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JP2007080652A - リチウムイオン電池の電極形成用スラリーおよびリチウムイオン電池 - Google Patents

リチウムイオン電池の電極形成用スラリーおよびリチウムイオン電池 Download PDF

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JP2007080652A JP2005266492A JP2005266492A JP2007080652A JP 2007080652 A JP2007080652 A JP 2007080652A JP 2005266492 A JP2005266492 A JP 2005266492A JP 2005266492 A JP2005266492 A JP 2005266492A JP 2007080652 A JP2007080652 A JP 2007080652A
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光正 斉藤
Atsushi Honda
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Abstract

【課題】 10C以上の高速充放電レートにおける放電容量が高く、十分な充放電レート性能を有するリチウムイオン電池の電極形成用スラリーおよびリチウムイオン電池を提供する。
【解決手段】 本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーは、電極活物質、導電助剤、バインダーおよび極性溶媒を含有してなるリチウムイオン電池の電極形成用スラリーであって、前記導電助剤は、粒径または形状の異なる2種以上の粒子からなることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウムイオン電池の電極形成用スラリーおよびリチウムイオン電池に関し、特に、粒径または形状の異なる2種以上の粒子からなる導電助剤を用いることで、高速充放電特性に優れたリチウムイオン電池の電極形成用スラリーおよびリチウムイオン電池に関するものである。
近年、小型、軽量、高容量の電池として、リチウムイオン電池などの非水電解液系の二次電池が提案され、実用に供されている。このリチウムイオン電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有する正極および負極と、非水系の電解質より構成されている。
リチウムイオン電池の負極は、負極活物質として、一般に炭素系材料またはチタン酸リチウム(LiTi12)などのリチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するLi含有金属酸化物が用いられている。
一方、リチウムイオン電池の正極は、正極活物質といわれるリチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性能を有するLi含有金属酸化物、導電助剤およびバインダーより構成され、これらを分散・溶解したスラリーを集電体と呼ばれる金属箔の表面に塗布することにより正極としている。
このリチウムイオン電池の正極活物質としては、通常、コバルト酸リチウム(LiCoO)が用いられているが、その他に、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、鉄リン酸リチウム(LiFePO)などのリチウム(Li)化合物が用いられている。
このようなリチウムイオン電池は、従来の鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などの二次電池に比べて、軽量かつ小型で高エネルギーを有しているので、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどの携帯用電子機器の電源として用いられているが、近年、電気自動車、ハイブリッド自動車、電動工具などの高出力電源としても検討されている。
これらの高出力電源として用いられる電池の電極活物質としては、高速の充放電特性が求められるが、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するLi含有金属酸化物は電子導電性が低い。そこで、電極活物質の電子導電性を向上させる方法として、一般に、電極活物質に導電助剤を添加する方法がとられている(非特許文献1参照)。これら電極活物質と導電助剤を混合する方法としては、電極活物質と導電助剤を、ボールミルやプラネタリミキサなどの撹拌翼型混合機などで混合する方法がとられている。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素系導電助剤が一般に用いられている。
松田好晴 竹原善一郎他編、「電池便覧第3版」、丸善株式会社、平成13年2月20日発行、p.267
しかしながら、従来の電極活物質に導電助剤を添加する方法では、電極活物質と導電助剤の混合にボールミル、撹拌翼型混合機などの混合機を用いてきたが、これらの混合機では、導電助剤の分散が十分ではなく、電極活物質の導電性の改善が不十分なため、電池の高速充放電時の容量低下を引き起こすという問題点があった。
