JP2007064089A - 内燃機関の排気系部品の温度推定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】過渡時における排気系部品の温度をより高い精度で推定する。
【解決手段】電子制御装置61は、エンジン11への吸入空気量GAと排気系部品(排気浄化触媒27)の温度(触媒温度)との関係を予め定めておき、吸入空気量GAが変化する過渡時には、その変化後の吸入空気量GAと上記関係とから求まる触媒温度に応答遅れを有して追従する値を徐変処理により算出し、この値に基づき推定触媒温度を算出する。また、電子制御装置61は、前記徐変処理を行う際の徐変度合いをエンジン11に加わる負荷、ここでは変速機による変速比に応じて変更する。変速比の大きな変速段が選択されてエンジン11に加わる負荷が小さくなるほど小さな徐変度合いにて徐変処理を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】電子制御装置61は、エンジン11への吸入空気量GAと排気系部品(排気浄化触媒27)の温度(触媒温度)との関係を予め定めておき、吸入空気量GAが変化する過渡時には、その変化後の吸入空気量GAと上記関係とから求まる触媒温度に応答遅れを有して追従する値を徐変処理により算出し、この値に基づき推定触媒温度を算出する。また、電子制御装置61は、前記徐変処理を行う際の徐変度合いをエンジン11に加わる負荷、ここでは変速機による変速比に応じて変更する。変速比の大きな変速段が選択されてエンジン11に加わる負荷が小さくなるほど小さな徐変度合いにて徐変処理を行う。
【選択図】 図1
Description
本発明は、内燃機関の排気浄化触媒、排気管、酸素センサ等の排気系部品の温度を推定する装置に係り、特に過渡時の温度の推定に適した内燃機関の排気系部品の温度推定装置に関するものである。
三元触媒等の排気浄化触媒を内燃機関の排気通路に備えたシステムでは、その排気浄化触媒が所定の温度範囲(触媒活性温度)内でのみ排気を効率的に浄化する。従って、上記システムにおいて排気浄化触媒の性能を十分に発揮させるためには、排気浄化触媒の温度(触媒温度)が触媒活性温度に達していることが重要である。また、上記システムのなかには、排気浄化触媒の状態を監視し、異常となった場合にその旨を検出するものがある。この場合には、誤検出を防止する観点から、触媒温度が上記触媒活性温度に達した状況で検出を行うことが重要である。上述したいずれの場面でも触媒温度を正確に把握することが必須となる。
これに対しては、排気浄化触媒に温度センサを取付けて触媒温度を直接検出することが考えられるが、コストアップを招いたり、温度センサの耐久性を確保するための対策を新たに講じなければならない等の問題を伴う。そのため、温度センサを用いず、内燃機関の運転状態に基づき触媒温度を推定する技術が従来から種々提案されている。
こうした技術の1つとして、例えば特許文献1に記載されているように、内燃機関への吸入空気量に基づいて触媒温度を推定するものがある。この推定技術では、吸入空気量と触媒温度との関係が予め実験等により求められている。そして、吸入空気量が安定している定常時には、そのときの吸入空気量に対応する触媒温度が前記関係に基づき推定される。また、内燃機関の加減速時等、吸入空気量が変化する過渡時には、変化後の吸入空気量と上記関係とから求まる触媒温度に応答遅れを有して追従する値が徐変処理により求められ、この値に基づき触媒温度が推定される。
特開平10−311213号公報
ところで、吸入空気量が変化したときの触媒温度の応答遅れは、内燃機関に加わる負荷等、種々の条件によって異なるが、上述した吸入空気量に基づき触媒温度を推定する技術では、こうした点を考慮することなく推定を行っている。そのため、吸入空気量が変化する過渡時における触媒温度の推定精度が十分高いとはいえず、未だ改良の余地が残されているのが実情である。この問題は、排気浄化触媒に限らず、排気通路に設けられた各種排気系部品の温度を推定する場合に同様に起こり得る。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、過渡時における排気系部品の温度をより高い精度で推定することのできる内燃機関の排気系部品の温度推定装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明では、内燃機関への吸入空気量と排気系部品の温度との関係を予め定めておき、吸入空気量が変化する過渡時には、その変化後の吸入空気量と前記関係とから求まる排気系部品の温度に応答遅れを有して追従する値を徐変処理により算出し、この値に基づき前記排気系部品の温度を推定するようにした内燃機関の排気系部品の温度推定装置において、前記徐変処理を行う際の徐変度合いを前記内燃機関に加わる負荷に応じて変更する徐変度合い変更手段を備えるものであるとする。
