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JP2007039567A - 高周波電子部品用複合成形体及び高周波電子部品用複合成形体製造用組成物 - Google Patents

高周波電子部品用複合成形体及び高周波電子部品用複合成形体製造用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 高周波帯域、特にGHz帯域における誘電損失(ないしtanδ)を低減させることができる高周波電子部品用成形体、その製造法、該成形体を用いた電子部品等を提供する。
【解決手段】 マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が0.0001重量%〜0.1重量%含有されることを特徴とする高周波電子部品用複合成形体、その製造法、該成形体製造用の樹脂組成物、該成形体又は樹脂組成物を用いて形成される電子部品等。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高周波電子部品用複合成形体及び高周波電子部品用複合成形体製造用組成物に関する。より詳しくは、本発明は、低誘電正接を具備し、電子部品の製造用に好適な樹脂成形体に関する。また、本発明はかかる樹脂成形体の製造法、高周波電子部品用複合成形体の製造用の組成物、該樹脂成形体を備えた電子部品や印刷配線板に関する。
近年、通信情報量の急増に伴い、PHS、携帯電話等の情報通信機器の小型化、軽量化、高速化が強く望まれており、これに対応できる低誘電性電気絶縁材料が要求されている。特に自動車電話、デジタル携帯電話等の携帯移動体通信、衛星通信などのモバイル通信機器等に使用される電波の周波数帯域はメガからギガHz帯の高周波帯域のものが使用されている。また、使用可能波長帯域が減少していることにより、マイクロ波・ミリ波帯といった高周波帯域の利用が進んできている。また、コンピュータのCPUクロックタイムはGHz帯に達し、高周波数化が進行している。このような高周波帯域に対応した通信機の小型化、軽量化のためには、優れた高周波伝送特性と低誘電性特性とをあわせ持つ電気絶縁材料の開発が必要である。
電子機器の小型化、高性能化に伴い、その中に搭載される印刷配線板は、高多層化、薄物化、スルーホールの小径化及び穴間隔の減少などによる高密度化が進行している。
さらに、携帯電話やモバイルコンピュータ等の情報端末機器に搭載される印刷配線板にはMPUを印刷配線板上に直接搭載するプラスチックパッケージや各種モジュール用の印刷配線板を中心に大容量の情報を高速に処理することが求められており、信号処理の高速化や低伝送損失化、更なるダウンサイジングが必要となっている。
そのため印刷配線板はより一層高密度化が進み、これまで以上の微細配線が要求されるとともに誘電特性に優れた材料で構成することが求められている。
このようなMPUを搭載する印刷配線板やモジュール用印刷配線板には、これまで以上の接続信頼性を確保するために耐熱性に優れた高Tg材料が求められている。また、高速信号処理に対応するために、低誘電率・低誘電正接材料が求められている。
しかし、高Tg樹脂材料は硬くて脆い特性を有するため、銅箔との接着性に劣るという欠点がある。加えて、低誘電率・低誘電正接材料は、樹脂骨格の極性基を少なくするために、銅箔との接着性に劣ると言う欠点がある。
銅箔との接着性が低い樹脂材料では、基板の成形や実装の際にラインの剥離や断線を起こし易く、今後微細配線化が進むにつれ、銅箔との接着性は重要な特性となる。
電子機器の回路基板材料には、多くの場合、比誘電率や誘電正接等の誘電特性が低く、耐熱性や機械的強度等の物理的特性に優れることが要求される。比誘電率(ε)とは、誘電体内の分極の程度を示すパラメーターであり、比誘電率が高い程電気信号の伝播遅延が大きくなる。従って、信号の伝播速度を高め、高速演算を可能にするためには、比誘電率は低い方が好ましい。誘電正接(tanδ)は、誘電体内を伝播する信号が熱に変換されて失われる量を示すパラメーターであり、誘電正接が低い程信号の損失が少なくなり、信号伝達率が向上する。
即ち、素子回路内では誘電損失といわれる伝送過程におけるエネルギー損失が生じるが、このエネルギー損失は熱エネルギーとして素子回路内に放出されるため好ましくない。このエネルギー損失は、低周波帯域においては、誘電分極によって生じた双極子が電界変化により振動するために生ずるものであり、高周波帯域においては、イオン分極や電子分極によって生ずるものである。交番電界1サイクル当たり誘電体中で消費されるエネルギーと誘電体中に蓄えられるエネルギーの比を誘電正接といい、tanδで表される。
tanδは高周波帯域では周波数の増加にともなって増大し、また電子素子の高密度実装化により単位面積当たりの発熱量が多くなるので、絶縁材料の誘電損失を少しでも小さくするためには、tanδの小さな材料を用いる必要がある。誘電損失の小さい低誘電性高分子材料を用いることにより、誘電損失および電気抵抗による発熱が抑制され、その結果、信号の誤作動も少なくなることから、高周波通信分野においては伝送損失(エネルギーロス)の少ない材料が強く望まれている。
電気絶縁性であり、低誘電率である等の電気特性を有する材料として、通常、ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、架橋性ポリフェニレンオキサイド、硬化性ポリフェニレンエーテル等の熱硬化性樹脂などが、次の特性を満足させるため種々開発されている。
・積層板のドリル加工性、切削加工性
・高耐熱性
・低線膨張率
・金属導体層との密着性ないし接着性(銅箔密着性)
・機械的強度
・薄膜形成能
・比誘電率を比較的広範囲に渡って任意に設定することが可能
・絶縁性
・耐候性
・誘電特性が温度、湿度に対して依存性が少ない。
しかしながら、上記樹脂には下記のような問題点がある。
(1)ポリオレフィン
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンは、C−C結合等の共有結合を有し、且つ大きな極性基を持たないため、電気特性、特に絶縁抵抗性に優れているが、耐熱性が低いという欠点がある。このため高温下での使用における電気特性(誘電損失、比誘電率など)が悪化して、コンデンサー等の絶縁膜(層)として好適とはいえない。
ポリエチレンやポリプロピレンは、一旦フィルムとして形成させ、これを接着剤を用いて導電材料に被覆接着しているが、この方法は加工工程が複雑となるばかりでなくフィルム形成層の厚みを薄くすることが非常に難しいなど、被覆形成上の問題もある。
(2)塩化ビニル樹脂
塩化ビニル樹脂は、絶縁抵抗性が高く、耐薬品性、難燃性に優れているが、ポリオレフィンと同様耐熱性に欠け、誘電損失が大きいという欠点がある。
(3)フッ化ビニリデン樹脂、トリフルオロエチレン樹脂、およびパーフルオロエチレン樹脂
フッ素原子を分子鎖中に含有しているこれら重合体は、電気特性(低誘電率、低誘電損失)、耐熱性、化学安定性に優れているが、熱可塑性樹脂のように熱処理加工することによって成形物、あるいはフィルム等を得るというような成形加工性、塗膜形成能に難があり、且つデバイス化を行う際、かなりのコスト高となる。さらに透明性が低いため応用分野が限られているという欠点がある。
(4)エポキシ樹脂
従来から印刷配線板にはエポキシ樹脂をジシアンジアミドで硬化させる系が広く一般に用いられてきた。しかしながら、ジシアンジアミド硬化系では吸湿性が高くなる欠点があり、今後の印刷配線板の更なる高密度化に伴う高い絶縁信頼性を満足することは困難となっている。
これに対して、多官能性フェノール樹脂を硬化剤に用いた系では、吸水率が低く、さらに170℃以上のTgを有する印刷配線板を得ることができる。
ただし、このような多官能性フェノールを用いた印刷配線板は、フェノール類の種類によっては加熱処理時に変色する問題が生じる場合がある。
特公昭62−28168号公報では、この加熱変色性を向上させる目的で、フェノールまたはビスフェノールAを主原料とするハイオルソフェノール・ホルムアルデヒド樹脂を配合した系を提案しているが、前述のように高Tg樹脂材料は硬くて脆い上、多官能フェノール硬化系はジシアンジアミド硬化系と比較して樹脂の極性が低いため銅箔との接着力は低い。
銅箔と樹脂の接着性を向上させる手法としては、特開昭54−48879号公報のようなカップリング剤等による銅箔処理が以前から行なわれてきたが、高Tg樹脂材料のような硬くて脆い樹脂系では市販のカップリング剤で処理した程度の樹脂との化学的結合の強化では従来のFR−4材の接着性よりも劣り、十分ではない。
また、シランカップリング剤による銅箔処理では回路形成後の基板表面に残渣が残り、その後のめっき工程でのめっき汚染性やソルダーレジストとの接着性に悪影響を及ぼす場合もある。
(5)ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、熱硬化性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエチレンテレフタレート
誘電性・絶縁抵抗性に優れた低誘電率材料にさらに求められる性能として、デバイス化工程のなかに必ず半田付け工程が入るため少なくとも260℃で120秒の加熱に耐え得るだけの耐熱性が要求され、耐熱性、耐アルカリ性等の化学的安定性、および耐湿性や機械的特性に優れたものでなければならない。これらの要求を満足する高分子素材として、例えばポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、熱硬化性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエチレンテレフタレート等が知られている。しかし、これら樹脂であっても、誘電損失がGHz帯域では大きくなってくる。
このように前述した特性を達成するには樹脂単独では種々の難点があるため、樹脂に添加剤を添加して、樹脂の電気的性質を改善することが提案されている。例えば、合成樹脂に特定のケイ酸金属塩系繊維状物を特定量配合すると、高周波域での使用に支障をきたす程の比誘電率及び誘電正接の上昇を伴うことなく、熱伝導性、耐熱性及び機械的強度をも向上させることができ、加えて、配合する樹脂の種類によっては、比誘電率を同程度に維持したまま、誘電正接を著しく低下させ得るので、従来、合成樹脂が適用されてきた電気・電子部品とは異なった電気的用途である回路基板材料、特に高周波用の回路基板材料として極めて好適に使用できることが提案されている(特許文献1)。
より具体的には、該特許文献1では、熱可塑性樹脂(ポリアミド樹脂を除く)及び/又は熱硬化性樹脂(フェノール樹脂を除く)に、一般式aMx Oy ・bSiO2 ・cH2 O(ここでa、b及びcは正の実数を示す。xが1の場合はyは1を、xが2の場合はyは1又は3をそれぞれ示す。MはMg、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Pb、Ba、W及びLiなる群より選ばれた少なくとも1種以上の金属元素を示す。)で表されるケイ酸金属塩系繊維状物質を主成分とする強化繊維を、上記樹脂及び上記繊維状物質の合計重量を基準として5〜60重量%の割合で配合してなることを特徴とする高周波電子部品用樹脂組成物を提案している。
しかし、上記特許文献1では、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に対する強化繊維の配合割合が少なくとも約5重量%以上であり、該強化繊維を大量に使用する必要がある。
また、特許文献2には、ポリマーマトリックス中にカーボンナノチューブが一定方向に配列されて複合された状態で成形されていることを特徴とするカーボンナノチューブ複合成形体が記載されており、該成形体は、電気的性質、熱的性質、機械的性質などについて異方性機能を発揮すると記載されている。該ポリマーマトリックスに配合するカーボンナノチューブの量としては、マトリックス100重量部当り、0.01〜100重量部の範囲が好ましく、この配合量が0.01重量部未満の場合には異方性機能を十分に発現できないと記載されている。
更に、特許文献3には、ポリマーマトリックスとポリマーマトリックス中に分散された複数のカーボンナノチューブとを含むナノ複合材料誘電体が記載されており、カーボンナノチューブのパーコレーション閾値付近の添加濃度で、マトリックス中に導電性成分が存在することにより誘電率を高めると同時に誘電正接も増大することを開示しているが、誘電正接を低減させることについては具体的には記載されていない。
特開平8−134263号公報 特開2002−273741号公報(請求項、段落0030参照) 特表2005―500648号公報(請求項参照)
本発明の主たる目的は、高周波帯域、特にGHz帯域における誘電損失(ないしtanδ)を低減させることができる高周波電子部品用成形体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、そのような、その高周波電子部品用成形体の製造法および該成形体を用いる電子部品を提供することにもある。
本発明者らは、上記目的達成のため鋭意検討した結果、次の知見を得た。
(a)マトリックスに、ナノチューブ又はナノワイヤを、特定範囲の少量で存在させると、高周波帯域、特にGHz帯域で誘電正接の上昇がマトリックス単体と比較して抑制される。
(b)有機樹脂マトリックス、及び、該有機樹脂マトリックス中に配列された状態で存在する複数のナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、該ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を、特定範囲の少量で存在させると、高周波帯域、特にGHz帯域で誘電正接の上昇がマトリックス単体と比較して抑制される。
(c)マトリックスに、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブを、特定範囲の少量で存在させると、高周波帯域、特にGHz帯域で誘電正接の上昇がマトリックス単体と比較して抑制される。
本発明は斯かる知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであって、次の電子部品用樹脂成形体、その製造法、電子部品等を提供するものである。
[項1] マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、マトリックス100重量部に対して0.0001重量部〜0.1重量部含有されることを特徴とする高周波電子部品用複合成形体。
[項2] 前記マトリックスが、低分子有機マトリックス、有機樹脂マトリックス、低分子無機マトリックス、無機樹脂マトリックスおよびそれらの複合物からなる群から選ばれることを特徴とする項1記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項3] 前記マトリックスが、有機樹脂マトリックスであることを特徴とする項1記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項4] 有機樹脂マトリックスを形成している有機樹脂が、
(i)熱可塑性樹脂、又は
(ii)熱硬化性樹脂、又は
(iii)放射線硬化性樹脂、又は
(iv)熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び放射線硬化性樹脂からなる群から選ばれる2種以上からなる複合樹脂、又は
(v)上記(i)〜(iv)の2種以上の混合物
であることを特徴とする項3に記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項5] 前記マトリックスの1GHzでの比誘電率が10未満であることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項6] 前記マトリックスの1GHzでの比誘電率が5未満であることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項7] 前記マトリックスの1GHzでの誘電正接が0.5未満であることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項8] 前記マトリックスが低分子有機マトリックス、有機樹脂マトリックスまたはその複合物であり、低分子有機マトリックス、有機樹脂マトリックス、またはそれらの複合体の融点、軟化点、もしくはガラス転移点のうちの最も低い温度が60℃以上500℃未満であることを特徴とする項1〜7のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項9] 前記マトリックスが低分子有機マトリックス、有機樹脂マトリックス又はその複合物であり、その融点、軟化点、もしくはガラス転移点のうちの最も低い温度又はそれよりも低い温度での線膨張率が1ppm以上1000ppm未満であることを特徴とする項1〜7のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項10] 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、導電性をもつ物質で形成されていることを特徴とする項1〜9のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項11] 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、カーボンナノチューブであることを特徴とする項1〜9のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項12] 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、アモルファスナノスケールカーボンチューブまたは遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブであり、1〜100nmの直径、及び10〜5000のアスペクト比を有する項1〜9のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項13] 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブであり、遷移金属の含有量が、遷移金属炭化物換算で、遷移金属ナノスケールカーボンチューブ重量の0.1wt%以上50wt%未満であることを特徴とする項1〜9のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項14] 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブであり、該遷移金属が、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする項1〜9のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項15] 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブであり、そのチューブ内空間部に、鉄、コバルト、ニッケル及びそれらの炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が存在しており、該鉄、コバルト、ニッケル及びそれらの炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の量が、遷移金属炭化物換算で、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブ重量の1重量%以上である項14に記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項16] ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種及び有機樹脂マトリックスを含み、該ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、一部同士による接続状態で、有機樹脂マトリックス100重量部に対して0.0001〜0.1重量部の割合で存在することを特徴とする高周波電子部品用複合成形体。
