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JP2007070493A - 水溶性フィルム - Google Patents

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Keiichi Fujise
圭一 藤瀬
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Abstract

【課題】 冷水への溶解性に優れた水溶性フィルムであって、農薬、洗濯用洗剤等各種薬剤の包装材として有用であり、特に繊維柔軟剤の包装に適した水溶性フィルムを提供する。
【解決手段】 水溶性フィルムをポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体を含有してなるものとする。重合度が100〜4000であり、ケン化度が70〜100mol%であるポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した、K値が12〜150である重合体を10重量%以上含有することが好ましい。

Description

本発明は、各種薬品類の包装に好適に用いられる水溶性フィルムに関する。
近年、洗濯用洗剤、農薬、漂白剤、トイレタリー製品、工業用薬品等の各種薬品類を一定量ずつ水溶性フィルムにより密封包装(単位包装)し、その包装形態のまま水中に投入し、内容物を包装フィルムごと水に溶解または分散させて使用することが行われるようになってきている。このような単位包装は、身体に危険な薬品に直接触れることなく使用できる点や、内容物が一定量で包装されているために使用時に計量する必要がない点、薬剤を包装している容器の使用後の処理が不要である点等で有用である。
水溶性フィルムを用いて各種薬品類を単位包装する例として、衣料の洗濯に用いる1回分の洗剤を部分けん化ポリビニルアルコールからなる水溶性フィルムで単位包装することが開示されている(特許文献1)。しかし、部分けん化ポリビニルアルコールからなる水溶性フィルムは、低温の水へのフィルムの溶解性が十分でないという問題や、アルカリ性洗剤を包装した状態で長期に保存した場合に水への溶解性が低下するという問題を有している。
これに対し、ポリビニルアルコールにアニオン性基を導入することで、水溶性フィルムの水への溶解性を向上させるという試みがなされている。このようなアニオン性基で変性されたポリビニルアルコールからなる水溶性フィルムを用いて、洗剤組成物を含む層の両側に水溶性フィルムを接合したシート状洗剤包装体を製造したり、液体洗剤を包装したり、あるいはアルカリ性物質を包装したりすることが開示されている(特許文献2〜4)。
繊維柔軟剤は、従来はカチオン性界面活性剤を3〜15重量%配合した液体タイプのものが主流であったが、近年では使用量をより少なくするために高濃度化の傾向がある。このような繊維柔軟剤を、水溶性フィルムで単位包装することが求められているが、アニオン性基で変性されたポリビニルアルコールからなる水溶性フィルムを用いて繊維柔軟剤を包装した場合、包装体の冷水への溶解性が著しく低下するという問題や、繊維柔軟剤を包装した状態で長期に保存した場合に、水への溶解性が経時的に低下するという問題があった。その理由は明らかではないが、ポリビニルアルコールに含まれるアニオン性基の部分と繊維柔軟剤の主成分であるカチオン性物質が相互作用を起こすためと考えられる。
この問題点を解決する方法として、ポリビニルアルコールに特定の不飽和化合物を導入することが提案されている(特許文献5)。しかしながら、このように特定の不飽和化合物で変性されたポリビニルアルコールからなる水溶性フィルムを用いて、繊維柔軟剤を包装した場合にも、水溶性フィルムの水への溶解性が必ずしも十分ではなく、また、繊維柔軟剤を包装した状態で長期に保存した場合に、水への溶解性が低下するという問題が依然としてあった。
特開昭61−57700号公報 特開平10−72599号公報 特許第3262406号公報 特開平9−324096号公報 特開2002−3896号公報
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、冷水への溶解性に優れた水溶性フィルムを提供することを目的とする。また農薬、洗濯用洗剤等各種薬剤の包装材として有用であり、特に繊維柔軟剤の包装に適した水溶性フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討した結果、ポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体(以下、単にグラフト重合体ともいう)が目的とする水溶性フィルムを製造する上で極めて有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の水溶性フィルムは、ポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体を含有してなるものとする。
