること無く、漏れ電流を低減する事ができる。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の固体電解コンデンサの第一の実施の形態の内部構造を示す断面図である。本発明の第一の実施の形態の固体電解コンデンサは、陽極側電極としての弁作用金属体2と、この弁作用金属体2の表面を陽極酸化して得た誘電体酸化皮膜1と、誘電体酸化皮膜1上に電解質として酸素を供与できる官能基誘導体からなる固体層7と導電性高分子層3、その上の陰極層として導体層5、外部電極4および外装樹脂6から構成されている。
第一の実施の形態の固体電解コンデンサを製造する方法は、タンタルやニオブなどからなる弁作用金属粉末の焼結体を水溶液中で陽極酸化して、焼結体表面に誘電体酸化皮膜1を形成する。次いでスルホン酸基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、アセチル基、ニトロ基、およびその官能基誘導体のような酸素を供与することのできる酸素原子を少なくとも1つ含んでいる物質が溶け込んでいる溶液中に浸漬した後、乾燥して、誘電体酸化皮膜1の表面に固体層7を形成する。その後、ピロール層やチオフェン層からなる導電性高分子層3、グラファイトおよび銀ペーストからなる導体層5を形成した後、外部電極4を引き出し外装樹脂6で覆い第一の実施の形態の固体電解コンデンサを完成させる。
(実施の形態2)
次に、第二の実施の形態について、図面を参照して説明する。図2は、本発明の固体電解コンデンサの第二の実施の形態の内部構造を示す断面図である。本発明の第二の実施の形態の固体電解コンデンサは、陽極側電極としての弁作用金属体2と、この弁作用金属体2の表面を陽極酸化して得た誘電体酸化皮膜1と、誘電体酸化皮膜1上に電解質として固体層7が含まれた導電性高分子層3と、その上の陰極層として導体層5、外部電極4および外装樹脂6から構成されている。
第二の実施の形態の固体電解コンデンサを製造する方法は、第一の実施の形態と同様に誘電体酸化皮膜1を形成した後、ピロール層やチオフェン層からなる導電性高分子層3と、固体層7の形成を繰り返し、その後、グラファイトおよび銀ペーストからなる導体層5を形成し、外部電極4を引き出し外装樹脂6で覆い第二の実施の形態の固体電解コンデンサを完成させる。
(実施の形態3)
次に、第三の実施の形態について、説明する。本発明の第三の実施の形態の固体電解コンデンサは、陽極側電極としての弁作用金属体2と、この弁作用金属体2の表面を陽極酸化して得た誘電体酸化皮膜1と、誘電体酸化皮膜1上に吸着水を保持した固体層7と電解質として導電性高分子層3、その上の陰極層として導体層5、外部電極4および外装樹脂6から構成されている(図1参照)。
第三の実施の形態の固体電解コンデンサを製造する方法は、第一の実施の形態と同様に誘電体酸化皮膜1を形成した後、吸着水を保持した固体層7を形成し、ピロール層やチオフェン層からなる導電性高分子層3を形成した後、グラファイトおよび銀ペーストからなる導体層5を形成し、外部電極4を引き出し外装樹脂6で覆い第三の実施の形態の固体電解コンデンサを完成させる。
次に、本発明の実施例について、従来の技術による固体電解コンデンサと比較して説明する。
(実施例1)
本発明の実施例1について図1を参照して説明する。図1は、本発明の固体電解コンデンサの実施例1の内部構造を示す断面図である。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る固体電解コンデンサは、陽極側電極としての弁作用金属体2と、この弁作用金属体2の表面を陽極酸化して得た誘電体酸化皮膜1と、電解質として導電性高分子層3、陰極層として導体層5、外部電極4および外装樹脂6から構成されている。
固体電解コンデンサを次のように製造する。縦3.5mm、横3.0mm、厚さ1.5mmのタンタル微粉末の焼結体を作製した。これをリン酸水溶液中、100Vの電圧を印加して陽極酸化し、タンタル微粉末表面全体が誘電体酸化皮膜1で被覆されたペレットを得た。
次いで、この誘電体酸化皮膜1形成済みのペレットを2重量%スチレンスルホン酸(以下、SSと略す)の水溶液中に30分間浸漬し、室温で30分間、自然乾燥を行った。このようにして、弁作用金属体2の多孔質な空孔内部に至るまで誘電体酸化皮膜1の全表面に均一に固体層7を形成した。