[項17] ナノチューブまたはナノワイヤ又はこれらの集合体が、0.5〜5.0μmの範囲の曲率を有する項16に記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項18] ナノチューブもしくはナノワイヤに含まれる、フリーのイオンが200ppm以下、ハロゲンの含有量が400ppm以下であることを特徴とする項16に記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項19] ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を、溶液状態、流動状態、又はガラス転移点以上もしくは融点以上の溶融状態にある有機樹脂に配合し、次いで、溶剤除去、光硬化反応、熱硬化反応、または冷却処理により有機樹脂を固化させて成形することを特徴とする高周波電子部品用複合成形体の製造方法。
[項20] 有機樹脂マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を、有機樹脂マトリックス100重量部に対して0.01重量部以上50重量部以下の濃度であらかじめ混合分散をし、その濃厚混合分散液を、有機樹脂マトリックスに、カーボンナノチューブもしくはナノワイヤが有機樹脂マトリックス100重量部に対して0.0001〜0.1重量部となるように分散させてなる樹脂組成物を製造し、次いで、溶剤除去、光硬化反応、熱硬化反応、または冷却処理により有機樹脂を固化させて成形することを特徴とする項19に記載の高周波電子部品用複合成形体の製造方法。
[項21] 電場又は磁場の印加下、有機樹脂マトリックス中においてナノチューブまたはナノワイヤの一部が互いに接続した状態で、固化させて成形することを特徴とする項19又は20に記載の高周波電子部品用複合成形体の製造方法。
[項22] 電場又は磁場の印加下、ナノチューブまたはナノワイヤの一部が互いに接続し、0.5〜5.0μmの曲率範囲を有するコイル状または円弧状の状態で、固化させて成形することを特徴とする項19又は20に記載の高周波電子部品用複合成形体の製造方法。
[項23] マトリックスが有機樹脂マトリックスであり、有機樹脂マトリクッスが、(a)エポキシ樹脂、(b)ビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物、(c)硬化促進剤及び (d)トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物、または尿素誘導体を除く化合物であって窒素含有率60重量%以下の化合物を必須成分として含有する項1記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項24] (b)ビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物をエポキシ樹脂のエポキシ基に対してフェノール性水酸基が0.5〜1.5当量の範囲、(c)硬化促進剤をエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部及び(d)トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物または尿素誘導体を含まない窒素含有率60重量%以下の化合物を、210℃の熱風乾燥炉中30分間の処理前後の重量比率から算出する樹脂固形分に対し窒素含有率が、0.1〜10重量%の範囲となるように含有する項23に記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項25] (a)〜(d)に加え、(e)難燃剤を含有する項23または24に記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項26] (e)の難然剤が、テトラブロモビスフェノールAまたはテトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルである項25に記載の高周波電子部品用複合成形体。
[項27] マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を、マトリックス100重量部に対して0.0001重量部〜0.1重量部含有することを特徴とする高周波電子部品用複合成形体用組成物。
[項28] 前記マトリックスが、有機樹脂マトリックスであることを特徴とする項27に記載の高周波電子部品用複合成形体用組成物。
[項29] 有機樹脂マトリックス中にナノチューブ又はナノワイヤを含む組成物が、電子部品用樹脂接着剤、樹脂絶縁膜、ソルダーレジスト又は半導体封止樹脂であることを特徴とする項28に記載の高周波電子部品用複合成形体用組成物。
[項30] 項27〜29のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体用組成物から形成されたことを特徴とする高周波電子部品用複合成形体。
[項31] 金属箔、及び、項29に記載の高周波電子部品用複合成形体用組成物の硬化層を備えていることを特徴とする樹脂付金属箔。
[項32] 項29に記載の高周波電子部品用複合成形体用組成物の硬化層を備えていることを特徴とする印刷配線板。
[項33] 項27に記載の高周波電子部品用複合成形体用樹脂組成物を用いることを特徴とする電気回路形成方法又は印刷配線板作成方法。
[項34] 項32に記載の印刷配線板を部品の一部として使用する電子部品。
[項35] 項32に記載の印刷配線板を部品の一部として使用する電気機器。
[項36] ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む有機樹脂マトリックスを、キャストまたはブレードすることにより形成される絶縁膜。
[項37] ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む有機樹脂マトリックスを、キャストまたはブレードすることを特徴とする絶縁膜の製造方法。
[項38] マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種がマトリックス100重量部に対して0.0001重量部〜0.1重量部含有される組成物をワニスとし、基材に含浸、乾燥して得られるプリプレグの少なくとも1枚以上を用いその片面又は両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形して金属張積層体を得、該金属張積層体において回路形成することを特徴とする印刷配線板。
[項39] マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種がマトリックス100重量部に対して0.0001重量部〜0.1重量部含有される組成物をワニスとし、該ワニスをフィルムの上に塗布乾燥して得られる絶縁膜フィルムを用いて得られる印刷配線板又は多層基板。
[項40] 有機樹脂マトリックス中にナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む電子部品用樹脂接着剤。
[項41] 項40に記載の電子部品用樹脂接着剤を用いて形成された樹脂絶縁膜、樹脂付金属箔、ソルダーレジスト又は半導体封止樹脂。
[項42] 項40に記載の電子部品用樹脂接着剤を用いて形成された樹脂絶縁膜、樹脂付金属箔、ソルダーレジスト、半導体封止樹脂を用いた電気回路又は印刷配線板。
[項43] 項40に記載の電子部品用樹脂接着剤を用いた電気回路形成方法又は印刷配線板作成方法。
本発明の成形体は誘電正接が低い。特に、本発明で使用するナノチューブ又はナノワイヤは、高周波側にて誘電正接の上昇するのをおさえる効果があるので、もともと誘電正接が低い物質をマトリックスとし、該マトリックスに混合分散させた場合、より高周波側での性能を改善することができる。また、感光性、成形加工などの機能を付与した樹脂マトリックスの誘電正接は増加傾向にある。本発明で使用するナノチューブ又はナノワイヤは、高周波側にて誘電正接の上昇するのをおさえる効果があるので、機能性のある樹脂マトリックスに混合分散することにより高周波領域の誘電正接を低減できる。
本発明は、上記のように、マトリックスにナノチューブ又はナノワイヤを含み、該ナノチューブ又はナノワイヤが、マトリックス100重量部に対して0.0001〜0.1重量部の割合で存在することを特徴とする高周波電子部品用複合成形体を提供するものである。
1.ナノチューブ及びナノワイヤ
本発明では、マトリックスに、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を分散させる。ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種は、導電性をもつ物質で形成されているのが好ましい。
(1)ナノチューブ
本発明で使用するナノチューブとしては、各種のものが使用できるが、例えば、ナノサイズの直径を有するカーボンチューブが例示できる。かかるナノサイズのカーボンチューブとしては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、アモルファスナノスケールカーボンチューブ、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブ等が例示できる。これらの詳細については、後述する。これらのナノチューブのサイズは、広い範囲のものが使用できるが、特に、直径が1〜100nm、特に、5〜70nmであり、長さが0.1〜50μm、特に0.2〜10μmであり、アスペクト比が10〜5000、特に20〜2000であるものが好ましい。
なお、上記直径は透過型電子顕微鏡観察により測定される値であり、長さはレーザー顕微鏡により測定される値であり、アスペクト比は、該透過型電子顕微鏡観察により測定される直径およびレーザー顕微鏡観察により測定される長さから計算される。
上記遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブとしては、遷移金属として、例えば、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1種又はこれらの炭化物を含有するものが例示できる。遷移金属の含有量は、遷移金属炭化物換算で、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブの0.1重量%以上50重量%未満であるものが例示される。
これら遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブのうちでも、上記遷移金属を、遷移金属炭化物換算で、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブ重量の1重量%以上、特に3〜20重量%含有しているものが、好ましい。
これらの遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブの中でも、(a)ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)炭化鉄又は鉄とからなり、該カーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に(b)の炭化鉄又は鉄が充填されている鉄−炭素複合体が好ましい。
また、単層又は多層カーボンナノチューブであって、鉄を含むものも使用できる。
カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは、黒鉛シート(即ち、黒鉛構造の炭素原子面ないしグラフェンシート)がチューブ状に閉じた中空炭素物質であり、その直径はナノメートルスケールであり、壁構造は黒鉛構造を有している。カーボンナノチューブのうち、壁構造が一枚の黒鉛シートでチューブ状に閉じたものは単層カーボンナノチューブと呼ばれ、複数枚の黒鉛シートがそれぞれチューブ状に閉じて、入れ子状になっているものは入れ子構造の多層カーボンナノチューブと呼ばれている。本発明では、これら単層カーボンナノチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブがいずれも使用できる。
本発明で使用できる単層カーボンナノチューブとしては、直径が 1〜 100nm程度、長さが0.1〜50μm程度のものが好ましく、直径が2〜70nm程度、長さが0.1〜20μm程度のものがさらに好ましく、特に、直径が3〜20nm程度、長さが0.2〜10μm程度のものが好ましい。
また、本発明で使用できる入れ子構造の多層カーボンナノチューブとしては、直径が10〜200nm程度、長さが0.1〜50μm程度のものが好ましく、直径が20〜100nm程度、長さが0.2〜5μm程度のものがさらに好ましく、特に、直径が20〜70nm程度、長さが0.2〜10μm程度のものが好ましい。
アモルファスナノスケールカーボンチューブ
また、上記アモルファスナノスケールカーボンチューブは、WO00/40509(日本国特許第3355442号)に記載されており、カーボンからなる主骨格を有し、直径が0.1〜1000nmであり、アモルファス構造を有するナノスケールカーボンチューブであって、直線状の形態を有し、X線回折法(入射X線:CuKα)において、ディフラクトメーター法により測定される炭素網平面(002)の平面間隔(d002)が3.54Å以上、特に3.7Å以上であり、回折角度(2θ)が25.1度以下、特に24.1度以下であり、2θバンドの半値幅が3.2度以上、特に7.0度以上であることを特徴とするものである。
該アモルファスナノスケールカーボンチューブは、マグネシウム、鉄、コバルト、ニッケル等の金属の塩化物の少なくとも1種からなる触媒の存在下で、分解温度が200〜900℃である熱分解性樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール等を、励起処理することにより得られる。
出発原料としての熱分解性樹脂の形状は、フィルム状乃至シート状、粉末状、塊状などの任意の形状であって良い。例えば、基板上に薄膜化アモルファスナノスケールカーボンチューブを形成させた炭素材料を得る場合には、基板上に熱分解性樹脂を塗布あるいは載置した状態で、適切な条件下に励起処理すればよい。
該励起処理としては、例えば、不活性雰囲気中、好ましくは450〜1800℃程度の温度域でかつ原料の熱分解温度以上で加熱する、室温〜3000℃程度の温度域でかつ原料の熱分解温度以上でのプラズマ処理する等の処理が例示できる。
本発明で使用するアモルファスナノスケールカーボンチューブは、アモルファス構造(非晶質構造)を有するナノスケールのカーボンナノチューブで、中空直線状であり、細孔が高度に制御されている。その形状は、主に円柱、四角柱などであり、先端の少なくとも一方が、キャップを有していない(開口している)場合が多い。先端が閉口している場合には、形状がフラット状である場合が多い。
該アモルファスナノスケールカーボンチューブの外径は、通常1〜1000nm程度の範囲にあり、好ましくは1〜200nm程度の範囲にあり、より好ましくは、1〜100nm程度の範囲にある。そのアスペクト比(チューブの長さ/直径)は2倍以上であり、好ましくは5倍以上である。
ここで、「アモルファス構造」とは、規則的に配列した炭素原子の連続的な炭素層からなる黒鉛質構造ではなく、不規則な炭素網平面からなる炭素質構造を意味し、多数の微細なグラフェンシートが不規則に配列している。代表的な分析手法である透過型電子顕微鏡による像からは、本発明による非晶質構造のナノスケールカーボンチューブは、炭素網平面の平面方向の広がりがアモルファスナノスケールカーボンチューブの直径の1倍より小さい。このように、アモルファスナノスケールカーボンチューブは、その壁部が黒鉛構造ではなく多数の微細なグラフェンシート(炭素網面)が不規則に分布したアモルファス構造を有しているため、最外層を構成する炭素網面は、チューブ長手方向の全長にわたって連続しておらず、不連続となっている。特に、最外層を構成する炭素網面の長さは、20nm未満、特に5nm未満である。