請求項1に記載の発明では、内燃機関への吸入空気量と排気系部品の温度との関係を予め定めておき、吸入空気量が変化する過渡時には、その変化後の吸入空気量と前記関係とから求まる排気系部品の温度に応答遅れを有して追従する値を徐変処理により算出し、この値に基づき前記排気系部品の温度を推定するようにした内燃機関の排気系部品の温度推定装置において、前記徐変処理を行う際の徐変度合いを前記内燃機関に加わる負荷に応じて変更する徐変度合い変更手段を備えるものであるとする。
上記の構成によれば、内燃機関への吸入空気量と排気系部品の温度との間には一定の関係が見られる。そのため、吸入空気量が安定している定常時であれば、そのときの吸入空気量に対応する排気系部品の温度を上記関係から推定することが可能である。これに対し、吸入空気量が変化する過渡時には、排気系部品の温度は応答遅れをもって変化する。この場合には、変化後の吸入空気量と上記関係とから求まる排気系部品の温度に応答遅れを有して追従する値が徐変処理により算出され、この値に基づき排気系部品の温度が推定される。
ここで、本件発明者らは、吸入空気量と排気系部品の温度との関係について種々検討したところ、内燃機関に加わる負荷に応じて上記関係が異なること、表現を変えると、吸入空気量が同じであっても、内燃機関に加わる負荷が異なれば排気系部品の温度が異なることを見出した。これは、負荷に応じて内燃機関の回転速度が異なり、機関1回転当りに気筒内に流入する空気の量が異なる。これに伴い実圧縮比、ひいては内燃機関の熱効率が異なり、内燃機関から排出される排気の熱量が異なるためと考えられる。また、上記排気の熱量の相違により、吸入空気量が変化する過渡時における排気系部品の温度の応答遅れの度合いも異なってくるものと考えられる。
この点、請求項1に記載の発明では、徐変処理を行う際の徐変度合いが、徐変度合い変更手段により、内燃機関に加わる負荷に応じて変更される。従って、このように負荷を考慮した適切な徐変度合いにて徐変処理を行うことにより、過渡時における排気系部品の温度をより高い精度で推定することが可能となる。
なお、温度の推定対象となる排気系部品としては、例えば、請求項2に記載の発明によるように、内燃機関から排出される排気を浄化する排気浄化触媒とすることができる。
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記徐変度合い変更手段は、前記内燃機関に加わる負荷が小さいときには、同負荷が大きいときよりも前記徐変度合いを小さくするものであるとする。
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記徐変度合い変更手段は、前記内燃機関に加わる負荷が小さいときには、同負荷が大きいときよりも前記徐変度合いを小さくするものであるとする。
ここで、内燃機関に加わる負荷が小さいときには大きいときに比べ、内燃機関の回転速度が高くなり、機関1回転当りに気筒内に流入する空気の量が少なくなる。これに伴い実圧縮比が小さくなって、内燃機関の熱効率が低下する。そして、排気の熱量が多くなり、排気系部品の温度が高くなると考えられる。また、上記排気の熱量が多くなることにより、吸入空気量が変化する過渡時における排気系部品の温度の応答遅れの度合いも小さくなる、すなわち排気系部品の温度の変化度合いが大きくなると考えられる。
この点、請求項3に記載の発明では、徐変処理を行う際の徐変度合いが、内燃機関に加わる負荷が小さいときには、同負荷が大きいときよりも小さくされる。従って、このように負荷と排気の熱量との関係を考慮した徐変度合いにて徐変処理を行うことにより、過渡時における排気系部品の温度をより高い精度で推定することができるようになる。
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記内燃機関の出力軸の回転を変速する変速機をさらに備え、前記徐変度合い変更手段は、前記変速機による変速比に応じて前記徐変度合いを変更するものであるとする。
上記の構成によれば、内燃機関の出力軸の回転を変速する変速機は、内燃機関にとって負荷となる。この変速機から内燃機関に加わる負荷の大きさは、同変速機において選択される変速位置(変速比)に応じて異なる。従って、この変速機による変速比に応じて徐変度合いを変更することにより、上述した請求項1〜3に記載に記載の発明の効果が確実に得られる。
