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JP2007019274A - 抵抗薄膜、薄膜抵抗体およびその製造方法 - Google Patents

抵抗薄膜、薄膜抵抗体およびその製造方法 Download PDF

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JP2007019274A
JP2007019274A JP2005199265A JP2005199265A JP2007019274A JP 2007019274 A JP2007019274 A JP 2007019274A JP 2005199265 A JP2005199265 A JP 2005199265A JP 2005199265 A JP2005199265 A JP 2005199265A JP 2007019274 A JP2007019274 A JP 2007019274A
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Masanori Takagi
正徳 高木
Tetsushi Komukai
哲史 小向
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Abstract

【課題】金属薄膜と同等の可撓性を具備する薄膜抵抗体を提供するとともに、比抵抗が大きく、かつ、抵抗温度係数の絶対値が小さいという特性も具備する薄膜抵抗体を提供する。
【解決手段】クロム、ホウ素、珪素および炭素からなり、珪素および炭素の含有量が0.1〜15質量%である薄膜抵抗体をスパッタリング法により形成することにより、可撓性を有する薄膜抵抗体を得る。
さらに、該薄膜抵抗体の組成に応じて適切な熱処理温度を選択して熱処理を行うことにより、比抵抗が300〜3000μΩ・cmであり、かつ、抵抗温度係数が−100〜+100ppm/℃である薄膜抵抗体を得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、シートデバイス用に好適な薄膜抵抗体およびその製造方法に関する。
従来より、精密用チップ抵抗器や混成集積回路に用いられる薄膜抵抗体として、アルミナや石英といったセラミック基板上に抵抗薄膜を形成したものが使用されていた。しかし、かかる薄膜抵抗体は、可撓性を有しないことから、電子機器分野で要求されている、小型化、軽量化、薄型化に応えることは困難であった。
そこで、これらの要求に対応するため、シートデバイス化が提案されている。シートデバイス化とは、厚さ1μm以下のコンデンサ、抵抗などの機能薄膜を、薄くてフレキシブルな金属箔やフィルム樹脂等のフレキシブルな基板上に形成し、そのシートを積層することで、デバイス機能を持たせる方法である(例えば、非特許文献1参照)。フレキシブルな基板上に形成する薄膜には可撓性が要求される。
フレキシブルな基板上に形成され得る抵抗薄膜としては、ニクロムなどの金属薄膜、酸化金属皮膜、メタルグレーズ皮膜、カーボンペースト膜等が検討されている(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1参照。)。
一方、薄膜抵抗体には、比抵抗が大きく、かつ、抵抗温度係数が小さいという特性も求められている。
金属薄膜は、可撓性がある上、抵抗温度係数(TCR)が±100ppm/℃以内であり、薄膜チップ抵抗器に用いれば高精度な抵抗特性を実現できる。
しかし、金属薄膜は比抵抗が小さいので、高抵抗材として利用するためには、パターンを形成する必要がある。一方、金属薄膜でパターンを形成すると、折り曲げ部で電流密度が増大して、膜の安定性が悪くなるという問題がある。
このため、金属薄膜を抵抗材として用いる場合、低抵抗材に使用が限定されてしまっている。
酸化金属皮膜やメタルグレーズ皮膜は抵抗値範囲を広くとることができる。しかし、酸化金属皮膜やメタルグレーズ皮膜は、抵抗温度係数(TCR)が±150〜±250ppm/℃と大きい点に問題がある。さらに、均一な塗膜厚が得られないという問題もある。
カーボンペースト膜も抵抗値範囲を広く取ることができるが、抵抗温度係数(TCR)が±250ppm/℃と大きく、また、均一な塗膜厚が得られないといった問題、電極材質の選定が必要であるといった問題がある。
特開2003−332749号公報 特開2002−134301号公報 特開2002−133945号公報 第5回プリント配線板EXPO 「受動部品内蔵配線板の今後の可能性とは?」講演予稿集(リードエグジビジョンジャパン主催、2004年1月28日)
