JP2007159658A - 採血針 - Google Patents

Abstract

【課題】本発明の目的は、被検者に対する痛みが少なく、且つ採血管の栓体にスムーズに穿刺することが可能であり、作業性のよい、コスト面でも有利な採血針を提供することにある。
【解決手段】針基の一方の側に人体穿刺用の針管、他の一方の側に採血管の栓体穿刺用の針管が設けられた採血針であって、前記人体穿刺用の針管の先端の外径と栓体穿刺用の針管の先端の外径が異なることを特徴とする採血針。
【選択図】図１

Description

本発明は、採血針に関する。より詳しくは採血針、それを備えた検査キットおよび採血キットに関する。

従来から、血液、尿等を検体として人の病気を診断する方法は、人体を損ねることなく簡便に診断できる方法として、長く行われてきている。

特に血液は、多くの検査項目について診断が可能であり、健康診断，疾病の診断などでは血液を採取してその成分を分析することが一般的になっている。

血液検査においては、通常、患者あるいは健康診断の対象者などのいわゆる被検者から血液を採取する際に、採血針を静脈に穿刺している。通常の血液検査では、ＩＳＯ９６２６：１９９１などに規定される２１Ｇ（ゲージ）（外径０．８１ｍｍ，内径０．４９ｍｍ〜０．６１ｍｍ）を使用しており、静脈に穿刺されたときに痛みを伴うのが普通であり、採血時の苦痛をなくす努力が医療の現場に求められている。

この、穿刺時の問題を解決する手段として、特許文献１には、外径の細い針で採血をすることで、痛みを抑えて採血する技術が開示されている。

また、特許文献２には、２本の針管を透明な針基部分で接合することで、静脈に穿刺されたことが確認できる安全性の高い採血針が提案されている。
特開２００３−８３９５８号公報 特開昭５７−１１６６１号公報

特許文献１の非常に細い針では、人体に穿刺しにくいという問題があった。
さらに、一般の採血に使用される両頭型の採血針は、一方の側を人体に、もう一方の側を採血管の栓体を刺通させるため、痛みを抑えるために針を細くすると、栓体に刺通する際に、針が折れたり、曲がったりするという欠点があった。

特許文献２の技術では、血液流入を確認する目的で２本の針管を接合している。該特許では、２本の針管の寸法に関する記述はなく、外径の細い針の場合に発生する採血管栓体刺通の問題については言及していない。

また、通常、シリンジ採血の際に使用される注射針でも、市販の「ルアーアダプタ」を使用することで真空採血が可能となる。ルアーアダプタは、通常、２１Ｇ程度の太さの針の一端の針管をゴムなどの弾性キャップ（止血ゴムカバー）でカバーし、もう一端は、ルアーテーパー型の針基で構成されている。このルアーテーパー型の針基に通常の注射針を接合することで、注射針でも真空採血が可能になる。このようにすることで、人体に穿刺する側は細い針で、採血管の栓体に刺通する側（ルアーアダプタ側）は２１Ｇの太い針で穿刺をすることが可能になる。

しかしながら、ルアーアダプタを使用する方法では、注射針とルアーアダプタの接合部分に１００μＬ程度のスペースがあり、採血時に血液のデッドボリュームとなる。このため血液のデッドボリューム分を余分に採血する必要があり、採血時の血液の量に無駄が出
てしまう。特に少量採血を行う場合に、大きな問題となる。また、デッドボリュームの容量分、真空採血管の減圧度が下がってしまい、少量採血を行う場合には、採血速度が遅くなる等の欠点があった。さらに、採血の前にルアーアダプタと注射針を接合する操作が必要になること、ルアーアダプタのコストがかかることなど、作業性・コスト面においても問題があった。