上記において、重合度が100〜4000であり、ケン化度が70〜100mol%であるポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した、K値が12〜150である重合体を10重量%以上含有することが好ましい。
ポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体としては、ポリビニルアルコール溶液にビニルピロリドンを配合し、開始剤として過酸化水素又は有機過酸化物を用いて重合することにより得られたものを用いることができる。
本発明の水溶性フィルムは、冷水に対する溶解性が優れており、農薬、洗濯用洗剤等各種削剤の包装材として有用である。特に、繊維柔軟剤を包装した状態で長期に保存した場合でも溶解性が低下しにくいため、繊維柔軟剤包装用フィルムとして好適に用いられる。
本発明で用いるグラフト重合体の原料となるポリビニルアルコール(以下、PVAと表記する場合もある)は、重合度が100〜4000であることが好ましく、100〜3000であることがより好ましい。重合度が100未満であるとフィルムの強度が弱くなり、4000を超えると水に溶解する場合に要する時間が長くなる。
ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100mol%であることが好ましく、70〜99mol%であることがより好ましい。ケン化度が70mol%未満ではフィルムの強度が弱くなり、99mol%を超えると水溶液の調製が困難な場合がある。
さらにグラフト重合体のK値が12未満ではフィルムの強度が弱くなり、150を超えると水に溶け難く使いづらいものとなる。
グラフト重合体におけるビニルピロリドンの量はポリビニルアルコールに対して5〜900重量%であることが好ましい。5重量%未満であると充分な水溶性が得られず、900重量%を超えると、フィルムの強度が低下する傾向がある。
本発明の水溶性フィルムは上記グラフト重合体を10重量%以上含有することが好ましい。10重量%未満であると本発明の目的とする効果が得られ難くなる。
上記グラフト重合体は、ポリビニルアルコール溶液にビニルピロリドンを配合し、適当な開始剤を用いて重合する製造方法により得ることができる。
開始剤としてはラジカル重合に通常用いられる過酸化水素又は有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物の例としては、tert−ブチルハイドロパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。反応方法及び反応条件は一般的なラジカル重合の例に従って選択すればよい。
一般に、水溶性フィルムには、高温多湿の地域や寒冷地での使用にも耐え得る強度が要求され、特に低温での耐衝撃性が必要とされる。本発明の水溶性フィルムには、低温における耐衝撃性を向上させることを目的として、水溶性フィルムのガラス転移点を下げるために種々の可塑剤を配合することができる。さらに、水に対する溶解性や加工性を向上させる目的で可塑剤を配合することもできる。
可塑剤としてはPVAの可塑剤として一般に用いられているものが特に制限なく用いられ、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,3−ブタンジオールなどの多価アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテル類;ポリビニルピロリドンなどのポリビニルアミド類;ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのフェノール誘導体;N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどのアミド化合物;グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物や水などが挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。これらの可塑剤の中でも、水溶性フィルムの水溶性を向上させる目的には、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンを用いるのが好ましい。さらに、可塑剤のブリードアウトによる水溶性フィルムの水溶性の低下を抑制する点から、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンが特に好ましい。
可塑剤としてポリエチレングリコールを用いる場合のポリエチレングリコールの分子量には特に制限はないが、グラフト重合体との相溶性およびブリードアウトによる水溶性フィルムの水溶性の低下を抑制する効果の点から数平均分子量が100〜1000であることが好ましい。ポリビニルピロリドンの分子量についても特に制限はないが、グラフト重合体との相溶性の点から重量平均分子量で1000〜20000であることが好ましい。