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、金属薄膜を用いた薄膜抵抗体と同等の可撓性を具備する薄膜抵抗体を提供するとともに、比抵抗が大きく、かつ、抵抗温度係数の絶対値が小さいという特性も具備する薄膜抵抗体を提供することを目的とする。
本発明に係る抵抗薄膜は、クロム、ホウ素、珪素および炭素からなり、珪素および炭素の含有量が0.1〜15質量%であることを特徴とし、可撓性を有する。
前記抵抗薄膜においては、比抵抗が300〜3000μΩ・cmであり、かつ、抵抗温度係数が−100〜+100ppm/℃であることが好ましい。
本発明に係る薄膜抵抗体は、可撓性を有する基板上に、前記抵抗薄膜が形成されていることを特徴とする。
前記基板は樹脂フィルムであることが好ましく、該樹脂フィルムは、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイト、およびフッ素樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つの樹脂からなるフィルムであることがより好ましい。
また、前記基板は金属箔であることが好ましく、該金属箔は銅箔であることがより好ましい。
本発明に係る薄膜抵抗体の製造方法の第一の態様は、クロム、ホウ素、珪素および炭素からなるスパッタリングターゲットをスパッタリング装置に装着するとともに、薄膜を形成させる基板をスパッタリング装置に装着し、スパッタリング法により、クロム、ホウ素、珪素および炭素からなり、珪素および炭素の含有量が0.1〜15質量%である薄膜を該基板上に形成し、その後該薄膜を熱処理して、比抵抗が300〜3000μΩ・cmであり、かつ、抵抗温度係数が−100〜+100ppm/℃である薄膜抵抗体を形成することを特徴とする。
本発明に係る薄膜抵抗体の製造方法の第二の態様は、クロムホウ化物からなるスパッタリングターゲットと炭化珪素からなるスパッタリングターゲットをスパッタリング装置に装着するとともに、薄膜を形成させる基板をスパッタリング装置に装着し、スパッタリング法により、クロム、ホウ素、珪素および炭素からなり、珪素および炭素の含有量が0.1〜15質量%である薄膜を該基板上に形成し、その後該薄膜を熱処理して、比抵抗が300〜3000μΩ・cmであり、かつ、抵抗温度係数が−100〜+100ppm/℃である薄膜抵抗体を形成することを特徴とする。
前記熱処理の温度は、200〜300℃の範囲内で前記薄膜の組成に応じて選択される温度であることが好ましい。
また、前記製造方法において、前記スパッタリング装置内を真空引きした後、該装置内にアルゴンガスを導入して、スパッタリング法を行うことが好ましい。
本発明に係る薄膜抵抗体は、可撓性を有するので、シートデバイスとして利用することができ、電子機器の小型化、軽量化、薄型化に寄与することができる。
さらに、本発明に係る薄膜抵抗体は、組成に応じた適切な熱処理をすることで、比抵抗が300〜3000μΩ・cmであり、かつ、抵抗温度係数(TCR)が−100〜+100ppm/℃である薄膜抵抗体とすることができる。したがって、該薄膜抵抗体をシートデバイスに適用することにより、300〜3000μΩ・cmと大きい比抵抗を持ち、かつ、抵抗温度係数の絶対値が小さい高精度のシートデバイスを得ることができる。
一般に、酸化物、窒化物、その他のセラミックスや化合物は金属系に比べてはるかに体積抵抗率が大きく、高抵抗体が得られやすい。しかし、金属と異なり、脆性的であるため、フレキシブル樹脂基板などに形成する抵抗薄膜として適用することは難しい。
これに対し、本発明に係る抵抗薄膜は、可撓性を具備しており、折り曲げたりしたときでも膜の割れによる比抵抗の増加がない。このため、フレキシブルな基板上に成膜して、薄膜抵抗体の抵抗薄膜として好適に用いることができる。
本発明に係る抵抗薄膜は、クロム、ホウ素、珪素および炭素からなる。該抵抗薄膜は、クロムホウ化物と炭化珪素が明瞭に分離したこれらの成分の混合体となっているのではなく、アモルファス状態になっていると考えられる。かかる抵抗薄膜において、CのSiに対する原子数比は0.9〜1.4程度の範囲であり、BのCrに対する原子数比は1.9〜2.2程度の範囲である。なお、クロムホウ化物は比抵抗の大きい導電性成分であり、炭化珪素は絶縁性成分である。
珪素および炭素の含有量が0.1質量%未満では、比抵抗が300μΩ・cm以上にならず、高抵抗の薄膜抵抗体として用いることはできない。また、珪素および炭素の含有量が15質量%を上回ると、比抵抗は3000μΩ・cm以上となるものの、200〜300℃の温度範囲の熱処理をしても抵抗温度係数(TCR)が−100ppm/℃〜+100ppm/℃の範囲に収まらず、精密抵抗として適さない。
次に、本発明に係る薄膜抵抗体の製造方法について説明する。