本発明の目的は、被検者に対する痛みが少なく、且つ採血管の栓体にスムーズに穿刺することが可能であり、作業性のよい、コスト面でも有利な採血針を提供することにある。

本発明の上記課題は、以下の構成により達成することができた。
１． 針基の一方の側に人体穿刺用の針管、他方の側に採血管の栓体穿刺用の針管が設けられた採血針であって、前記人体穿刺用の針管の先端の外径と栓体穿刺用の針管の先端の外径が異なることを特徴とする採血針。
２． 前記栓体穿刺用の針管の先端の外径が人体穿刺用の針管の先端の外径より大きいことを特徴とする前記１項に記載の採血針。
３． 前記針基に刃の向きを示す印があることを特徴とする前記１項または２項に記載の採血針。
４． 前記人体穿刺用の針管の先端の外径が０．４２ｍｍ以下であることを特徴とする前記１項〜３項のいずれかに記載の採血針。
５． 前記人体穿刺用の針管の先端の外径が０．２６ｍｍ以上０．３４ｍｍ以下であり、該針管の先端の内径が０．１７ｍｍ以上であることを特徴とする前記１項〜４項のいずれかに記載の採血針。
６． 前記１項〜５項のいずれかに記載の採血針と検査チップを具備することを特徴とする検査キット。
７． 前記１項〜５項のいずれかに記載の採血針と真空採血管を具備することを特徴とする採血キット。
８． 前記７項に記載の真空採血管の内容量が１．５ｍＬ以下であることを特徴とする採血キット。

本発明によれば、被検者に対する痛みが少なく、且つ採血管の栓体にスムーズに穿刺することが可能であり、作業性のよい、コスト面でも有利な採血針を提供することができる。

以下、本発明について更に詳細に説明する。

＜採血針の使用目的＞
本発明の採血針は、ヒトやその他の動物の血液を採取する際に好適に用いられる。採取した血液は、通常、血液検査に使用される。

＜穿刺針の分類＞
血液を採取して血液中の成分を分析するために、腕・肘・指先などから血液を採取する針は内部に中空を設けたものと中空のないものがある。
例えば、中空を有する穿刺針は、一般的には、医療機関において、あるいは健康診断などにおいて、静脈に穿刺して静脈中の血液を採取して、通常、血液中の成分を分析するために用いられる。例えば、血糖値、ヘモグロビンＡ１ｃ（ＨｂＡ１ｃ）などの糖尿病を診断するための成分、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ（ＧＰＴ），グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ（ＧＯＴ）などの肝機能を診断するための成分、クレ
アチニン（ＣＲＥ）、尿素窒素（ＢＵＮ）などの腎機能を診断するための成分を分析するために用いられる。
一方、ランセットと呼ばれる中空でない穿刺針は、一般的に、血糖値を自己測定する装置において、被検者が自ら指先を穿刺して血液を採取するのに用いられる。
本発明は、針の内部が中空である採血針に関する。

＜採血針＞
採血針は一般的に針管（カヌラ）と針基（ハブ）を有して構成されており、針管（カヌラ）は針基（ハブ）を貫通し、針管の両端に刃先を有する。採血針の一般的な構造を図１に示す。図１中、針管は、「針基（ｂ）」の内部を貫通している。針管の人体穿刺側は、「人体穿刺用の針管の基端（ｆ）」を起点として「人体穿刺用の針管の先端（ｄ）」までの部分を「人体穿刺用の針管（ａ）」とし、先端（ｄ）に刃先を有する。針管の栓体穿刺側は、「栓体穿刺用の針管の基端（ｇ）」を起点として「栓体穿刺用の針管の先端（ｅ）」までの部分を「栓体穿刺用の針管（ｃ）」とし、先端（ｅ）に刃先を有する。