可塑剤の配合量は、グラフト重合体100重量部に対して1〜50重量部が好ましく、1〜35重量部がさらに好ましい。可塑剤の配合量が1重量部未満の場合には、可塑剤を配合することによる効果が発現しない場合がある。一方、可塑剤の配合量が50重量部を超えると、可塑剤のブリードアウトが大きくなり、得られる水溶性フィルムの耐ブロッキング性が低下する場合がある。水溶性フィルム中の可塑剤が包装体の内容物に移行するような場合には、水溶性フィルムの水に対する溶解性が経時的に低下したり、あるいは低温における柔軟性が低下することがあるので、このような事態を避けるため、可塑剤の配合量をグラフト重合体100重量部に対して1〜20重量部にするのが好ましい。
また、可塑剤の配合量が多くなるほど水溶性フィルムのヒートシール温度が低下し、水溶性フィルムを製袋する際の生産性が向上する傾向がある。このような観点からは、得られる水溶性フィルムのヒートシール温度が170℃以下となるような割合で可塑剤を配合するのが好ましく、160℃以下となるような割合で可塑剤を配合するのがさらに好ましい。
さらに可塑剤の配合量は、得られる水溶性フィルムの強度およびヤング率の大きさに影響を与えやすい。水溶性フィルムの実用性の点から、フィルムの強度は0.5kg/mm以上であるのが好ましく、0.8kg/mm以上であるのがさらに好ましい。得られる水溶性フィルムの形態安定性および製袋機などの工程通過性の点から、水溶性フィルムのヤング率は0.5kg/mm以上であるのが好ましく、1.0kg/mm以上であるのがより好ましい。従って、このような範囲の強度及びヤング率を有する水溶性フィルムが得られるように、可塑剤を配合するのが好ましい。
本発明の水溶性フィルムには、必要に応じて糖類を配合することができ、これにより、水溶性フィルムの水への溶解性および形態安定性をより向上させることができる。糖類としては、グルコースなどの単糖類、オリゴ糖、多糖類およびマンニットなどの鎖状糖アルコールのいずれも使用可能である。多糖類の例としては、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、ヘミセルロース、ペクチン、プルラン、寒天、アルギン酸、カラギーナン、デキストリン、トレハロースなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。鎖状糖アルコールの例としては、トレイット、エリトリットなどの炭素数4のテトリット類、アラビット、キシリットなどの炭素数5のペンチット類、グリシット、マンニット、ソルビットなどの炭素数6のヘキシット類が挙げられる。
水溶性フィルムの冷水への溶解性がより良好となる点から、上記糖類のなかでもデンプンが特に好ましい。デンプンとしては、例えば、トウモロコシ、馬鈴薯などの生デンプン、これらに物理的または化学的処置を施した加工デンプン(デキストリン、酸化デンプン、エーテル化デンプン、カチオン化デンプンなど)などを用いることができる。
糖類の配合量は、水溶性フィルムの形態安定性、および水溶性フィルムで繊維柔軟剤を包装した包装体の冷水溶解性の点から、グラフト重合体100重量部に対して1〜30重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることがより好ましく、1〜10重量部であることが特に好ましい。糖類の配合量が1重量部より小さいと、水溶性フィルムの形態安定性および冷水への溶解性の向上効果が発現しない場合がある。一方、糖類の配合量が30重量部より多いと、特に包装体を少量の水で溶解する場合(高カチオン濃度時)に水への溶解性がかえって低下することがある。
本発明の水溶性フィルムには、さらに必要に応じて、無機フィラーを配合することができる。無機フィラーの使用により水溶性フィルムにブロッキング防止性を付与することができる。使用可能な無機フィラーの例としては、シリカ、重質、軽質または表面処理された炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ゼオライト、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、マイカ、炭酸マグネシウム、カオリン、ハロサイト、パイロフェライト、セリサイトなどのクレー、タルクなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。中でも、グラフト重合体の分散性が良好である点から、シリカおよびタルクが好ましい。無機フィラーの平均粒子径は、水溶性フィルムのブロッキング防止性の点から1μm以上が好ましく、一方、グラフト重合体への分散性の点から10μm以下が好ましい。無機フィラーを配合することにより発現する水溶性フィルムのブロッキング防止性と、PVAへの無機フィラーの分散性との双方の要求を満足させるため、平均粒子径が1〜7μm程度であるのがより好ましい。