本発明に係る抵抗薄膜を基板上に形成する手段としてスパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタリング法は、高融点材料を用いた場合であっても設計通りの組成の薄膜を作製できる方法であるので、抵抗温度係数(TCR)の小さい高性能な薄膜抵抗体を製造することに適している。
使用するスパッタリングターゲットとしては、クロムホウ化物および炭化珪素からなり、炭化珪素の含有量が0.1〜15質量%で、残部がクロムホウ化物からなるスパッタリングターゲットを用いることができる。
また、複数のスパッタリングターゲット、すなわち、炭化珪素からなるスパッタリングターゲット、およびクロムホウ化物からなるスパッタリングターゲットの両方を用いて、同時スパッタリングにより本発明に係る薄膜抵抗体を形成することも可能である。
これら非金属ターゲットは、ホットプレス法、スリップキャスティング法、静水圧プレス法あるいは常圧焼結法で作製することができる。
前記組成のクロムホウ化物および炭化珪素からなるスパッタリングターゲット、または、それぞれクロムホウ化物と炭化珪素からなる2つのスパッタリングターゲットをスパッタリング装置に配置する。そして、該スパッタリング装置の系内を4.0×10-4Pa以下の真空度まで真空引きした後に、系内にアルゴンガス(純度:99.999%)を導入して、スパッタリングにより基板上にクロム、ホウ素、珪素および炭素からなる抵抗薄膜を形成する。
前記基板には、フレキシブルな金属箔や樹脂フィルムを用いることができる。
金属箔としては、多層基板の配線基板として用いられる銅箔を好適に使用できる。
樹脂フィルムとしては、寸法安定性、強度、耐熱性、耐薬品性に優れているものを用いることが好ましい。このような特性を持った樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイト、及びフッ素樹脂等があげられる。
本発明に係る抵抗薄膜の製造においては反応性スパッタガスを用いる必要はなく、一般的なスパッタガスであるアルゴンガスを用いて作製することができる。また、アルゴンガスに窒素のような反応性ガスを加えた混合ガスをスパッタガスとして用いても問題はない。
次に、形成した薄膜に熱処理を施す。通常、薄膜抵抗体の製造においては、基板上に抵抗薄膜を形成したのち、抵抗値を安定させるとともに抵抗温度係数(TCR)を0に近づけるために、熱処理を行う。
本発明に係る薄膜抵抗体では、抵抗薄膜における炭化珪素の含有量が0.1〜15質量%と少ないため、200〜300℃の温度範囲で組成に応じて熱処理温度を選択して熱処理をすることで、抵抗温度係数の絶対値を小さくすることができる。
熱処理温度を200〜300℃の温度範囲に限定した理由は、熱処理温度が200℃を下回る場合には、抵抗温度係数(TCR)が−100ppm/℃より負に大きくなってしまうからである。また、有機樹脂でできたフィルム基板の荷重たわみ温度は高くても360℃程度であるので、樹脂フィルム基板上に抵抗薄膜を形成した場合、熱処理温度が300℃を上回ると、フィルム基板が変形してしまうおそれがあるからである。
熱処理をする際の雰囲気は、特殊な雰囲気で行う必要はなく、真空中、アルゴン中、窒素中などの不活性雰囲気で行うことができ、また、大気中であっても問題はない。
(実施例1)
スパッタリングターゲットの原料粉末として、二ホウ化クロム(新日本金属製、規格名:CrB2−O、平均粒径:5.98μm)と炭化珪素(昭和電工製、規格名:Du A−3、純度:99.6%、平均粒径:1.85μm)を用いた。二ホウ化クロムは295.30g、炭化珪素は23.94gを秤量した。そして、これらの粉末を混合し、ホットプレス法で直径152.4mmφの焼結体を作製した。ホットプレス条件は、面圧:248kg/cm2、温度:1400℃、時間:1時間、雰囲気:真空中とした。得られた焼結体を切断し、その表面を研磨して、152.4φ×5mmのスパッタリングターゲットとした。
作製したターゲットをRF電源につながっているカソードに設置し、チャンバー内を減圧した。チャンバー内の圧力が4.0×10-3Pa以下となった時点でアルゴンガス(純度:99.999%)を14.9sccmの流量で流して、炉内圧を1.2Paとした。そして、あらかじめ求めた成膜速度をもとに、所望の組成となるように出力を調整し、スパッタ時間を決めて、膜厚が120nmとなるようにした。
具体的には、まず、基板上にスパッタリング法で成膜する前に、基板前面のシャッターを閉じた状態で出力を400Wにして60分以上プレスパッタを行った。次に、同じ出力で本スパッタを行い、所定の時間成膜して、120nmの厚さの膜を得た。所定の時間スパッタした後にシャッターを閉じ、30分以上冷却した後、チャンバー内から基板とともに基板上に形成された薄膜を取り出した。基板はポリイミドフィルムとした。