連続採血用として、針管の栓体穿刺側に止血ゴムカバーつきのものが一般的である。ＪＩＳ Ｔ−３２２０に一般的な形態が規定されている。通常、刃を保護するための保護キャップ（プロテクタ）（図１中不図示）を被せた形で市販されている。採血の際には、栓体穿刺用の針管（ｃ）側に真空採血用ホルダーの凹側が向く形で真空採血用ホルダーに装着したあと、人体穿刺用の針管（ａ）をその先端（ｄ）から静脈に穿刺し、さらに、ホルダー内に真空採血管を入れることで、栓体穿刺用の針管（ｃ）がその先端（ｅ）から真空採血管の栓体に刺さり採血が開始される。通常、一本の針管の両端を研磨して刃を作成し、次に接着剤をつけた針管の中央部付近に針基（ｂ）を接合することで、針管と針基を接着する。その後で止血カバーを栓体穿刺用の針管（ｃ）に被せる方法で製造される。

本発明の採血針は、人体穿刺用の針管の先端（ｄ）と栓体穿刺用の針管の先端（ｅ）の外径が異なる針である。先端（ｅ）の外径が先端（ｄ）の外径より大きい方が好ましい。
また、採血者あるいは医療廃棄物処理者への針刺し事故防止および感染防止のために、栓体穿刺のための針にゴムなどの材質のカバーを付与してもよいし、真空採血管を使用する場合のガイドとしてホルダーを付与してもよい。

本発明の採血針における針管は、「人体穿刺用の針管（ａ）」および「栓体穿刺用の針管（ｃ）」は、それぞれ異なる外径の針管２本を用いてもよいし、針の外径を途中で変えた一本の針管であってもよい。図２（Ａ）は、本発明の採血針の外観図であり、人体穿刺用の針管（ａ）の先端（ｄ）および栓体穿刺用の針管（ｃ）の先端（ｅ）が鋭利な刃となっている。図２（Ｂ）（Ｃ）（Ｄ）に、異なる外径の針管２本用いた場合の本発明の採血針を例示する。また、図２の（Ｅ）（Ｆ）（Ｇ）に、針の外径を途中で変えた一本の針管を用いた場合の本発明の採血針を例示する。

異なる外径の針管２本を用いる場合は、人体穿刺用の針管（ａ）の基端（ｆ）と栓体穿刺用の針管（ｃ）の基端（ｇ）を、各々の針管が針基（ｂ）から抜けることなくかつ気密・水密を保ったまま、針基（ｂ）に装着した構造である。通常使用されている採血針の針基は、同じ径の針管挿入口が左右１つずつ設けられているが、本発明の採血針の針基は、異なる径の針管が入るように、針管挿入口の径が左右で異なっていることが好ましい。それに伴い針基内部の針管を挿入する部分の流路も左右で径が異なっている。針管を挿入する左右の流路をつなぐ部分が、針基に血液が直接接触する血液流入部となる。採血する際に血液が、人体穿刺用の針管（ａ）から栓体穿刺用の針管（ｃ）に速やかに移動するように、針基（ｂ）の血液流入部の内壁が平滑であることが好ましい。人体穿刺用の針管（ａ）の形状は、図２（Ｂ）のように針の先端（ｄ）から基端（ｆ）にかけてほぼ同じ外径であってもよいし、図２（Ｄ）のように針の先端（ｄ）から基端（ｆ）にかけてテーパ状に
外径が変わるものであってもよいし、図２（Ｃ）のように先端（ｄ）側および基端（ｆ）側が、各々異なる外径のストレート形状を有した段構造の針にしてもよい。

一方、針の外径を途中で変えた一本の針管を用いる場合は、図２（Ｇ）のように人体穿刺用の針管（ａ）の先端（ｄ）から栓体穿刺用の針管（ｃ）の先端（ｅ）にかけてテーパ状に外径が変わるものであってもよいし、図２（Ｅ）、（Ｆ）のように先端（ｄ）側および先端（ｅ）側が、各々異なる外径のストレート形状を有した段構造の針にしてもよい。このときは、針基（ｂ）は、（Ｅ）のようにストレート構造の部分に設けてもよいし、（Ｆ）のように、ストレート構造をつなぐ、段部分に針基を設置してもよい。