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の発明において、前記徐変度合い変更手段は、大きな変速比が選択されているときには、小さな変速比が選択されているときよりも前記徐変度合いを小さくするものであるとする。
ここで、一般に、変速機によって内燃機関に加わる負荷の大きさは、変速比の大きな変速位置(ローギヤ)の方が、変速比の小さな変速位置(ハイギヤ)よりも小さい。従って、請求項5に記載の発明によるように、大きな変速比が選択されているときには、小さな変速比が選択されているときよりも徐変度合いを小さくすることで、過渡時における排気系部品の温度をより高い精度で推定することができるようになる。
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、車両10には、内燃機関としてガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。エンジン11は、複数の気筒(シリンダ)12を有するシリンダブロック13を備えている。各気筒12内にはピストン14が往復動可能に収容されている。各ピストン14は、コネクティングロッド15を介し、エンジン11の出力軸であるクランクシャフト16に連結されている。各ピストン14の往復運動は、コネクティングロッド15によって回転運動に変換された後、クランクシャフト16に伝達される。
気筒12毎の燃焼室17には、スロットルバルブ18、サージタンク19、吸気マニホルド21等を有する吸気通路22が接続されている。エンジン11の外部の空気は、吸気通路22の各部を順に通過して燃焼室17に取り込まれる。スロットルバルブ18は吸気通路22に回動可能に設けられており、アクチュエータ23によって駆動される。アクチュエータ23は、運転者によるアクセルペダル24の踏込み操作等に応じて作動し、スロットルバルブ18を回動させる。吸気通路22を流れる空気の量(吸入空気量GA)は、スロットルバルブ18の回動角度(スロットル開度)に応じて変化する。
また、燃焼室17には、排気マニホルド25、触媒コンバータ26等を有する排気通路28が接続されている。燃焼室17で生じた燃焼ガスは、排気通路28の各部を順に通ってエンジン11の外部へ排出される。触媒コンバータ26には、排気系構成部品の1つをなし、かつ排気を浄化するための三元触媒等からなる排気浄化触媒27が内蔵されている。
エンジン11には、吸気通路22の燃焼室17との接続部分を開閉する吸気バルブ29と、排気通路28の燃焼室17との接続部分を開閉する排気バルブ31とが、気筒12毎に往復動可能に設けられている。各吸気バルブ29は、上記クランクシャフト16に連動して回転する吸気カムシャフト32等によって駆動される。また、各排気バルブ31は、クランクシャフト16に連動して回転する排気カムシャフト33等によって駆動される。
エンジン11には、電磁式の燃料噴射弁34が各気筒12に対応して取付けられている。各燃料噴射弁34には、燃料ポンプ(図示略)から吐出された高圧の燃料が供給される。各燃料噴射弁34は開閉制御されることにより、対応する燃焼室17に高圧燃料を噴射供給する。燃料噴射弁34から噴射された燃料は、燃焼室17内の空気と混ざり合って混合気となる。
なお、上記のように燃料噴射弁34から燃焼室17内に直接燃料が噴射されて混合気が生成されるエンジン11は、一般に筒内噴射式エンジンと呼ばれる。このタイプに代えて、ポート噴射式エンジンが本発明の適用対象とされてもよい。このタイプのエンジンでは、吸気マニホルド21に配置された燃料噴射弁から吸気下流側へ向けて燃料が噴射される。この燃料は、吸気通路22を流れる空気と混ざり合って混合気となる。
エンジン11には点火プラグ35が各気筒12に対応して取付けられている。点火プラグ35は、イグナイタ36からの点火信号に基づいて駆動される。点火プラグ35には、点火コイル37から出力される高電圧が印加される。そして、前記混合気は点火プラグ35の火花放電によって着火され、燃焼する。このときに生じた高温高圧の燃焼ガスによりピストン14が往復動され、クランクシャフト16が回転されてエンジン11の駆動力(出力トルク)が得られる。
エンジン11の出力調整は、上記スロットルバルブ18をアクチュエータ23によって駆動して、スロットル開度を調節することによって実現される。すなわち、スロットル開度の調整により、エンジン11への吸入空気量が変化し、その変化に対応して燃料噴射量が制御され、燃焼室17に充填される混合気の量が変化してエンジン11の出力が調整される。