無機フィラーの配合量は、水溶性フィルムのブロッキング防止性およびPVAへの無機フィラーの分散性の点から、PVA100重量部に対して0.5〜20重量部であることが好ましく、0.7〜15重量部であることがより好ましく、1〜10重量部であることが特に好ましい。なお、無機フィラーを20重量部を超えて配合すると、PVAへの分散性が低下して無機フィラーが凝集し、得られる水溶性フィルムの水溶性が低下する傾向がある。
本発明の水溶性フィルムには、さらに必要に応じて、着色剤、香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などの添加剤を適宜配合することもできる。例えば、グラフト重合体100重量部に対して界面活性剤を0.01〜5重量部の割合で配合することにより、製膜装置のダイスやドラムなどの金属表面と、製膜したフィルムやフィルム原液との剥離性を向上させることができる。
また、本発明の水溶性フィルムには、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、本発明に用いられるグラフト重合体とは異なる種類のPVA、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸またはその塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を配合することもできる。特に低粘度タイプのカルボキシメチルセルロースを添加することにより、フィルムの水溶性をより向上させることができる。
本発明の水溶性フィルムの製造方法は特に限定されないが、上記グラフト重合体に、必要に応じて、可塑剤、糖類、無機フィラーやその他の成分を配合し、撹拌槽中にて溶媒に溶解または分散させる方法や押出機中にて溶融混練する方法など、公知の方法で混合することにより調製することにより製造原料を調製すればよい。
上記製造原料から、一般にフィルムを製膜する際に用いられている製膜方法、例えば、流延製膜法、湿式製膜法、乾式製膜法、押出製膜法、溶融製膜法、コート法、インフレーション製膜法などの製膜方法で水溶性フィルムを製造することができる。例えば、本発明の水溶性フィルムの製膜に必要な成分を、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、フェノールなどの溶媒の1種または2種以上の混合液に溶解し、均一な製膜原液を調製した後、流延製膜法などの製膜方法で製造すればよい。この製膜原液の濃度は、粘度の点から70重量%以下(溶媒の含有量が30重量%以上)であることが好ましい。
本発明の水溶性フィルムの厚さは10〜200μmであることが好ましく、フィルムの強度と水溶性のバランスの点から20〜150μmであるのがより好ましい。
本発明の水溶性フィルムのブロッキング防止性を向上させるために、必要に応じて、該水溶性フィルム表面をロールマット化したり、シリカやデンプンなどのブロッキング防止用の粉体を水溶性フィルムに塗布したり、エンボス処理を行うことができる。フィルム表面のロールマット化は、製膜時に乾燥前のフィルムが接するロールに微細な凹凸を形成しておくことにより施すことができる。エンボス処理は一般にフィルムが形成された後で、熱や圧力を加えながらエンボスロールとゴムロールでニップすることで行うことができる。粉体の塗布はブロッキング防止の効果が大きいが、用途によっては使用できないことがある。ロールマット化やエンボス処理を施すことにはそのような制約はなく、ブロッキングの防止効果の大きさの点からロールマット化することが特に好ましい。
本発明の水溶性フィルムは、冷水への溶解速度が優れ、フィルムの厚さ40μmの場合の5℃水中での完全溶解時間を80秒以下とすることができ、より好ましくは60秒以下とし、特に好ましくは40秒以下とする。なお、本明細書でいう5℃水中での完全溶解時間とは、スライドマウント法により測定した値である。すなわち、厚さ40μmのフィルムを40mm×40mmの正方形に切り、これをスライドマウントにはさみ、撹拌している5℃の水中に浸漬してフィルムが完全に溶解するまでの時間を測定した値である。なお、フィルムの厚さが40μmとは異なる場合の完全溶解時間は、下記式(I)によりフィルムの厚さを40μmに換算した値である。
溶解時間(秒)=(40/フィルムの厚さ(μm))×溶解時間(秒)…(I)
本発明の水溶性フィルムは、繊維柔軟剤を包装して包装体としたときの冷水溶解性にも優れ、繊維柔軟剤を包装した後、室温で10分間で放置した包装体を40×40mmの正方形に切り、これをスライドマウント法で測定した、5℃水中での完全溶解時間(フィルムの厚さ40μm)を120秒以下とすることができ、より好ましくは100秒以下とし、特に好ましくは80秒以下とする。
また、本発明の水溶性フィルムは、繊維柔軟剤を包装した状態で長期に保存した場合でも溶解性が経時的に低下しにくいという利点を有する。長期保存の促進試験として、繊維柔軟剤を水溶性フィルムで包装した包装体を、30℃、80%RHの恒温恒湿槽に入れて、2週間後に取り出す。上記方法によりフィルムの溶解時間を測定した場合に、繊維柔軟剤を包装した包装体を室温で10分間放置した後の溶解時間(A)と保存促進試験後の溶解時間(B)との比(B/A)は、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.20以下が特に好ましい。
