JP2007169753A - レーザピーニング処理方法及びレーザ吸収粉体層シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のレーザピーニング処理方法によれば、レーザを照射した際に発生するプラズマの衝撃波により粉体又は混合物13Fをワーク10の被加工面に打ち込むという従来にはない新規な方法でレーザピーニング処理を行うので、新しい材料特性を有した製品の製造が可能になる。しかも、ワーク10の被加工面が金属で形成されている場合には、粉体又は混合物13Fがワーク10の被加工面に打ち込まれると、ワーク10の表面部が塑性変形して金属結晶が細分化するので、ワーク10の被加工面が硬化して、ワーク10の被加工面の耐摩耗性、耐摺動性及び耐腐食性が著しく向上する。
【選択図】図2
Description
レーザ学会編集、「レーザーハンドブック(第2版)」、オーム出版、平成17年4月25日発行、P834,P936
以下、本発明に係るレーザピーニング処理方法の一実施形態について、図1及び図2に基づいて説明する。本実施形態においてレーザピーニング処理の対象となるワーク10(本発明の「被加工物」に相当する)は、摺動部品、例えば、エンジンのシリンダであって、図1にはワーク10の一部が拡大して示されている。なお、ワーク10は、摺動部品であれば、例えば、ベアリング、エンジンのピストン又はバルブ、直動ガイド等であってもよい。ワーク10の母材11は、例えば、鉄鋼材料であり、その母材11の被加工面には、潤滑剤、例えば、アモルファス合金からなる表面処理層12が、レーザを照射する前に、予め、例えばメッキ処理により形成されている。なお、表面処理層12は、アモルファス合金に代えて、ニッケル超合金、二硫化モリブデン等で構成してもよい。この表面処理層12の表面は、ワーク10の摺動面(本発明の「被加工面」に相当する)となる。なお、母材11の表面に表面処理層12を設けない場合は、母材11の表面がワーク10の摺動面となる。
本実施形態では、前記第1実施形態のレーザ装置を用いてレーザ干渉層15の所定の箇所をレーザで照射したら、一度、レーザを停止して、別の箇所をレーザで照射する動作を繰り返す。すると、図3及び図4に示すように、ワーク10の摺動面には、レーザが照射された複数の箇所にそれぞれレーザが照射された際に発生するプラズマの衝撃波により陥没した陥没部30が形成され、それら陥没部30の内面に粉体又は混合物13Fが打ち込まれた状態になる。この陥没部30は、深さが例えば5[μm]〜50[μm]になっている。さらに、陥没部30は衝撃波によって陥没したものであるから、陥没部30の縁部はエッジ形状に緩やかに湾曲した形状になる。
図8には、本発明に係るレーザ吸収粉体層シート40が示されている。このレーザ吸収粉体層シート40は、例えば、前記第1実施形態と同様の構成のベースシート14を主要部として備えている。そして、ベースシート14の一方の面にレーザ吸収増強皮膜14Bとレーザ干渉層15とを設け、ベースシート14の他方の面に離型剤16を塗布し、その離型剤16に粉体粉体又は混合物13Fを付着させて粉体皮膜層13を形成した構造になっている。
本実施形態では、図10に示すように、レーザ装置のレーザ光出射部20にブラケット23を介して噴射ノズル24が取り付けられている。噴射ノズル24は、レーザ光出射部20が出力するレーザの光軸に対して、5〜45度程度傾けて取り付けられ、噴射ノズル24の先端側がレーザの光軸側に接近するように配置されている。そして、レーザ光出射部20からワーク10の被加工面に向けてレーザを照射した場合に、噴射ノズル24の先端がワーク10の被加工面のうちレーザの照射部分から若干ずれた位置に突き合わされる。また、噴射ノズル24には、粉体皮膜層を構成する粉体又は混合物13Fを圧縮ガス(本発明の「キャリアガス」に相当する)、例えば、二酸化炭素と共に供給する図示しない粉体供給装置が連結されている。なお、圧縮ガスは、二酸化炭素に代えて、アルゴンその他の不活性ガスでもよい。噴射ノズル24におけるレーザ光出射部20側には、シート供給装置25が取り付けられている。そのシート供給装置25には、一方の面にレーザ吸収増強皮膜14Bを備えたベースシート14が巻回されて装着されている。このベースシート14は、前記第1実施形態と同一の構成をなしている。また、レーザ吸収増強皮膜14は、ベースシート14の一方の面に、例えば、黒色顔料を塗布して形成されている。
本実施形態の被加工物は、例えば、化学プラントで使用される反応容器(図示せず)であって、液体を貯留して化学反応させるために用いられる。本実施形態では、その化学反応に必要な触媒、例えば、白金を粉体にし、上記した第1乃至第4の実施形態の何れかのレーザピーニング処理方法を用いて、反応容器の内面(本発明の「被加工面」に相当する)に打ち込む。これにより、反応容器内の化学反応を促進させることができる。なお、