エンジン11と駆動輪41との間には、変速機42、プロペラシャフト43、ディファレンシャル44、一対のアクスルシャフト45等が設けられている。変速機42は、例えば歯数の異なるギヤの組合わせ(変速段)を変えることによりエンジン11の回転速度、出力トルク等を変換する。この変換により、変速機42の入力軸と出力軸との回転速度比である変速比がギヤの組合わせに応じたものとなる。変速位置として、変速機に例えば5つの変速段が設定されている場合には、ギヤの噛み合わせについて、変速比の大きいものから順に、1速(1st)、2速(2nd)、3速(3rd)、4速(4th)、5速(5th)と呼ばれる。プロペラシャフト43は、変速機42の出力軸の回転をディファレンシャル44に伝える軸である。ディファレンシャル44は、プロペラシャフト43からの動力を両アクスルシャフト45に分けて伝える差動装置である。各アクスルシャフト45は、ディファレンシャル44によって分けられた動力を駆動輪41に伝達する軸である。
車両10には、エンジン11の運転状態を含む車両10各部の状態を検出するために各種センサが設けられている。例えば、クランクシャフト16の近傍には、そのクランクシャフト16が一定角度回転する毎にパルス状の信号を発生するクランク角センサ51が設けられている。クランク角センサ51の信号は、クランクシャフト16の回転角度であるクランク角や、単位時間当りのクランクシャフト16の回転数であるエンジン回転速度NEの算出等に用いられる。
スロットルバルブ18の近傍には、スロットル開度を検出するスロットルセンサ52が設けられている。吸気通路22内のスロットルバルブ18よりも上流には、吸入空気量GAを検出するためのエアフロメータ53が設けられている。車室内には、運転者によるアクセルペダル24の踏込み量(アクセル踏込み量)を検出するアクセルセンサ54が設けられている。
前述した各種センサ51〜54等の検出値に基づきエンジン11の各部を制御するために、マイクロコンピュータを中心として構成された電子制御装置(Electronic Control Unit :ECU)61が設けられている。電子制御装置61では、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラムや初期データに従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。なお、電子制御装置61には、前述した各種センサ51〜54の検出信号が入力されるほかに、変速機42において現在選択されている変速段等の変速情報に対応した信号(変速信号)が入力される。
電子制御装置61が行う制御としては、例えば燃料噴射制御、点火時期制御等が挙げられる。ここで、燃料噴射制御とは、エンジン11の状態を検出する各種センサの信号からエンジン11の作動に必要な燃料量を演算し、混合気の空燃比が最適な値となるように燃料の噴射量を制御するものである。噴射量は、燃料噴射弁34の通電時間、すなわち開弁時間によって決まる。また、点火時期制御とは、エンジン11の運転状態に応じてイグナイタ36を制御することにより、各点火プラグ35を作動させて各燃焼室17における混合気の点火時期を制御するものである。
また、電子制御装置61は、上述した燃料噴射制御、点火時期制御等のほかにも、吸入空気量GAに基づいて排気浄化触媒27の温度(触媒温度)を推定する処理を行う。触媒温度の推定を吸入空気量GAに基づいて行うのは、次の考え方による。エンジン11では、上述したように気筒12に供給される空気量(吸入空気量)に応じた量の燃料が噴射される。これら空気及び燃料の混合気が燃焼され、所定の熱量を有する排気が排気通路28に排出される。排気が排気通路28を流れる過程で、その排気の有する熱が排気浄化触媒27に伝わり、触媒温度Tがその熱の影響を受ける。吸入空気量GAが多くなるほど排気の有する熱量が多くなり、触媒温度の受ける影響が大きくなる。このように、吸入空気量GA及び触媒温度Tの間には所定の関係が見られ、吸入空気量GAが決まれば、触媒温度Tが一義的に決まると考えられる。
そこで、上記推定処理では、図3に示すように、エンジン11への吸入空気量GAと触媒温度Tとの関係を予め規定したマップが用いられる。このマップでは、基本的には、吸入空気量GAが少ないときに触媒温度Tが低く、吸入空気量GAが多くなるに従って触媒温度Tが高くなるような設定がなされている。これは、上述した現象、すなわち吸入空気量GAが多くなるほど排気の熱量が多くなる現象に対応させたものである。