次に、基板上に形成された薄膜を真空炉(ネムス株式会社製 型式:M60−3×8−WW−23)に入れ、真空中(2.0×10-3Pa)で熱処理をした。熱処理温度は、150℃、200℃、250℃、300℃とした。昇温速度は熱処理温度まで10℃/分とし、各温度とも熱処理温度で30分間保持した。前記各温度で熱処理して得られた膜は、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析:Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)により定量分析した結果、いずれの膜も、CrおよびBの含有量が92.5質量%であり、SiおよびCの含有量が7.5質量%であった。この組成は、原料粉末である二ホウ化クロムおよび炭化珪素の混合粉末における、CrおよびBの含有割合およびSiおよびCの含有割合と同じである。
次に、抵抗温度係数(TCR)が最も小さくなった300℃で熱処理をした膜に、曲げ変形を加え、曲げ変形を加える前後におけるシート抵抗を四探針法で測定した。具体的には、前記熱処理をした膜の片側を固定して、曲率半径2mmで90°に曲げた後、膜を真っ直ぐな状態(0°)にもどし、再度同方向に曲率半径2mmで90°に曲げた。このようにして90°の曲げ変形を10回繰り返した。この曲げ変形を加える前と加えた後の膜のシート抵抗を四探針法で測定した。測定結果を表1に示す。
(比較例1)
比較例1は、金属薄膜抵抗体の抵抗薄膜として現在使われているNi−Cr膜であり、次のようにして作製した。
Ni−50質量%Crターゲットをチャンバー内に設置した。Ni−50質量%Crターゲットは導電性があるので、DC電源につないだ。DC電源の出力を1.2Aとし、それ以外は実施例1と同様にして膜を作製し、120nmの厚さのNi−Cr膜を得た。基板は実施例1と同様にポリイミドフィルムとした。作製した膜は実施例1と同様の熱処理をした。得られた膜は、ICP−AESにより定量分析した結果、Niの含有量が50質量%であり、Crの含有量が50質量%であった。
次に、抵抗温度係数が最も小さくなった200℃で熱処理をした膜に、実施例1と同様に曲げ変形を加え、曲げ変形を加える前後におけるシート抵抗を四探針法で測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2007019274
表1からわかるように、本発明の範囲内の実施例1は、比較例1のNi−Cr膜の10倍程度のシート抵抗を有しているにもかかわらず、90°曲げ試験前後におけるシート抵抗の値は比較例1と同様に全く上昇していない。
したがって、本発明の範囲内の実施例1は、高抵抗であるにもかかわらず、可撓性を有していることがわかる。
(実施例2)
ターゲットの原料粉末として、二ホウ化クロムを295.30g、炭化珪素を23.94g秤量し、実施例1と同様にしてターゲットを作製した。作製したターゲットをRF電源と接続しているカソードに設置した。RF電源出力は400Wとし、基板を液晶ポリマーフィルムとして所定の時間成膜して、120nmの厚さの薄膜を得た。作製した薄膜に、実施例1と同様に真空中で熱処理を施した。熱処理温度は、150℃、200℃、250℃、300℃とした。前記各温度で熱処理して得られた膜は、ICP−AESにより定量分析した結果、いずれの膜も、CrおよびBの含有量が92.5質量%であり、SiおよびCの含有量が7.5質量%であった。
真空炉から取り出した薄膜抵抗体サンプルの両側に金電極膜をスパッタリングにより付け、金電極が形成された薄膜抵抗体サンプルを得た(図1参照。)。得られた薄膜抵抗体サンプルを、高温箱型炉(株式会社モトヤマ製 SB−H2025)に入れ、大気中で熱処理をして、安定化処理をした。熱処理温度は上記真空中での熱処理温度と同じとした。昇温速度は熱処理温度の10℃手前までは5.8℃/minとし、熱処理温度の10℃手前から熱処理温度までは1℃/minとした。そして、熱処理温度で3時間保持した。
大気炉から取り出した薄膜抵抗体サンプルについて、膜厚t(cm)、長さL(cm)、幅W(cm)を測定し、さらに直流四端子法により抵抗R(Ω)を測定して、下記数式1から比抵抗を求めた。
Figure 2007019274
また、抵抗体試料を恒温槽に入れ、25℃での抵抗値R25[Ω]と125℃での抵抗値R125[Ω]を測定し、下記数式2から抵抗温度係数(TCR)を求めた。
Figure 2007019274