この問題点を解決するために、本発明者等は、特願2005−127655において、リチウムイオンおよび電子の授受により充放電が行われる電極活物質と導電助剤と電解液の界面(三相界面=活性点)の数を増やすことが効果的であり、そのためには、導電助剤をより微細に分散させることが有効であることを見出し、また、導電助剤を微細に分散させるためには、分散剤を用いることが有効であることを見出し、さらに、電極活物質、導電助剤、バインダーおよび極性溶媒を、媒体粒子と共に撹拌・分散させてスラリーとする際に、媒体粒子の個数を限定することが有効であることを見出し、リチウムイオン電池の電極形成用スラリーおよびその製造方法並びにリチウムイオン電池を提案した。
しかしながら、特願2005−127655により、導電助剤をナノメーターオーダーに高度に分散した場合、充放電レートが2C以上かつ10C未満では、放電容量の低下を十分に抑えることができるものの、充放電レートが10C以上では、放電容量の低下を十分に抑えることができなかった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、10C以上の高速充放電レートにおける放電容量が高く、十分な充放電レート性能を有するリチウムイオン電池の電極形成用スラリーおよびリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特願2005−127655のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーを用いた電極の表面と、この電極の裏面(集電体側)とを電子顕微鏡により詳細に観察したところ、電極の表面では導電助剤が高濃度に存在する一方、電極の裏面では導電助剤がほとんど存在しないことを見出した。
また、従来の電極活物質に導電助剤を添加する方法を用いてリチウムイオン電池の電極を製造すると、このように導電助剤が偏在するのは、以下のような現象に起因することを見出した。すなわち、従来のリチウムイオン電池の電極の製造方法では、図4(a)に示すように、電極活物質31と導電助剤32を電解液33にナノメーターオーダーで高度に分散して電極形成用スラリー34を調製し、この電極形成用スラリー34を集電体35に塗布するため、電極形成用スラリー34が乾燥する前(図4(a)参照)から、電極形成用スラリー34が乾燥して電極塗膜36をなす(図4(b)参照)までに、電極塗膜36内に生じる濃度差や表面張力差による対流(マランゴニ対流)、および、電極塗膜36の表面と裏面との温度差による対流(ベナール対流)により、電極活物質31よりも細かく、かつ軽い導電助剤32が、電極塗膜36の表面に浮き上がってしまう。その結果、集電体35と電極塗膜36との界面近傍における導電助剤32の濃度が低下して、電極塗膜36は、導電経路が途切れてしまうことも見出した。
さらに、マランゴニ対流やベナール対流による導電助剤の偏在の問題を解決するには、電極形成用スラリーを高粘度化する方法や、電極塗膜を薄くする方法などが考えられるが、電極形成用スラリーを高粘度化すると塗工が困難となり、また、電極塗膜を薄くすると電池を高容量化することができなくなるという問題がある。
そこで、本発明者等は、電極塗膜内に十分な導電経路を確保する方法として、電極形成用スラリーが乾燥して電極塗膜をなすまでの間に、電極塗膜内に生じる対流によって流動し難い大きさまたは形状の導電助剤を用いることにより、導電助剤が均一に分散することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーは、電極活物質、導電助剤、バインダーおよび極性溶媒を含有してなるリチウムイオン電池の電極形成用スラリーであって、前記導電助剤は、粒径または形状の異なる2種以上の粒子からなることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーは、前記粒子の少なくとも1種は粒径が50nm未満であって、他の種の粒子は粒径が50nm以上であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーは、前記粒子の少なくとも1種はアスペクト比が3以上であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーは、前記粒子の少なくとも1種は一次粒子が集合してなる二次粒子であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーを用いた正極を備えてなることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーによれば、電極活物質、導電助剤、バインダーおよび極性溶媒を含有してなるリチウムイオン電池の電極形成用スラリーであって、前記導電助剤は、粒径または形状の異なる2種以上の粒子からなるので、電極活物質の表面に十分な活性点を形成することができる上に、電極活物質間、および、電極活物質と集電体との間の導電経路を十分に形成することができるから、10C以上の高速充放電レートにおける放電容量の低下を改善し、十分な充放電レート性能を有するリチウムイオン電池を実現することができる。
