JP2007015008A - ラインパイプ向け低yr電縫鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 帯鋼を略円筒状のオープン管に連続成形し、該オープン管の円周方向端部同士を電縫溶接してなる管に回転矯正処理を施す電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼の組成を、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.6〜2.3%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下を含有する組成とし、管全体の繰り返し曲げ‐曲げ戻しによる管厚方向平均歪、及び/又は、縮径、管長方向直接圧縮の各単独若しくは組合せによる管長方向圧縮歪が、0.1〜7.0%になるように前記回転矯正処理を施す。
【選択図】 図1
Description
ここで、YRは降伏比であり、これは、引張試験により測定された降伏強さ(YS)の対引張強さ(TS)比(=YS/TS)で定義される。但しYSは、下降伏点応力(LYS)、オフセット法による0.2%耐力(0.2%PS)、アンダーロード法(全伸び法)による0.5%耐力(0.5%PS)の内の何れか1種であり、特にパイプの場合、前記引張試験は、API,JIS,ASTM等の鋼管に関する各種工業規格に定められる管長(パイプの長手(L))方向の全厚試験片を用いて行うものである。又、本発明にいう、「低YR電縫鋼管」とは、製品の全周、全長の何れの位置においても、YRが0.90以下(百分率表示では90%以下)である電縫鋼管を意味する。
尚、ラインパイプ向けの低YR鋼管では、例えばリールバージ向けに、特許文献1に示されたように実質的に炭素量を0.1%以上とする方法が知られている。一方、UOE鋼管では、溶接後の拡管によりL方向の圧縮歪みを付与して低YR化する手法が用いられている(例えば特許文献2)。
一方、一般に拡管を行わない電縫鋼管製造にUOE鋼管製造における拡管工程を適用しようとするのは、拡管設備の追加を要することに加え、拡管工程は造管成形後に1本毎に行うバッチ処理であり、又熱処理が必要な場合もあるため、電縫鋼管のような高速溶接による製造では著しい生産能率の低下に繋がるという難点がある。
[請求項1] 帯鋼を略円筒状のオープン管に連続成形し、該オープン管の円周方向端部同士を電縫溶接してなる管に回転矯正処理を施して外形寸法形状を整える電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼の組成を、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.6〜2.3%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下を含有し、残部が実質的にFeからなる組成とし、前記回転矯正処理を、下記条件(1)〜(5)の何れかが満たされるように施すことを特徴とするラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
条件(1):管全体の繰り返し曲げ‐曲げ戻しにより0.1〜7.0%の管厚方向平均歪を付与する条件。
条件(2):管長方向の長さ増減無しの縮径により0.1〜7.0%の管長方向圧縮歪を付与する条件。
条件(3):縮径無しの管長方向直接圧縮により0.1〜7.0%の管長方向圧縮歪を付与する条件。
条件(4):縮径及び管長方向直接圧縮により0.1〜7.0%の管長方向圧縮歪を付与する条件。
条件(5):条件(1)と条件(2)〜(4)の何れかとを組合せた条件。
記
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
但し、右辺の元素記号項は同号元素の鋼中成分含有量(質量%)であり、含有されない成分元素の項は無視する。
[請求項4] 前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下の内から選ばれる1種又は2種を含有するとしたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
[請求項6] 前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.005%以下を含有するとしたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
図1のような回転矯正機を用い、電縫溶接後の管に繰り返し曲げ歪を付与すると、バウシンガー効果により管長方向引張特性に係るYRの低減が発生する。又、管長方向長さを増減すること無く縮径を行うと、管周方向圧縮歪を受けて管長方向へ伸びようとする歪が抑制されることにより管長方向に圧縮歪が作用し、バウシンガー効果により管長方向引張特性に係るYRの低減が発生する。更に前記操作因子の設定操作方法によっては縮径を行わずに直接管長方向圧縮歪みを付与することも可能であり、この場合もバウシンガー効果による管長方向引張特性変化を介して低YR化が可能となる。
又、管長方向圧縮歪みは、付与方法が縮径であるか管長方向直接圧縮であるかに拘らず、0.1%以上であればバウシンガー効果によりYRを低減させるのに十分であり、一方7.0%を超えた場合加工硬化により管長方向のバウシンガー効果が相殺されるため、0.1〜7.0%以下とすることが肝要である。
尚、管厚方向平均歪又は管長方向圧縮歪を目標値に制御するに必要な、これら制御量と前記操作因子の設定操作量との定量的関係は、管の弾塑性変形理論に基いて適宜のモデル式を作成し、これを実験により検証したものを用いて決定することができる。
Mnは0.6〜2.3%とする。Mnは強度、靭性を確保するため添加するが、0.6%未満ではその効果が十分でなく、2.3%を超えると第二相分率が増加し、ラインパイプとして必要な優れた素材靭性を確保できないため、Mn含有量を0.6〜2.3%に規定する。
Sは0.01%以下とする。Sは一般的に鋼中においてはMnS介在物となり、水素誘起割れ(HIC)の起点となるため少ないほどよい。然し、0.01%以下であれば問題ないため、S含有量の上限を0.01%に規定する。
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
