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JP2007066886A - エレクトロルミネッセンス素子用積層体及びエレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

エレクトロルミネッセンス素子用積層体及びエレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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JP2007066886A JP2006210015A JP2006210015A JP2007066886A JP 2007066886 A JP2007066886 A JP 2007066886A JP 2006210015 A JP2006210015 A JP 2006210015A JP 2006210015 A JP2006210015 A JP 2006210015A JP 2007066886 A JP2007066886 A JP 2007066886A
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JP2006210015A
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Kaneichiro Motoda
兼一郎 元田
Keishin Handa
敬信 半田
Katsuya Funayama
勝矢 船山
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Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

【課題】光取出し層を設けたエレクトロルミネッセンス素子のエレクトロルミネッセンス層の特性劣化の問題を解消し、光取出し効率が高く、ダークスポットや寿命低下の少ないエレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】透光体4、光取出し層5A,5B及び電極層(第1の電極層)3がこの順に配置されてなるエレクトロルミネッセンス素子用積層体。光取出し層5A,5Bは、0.5〜20μg/mmの水分及び揮発性有機成分を含有する。このエレクトロルミネッセンス素子用積層体の第1の電極層3上に、エレクトロルミネッセンス層2及び第2の電極層1がこの順に配置されてなるエレクトロルミネッセンス素子。
【選択図】図1

Description

本発明は、エレクトロルミネッセンス(EL)素子に用いられるエレクトロルミネッセンス素子用積層体に関するものである。本発明はまた、このようなエレクトロルミネッセンス素子用積層体を用いたエレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
一般に、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイに用いられるエレクトロルミネッセンス素子は、陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子とがエレクトロルミネッセンス層で再結合し、その再結合エネルギーによって発光中心が励起され、発光するという発光原理を有する。
図2は、従来の一般的なエレクトロルミネッセンス素子を示す模式的な断面図であり、電極層(陰極)1、エレクトロルミネッセンス層2、透明電極層(陽極)3及び透光体(透明基板)4がこの順で積層されている。
エレクトロルミネッセンスディスプレイにおいては、エレクトロルミネッセンス層で発光した光が効率的に取り出されることが好ましいが、発光した光のうち出射角の大きい光(臨界角に近い角度で出射された光)は、出射面の透明基板と空気との界面で全反射し、透明基板の内部を面方向に全反射しながら進む導波光となる。また、透明電極層と透明基板との界面で全反射し、透明電極内部、あるいは透明電極とエレクトロルミネッセンス層内部を面方向に進む導波光も存在し、これらの導波光は素子内部で吸収されて減衰してしまい、外部へ取り出されない。
これらの導波光のために、従来において、エレクトロルミネッセンス素子の透明基板から取り出される光取出し効率(エレクトロルミネッセンス層で発光した光がエレクトロルミネッセンス素子の外部取り出される割合のこと。)は20%程度と低かった。
そこで、透明基板と透明電極層との間に、外部への光取出し効率を向上させるための層や光取出し膜を形成する技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、光取出し面に光散乱部を有するエレクトロルミネッセンス素子が記載されている。特許文献2には、透明電極と透明基板との間に、屈折率が透明電極より小さく、かつ透明基板より大きい中間層を形成したエレクトロルミネッセンス素子が記載されている。また、特許文献3には、発光層と同等又はそれ以上の屈折率を有し、かつその内部に実質的に光の反射・散乱角に乱れを生じさせる領域を有する透明層を透明電極の光取出し面側に隣接して形成したエレクトロルミネッセンス素子が記載されている。
しかしながら、光取出し層を有するエレクトロルミネッセンス素子は、エレクトロルミネッセンス層のダークスポットの増加や寿命低下といった、特性が劣化し易いという問題があった。
特許第2931211号公報 特開2004−134158号公報 特開2004−296429号公報
本発明は、エレクトロルミネッセンス素子の光取出し効率向上のための光取出し層を有するエレクトロルミネッセンス素子用積層体であって、エレクトロルミネッセンス層の特性劣化を引き起こすことがなく、従って、光取出し効率が高く、ダークスポットや寿命低下の少ないエレクトロルミネッセンス素子を実現し得るエレクトロルミネッセンス素子用積層体と、このエレクトロルミネッセンス素子用積層体を用いたエレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、光取出し層を有するエレクトロルミネッセンス素子において、エレクトロルミネッセンス層の特性が劣化し易いのは、光取出し層に含まれる水分や揮発性有機成分が関係していることを知見した。よって、光取出し層の水分及び揮発性有機成分をある一定の量にコントロールすることにより、エレクトロルミネッセンス層が特性劣化を引き起こしにくく、かつ、光取出し効率の高いエレクトロルミネッセンス素子を提供できることを見出した。
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 透光体、光取出し層及び電極層(以下「第1の電極層」と称す。)がこの順に配置されてなるエレクトロルミネッセンス素子用積層体であって、該光取出し層が、0.5〜20μg/mmの水分及び揮発性有機成分を含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子用積層体。