触媒は、白金の粉体に代えて、チタン、銀、ダイヤモンド、グラファイト、マグネシウム又はニッケルの粉体としてもよい。
図11に示すように本実施形態のレーザピーニング処理方法では、前記第4実施形態で説明した噴射ノズル24とシート供給装置25との間に超音波出力部26を設け、噴射ノズル24から吐出された粉体又は混合物13Fよりなる粉体皮膜層13に、超音波出力部26が出力し超音波を付与して超音波ピーニングを施している。そして、その粉体皮膜層13の上に前記第4実施形態で説明したレーザ吸収増強皮膜14Bを備えたベースシート14を敷設し、そのベースシート14のうちレーザ吸収増強皮膜14Bにレーザを照射してワーク10に粉体又は混合物13Fを打ち込んでいる。
[他の実施形態]
13 粉体皮膜層
13F 粉体又は混合物(粉体)
14 ベースシート
14B レーザ吸収増強皮膜
15 レーザ干渉層
16 離型剤
18 マスク
18A レーザ通過孔
21 集光レンズ(レーザビーム加工光学系)
24 噴射ノズル
30 陥没部
40 レーザ吸収粉体層シート
Claims (23)
- 被加工物の被加工面に樹脂、金属、金属間化合物、金属炭化物、金属酸化物、セラミックス、ガラス、超硬合金、ダイヤモンド、カーボン及び/又は立方晶窒化ホウ素等の固体潤滑材及び/又は硬化材で構成された粉体皮膜層を設け、前記粉体皮膜層の上にグラファイト或いは黒色顔料を塗布し、又は、酸化皮膜処理或いは酸皮膜処理を施して構成されたレーザ吸収増強皮膜を設け、このレーザ吸収増強皮膜にピーク出力密度が1GW/cm2乃至10GW/cm2の範囲内の高ピーク出力密度のレーザを照射した際に発生するプラズマの衝撃波により前記固体潤滑材及び/又は前記硬化材を前記被加工物の前記被加工面に打ち込むことを特徴とするレーザピーニング処理方法。
- 前記レーザ吸収増強皮膜に、水、油、溶融塩又はプラスチック等からなる前記レーザを透過可能なレーザ干渉層を積層し、そのレーザ干渉層を通して前記レーザ吸収増強皮膜に前記レーザを照射することを特徴とする請求項1に記載のレーザピーニング処理方法。
- 被加工物の被加工面にリン酸皮膜処理、メッキ、溶射又は金属コーティングの表面前処理を施し、その上に、粉体又は皮膜で構成された固体潤滑材及び/又は硬化材で構成された粉体皮膜層を形成すると共に、前記粉体皮膜層にレーザ吸収増強皮膜を積層し、前記レーザ吸収増強皮膜にレーザを照射した際に発生するプラズマの衝撃波により前記固体潤滑材及び/又は前記硬化材を前記被加工物の前記被加工面に打ち込むことを特徴とするレーザピーニング処理方法。
- 前記レーザ吸収増強皮膜は、グラファイト或いは黒色顔料を塗布し、又は、酸化皮膜処理或いはリン酸皮膜処理をして形成されることを特徴とする請求項3に記載のレーザピーニング処理方法。
- 樹脂、ガラス、紙、テープ、フィルム又は金属薄膜からなるベースシートと、そのベースシートの一方の面にグラファイト或いは黒色顔料を塗布し、又は、酸化皮膜処理或いはリン酸皮膜処理を施して形成されたレーザ吸収増強皮膜と、前記ベースシートの他方の面に樹脂、金属、金属間化合物、金属炭化物、金属酸化物、セラミックス、ガラス、超硬合金、ダイヤモンド、カーボン、立方晶窒化ホウ素及び/又は酵素等の粉体を塗布して形成された粉体皮膜層とを備えたレーザ吸収粉体層シートを、前記被加工物の前記被加工面に前記粉体皮膜層を向けて敷設し、前記レーザ吸収増強皮膜にレーザを照射した際に発生するプラズマの衝撃波により前記粉体を前記被加工物の前記被加工面に打ち込むことを特徴とするレーザピーニング処理方法。
- 前記ベースシートのうち前記粉体皮膜層側に離型剤を塗布することを特徴とする請求項5に記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記レーザ吸収増強皮膜に、水、油、溶融塩又はプラスチック等からなる前記レーザを透過可能なレーザ干渉層を積層し、そのレーザ干渉層を通して前記レーザ吸収増強皮膜に前記レーザを照射することを特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- レーザ通過孔を備えたマスクを、前記レーザを照射する前記レーザ吸収増強皮膜又は前記レーザ干渉層に対して間隔を開けて積層し、前記レーザ通過孔を横切るように前記マスク上に前記レーザを照射することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記固体潤滑材及び/又は前記硬化材は、金属、金属間化合物、金属炭化物、金属酸化物、樹脂、セラミックス、超硬合金、ダイヤモンド、カーボン、ガラス及び/又は立方晶窒化ホウ素からなる粉体であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記被加工物が液体を