採血針をより安価に作成することを考慮すると、図２（Ｂ）のように、異なる外径の針管２本を用い、人体穿刺用の針管（ａ）の針管の先端（ｄ）から基端（ｆ）にかけてほぼ同じ外径である採血針を作成することが好ましい。

人体穿刺用の針管（ａ）の先端（ｄ）の外径は痛みの観点から、０．４２ｍｍ以下であることが好ましく、０．３８ｍｍ以下であることがより好ましく、０．３４ｍｍ以下であることが最も好ましい。また、針の強度の観点から、０．２６ｍｍ以上であることが好ましい。
また、溶血と採血速度の観点から内径が０．１７ｍｍ以上であることが好ましい。溶血については後述する。

人体穿刺用の針管（ａ）の長さは、５ｍｍ〜３８ｍｍが好ましく、７ｍｍ〜２５ｍｍがより好ましく、９ｍｍ〜２０ｍｍが最も好ましい。なお、人体穿刺用の針管（ａ）の長さとは、針基（ｂ）に隠れた部分を除く、基端（ｆ）から先端（ｄ）までの長さを指す。

栓体穿刺用の針管（ｃ）の先端（ｅ）の外径は、栓体（ゴム栓等）への刺通容易性から０．４０ｍｍ以上であることが好ましく、０．５０ｍｍ以上であることがより好ましく、０．６０ｍｍ以上であることが最も好ましい。

栓体穿刺用の針管（ｃ）の長さは、真空採血管の栓体を貫通させるに充分な長さという点からは針管（ｃ）は長いほうがよいが、採血管に貯留した血液に栓体穿刺用の針管（ｃ）の先端（ｅ）が触れぬようにするという点からは針管（ｃ）は短いほうがよい。栓体穿刺用の針管（ｃ）の長さは、１０ｍｍ〜２５ｍｍが好ましく、１２ｍｍ〜２２ｍｍがより好ましく、１４ｍｍ〜２０ｍｍが最も好ましい。なお、栓体穿刺用の針管（ｃ）の長さとは、針基（ｂ）に隠れた部分を除く、基端（ｇ）から先端（ｅ）までの長さを指す。

また、針管の外径と内径の差は、小さいほうが内径を大きくでき、全血に与える損傷が小さいという点で好ましく、他方、針の力学強度を保つためには大きいほうが好ましい。本発明においては、針管の外径と内径の差は、好ましくは０．０５ｍｍ以上０．１７ｍｍ以下、より好ましくは０．０８ｍｍ以上０．１４ｍｍ以下である。人体穿刺用の針管（ａ）と栓体穿刺用の針管（ｃ）とで外径と内径の差が異なっていても良いし、同じでもよい。

本発明の採血針は、通常採血に使用されている２１Ｇの針に比較し、人体穿刺用の針管（ａ）の外径が細いことが好ましい。このため、針の刃の向きが見えにくいことがあり、針基（ｂ）に刃の向きを示す印をつけることが好ましい。この印は、三角、丸、四角のようなマークをつけてもよいし、触っただけで分かるように突起や、くぼみになっていてもよい。また、印刷、シール貼り付けなどの方法によって付けても良い。

また、穿刺のために針先をカットする形状は、３面カットあるいは１面カット，直線カ
ットあるいは曲線カットのいずれでもよい。１面カットの場合の針先のカットの角度は、日本工業規格Ｔ３１０１−１９７９で規定される刃先の角度θにおいて、８度から３０度の角度にあることが好ましい。３面カットの場合の針先のカットの角度は、第一研削角ａは７度〜２０度、第二研削角ｂは、１０度〜３０度であることが好ましい。図３に好ましい３面カットの針先を示す。第一研削角ａを図３（I）に、第二研削角ｂを図３（II）に示す（ＩＳＯ７８６４参照）。