本発明のリチウムイオン電池によれば、本発明のリチウムイオン電池の電極用スラリーを用いた電極を備えたので、電極の充放電容量(特に、放電容量)を向上させることができ、充放電サイクルを安定化することができ、出力を高めることができる。したがって、高出力のリチウムイオン電池を提供することができる。
本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーおよびリチウムイオン電池の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーは、電極活物質、導電助剤、バインダーおよび極性溶媒を含有してなるリチウムイオン電池の電極形成用スラリーであり、導電助剤は、粒径または形状の異なる2種以上の粒子からなる。
また、導電助剤を構成する粒子の少なくとも1種は粒径が50nm未満であって、他の種の粒子は粒径が50nm以上である。
また、導電助剤を構成する粒子の少なくとも1種はアスペクト比が3以上である。
さらに、導電助剤を構成する粒子の少なくとも1種は一次粒子が集合してなる二次粒子である。
ここで、粒径とは、透過型電子顕微鏡、反射型電子顕微鏡、光学顕微鏡などを用いて、画像解析法などで測定される平均粒径のことであり、具体的には、1個の粒子において最小部と最大部の平均値で表される大きさのことである。
アスペクト比が3以上の粒子とは、長径/短径比が3以上の粒子のことである。
電極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性能を有するLi含有金属酸化物であればよい。正極用の電極活物質としては、例えば、鉄リン酸リチウム(LiFePO)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)などが好適に用いられる。負極用の電極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム(LiTi12)などが好適に用いられる。
これらの電極活物質としては、固相法、液相法、気相法などの従来の方法により製造したものが用いられる。
また、電極活物質の形状や大きさに特に制限はないが、10C以上の高速充放電レートで使用するためには、電極活物質の平均粒径は5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。電極活物質の平均粒径が5μmを超えると、10C以上の高速充放電レートで使用する場合、電池の放電容量の低下が著しくなるおそれがある。
ここで平均粒径とは、透過法または散乱法などを用いた各種粒度分布測定装置により測定される数平均粒径のことであり、具体的には、レーザー回折散乱法などの光学的測定方法、あるいは電子顕微鏡の画像解析法などで測定される平均粒径のことである。
導電助剤は、リチウムイオン電池を高出力化するために用いられるもので、炭素系導電助剤が好適に用いられる。
この導電助剤を構成する粒径が50nm未満の粒子および粒径が50nm以上の粒子としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛などが好適に用いられる。これらの粒径が50nm未満の粒子と粒径が50nm以上の粒子は、異なる2種類の導電助剤を用いることもできる。また、粒径が50nm未満の粒子のみを用い、これを分散、凝集させることにより、粒径が50nm未満の粒子と、粒径が50nm以上の粒子とに作り分けたものも好適に用いられる。
また、導電助剤を構成するアスペクト比が3以上の粒子としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーなどが好適に用いられる。
導電助剤を構成する粒径が50nm未満の粒子は、電極活物質の表面に吸着し、電極活物質と電解液との間で活性点(三相界面)を形成し、リチウムイオンおよび電子の授受を行う。高速充放電レートでリチウムイオンおよび電子を授受するためには、この活性点を多数存在させることが有効である。したがって、導電助剤を粒径が50nm未満の粒子とすれば、この活性点を多数形成することができる。
導電助剤を構成する粒径が50nm以上の粒子またはアスペクト比が3以上の粒子は、電極活物質間、および、電極活物質と集電体との間に導電経路を形成する。
粒径が50nm未満の粒子の電極活物質に対する含有量は、上記の活性点を十分に形成するように適宜調整されるが、電極活物質100重量部に対して、粒径が50nm未満の粒子が2重量部以上かつ30重量部以下の割合で含まれることが好ましく、5重量部以上かつ15重量部以下の割合で含まれることがより好ましい。電極活物質100重量部に対する粒径が50nm未満の粒子の含有量を2重量部以上かつ30重量部以下とした理由は、粒径が50nm未満の粒子の含有量が2重量部未満では、高速充電に十分な活性点を形成することができない。一方、粒径が50nm未満の粒子の含有量が30重量部を超えると、電極活物質の比率が小さくなるため、容量の小さな電池となってしまう。