以上のようにして、真空炉での各熱処理温度(150℃、200℃、250℃、300℃)ごとに求めた比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を、下記表2に示す。
Figure 2007019274
表2からわかるように、真空炉での熱処理温度が高くなるほど比抵抗は小さくなっている。また、抵抗温度係数TCRは熱処理温度が高くなるにつれて、その値が大きくなっており、負の値から正の値に変わっている。そして、抵抗温度係数(TCR)の絶対値は、真空炉での熱処理温度が300℃のときに最小(8ppm/℃)となっている。
(実施例3)
ターゲットの原料粉末として、二ホウ化クロムを318.28g、炭化珪素を0.96g秤量し、実施例1と同様にターゲットを作製した。作製したターゲットをRF電源と接続しているカソードに設置し、RF電源出力は400Wとし、基板を液晶ポリマーフィルムとして所定の時間成膜して、120nmの厚さの膜を得た。得られた膜は、ICP−AESにより定量分析した結果、CrおよびBの含有量が99.7質量%であり、SiおよびCの含有量が0.3質量%であった。以降は実施例2と同様に熱処理をし、薄膜抵抗体サンプルを作製して、比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を測定した。なお、真空炉での熱処理温度は150℃、200℃、250℃、300℃とした。
抵抗温度係数(TCR)の絶対値が最も小さくなるときの真空炉での熱処理温度を最適熱処理温度とした。該熱処理温度で熱処理をした薄膜抵抗体サンプルについて測定した比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を表3に示す。
(実施例4)
ターゲットの原料粉末として、二ホウ化クロムを271.35g、炭化珪素を47.89g秤量し、実施例1と同様にターゲットを作製した。作製したターゲットをRF電源と接続しているカソードに設置し、RF電源出力は400Wとし、基板を液晶ポリマーフィルムとして所定の時間成膜して、120nmの厚さの膜を得た。得られた膜は、ICP−AESにより定量分析した結果、CrおよびBの含有量が85.0質量%であり、SiおよびCの含有量が15.0質量%であった。以降は実施例2と同様に熱処理をし、薄膜抵抗体サンプルを作製して、比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を測定した。なお、真空炉での熱処理温度は150℃、200℃、250℃、300℃とした。
抵抗温度係数(TCR)の絶対値が最も小さくなるときの真空炉での熱処理温度を最適熱処理温度とした。該熱処理温度で熱処理をした薄膜抵抗体サンプルについて測定した比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を表3に示す。
(比較例2)
ターゲットの原料粉末として、二ホウ化クロムを319.24g秤量し、実施例1と同様にターゲットを作製した。作製したターゲットをRF電源と接続しているカソードに設置し、RF電源出力は400Wとし、基板を液晶ポリマーフィルムとして所定の時間成膜して、120nmの厚さの膜を得た。得られた膜は、ICP−AESにより定量分析した結果、CrおよびBの含有量が100質量%であった。以降は実施例2と同様に熱処理をし、薄膜抵抗体サンプルを作製して、比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を測定した。なお、真空炉での熱処理温度は150℃、200℃、250℃、300℃とした。
抵抗温度係数(TCR)の絶対値が最も小さくなるときの真空炉での熱処理温度を最適熱処理温度とした。該熱処理温度で熱処理をした薄膜抵抗体サンプルについて測定した比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を表3に示す。
(比較例3)
ターゲットの原料粉末として、二ホウ化クロムを255.39g、炭化珪素を63.85g秤量し、実施例1と同様にターゲットを作製した。作製したターゲットをRF電源と接続しているカソードに設置し、RF電源出力は400Wとし、基板を液晶ポリマーフィルムとして所定の時間成膜して、120nmの厚さの膜を得た。得られた膜は、ICP−AESにより定量分析した結果、CrおよびBの含有量が80.0質量%であり、SiおよびCの含有量が20.0質量%であった。以降は実施例2と同様に熱処理をし、薄膜抵抗体サンプルを作製して、比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を測定した。なお、真空炉での熱処理温度は150℃、200℃、250℃、300℃とした。