｛針の素材｝
本発明の採血針の材質は、ＳＵＳ３０４などのステンレス鋼，ニッケルフリーステンレスなどの金属、ポリカーボネート，アクリレート系高分子などの樹脂、石英ガラス，硼珪酸ガラスなどの無機材料など、中空針を形成することのできる材質であれば特に限定されない。中でも、上記外径における力学強度を保つことが容易であることから、ステンレスなどの金属を用いることが好ましい。また、針の外面や内面に針の材質とは他の材料でコーティング等の処理をしてもよい。特に、穿刺抵抗を下げ、穿刺しやすくする目的で他の材料（シリコンなど）をコーティングすることが好ましい。

また、本発明の採血針はさらに安全性・作業性等を考慮した各種工夫がなされていてもよい。例えば、採血後に針に触れないように、カバーでロックする安全カバーを設置することが好ましい。また、静脈に穿刺したことが分かる、いわゆるフラッシュバックを目視確認可能なように、針基を透明あるいは半透明にしたりすることも好ましい。

また、採血針を真空採血用のホルダーに装着して一体型の針付きホルダーとしてもよい。このように、あらかじめ使用形態で一体型の採血器具として提供することにより、採血時に針を装着したり、採血後に針を脱着したりする手間を省くことができ、更には針刺し事故が起きにくくなるので、被採血者が多い病院等では特に採血時間の短縮につながるため、好ましい。

｛針の製造｝
本発明の採血針は、特に限定されず、この分野の常法に従って製造することができる。

［溶血］
採血した血液は、３０００ｒｐｍ前後の回転数で１０分程度遠心分離して血球成分を沈殿させた後にその上清を採取した血漿・血清を用いて分析、診断することが一般的である。しかしながら、採血した全血に圧力などの強い力が加わると、赤血球が破壊して赤血球中の血色素が溶出し、血漿・血清が赤味を帯びることがある。これを溶血と呼んでいる。
溶血した血漿・血清などの検体を分析、診断に用いる場合、分析結果に影響を及ぼすことがある。血漿中に比べて赤血球中に高濃度で存在する成分の場合には、これが顕著に現れ、分析結果に狂いを生じさせることになる。このような成分は、例えば、カリウムイオン，乳酸脱水素酵素（ＬＤＨ），アデニレートキナーゼ（ＡＫ），カタラーゼなどである。

本発明の採血針は真空採血管を用いた真空採血法での採血に使用される。
＜真空採血管＞
本発明の採血針は、真空採血管とともに採血キットを構成しうる。採血針に真空採血管用のホルダーに装着し、真空採血管を接続することで、採血管の陰圧で血液の採取が開始される。
本発明の採血針で採血する際に使用する真空採血管は、市販のいかなる真空採血管でも構わない。
真空採血管には通常、抗凝固剤・解糖防止剤などが予め封入されており、分析する成分によって使い分ける。また、採血管で採取する血液の量についても分析する目的に応じて
容量の異なる真空採血管を使い分けるが、採取量２ｍＬ，５ｍＬ，１０ｍＬの採血管が一般的に使われている。血液を採取するのに要する時間は、被検者（一般的には患者）の状態，検者（一般的には医師・看護師・臨床検査技師）の熟練度によるが、数秒から数十秒で完了することが普通である。
市販の真空採血管の減圧度は−２００ｍｍＨｇから−６５０ｍｍＨｇ程度であり、本発明の採血キットでは、市販のいかなる真空採血管でも使用できる。採血速度等から考えて、減圧度が−４００ｍｍＨｇ以上の真空採血管であることが好ましく、−４５０ｍｍＨｇ以上の真空採血管であることがより好ましく、−５００ｍｍＨｇ以上の真空採血管であることが最も好ましい。なお、ここで述べる減圧度は、大気圧を０ｍｍＨｇ、真空を−７６０ｍｍＨｇと定義する。