粒径が50nm以上の粒子の電極活物質に対する含有量は、上記の導電経路を十分に形成するように適宜調整されるが、電極活物質100重量部に対して、粒径が50nm以上の粒子が1重量部以上かつ30重量部以下の割合で含まれることが好ましく、1重量部以上かつ15重量部以下の割合で含まれることがより好ましい。電極活物質100重量部に対する粒径が50nm以上の粒子の含有量を1重量部以上かつ30重量部以下とした理由は、粒径が50nm以上の粒子の含有量が1重量部未満では、高速充電に十分な導電経路を形成することができない。一方、粒径が50nm以上の粒子の含有量が30重量部を超えると、電極活物質の比率が小さくなるため、容量の小さな電池となってしまう。
アスペクト比が3以上の粒子の電極活物質に対する含有量は、上記の導電経路を十分に形成するように適宜調整されるが、電極活物質100重量部に対して、アスペクト比が3以上の粒子が1重量部以上かつ30重量部以下の割合で含まれることが好ましく、1重量部以上かつ15重量部以下の割合で含まれることがより好ましい。電極活物質100重量部に対するアスペクト比が3以上の粒子の含有量を1重量部以上かつ30重量部以下とした理由は、アスペクト比が3以上の粒子の含有量が1重量部未満では、高速充電に十分な導電経路を形成することができない。一方、アスペクト比が3以上の粒子の含有量が30重量部を超えると、電極活物質の比率が小さくなるため、容量の小さな電池となってしまう。
粒径が50nm未満の粒子と、粒径が50nm以上の粒子および/またはアスペクト比が3以上の粒子との配合比は、粒径が50nm未満の粒子:粒径が50nm以上の粒子および/またはアスペクト比が3以上の粒子=5重量%:95重量%以上かつ95重量%:5重量%以下が好ましく、粒径が50nm未満の粒子:粒径が50nm以上の粒子および/またはアスペクト比が3以上の粒子=15重量%:85重量%以上かつ95重量%:5重量%以下がより好ましい。粒径が50nm未満の粒子と、粒径が50nm以上の粒子および/またはアスペクト比が3以上の粒子との配合比を5重量%:95重量%以上かつ95重量%:5重量%以下とした理由は、粒径が50nm未満の粒子の配合比が5重量%未満では、十分な活性点を形成するだけの導電助剤が存在しないため、10C以上の充放電レートでの容量の低下を抑制することができない。一方、粒径が50nm未満の粒子の配合比が95重量%を超えると、導電経路を形成するため粒子が少なくなり、10C以上の充放電レートでの容量の低下を改善することができない。
また、粒径が50nm以上の粒子とアスペクト比が3以上の粒子の配合比は、粒径が50nm以上の粒子:アスペクト比が3以上の粒子=0重量%:100重量%〜100重量%:0重量%の範囲で、粒子の粒径やアスペクト比を考慮して、上記の導電経路を十分に形成するように適宜調整される。
ここで、導電助剤を構成する粒子の少なくとも1種を粒径が50nm未満の粒子とした理由は、粒径が50nmを超える粒子は、10C以上の充放電レートで充放電するために十分な数の活性点を、電極活物質の表面に形成することができないからである。
また、導電助剤を構成する粒子のうち、粒径が50nm未満の粒子以外の粒子は、粒径が50nm以上の粒子および/またはアスペクト比が3以上の粒子とした理由は、粒径が50nm未満の粒子またはアスペクト比が3未満の粒子は、電極形成用スラリーが乾燥して電極塗膜をなすまでの間に、電極塗膜内に生じる対流により、電極塗膜の表面に浮き上がってしまい、電極塗膜内で導電助剤が偏在し、導電経路が遮断されてしまうからである。
バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの有機バインダーが好適に用いられる。
バインダーの電極活物質に対する含有量は、所望の電極塗膜の強度などに応じて適宜調整されるが、電極活物質100重量部に対して、バインダーが1重量部以上かつ20重量部以下の割合で含まれることが好ましく、3重量部以上かつ15重量部以下の割合で含まれることがより好ましい。電極活物質100重量部に対するバインダーの含有量を1重量部以上かつ20重量部以下とした理由は、バインダーの含有量が1重量部未満では、集電体への電極塗膜の接着が困難となる。一方、バインダーの含有量が20重量部を超えると、電極活物質の比率が下がるため、容量の小さな電極となるばかりでなく、バインダーが絶縁性であるため、電極の抵抗が大きくなり、電池として動作しなくなるおそれがある。
極性溶媒としては、電極活物質、導電助剤およびバインダーを溶解、分散させることができる有機溶媒、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トリメチルフォスフェート、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
極性溶媒の電極活物質、導電助剤およびバインダーの総量に対する含有量は、所望のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーの粘度などに応じて適宜調整されるが、電極活物質、導電助剤およびバインダーの総量100重量部に対して、極性溶媒が20重量部以上かつ80重量部以下の割合で配合されることが好ましく、30重量部以上かつ70重量部以下の割合で含有していることがより好ましい。電極活物質、導電助剤およびバインダーの総量100重量部に対する極性溶媒の含有量を20重量部以上かつ80重量部以下とした理由は、極性溶媒の含有量が20重量部未満では、固形分の比率が高すぎて、電極形成用スラリーの粘度が高くなり、電極形成用スラリーを集電体に塗布することが困難となる。一方、極性溶媒の含有量が80重量部を超えると、固形分の比率が低すぎて、十分な厚みの電極塗膜を形成することが困難となる。