なお、本発明における光取出し層中の水分及び揮発性有機成分量とは、後述の測定方法により測定された値である。
[2] 該光取出し層が、1層又は2層以上の層からなる光取出し層であって、該層のうち少なくとも1層が光散乱機能を有する層であることを特徴とする[1]に記載のエレクトロルミネッセンス素子用積層体。
[3] 該光散乱機能を有する層が高屈折率層であることを特徴とする[2]に記載のエレクトロルミネッセンス素子用積層体。
[4] [1]〜[3]に記載のエレクトロルミネッセンス素子用積層体の前記第1の電極層上に、エレクトロルミネッセンス層及び第2の電極層がこの順に配置されてなることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
このように、水分及び揮発性有機成分量がコントロールされた光取出し層を有する本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、例えば、
透光体、光取出し層、第1の電極層、エレクトロルミネッセンス層及び第2の電極層を有し、透光体、光取出し層及び第1の電極層がこの順に積層されてなるエレクトロルミネッセンス素子を製造する方法において、
光取出し層形成後及び/又は第1の電極層形成後に、水分及び揮発性有機成分の脱離処理を行なうことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法、
によって製造することができる。
このエレクトロルミネッセンス素子は、透光体、光取出し層、第1の電極層、エレクトロルミネッセンス層及び第2の電極層がこの順に積層されていることが好ましい。
この方法において水分及び揮発性有機成分の脱離処理が、加熱処理であることが好ましい。
本発明に係る光取出し層は、水分及び揮発性有機成分量が所定の範囲内にコントロールされているため、エレクトロルミネッセンス層の特性劣化が起こり難い。即ち、本発明においては、透光体上に、所定量の水分及び揮発性有機成分を含む光取出し層を形成することにより、クラックの無い光取出し層を形成することができ、かつ、電極層形成前後での光取出し層の構造変化を緩和し、均一な光取出し層を形成することができ、これによりエレクトロルミネッセンス層の特性劣化も防止される。
このように、本発明では、エレクトロルミネッセンス層の特性劣化を引き起こすことがなく、かつ、均一な光取出し層を形成することができることから、本発明によれば、ダークスポットや寿命低下要因がなく、耐久性に優れ、しかも均一で高品質な光取出し層により、光取出し効率が高く、高効率のエレクトロルミネッセンス素子を容易に実現することが可能となる。
このような本発明のエレクトロルミネッセンス素子によれば、低い電流量で高い輝度が得られることから、長寿命の素子を提供することができる。また、高い輝度が得られることで、ディスプレイ用途、照明用途、その他発光体として有用なエレクトロルミネッセンス素子となる。
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は自発光素子であり、かつ透光体を有するフィールドエミッションディスプレイやプラズマディスプレイなどにも利用することができ、その工業的有用性は非常に大きい。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
[エレクトロルミネッセンス素子用積層体]
本発明のエレクトロルミネッセンス素子用積層体は、透光体、光取出し層及び第1の電極層がこの順に配置されてなり、光取出し層が、0.5〜20μg/mmの水分及び揮発性有機成分を含有することを特徴とする。
〈透光体〉
透光体は、通常、エレクトロルミネッセンス素子の基板となるものを意味する。
この透光体としては、通常、透光体の屈折率は1.4以上、好ましくは1.45以上、さらに好ましくは1.47以上、通常1.9未満、好ましくは1.80未満、さらに好ましくは1.75未満である。
なお、本発明において、透光体や高屈折率層の屈折率、後述の低屈折率層の屈折率は、エリプソメーター、反射率測定、プリズムカップラーなどの光学的手法で測定することができるが、通常、プリズムカップラー或いは分光エリプソメーターで測定された値をいう。
こうした屈折率を有する透光体としては、汎用材料からなる透明基板を用いることができる。例えば、BK7、SF11、LaSFN9、BaK1、F2などの各種ショットガラス、合成フェーズドシリカガラス、光学クラウンガラス、低膨張ボロシリケートガラス、サファイヤガラス、ソーダガラス、無アルカリガラスなどのガラス、ポリメチルメタクリレートや架橋アクリレートなどのアクリル樹脂、ビスフェノールAポリカーボネートなどの芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィンなどの非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレンなどのスチレン樹脂、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などの合成樹脂などが挙げられ、これらの積層体であってもよい。これらのうち、ショットガラス、合成フェーズドシリカガラス、光学クラウンガラス、低膨張ボロシリケートガラス、ソーダガラス、無アルカリガラス、アクリル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂が好ましい。
なお、これら透光体の表面、即ち、光取出し側(光取出し層形成面と反対側)の面には、目的と用途に応じて反射防止フィルム、円偏光フィルム、位相差フィルムなどの光学フィルムを形成、若しくは張り合わせてもよい。また、透光体の表面を、光取出し層を有する層で詳述したような凸凹構造界面にして、さらに光散乱機能を付与してもよい。
透光体の厚さは、通常0.1mm以上10mm以下である。機械的強度やガスバリア性の観点から、透光体の厚さは好ましくは0.2mm以上であり、軽量化、光線透過率の観点から、通常5mm以下、好ましくは3mm以下である。
〈光取出し層〉
本発明で言う光取出し層とは、例えば、エレクトロルミネッセンス素子の透光体(透明基板)と電極層(2つの電極のうちの透光体に近い方の電極層であり、通常は陽極である。以下「第1の電極層」と称す場合がある。)との間に存在する、1層又は2層以上の層からなるものである。光取出し層を構成する層としては、以下に詳述する光散乱機能を有する層、低屈折率層、高屈折率層、ガスバリア層などが挙げられる。光取出し層を構成する層のうち、少なくとも1層は光散乱機能を有する層であることが好ましい。また、例えば、低屈折率で光散乱機能を有する層、又は高屈折率で光散乱機能を有する層のように、1つの層が複数の機能を兼ねた層となっていても良い。特に、光散乱機能を有する層が高屈折率層であることが好ましい。