その後、公知の技術によって、導電性高分子層3と陰極側の導体層5とを順次形成した。すなわち、固体層7が形成済みのペレットを、ピロール2mol/リットルを含むエタノール溶液に10分間浸漬した後、過硫酸アンモニウム0.5mol/リットル、β−ナフタレンスルホン酸、α−ナフチル燐酸0.05mol/リットルを含む水溶液に浸漬した。このようにして化学重合法でポリピロール層を形成したペレットを、ピロール1mol/リットルおよび支持電解質としてパラトルエンスルホン酸テトラエチルアンモニウム1mol/リットルを含むアセトニトリル溶液で1mAの電流を1時間通電して、電解重合法によるポリピロール層を化学重合法によるポリピロール層の上に形成した。その後、グラファイト及び銀ペーストを用いて導体層5を形成し、外部電極4を取り出し、外装樹脂6で外装して、図1に示す構造をもつ実施例1の固体電解コンデンサを完成させた。
そして最後に、この完成した固体電解コンデンサに任意の電圧(例えば70V)を30分以上印加して電圧処理を行った。
このコンデンサでは、図1の断面図に示すように、誘電体酸化皮膜1の全面に固体層7が形成され、更にその固体層7の表面全体に、ポリピロールの導電性高分子層3が形成されていることになる。尚、タンタル焼結体は本来、図1の拡大図に示してあるように内部に多数の非常に微小な空孔を持つ多孔質体であって、これを微視的に見れば空孔が内部に複雑に入り込んで表面状態は凹凸に富むものであるが、図1はこれを簡潔化して理解を容易にするために、表面を平坦面で表してある。
本実施例1では、固体層7として構造式にスルホン酸基を有する物質を使用したが、その構造に電圧を印加することにより酸化皮膜を成長させる能力を有するアルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、アセチル基、ニトロ基、およびその官能基誘導体のような酸素を供与することのできる酸素原子を少なくとも1つ含んでいる物質であれば同一の効果を得る事が出来る。
また、本実施例1では導電性高分子層3としてピロール層を形成したが、チオフェン層やアニリン層でも同一の効果を得ることができる。
(実施例2)
実施例1と同様の焼結体を用いて、実施例1と同様の方法で誘電体酸化皮膜1を形成した後、2重量%ポリスチレンスルホン酸(以下、PSSと略す)の水溶液中に30分間浸漬し、室温で30分間、自然乾燥を行った。このようにして、図1に示すように、弁作用金属体2の多孔質な空孔内部に至るまで誘電体酸化皮膜1の全表面に均一に固体層7を形成した。
その後、実施例1と同様にして、図1に示す構造の実施例2の固体電解コンデンサを完成させた。このコンデンサでは、図1の断面図に示すように、誘電体酸化皮膜1の全面にPSSの固体層7が形成され、更にその固体層7の全面に、ポリピロールの導電性高分子層3が形成されていることになる。
最後に、この完成した固体電解コンデンサについて、実施例1と同一な方法で電圧処理を行った。
本実施例2では、固体層7として構造式にスルホン酸基を有する物質を使用したが、その構造に電圧を印加することにより酸化皮膜を成長させる能力を有するアルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アセチル基、ニトロ基、およびその官能基誘導体のような酸素を供与することのできる酸素原子を少なくとも1つ含んでいる物質であれば同一の効果を得る事が出来る。
また、本実施例では導電性高分子層3としてピロール層を形成したが、チオフェン層やアニリン層でも同一の効果を得ることができる。
(実施例3)
実施例3について図2を参照して説明する。図2は、本発明の固体電解コンデンサの実施例3の内部構造を示す断面図である。実施例1と同じ焼結体を用いて、実施例1と同様の方法で誘電体酸化皮膜1を形成した。次いで、誘電体酸化皮膜1が形成済みのペレットを、ピロール2mol/リットルを含むエタノール溶液に10分間浸漬した後、過硫酸アンモニウム0.5mol/リットル、β−ナフタレンスルホン酸、α−ナフチルリン酸0.05mol/リットルを含む水溶液に浸漬した。