抵抗温度係数(TCR)の絶対値が最も小さくなるときの真空炉での熱処理温度を最適熱処理温度とした。該熱処理温度で熱処理をした薄膜抵抗体サンプルについて測定した比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を表3に示す。
(実施例5)
ターゲットの原料粉末として、二ホウ化クロムを301.36g、炭化珪素を17.88g秤量し、実施例1と同様にターゲットを作製した。作製したターゲットをRF電源と接続しているカソードに設置し、RF電源出力は400Wとし、基板を銅箔として所定の時間成膜して、110nmの厚さの膜を得た。得られた膜は、ICP−AESにより定量分析した結果、CrおよびBの含有量が94.4質量%であり、SiおよびCの含有量が5.6質量%であった。以降は実施例2と同様に熱処理をし、薄膜抵抗体サンプルを作製して、比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を測定した。なお、真空炉での熱処理温度は150℃、200℃、250℃、300℃とした。
抵抗温度係数(TCR)の絶対値が最も小さくなるときの真空炉での熱処理温度を最適熱処理温度とした。該熱処理温度で熱処理をした薄膜抵抗体サンプルについて測定した比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を表3に示す。
(実施例6)
ターゲットの原料粉末として、二ホウ化クロムを295.30g、炭化珪素を23.94g秤量し、実施例1と同様にターゲットを作製した。作製したターゲットをRF電源と接続しているカソードに設置し、RF電源出力は400Wとし、基板をポリイミドフィルムとして所定の時間成膜して、120nmの厚さの膜を得た。得られた膜は、ICP−AESにより定量分析した結果、CrおよびBの含有量が92.5質量%であり、SiおよびCの含有量が7.5質量%であった。以降は実施例2と同様に熱処理をし、薄膜抵抗体サンプルを作製して、比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を測定した。なお、真空炉での熱処理温度は150℃、200℃、250℃、300℃とした。
抵抗温度係数(TCR)の絶対値が最も小さくなるときの真空炉での熱処理温度を最適熱処理温度とした。該熱処理温度で熱処理をした薄膜抵抗体サンプルについて測定した比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を表3に示す。
(実施例7)
ターゲットの原料粉末として、二ホウ化クロムを301.68g、炭化珪素を17.56g秤量し、実施例1と同様にターゲットを作製した。作製したターゲットをRF電源と接続しているカソードに設置し、RF電源出力は400Wとし、基板をポリフェニレンサルファイトフィルムとして所定の時間成膜して、120nmの厚さの膜を得た。得られた膜は、ICP−AESにより定量分析した結果、CrおよびBの含有量が94.5質量%であり、SiおよびCの含有量が5.5質量%であった。以降は実施例2と同様に熱処理をし、薄膜抵抗体サンプルを作製して、比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を測定した。なお、真空炉での熱処理温度は150℃、200℃、250℃とした。
抵抗温度係数(TCR)の絶対値が最も小さくなるときの真空炉での熱処理温度を最適熱処理温度とした。該熱処理温度で熱処理をした薄膜抵抗体サンプルについて測定した比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を表3に示す。
(実施例8)
ターゲットの原料粉末として、二ホウ化クロムを317.64g、炭化珪素を1.60g秤量し、実施例1と同様にターゲットを作製した。作製したターゲットをRF電源と接続しているカソードに設置し、RF電源出力は400Wとし、基板をフッ素樹脂フィルムとして所定の時間成膜して、120nmの厚さの膜を得た。得られた膜は、ICP−AESにより定量分析した結果、CrおよびBの含有量が99.5質量%であり、SiおよびCの含有量が0.5質量%であった。以降は実施例2と同様に熱処理をし、薄膜抵抗体サンプルを作製して、比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を測定した。なお、真空炉での熱処理温度は150℃、200℃とした。
抵抗温度係数(TCR)の絶対値が最も小さくなるときの真空炉での熱処理温度を最適熱処理温度とした。該熱処理温度で熱処理をした薄膜抵抗体サンプルについて測定した比抵抗および抵抗温度係数(TCR)を表3に示す。
Figure 2007019274