(光取出し層の水分及び揮発性有機成分量)
本発明のエレクトロルミネッセンス素子用積層体の光取出し層は、水分及び揮発性有機成分の合計の含有量が0.5〜20μg/mmであることを特徴とする。この範囲であれば、クラックの無い光取出し層を形成することができ、かつ、光取出し層上への第1の電極層の形成前後での光取出し層の構造変化を緩和し、均一な光取出し層を維持することができる。光取出し層中の水分及び揮発性有機成分量がこの範囲より少ない場合は、光取出し層の膜の安定性が劣り、著しい場合には亀裂が発生する恐れがある。また、光取出し層中の水分及び揮発性有機成分量がこの範囲より多い場合には、エレクトロルミネッセンス層の形成前に光取出し層の構造変化が生じることによる光取出し能の低下やエレクトロルミネッセンス素子の劣化を生じる恐れがある。
特に、光取出し層中の水分及び揮発性有機成分量は、0.5μg/mm以上が好ましく、1μg/mm以上が特に好ましい。また、20μg/mm以下が好ましく、10μg/mm以下が特に好ましい。
特に、光取出し層の水分量は、0.4μg/mm以上が好ましく、0.8μg/mm以上が特に好ましい。また、16μg/mm以下が好ましく、8μg/mm以下が特に好ましい。
また、光取出し層の揮発性有機成分量は0.1μg/mm以上が好ましく、0.2μg/mm以上が特に好ましい。また、4μg/mm以下が好ましく、2μg/mm以下が特に好ましい。
ただし、本発明に係る光取出し層中の揮発性有機成分とは、沸点が水より低い有機成分のことをいい、具体的には炭素数1〜4程度の有機化合物である。
なお、本発明における光取出し層の水分及び揮発性有機成分量の測定方法は以下の通りである。
(光取出し層中の水分及び/又は揮発性有機成分の測定方法)
本発明においては通常、透光体及び光取出し層からなる積層体を試料として測定するが、電極による水分及び揮発性有機成分の影響はないので、光取出し層のみ、或いは、透光体、光取出し層及び第1の電極層からなる積層体を測定してもよい。
通常、透光体及び光取出し層からなる積層体を試料として、以下の方法により水分及び揮発性有機成分の脱離量を測定する。
上記の試料を、Temperature Programmed Desorption or Decomposition Mass−spectrometry(以後TPD−MSと略す)の手法を用いて、Heガスを60〜80ml/minでフローしながら室温から200℃の間で10℃/minの昇温速度で水分及び揮発性有機成分を脱離させ、その量を定量する。水分はアネルバ(株)社製AGS−7000を用いてEI法で定量し、揮発性有機成分はAgilent社製5973Nを用いてガスクロマトグラフィー法で定量する(GC−MS分析カラム:Ultra ALLOY−DX30,0.25×30m,f=0.15μm)。
定量については、シュウ酸カルシウムを1000℃までに加熱すると、理論通り1モルのシュウ酸カルシウム(CaC・HO)から1モルずつ、HO、CO、CO、CaOが出来ると仮定する。そして、実際にTPD−MSにおいてシュウ酸カルシウム(CaC・HO)を正確に秤量したものを1000℃まで加熱し、その時に発生するm/z=18(HO)、m/z=28(CO)、m/z=44(CO)の面積値から、1モルあたりの面積値の検量線を作成する。定量については、この検量線を用いて行う。
なお、水分と揮発性有機成分のTotal量に関しては、m/z=44(CO)の検量線を用いて定量を行う。
本発明に係る光取出し層は、このようにして測定された水分及び揮発性有機成分の脱離量の合計が0.5〜20μg/mmであるものである。
なお、上記水分及び揮発性有機成分量が0.5〜20μg/mmである光取出し層を形成する方法については、後述する。
(光散乱機能を有する層)
本発明に係る光取出し層は、光取出し層を構成する層のうち、少なくとも1層は光散乱機能を有する層であることが好ましい。
ここで、光散乱機能とは、発光光線をMie散乱による多重散乱させる機能を有する層であり、この光散乱機能により、エレクトロルミネッセンス層を含む薄膜内での導波光もしくは導波光の滲み出し光を光取出し方向に散乱させることができる。
光散乱機能を有する層にあっては、効率的に多重散乱させるためには、散乱体(例えば、粒子)若しくは散乱形状(例えば、凹凸形状)、散乱体若しくは散乱形状周辺のマトリックスとの屈折率差と、散乱体若しくは散乱形状のサイズ、を最適に調整する必要がある。
例えば、散乱体間の距離が散乱体サイズと同等、若しくはそれ以下であることが好ましく、散乱体サイズの1/2以下であることがより好ましい。また散乱体間の距離が発光波長の1/10以上であることが好ましい。散乱体間の距離は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡による断面観察、若しくはX線散乱測定により確認することができる。
光散乱機能を有する層の光散乱機能としては、通常、平均光線透過率で90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。また、多重散乱による発光光線のロスを考慮すると、通常平均光線透過率は25%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。光散乱機能を有する層の平行光線透過率は、通常分光光度計で測定することが出来る。
ここで散乱体とは樹脂などのマトリックス中に分散された粒子などの周辺と屈折率の異なるものを意味する。
光散乱機能を有する層の厚さは、100nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましい。光散乱機能を有する層の厚さがこの下限を下回ると、多重散乱性が低下し、散乱の異方性が強くなることで、輝度の視野角依存性が現れる恐れがある。また、光散乱機能を有する層の厚さは50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。光散乱機能を有する層の厚さがこの上限を超えると、発光光線が光散乱機能を有する層を通る光路により、散乱特性が変化し、前記同様、輝度の視野角依存性が現れる恐れがある。
具体的に、光散乱機能を有する層は、光取出し膜層に、下記(1),(2)のいずれかの構成を採用することにより形成することが好ましい。
(1) 透明粒子を含有させることにより光散乱機能を付与する。
(2) 表面にブラスト処理などの研磨により凹凸表面を形成することにより光散乱機能を付与する。
上記(2)の凹凸表面を形成した層は、不規則な凸凹構造界面層であることが好ましい。この不規則な凸凹構造界面とは、非周期的な凸凹構造界面をいう。従来、フォトニクス結晶マイクロレンズを含む高度な粗面構造が提案されているが、コスト面だけでなく、散乱の異方性の観点からも凸凹構造は不規則であることが重要である。
