JP2007060988A - 房採りトマトの露地栽培法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】各房のトマトの果実径が直径1〜2cmに肥大した時点で、遮光率10〜15%の透気性及び撥水性を具備する袋を用いて各房ごとに袋掛けを施し、各房ごとにその全周を袋で20日〜30日間被覆することにより袋内の日中温度を30℃〜35℃以下に保つことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
1.裂果
トマトの果実は強力な直射日光(30℃以上)を受けると、果皮が高温により硬化し、ヘタの下で放射状に深く裂ける。また、空中湿度が少ないとき、突然の降雨などにより着色期のトマトの果実に直接水滴が当ると果全体に裂け目が出たり、汚損してしまうことがある。
2.鮮度低下
トマトは盛夏期(7〜8月)には、高温(30℃以上)でガクが萎れたり、直射日光で果皮の産毛が縮んでしまい、新鮮さが失われることがある。
3.着色むら
トマトの果実の肩の部位は、直射日光で高温(35℃以上)になりやすく、赤色のリコピンは生成されず、黄色のカロテンだけが生成されるため、赤く着色されずに黄色も残り、着色むらになる。
4.鳥虫害
トマト果実の虫害は農薬によって防除できるが、屋外であるため風雨などを受けて残効期間が短い。トマト果実の鳥害は小玉と中玉に集中する。赤くて甘味のある小果実は、鳥類の絶好の餌となる。
5.農薬汚染
トマト栽培圃場に近接する田畑から強毒性で残効日数の長い農薬が飛散(50〜150m)することがある。露地栽培トマトの果実に、農薬が付着する恐れが充分ある。また、自家散布の農薬が果皮とガクに付着しているのは日常的な現象である。
6.衛生管理不良
収穫時の衛生管理が良くない。特に、目では確認できない程度に裂果した果実を容器(コンテナー、かご等)に収納する場合、ハエなどの小動物が果実に付着している。これら小動物が良品トマトのヘタに付着し、腐敗菌を運ぶことがある。結果として、出荷時は一応良品トマトであっても、店頭では傷み果となる場合もあり、傷み口に産卵していることもあるので不衛生である。
以前は各地で露地栽培が行われていたが、その栽培法は上記の通り自然条件に影響されやすく、廃棄率が高く、収量や品質が安定しない。
そのため、露地栽培による作型は近年減少傾向にあり、ハウス栽培が主流となっている。
すなわち、本発明者開発に係る栽培法の第1は、房採りトマトの露地栽培法であって、着果後各房のトマトの果実径が直径1〜2cmに肥大した時点で、遮光率10〜15%の透気性及び撥水性を具備する袋を用いて各房ごとに袋掛けを施し、各房ごとにその全周を袋で20日〜30日間被覆することにより袋内の日中温度を30℃〜35℃以下に保つことを特徴とする房採りトマトの露地栽培法である。
1.裂果の改善
収穫期のトマト果実は、強い直射日光(30℃以上)を直接受けると、果皮が高温により硬化したり老化したりして、ヘタの下から放射状に裂ける。また、湿度が低いとき(40%以下)、雷雨などの突然の降雨により収穫期のトマト果実に直接水滴が当ると、果皮全体に裂け目が生じたり、泥はねにより汚損してしまうことがある。トマト果実の裂果と汚損を無くするためには、撥水性と通気性のある白色の紙袋を掛けることにより解決できる。袋を掛ける時期は、トマトの果実が直径1〜2cmに肥大したときが最適である。撥水性と通気性のある白色の紙袋をトマトの果実に掛けることにより、外気温よりも3〜5℃下げることができる。また、紙袋はトマト果実を直射日光から遮り、外面品質の評価を高めるのに役立つ。
2.鮮度低下の改善
トマトは盛夏期(7〜8月)には、高温(30℃以上)のためガクが萎れたり、直射日光を受けて果皮の産毛が縮んでしまい、新鮮さが低下してしまうことがある。トマトの果実のガクの萎れや果皮産毛の縮れを防止するため撥水性と通気性のある白色の紙袋をトマトの房全体に掛けることにより改善できる。撥水性と通気性のある白色の紙袋はある程度光を透過するが遮光には役立ち、また通気性と通湿性があるため、トマトの果実全体の鮮度を保持する。店頭でトマトの鮮度を見分けるポイントとして、果皮の産毛やガクの張り具合などがあげられる。このことは売れ行きや値段にも反映する。
3.色むらの改善
トマト果実の肩の部位は直射日光を受けて高温(35℃以上)になりやすい。果色は赤色のリコピンと黄色のカロテンとの組み合わせにより発現される。果実の温度が35℃を超えるとリコピンは生成されず、カロテンだけが生成される。トマト果実の着色むらは、高温下では黄色のカロテンだけが生成されるため、赤く着色されずに黄色も残るために起こる。トマト果実の着色むらは、鮮度低下と並び外面品質評価の重要ポイントである。着色むら発生の防止には、撥水性と通気性のある白色の紙袋を掛けることにより、直射日光を遮断し、通気性の高い紙袋により35℃以下に袋内を保つことによって改善できる。
4.鳥虫害の改善
トマト果実に対する青虫、尺取虫、芯食い虫、蜂類などの虫害は、農薬によって防除できるが、圃場が屋外であるため風雨を直接受け、屋内に比べて農薬の残効期間が短い。そのため、一週間に一度の割合で農薬散布をしなければならない。また、トマト果実に対する鳥害は小玉果と中玉果に集中する。収穫間近の赤い中小玉果は、鳥類の格好の餌となる。鳥虫害からトマト果実を守るためには撥水性と通気性のある白色の紙袋を房の根本にしっかりと結び掛けることにより改善できる。