また、前記マップでは、吸入空気量GAと触媒温度Tとの関係が変速機42の変速段(変速比)毎に規定されている。より詳しくは、吸入空気量GAが同一であっても、変速比の大きな変速段が選択されているときには触媒温度Tが高く、変速比の小さな変速段が選択されるに従い触媒温度Tが低くなるような設定がなされている。
これは、吸入空気量GA及び変速比についての組合わせを種々設定し、その組合わせ毎の触媒温度Tを測定すると、上記のような傾向を示すためである。こうした現象が起こるのは、次の理由によるものと考えられる。
エンジン11に駆動連結された変速機42はそのエンジン11にとって負荷となる。この負荷の大きさは、変速機42において選択される変速位置に応じて異なる。この負荷の大きさは、一般には、変速比の大きな変速位置(ローギヤ)の方が、変速比の小さな変速位置(ハイギヤ)よりも小さい。
そして、変速機42において変速比の大きな変速位置(ローギヤ)が選択されて、エンジン11に加わる負荷が小さいときはエンジン回転速度NEが高くなり、1回転当りに気筒12内に流入する空気の量が少なくなる。実圧縮比が小さくなってエンジン11の熱効率が低下する。ここで、熱効率は、エンジン11に噴射供給された燃料がどれだけ出力(クランクシャフト16の回転)に変換されるかを示す。上記熱効率の低下に伴い、エンジン11から排出(放出)される排気の熱量が多くなり、触媒温度Tが高くなる傾向を示す。
これに対し、変速機42において変速比の小さな変速位置(ハイギヤ)が選択されて、エンジン11に加わる負荷が大きいときにはエンジン回転速度NEが低くなり、上述した負荷が小さいときと同じ吸入空気量GAであっても、エンジン1回転当りに気筒12内に流入する空気の量が多くなる。実圧縮比が大きくなってエンジン11の熱効率が向上する。すなわち、混合気がより圧縮された状態で燃焼され、燃焼に伴い発生する熱がより多く体積膨脹に使用される。その結果、排気の熱量が減少して、触媒温度Tが低くなる傾向を示す。
そして、吸入空気量GAが安定している定常運転時には、そのときのエアフロメータ53によって検出された実際の吸入空気量GAと、そのときに選択されている変速段とに対応する触媒温度Tが上記マップから割出(推定)される。
これに対し、エンジン11の加減速時等、吸入空気量GAが変化する過渡時には、その変化に対し触媒温度Tが所定の応答遅れをもって変化する。この応答遅れにより、実際の触媒温度Tは、吸入空気量GAの変化前の値から徐々に変化し、変化後の吸入空気量GAに対応した触媒温度Tに収束する。そこで、変化後の触媒温度Tに応答遅れを有して追従する値としての温度変化量ΔT(i) が、次式(1),(2)で表される徐変処理により求められる。温度変化量ΔT(i) は、前制御周期から現制御周期までの期間における触媒温度Tの変化量であり、上記応答遅れを考慮して算出される推定値である。そして、この温度変化量ΔT(i) に基づき推定触媒温度Tcal(i)が算出される(これについては後述する)。
ΔT(i) ←ΔGA・{T(i) −Tcal(i-1) }・β ・・・(1)
ΔT(i) ←{(ΔT(i-2) +ΔT(i-1) +ΔT(i))/3}・γ ・・・(2)
ただし、ΔGA←GA(i) −GA(i-1) ・・・(3)
GA(i) :現制御周期での吸入空気量
GA(i-1) :前制御周期での吸入空気量
Tcal(i-1):前制御周期での推定触媒温度
T(i) :現制御周期での吸入空気量に対応する、あるべき推定触媒温度
ΔT(i-2) :前前制御周期で算出した推定触媒温度の温度変化量
ΔT(i-1) :前制御周期で算出した推定触媒温度の温度変化量
ΔT(i) :現制御周期で算出した推定触媒温度の温度変化量
β,γ:係数
上記式(2)は、温度変化量ΔT(i-2) ,ΔT(i-1) ,ΔT(i)の相加平均を求めることにより、これを現制御周期の温度変化量ΔT(i) として算出するものである。
ΔT(i) ←ΔGA・{T(i) −Tcal(i-1) }・β ・・・(1)
ΔT(i) ←{(ΔT(i-2) +ΔT(i-1) +ΔT(i))/3}・γ ・・・(2)
ただし、ΔGA←GA(i) −GA(i-1) ・・・(3)
GA(i) :現制御周期での吸入空気量
GA(i-1) :前制御周期での吸入空気量
Tcal(i-1):前制御周期での推定触媒温度
T(i) :現制御周期での吸入空気量に対応する、あるべき推定触媒温度
ΔT(i-2) :前前制御周期で算出した推定触媒温度の温度変化量
ΔT(i-1) :前制御周期で算出した推定触媒温度の温度変化量
ΔT(i) :現制御周期で算出した推定触媒温度の温度変化量
β,γ:係数
上記式(2)は、温度変化量ΔT(i-2) ,ΔT(i-1) ,ΔT(i)の相加平均を求めることにより、これを現制御周期の温度変化量ΔT(i) として算出するものである。