発光光線がその界面での全反射を軽減するために、この凹凸表面の表面粗さRaは10nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。また、発光滲みの観点から表面粗さRaは10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。凹凸表面の表面粗さRaはJIS B0601に規定されている基準に基づき、ケーエルエー・テンコール社製P−15型接触式表面粗さ計を用いて、1走査距離0.5μmの条件で、数回測定した平均値を算出した値をいう。
本発明では発光光線が凸凹構造界面での全反射を軽減することが重要であるため、その凸凹構造は屈折率差による不規則な凸凹構造界面であっても良い。この場合、通常、平均光線透過率で90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。また、多重散乱による発光光線のロスを考慮すると、通常25%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。
不規則な凸凹構造界面はブラストなどの研磨処理でも施すことは可能であるが、界面に透明粒子を施すことでも形成できる。
上記(1)の透明粒子を含有する層の透明粒子とは、可視光の領域で吸収のない、若しくは少ない粒子であり、例えば、TiO、SiO、ZrO、Al、Ta、ZnO、Sb、ZrSiO、ゼオライト又はそれらの多孔性物質やそれらを主成分とした無機粒子や、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの有機粒子が挙げられる。中でも、TiO、SiO、多孔質SiO、ZrO、Al、ゼオライト粒子が好ましい。
有効なMie散乱をさせるために、これらの透明粒子の粒子サイズは通常100nm以上、好ましくは250nm以上、より好ましくは300nm以上であり、通常20μm以下、より好ましくは10μm以下である。
透明粒子を含有する層中には、2種以上の異なる材質の透明粒子が含まれていても良く、また、粒径の異なる透明粒子が含まれていても良い。
透明粒子を含有する層は、通常、マトリックス前駆体に、透明粒子を分散させた塗布液を、この層を形成する面に塗布することにより形成される光多重散乱層である。
ここでマトリックス前駆体は、透明粒子との屈折率差が通常0.01以上であるマトリックスを形成し得る前駆体であることが好ましく、この屈折率差はさらに好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上であり、上限値は2未満が好ましく、より好ましくは1.5未満、さらに好ましくは1未満である。この屈折率差が低すぎると有効なMie散乱を得ることが困難になり、屈折率差が大きすぎると後方散乱が増大し、光取出し率が十分に得られない恐れがある。
具体的には、マトリックス前駆体は、透明粒子にあわせて選択することができるが、汎用材料として、例えば、シリケートオリゴマーなどのゾルゲル前駆体、熱硬化性樹脂やUV硬化性樹脂のモノマーなどの反応性前駆体、又は樹脂の溶融体、若しくはこれらを主成分とする前駆体が挙げられる。
マトリックス前駆体に透明粒子を分散させた塗布液を塗布する方法としては、スピンコート、ディップコート、ダイコート、キャスト、スプレーコート、グラビアコートなどが挙げられる。これら方法のうち、膜の均質性の観点から、スピンコート、ディップコート、ダイコートが好ましい。
透明粒子を含有する層中の透明粒子含有量は、Mie散乱が多重散乱するよう調整する必要がある。
この透明粒子を含有する層は、マトリックス前駆体に透明粒子を分散させた塗布液を、透光体上に上記塗布方法等により塗布して形成しても良く、また、以下に詳述する層上に同様に形成しても良い。
(光取出し層の光散乱機能を有する層以外の層)
本発明に係る光取出し層は、上記光散乱機能を有する層以外にも、以下に記載する層を有していても良い。また、以下に記載する層が光散乱機能を有する層を兼ねていても良い。なお、本発明に係る光取出し層は、以下に詳述する層以外にもその他の層を有していても良い。
・低屈折率層
本発明に係る光取出し層は、低屈折率層を有することが好ましい。本発明で言う低屈折率層とは、屈折率が1.05〜1.4である層をいう。低屈折率層の屈折率は透光体の屈折率よりも低いことが好ましく、より好ましくは1.1以上、1.3以下である。低屈折率層の屈折率が上記下限を下回ると機械強度に問題が発生し易く、また上限を上回ると光取出し効率が低下する。
この低屈折率層を構成する材料としては、具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの無機酸化物、環状テフロン等のフッ化物樹脂、フッ化マグネシウム等のフッ素系化合物などを使用することが好適である。中でも耐薬品性、耐熱性の観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの無機酸化物を主成分とする低屈折率層であることが好適である。低屈折率層は、特に多孔質構造を有するものであることが好ましい。低屈折率層の多孔質構造には、必要に応じて疎水化、柔軟性付与、クラック防止等を目的に有機成分を導入しても良い。なお、エレクトロルミネッセンス素子の説明で後述する光取出し層上に保護カバーを設けたトップエミッションタイプに限っては、低屈折率層はエアー(空隙)であってもデバイス構成上問題無い。この場合の屈折率は1.0である。
低屈折率層の膜厚は通常50nm以上、好ましくは100nm以上、通常2μm以下、好ましくは1.5μm以下である。低屈折率層の膜厚がこの下限を下回ると光取出し効果が低くなる恐れがあり、上限を超えるとは膜の均一性が低下する恐れがある。
低屈折率層は、通常、スピンコート、ディップコート、ダイコートなどの塗布プロセスあるいは、蒸着、スパッタ等の真空プロセスにより形成することができる。
低屈折率層は、透光体上に直接形成しても良いし、また光取出し層を構成するその他の層上に形成しても良い。
・高屈折率層
本発明に係る光取出し層は、光取出し層を構成する層の少なくとも1層として、高屈折率層を有することが好ましい。本発明でいう高屈折率層とは、屈折率が1.5〜2.2である層をいう。
高屈折率層は、エレクトロルミネッセンス層を含む薄膜内部を面方向に進む導波光を取り出すために、第1の電極層に隣接していることが好ましい。ただし、後述の如く、高屈折率層と第1の電極層との間にはガスバリア層を設けても良い。