このようにして化学重合法でポリピロール層を形成したペレットを、10重量%のPSS水溶液中に30分間浸漬した後、100℃で15分乾燥し、ポリピロール層とPSS層の形成を任意の回数繰り返した後、ピロール1mol/リットルおよび支持電解質としてパラトルエンスルホン酸テトラエチルアンモニウム1mol/リットルを含むアセトニトリル溶液で1mAの電流を1時間通電して、PSSが含浸された化学重合法によるポリピロール層の上に電解重合法によるポリピロール層を形成した。
その後、実施例1と同様にしてグラファイト及び銀ペーストを用いて導体層5を形成し、外部電極4を取り出し、外装樹脂6で外装して、図2に示す構造をもつ実施例3の固体電解コンデンサを完成させた。そして最後に、この完成した固体電解コンデンサについては、実施例1と同一な方法で電圧処理を行った。
このコンデンサでは、図2の断面図に示すように、誘電体酸化皮膜1の全面にPSSが含浸されたポリピロールすなわち、固体層が混合された導電性高分子層3bが形成されていることになる。
尚、本実施例では、化学重合法でポリピロール層を形成した後、PSSの水溶液に浸漬してポリピロール層にPSSを含浸させたが、重合の際にPSSが添加されたモノマーや酸化剤を使用することで導電性高分子層3bにPSSを添加しても同様の効果を有することが出来る。
また、本実施例では、導電性高分子層3としてピロール層を形成したが、チオフェン層やアニリン層でも同一の効果を得ることができる。
(実施例4)
実施例4について図1を参照して説明する。図1は、本発明の固体電解コンデンサの実施例4の内部構造を示す断面図である。実施例1と同じ焼結体を用いて、実施例1と同様の方法で誘電体酸化皮膜1を形成した。次いで、2重量%ポリビニルアルコールの水溶液中に30分間浸漬し、室温で30分間、自然乾燥を行った。このようにして、図1に示すように、弁作用金属体2の多孔質な空孔内部に至るまで誘電体酸化皮膜1の全表面に均一に固体層7を形成した。
その後、実施例1と同様にして、図1に示す構造の実施例4の固体電解コンデンサを完成させた。そして最後に、この完成した固体電解コンデンサに、実施例1と同一な方法で電圧処理を行った。
このコンデンサでは、図1の断面図に示すように、誘電体酸化皮膜1の全面にポリビニルアルコール(以下PVAと略す)の固体層7が形成され、更にその固体層7の全面に、ポリピロールの導電性高分子層3が形成されていることになる。
本実施例4では、固体層7として構造式に水酸基を有する物質を使用したが、その構造式に吸着水を保持し、その吸着水から酸素を供与することで誘電体酸化皮膜1を成長させる能力を有するスルホン酸基、アルデヒド基、カルボニル基、アセチル基のような官能基を少なくとも1つ含んでいる物質であれば同一の効果を得る事が出来る。
また、本実施例4では、導電性高分子層3としてピロール層を形成したが、チオフェン層やアニリン層でも同一の効果を得ることができる。
(比較例)
図3に、比較例に使用する固体電解コンデンサの断面図を示す。比較例では固体層7形成の際に、シランカップリング剤の水溶液を用いてカップリング層8を形成したコンデンサであって、以下のようにして作製した。すなわち、実施例1と同じ焼結体を用いて、実施例1と同様の方法で誘電体酸化皮膜1を形成した。
次に、2重量%のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの水溶液に30分間浸漬し、室温で24時間、自然乾燥を行った。その後、実施例1におけると同様にして、固体電解質としてのポリピロールによる導電性高分子層3、陰極側の導体層5を順次形成した。更に、外部電極4を取り出し外装樹脂6で外装して、比較例の固体電解コンデンサを完成させた。
以下に、上述のようにして作製した本実施例1〜実施例4の固体電解コンデンサおよび比較例のそれぞれの固体電解コンデンサに対して、耐電圧特性および高温負荷試験を実施した試験前後でのインピーダンス、漏れ電流特性を測定した結果を示す。
高温負荷試験は、相対湿度5%RH以下、温度85℃の環境下で一定の電圧を500時間印加した。また、耐電圧および試験前のインピーダンスは、比較例の固体電解コンデンサの値を1とし、その値に対する倍率で表した。そして、試験後のインピーダンスは、それぞれの試験前のインピーダンスの値に対する倍率で表した。