非晶質炭素は一般的にはX線回折を示さないが、ブロードな反射を示す。黒鉛質構造では、炭素網平面が規則的に積み重なっているので、炭素網平面間隔(d002)が狭くなり、ブロードな反射は高角側(2θ)に移行して、次第に鋭くなり(2θバンドの半値幅が狭くなり)、d002回折線として観測できるようになる(黒鉛的位置関係で規則正しく積み重なっている場合はd002=3.354Åである)。
X線回折法(入射X線=CuKα)において、ディフラクトメーター法により測定される本発明によるアモルファスナノスケールカーボンチューブの理論的な結晶学的特性は、以下の様に規定される:炭素網平面間隔(d002)は、3.54Å以上であり、より好ましくは3.7Å以上である;回折角度(2θ)は、25.1度以下であり、より好ましくは24.1度以下である;前記2θバンドの半値幅は、3.2度以上であり、より好ましくは7.0度以上である。
典型的には、本発明で使用するアモルファスナノスケールカーボンチューブは、X線回折による回折角度(2θ)が18.9〜22.6度の範囲内にあり、炭素網平面間隔(d002)は3.9〜4.7Åの範囲内にあり、2θバンドの半値幅は7.6〜8.2度の範囲内にある。
前記遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブのうち、前記鉄−炭素複合体について詳述すると次の通りである。
鉄−炭素複合体
本発明で使用する上記鉄−炭素複合体は、特開2002−338220号公報(特許第3569806号公報)に記載されており、(a)ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)炭化鉄又は鉄とからなり、該カーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に(b)の炭化鉄又は鉄が充填されている。即ち、チューブ内空間部の100%の範囲に完全に充填されているものではなく、上記炭化鉄又は鉄がそのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に充填されている(即ち、部分的に充填されている)ことを特徴とするものである。壁部は、パッチワーク状ないし張り子状(いわゆるpaper mache状)のナノフレークカーボンチューブである。
本願特許請求の範囲及び明細書において、「ナノフレークカーボンチューブ」とは、フレーク状の黒鉛シートが複数枚(通常は多数)パッチワーク状ないし張り子状(paper mache状)に集合して構成されている、黒鉛シートの集合体からなる炭素製チューブを指す。
かかる鉄−炭素複合体は、特開2002−338220号公報に記載の方法に従って、
(1)不活性ガス雰囲気中、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、反応炉内の酸素濃度を、反応炉容積をA(リットル)とし酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aが1×10-10〜1×10-1となる濃度に調整した反応炉内でハロゲン化鉄を600〜900℃まで加熱する工程、及び
(2)上記反応炉内に不活性ガスを導入し、圧力10−5Pa〜200kPaで熱分解性炭素源を導入して600〜900℃で加熱処理を行う工程
を包含する製造方法により製造される。
ここで、酸素量Bの単位である「Ncc」は、気体の25℃での標準状態に換算したときの体積(cc)という意味である。
該鉄−炭素複合体は、(a) ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)炭化鉄又は鉄とからなるものであって、該カーボンチューブ内空間部(即ち、チューブ壁で囲まれた空間)の実質上全てが充填されているのではなく、該空間部の一部、より具体的には10〜90%程度、特に30〜80%程度、好ましくは40〜70%程度が炭化鉄又は鉄により充填されている。
本発明で使用する鉄−炭素複合体においては、特開2002−338220号公報に記載されているように、炭素部分は、製造工程(1)及び(2)を行った後、特定の速度で冷却するとナノフレークカーボンチューブとなり、製造工程(1)及び(2)を行った後、不活性気体中で加熱処理を行い、特定の冷却速度で冷却することにより、入れ子構造の多層カーボンナノチューブとなる。
<(a-1)ナノフレークカーボンチューブ>
本発明のナノフレークカーボンチューブと炭化鉄又は鉄からなる鉄−炭素複合体は、典型的には円柱状であるが、そのような円柱状の鉄−炭素複合体(特開2002−338220号公の実施例1で得られたもの)の長手方向にほぼ垂直な断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図3に示し、側面のTEM写真を図1に示す。
また、図4の(a-1)にそのような円柱状のナノフレークカーボンチューブのTEM像の模式図を示す。図4の(a-1)において、100は、ナノフレークカーボンチューブの長手方向のTEM像を模式的に示しており、200は、ナノフレークカーボンチューブの長手方向にほぼ垂直な断面のTEM像を模式的に示している。
本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブは、代表的には、中空円筒状の形態を有し、その断面をTEM観察した場合、弧状グラフェンシート像が同心円状に集合しており、個々のグラフェンシート像は、不連続な環を形成しており、その長手方向をTEMで観察した場合、略直線状のグラフェンシート像が、長手方向にほぼ並行に多層状に配列しており、個々のグラフェンシート像は、長手方向全長にわたって連続しておらず、不連続となっているという特徴を有している。
より詳しくは、本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブは、図3及び図4の(a-1)の200から明らかなように、その長手方向に垂直な断面をTEM観察した場合、多数の弧状グラフェンシート像が同心円状(多層構造のチューブ状)に集合しているが、個々のグラフェンシート像は、例えば210、214に示すように、完全に閉じた連続的な環を形成しておらず、途中で途切れた不連続な環を形成している。一部のグラフェンシート像は、211に示すように、分岐している場合もある。不連続点においては、一つの不連続環を構成する複数の弧状TEM像は、図4の(a-1)の222に示すように、層構造が部分的に乱れている場合もあれば、223に示すように隣接するグラフェンシート像との間に間隔が存在している場合もあるが、TEMで観察される多数の弧状グラフェンシート像は、全体として、多層状のチューブ構造を形成している。
また、図1及び図4の(a-1)の100から明らかなように、ナノフレークカーボンチューブの長手方向をTEMで観察した場合、多数の略直線状のグラフェンシート像が本発明で使用する鉄−炭素複合体の長手方向にほぼ並行に多層状に配列しているが、個々のグラフェンシート像110は、鉄−炭素複合体の長手方向全長にわたって連続しておらず、途中で不連続となっている。一部のグラフェンシート像は、図4の(a-1)の111に示すように、分岐している場合もある。また、不連続点においては、層状に配列したTEM像のうち、一つの不連続層のTEM像は、図4の(a-1)の112に示すように、隣接するグラフェンシート像と少なくとも部分的に重なり合っている場合もあれば、113に示すように隣接するグラフェンシート像と少し離れている場合もあるが、多数の略直線状のTEM像が、全体として多層構造を形成している。
かかる本発明のナノフレークカーボンチューブの構造は、従来の多層カーボンナノチューブと大きく異なっている。即ち、図4の(a-2)の400に示すように、入れ子構造の多層カーボンナノチューブは、その長手方向に垂直な断面のTEM像が、410に示すように、実質上完全な円形のTEM像となっている同心円状のチューブであり、且つ、図4の(a-2)の300に示すように、その長手方向の全長にわたって連続する直線状グラフェンシート像310等が平行に配列している構造(同心円筒状ないし入れ子状の構造)である。
以上より、詳細は未だ完全には解明されていないが、本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブは、フレーク状のグラフェンシートが多数パッチワーク状ないし張り子状に重なり合って全体としてチューブを形成しているようにみえる。
このような本発明のナノフレークカーボンチューブとそのチューブ内空間部に内包された炭化鉄又は鉄からなる鉄−炭素複合体は、特許第2546114号に記載されているような入れ子構造の多層カーボンナノチューブのチューブ内空間部に金属が内包された複合体に比し、カーボンチューブの構造において大きく異なっている。
本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブをTEM観察した場合において、その長手方向に配向している多数の略直線状のグラフェンシート像に関し、個々のグラフェンシート像の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。即ち、図4の(a-1)の100に示されるように、110で示される略直線状のグラフェンシートのTEM像が多数集まってナノフレークカーボンチューブの壁部のTEM像を構成しており、個々の略直線状のグラフェンシート像の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。
このように、鉄−炭素複合体においては、その壁部を構成するナノフレークカーボンチューブの最外層は、チューブ長手方向の全長にわたって連続していない不連続なグラフェンシートから形成されており、その最外面の炭素網面の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。
本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブの壁部の炭素部分は、上記のようにフレーク状のグラフェンシートが多数長手方向に配向して全体としてチューブ状となっているが、X線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するものである。
また、本発明で使用する鉄−炭素複合体のナノフレークカーボンチューブからなる壁部の厚さは、49nm以下、特に0.1〜20nm程度、好ましくは1〜10nm程度であって、全長に亘って実質的に均一である。
<(a-2)入れ子構造の多層カーボンナノチューブ>
前記のように、工程(1)及び(2)を行った後、特定の加熱工程を行うことにより、得られる鉄−炭素複合体を構成するカーボンチューブは、入れ子構造の多層カーボンナノチューブとなる。
こうして得られる入れ子構造の多層カーボンナノチューブは、図4の(a-2)の400に示すように、その長手方向に垂直な断面のTEM像が実質的に完全な円を構成する同心円状のチューブであり、且つ、その長手方向の全長にわたって連続したグラフェンシート像が平行に配列している構造(同心円筒状ないし入れ子状の構造)である。
本発明で使用する鉄−炭素複合体を構成する入れ子構造の多層カーボンナノチューブの壁部の炭素部分は、X線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するものである。
また、本発明で使用する鉄−炭素複合体の入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる壁部の厚さは、49nm以下、特に0.1〜20nm程度、好ましくは1〜10nm程度であって、全長に亘って実質的に均一である。
<(b)内包されている炭化鉄又は鉄>
本明細書において、上記ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブ内空間部の炭化鉄又は鉄による充填率(10〜90%)は、本発明で使用する鉄−炭素複合体を透過型電子顕微鏡で観察し、各カーボンチューブの空間部(即ち、カーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)の像の面積に対する、炭化鉄又は鉄が充填されている部分の像の面積の割合である。
炭化鉄又は鉄の充填形態は、カーボンチューブ内空間部に連続的に充填されている形態、カーボンチューブ内空間部に断続的に充填されている形態等があるが、基本的には断続的に充填されている。従って、本発明で使用する鉄−炭素複合体は、金属内包炭素複合体ないし鉄化合物内包炭素複合体、炭化鉄又は鉄内包炭素複合体とも言うべきものである。
また、本発明で使用する鉄−炭素複合体に内包されている炭化鉄又は鉄は、カーボンチューブの長手方向に配向しており、結晶性が高く、炭化鉄又は鉄が充填されている範囲のTEM像の面積に対する、結晶性炭化鉄又は鉄のTEM像の面積の割合(以下「結晶化率」という)は、一般に、90〜100%程度、特に95〜100%程度である。
内包されている炭化鉄又は鉄の結晶性が高いことは、本発明鉄−炭素複合体の側面からTEM観察した場合、内包物のTEM像が格子状に配列していることから明らかであり、電子線回折において明確な回折パターンが得られることからも明らかである。
また、本発明で使用する鉄−炭素複合体に炭化鉄又は鉄が内包されていることは、電子顕微鏡、EDX(エネルギー分散型X線検出器)により容易に確認することができる。
<鉄−炭素複合体の全体形状>
本発明で使用する鉄−炭素複合体は、湾曲が少なく、直線状であり、壁部の厚さが全長に亘ってほぼ一定の均一厚さを有しているので、全長に亘って均質な形状を有している。その形状は、柱状で、主に円柱状である。
本発明による鉄−炭素複合体の外径は、通常、1〜100nm程度、特に1〜50nm程度の範囲にあり、好ましくは1〜30nm程度の範囲にあり、より好ましくは10〜30nm程度の範囲にある。チューブの長さ(L)の外径(D)に対するアスペクト比(L/D)は、5〜10000程度であり、特に10〜1000程度である。
本発明で使用する鉄−炭素複合体の形状を表す一つの用語である「直線状」なる語句は、次のように定義される。即ち、透過型電子顕微鏡により本発明で使用する鉄−炭素複合体を含む炭素質材料を200〜2000nm四方の範囲で観察し、像の長さをWとし、該像を直線状に伸ばした時の長さをWoとした場合に、比W/Woが、0.8以上、特に、0.9以上となる形状特性を意味するものとする。
本発明で使用する鉄−炭素複合体は、バルク材料としてみた場合、次の性質を有する。即ち、本発明では、上記のようなナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブから選ばれるカーボンチューブのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に鉄または炭化鉄が充填されている鉄−炭素複合体は、顕微鏡観察によりかろうじて観察できる程度の微量ではなく、多数の該鉄−炭素複合体を含むバルク材料であって、鉄−炭素複合体を含む炭素質材料、或いは、炭化鉄又は鉄内包炭素質材料ともいうべき材料の形態で大量に得られる。
特開2002−338220号公報の実施例1で製造されたナノフレークカーボンチューブとそのチューブ内空間部に充填された炭化鉄からなる本発明炭素質材料の電子顕微鏡写真を、図2に示す。
図2から判るように、本発明で使用する鉄−炭素複合体を含む炭素質材料においては、基本的にはほとんど全ての(特に99%又はそれ以上の)カーボンチューブにおいて、その空間部(即ち、カーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)の10〜90%の範囲に炭化鉄又は鉄が充填されており、空間部が充填されていないカーボンチューブは実質上存在しないのが通常である。但し、場合によっては、炭化鉄又は鉄が充填されていないカーボンチューブも微量混在することがある。
また、本発明の炭素質材料においては、上記のようなカーボンチューブ内空間部の10〜90%に鉄または炭化鉄が充填されている鉄−炭素複合体が主要構成成分であるが、本発明の鉄−炭素質複合体以外に、スス等が含まれている場合がある。そのような場合は、本発明の鉄−炭素質複合体以外の成分を除去して、本発明の炭素質材料中の鉄−炭素質複合体の純度を向上させ、実質上本発明で使用する鉄−炭素複合体のみからなる炭素質材料を得ることもできる。
また、従来の顕微鏡観察で微量確認し得るに過ぎなかった材料とは異なり、本発明で使用する鉄−炭素複合体を含む炭素質材料は大量に合成できるので、その重量を容易に1mg以上とすることができる。
本発明炭素質材料は、該炭素質材料1mgに対して25mm2以上の照射面積で、CuKαのX線を照射した粉末X線回折測定において、内包されている鉄または炭化鉄に帰属される40°<2θ<50°のピークの中で最も強い積分強度を示すピークの積分強度をIaとし、カーボンチューブの炭素網面間の平均距離(d002)に帰属される26°<2θ<27°のピークの積分強度Ibとした場合に、IaのIbに対する比R(=Ia/Ib)が、0.35〜5程度、特に0.5〜4程度であるのが好ましく、より好ましくは1〜3程度である。
本明細書において、上記Ia/Ibの比をR値と呼ぶ。このR値は、本発明で使用する鉄−炭素複合体を含む炭素質材料を、X線回折法において25mm2以上のX線照射面積で観察した場合に、炭素質材料全体の平均値としてピーク強度が観察されるために、TEM分析で測定できる1本の鉄−炭素複合体における内包率ないし充填率ではなく、鉄−炭素複合体の集合物である炭素質材料全体としての、炭化鉄又は鉄充填率ないし内包率の平均値を示すものである。
尚、多数の本発明鉄−炭素複合体を含む炭素質材料全体としての平均充填率は、TEMで複数の視野を観察し、各視野で観察される複数の鉄−炭素複合体における炭化鉄又は鉄の平均充填率を測定し、更に複数の視野の平均充填率の平均値を算出することによっても求めることができる。かかる方法で測定した場合、本発明で使用する鉄−炭素複合体からなる炭素質材料全体としての炭化鉄又は鉄の平均充填率は、10〜90%程度、特に40〜70%程度である。
本発明で使用できる上記鉄−炭素複合体のうち、例えば、次の仕様のものが市販されており、入手容易である。
直径:20〜40 nm、
長さ:数μm〜数十μm
純度:>90%(純度は、5,000倍のSEM観察で、100視野について、鉄−炭素複合体が存在する確率)
組成:C=85 〜 95 wt%、H>0.1 wt%、N>0.01 wt%、Fe=5 〜 15 wt%