この高屈折率層の屈折率は、通常1.4以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.7以上、特に好ましくは2.0以上、通常2.6以下、好ましくは2.4以下、より好ましくは2.2以下である。高屈折率層の屈折率がこの下限を下回ると、薄膜内部に導波光が閉じ込められ、光取出し効果が低くなる恐れがあり、上限を超えると、可視波長域で光の吸収が発生し、半導体性を発現して、エレクトロルミネッセンス素子の寿命や信頼性に悪影響を及ぼす恐れがある。
高屈折率層は、更に複数の膜から形成されていても良く、その場合、前記屈折率はこれらの複数の膜の平均値を示す。
本発明においては、エレクトロルミネッセンス層を含む薄膜内の導波光を高屈折率層内へ移動させるため、高屈折率層は、第1の電極層と同等の屈折率を有する層であることが好ましい。なお、本明細書において、「屈折率が同等」とは、一方の屈折率と他方の屈折率との差が0.3未満、好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.1以下であることをいう。この屈折率差が0.3を超えるとエレクトロルミネッセンス層を含む薄膜内の導波光を十分に取り出せない。
高屈折率層は第1の電極層に対して通常光取出し面側、即ち透光体側に設けるが、この場合、高屈折率層は絶縁性を有することが好ましい。高屈折率層は第1の電極層のエレクトロルミネッセンス層側に設けてもよいが、絶縁性の高屈折率層を第1の透明電極層の光取出し面側に設ける方がエレクトロルミネッセンス層の特性劣化を防ぐという点でより好ましい。
高屈折率層としては、ゾルゲル反応によって形成した膜や真空プロセスにより形成した膜が用いられ、その材料としては、SiN(x及びyはそれぞれ0以上の任意の数)、TiO、ZrO、ゼオライトなどの無機酸化物材料、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂、伝導性樹脂などの有機材料、又はこれらの複合材料が挙げられる。高屈折率層は、これらの材料を積層した積層膜であっても良い。高屈折率層の材料は特に限定されないが、高屈折率層は第1の電極層と同等の屈折率であることが重要であるため、アクリル樹脂やシリケートなどの低屈折率マトリックス中に、TiO、Al、ZrO、Taなどの高屈折率微粒子を添加することで、屈折率を調節することも好ましい。
高屈折率層は、通常、スピンコート、ディップコート、ダイコートなどの塗布プロセスあるいは、蒸着、スパッタ等の真空プロセスにより形成することができる。
高屈折率層の厚さは、通常200nm以上、好ましくは600nm以上、通常50μm以下、好ましくは10μm以下である。高屈折率層の厚さがこの下限を下回ると、第1の電極層と光取出し層との界面を制御することが困難であり、発光時の黒点、寿命の低下を引き起こす可能性があり、上限を超えると、透過率の低下や発光滲みの原因となる可能性がある。また、内部応力が増大し、歪が増大したり、これが原因で破損する恐れがある。
・ガスバリア層
本発明に係る光取出し層では、光取出し層の一部、もしくは全体が、第1の電極層に化学的悪影響を及ぼし、エレクトロルミネッセンス発光時のダークスポット発生、寿命低下の恐れがあることから、第1の電極層の透光体側との間にガスバリア層を有することが好ましい。
ガスバリア層の形成材料としては、ZrC、TiO、Al、CeO、TiN、Ta、SiO、SiN、SiO、SnO、Sb、Y、La、Inなどの無機化合物、あるいはこれらの混合物が挙げられるが、これらに制限はなく、可視で吸収が無いか少なくとも緻密な膜構造であればいずれも使用でき、特に無機化合物を主成分とすることが好ましい。
ガスバリア層は可視での吸収が小さいことが好ましいが、ガスバリア層100nm厚あたりの吸収損失は、通常10%以下、更には5%以下、特に1%以下であることが好ましい。
ガスバリア層の厚さは特に制限はないが、ガスバリア特性を考慮し、通常20nm以上、好ましくは50nm以上、特に好ましくは100nm以上、通常10μm以下、好ましくは1μm以下である。ガスバリア層の厚さがこの下限を下回るとガスバリア性が低下する恐れがあり、上限を超えると内部応力、内部歪が大きくなり、膜が破損したり、光学特性が悪影響を受ける可能性がある。
ガスバリア層は、例えば蒸着法やスパッタ法などの真空プロセスで形成することが好ましい。
ガスバリア層の屈折率は第1の電極層と同等であることが好ましいが、膜厚200nm以下であれば、例えば、MgF、NaF、NaFなどのフッ化物化合物、ナノ多孔質材料などの低屈折率材料を用いることも可能である。
(光取出し層の平坦性)
光取出し層の第1の電極層側の表面は平坦であることが好ましく、表面粗さRaが0.1〜80nmであることが好ましく、50nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。光取出し層の表面粗さがこの下限より小さい表面性を形成することは困難であり、上限を超えると光取出し層と直接接することになる第1の電極層が光取出し層の凹凸の影響を受けて平坦にならないため、エレクトロルミネッセンス素子を構成する各層の厚さが一定でなくなる結果、発光面に多数のダークスポットが生じたり、ショートパスによる断線が生じ易くなり、エレクトロルミネッセンス素子の寿命低下原因となる可能性がある。
光取出し層の表面粗さRaは接触式段差・表面粗さ・微細形状測定装置(ケーエルビー・テンコール社)により確認することができる。
〈第1の電極層〉
第1の電極層は、通常、エレクトロルミネッセンス素子の陽極として作用する電極層であり、通常、透明な電極である。第1の電極層としては、錫を添加した酸化インジウム(通称ITOと呼ばれている。)、アルミニウムを添加した酸化亜鉛(通称AZOと呼ばれている。)、インジウムを添加した酸化亜鉛(通称IZOと呼ばれている。)等の複合酸化物薄膜が好ましく用いられる。特にITOであることが好ましい。
第1の電極層が光散乱機能を有しない透明電極層の場合、可視光波長領域における平行光線透過率は大きいほど好ましく、例えば50〜99%である。平行光線透過率の好ましい下限値としては60%、更に好ましくは70%である。
第1の電極層の電気抵抗は、面抵抗値として小さいほど好ましいが、通常1〜100Ω/□(=1cm)であり、その上限値は好ましくは70Ω/□、更に好ましくは50Ω/□である。
第1電極層の厚さは、上述した光線透過率及び面抵抗値を満足する限りにおいて、通常0.01〜10μmであるが、導電性の観点からその下限値は、0.03μmが好ましく、0.05μmが更に好ましい。一方、光線透過率の観点からその上限値は、1μmが好ましく、0.5μmが更に好ましい。
第1の電極層は、導電性材料の塗布液を用い、フォトリソグラフィ法、インクジェット等により、エレクトロルミネッセンス素子の電極として必要なパターンに形成される。パターンニング後の線幅は1〜10μm程度が標準的であるが、これに限定されるものではない。第1の電極層を形成するための塗布液としては、例えばITO微細粒子を導電性ポリマーあるいはその他の樹脂バインダーと共に有機溶媒に分散させたもの、あるいは導電性ポリマー材料などが使用できるが、これに限定されない。