但し、右辺の元素記号項は同号元素の鋼中成分含有量(質量%)であり、含有されない成分元素の項は無視する。Ceqが0.44%未満であれば、電縫鋼管の各種溶接施工において割れ等の欠陥が生じ難いため、本発明では、Ceqを0.44%未満とすることが望ましい。尚、このCeq規制に係る実施形態は、後述の選択添加成分を含有する場合にも適用することが望ましい。
更に、本発明では、ラインパイプ向け電縫鋼管の強度や降伏比、靭性を更に改善する目的で、組成中のFeの一部に代えて、
・Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下の内から選ばれた1種又は2種、
・Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下の内から選ばれた1種または2種、
・Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下の内から選ばれた1種又は2種以上、
・Ca:0.005%以下、
を選択添加し含有させることができる。
Niは0.5%以下がよい。Niは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、多く添加すると硬化第二相が生成しやすくなり、耐サワー性の低下に繋がるため、添加する場合は0.5%を上限とする。好ましくは0.05〜0.5%である。
Moは0.5%以下がよい。MoはMn、Crと同様に低Cでも十分な強度を得るために有効な元素であるが、多く添加すると第二相が生成しやすくなり耐サワー性を低下させるため、添加する場合は0.5%を上限とする。好ましくは0.05〜0.5%である。
Vは0.1%以下がよい。VはNbと同様に炭窒化物の微細析出により強度上昇に寄与する。然し、0.1%を超えるとNbと同様に硬化した第二相分率が増加し、耐サワー性が著しく劣化するため、添加する場合は0.1%以下に規定する。好ましくは0.05〜0.1%である。
Caは0.005%以下がよい。Caは、水素誘起割れの起点となり易い伸長したMnSの形態制御に必要な元素である。然し、0.005%を超えて添加すると過剰なCa酸化物、硫化物が生成し、靭性劣化に繋がるため、添加する場合は0.005%以下に規定する。好ましくは0.002〜0.005%である。
組成が請求範囲内である帯鋼D〜Jを素材とした鋼管(鋼管No.16〜41)の場合、耐サワー性には何れも合格である。然しながら、回転矯正処理を実施していない条件No.1、繰り返し曲げ‐曲げ戻しによる管厚方向平均歪が0.1%未満の条件No.2、該歪が7.0%超の条件No.3、管長方向の長さ増加無く縮径したが相対的に管長方向圧縮歪が0.1%未満の条件No.5、該歪が7.0%超の条件No.6、縮径無く管長方向直接圧縮したが管長方向圧縮歪が0.1%未満の条件No.8、該歪が7.0%超の条件No.9では、低降伏比性に不合格である。これに対し、回転矯正処理が請求範囲内である条件No.4,7,10,11,12,13では何れもYRが素材帯鋼よりも低減し、低降伏比性に合格している。
2、2’ ロール
3 ロールスタンド
4 ロール回転方向の矢示
5 管搬送方向の矢示
6 管回転方向の矢示
Claims (6)
- 帯鋼を略円筒状のオープン管に連続成形し、該オープン管の円周方向端部同士を電縫溶接してなる管に回転矯正処理を施して外形寸法形状を整える電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼の組成を、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.6〜2.3%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下を含有し、残部が実質的にFeからなる組成とし、前記回転矯正処理を、下記条件(1)〜(5)の何れかが満たされるように施すことを特徴とするラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
記
条件(1):管全体の繰り返し曲げ‐曲げ戻しにより0.1〜7.0%の管厚方向平均歪を付与する条件。
条件(2):管長方向の長さ増減無しの縮径により0.1〜7.0%の管長方向圧縮歪を付与する条件。
条件(3):縮径無しの管長方向直接圧縮により0.1〜7.0%の管長方向圧縮歪を付与する条件。
条件(4):縮径及び管長方向直接圧縮により0.1〜7.0%の管長方向圧縮歪を付与する条件。
条件(5):条件(1)と条件(2)〜(4)の何れかとを組合せた条件。 - 前記組成を、下記式で定義される炭素当量Ceqが0.44%未満になる組成としたことを特徴とする請求項1記載のラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
記
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
但し、右辺の元素記号項は同号元素の鋼中成分含有量(質量%)であり、含有されない成分元素の項は無視する。 - 前記Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下の内から選ばれる1種又は2種を含有するとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
- 前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下の内から選ばれる1種又は2種を含有するとしたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
- 前記Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下の内から選ばれる1種又は2種以上を含有するとしたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
- 前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.005%以下を含有するとしたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のラインパイプ向け低YR電縫鋼管の製造方法。
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