嵩密度:O.1〜0.2 g/cm3
XRD:
・結晶ピークの同定:グラファイト、Fe3C
・グラファイトの結晶性:(002)ピークの半価幅 = 0.9
・Fe3C/グラファイト比 = Fe3C(102)/C(002) =0.05〜2.0
(2) ナノワイヤ
本発明で使用するナノワイヤとしては、各種のものが使用できるが、導電性のものが好ましく、例えば、Au、Ag、Sn、SiC、TiO、VO2、WO2、RuO2、ReO2、CrO2、MoO2、Fe3O4等からなるナノワイヤを例示することができる。
これらナノワイヤは、それ自体公知であるか又は公知の方法例えば、CVD法等に従い製造できる。
これらナノワイヤは、各種のものが使用できるが、なかでも、長さが0.1〜50μm、特に0.2〜10μmであり、直径が1〜100nm、特に5〜70nmであり、アスペクト比が10〜5000、特に20〜2000であるものが好ましい。
本発明では、上記(1)のナノチューブ及び上記(2)のナノワイヤを併用することもできる。上記(1)のナノチューブ及び上記(2)のナノワイヤの中でも、ナノチューブもしくはナノワイヤに含まれるフリーのイオン、例えば、遷移金属イオン、アルカリ金属イオン等が200ppm以下、特に150ppm以下であり、ハロゲンの含有量が400ppm以下、特に300ppm以下であるものが好ましい。かかるナノチューブ又はナノワイヤは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法により得られる。上記のフリーのイオンやハロゲンは印刷回路基板に100ppm以上含まれるとイオンマイグレーションによる故障の原因になる。そのため、フリーイオンは200ppm以下、ハロゲンは400ppm以下であることが好ましい。
2.マトリックス
本発明においてマトリックスとは、ナノチューブ又はナノワイヤを分散させ、成形体を形成するための結合材料である。具体的には、ナノチューブ又はナノワイヤの形状を有さず、常温で固体の、電気絶縁性の有機又は無機の材料が全て含まれる。
マトリックスとしては、種々のものを使用できるが、例えば、低分子有機マトリックス、有機樹脂マトリックス、低分子無機マトリックス、無機樹脂マトリックス又はそれらの複合物からなるマトリックスが例示できる。
上記低分子有機マトリックスを構成する材料としては、結晶性低分子化合物を混合してガラス状態化したような物質や低分子でマトリックスを形成できるものであれば何でもよく、例えば電子材料としてはフタロシアニンやベンゾシクロブテン等が知られている。また、特開平8-321217、11-116663などにみられるような物質が例示できる。
上記有機樹脂マトリックスを構成する材料としては、この分野で使用されている各種の有機樹脂を挙げることができる。
上記無機樹脂マトリックスを構成する材料としては、水素化シルセシキオキサン、メチルシルセスキオキサン、水素化メチルシルセスキオキサンなどのシロキサン系材料などを例示できる。
上記各種マトリックスを構成する材料を複数種類用いてそれらの複合物を用いたマトリックスを用いてもよい。
更に、マトリックスを構成する材料としては、例えば、無機化合物(例えば、ポリシロキサン、フッ素化酸化ケイ素、ホスファゼン等)、有機無機複合膜(例えば、シリコーン、トリフロロメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシメチルシラン等からできる有機シリカ膜、有機マトリックスに無機化合物が充填されたもの、有機無機ハイブリッド膜等)を例示でき、樹脂以外のマトリックスとして、上記のようなフタロシアニン、ベンゾシクロブテン等をマトリックスとして使うことも可能である。
なかでも、有機樹脂からなるマトリックスが好ましい。マトリックスとして使用される有機樹脂としては、広い範囲のものを使用することができ、例えば、(i)熱可塑性樹脂、(ii)熱硬化性樹脂、(iii)放射線硬化性樹脂、及び(iv)熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂の中の2種類以上からなる複合樹脂、又は、(v)上記(i)〜(iv)の2種以上の混合物が使用できる。これらのマトリックスの例は「次世代ULSI多層配線の新材料、プロセス技術」(2000年技術情報協会)、「変貌する実装材料・積層技術-高周波、高密度、低温焼結、環境への対応-」(2003年TIC)に詳しい。なかでも、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との複合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましく使用できる。
<熱可塑性樹脂>
上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ1−ブテン樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリ四フッ化エチレン樹脂、ポリ三フッ化エチレン樹脂等のフッ素樹脂;その他ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を例示できる。
<放射線硬化性樹脂>
上記放射線硬化性樹脂としては、電子部品等の分野で使用されているものが広く使用でき、基本的には二重結合を2個以上もつ化合物を使用することで可能となるが、さらにはより精細なパターンを形成するために側鎖に二重結合と水性現像可能を行うためのカルボキシル基を付与したものが使用できる。紫外線硬化型として使用されていることが多い。これら放射線硬化性樹脂としては、例えば、特開昭61−243869、特開2002−294131、特開2005-154780等に記載のものが使用できる。
典型的には、放射線硬化性樹脂としては、「エポキシ基を2個以上含む化合物」に「カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体」を反応させたものが挙げられる。
ここで「エポキシ基を2個以上含む化合物」としてはフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂(例えばダイセル化学工業社製「EHPE−3150」)、およびトリス(ヒドロキシフェニル)メタンの誘導体である多官能エポキシ樹脂(例えば、日本化薬(株)製EPPN−502H、およびダウケミカル社製タクテックス−742及びXD−9053等)等のエポキシ樹脂がある。
また「エポキシ基を2個以上含む化合物」としては、次のようなエポキシ化合物とエチレン性不飽和単量体との共重合体も使用できる。即ち、エポキシ化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレートや2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル(メタ)アクリレート類、および(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類等が挙げられる。また、上記のエチレン性不飽和単量体としては、脂肪族又は脂環族のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートやメトキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレングリコールエステル系(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールエステル系(メタ)アクリレートおよびプロピレングリコール系(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド系化合物;N−置換マレイミド系化合物;ビニルピロリドン;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル;スチレン;α−メチルスチレン;およびビニルエーテル等が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸とメタクリル酸とを総称するものであり、(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートとを総称するものである。
「カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体」としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸および2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のエチレン性不飽和基を1個有するもの、並びにペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する多官能アクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られるもののようなエチレン性不飽和基を複数有するものが挙げられる。これらの中でもカルボキシル基を1個有するものが好ましく、特に(メタ)アクリル酸を用いるか、(メタ)アクリル酸を主成分として用いるのが好ましい。(メタ)アクリル酸により導入されるエチレン性不飽和基は光反応性に優れるからである。これらの「カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体」はそれぞれ、単独で、または適宜組み合わせて使用できる。
また、側鎖に二重結合と水性現像可能を行うためのカルボキシル基を付与したものとしては、上記の「エポキシ基を2個以上含む化合物」に「カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体」を反応させたものにさらに、次のような「多価カルボン酸無水物」を反応させたものが上げられる。「多価カルボン酸無水物」としては、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物、並びに無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびメチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物等の3塩基酸以上の酸無水物が挙げられる。これらの「多価カルボン酸無水物」はそれぞれ、単独で、または適宜組み合わせて使用できる。
<熱硬化性樹脂>
上記熱硬化性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、架橋性ポリフェニレンオキサイド、硬化性ポリフェニレンエーテル、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA、レゾルシン等から合成される各種ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、スピロ環式エポキシ樹脂を例示できる。
<複合樹脂>
上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との複合樹脂としては、ポリフェニレンエーテル・エポキシ樹脂、ポリアミドイミド・エポキシ樹脂、ポリアミド・エポキシ樹脂、ポリアミドイミド・ポリイミド樹脂等を例示できる。
更に、本発明において、高周波用途として好ましいマトリックスとしては、「エレクトロニクス用樹脂 低誘電率ポリマーの技術動向」(1999年東レリサーチセンター)に書かれている樹脂が好適であり、具体的には、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、COPNA、ポリベンゾイミダゾール、フッ素樹脂、フッ素化ポリマー、非晶性ポリオレフィン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリナフタレン、ポリインダン、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、ポリキノリン、ポリフェニルキノキサリン、シアネート樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルニトリル、芳香族ポリエーテルなどの樹脂が挙げられる。
なかでも、有機樹脂マトリックスが、(a)エポキシ樹脂、(b)ビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物、(c)硬化促進剤及び(d)トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物、または尿素誘導体を含まない窒素含有率60重量%以下の化合物を必須成分として含有するのが好ましい。
更に、(b)ビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物をエポキシ樹脂のエポキシ基に対してフェノール性水酸基が0.5〜1.5当量の範囲、(c)硬化促進剤をエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部及び(d)トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物、または尿素誘導体を含まない窒素含有率60重量%以下の化合物を樹脂固形分に対し窒素含有率が、0.1〜10重量%の範囲となるように含有するのが好ましい。
必要であれば、上記(a)〜(d)に加え、(e)難燃剤を含有させることもできる。
上記(a)のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のグリシジルエーテル化物、二官能アルコールのグリシジルエーテル化物、ポリフェノール類のグリシジルエーテル化物及びそれらの水素添加物、ハロゲン化物などが挙げられ特に制限するものではない。これらの化合物は何種類かを併用することができる。
また、上記(b)のビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物は、上記(a)のエポキシ樹脂の硬化剤として機能するものであり、その分子量については制限がなく、ビスフェノールAモノマーが含まれていても良い。
また、(b)成分としては、ビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物以外の硬化剤を併用してもよく、例えば、ビスフェノールF、ポリビニルフェノールまたはフェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコール、ビスフェノールFなどを原料としたノボラック樹脂などが挙げられる。これらの化合物の分子量についても制限がなく、何種類かを併用することができる。
(b)成分の配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ基に対してフェノール性水酸基が0.5〜1.5当量の範囲であることが好ましい。この範囲を外れると誘電特性や耐熱性に劣るようになる。
上記(c)の硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基のエーテル化反応を促進させるような触媒機能を持つ化合物であればどのようなものでもよく、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、イミダゾール化合物、有機りん化合物、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩などが例示できる。なかでも、イミノ基がアクリロニトリル、イソシアネート、メラミンアクリレートなどでマスク化されたイミダゾールを用いると、従来の2倍以上の保存安定性を有するプリプレグを得ることができるので好ましい。
ここで用いられるイミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどがあり、マスク化剤としては、アクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メラミンアクリレートなどがある。
これらの硬化促進剤は何種類かを併用してもよく、配合量はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。0.01重量部未満であると促進効果が小さく、5重量部を超えると保存安定性が悪くなる。
上記(d)のトリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物、または尿素誘導体を含まない窒素含有率60重量%以下の化合物としては、例えば、芳香族アミン型エポキシ樹脂、脂肪族アミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、シアヌレート類、イソシアヌレート類、メラミン類、フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類との付加縮合物およびそのグリシジルエーテル化物などがあるが、特に制限するものではない。これらの化合物はどのようなものでもよく、また、何種類かを併用することができる。これらの化合物は印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体に用いる全樹脂固形分に対して窒素含有率が0.1〜10重量%となるよう配合量することが好ましい。窒素含有率が0.1重量%未満であると銅箔との接着性の向上は難しく、10重量%を超えると吸水率が高くなる。ここで、全樹脂固形分は、210℃の熱風乾燥炉中30分間の処理前後の重量比率から算出する樹脂固形分である。
上記(f)の難然剤は、一般に難燃剤と称されるものであればどのようなものでもよく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ポリビニルフェノール、またはフェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコールなどのノボラック樹脂などのハロゲン化物、グリシジルエーテル等があるが、特に制限するものではなく、また三酸化アンチモン、テトラフェニルホスフィンなどを併用してもよい。なかでも、該難然剤として、テトラブロモビスフェノールAまたはテトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテル等を挙げることができる。