また、係数βが掛けられる上記式(1)では、同係数βが大きな値であるほど、温度変化量ΔT(i) が大きな値となる。また、係数γが掛けられる上記式(2)では、同係数γが大きな値であるほど、温度変化量ΔT(i) が大きな値となる。
ここで、上記過渡時においても、定常時と同様、変速比の大きな変速段が選択されているときほど排気の熱量が多くなり、触媒温度Tの応答遅れの度合いが小さくなる。すなわち、触媒温度Tの変化度合いが大きく、早期に吸入空気量GAに対応した推定触媒温度Tcal(i)に収束する。
そのため、上記式(1),(2)における係数β,γとしては、変速機42の変速段に応じた値が用いられる。これらの変速段と係数βとの関係、及び変速段と係数γとの関係はそれぞれメモリ(ROM)に記憶されている。
詳しくは、変速段が1速、2速、3速、4速、5速であるときの係数βを、それぞれβ1、β2、β3、β4、β5とすると、β1>β2>β3>β4>β5の関係が成り立つように、各係数β1〜β5が設定されている。
また、変速段が1速、2速、3速、4速、5速であるときの係数γを、それぞれγ1、γ2、γ3、γ4、γ5とする。γ1>γ2>γ3>γ4>γ5の関係が成り立つように、各係数γ1〜γ5が設定されている。
従って、変速比の大きな変速段(例えば1速)が選択されるほど係数β,γとして大きな値が用いられ、徐変処理後の触媒温度Tの温度変化量ΔT(i) として大きな値が算出されることとなる。
なお、上記式(2)に代えて、式(4)を採用してもよい。
ΔT(i) ←[{(n−1)ΔT(i-1) +ΔT(i)}/n]・γ ・・・(4)
上記式(4)は、前制御周期において求められた温度変化量ΔT(i-1) に対して「(n−1)/n」、現制御周期での温度変化量ΔT(i) に対して「1/n」をそれぞれ乗じて重み付けを行い、それらの加算値を現制御周期の温度変化量ΔT(i) として算出するものである。この場合にも、上記式(2)と同様、係数γが掛けられることから、同係数γが大きな値であるほど温度変化量ΔT(i) が大きな値となる。
ΔT(i) ←[{(n−1)ΔT(i-1) +ΔT(i)}/n]・γ ・・・(4)
上記式(4)は、前制御周期において求められた温度変化量ΔT(i-1) に対して「(n−1)/n」、現制御周期での温度変化量ΔT(i) に対して「1/n」をそれぞれ乗じて重み付けを行い、それらの加算値を現制御周期の温度変化量ΔT(i) として算出するものである。この場合にも、上記式(2)と同様、係数γが掛けられることから、同係数γが大きな値であるほど温度変化量ΔT(i) が大きな値となる。
次に、過渡時の推定触媒温度Tcal(i)を算出する「触媒温度推定ルーチン」について、図4のフローチャートを参照して説明する。このルーチンは一定時間毎に繰り返し実行される。
電子制御装置61はまずステップ100において、エンジン11の運転状態が変化する過渡時であるかどうかを判定する。この処理に際しては、例えば、前制御周期から現制御周期までの期間における吸入空気量GAの変化度合い(ΔGA)を上記式(3)に従って求め、この変化度合いΔGAが所定値αよりも大きいかどうかを判定する。これに代えて、アクセル踏込み量の変化度合い、スロットル開度の変化度合いを求め、これらが所定値よりも大きいかどうかを判定してもよい。
上記ステップ100の判定条件が満たされていない(非過渡時である)と、この触媒温度推定ルーチンを一旦終了する。これに対し、ステップ100の判定条件が満たされている(過渡時である)と、ステップ200において、前制御周期でメモリ(RAM)に記憶した推定触媒温度Tcal(i-1)を読出す。
次に、ステップ300において、上記変速信号に含まれている各種変速情報から、変速機42において現在選択されている変速段を読込み、この変速段に対応する係数β,γをそれぞれマップから求める。得られる係数β,γは、変速比の大きな変速段ほど大きな値となる。
続いて、ステップ400において、そのときの変速段に応じた上記ステップ300での係数βを用い、前述した式(1)に基づき触媒温度Tの変化量(温度変化量ΔT(i) )を算出する。得られる温度変化量ΔT(i) は、変速比の大きな変速段が選択されていて、エンジン11に加わる負荷が小さいときには大きな値となり、変速比の小さな変速段が選択されていて、同負荷が大きいときには小さな値となる。