本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーを作製する場合、通常の分散、混合方法を用いることもできるが、媒体撹拌型分散装置の容器に、電極活物質、導電助剤、バインダーおよび極性溶媒を、媒体粒子と共に投入する際に、媒体粒子のスラリー1ml中の個数が3500個以上となるように、電極活物質、導電助剤、バインダー、極性溶媒、媒体粒子それぞれの量を調製し、その後、撹拌・分散させる方法を用いることが望ましい。
通常、電極形成用スラリーを作製するには、電極活物質、導電助剤、バインダーおよび極性溶媒を、ボールミル、攪拌型混合機などを用いて混合する。しかしながら、この方法では、電極活物質および導電助剤に大きな剪断応力が加わらないため、導電助剤の分散が十分ではなく、導電助剤を構成する粒径が50nm未満の粒子を十分に分散することが難しい。そこで本発明では、導電助剤の分散に顔料分散装置としてよく用いられる媒体攪拌型分散装置を用いることが望ましい。
この媒体攪拌型分散装置は、電極活物質、導電助剤、バインダーおよび極性溶媒(これらを被分散材と総称する)と、多数の媒体粒子を容器内に投入し、被分散材料および媒体粒子を高速で撹拌することにより、媒体粒子を高速で流動させ、媒体粒子同士が衝突する際に媒体粒子間に電極活物質、導電助剤が捕捉され、衝突による衝撃、剪断作用を受けることにより分散するものである。媒体攪拌型分散装置としては、サンドミル、ペイントシェーカー、アトライタ、遊星ボールミル、振動ボールミルなどが挙げられるが、中でも媒体粒子を高速で攪拌できるサンドミルが好適である。
この媒体攪拌型分散装置では、到達分散粒径および分散時間は、被分散材からなるスラリー体積あたりの媒体粒子数Nに依存する。
ここで、媒体粒子数Nは、下記の式(1)により算出することができる。
Figure 2007080652
ただし、式(1)において、Vmは媒体粒子の見掛けの体積(cm)、Dmは媒体粒子の直径(cm)、Vsは被分散材スラリーの体積(ml)、をそれぞれ表す。
媒体粒子としては、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズ、チタニアビーズなどを挙げることができる。媒体粒子の径は上記の電極形成用スラリーの単位体積あたりの媒体個数を得ることができれば特に制限はなく、媒体粒子の径が小さければ、より少ない媒体粒子の使用量で多くの媒体粒子数となるので、媒体粒子径は小さいほどよい。
しかしながら、媒体粒子径が小さ過ぎると、媒体粒子の表面積の大きさを無視できなくなり、流動性が低下する。そこで、所望の流動性を得るためには、極性溶媒の量を増加させる必要があるが、相対的に固形分である被分散材の量が少なくなるため、生産効率が悪くなるという問題が生じる。また、媒体粒子1個の質量が軽くなるため、衝撃、剪断力が小さくなり、分散力が低下するという問題が生じる。したがって、媒体粒子の径としては、10μm以上かつ1mm以下とすることが好ましい。
この媒体攪拌型分散装置によりリチウムイオン電池の電極形成用スラリーを製造する方法としては、通常、電極活物質、導電助剤、バインダーおよび極性溶媒をあらかじめ混合した後、媒体攪拌分散装置により分散処理するが、電極活物質と導電助剤は別個に所定粒度になるまで分散した後混合してもよい。
また、上記の媒体攪拌型分散装置を用いた分散方法により、導電助剤を構成する粒径が50nm未満の粒子と、粒径が50nm以上の粒子および/またはアスペクト比が3以上の粒子とを、同時に分散してもよいが、粒径が50nm未満の粒子のみ上記の媒体攪拌型分散装置を用いた分散方法により分散し、粒径が50nm以上の粒子および/またはアスペクト比が3以上の粒子を従来の分散方法により分散してもよい。
また、本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーを、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、アプリケーターなどの通常のコーティング方法により、集電体に塗布した後、乾燥して電極塗膜を形成すれば、リチウムイオン電池の電極が得られる。一般的に、銅の集電体を用いれば負電極が得られ、また、アルミニウムの集電体を用いれば正電極が得られる。
ここで、図1は、電極活物質1、粒径が50nm未満の導電助剤2および粒径が50nm以上の導電助剤3を含有してなるリチウムイオン電池の電極形成用スラリーを集電体4に塗布した後、乾燥して形成した電極塗膜を示す概念図である。
また、図2は、電極活物質1、粒径が50nm未満の導電助剤2およびアスペクト比が3以上の導電助剤5を含有してなるリチウムイオン電池の電極形成用スラリーを集電体4に塗布した後、乾燥して形成した電極塗膜を示す概念図である。
この負電極および正電極の両方、あるいは、負電極または正電極のいずれか一方を用いることにより、本発明のリチウムイオン電池が得られる。