本発明では、(a)エポキシ樹脂、(b)ビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物、(c)硬化促進剤及び(d)トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物、または尿素誘導体を含まない窒素含有率60重量%以下の化合物を用いることにより、吸湿性が低く、優れた耐熱性と加熱変色性を有し、かつ銅箔との接着性が良好な印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体およびそれを用いた印刷配線板を得ることができる。
すなわち、本発明の一実施形態に係る高周波電子部品用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体を用いた印刷配線板は、(a)エポキシ樹脂、(b)ビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物、(c)硬化促進剤及び(d)トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物、または尿素誘導体を含まない窒素含有率60重量%以下の化合物及び(e)ナノチューブ又はナノワイヤからなる印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体である。
また、本発明は、(b)ビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物をエポキシ樹脂のエポキシ基に対してフェノール性水酸基が0.5〜1.5当量の範囲、(c)硬化促進剤をエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部及び(d)トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物または尿素誘導体を含まない窒素含有率60重量%以下の化合物を樹脂固形分に対し窒素含有率が、0.1〜10重量%の範囲となるように含有する印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体である。
さらに、本発明の一実施形態は、上記の(a)〜(e)に加え、(f)難燃剤を含有する印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体であり、(f)の難然剤がテトラブロモビスフェノールAまたはテトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルである印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体である。
また、本発明は、上記の印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体製造用の樹脂組成物をワニスとし、基材に含浸、乾燥して得られるプリプレグの少なくとも1枚以上を用いその片面又は両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形して得られる印刷配線板である。
また、さらには、紫外線や可視光、X線、電子線、赤外線等の放射線で硬化可能な印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体である。
本発明の放射線性樹脂組成物に用いる放射線は、波長の長いものから順に、赤外線、可視光線、紫外線、電子線、X−線、α−線、β−線、γ−線等を使用することができる。これらの中で、経済性及び効率性の点から、実用的には、紫外線が最も好ましい放射線である。本発明に用いる紫外線は、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、あるいはアーク灯、キセノンランプ等のランプから発振される紫外光を好適に使用することができる。紫外線よりも、波長の短い前記放射線は、化学反応性が高く、理論的には紫外線より優れているが経済性の観点から紫外線が実用的である(参考 特開2003-176344)。
また、前記した各種の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、放射線硬化性樹脂等の樹脂をポリマーアロイとして混合したもの、これらの樹脂どうしを化学結合で結合させたもの、これら樹脂どうしのブロックポリマーやグラフトポリマーなども含まれる。
また、本発明では上記樹脂の重合前のポリマー前駆体、もしくはモノマーの状態で加熱や光重合、その他化学反応により成形後に上記樹脂となる有機樹脂マトリックス前駆体、配合体のようなものも上記樹脂マトリックスに含まれる。
また、樹脂マトリックスの比誘電率としては、1GHzで10未満、特に、5未満であることが好ましく、4未満であることが更に好ましく、3.5未満であることが更に好ましい。比誘電率が10以上である場合には樹脂マトリックスの誘電率を上げることにより誘電正接などの特性が犠牲になるので、高周波側で損失が大きく高周波用の電子材料としては好ましくない。樹脂マトリックスの誘電正接の値は0.5未満であることが好ましく、0.4未満が更に好ましく、0.3未満であることが更に好ましい。誘電正接の値が0.5以上の場合、もともとの高周波での損失が大きく、高周波用の電子材料としては好ましくない。
また、樹脂マトリックスの融点、もしくは軟化点、もしくはガラス転移点のうちで最も低い温度が60℃〜500℃であることが好ましく、80℃〜450℃であることが更に好ましく、100℃〜400℃であることが更に好ましい。60℃未満では半田耐熱性などが不十分であり、500℃以上の場合、ナノチューブやナノワイヤがナノ状態での形状や分散状態を保つ形態をとどめることが難しくなるためである。
また、前記有機樹脂マトリックスの融点、軟化点、もしくはガラス転移点のうちで最も低い温度又はそれより低い温度での線膨張率が1ppm以上1000ppm未満、特に1〜300ppmであるのが好ましい。なお、本明細書において、上記線膨張率は、ASTM D 696に従い測定した値である。これらの各有機樹脂マトリックスの物性値はプラスチック・データブック(工業調査会1999年)に詳しい。
3.高周波電子部品用複合成形体
本発明の樹脂成形体は、前記マトリックス中に、前記ナノチューブ及び/又はナノワイヤを含有するものである。
特に、本発明の樹脂成形体は、上記のように、マトリックス中にナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、マトリックス100重量部に対して0.0001〜0.1重量部の割合で存在することを特徴とする高周波電子部品用複合成形体である。
ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種の配合量は、マトリックス100重量部に対して0.001〜0.01重量部であることが好ましい。
ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種は、上記マトリックス中に分散しておれば十分である。
しかしながら、本発明者の研究によると、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、上記有機樹脂マトリックス中に配列した状態で分散しているのが好ましい。従って、本発明は、有機樹脂マトリックス、及び、該有機樹脂マトリックス中に配列された状態で存在する複数のナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、該ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、レーザー顕微鏡観察により測定した場合に、マトリックス100重量部に対して0.0001〜0.1重量部で存在することを特徴とする高周波電子部品用複合成形体を提供するものである。
ここで、上記配列の状態は特に限定されず各種の配列状態を含むが、例えば、ナノチューブ及びナノワイヤが部分的に連鎖した状態や、ナノチューブ及びナノワイヤが一部同士による接続した状態(即ち、ナノチューブ又はナノワイヤの一部が互いに接続した状態)や、ナノチューブ及びナノワイヤがマクロ的にネットワークするのではなく孤立した凝集状態や、0.5〜5.0μm範囲の曲率を有するコイル状または円弧状に凝集した状態の配列を挙げることができる。
上記配列状態の測定手段としては、例えば、レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡で観察する方法を挙げることができる。
なお、上記レーザー顕微鏡で観察すると、観察した部分(体積)におけるナノチューブ又はナノワイヤを測定した量を求め、体積%を計算する。こうして測定される量(体積%)は、重量%による量に換算することができる。換算法は、次の通りである。
W1=(ρ1×V1)×100/((ρ1×V1)+(ρ2×V2))
W2=100−W1
ここで、上記式中、ρ1、V1、W1は、それぞれ、ナノチューブ又はナノワイヤの密度と体積%と重量%を示し、ρ2、V2、W2は、それぞれ、マトリックスの密度と体積%と重量%を示す。
なお、ナノチューブが分散した成形体をレーザー顕微鏡により観察する場合、次のような原理でカーボンナノチューブを検出する(図5参照)。即ち、樹脂とカーボンナノチューブと屈折率の違いにより、レーザー光の焦点を結んだ位置情報を取り込み、測定厚みΔtで得られた画像データの合成写真が得られる。焦点を結んだ点は白い点になるので、画像処理をすることにより、体積%を求めることが出来る。測定した体積は、測定面積×測定厚みである。
更に、本発明では、0.5〜5.0μmの範囲の曲率半径を有するナノチューブまたはナノワイヤ又はこれらの集合物が上記のように配列されているのが好ましい。より具体的には、個々の(1本1本の)ナノチューブまたはナノワイヤが、上記曲率半径を有する(要するに、ナノチューブ又はナノワイヤ自体が曲がっている)か、又は、複数のナノチューブ又はナノワイヤが集合してなる集合物が上記曲率半径を有するのが好ましい。ここで、上記曲率半径はレーザー顕微鏡を用いて測定した値である。
上記集合物は、ナノチューブ又はナノワイヤが複数本、特に2〜100本程度集合してなり、直径が1〜100nm程度、特に2〜70nm程度であり、長さが0.1〜20μm程度、特に0.2〜10μm程度のひも状又はコイル状又は円弧状の集合体である。
これらの中でも、有機樹脂マトリックスにおいて、ナノチューブまたはナノワイヤ又はこれらの集合物の平均隣接距離が、0.1〜10μm、特に0.1〜7μmの範囲で配列されているものが好ましい。
ここで、平均隣接距離は、有機マトリクスに分散したナノチューブまたはナノワイヤ又はこれらの集合物をレーザー顕微鏡で観察して求めた値である。具体的には、本発明の成形体をレーザー顕微鏡で撮影した写真において、ナノチューブまたはナノワイヤ又はこれらの集合物の存在数により観察視野の体積を割った値より1本の占める体積が求められるので、1本の占める体積の3乗根を平均隣接距離とした。
また、ナノチューブまたはナノワイヤ又はこれらの集合物の平均隣接距離は次のように求められる。レーザー顕微鏡観察により観察できたナノチューブまたはナノワイヤ又はこれらの集合物の個数と観察した体積より平均隣接距離を求める。0.1〜10μmの範囲でナノチューブまたはナノワイヤの一部同士による接続状態(即ち、ナノチューブ又はナノワイヤの一部が互いに接続した状態)であることが好ましい形態である。
また、有機樹脂マトリックス中にナノチューブまたはナノワイヤが電場又は磁場の加わる方向に部分的に凝集配列されているのが好ましい。
特に、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブ、特に前記鉄−炭素複合体(即ち、(a)ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)炭化鉄又は鉄とからなり、該カーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に(b)の炭化鉄又は鉄が充填されている鉄−炭素複合体)を使用する場合は、マトリックス、特に有機樹脂からなるマトリックス100重量部当たり、0.0001〜0.1重量部程度、特に、0.001〜0.01重量部含有されていることが好ましい。
4.高周波電子部品用複合成形体の製造法及び該製造法に使用する樹脂組成物
本発明の高周波電子部品用複合成形体を製造するには、常法に従って、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を、前記低分子有機マトリックス、有機樹脂マトリックス、低分子無機マトリックス、無機樹脂マトリックスおよびそれらの複合物等のマトリックス材料中に分散させればよい。この分散方法としては、たとえば、通常のカーボンブラック等の炭素化合物に用いられる分散方法や、無機フィラー等を分散させるために用いる方法を特に制限なく採用することができる。
例えば、ナノチューブ、ナノワイヤの表面をプラズマやコロナ、電子線等で処理したり、カップリング材のようなもので表面を改質させたり、界面活性剤等を吸着させたりする方法が知られている。
本発明の一つの好ましい実施形態において、本発明の成形体は、ナノチューブまたはナノワイヤを、溶液状態、流動状態、又はガラス転移点以上もしくは融点以上の溶融状態にある有機樹脂に配合し、次いで、溶剤除去、光硬化反応、熱硬化反応、又は冷却処理の方法により有機樹脂を固化させて成形することにより製造される。
前記マトリックスが、低分子有機マトリックス、有機樹脂マトリックス、低分子無機マトリックス、無機樹脂マトリックスおよびそれらの複合物である場合、好ましい製造方法としては、例えば、次の(A前処理工程、(B)マスターバッチ材料作製工程、(C) 成形材料作製処理工程、および、(D)成形工程を備えた方法を例示できる。
(A)前処理工程
ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を、樹脂および適当な有機溶媒と混合し、例えば、遊星ミルなどで混合する。また、通常のカーボン分散のための処理、たとえばプラズマをかける、表面を酸化させる、カップリング剤などで処理する、界面活性剤を付着させる等の処理を採用することもできる。
この前処理工程で使用する樹脂としては、前記有機樹脂マトリックスとして使用する有機樹脂でもよいし、異なった有機樹脂を使用してもよい。
この前処理工程においては、一般には、有機溶媒を使用するのが好ましい。かかる有機溶媒としては、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン、n-メチルピロリドン(NMP)、シクロヘキサン、ヘキサン等が例示できる。有機溶媒の使用量は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、ナノチューブ又はナノワイヤに対して10〜100重量%程度である。
(B)マスターバッチ材料作製工程
上記前処理工程(A)により前処理されたナノチューブ又はナノワイヤと、前記マトリックスを構成する材料(即ち、前記有機樹脂等)とを、適当な分散装置、例えば、セラミック3本ロールの分散処理に供することにより、ナノチューブ又はナノワイヤをマトリックス材料(樹脂等)に均一分散させ、マスターバッチ材料を調製する。該マスターバッチの濃度は、広い範囲から適宜選択することができるが、一般には、樹脂100重量部に対して、ナノチューブ又はナノワイヤが0.01〜50重量部、特に、0.01重量部〜10重量部、殊に0.05〜10重量部であるのが好ましい。
(C)成形材料作製工程
この工程では、調合組成に従い、上記マスターバッチ処理工程で得られたマスターバッチと、マトリックス材料(前記樹脂等)で均一に希釈する。この希釈方法としては、各種の方法が採用できるが、例えば、混合・分散・脱泡装置(例えば、商品名「あわとり練太郎」、株式会社シンキー製)により、マスターバッチを、マトリックス材料(樹脂等)により希釈混合する方法を例示できる。好ましくは、この工程にてベースポリマーとマスターバッチ材料を剪断応力により部分的に凝集した配列構造を成形材料の中に作製する。
より詳しくは、有機樹脂マトリックス中にナノチューブ、もしくはナノワイヤを有機樹脂マトリックス100重量部に対して、ナノチューブ又はナノワイヤが0.01〜50重量部、特に、0.01重量部〜10重量部、好ましくは0.05〜10重量部の濃度であらかじめ混合分散をし、その濃厚混合分散液を用いて有機樹脂マトリックス100重量部に対してカーボンナノチューブもしくはナノワイヤが0.0001〜0.1重量部となるように分散させることにより、高周波電子部品用複合成形体用の樹脂組成物を製造する。
従って、本発明は、上記工程(C)について記載した樹脂組成物、即ち、マトリックス(特に、有機樹脂マトリックス)中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を、該マトリックス100重量部に対して0.0001重量部〜0.1重量部含有することを特徴とする高周波電子部品用複合成形体用組成物を提供するものである。
(D)成形工程
この成形工程(D)では、上記工程(C)で得られた樹脂組成物を成形する。成形法としては各種の方法が採用でき、例えば、溶剤除去、光硬化反応、熱硬化反応、又は冷却処理、その他、塗布、加熱処理等を行い成形する。
また、好ましくは、ナノチューブ又はナノワイヤの配列構造を積極的に方向性を付与する場合には、所望の方向に剪断力を加えても良く、また、前記遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブ、特に、鉄を包含するナノスケールカーボンチューブを用いた樹脂組成物では電場又は磁場を印加しても良い。
電場又は磁場の印加下で上記樹脂組成物の成形を行うと、ナノチューブまたはナノワイヤの一部が互いに接続し、0.5〜5.0μmの曲率範囲を有するコイル状または円弧状の状態で、固化させて成形することができる。従って、本発明の一実施形態によると、電場又は磁場の印加下、ナノチューブまたはナノワイヤの一部が互いに接続し、0.5〜5.0μmの曲率範囲を有するコイル状または円弧状の状態で、固化させて成形することを特徴とする高周波電子部品用複合成形体の製造方法が提供される。