〈エレクトロルミネッセンス素子用積層体の積層構成〉
透光体、光取出し層及び第1の電極層がこの順で積層配置された本発明のエレクトロルミネッセンス素子用積層体の具体的な積層構成としては、特に制限はないが、例えば、次のような順であることが好ましい。
(1) 透光体/低屈折率層/光散乱機能を有する層/第1の電極層
(2) 透光体/低屈折率層/光散乱機能を有する層/高屈折率層/第1の電極層
(3) 透光体/低屈折率層/光散乱機能を有する層/高屈折率層/ガスバリア層/第1の電極層
(4) 透光体/光散乱機能を有する層/第1の電極層
(5) 透光体/低屈折率層/光散乱機能を有する高屈折率層/第1の電極層
(6) 透光体/低屈折率層/光散乱機能を有する高屈折率層/ガスバリア層/第1の電極層
[エレクトロルミネッセンス素子]
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は上述のような本発明のエレクトロルミネッセンス素子用積層体の第1の電極層上にエレクトロルミネッセンス層及び第2の電極層がこの順で積層配置されたものである。
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、本発明のエレクトロルミネッセンス素子用積層体、エレクトロルミネッセンス層及び第2の電極層がこの順に配置されていれば良く、これらの層の他、必要に応じてその他の層を有していても良い。
図1(a),(b)は本発明のエレクトロルミネッセンス素子の実施の形態を示す模式的な断面図である。図1(a),(b)のエレクトロルミネッセンス素子は、第2の電極層(陰極)1及びエレクトロルミネッセンス層2と、本発明のエレクトロルミネッセンス素子用積層体である第1の電極層(陽極)3、光取出し層5A,5B及び透光体(透明基板)4がこの順で積層されている。図1(a)のエレクトロルミネッセンス素子の光取出し層5Aは第1の電極層3側から光散乱機能を有する層7及び低屈折率層6が形成されている。図1(b)のエレクトロルミネッセンス素子の光取出し層5Bは、第1の電極層3側から高屈折率層8、光散乱機能を有する層7、低屈折率層6が形成されている。
なお、透光体4は、本発明のエレクトロルミネッセンス素子用積層体の透光体として前述したものであり、通常エレクトロルミネッセンス素子の基板となるものであることが好ましいが、この基板の代わりに光取出し膜上に保護カバーを設けたトップエミッション型素子であっても良く、この場合、透光体が保護カバーになることが好ましい。保護カバーの材料は透明であれば特に制限はなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの各種樹脂材料やゾルゲル膜などのコーティング材料が挙げられる。
〈エレクトロルミネッセンス層〉
エレクトロルミネッセンス層は、電界が印加されることにより発光現象を示す物質により成膜されたものであり、単層構造であっても、機能分離した多層構造であっても良い。多層構造の場合には、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの層が用いられる。エレクトロルミネッセンス層に用いられる物質としては、従来使用されている有機エレクトロルミネッセンス物質を用いることができる。例えば、付活酸化亜鉛ZnS:X(但し、Xは、Mn、Tb、Cu,Sm等の付活元素である。)、CaS:Eu、SrS:Ce,SrGa:Ce、CaGa:Ce、CaS:Pb、BaAl:Eu等の従来使用されている無機エレクトロルミネッセンス物質、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体、芳香族アミン類、アントラセン単結晶等の低分子色素系の有機エレクトロルミネッセンス物質、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリビニルカルバゾールなどの共役高分子系の有機エレクトロルミネッセンス物質等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの発光性化合物だけではなく、三重項状態からの燐光発光が可能な材料、若しくはこれらの蛍光色素由来の化合物を用いることができる。
エレクトロルミネッセンス層の厚さは、通常10nm以上、好ましくは30nm以上、更に好ましくは50nm以上、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは200nm以下である。
エレクトロルミネッセンス層は、蒸着やスパッタリング等の真空成膜プロセス、あるいはクロロフォルム等を溶媒とする塗布プロセスにより形成することができる。
〈第2の電極層〉
第2の電極層は、通常エレクトロルミネッセンス素子における陰極である。陰極として用いられる材料は、仕事関数の低い金属又はその化合物が好ましい。特に、アルミニウム、錫、マグネシウム、インジウム、カルシウム、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、白金、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等、とりわけアルミニウムで形成されることが好ましい。
第2の電極層の厚さは、特に限定されないが、通常10nm以上、好ましくは30nm以上、更に好ましくは50nm以上、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは300nm以下である。
第2の電極層は、蒸着やスパッタリング等の真空成膜プロセスにより形成することができる。
低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、第2の電極層のエレクトロルミネッセンス層とは反対側の面に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す上で有効である。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。更に、第2の電極層とエレクトロルミネッセンス層との界面にLiF、MgF、LiO等の極薄絶縁膜(膜厚0.1〜5nm)を挿入することにより、素子の効率を向上させることができる。
なお、酸化インジウムやインジウムを添加した酸化亜鉛等の透明電極材料で第2の電極層を形成し、第2の電極層側から光を取り出す構成としても良い。
[エレクトロルミネッセンス素子用積層体,エレクトロルミネッセンス素子の製造方法]
次に、前述の如く、水分及び揮発性有機成分量がコントロールされた光取出し層を有する本発明のエレクトロルミネッセンス素子用積層体、及びこのエレクトロルミネッセンス素子用積層体を用いたエレクトロルミネッセンス素子の製造方法について詳述する。