漏れ電流の測定は、一定電圧を印加して30秒経過した後の電流値を測定し、耐電圧は1V/1分で電圧を昇圧させたときにショートにいたる電圧を測定した。また、インピーダンスは、周波数100kHzの試験信号周波数におけるインピーダンスを測定した。なお、サンプル数は各水準20個ずつとし、インピーダンスおよび耐電圧に関してはその平均を算出した。
本実施例1〜実施例4および比較例のそれぞれの固体電解コンデンサに対して、耐電圧およびインピーダンス特性を測定した結果を下記の表1に、漏れ電流特性を図4にまとめた。
Figure 2007173454
まず、表1を参照して比較例と実施例1〜実施例4のそれぞれの固体電解コンデンサについて結果を評価する。
耐電圧に関しては、比較例に対し実施例1〜実施例4のそれぞれの固体電解コンデンサでは、かなり向上し良くなっている。この理由について以下に述べる。
通常、耐電圧低下の原因として、
1)誘電体酸化皮膜1上の欠陥部と
2)誘電体酸化皮膜1に導電性高分子層3が接触したことによる電子障壁レベルの低下が挙げられる。
1)の場合は、固体電解コンデンサを組み上げる前であれば、液体中で再度化成を実施することにより欠陥部を修復することが可能である。しかし、固体電解コンデンサを組み上げてしまった後は、固体電解コンデンサの素子を液中に入れることができないため欠陥部を修復することは難しく、実際は導電性高分子層3の持つ絶縁化による修復作用に頼るしかない。しかし、欠陥部が大きいと絶縁化される範囲が広がり、漏れ電流は改善されるがインピーダンスが増大してしまうという問題が生じる。
実際、比較例の無機表面(誘電体酸化皮膜)と有機表面(導電性高分子層)の密着性を上げるカップリング層8は、それ自体に修復させる機能がないため欠陥部がある場合は欠陥部と接している導電性高分子層3の絶縁化による修復作用に頼るしかない。そのため耐電圧を大幅に改善することは困難である。
これに対して、実施例1〜実施例3のそれぞれの固体電解コンデンサでは、誘電体酸化皮膜1と導電性高分子層3の間に修復作用(酸素を供与するための酸素原子を有している)のある固体層7を介在させた構造、もしくは導電性高分子層3b内部に修復作用のある酸素を供与できる酸素原子を有した構造になっている。従って、固体電解コンデンサを形成した後でも固体層7または導電性高分子層3bの有する酸素が独自に皮膜部分に供与されて欠陥部を修復するため耐電圧を向上させることができると考える。
また、実施例4では、固体層7に吸着した水分を利用して皮膜部の欠陥部を修復している。水分吸着能力の高い水酸基のような官能基を有するPVAを使用することで誘電体酸化皮膜1の全体を水分で覆うことができ欠陥部の修復が可能となるため耐電圧を向上させることが出来ると推測する。
次に、2)の場合を考える。比較例は、カップリング層8を誘電体酸化皮膜1と導電性高分子層3の間に介在させることで、誘電体酸化皮膜1に導電性高分子層3が直接接触する面積が少なくなるため電子障壁レベルを改善させることができ、特性値もよくなっている。しかし、使用している物質の構造がモノマーの状態であるため簡便な方法で誘電体酸化皮膜1上を均一に覆う膜を形成することは困難であり、電子障壁レベルを改善することはできても元に戻すことは難しい。また、それ自体に修復機能があるわけではない為、欠陥部が多い場合には耐電圧の向上に対しあまり顕著な効果があるとはいえない。
これに対し、実施例1〜実施例4(特に実施例2〜4)は、均一な膜を形成することができるため誘電体酸化皮膜1上に導電性高分子層3がじかに接する面積が極めて少なく、また介在させている固体層7自体に修復機能があるため電子障壁レベルが変わることも無く、耐電圧を向上させることができると考える。
また、実施例1〜実施例4の結果より、材質は変わっても同等の特性を有する固体層7を形成することで同様の効果を得ることができると考える。
本発明の実施例1〜実施例4の固体電解コンデンサにおけるインピーダンス特性は、試験前では比較例とほぼ同等レベルであるが、試験後の値は比較例と比べかなり改善され良くなっている。しかし、実施例1は試験後のインピーダンスが上昇する傾向にある。この理由について以下に考察する。
実施例1の試験後のインピーダンス特性が上昇傾向にあるのは、誘電体酸化皮膜1上に固体層7を形成するときに使用する薬品がモノマー状態のものを使用していることに起因すると考える。つまり、モノマー状態の物質と比較しポリマー状態の物質のほうが弁作用金属体2の多孔質体の空孔内部に至るまで全面を均一に覆う膜を形成することが可能である。