本発明において、少量採血に合わせた、容量の少ない採血管を使用すると、検査に必要な量だけを採血することが可能になり、被験者の負担を低減することができる。容量が７ｍＬ以下の採血管を使用することが好ましく、容量が４ｍＬ以下の採血管を使用することがより好ましく、容量が１．５ｍＬ以下の採血管を使用することが最も好ましい。

＜検査チップ＞
本発明の穿刺針は、検査チップとともに検査キットを構成しうる。従来医療機関・検査機関で行われてきた自動分析装置を用いた血液検査に比較し、検査チップでの検査は少量で多項目の検査を可能にする。採血に要する時間を一定と考えると、検査に必要な血液量が少なければ少ないほど、本発明の採血針内径を小さく、それにより外径を小さくすることが可能になる。よって本発明の採血針は、少量の血液で検査が可能な検査チップと共に使用することが好ましい。
検査チップとは、血液中に含まれる各種成分を測定するために、毛細管現象や電気泳動などを利用して微細な断面積を有する流路に血液などの検体を流し、試薬と反応させた後、血液中の各成分を分離して透過分光分析をおこなったり、あるいは、試薬との発光反応をおこなわせてその発光光を分光分析したりする、血液分析を行う小型のチップ状の装置をいう。

また、ヒトの静脈に穿刺して血液を得ること以外にも使用できる。特に血管の細い小動物から採血する場合に有用で、動物病院において犬、猫などの動物から採血する場合にも用いることができ、また、化学・生化学・生物学などの理化学実験において、ラット、マウス、ウサギなどの小動物から採血する場合にも用いることができる。

さらに、ヒトを対象とした採血においても、通常採血が行われている病院・健康診断・人間ドックだけでなく、薬局・ヘルスケアショップ等における健康をモニタリングするための採血に使用することも出来る。通常の採血用の針に比較して、痛みが低減できるため、健康な人、特に一見健康ではあるが病気が気になる人に対する健康チェック等の用途に有用性が高い。健康人を対象とした測定としては、一般的な生化学項目・血算のほか、血液の流動性（サラサラ度）の測定、ストレスマーカーの測定等が挙げられる。血液の流動性（サラサラ度）は、ＭＣ−ＦＡＮ（株式会社 エムシー研究所製）等で測定することが出来る。また、本発明の穿刺針は採血時の痛みが少ないため、ストレスマーカーなどの採血時の刺激に影響を受ける懸念がある物質を測定するのに有用である。

以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。

｛２本接合採血針ａの製造｝
市販の中空ステンレス管を冷延伸し、一方の針先の第一研削角の角度を９から１３度の角度で３面カットにより鋭利な形状に加工する方法で、外径が０．８１ｍｍの栓体穿刺用
の針管と外径が０．３１ｍｍの人体穿刺用の２つの針管を用意した。樹脂製の採血針用の針基の部材に前記２本の針管を接着剤で接合したあと、栓体穿刺側にゴムカバーを装着した。ガンマ線で滅菌処理して、実施例１の２本接合採血針aを用意した。採血針aは図２（Ｂ）の構造である。

｛段構造 採血針ｂの製造｝
市販の中空ステンレス管からダイスによる引き抜き加工により、一端の外径が０．４５ｍｍもう一端の外径が０．３１ｍｍの段構造のパイプを作成した。次に、針管の両端の第一研削角の角度を角度９から１３度の角度で３面カットにより鋭利な形状に加工した。樹脂製の採血針用の針基の部材に前記段構造の針管を接着剤で接合したあと、太い外径（０．４５ｍｍ）側にゴムカバーを装着した。ガンマ線で滅菌処理して、実施例２の段構造採血針ｂを用意した。採血針ｂは図２（Ｆ）の構造である。