ステップ500において、そのときの変速段に応じた上記ステップ300での係数γを用い、前述した式(2)に基づき温度変化量ΔT(i) を算出する。得られる温度変化量ΔT(i) は、上記式(1)の場合と同様、変速比の大きな変速段が選択されていて、エンジン11に加わる負荷が小さいときには大きな値となり、変速比の小さな変速段が選択されていて、同負荷が大きいときには小さな値となる。このようにして得られる温度変化量ΔT(i) は、排気から排気浄化触媒27へ伝わる熱による触媒温度Tの変化量に相当する。
さらに、ステップ600,700において、上述した排気からの熱以外の要素による触媒温度Tの温度変化量ΔTa(i),ΔTb(i)をそれぞれ算出する。前者の温度変化量ΔTa(i)は、排気浄化触媒27から熱が放射されることにより生ずるものである。この温度変化量ΔTa(i)は、例えば、前制御周期での触媒温度(推定値)と吸気温との偏差に係数を掛けることにより求められる。また、後者の温度変化量ΔTb(i)は、排気浄化触媒27内での酸化反応に伴う熱により生ずるものである。この温度変化量ΔTb(i)の算出に際しては、例えば排気が有する熱量と排気浄化触媒27の酸化反応によって発生する熱量とがそれぞれ求められる。そして、両者の合計(総熱量)が排気浄化触媒27に作用した場合に、触媒温度Tが次回の制御周期までに上昇する温度が、温度変化量ΔTb(i)として求められる。
次に、上記ステップ800において、上記ステップ500,600,700での温度変化量ΔT(i) ,ΔTa(i),ΔTb(i)を、上記ステップ200で読出した推定触媒温度Tcal(i-1)に加算し、加算後の値を現制御周期での最終的な推定触媒温度Tcal(i)とする。
さらに、ステップ900において、次回制御周期でのステップ200の処理に備え、上記ステップ800で求めた推定触媒温度Tcal(i)を前制御周期での推定触媒温度Tcal(i-1)として設定し、メモリ(RAM)に記憶する。その後に、この触媒温度推定ルーチンを終了する。
上記触媒温度推定ルーチンによると、吸入空気量GA及び推定触媒温度Tcal(i)は、例えば図5に示す態様で変化する。この態様では、運転者によるアクセルペダル24の踏込み操作により吸入空気量GAが次のように変化した場合を想定している。タイミングt1よりも前の期間には、アクセルペダル24が一定の踏込み量で操作されていて、車両10が一定速度で走行されている。吸入空気量GAは少ない値GA(1) で安定している。タイミングt1で、加速のために運転者によってアクセルペダル24が踏み込まれ、それに伴いスロットルバルブ18が開弁される。この開弁により吸入空気量GAが増量して値GA(2) になる。
これに対し、タイミングt1よりも前の期間では、推定触媒温度Tcal(i)として上記吸入空気量GA(値GA(1) )に対応する値Tcal(1)が算出される。タイミングt1以降、変化後の吸入空気量GA(値GA(2) )に対応した値Tcal(2)に収束するまでの期間、推定触媒温度Tcal(i)が徐々に増加する。また、この際の徐変度合いは、そのときに選択されている変速位置(変速段)に応じて異なる。徐変度合いは、変速比の大きな変速段が選択される場合(図5の二点鎖線参照)には、変速比の小さな変速段(図5の実線参照)が選択される場合よりも小さい。従って、推定触媒温度Tcal(i)は、大きな度合いにて増加し、早期に値Tcal(2)に収束する。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(A)吸入空気量GAが変化する過渡時に、変化後の吸入空気量GAに対応する触媒温度Tに応答遅れを有して追従する値として、温度変化量ΔT(i) を徐変処理によって求め(ステップ400,500)、この温度変化量ΔT(i) に基づき推定触媒温度Tcal(i)を算出するようにしている(ステップ600〜800)。さらに、この徐変処理に際し、式(1),(2)における係数β,γを、変速機42からエンジン11に加わる負荷に応じて変更するようにしている(ステップ300)。
(A)吸入空気量GAが変化する過渡時に、変化後の吸入空気量GAに対応する触媒温度Tに応答遅れを有して追従する値として、温度変化量ΔT(i) を徐変処理によって求め(ステップ400,500)、この温度変化量ΔT(i) に基づき推定触媒温度Tcal(i)を算出するようにしている(ステップ600〜800)。さらに、この徐変処理に際し、式(1),(2)における係数β,γを、変速機42からエンジン11に加わる負荷に応じて変更するようにしている(ステップ300)。
従って、吸入空気量GAと触媒温度Tとの関係は、エンジン11に加わる負荷に応じて異なるが、上記のように負荷に応じた係数β,γを用いることにより、負荷に応じて異なる徐変度合いにて徐変処理を行うことができる。その結果、負荷に拘わらず一定の徐変度合いにて徐変処理を行う場合に比べ、過渡時における推定触媒温度Tcal(i)をより高い精度で算出することができるようになる。