エレクトロルミネッセンス素子用積層体は、透光体、光取出し層、第1の電極層をこの順に積層して製造される。また、エレクトロルミネッセンス素子は、通常、透光体、光取出し層、第1の電極層、エレクトロルミネッセンス層及び第2の電極層をこの順に積層して製造される。光取出し層の水分及び揮発性有機成分含有量が0.5〜20μg/mmの本発明のエレクトロルミネッセンス素子用積層体、及びこのエレクトロルミネッセンス素子用積層体を用いたエレクトロルミネッセンス素子は、このようにして各層を積層形成するに当たり、例えば、以下の手順で、(1)透光体上に光取出し層を形成する工程、及び/又は、(3)光取出し層上に第1の電極層を形成する工程の後に、水分及び揮発性有機成分の脱離処理を行うことにより製造することができる。
(1)透光体上に光取出し層を形成する工程
(2)脱離処理工程
(3)光取出し層上に第1の電極層を形成する工程
(4)脱離処理工程
(5)第1の電極層上にエレクトロルミネッセンス層及び第2の電極層を順次形成する工程
(1)透光体上に光取出し層を形成する工程、(3)光取出し層上に第1の電極層を形成する工程、(5)第1の電極層上にエレクトロルミネッセンス層及び第2の電極層を順次形成する工程については、前述の通りであり、常法に従って行うことができる。
以下、(2)、(4)の脱離処理工程について説明する。
〈脱離処理〉
本発明において、脱離処理とは透光体、光取出し層及び第1の電極層内部に物理吸着及び/又は化学吸着している水分及び揮発性有機成分を素子内から取り除く処理を意味し、各層の構造変化や化学変化を伴わない処理を意味する。
上述の脱離処理は、(1)透光体上に光取出し層を形成する工程、及び/又は、(3)光取出し層上に第1の電極層を形成する工程、の後に行われる工程である。即ち、脱離処理は、透光体上に光取出し層を形成した後、及び/又は、光取出し層上に第1の電極層を形成した後に行われる。
脱離処理は、水分及び揮発性有機成分量が0.5〜20μg/mmにコントロールされた光取出し層を得ることができるような処理であれば良く、特に制限されるものではないが、具体的には、加熱処理、減圧処理、不活性ガス処理、スパッタ処理などが挙げられる。
(加熱処理)
加熱処理の処理温度は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、通常250℃以下、好ましくは230℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。加熱温度が低すぎると脱離効果が得られず、高すぎると各層の構造変化や化学変化の恐れとコストアップにつながる恐れがある。
処理時間は、透光体、光取出し層及び第1の電極層内部に物理吸着している水分及び揮発性有機成分を素子内から取り除くに足りうる時間であり、特に制限はないが、通常、1min以上、好ましくは2min以上、さらに好ましくは5min以上、より好ましくは10min以上である。又、通常120min以下、好ましくは60min以下、より好ましくは45min以下である。処理時間が短すぎると脱離効果が得られない恐れがあり、長すぎると各層の構造変化や化学変化の恐れとコストアップにつながる。
処理雰囲気は、大気中でも良いが、より好ましくは窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気下である。
(減圧処理)
脱離処理として減圧処理を行うことにより、透光体、光取出し層及び第1の電極層内部に物理吸着している水分及び揮発性有機成分を大気圧下よりも短時間で取り除くことが可能になり、素子劣化防止効果の高いエレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
減圧処理の場合の真空度は、通常2×10−3Pa以下が好ましく、より好ましくは1×10−3Pa以下の真空度であり、さらに好ましくは5×10−4Pa以下の真空度である。真空度が2×10−3Pa未満の場合は、水分及び揮発性有機成分の脱離を効率的に行えない。
処理温度は、通常、室温以上200℃以下である。より好ましくは、80℃以上、180℃以下である。さらに好ましくは、100℃以上、150℃以下である。加熱温度が低すぎると脱離効果が得られない恐れがあり、高すぎると各層の構造変化や化学変化の恐れとコストアップにつながる。
処理時間は、透光体、光取出し層及び第1の電極層内部に物理吸着している水分及び揮発性有機成分を素子内から取り除くに足りうる時間であり、特に制限はないが、通常、10min以上60minである。処理時間が短すぎると脱離効果が得られない恐れがあり、長すぎると各層の構造変化や化学変化の恐れとコストアップにつながる。
(不活性ガス処理)
不活性ガス処理は、透光体に光取出し層を形成した積層体、もしくは透光体に光取出し層及び第1の電極層を形成した積層体を密閉された空間に置き、99.99%の窒素ガスを100ml/min以上の割合で流入させ1日以上放置する処理であり、このような処理によっても水分及び揮発性有機成分の脱離処理を行うことができる。
(スパッタ処理)
スパッタ装置内で光取出し層もしくは電極1層表面をスパッタすることにより、透光体、光取出し層及び第1の電極層内部に物理吸着している水分及び/又は揮発性有機成分を素子内から取り除くことができる。好ましくはArとHとの混合ガスをスパッタガスに用いる。
上述の脱離処理は単独で行っても良いが、これら2以上の処理を組み合わせて行っても良い。
さらに、透光体、光取出し層及び第1の電極層内部に物理吸着している水分及び揮発性有機成分を素子内から取り除ける限りにおいて、本発明に係る脱離処理の手法はどのようなものでも良く、上述の手法以外にも、大気プラズマ処理、オゾン処理、マイクロ波照射などでも脱離効果を得ることができる。
本発明のエレクトロルミネッセンス素子用積層体、エレクトロルミネッセンス素子を製造するには、前述の光取出し層の形成後及び/又は第1の電極層形成後に、水分及び揮発性有機成分の脱離処理を行えばよいが、好ましくは、エレクトロルミネッセンス層に対する水分及び揮発性有機成分の影響を出来るだけ排除するため、少なくとも第1の電極層形成後に脱離処理を行うことが好ましく、さらに好ましくは、脱離処理後の時間経過により再吸着が起こる前にエレクトロルミネッセンス層及び第2の電極層を形成できるという意味合いから、エレクトロルミネッセンス層形成直前に脱離処理を行うことが好ましい。
なお、脱離処理をより効率的に行う目的で、脱離処理前にウエット洗浄を行うことが好ましい。ウエット洗浄とは、水よりも沸点の低い溶媒中に浸漬するという操作、好ましくは、浸漬すると共に超音波をあてる操作であり、水と置換してより脱離処理を効率よくさせたり、有機物を抽出できたりするという効果が得られる。