｛ストレート採血針ｃの製造｝
市販の中空ステンレス管を冷延伸し、両端の針先の第一研削角の角度を角度９から１３度の角度で３面カットにより鋭利な形状に加工し、外径が０．３１ｍｍの針管を用意した。樹脂製の採血針用の針基の部材に前記針管を接着剤で接合したあと、栓体穿刺側にゴムカバーを装着した。ガンマ線で滅菌処理して、比較例１のストレート採血針ｃを用意した。採血針ｃはストレートの一般的な採血針の構造である。

｛注射針eの製造｝
市販の中空ステンレス管を冷延伸し、一方の針先の第一研削角の角度を角度９から１３度の角度で３面カットにより鋭利な形状に加工し、外径が０．３１ｍｍの注射針用の針管を用意した。樹脂製の注射針用の針基の部材に前記針管を接着剤で接合し、ガンマ線で滅菌処理して、比較例３の注射針ｅを用意した。注射針ｅはストレートの一般的な注射針の構造である。

｛市販の採血針｝
比較例２の採血針ｄは、ＩＳＯ９６２６：１９９１に準拠した市販の採血針（２１Ｇ）を用意した。なお、外径と内径は針管を切削し、断面を光学顕微鏡（５０倍）を用いて写真撮影し、その画像より寸法を計測した。

それぞれの針管の寸法は表１に示す。なお、表１中の長さは針基に隠れている部分を除く、外に出ている長さを示す。

採血針ａ〜ｄを真空採血管用のホルダー「ベノジェクトIIホルダーＳ／テルモ製」に装着して実験に使用した。注射針ｅは市販の「ベノジェクトIIルアーアダプターＳ／テルモ製」を装着した後、真空採血管用のホルダー「ベノジェクトIIホルダーＳ／テルモ製」に接合して実験に使用した。なお、ルアーアダプタの針管の外径は０．８１ｍｍであった。

｛栓体穿刺性評価｝
採血針を装着したホルダーに真空採血管を２０回挿入し、ゴム栓に穿刺する際に針が曲がったりすることがあった場合は×、すべて問題なく穿刺できた場合は○として評価した。結果を表２に示す。真空採血管として、「ベノジェクトII真空採血管、ヘパリンＬｉ ５ｍＬ／テルモ製」と「ネオチューブＰＥＴ、ヘパリンＬｉ ４ｍＬ／ニプロ製」を１０本ずつ使用した。
実施例１、２および比較例２の採血針は栓体穿刺側の針管の外径が太く、問題なくゴム栓に穿刺をすることができた。また、注射針にルアーアダプタを装着した比較例３もルア
ーアダプタの外径は太く、問題なく穿刺することが出来た。一方、比較例１のストレート採血針ｃは栓体穿刺側の針管の外径が０．３１ｍｍで細いため、ゴム栓に穿刺をする際に、曲がったり、穿刺がしにくい場合があった。

｛痛みの評価｝
採血針を装着したホルダーで健常者１０名に対して穿刺を行い、痛みを感じたかどうかを評価した。痛みを感じたら１点、痛みを感じなかったら０点として、１０人の評価を合計した。９〜１０点は×、7〜８点は△、6点以下は○として評価結果を表２に示す。
実施例１から２、比較例１および比較例３は人体穿刺側の針管の外径が細く、痛みを感じることが少なかった。一方、比較例２の市販の採血針ｄでは、人体穿刺側の外径も太く、常に痛みを感じた。

｛作業性｝
採血針を取り出してから、穿刺までの作業の煩雑さを作業性として評価した。採血針の構造である実施例１から２および比較例１から２の採血針では、採血針をホルダーに装着したあと穿刺を行うだけであった（結果を表２に○として示す。）が、比較例３の注射針の場合は、注射針をルアーアダプタに装着し、さらにホルダーに装着し穿刺を行わなければならず、採血までの操作が煩雑であった。さらに、ルアーアダプタのコストがかかること、ルアーアダプタの廃棄物がでること等、採血針での採血に比較し、コスト・環境面等で不利なことが分かった（結果を表２に×として示す。）。