(B)エンジン11に加わる負荷が小さいときには大きいときに比べ、エンジン回転速度NEが高くなり、1回転当りに気筒12内に流入する空気の量が少なくなる。これに伴い実圧縮比が小さくなってエンジン11の熱効率が低下し、エンジン11からの排気の熱量が多くなる。また、吸入空気量GAが変化する過渡時における触媒温度Tの応答遅れの度合いも小さくなる、すなわち、触媒温度Tが大きな変化度合いにて変化する。
この点、本実施形態では、式(1),(2)における係数β,γを、変速比の大きい変速段ほど大きな値とすることにより、エンジン11に加わる負荷が小さいときほど、徐変処理における徐変度合いを小さくするようにしている。従って、このように負荷(変速比)と排気の熱量との関係を考慮した徐変度合いにて徐変処理を行うことにより、上記(A)の効果を確実に得ることができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・前記実施形態では、エアフロメータ53によって直接検出される吸入空気量GAを推定触媒温度Tcal(i)の算出に用いたが、これに代えて、他のパラメータに基づき算出した値、例えば吸気圧とエンジン回転速度NEとに基づいて吸入空気量GAを算出し、これを推定触媒温度Tcal(i)の算出に用いてもよい。
・前記実施形態では、エアフロメータ53によって直接検出される吸入空気量GAを推定触媒温度Tcal(i)の算出に用いたが、これに代えて、他のパラメータに基づき算出した値、例えば吸気圧とエンジン回転速度NEとに基づいて吸入空気量GAを算出し、これを推定触媒温度Tcal(i)の算出に用いてもよい。
・本発明は、排気浄化触媒27のほかにも、排気通路28に設けられた部品、例えば排気管、排気中の酸素の濃度を検出する酸素センサ等を排気系部品とし、これらの温度を推定する場合にも適用可能である。
・本発明は、変速機として、上述した手動変速機のほかにも自動変速機や無段変速機が搭載された車両にも適用可能である。この場合にも、変速機の変速比に応じて徐変度合いを変更する。
・本発明は、変速機以外にもエンジン11に加わる負荷が運転状況に応じて変化する場合、例えばエアコンのコンプレッサについて、その作動・停止に伴い負荷が変化する場合において、その負荷に応じて徐変度合いを変更する場合にも適用可能である。
11…ガソリンエンジン(内燃機関)、16…クランクシャフト(内燃機関の出力軸)、27…排気浄化触媒(排気系部品)、42…変速機、61…電子制御装置(徐変度合い変更手段)、GA…吸入空気量、T…触媒温度(排気系部品の温度)、Tcal(i)…推定触媒温度、ΔT(i) …温度変化量。
Claims (5)
- 内燃機関への吸入空気量と排気系部品の温度との関係を予め定めておき、吸入空気量が変化する過渡時には、その変化後の吸入空気量と前記関係とから求まる排気系部品の温度に応答遅れを有して追従する値を徐変処理により算出し、この値に基づき前記排気系部品の温度を推定するようにした内燃機関の排気系部品の温度推定装置において、
前記徐変処理を行う際の徐変度合いを前記内燃機関に加わる負荷に応じて変更する徐変度合い変更手段を備えることを特徴とする内燃機関の排気系部品の温度推定装置。 - 前記排気系部品は、前記内燃機関から排出される排気を浄化する排気浄化触媒である請求項1に記載の内燃機関の排気系部品の温度推定装置。
- 前記徐変度合い変更手段は、前記内燃機関に加わる負荷が小さいときには、同負荷が大きいときよりも前記徐変度合いを小さくする請求項1又は2に記載の内燃機関の排気系部品の温度推定装置。
- 前記内燃機関の出力軸の回転を変速する変速機をさらに備え、前記徐変度合い変更手段は、前記変速機による変速比に応じて前記徐変度合いを変更する請求項1〜3のいずれか1つに記載の内燃機関の排気系部品の温度推定装置。
- 前記徐変度合い変更手段は、大きな変速比が選択されているときには、小さな変速比が選択されているときよりも前記徐変度合いを小さくする請求項4に記載の内燃機関の排気系部品の温度推定装置。
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2005
- 2005-08-31 JP JP2005251009A patent/JP2007064089A/ja active Pending
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