また、脱離処理の効果を維持する目的で、エレクトロルミネッセンス層及び第2の電極層を形成する工程は、脱離処理後直ちに(即ち0〜2分以内に)、雰囲気(0.2mg/l以下の水分量)を制御して行うことが好ましい。
密閉空間内にエレクトロルミネッセンス素子用積層体を閉じこめる形状の素子の場合は、新たな水蒸気が外部から密閉空間内部へ供給されることがないが、本発明により脱離処理により光取出し層の水分及び揮発性有機成分含有量を低下させておけば、素子内に吸水及び吸着剤の機能を内包していることとなり、エレクトロルミネッセンス層に対する水分及び揮発性有機成分の影響を排除し、エレクトロルミネッセンス素子劣化を低減することができる。
[用途]
本発明によれば、光取出し効率が高く、高輝度かつ長寿命のエレクトロルミネッセンス素子を安定に提供することができ、このエレクトロルミネッセンス素子は、従来困難であった大型もしくは高効率のディスプレイ用途、照明用途、その他発光体としても適用可能である。
次に、参考例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
〈参考例1〉
旭硝子(株)製無アルカリガラスの光取出し面の反対側に、ITOを膜厚100nmで常温スパッタして透明電極層を形成し、さらにホール注入層、ホール輸送層、発光層;トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体を膜厚150nmで蒸着し、エレクトロルミネッセンス層を形成した。その後、エレクトロルミネッセンス層上にAlを膜厚100nmで蒸着し、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した。
このエレクトロルミネッセンス素子用積層体の発光時の0.5mm径以上の黒点は5cm角中に3個以下であった。
即ち、光取出し層を形成しない場合は、エレクトロルミネッセンス層の特性劣化の問題はなく、従って、ダークスポットも少ない。
〈実施例1〉
旭硝子(株)製無アルカリガラスの鋳型法による多孔質シリカ膜を形成した。この多孔質シリカ膜は分光エリプソメーターから膜厚1000nm、屈折率1.21であった。
この多孔質シリカ膜上に堺化学(株)製チタニア粒子R−62N(平均粒径0.26mm)をシリケートオリゴマーに分散した前駆体塗布液をスピンコートし、250℃で硬化して光取出し層を形成した。この光取出し層の表面粗さRaは10nmであり、平均光線透過率は45%(この層のみでの測定値)であった。その後、この積層体をクリーンオーブン中200℃で30min保持し、脱離処理を行った。
この上にITOを膜厚100nmで常温スパッタし、透明電極層(第1の電極層)を形成する。その後、この積層体を再度、クリーンオーブン中200℃で30min保持し脱離処理を行う。
この積層体の表面粗さRaは11nmであり、前述のTPD−MSによる水分及び揮発性有機成分の脱離量によれば、光取出し層中に10μg/mm及び揮発性有機成分を含有している。
さらに光取出し層上にホール注入層、ホール輸送層、発光層;トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体を膜厚150nmで蒸着し、エレクトロルミネッセンス層を形成する。その後、エレクトロルミネッセンス層上にAlを膜厚100nmで蒸着し、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する。
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子の初期輝度は、参考例1の素子の初期輝度と比べ、1.5倍に向上する。なお、発光時の0.5mm径以上の黒点は5cm角中に5個以下である。
本実施例では光取出し層の形成により光取出し率が向上し、また脱離処理によりエレクトロルミネッセンス層の特性劣化が防止され、ダークスポットも抑制される。
〈比較例1〉
実施例1において、光取出し層形成後、脱離処理を行わずにITOを膜厚100nmで常温スパッタし、透明電極層を形成する。この積層体の表面粗さRaは10nmであり、、前述のTPD−MSによる水分及び揮発性有機成分の脱離量によれば、光取出し層中に100μg/mmの水分を含有している。
さらに電極層形成後も脱離処理を行わずにホール注入層、ホール輸送層、発光層;トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体を膜厚150nmで蒸着し、エレクトロルミネッセンス層を形成する。その後、エレクトロルミネッセンス層上にAlを膜厚100nmで蒸着し、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する。
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子の初期輝度は、参考例1の素子の初期輝度と比べ、0.9倍であり、発光時の0.5mm径以上の黒点も5cm角中に28個以上である。
本比較例では光取出し層を形成してもエレクトロルミネッセンス層の特性劣化のために光取出し率の向上は得られず、またダークスポットが増加する。
実施の形態に係るエレクトロルミネッセンス素子の模式的な断面図である。 一般的なエレクトロルミネッセンス素子の模式的な断面図である。
符号の説明
1 電極層(第2の電極層:陰極)
2 エレクトロルミネッセンス層
3 透明電極層(第1の電極層:陽極)
4 透光体(透明基板)
5A,5B 光取出し層
6 低屈折率層
7 光散乱機能を有する層
8 高屈折率層

Claims (4)

  1. 透光体、光取出し層及び電極層(以下「第1の電極層」と称す。)がこの順に配置されてなるエレクトロルミネッセンス素子用積層体であって、該光取出し層が、0.5〜20μg/mmの水分及び揮発性有機成分を含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子用積層体。
  2. 該光取出し層が、1層又は2層以上の層からなる光取出し層であって、該層のうち少なくとも1層が光散乱機能を有する層であることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス素子用積層体。
  3. 該光散乱機能を有する層が高屈折率層であることを特徴とする請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子用積層体。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子用積層体の前記第1の電極層上に、エレクトロルミネッセンス層及び第2の電極層がこの順に配置されてなることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
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