本発明の水溶性フィルムを用いて繊維柔軟剤を包装するには、物品をフィルム包装するのに従来から使用されている方法を適宜採用することができる。繊維柔軟剤を包装する方法としては、繊維柔軟剤を包装後のフィルムを三方シール自動包装機などを用いてヒートシールする方法や、フィルムの周縁部分を接着剤で接着し、得られた袋の開放部から繊維柔軟剤を充填した後、開放部をヒートシールするか、または接着する方法などが例示できる。
本発明の水溶性フィルムで繊維柔軟剤を包装した包装体を市販の洗濯機で使用した後に洗濯機内に残存する未溶解物を乾燥した固形分量は、1.0g以下が好ましく、0.5g以下がより好ましく、0.3g以下が特に好ましい。
本発明の水溶性フィルムにより包装することができる繊維柔軟剤は特に制限はなく、繊維柔軟剤として一般家庭で日常使用されているもの全てが対象となる。その具体例として、ジ(硬化牛脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、メチルジ(硬化牛脂アルキル)アミン(特開昭52−597965号公報)、アシル化アルカノールアミン(特開昭58−60070号公報)等が挙げられる。本発明の水溶性フィルムは、カチオン性界面活性剤を包装した場合でも水への溶解性が低下しないという特性を有することから、カチオン性界面活性剤を包装するのにも適している。
繊維柔軟剤は、水分率が10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが特に好ましい。繊維柔軟剤の水分率が10重量%を超えると、水溶性フィルムで包装した場合に、該水溶性フィルム中の可塑剤が繊維柔軟剤側に移行して、水溶性フィルム中の可塑剤が減少する傾向があり、包装体の水への溶解性が低下することがある。繊維柔軟剤には、必要に応じて、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、多価アルコール等の溶剤、非イオン界面活性剤、塩化アンモニウムなどの水溶性塩、香料、着色剤、消泡剤、再付着防止剤、蛍光増白剤、殺菌剤、防縮剤、シリコーン化合物、無機電解質、抗菌剤、酸化防止剤、保存剤などが配合されていてもよい。
繊維柔軟剤は、固体、粉体、顆粒状、液体など、いずれの形態でもよい。繊維柔軟剤の代表的な形態は、ジ長鎖アルキル型4級アンモニウム塩を主成分とする分散溶液であるが、粉末または錠剤でもよい。
繊維柔軟剤を水溶性フィルムで包装する際には、繊維柔軟剤の充填率が60〜98%であることが好ましく、70〜95%であることがより好ましい。繊維柔軟剤の充填率が小さ過ぎると、包装体中に空気が多く含まれることになるので、包装体を洗濯機内に入れた場合に水中に沈むのが困難になり、溶解時間が長くなる傾向がある。このため、繊維柔軟剤の充填率は60%以上であることが好ましい。一方、繊維柔軟剤の充填率が98%を超えると、包装体が水中に早く沈み過ぎ、包装体が洗濯機の底に留まって水への溶解性が低下する傾向がある。
通常、繊維柔軟剤は最終の濯ぎ時に添加するが、その手間を省く方法として、洗濯機に別途引出しを設け、洗濯を開始するときにこの引出しに繊維柔軟剤入りの包装体を入れておいて、濯ぎの際に用いられる水の作用により包装体が洗濯機の槽内に流れ落ちるような構造にしておく方法がある。このような構造の洗濯機に繊維柔軟剤入りの包装体を使用する場合には、通常引出し内に流れる水の量が洗濯槽内の水の量に比べて少ないため、少量の水で包装体が溶解し、槽内に流れ落ちるようにする必要がある。この場合、包装体における繊維柔軟剤の充填率を変えることで空気量を調整するようにすれば、水が引出し内に流れてきた際、包装体が空気の浮力によって適度に浮き、その一方で下部が水と接触するため、少量の水でも包装体は溶解し、包装体が水に溶けない状態で引出し内に残ることが防止できる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、特に断らない限り「重量部」および「重量%」をそれぞれ意味する。
[実施例1〜4、比較例1,2]
以下それぞれの粉末状重合物100重量部に対し、可塑剤としてグリセリン15重量部および水を添加して均等な5%水溶液(含水率90%)を作成し、ポリエステルフィルム上に流延して室温で乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離することにより、厚さ40μmのフィルムを得た。得られたフィルムに100℃で10分間の熱処理を行った。これらフィルムにつき下記の評価を行った。なお、包装体の充填率は90%とした。
粉末状重合物1:ポリビニルアルコール(PVA)(重合度200、ケン化度98−99mol%)にビニルピロリドン(VP)(対PVA 5.26wt%)をグラフト重合したK値23、固形分97.1%のパウダ−。