また、本発明の成形方法の一実施形態として、上記工程(C)で得られた、有機樹脂マトリックス100重量部に対してカーボンナノチューブもしくはナノワイヤを0.0001〜0.1重量部含有する樹脂組成物を、常法に従って、樹脂ワニスにし、フィルム上に層を形成するか、或いは、そのまま基板に塗布して成形する等の方法を採用することもできる。
上記樹脂ワニス及び該ワニスを用いた成形方法(成形体製造法)について、説明すると、次の通りである。
本発明に係る印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体を基材に塗布、含浸する際には溶剤を用いてもよい。それらの溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどがあり、これらは何種類かを併用してもよい。
前記「2.マトリックス」の欄で述べたように成分(a)〜(e)を配合して得た印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体ワニスは、ガラス布、ガラス不織布または紙、ガラス以外を成分とする布などの基材に含浸させ、乾燥炉内で80〜200℃の範囲で乾燥させることにより、印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体のプリプレグを得る。
プリプレグは、例えば、150〜250℃、20〜80Kgf/cm2、0.1〜3時間の範囲で加熱加圧して印刷配線板または金属張積層板を製造することに用いられる。
ここでの乾燥とは、溶剤を使用した場合には溶剤を除去すること、溶剤を使用しない場合には室温で流動性がなくなるようにすることをいう。
更に、本発明に従って前記所定量のナノチューブ又はナノワイヤを含む前記有機樹脂マトリックスを、又は、前記ワニスをキャストまたはブレードすることにより絶縁膜を製造することもできる。
従って、本発明は、ナノチューブ又はナノワイヤを含む有機樹脂マトリックスを、キャストまたはブレードすることを特徴とする絶縁膜の製造方法、並びに、該製造方法により得られる絶縁膜を提供するものでもある。
5.電子部品
本発明の成形体は、低誘電正接を具備しているので、電気・電子機器の回路基板材料、特にGHz帯域用の回路基板材料として好適に使用できる。より具体的には、本発明の成形体は、印刷配線板、樹脂絶縁膜、樹脂付金属箔、ソルダーレジスト又は半導体封止樹脂、インターポーザー等の電子部品を製造するのに適している。
また、上記工程(c)で得られる本発明の樹脂組成物は、前記のように、有機樹脂マトリックス中にナノチューブ又はナノワイヤを含むものであり、電子部品用樹脂接着剤、ソルダレジストインキ等として有用である。
従って、本発明は、マトリックス、特に有機樹脂マトリックス中にナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれた少なくとも1種を前記所定量含む電子部品用樹脂接着剤を提供するものでもある。
上記有機樹脂マトリックス中にナノチューブ又はナノワイヤを前記所定量含む、電子部品用樹脂組成物(ないし接着剤)は、樹脂絶縁膜、樹脂付金属箔、ソルダーレジスト又は半導体封止樹脂等の製造にも有用である。本発明の樹脂組成物(ないし接着剤)を使用してこれら樹脂絶縁膜、樹脂付金属箔、ソルダーレジスト又は半導体封止樹脂等を製造する方法は、当業者によく知られており、これらの分野で公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、上記のように、本発明のナノチューブ又はナノワイヤを前記所定量含む有機樹脂マトリックスからなる樹脂組成物(ないし接着剤)を、キャストまたはブレードする、或いはスクリーン印刷、各種ロールコータ等を使用することにより絶縁膜を製造することができる。
従って、本発明は、有機樹脂マトリックス中にナノチューブ又はナノワイヤを前記所定量含む電子部品用樹脂組成物乃(ないし接着剤)を用いて形成された樹脂絶縁膜、樹脂付金属箔、ソルダーレジスト又は半導体封止樹脂を提供するものでもある。
更に、上記樹脂絶縁膜、樹脂付金属箔、ソルダーレジスト、半導体封止樹脂等は、常法に従って、電気回路又は印刷配線板の製造に適用される。従って、本発明は、有機樹脂マトリックス中にナノチューブ又はナノワイヤを含む電子部品用樹脂組成物(ないし接着剤)を用いて形成された樹脂絶縁膜、樹脂付金属箔、ソルダーレジスト、半導体封止樹脂を用いた電子部品、印刷配線板を提供するものでもある。
また、本発明の上記組成物(ないし接着剤)を用いると容易に電気回路又は印刷配線板が製造できる。例えば、本発明の樹脂組成物からなる接着剤を常法に従ってワニスとし、基材に含浸、乾燥して得られるプリプレグの少なくとも1枚以上を用いその片面又は両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形して得られる印刷配線板ないし電気回路を製造することができる。
従って、本発明は、本発明のナノチューブまたはナノワイヤを前記所定量含有する組成物をワニスとし、基材に含浸、乾燥して得られるプリプレグの少なくとも1枚以上を用い、その片面又は両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形して得られる金属張積層板を得、該金属張積層板において回路形成することを特徴とする印刷配線板を提供するものでもある。
更に、本発明の一実施形態によると、マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種がマトリックス100重量部に対して0.0001重量部〜0.1重量部含有される組成物をワニスとし、該ワニスをフィルムの上に塗布乾燥して得られる絶縁膜フィルムを用いて得られる印刷配線板又は多層基板も提供される。
更に、上記で得られる電気回路又は印刷配線板を用いて、電子部品又は電気機器を得ることができる。従って、本発明は、上記電気回路又は印刷配線板、および電気回路を部品の一部として使用する、電子部品又は電気機器を提供するものでもある。
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではなく、各種の変更が可能である。
実験1及び2
実験1(下記の実施例1〜6及び比較例1〜3)及び実験2(下記の実施例7〜9及び比較例4及び5)においては、下記の有機樹脂マトリックス及びナノチューブを使用した。
即ち、有機樹脂マトリックスとして、熱硬化性エポキシ樹脂(1)(日立化成工業株式会社製 高Tg材料、主成分としてビスフェノールA ジグリシジルエーテルモノマー)、または熱硬化性エポキシ樹脂(2)(日立化成工業株式会社製 低誘電率材料、ビスフェノールAジグリシジルエーテルモノマーの芳香環メチル基置換体、芳香環構造・COOH基を含む成分)を使用した。
熱硬化性エポキシ樹脂(1)と熱硬化性エポキシ樹脂(2)それぞれの1GHzにおける比誘電率は3.33、2.832、誘電正接は0.0450、0.0069であり、ガラス転移点の温度は60℃以上500℃未満であった。
ナノチューブ(鉄−炭素複合体)として、次の鉄−炭素複合体(1)及び(2)を表1に記載の割合で使用した。表1は、上記熱硬化性エポキシ樹脂の固体分の100重量部に対するナノスケールカーボンチューブの配合量(重量部)を示している。
<ナノチューブ(1)>
このナノチューブ(1)は、前記特許第3569806号公報に記載の方法に従い製造された鉄−炭素複合体であり、ナノフレークカーボンチューブのチューブ内空間部に炭化鉄を部分的に内包しており、次の物性を有する:
外径:20〜100nm
長さ:5μm以下
炭化鉄の含有量:10wt%
この鉄炭素複合体(1)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図6に示す。
<ナノチューブ(2)>
このナノチューブ(2)は、多層カーボンナノチューブ内に鉄を含むものであり、次の物性を有する:
外径:10〜50nm
長さ:5μm以下
炭化鉄の含有量:3wt%
このナノチューブ(2)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図7に示す。
なお、ナノチューブとして使用したナノチューブ(1)(鉄−炭素複合体)及びナノチューブ(2)(鉄含有多層カーボンナノチューブ)に含まれるFeの含有量はICP分析による組成分析、TEM観察とXRDによる結晶構造解析、TG/DTAの重量減少量より炭化鉄FeCとして、それぞれ9.1wt%と3.7wt%であった。
実施例1〜6
<(A)前処理工程及び(B)マスターバッチ材料作製工程>
熱硬化性エポキシ樹脂(1)と、ナノチューブ(1)又は(2)(鉄−炭素複合体)とメチルエチルケトン(ナカライテスク株式会社製)をウルトラソニックホモジナイザーで混合した後、湿式ジェットミルで混合攪拌し、ナノチューブを樹脂に均一分散させた前処理工程及びマスターバッチ工程によりマスターバッチ材料(樹脂100重量部に対するナノチューブの添加量は0.25重量部)を得た。
<(C)成形材料作製工程>
上記(A)及び(B)の処理をして得られたマスターバッチ材料と熱硬化性エポキシ樹脂(1)を、混合・分散・脱泡装置(商品名「あわとり練太郎」、株式会社シンキー製)により、マスターバッチ材料を感光性樹脂により希釈混合することにより成形材料を得た。
<(D)成形工程>
引き続き、上記処理した成形材料、即ち、熱硬化性エポキシ樹脂(1)または熱硬化性エポキシ樹脂(2)と鉄−炭素複合体との複合材料を、真空中にて真空脱溶剤し、スペーサで形成した型に材料を充填し、加熱プレス成形して、厚み2mm、幅150mm、長さ50mmの板状成形体を得た。更にこの成形体より切断して2mmx2mmx150mmの誘電特性評価サンプルを作製した。
こうして得られた実施例1〜5の評価用サンプルをレーザー顕微鏡で観察したところ、使用した上記ナノチューブによって、一部同士による接続状態(即ち、ナノチューブの一部が互いに接続した状態)で凝集した湾曲部が1〜10μmの曲率半径の配列構造を有していた。
比較例1〜3
鉄−炭素複合体の使用量を、上記熱硬化性エポキシ樹脂の固体分100重量部に対して、表1に記載の量とする以外は実施例1〜5と同様にして比較のための評価用サンプルを得た。
こうして得られた比較用評価サンプルについてレーザー顕微鏡で観察したところ、比較例1ではナノチューブが添加されていないので、何も観察されなかった。比較例2〜3ではナノチューブの添加量が過剰であるため、使用した上記ナノチューブが連続した接続状態で凝集した構造をしていた。
試験例1
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られたサンプルについて、空洞共振器法(JIS R1641 ファインセラミックス基板のマイクロ波誘電特性の試験方法)に従い、誘電正接(tanδ)を測定した。5GHzでの測定結果を表1に示す。
表1において、「変化量%」は、ナノチューブを添加していない有機樹脂マトリックスの誘電正接を基準値にして評価サンプルの誘電正接の変化量を基準値で割った値である。誘電正接が低下すれば変化量はマイナスとなり、GHz帯域で有機樹脂マトリックスの誘電正接低減の効果が得られることを示す。一方、誘電正接が増大すればプラスの変化量になるので、効果がないことを示す。
表1は、樹脂(1)とナノチューブ(1)の組合せで作製した成形体の誘電正接tanδの評価結果である。ナノチューブを添加しない比較例1に比べて、本発明の範囲にある実施例1〜実施例3では誘電正接の減少が見られる。比較例2ではナノチューブを発明の範囲以上に添加した場合、誘電正接は大幅に増加した。
なお、「変化量%」は5.0GHzにおける比較例1のtanδ=0.0453に対する増減の割合%を示している。
実施例7〜9
熱硬化性エポキシ樹脂(2)を使用し、鉄−炭素複合体(ナノチューブ(1))の使用量を表2に記載の量とする以外は実施例1〜6と同様にして評価用サンプルを得た。
こうして得られた実施例7〜9の評価用サンプルをレーザー顕微鏡で観察したところ、使用した上記ナノチューブによって、一部同士による接続状態(即ち、ナノチューブの一部が互いに接続した状態)で凝集した湾曲部が1〜10μmの曲率半径の配列構造を有していた。
比較例4及び5
熱硬化性エポキシ樹脂(2)を使用し、鉄−炭素複合体(ナノチューブ(1))の使用量を表2に記載の量とする以外は実施例1及び2と同様にして評価用サンプルを得た。
こうして得られた比較例4ではナノチューブが添加されていないので、何も観察されなかった。比較例5はナノチューブの添加量が過剰であるため、使用した上記ナノチューブが連続した接続状態で凝集した構造をしていた。
試験例2
上記実施例7〜9及び比較例4及び5で得られた評価用サンプルについて、試験例1と同様にして、誘電正接を測定した。結果を表2に示す。尚、表2において、「変化量%」は、5.0GHzにおける比較例4のtanδ=0.0074に対する増減の割合%を示している。
表2は、樹脂(2)とナノチューブ(1)の組合せで作製した成形体の誘電正接tanδの評価結果である。ナノチューブを添加しない比較例4に比べて、本発明の範囲にある実施例7〜9では誘電正接の減少が見られる。
実験3
実施例10〜17
有機樹脂マトリックスとして、エポキシアクリレート樹脂(日本化薬社製 EAM−2160)に、光重合開始剤(日本化薬社製 DETX−S)2wt%、光重合促進剤(日本化薬社製 EPA)2wt%を混合した感光性樹脂を使用した。
使用した上記エポキシアクリレート樹脂の1GHzにおける比誘電率は3.33、誘電正接は0.037、ガラス転移点の温度は60℃以上500℃未満であった。
遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブとして、実施例1〜9で使用したナノチューブ(1)およびナノチューブ(2)を使用した。
<(A)前処理工程>
上記樹脂、ナノチューブ(1)又は(2)、アセトン(ナカライテスク株式会社製)、酸化ジルコニアボール(東レ製)を遊星ミル(フレッチュジャパン製)により400rpmで1時間混合後、酸化ジルコニアボールを除去し、アセトンを乾燥除去し、前処理した遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブを得た。
<(B)マスターバッチ材料作製工程>
上記前処理したナノチューブ(1)およびナノチューブ(2)と感光性樹脂とを、セラミック3本ロール(ノリタケカンパニー製、NR−42A)により混合し、ナノチューブを樹脂に均一分散させ、マスターバッチ材料を得た(樹脂100重量部に対するカーボンナノチューブの添加量はナノチューブ(1)が0.1重量部、ナノチューブ(2)が0.26重量部)。
<(C) 成形材料作製工程>
下記表5の調合組成に従い、上記処理したマスターバッチ材料と感光性樹脂を、混合・分散・脱泡装置(商品名「あわとり練太郎」、株式会社シンキー製)により、表3と表4に示すように、マスターバッチ材料を感光性樹脂により希釈混合することにより成形材料を得た。
<(D)成形工程>
上記で得られた成形材料を円筒形のモールドに入れて水銀灯(500W)で紫外線(照射線量:6J/cm)を照射し、円筒形の成型体を得た。この成型体の中央部をくりぬいて、評価用サンプルを得た。この評価用サンプルは、同軸状加工物で、ドーナツ型の形状をしており、外径が7mm、内径が3.1mm、高さ(厚み)が1〜3mmである。
こうして得られた実施例10〜17の評価用サンプルをレーザー顕微鏡で観察したところ、使用した上記ナノチューブによって、一部同士による接続状態(即ち、ナノチューブの一部が互いに接続した状態)で凝集した湾曲部が1〜10μmの曲率半径の配列構造を有していた。
比較例6〜8
ナノチューブ(1)およびナノチューブ(2)の使用量を、表5に記載の量とする以外は実施例10〜17と同様にして比較のための評価用サンプルを得た。
こうして得られた比較例6〜8の評価用サンプルをレーザー顕微鏡で観察したところ、比較例6ではカーボンナノチューブが添加されていないので、何も観察されなかった。比較例7及び8は、カーボンナノチューブの添加量が過剰であるため、使用した上記ナノチューブが連続した接続状態で凝集した構造をしていた。
試験例3:同軸法による誘電正接の測定
上記実施例10〜17及び比較例6〜8で得られた評価用サンプルについて、同軸法により、誘電正接を測定した。
同軸法によるGHz帯域における複素誘電率の評価は、黒川 悟ら、京都府中小企業総合センター技報、2002、No.30に記載の方法に従い、GHz帯域でのtanδ及び比誘電率を測定した。
即ち、測定は、ベクトルネットワークアナライザにより、APC7mm規格の同軸コネクタの同軸状に加工した被測定材料を挿入し、S11、S21の2つのSパラメータを測定することにより複素誘電率を求める方法により行なった。
サンプル形状:内径3.1mm、外径7mm、厚み1〜3mm
なお、表5において、「変化量%」は5.1GHzにおける比較例6のtanδに対する増減の割合%を示している。
表5の比較例7、実施例10〜13は、感光性樹脂とナノチューブ(1)の組合せで作製した成形体の誘電正接tanδの評価結果である。ナノチューブを添加しない比較例6に比べて、本発明の範囲にある実施例10〜13では誘電正接の減少が見られる。
また、表5の比較例8、実施例14〜17は、感光性樹脂とナノチューブ(2)の組合せで作製した成形体の誘電正接tanδの評価結果である。ナノチューブを添加しない比較例6に比べて、本発明の範囲にある実施例14〜17では誘電正接の減少が見られる。
実験4
実験3と同じ成形材料を使用して、成形工程だけを変えて作製したサンプルを評価した結果を示す。
実施例18〜22
樹脂として、エポキシアクリレート樹脂(日本化薬社製 EAM−2160)に、光重合開始剤(日本化薬社製 DETX−S)2wt%、光重合促進剤(日本化薬社製 EPA)2wt%を混合した感光性樹脂を使用した。
ナノチューブ(遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブ)として、実施例1〜12で使用したナノチューブ(1)およびナノチューブ(2)を使用した。
実施例10,12,13,14又は16で作製した成形材料を表6のように使用した。前処理工程(A)とマスターバッチ材料作製工程(B)と成形材料作製工程(C)は実施例10,12,13,14又は16と同じであるが、成形工程(D)を下記のように変えて行った。