表3からわかるように、組成について本発明の範囲内である実施例2〜8は、真空中での熱処理温度を適切に設定することで、比抵抗が300〜3000μΩ・cmの範囲内に入り、かつ、抵抗温度係数(TCR)は−100〜+100ppm/℃の範囲内に入っている。
これに対して、比較例2は、SiおよびCの含有量が0質量%であり、本発明の下限値である0.1質量%を下回っている。このため、最適な温度で真空中での熱処理を行うと抵抗温度係数(TCR)は−7ppm/℃と−100〜+100ppm/℃の範囲内に入っているものの、比抵抗は210μΩ・cmであり、300μΩ・cmを下回った。
比較例3は、SiおよびCの含有量が20質量%であり、本発明の上限値である15質量%を上回っている。このため、比抵抗は3300μΩ・cmと大きかったものの、最適な温度で真空中での熱処理を行っても、抵抗温度係数(TCR)は−130ppm/℃であり、−100〜+100ppm/℃の範囲に入らなかった。
なお、実施例2〜8は、基板として、液晶ポリマーフィルム、銅箔、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンサルファイトフィルム、フッ素樹脂フィルムを用いたが、いずれも真空中での熱処理温度を適切に設定することで、比抵抗が300〜3000μΩ・cmの範囲内に入り、かつ、抵抗温度係数(TCR)は−100〜+100ppm/℃の範囲内に入っている。したがって、本発明に係る薄膜抵抗体を形成する基板として、金属箔または樹脂フィルムを用いることができることがわかる。
Au電極が形成された実施例2の薄膜抵抗体サンプルの模式図である。
符号の説明
1 液晶ポリマーフィルム基板
2 薄膜抵抗体
3 Au電極

Claims (12)

  1. クロム、ホウ素、珪素および炭素からなり、珪素および炭素の含有量が0.1〜15質量%であることを特徴とする抵抗薄膜。
  2. 可撓性を有することを特徴とする請求項1に記載の抵抗薄膜。
  3. 比抵抗が300〜3000μΩ・cmであり、かつ、抵抗温度係数が−100〜+100ppm/℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の抵抗薄膜。
  4. 可撓性を有する基板上に、請求項1〜3のいずれかに記載の抵抗薄膜が形成されていることを特徴とする薄膜抵抗体。
  5. 前記基板が樹脂フィルムである請求項4に記載の薄膜抵抗体。
  6. 前記樹脂フィルムが、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイト、およびフッ素樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つの樹脂からなるフィルムであることを特徴とする請求項5に記載の薄膜抵抗体。
  7. 前記基板が金属箔であることを特徴とする請求項4に記載の薄膜抵抗体。
  8. 前記金属箔が、銅箔であることを特徴とする請求項7に記載の薄膜抵抗体。
  9. クロム、ホウ素、珪素および炭素からなるスパッタリングターゲットをスパッタリング装置に装着するとともに、薄膜を形成させる基板をスパッタリング装置に装着し、スパッタリング法により、クロム、ホウ素、珪素および炭素からなり、珪素および炭素の含有量が0.1〜15質量%である薄膜を該基板上に形成し、その後該薄膜を熱処理して、比抵抗が300〜3000μΩ・cmであり、かつ、抵抗温度係数が−100〜+100ppm/℃である薄膜抵抗体を形成することを特徴とする薄膜抵抗体の製造方法。
  10. クロムホウ化物からなるスパッタリングターゲットと炭化珪素からなるスパッタリングターゲットをスパッタリング装置に装着するとともに、薄膜を形成させる基板をスパッタリング装置に装着し、スパッタリング法により、クロム、ホウ素、珪素および炭素からなり、珪素および炭素の含有量が0.1〜15質量%である薄膜を該基板上に形成し、その後該薄膜を熱処理して、比抵抗が300〜3000μΩ・cmであり、かつ、抵抗温度係数が−100〜+100ppm/℃である薄膜抵抗体を形成することを特徴とする薄膜抵抗体の製造方法。
  11. 前記熱処理の温度が、200〜300℃の範囲内で前記薄膜の組成に応じて選択される温度であることを特徴とする請求項9または10に記載の薄膜抵抗体の製造方法。
  12. 前記スパッタリング装置内を真空引きした後、該装置内にアルゴンガスを導入して、スパッタリング法を行うことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の薄膜抵抗体の製造方法。
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