人体穿刺用の針管の先端の外径が細く、栓体穿刺用の針管の先端の外径が太い実施例１から実施例２の採血針は、問題なくゴム栓を穿刺することが可能であり、採血時の痛みも少なかった。一方、比較例１のストレートの採血針は採血時の痛みは少なかったが、ゴム栓に穿刺する際に、針が曲がることがあった。また、比較例２の市販の採血針では、外径が太く、痛みが強かった。また、比較例３の注射針にルアーアダプタを装着して使用する方法では、人体穿刺側は細く、栓体穿刺側は太くすることも可能であるが、採血までの準備が煩雑であること、コスト・環境面で不利なことが分かった。

｛溶血の評価｝
健常者３名に実施例・比較例の採血針・注射針と、「ベノジェクトII真空採血管・ヘパリンＬｉ ５ｍＬ／テルモ製」を用いて採血を行い溶血の評価を行った。得られた全血を室温，３０００ｒｐｍで１０分間遠心分離して得た上清を回収し、ＵＶ−２５５０（島津製）で吸収スペクトルを測定し、ヘモグロビンの吸収に由来する４１５nmの吸光度の上昇で溶血を評価した。比較として、スミロンチューブにプールして中空針を通過させなかった全血を同一条件で遠心分離して得た血漿の吸光度を測定し、これに対するＯＤの上昇分を評価した。ＯＤの上昇分を溶血の度合いと定義し、ＯＤ＝０．１以上の上昇があれば溶血と判断した。実施例１、実施例２、比較例１から比較例３のすべての採血針において、採血後の血液の溶血はなしと判断した。

一般的な採血針の形態を示す概略図である。 （Ａ）本発明の採血針の外観図である。（Ｂ）本発明の採血針の一形態を示す概略図である。（Ｃ）本発明の採血針の一形態を示す概略図である。（Ｄ）本発明の採血針の一形態を示す概略図である。（Ｅ）本発明の採血針の一形態を示す概略図である。（Ｆ）本発明の採血針の一形態を示す概略図である。（Ｇ）本発明の採血針の一形態を示す概略図である。 本発明の穿刺針における針先のカット形状を示す説明図である。

符号の説明

（ａ） 人体穿刺用の針管
（ｂ） 針管（ハブ）
（ｃ） 栓体穿刺用の針管
（ｄ） 人体穿刺用の針管の先端
（ｅ） 栓体穿刺用の針管の先端
（ｆ） 人体穿刺用の針管の基端
（ｇ） 栓体穿刺用の針管の基端
ａ 第一研削角
ｂ 第二研削角

Claims (8)

1. 針基の一方の側に人体穿刺用の針管、他方の側に採血管の栓体穿刺用の針管が設けられた採血針であって、前記人体穿刺用の針管の先端の外径と栓体穿刺用の針管の先端の外径が異なることを特徴とする採血針。
2. 前記栓体穿刺用の針管の先端の外径が人体穿刺用の針管の先端の外径より大きいことを特徴とする請求項１に記載の採血針。
3. 前記針基に刃の向きを示す印があることを特徴とする請求項１または２に記載の採血針。
4. 前記人体穿刺用の針管の先端の外径が０．４２ｍｍ以下であることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の採血針。
5. 前記人体穿刺用の針管の先端の外径が０．２６ｍｍ以上０．３４ｍｍ以下であり、該針管の先端の内径が０．１７ｍｍ以上であることを特徴とする請求項１〜４のいずれかに記載の採血針。
6. 請求項１〜５のいずれかに記載の採血針と検査チップを具備することを特徴とする検査キット。
7. 請求項１〜５のいずれかに記載の採血針と真空採血管を具備することを特徴とする採血キット。
8. 請求項７に記載の真空採血管の内容量が１．５ｍＬ以下であることを特徴とする採血キット。
   
   

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