粉末状重合物2:PVA(重合度2400、ケン化度98−99mol%)にVP(対PVA 42.9wt%)をグラフト重合したK値31、固形分98.5%のパウダー。
粉末状重合物3:PVA(重合度500、ケン化度72.5−74.5mol%)にVP(対PVA 150wt%)をグラフト重合したK値40、固形分96.3%のパウダー。
粉末状重合物4:PVA(重合度3500、ケン化度87−89mol%)にVP(対PVA 900wt%)をグラフト重合したK値94、固形分99.0%のパウダー。
粉末状重合物5:ポリビニルアルコール(重合度3500、ケン化度87−89mol%)のパウダー。
粉末状重合物6:ポリビニルピロリドン K−30 のパウダー。
実施例および比較例において、フィルムの各種特性の測定および評価は以下の方法により行った。
[フィルムの溶解性の評価(溶解時間の測定)方法(1)]
5℃の恒温バスにマグネティックスターラーを設置した。1リットルの蒸留水を入れた1リットルのガラスビーカーを上記恒温バスに入れ、5cmの回転子を用いて330rpmで撹拌を行った。ビーカー内の蒸留水が5℃になった後、水溶性の測定を開始した。
すなわちフィルムを4cm×4cmの正方形に切り、これをスライドマウントに挟み、撹拌している5℃の水中に浸漬してフィルムの溶解状態を観察し、フィルムが完全に溶解するまでの時間(秒数)を測定した。なお、フィルムの厚さが40μmとは異なる場合には、下記式(I)に従ってフィルム厚さ40μmの値に換算した。
溶解時間(秒)=(40/フィルムの厚さ(μm))×溶解時間(秒)…(I)
[フィルムの溶解性の評価(溶解時間の測定)方法(2)]
フィルムから4.5cm×4.5cmの袋を作り、その内部に繊維柔軟剤(三洋化成工業(株)製サファノールP−200)とヘキシレングリコールの混合液(重量比率は1:1)7gを入れ、熱シールして密封して包装体を作製した。包装して10分後に包装体を4cm×4cmに切り取り、5℃における水溶性を評価した。
[フィルムの保存安定性の評価方法]
フィルムから4.5cm×4.5cmの袋を作り、内部に繊維柔軟剤(三洋化成工業(株)製サファノールP−200)とヘキシレングリコールの混合液(重量比率は1:1)7gを入れ、熱シールして密封して包装体を作製した。長期保存の促進試験として、この包装袋を30℃、80%RHの恒温恒湿槽に入れ、2週間後に取り出して、包装していたフィルムの水溶性を前述の方法にしたがって測定した。
フィルムの保存安定性は、繊維柔軟剤を包装した包装体を用い、これを室温で10分間放置した後の溶解時間(A)と保存促進試験後の溶解時間(B)との比(B/A)を求め、その値の大小で評価した。
[包装体の溶解性の評価(残存量の測定)方法]
フィルムから4.5cm×4.5cmの袋を作り、内部に繊維柔軟剤(三洋化成工業(株)製サファノールP−200)とヘキシレングリコールの混合液(重量比率は1:1)7gを入れ、熱シールして密封して包装体を作製した。市販の洗濯機(シャープ(株)製ドラム式乾燥洗濯機)を用いて、繊維柔軟剤専用の引出しに該包装体を入れて洗濯機を運転し、洗濯後に引出し内の残存物を集めて、105℃で6時間乾燥した後の重量を測定し、評価した。
[ヤング率および強度の測定方法]
幅10mmのフィルムを、20℃、65%RHの雰囲気のもとで1週間調湿した後、オートグラフで引張り試験を行った。チャック間隔は50mm、引張り速度は500mm/minとした。
Figure 2007070493
表1に示された結果から分かるように、実施例1〜4では、水溶性、保存安定性、物性のいずれにおいても良好な結果が得られた。一方、比較例1では水に溶け難く、洗濯機で包装体を用いた際に柔軟剤専用の引き出し内に溶け残りが多かった。比較例2では繊維柔軟剤を包装した場合の保存安定剤が低く、強度およびヤング率が低いのが認められた。
本発明の水溶性フィルムは、洗濯用洗剤、農薬、漂白剤、トイレタリー製品、工業用薬品等の各種薬品類の包装体として好適に用いられる。

Claims (3)

  1. ポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体を含有してなる水溶性フィルム。
  2. 重合度が100〜4000であり、ケン化度が70〜100mol%であるポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した、K値が12〜150である重合体を10重量%以上含有することを特徴とする、請求項1に記載の水溶性フィルム。
  3. 前記ポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体が、ポリビニルアルコール溶液にビニルピロリドンを配合し、開始剤として過酸化水素又は有機過酸化物を用いて重合して得られたものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水溶性フィルム。
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