<(D)成形工程>
得られた成形材料をブレード法において、ブレードの成形方向に剪断が加わるようにして、約200μmの厚みで塗布した。水銀灯(500W)で紫外線(照射線量:6J/cm)を照射、さらに約200μmの厚みで塗布し、水銀灯で紫外線照射を繰り返し約2.5mmの厚さの成形体を得た。
こうして得られた実施例18〜22の評価用サンプルをレーザー顕微鏡で観察したところ、使用した上記ナノチューブによって、一部同士による接続状態(即ち、ナノチューブの一部が互いに接続した状態)で凝集した湾曲部が1〜10μmの曲率半径の配列構造していた。
キャスト法により作製した実施例14に対して、ブレードコート法により作製した実施例21で膜面における配列構造状態を比較した。レーザー顕微鏡により表面から1.0μm厚みで観察されるナノチューブの分散状態を観察した。長さ3μmのナノチューブが観察される高さ方向の分布を求めた。実施例21では0.1〜0.3μm厚みで観察されたが、実施例14では0.2〜0.5μm厚みで観察された。前者の方が膜面に対してナノチューブが平行になっていることが判った。この実施例14の成形体と実施例21の成形体の相違を示すイメージ図を、図8に示す。
比較例9
鉄−炭素複合体の使用量を、上記感光性樹脂の固体分100重量部に対して、比較例9はカーボンナノチューブの添加が0重量%とする以外は実施例18〜22と同様にして比較のための評価用サンプルを得た。
試験例4:同軸法による誘電正接の測定
上記実施例18〜22及び比較例9で得られた成型体の中央部をくりぬいて、評価用サンプルを得た。この評価用サンプルは、同軸状加工物で、ドーナツ型の形状をしており、外径が7mm、内径が3.1mm、高さ(厚み)が1〜3mmである。誘電正接の測定は、前記試験例3に記載の同軸法に従って行った。結果を表6に示す。
表6において、「変化量%」は5.1GHzにおける比較例9のtanδに対する増減の割合%を示す。
表6の実施例18〜20は、感光性樹脂とナノチューブ(1)の組合せで作製した積層成形体の誘電正接tanδの評価結果である。ナノチューブを添加しない比較例9に比べて、本発明の範囲にある実施例21〜実施例23では誘電正接の減少が見られる。
また、表6の実施例21及び22は、感光性樹脂とナノチューブ(2)の組合せで作製した積層成形体の誘電正接tanδの評価結果である。ナノチューブを添加しない比較例9に比べて、本発明の範囲にある実施例21〜実施例23では誘電正接の減少が見られる。
実験5
実施例23〜28
実施例12,13及び10と同様に成形材料を作製した(表5参照)。
実施例26〜28は新たに成形材料を作製した。即ち、0.1wt%ナノチューブを添加したマスターバッチ材料と感光性樹脂を、混合・分散・脱泡装置(商品名「あわとり練太郎」、株式会社シンキー製)により、表7に示す組成になるように、マスターバッチ材料を感光性樹脂により希釈混合することにより成形材料を得た。
得られた成形材料を円筒形のモールドに入れて水銀灯(500W)で紫外線(照射線量:6J/cm)を照射し、円筒形の成型体を得た。上下面を平滑(Ra:1μm)にした評価用サンプルを得た。この評価用サンプルは、円板の形状をしており、外径が10mm高さが2mmである。
こうして得られた実施例23〜28の評価用サンプルをレーザー顕微鏡で観察したところ、使用した上記ナノチューブによって、一部同士による接続状態(即ち、ナノチューブの一部が互いに接続した状態)で凝集した湾曲部が1〜10μmの曲率半径の配列構造を有していた。
比較例10
比較例6と同様に作製した。但し、円筒形の成形体の上下面を平滑(Ra:1μm)にした。
試験例5:開放型エバネセント波同軸共振器法による誘電正接の測定
誘電正接の測定は、開放型エバネセント波同軸共振器法により行った。この開放型エバネセント波同軸共振器法は、例えば、文献Data-Analysis in the Evanescent Perturbation Method using an Open-ended Coaxial Resonator Probe、Odate et al, Micro wave theory and technic, IEEE,2005に記載されており、同軸共振器プローブ先端部に評価サンプル(厚み1mm以上、直径10mm以上、片面Ra1μm以下の円板)を設置し、先端部から漏れる共振電磁場(エバネセント波)が評価サンプルに浸潤。それにより評価サンプルの複素誘電率によって、共振器全体の共振特性(共振周波数、Q値)に変化が生じる。この変化を測定することで誘電率、tanδを算出した。
表7は、感光性樹脂とカーボンナノチューブ(1)の組合せで作製した成形体の誘電正接tanδの評価結果である。カーボンナノチューブを添加しない比較例10に比べて、本発明の範囲にある実施例23〜28では誘電正接の減少が見られる。
「変化量%」は5.68GHzにおける比較例10のtanδに対する増減の割合%である。
実験6
チューブ状のナノチューブの代わりに、同じカーボン質の粒子状のカーボンナノ粒子で、低誘電正接化の効果を調査した。
比較例11〜14
有機樹脂マトリックスとして、エポキシアクリレート樹脂(日本化薬社製 EAM−2160)に、光重合開始剤(日本化薬社製 DETX−S)2wt%、光重合促進剤(日本化薬社製 EPA)2wt%を混合した感光性樹脂を使用した。
また、ナノチューブの代わりに、高導電性カーボンブラック(ケッチェン・ブラック)を表8に記載の割合で使用した。表8は、上記感光性樹脂100重量部に対するケッチェン・ブラックの配合量(重量部)を示している。
<(A)前処理工程>
樹脂、ケッチェン・ブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製)、PEGME(ポリエチレングリコールメチルエーテル)、アセトン(ナカライテスク株式会社製)、酸化ジルコニアボールを遊星ミルにより400rpmで1時間混合後、酸化ジルコニアボールを除去し、アセトンを乾燥除去し、前処理したケッチェン・ブラックを得た。
<(B)マスターバッチ材料作製工程>
上記前処理した樹脂で皮膜したケッチェン・ブラックと樹脂とを、セラミック3本ロール(ノリタケカンパニー製、NR−42A)により混合し、ケッチェン・ブラックを樹脂に均一分散させ、マスターバッチ材料(樹脂100重量部に対するケッチェン・ブラックの添加量は0.1重量部)を得た。
<(C)成形材料作製工程>
表8の調合組成に従い、上記処理したマスターバッチ材料と感光性樹脂を混合・分散・脱泡装置(商品名「あわとり練太郎」、株式会社シンキー製)により成形材料を得た。
<(D)成形工程>
上記工程(C)で得られた成形材料を円筒形のモールドに入れて水銀灯(500W)で紫外線(照射線量:6J/cm)を照射し、円筒形の成型体を得た。この成型体の中央部をくりぬいて、評価用サンプルを得た。この評価用サンプルは、同軸状加工物で、ドーナツ型の形状をしており、外径が0.7cm、内径が0.3cm、高さ(L)が2.7〜2.9cmである。
こうして得られた比較例11〜14の評価用サンプルをレーザー顕微鏡で観察したところ、使用した上記ケッチェンブラックによって、一部同士による接続状態(即ち、ナノチューブ又はナノワイヤの一部が互いに接続した状態)で凝集した湾曲部が1〜10μmの曲率半径の配列構造が出来ていなかった。高アスペクト比を持つカーボンナノチューブに比較してケッチェンブラックは粒子であるので、湾曲した集合体を形成することが出来なかった。
試験例7
上記比較例11〜14で得られた評価用サンプルについて、試験例3と同様にして同軸法による誘電正接の測定を行った。結果を表8に示す。
「変化量%」は5.1GHzにおける比較例11のtanδに対する増減の割合%を示す。
実験7
ナノチューブ(1)とナノチューブ(2)の不純物分析を行った。即ち、1350℃で燃焼後イオンクロマト分析法により塩素、フッ素、臭素の含有量を分析した結果を表9に示す。
実験8
熱硬化性樹脂を用いた実施例として、印刷回路基板用絶縁材料として実施されているエポキシ樹脂に鉄−炭素複合体を配合する場合の好ましい形態を示す。
実施例29
(a)エポキシ樹脂としてビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名エピクロンN−865、エポキシ当量207)100重量部、(b)ビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物としてビスフェノールAノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名フェノライトVH−4170、水酸基当量114)24.5重量部、(c)硬化促進剤として、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール0.3重量部および(d)トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物または尿素誘導体を含まない窒素含有率60重量%以下の化合物としてメラミン変性フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名フェノライトLA−7054、窒素含有率14重量%)34.2重量部をメチルエチルケトンで溶解し、これに(e)ナノチューブ(ナノフレークカーボンチューブのチューブ内空間部に炭化鉄を部分的に内包している鉄−炭素複合体、大阪ガス株式会社製、商品名メタカーボ)0.008重量部を加えて、不揮発分70重量%の印刷配線板用ナノチューブ複合成形体ワニスを作製した。
実施例30
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名エピクロンN−865、エポキシ当量207)100重量部、ビスフェノールAノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名フェノライトVH−4170、水酸基当量114)23.2重量部、メラミン変性フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名フェノライトLA−7054、窒素含有率14重量%)13.3重量部およびテトラブロモビスフェノールA(帝人化成株式会社製、商品名ファイヤーガードFG−2000、水酸基当量272、臭素含有率58重量%)47.5重量部、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール0.3重量部をメチルエチルケトンで溶解し、これに(e)ナノチューブ(大阪ガス株式会社製、商品名メタカーボ)0.008重量部を加えて、不揮発分70重量%の印刷配線板用ナノチューブ複合成形体ワニスを作製した。
実施例31
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製商品名、エピクロンN−865、エポキシ当量207)100重量部、ビスフェノールAノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製商品名、フェノライトVH−4170、水酸基当量114)5.8重量部、ベンゾグアナミン変性フェノールノボラック(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名フェノライトLA−7054V、窒素含有率7重量%)31.3重量部、テトラブロモビスフェノールA(帝人化成株式会社製商品名、ファイヤーガードFG−2000、水酸基当量272、臭素含有率58重量%)47.9重量部、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール0.3重量部をメチルエチルケトンで溶解し、これに(e)カーボンナノチューブ(大阪ガス株式会社製商品名メタカーボ)0.008重量部を加えて、不揮発分70重量%の印刷配線板用ナノチューブ複合成形体ワニスを作製した。
実施例32
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(住友化学工業株式会社製、商品名スミエポキシESB400T、エポキシ当量400、臭素含有率49重量%)100重量部、ビスフェノールAノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名フェノライトVH−4170、水酸基当量114)20.2重量部、メラミン変性フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名フェノライトLA−7054、窒素含有率14重量%)9.3重量部、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール0.3重量部をメチルエチルケトンで溶解し、これに(e)ナノチューブ(大阪ガス株式会社製、商品名メタカーボ)0.008重量部を加えて、不揮発分70重量%の印刷配線板用ナノチューブ複合成形体ワニスを作製した。
実施例33
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名エピクロンN−865、エポキシ当量207)100重量部、ビスフェノールAノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名フェノライトVH−4170、水酸基当量114)35.3重量部、テトラブロモビスフェノールA(帝人化成株式会社製、商品名ファイヤーガードFG−2000、水酸基当量272、臭素含有率58重量%)47.3重量部、メラミン(窒素含有率66.7重量%)32.3重量部、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール0.3重量部をメチルエチルケトンで溶解し、これに(e)ナノチューブ(大阪ガス株式会社製、商品名メタカーボ)0.008重量部を加えて、不揮発分70重量%の印刷配線板用ナノチューブ複合成形体ワニスを作製した。
比較例15
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名エピクロンN−865、エポキシ当量207)100重量部、ビスフェノールAノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名フェノライトVH−4170、水酸基当量114)35.3重量部、テトラブロモビスフェノールA(帝人化成株式会社製、商品名ファイヤーガードFG−2000、水酸基当量272、臭素含有率58重量%)47.3重量部、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール0.3重量部をメチルエチルケトンで溶解し、不揮発分70重量%の印刷配線板用エポキシ樹脂ワニスを作製した。
比較例16
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製商品名、エピクロンN−865、エポキシ当量207)100重量部、メラミン変性フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製商品名、フェノライトLA−7054、窒素含有率14重量%)61.4重量部、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール0.3重量部をメチルエチルケトンで溶解し、不揮発分70重量%の印刷配線板用エポキシ樹脂ワニスを作製した。
比較例17
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名エピクロンN−865、エポキシ当量207)100重量部、メラミン変性フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名フェノライトLA−7054、窒素含有率14重量%)38.7重量部、テトラブロモビスフェノールA(帝人化成株式会社製、商品名ファイヤーガードFG−2000、水酸基当量272、臭素含有率58重量%)48.5重量部、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール0.3重量部をメチルエチルケトンで溶解し、不揮発分70重量%の印刷配線板用エポキシ樹脂ワニスを作製した。
比較例18
低臭素化エポキシ樹脂(ダウ・ケミカル日本株式会社製、商品名DER−518、臭素含有率21重量%、エポキシ当量485)80重量部、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ工業株式会社製、商品名エピクロンN−673、エポキシ当量213)20重量部に、あらかじめエチレングリコールモノメチルエーテルに溶解したジシアンジアミド1重量部を配合した。硬化促進剤として1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2重量部を配合し、エチレングリコ−ルとメチルエチルケトンに溶解し、不揮発分65重量%の印刷配線板用エポキシ樹脂ワニスを作製した。
以上の実施例29〜33および比較例15〜18の印刷配線板用ナノチューブ複合成形体ワニスまたはエポキシ樹脂ワニスの組成を表10に示した。
表中の窒素含有率は、樹脂固形分に対する窒素の割合を示す。
尚、表10における略号は表11に記載の意味を有する。
実施例29〜33および比較例15〜18で得られた印刷配線板用エポキシ樹脂ワニスを、厚みが0.2mmのガラス布に含浸し、160℃で2〜5分加熱してプリプレグを得た。得られたプリプレグ4枚を重ね、その両側に18μmの銅箔を重ね、175℃、90分、2.5MPaのプレス条件で両面銅張積層板を作製した。
得られた両面銅張積層板について、Tg(ガラス転移温度)、常態と200℃での銅箔引き剥がし強さ、はんだ耐熱性、吸水率および加熱変色性を調べた。これらの結果を表12及び表13に示した。
試験方法は以下のように行った。
Tg:銅箔をエッチングし、TMA(熱機械分析)法により測定した。
銅箔引き剥し強さ:積層板上に幅10mmのラインをエッチングにより形成し、常態と200℃でそれぞれ引張試験機で垂直方向に50mm/分で引き剥したときの強さを測定した。
はんだ耐熱性:銅箔をエッチングし、プレッシャークッカーテスター中に2時間保持した後、260℃のはんだに20秒間浸漬して外観を目視で調べた。