例えば、実施例2で使用しているPSSのようにポリマー化されている物資は、SSが化学的に結合した架橋構造となっているので全体に均一な膜が形成される。しかし、実施例1のように固体層7をSSのようなポリマー化されていない物質で形成した場合は、簡便な方法でサブミクロンオーダーの凹凸を有する多孔質内部へ膜を均一に形成するのは困難であり、塗布されていない箇所がわずかに残る可能性が高い。そして、その塗布されていない部分では導電性高分子層3が誘電体酸化皮膜1上にじかに接触しているため、その部分に欠陥部がある場合は、欠陥部に電流が流れることでジュール熱が発生し、導電性高分子層3が絶縁化し漏れ電流特性はよくなるが、インピーダンス特性は増大してしまう。
図4を参照して比較例と本発明の実施例1〜実施例4の固体電解コンデンサの漏れ電流特性の結果について評価する。
試験前では比較例とほぼ同等レベルであるが、試験後の値は比較例と比べかなり改善され良くなっている。しかし、実施例によっては、実施例4のように試験前後での漏れ電流の変化が大きいものや実施例1のように漏れ電流のばらつきが大きい固体電解コンデンサがある。この理由について以下に考察する。
まず、漏れ電流のばらつきの違いは、前述したように均一に多孔質内部を覆っているかどうかの違いによると考える。
次に、実施例1〜実施例3と比べ実施例4の試験後の特性が少し低下している理由について述べる。
実施例4では、誘電体酸化皮膜上の欠陥部を修復する方法として、固体層7に吸着した水分を利用している。つまり、誘電体酸化皮膜1上に水が吸着している状態で固体電解コンデンサに電圧を印加すると吸着水は瞬時に水素イオンと水酸化物イオンに解離する。解離した水酸化物イオンから誘電体酸化皮膜1へ酸素が供給され誘電体酸化皮膜1を成長させることが出来るため欠陥部は修復される。つまり、修復能力は誘電体酸化皮膜1上に吸着する水酸化物イオンの存在量、換言すれば水の量に依存することになる。
従って、独自に持っている酸素を供与して欠陥部を修復することができる実施例1〜実施例3とは異なり、脱離によって水の存在量が著しく減少する高温下では、修復能力が十分に働かないので、漏れ電流が大きくなると考える。
本発明の固体電解コンデンサの第一および第三の実施の形態ならびに実施例1、実施例2、実施例4の内部構造を示す断面図。 本発明の固体電解コンデンサの第二の実施の形態および実施例3の内部構造を示す断面図。 従来技術の比較例の固体電解コンデンサの内部構造を示す断面図。 本発明の第1〜第4の実施例および比較例の固体電解コンデンサについての高温負荷試験前後での漏れ電流の変化の様子を示す図。
符号の説明
1 誘電体酸化皮膜
2 弁作用金属体
3 導電性高分子層
3b (固体層を含む)導電性高分子層
4 外部電極
5 導体層
6 外装樹脂
7 固体層
8 カップリング層

Claims (5)

  1. 陽極側電極としての弁作用金属体と、前記弁作用金属体の表面を酸化して得た誘電体酸化皮膜と、前記誘電体酸化皮膜に電圧印加により酸素を供与する固体層と導電性高分子層を含む固体電解質とを有することを特徴とする固体電解コンデンサ。
  2. 前記固体層が、前記誘電体酸化皮膜上に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  3. 前記固体層が、前記導電性高分子層に混合されたことを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  4. 前記固体層が、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アセチル基、ニトロ基、およびその官能基誘導体を少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
  5. 前記固体層が、吸着水を保持することのできる水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホン酸基およびその官能基誘導体を少なくとも1つ含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
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