このリチウム電池は、電解質、セパレータおよび電池形状などは特に限定されるものではない。
このリチウム電池は、負電極および正電極の両方、あるいは、負電極または正電極のいずれか一方が、高い充填性、高純度であり、電極活物質の表面に十分な活性点を有する上に、電極活物質間、および、電極活物質と集電体との間に十分な導電経路を有する本発明によって得られる電極材料によって形成されたものであるから、温度環境に依存し難く、かつ高い充放電容量、安定した充放電サイクル性能を備えたものであり、高出力化が達成されたものである。
以下、実施例1〜3および比較例1、2により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
例えば、本実施例では、電極活物質として、LiFePOのみを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、電極活物質として、他の正極活物質、負極活物質を用いてもよい。
また、本実施例では、電極材料自体の挙動をデータに反映させるため、負極に金属Liを用いたが、炭素材料、Li合金、LiTi12などの負極材料を用いてもかまわない。また電解液とセパレータの代わりに固体電解質を用いてもよい。
「実施例1」
正極活物質としてLiFePO(超微粒子LiFePO、NP−1、住友大阪セメント社製)85重量部、平均一次粒径11nmのカーボンブラック(デグサ社製)5重量部、ポリフッ化ビニリデン(PVdF、呉羽化学社製)5重量部、1−メチル2−ピロリドン(NMP)71.25重量部を混合し、混合物を得た。
この混合物に対して、媒体粒子として直径が0.25mmのジルコニアビーズを使用し、サンドミルを用いてディスク回転周速10m/秒の速さで1時間、分散を行った。
次いで、この混合物に平均一次粒径35nmのアセチレンブラック(デンカブラック、電気化学工業社製)5重量部を混合し、ディスク回転周速6m/秒の速さで30分間、混合を行い、正極活物質スラリーを得た。
その後、得られた正極活物質スラリーを走査電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均一次粒径11nmのカーボンブラックのほとんどは、平均粒径が約20nmの粒子として分散されていた。また、平均一次粒径35nmのアセチレンブラックのほとんどは、平均粒径が約120nmの粒子として分散されていた。
「実施例2」
平均一次粒径35nmのアセチレンブラック5重量部に代えて、短径5nm、長径1500nm、アスペクト比300のシングルウォールカーボンナノチューブ(Carbon Nanotechnologies Inc.製)5重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、正極活物質スラリーを得た。
その後、得られた正極活物質スラリーを走査電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均一次粒径11nmのカーボンブラックのほとんどは、平均粒径が約20nmの粒子として分散されていた。
「実施例3」
平均一次粒径35nmのアセチレンブラック5重量部に代えて、短径15nm、長径150nm、アスペクト比10のカーボンファイバー(VG−CF、昭和電工社製)5重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、正極活物質スラリーを得た。
その後、得られた正極活物質スラリーを走査電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均一次粒径11nmのカーボンブラックのほとんどは、平均粒径が約20nmの粒子として分散されていた。
「実施例4」
平均一次粒径35nmのアセチレンブラック5重量部に代えて、平均一次粒径35nmのアセチレンブラック2.5重量部と、短径5nm、長径1500nm、アスペクト比のシングルウォールカーボンナノチューブ(Carbon Nanotechnologies Inc.製)2.5重量部とを用いた以外は実施例1と同様にして、正極活物質スラリーを得た。
その後、得られた正極活物質スラリーを走査電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均一次粒径11nmのカーボンブラックのほとんどは、平均粒径が約20nmの粒子として分散されていた。また、平均一次粒径35nmのアセチレンブラックのほとんどは、平均粒径が約120nmの粒子として分散されていた。
「比較例1」
正極活物質としてLiFePO(超微粒子LiFePO、NP−1、住友大阪セメント社製)85重量部、平均一次粒径11nmのカーボンブラック(デグサ社製)10重量部、ポリフッ化ビニリデン(PVdF、呉羽化学社製)5重量部、1−メチル2−ピロリドン(NMP)71.25重量部を混合し、混合物を得た。
この混合物に対して、媒体粒子として直径が0.25mmのジルコニアビーズを使用し、サンドミルを用いてディスク回転周速10m/秒の速さで1時間、分散を行い、正極活物質スラリーを得た。
その後、得られた正極活物質スラリーを走査電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均一次粒径11nmのカーボンブラックのほとんどは、平均粒径が約20nmの粒子として分散されていた。