内部で化学反応させるための反応容器である場合に、その化学反応を促進させるための触媒としての白金、チタン、銀、ダイヤ、グラファイト、マグネシウム又はニッケルの粉体を前記固体潤滑材及び/又は前記硬化材にして、前記被加工物の前記被加工面としての前記反応容器の内面に打ち込むことを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記被加工物が摺動部品である場合に、前記固体潤滑材を粉体にして、前記被加工面としての摺動面に打ち込むことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記レーザを照射する前に、前記被加工物の前記被加工面に、予め、酸化皮膜処理又はリン酸皮膜処理を施しておくことを特徴とする請求項1,2,4乃至11の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記レーザを照射する前に、前記被加工物の前記被加工面に、予め、金属、金属間化合物、樹脂又はセラミックスのコーティングを施して皮膜を生成しておくことを特徴とする請求項1,2,4乃至11の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記レーザを照射する前に、前記被加工物の前記被加工面に、予め、浸炭処理、浸窒処理その他の含浸処理を施しておくことを特徴とする請求項1,2,4乃至11の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記被加工物の前記被加工面に前記粉体皮膜層を形成してから前記レーザ吸収増強皮膜で覆う前に、前記固体潤滑材及び/又は前記硬化材を加圧して前記被加工物に押し付ける予備打込み工程を行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記予備打込み工程では、前記粉体皮膜層に超音波ピーニングを施すことで、前記固体潤滑材及び/又は前記硬化材を加圧することを特徴とする請求項15に記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記レーザを照射した際に発生する前記プラズマの衝撃波により、前記被加工物の前記被加工面に陥没部を形成しかつ、その陥没部の内面に前記粉体皮膜層を構成する前記固体潤滑材及び/又は前記硬化材、或いは、前記粉体が打ち込まれるように、前記レーザの強度及び/又は照射時間を設定することを特徴とする請求項1乃至16の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記固体潤滑剤及び/又は前記硬化材としての粉体をキャリアガスと共に噴射ノズルから前記被加工物の前記被加工面に噴射しかつそのノズルを移動させて前記粉体皮膜層を形成しておき、その粉体皮膜層に前記レーザ吸収増強皮膜を敷設していき、そのレーザ吸収増強皮膜に前記レーザを照射することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記被加工物を構成する部材が半凝固状態である間に、前記レーザを照射した際に発生する前記プラズマの衝撃波により前記粉体皮膜層を構成する粉体を前記被加工物の前記被加工面に打ち込むことを特徴とする請求項1乃至18の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 前記レーザの出力装置におけるレーザビーム加工光学系と前記レーザの照射方向を変更する光偏向装置とのうち少なくとも一方を数値制御して前記レーザを空間的に正確に位置制御して照射することを特徴とする請求項1乃至19の何れかに記載のレーザピーニング処理方法。
- 樹脂、ガラス、紙、テープ、フィルム又は金属薄膜からなるベースシートと、そのベースシートの一方の面にグラファイト或いは黒色顔料を塗布し、又は、酸化皮膜処理或いはリン酸皮膜処理を施して形成されたレーザ吸収増強皮膜と、前記ベースシートの他方の面に、樹脂、金属、金属間化合物、金属炭化物、金属酸化物、セラミックス、ガラス、超硬合金、ダイヤモンド、カーボン、立方晶窒化ホウ素及び/又は酵素等の粉体を塗布して形成された粉体皮膜層とで構成されたことを特徴とするレーザ吸収粉体層シート。
- 前記レーザ吸収粉体層シートのうち前記レーザ吸収増強皮膜側に、前記レーザを透過可能なレーザ干渉層を備えたことを特徴とする請求項21に記載のレーザ吸収粉体層シート。
- 前記レーザ吸収粉体層シートのうち前記レーザ吸収増強皮膜側に、レーザ通過孔を有しかつレーザ通過孔以外の部分で前記レーザの通過を規制可能なマスクを間隔を開けて配置したことを特徴とする請求項21又は22に記載のレーザ吸収粉体層シート。
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