表中○はミーズリングやフクレの発生が見られず異常がないことを示し、△はミーズリングの発生、×はふくれが発生したことを意味する。
吸水率:銅箔をエッチングし、プレッシャークッカーテスター中に4時間保持した前後の重量の差から算出した。
加熱変色性:銅箔をエッチングし、気中において160℃で5時間処理した後、目視により評価した。
変色のないものを○、若干変色したものを△、変色したものを×とした。
トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物または尿素誘導体を含まない窒素含有率60重量%以下の化合物を用いた実施例29〜33は、銅箔引き剥し強さが常態で1.5kN/mと高く、また200℃においても常態の50%程度の引き剥し強さを保持しており、高温での劣化が少ない。
また実施例29〜33は硬化剤にビスフェノールAノボラック樹脂を用いているため140〜180℃程度の高いTgを有し、はんだ耐熱性、加熱変色性が良好で吸水率も低い。
これに対して、トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物または尿素誘導体を含まない窒素含有率60重量%以下の化合物を配合してない比較例15は常態および200℃での銅箔引き剥し強さが低い。
硬化剤にビスフェノールAノボラックを用いてない比較例16および比較例17は、耐熱性および加熱変色性に劣る。また、ジシアンジアミドを用いた比較例18はTgが低く、200℃における銅箔引き剥し強さも低い。更に吸水率が大きく、はんだ耐熱性に劣る。
本発明の印刷配線板用ナノチューブ複合成形体またはナノワイヤ複合成形体及びこれを用いた印刷配線板は、優れた耐熱性と高周波領域に於ける誘電特性に優れ、かつ銅箔との接着性が良好であり、MPUを搭載する印刷配線板やモジュール用印刷配線板等のこれまで以上の高い接続信頼性や伝送特性を要求される耐熱性に優れた高Tg印刷配線板として有用である。
実験9
実施例34
樹脂絶縁の耐電圧特性を評価するため、評価サンプルは実験3で使用した遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブ(ナノチューブ(1))及び有機樹脂マトリックスとして、エポキシアクリレート樹脂(日本化薬社製 EAM−2160)に、光重合開始剤(日本化薬社製 DETX−S)2wt%、光重合促進剤(日本化薬社製 EPA)2wt%を混合した感光性樹脂を使用した。
表14は、上記感光性樹脂100重量部に対するカーボンチューブの配合量(重量部)を示している。
次の耐電圧の測定方法により、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブ(鉄−炭素複合体)配合組成物の耐電圧テストを行った。
各試料を12cm角の片面銅張積層板(FR4,銅厚35μm)の銅の上にアプリケーターにより15±5μmの厚みで各5枚塗布し、紫外線を1000mj/cm2の割合で照射し硬化させたものについて耐電圧を測定し、それぞれの最小値を耐電圧として表14に示した。樹脂層の厚み及び耐電圧の測定には次に示す機器を使用した。尚、比較例20においては紫外線硬化後に熱硬化(150℃60分)処理を行った。
試験結果は膜厚のばらつきによる誤差程度であった。導電性の遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブ添加によっても樹脂膜の耐電圧の低下は見られず、樹脂絶縁膜、或いはソルダーレジストとしての機能が確認された。
なお、上記測定において、厚み測定装置としては、(株)ケット科学研究所製 LZ-330Cを使用し、耐電圧測定装置は、菊水電子工業(株)製 TOS 5101を使用した。
本発明によれば、GHz帯域において、誘電正接(tanδ)が低下した樹脂成形体を得ることができる。
従って、かかる樹脂成形体を使用することにより、高周波電子部品、特に、電気・電子機器の回路基板材料、特にGHz帯域用の回路基板材料等として好適に使用できる電子部品が提供される。
特開2002−338220号の実施例1で得られた炭素質材料を構成する鉄−炭素複合体1本の電子顕微鏡(TEM)写真である。 特開2002−338220号の実施例1で得られた炭素質材料における鉄−炭素複合体の存在状態を示す電子顕微鏡(TEM)写真である。 特開2002−338220号の実施例1で得られた鉄−炭素複合体1本を輪切状にした電子顕微鏡(TEM)写真である。尚、図3の写真中に示されている黒三角(▲)は、組成分析のためのEDX測定ポイントを示している。 カーボンチューブのTEM像の模式図を示し、(a-1)は、円柱状のナノフレークカーボンチューブのTEM像の模式図であり、(a-2)は入れ子構造の多層カーボンナノチューブのTEM像の模式図である。 ナノチューブが分散した成形体をレーザー顕微鏡により観察する場合の原理を示す概念図である。 実験1及び2等で使用したナノチューブ(1)(鉄−炭素複合体)の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。 実験1及び2等で使用したナノチューブ(2)(鉄含有多層カーボンナノチューブ)の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。 実施例14の成形体と実施例21の成形体の相違を示すイメージ図である。
符号の説明
100 ナノフレークカーボンチューブの長手方向のTEM像
110 略直線状のグラフェンシート像
200 ナノフレークカーボンチューブの長手方向にほぼ垂直な断面のTEM像
210 弧状グラフェンシート像
300 入れ子構造の多層カーボンナノチューブの長手方向の全長にわたって連続する直線状グラフェンシート像
400 入れ子構造の多層カーボンナノチューブの長手方向に垂直な断面のTEM像

Claims (43)

  1. マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、マトリックス100重量部に対して0.0001重量部〜0.1重量部含有されることを特徴とする高周波電子部品用複合成形体。
  2. 前記マトリックスが、低分子有機マトリックス、有機樹脂マトリックス、低分子無機マトリックス、無機樹脂マトリックスおよびそれらの複合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の高周波電子部品用複合成形体。
  3. 前記マトリックスが、有機樹脂マトリックスであることを特徴とする請求項1記載の高周波電子部品用複合成形体。
  4. 有機樹脂マトリックスを形成している有機樹脂が、
    (i)熱可塑性樹脂、又は
    (ii)熱硬化性樹脂、又は
    (iii)放射線硬化性樹脂、又は
    (iv)熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び放射線硬化性樹脂からなる群から選ばれる2種以上からなる複合樹脂、又は
    (v)上記(i)〜(iv)の2種以上の混合物
    であることを特徴とする請求項3に記載の高周波電子部品用複合成形体。
  5. 前記マトリックスの1GHzでの比誘電率が10未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
  6. 前記マトリックスの1GHzでの比誘電率が5未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
  7. 前記マトリックスの1GHzでの誘電正接が0.5未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
  8. 前記マトリックスが低分子有機マトリックス、有機樹脂マトリックスまたはその複合物であり、低分子有機マトリックス、有機樹脂マトリックス、またはそれらの複合体の融点、軟化点、もしくはガラス転移点のうちの最も低い温度が60℃以上500℃未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
  9. 前記マトリックスが低分子有機マトリックス、有機樹脂マトリックス又はその複合物であり、その融点、軟化点、もしくはガラス転移点のうちの最も低い温度又はそれよりも低い温度での線膨張率が1ppm以上1000ppm未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
  10. 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、導電性をもつ物質で形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
  11. 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
  12. 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、アモルファスナノスケールカーボンチューブまたは遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブであり、1〜100nmの直径、及び10〜5000のアスペクト比を有する請求項1〜9のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
  13. 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブであり、遷移金属の含有量が、遷移金属炭化物換算で、遷移金属ナノスケールカーボンチューブ重量の0.1wt%以上50wt%未満であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
  14. 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブであり、該遷移金属が、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体。
  15. 前記ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブであり、そのチューブ内空間部に、鉄、コバルト、ニッケル及びそれらの炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が存在しており、該鉄、コバルト、ニッケル及びそれらの炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の量が、遷移金属炭化物換算で、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブ重量の1重量%以上である請求項14に記載の高周波電子部品用複合成形体。
  16. ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種及び有機樹脂マトリックスを含み、該ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種が、一部同士による接続状態で、有機樹脂マトリックス100重量部に対して0.0001〜0.1重量部の割合で存在することを特徴とする高周波電子部品用複合成形体。
  17. ナノチューブまたはナノワイヤ又はこれらの集合物が、0.5〜5.0μmの範囲の曲率を有する請求項16に記載の高周波電子部品用複合成形体。
  18. ナノチューブもしくはナノワイヤに含まれる、フリーのイオンが200ppm以下、ハロゲンの含有量が400ppm以下であることを特徴とする請求項16に記載の高周波電子部品用複合成形体。
  19. ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を、溶液状態、流動状態、又はガラス転移点以上もしくは融点以上の溶融状態にある有機樹脂に配合し、次いで、溶剤除去、光硬化反応、熱硬化反応、または冷却処理により有機樹脂を固化させて成形することを特徴とする高周波電子部品用複合成形体の製造方法。
  20. 有機樹脂マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を、有機樹脂マトリックス100重量部に対して0.01重量部以上50重量部以下の濃度であらかじめ混合分散をし、その濃厚混合分散液を、有機樹脂マトリックスに、カーボンナノチューブもしくはナノワイヤが有機樹脂マトリックス100重量部に対して0.0001〜0.1重量部となるように分散させてなる樹脂組成物を製造し、次いで、溶剤除去、光硬化反応、熱硬化反応、または冷却処理により有機樹脂を固化させて成形することを特徴とする請求項19に記載の高周波電子部品用複合成形体の製造方法。
  21. 電場又は磁場の印加下、有機樹脂マトリックス中においてナノチューブまたはナノワイヤの一部が互いに接続した状態で、固化させて成形することを特徴とする請求項19又は20に記載の高周波電子部品用複合成形体の製造方法。
  22. 電場又は磁場の印加下、ナノチューブまたはナノワイヤの一部が互いに接続し、0.5〜5.0μmの曲率範囲を有するコイル状または円弧状の状態で、固化させて成形することを特徴とする請求項19又は20に記載の高周波電子部品用複合成形体の製造方法。
  23. マトリックスが有機樹脂マトリックスであり、有機樹脂マトリクッスが、(a)エポキシ樹脂、(b)ビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物、(c)硬化促進剤及び (d)トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物、または尿素誘導体を除く化合物であって窒素含有率60重量%以下の化合物を必須成分として含有する請求項1記載の高周波電子部品用複合成形体。
  24. (b)ビスフェノールAとホルムアルデヒドの付加縮合物をエポキシ樹脂のエポキシ基に対してフェノール性水酸基が0.5〜1.5当量の範囲、(c)硬化促進剤をエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部及び(d)トリアジン環若しくはイソシアヌル環を有する化合物または尿素誘導体を含まない窒素含有率60重量%以下の化合物を、210℃の熱風乾燥炉中30分間の処理前後の重量比率から算出する樹脂固形分に対し窒素含有率が、0.1〜10重量%の範囲となるように含有する請求項23に記載の高周波電子部品用複合成形体。
  25. (a)〜(d)に加え、(e)難燃剤を含有する請求項23または24に記載の高周波電子部品用複合成形体。
  26. (e)の難然剤が、テトラブロモビスフェノールAまたはテトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルである請求項25に記載の高周波電子部品用複合成形体。
  27. マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を、マトリックス100重量部に対して0.0001重量部〜0.1重量部含有することを特徴とする高周波電子部品用複合成形体用組成物。
  28. 前記マトリックスが、有機樹脂マトリックスであることを特徴とする請求項27に記載の高周波電子部品用複合成形体用組成物。
  29. 有機樹脂マトリックス中にナノチューブ又はナノワイヤを含む組成物が、電子部品用樹脂接着剤、樹脂絶縁膜、ソルダーレジスト又は半導体封止樹脂であることを特徴とする請求項28に記載の高周波電子部品用複合成形体用組成物。
  30. 請求項27〜29のいずれかに記載の高周波電子部品用複合成形体用組成物から形成されたことを特徴とする高周波電子部品用複合成形体。
  31. 金属箔、及び、請求項29に記載の高周波電子部品用複合成形体用組成物の硬化層を備えていることを特徴とする樹脂付金属箔。
  32. 請求項29に記載の高周波電子部品用複合成形体用組成物の硬化層を備えていることを特徴とする印刷配線板。
  33. 請求項27に記載の高周波電子部品用複合成形体用樹脂組成物を用いることを特徴とする電気回路形成方法又は印刷配線板製造方法。
  34. 請求項32に記載の印刷配線板を部品の一部として使用する電子部品。
  35. 請求項32に記載の印刷配線板を部品の一部として使用する電気機器。
  36. ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む有機樹脂マトリックスを、キャストまたはブレードすることにより形成される絶縁膜。
  37. ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む有機樹脂マトリックスを、キャストまたはブレードすることを特徴とする絶縁膜の製造方法。
  38. マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種がマトリックス100重量部に対して0.0001重量部〜0.1重量部含有される組成物をワニスとし、基材に含浸、乾燥して得られるプリプレグの少なくとも1枚以上を用いその片面又は両面に金属箔を積層し、加熱加圧成形して金属張積層体を得、該金属張積層体において回路形成することを特徴とする印刷配線板。
  39. マトリックス中に、ナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種がマトリックス100重量部に対して0.0001重量部〜0.1重量部含有される組成物をワニスとし、該ワニスをフィルムの上に塗布乾燥して得られる絶縁膜フィルムを用いて得られる印刷配線板又は多層基板。
  40. 有機樹脂マトリックス中にナノチューブ及びナノワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む電子部品用樹脂接着剤。
  41. 請求項40に記載の電子部品用樹脂接着剤を用いて形成された樹脂絶縁膜、樹脂付金属箔、ソルダーレジスト又は半導体封止樹脂。
  42. 請求項40に記載の電子部品用樹脂接着剤を用いて形成された樹脂絶縁膜、樹脂付金属箔、ソルダーレジスト、半導体封止樹脂を用いた電気回路又は印刷配線板。
  43. 請求項40に記載の電子部品用樹脂接着剤を用いた電気回路形成方法又は印刷配線板製造方法。
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