「比較例2」
カーボンブラック10重量部に代えて、平均一次粒径35nmのアセチレンブラック(デンカブラック、電気化学工業社製)10重量部を用いた以外は比較例1と同様にして、正極活物質スラリーを得た。
その後、得られた正極活物質スラリーを走査電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均一次粒径35nmのアセチレンブラックのほとんどは、平均粒径が約120nmの粒子として分散されていた。
「リチウムイオン電池の作製」
実施例1にて得られた正極活物質スラリーを、厚みが30μmのアルミニウム(Al)箔上に塗布し、その後、真空乾燥機を用いて真空乾燥し、その後、圧着し、正極(正の電極)とした。
次いで、乾燥Ar雰囲気下にてステンレススチール(SUS)製の2016コイン型セルを用いて、実施例1のリチウムイオン電池を作製した。
なお、負極には金属Liを、セパレータには多孔質ボリプロピレン膜を、電解質溶液には1mol/LのLiPF溶液を、それぞれ用いた。このLiPF溶液の溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとの比が1:1のものを用いた。
また、実施例2〜4および比較例1、2それぞれの正極活物質スラリーを用い、実施例1のリチウムイオン電池と全く同様にして実施例2〜4および比較例1、2それぞれのリチウムイオン電池を作製した。
「電池充放電試験」
実施例1〜4および比較例1、2各々のリチウムイオン電池の充放電試験を行った。
ここでは、カットオフ電圧を2〜4.5V、充放電レートを0.1Cから50Cの範囲で変化させ、試験の環境温度は、25℃(室温)とした。
実施例1〜4および比較例1、2各々のリチウムイオン電池の充放電試験結果を、表1および図3に示す。
なお、ここでは、30Cにおける放電容量の1Cにおける放電容量に対する比を、出力性能とした。
Figure 2007080652
以上の結果によれば、実施例1〜4のリチウムイオン電池では、比較例1、2のリチウムイオン電池と比べて、0.1Cという低速充放電レートから50Cという高速充放電レートの範囲にわたって、放電容量、出力性能共に優れており、高エネルギー密度を維持しつつ高出力化を達成することができることが分かった。特に、10C以上の高速充放電レートにおいても放電容量の低下が少ないことが分かった。
本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーは、電極活物質、導電助剤、バインダーおよび極性溶媒を含有し、導電助剤は粒径または形状の異なる2種以上の粒子からなるから、10C以上の高速充放電レートにおいても放電容量の低下が少ないリチウムイオン電池を作製することができ、リチウムイオン電池の特徴である高エネルギー密度を維持しつつ高出力化を達成することができるのはもちろんのこと、高出力が要求される電気自動車、ハイブリッド自動車などの移動体用電源、電動工具などの電源、あるいは発電設備の負荷平準化用途などの分野に対しても適用することが可能であり、その効果は非常に大きなものである。
本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーを用いて形成した電極塗膜の一例を示す概念図である。 本発明のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーを用いて形成した電極塗膜の他の例を示す概念図である。 リチウムイオン電池の充放電試験結果を示すグラフである。 従来のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーを用いて形成した電極塗膜の一例を示す概念図である。
符号の説明
1 電極活物質
2 粒径が50nm未満の導電助剤
3 粒径が50nm以上の導電助剤
4 集電体
5 アスペクト比が3以上の導電助剤

Claims (5)

  1. 電極活物質、導電助剤、バインダーおよび極性溶媒を含有してなるリチウムイオン電池の電極形成用スラリーであって、
    前記導電助剤は、粒径または形状の異なる2種以上の粒子からなることを特徴とするリチウムイオン電池の電極形成用スラリー。
  2. 前記粒子の少なくとも1種は粒径が50nm未満であって、他の種の粒子は粒径が50nm以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池の電極形成用スラリー。
  3. 前記粒子の少なくとも1種はアスペクト比が3以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池の電極形成用スラリー。
  4. 前記粒子の少なくとも1種は一次粒子が集合してなる二次粒子であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のリチウムイオン電池の電極形成用スラリー。
  5. 請求項1ないし4に記載のリチウムイオン電池の電極形成用スラリーを用いた電極を備えてなることを特徴とするリチウムイオン電池。

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