5.農薬汚染の改善
自家散布の農薬が、果皮とガクに付着しているのは日常的な現象である。しかし、時としてトマト栽培圃場に近接する田畑から強毒性で残効日数の長い農薬が飛散(50〜150m)し、果皮に付着することがある。トマト果実に対する農薬汚染を防禦する方法は、袋掛けが最も簡便で、しかも安全性が高い。露地圃場でも70〜100日は使用に耐え得る。
6.トマト果実収穫時の衛生管理が、露地栽培圃場においては特に良くない。人間の目では確認できない程度に裂果した果実に気付かず収穫し容器(コンテナー、かごなど)に収納する場合、ショウジョウバエなどの小動物やその卵が果実に付着している。これら小動物が良品トマトのヘタに付着して腐敗菌を運ぶことがある。衛生管理と品質管理が不十分になりがちな収穫時のトマトは、トマト果実が青くて小粒のうちに撥水性と通気性のある白色の紙袋を掛けることによって小動物から守ることができ、しかも裂果もないのでハエや蜂も集まることもない。衛生面でも、安心して食べられるトマト果実は、撥水性と通気性のある白色の紙袋掛けによって得ることができる。
図1は、本発明でトマト果実の房を被覆する袋1の一例を示し、幅20.5〜21.5cm 、長さ30.5〜31.5cmの、一例として角形封筒タイプの撥水性白色袋であり、上端2は開口している。この袋の基材は一例として紙であるが、不織布、透気性を有するプラスチックフィルム、あるいはこれらの基材を積層した複合紙であっても良い。要するに袋は、少なくとも遮光率10〜15%の、透気性で、蝋紙などの撥水性を具備する材料からなり、広範の温度条件で結露が発生し難い遮光袋を用いる。さらに袋底には水抜き孔(図略)を備えていることが望ましい。雨水が袋底に溜まることを防ぐためである。
図1に示す袋の口中央に、V形又はI形の5〜8cmの長さの切込み3が設けられている。またこの袋口に紐通しを形成し、結束紐を設けることも可能である。トマトの房についた果実は図2のように幹に接して成長するので、上記のように袋口の中央に切込み3を設けると、トマトの房と反対側で図3のごとく、袋口を絞ってその口を袋付属の紐とか針金等4で縛り固定することは容易である。
実施圃場名:福島県伊達郡梁川町粟野沼頭地先トマト生産圃場:通称甚一畑(有機JAS認定)
生産者 :タチバナペーパーウエアー株式会社
本発明者は、夏秋房採り中玉トマト(栽培品種名:オランダ・レイクスワン社生産種子レジーナ)を使用して、福島県伊達郡梁川町粟野沼頭先の「トマト生産圃場(通称:甚一畑)」において、平成17年4月トマトの露地栽培試験を下記のように実施した。
袋は、小林製袋産業株式会社製の果実育成袋:AA21F(図1)の袋を用いた。
実施形態 :露地栽培
実施面積 :0.5アール
栽培品種名:レジーナ(房採り中玉トマト)
種子生産者:オランダ・レイクスワン社生産種子
栽培本数 :100本
育苗形態 :実生苗(種子を土中に蒔き発芽させた苗)
播種 :平成17年4月20日〜
移植 :平成17年5月15日〜
定植 :平成17年6月4日〜
開花 :平成17年6月15日〜
袋掛 :平成17年6月20日〜
収穫 :平成17年7月20日〜
収穫形態 :房採り。1房5〜7玉(1玉平均35g)
(1)平成12年12月、アイシーエス日本(株)によって有機JAS認定を受けた甚一畑(福島県伊達郡梁川町粟野沼頭)の一部0.5アールを有機JAS中玉トマトの生産圃場に当てた。
(2)露地栽培による夏秋トマト生産を目指す。
圃場には、自社生産の発酵肥料:コスモス21を平成17年3月中旬に約50kgすき込む。コスモス21の内容は、大豆油カス、米ヌカ、鶏糞、魚粉、骨粉、苦土石灰、カキガラ粉、石灰、あんぽ柿、モミ殻、土着菌である。
(3)圃場への定植はトマト苗が第一段目の花芽が確認できる頃実施した。定植畝には10〜15日前に黒マルチを敷き、保温保湿と雑草防止、泥はね防止した。
(4)定植後30日目頃に第5段目の花芽が出た。交配は、自然界のマメコバチによった。この頃、支柱(いぼ竹)を立て、トマトの幹を麻ひもで結び、倒伏を防いだ。第1段目の房に5〜6玉着けて、他は切り取った。トマト房の先端の玉の大きさが直径1〜2cmの大きさに育ったとき、袋掛けを実施した。青虫の食害予防効果は大である。この方法はあたかもぶどう巨峰に袋掛けするのと同じである。袋もブドウ用の20号(21.5×31.5cm)(小林製袋産業(株)製)を用いた。また、日当たりを良くするため脇枝かきと整枝を行った。
(5)トマトの幹が約1m位に育った頃に、幹と葉が黒ずんでくる病気<萎凋病>の発生が見られた。これは伝染するので、見つけ次第根から抜き取る。当圃場でも5本(5%)の萎凋病が発生した。この病気にかかると果実も黒くなり落下する。もっとも、この数値は何年も同一ハウス内に栽培しているトマトに比べれば(20〜23%)少ない。
(6)収穫時期は開花後30〜40日位である。収穫の目安は、袋内に真っ赤な玉が房状になって見えるときである。袋掛けしてあるために、汚損果が少なく、虫鳥害がなく、農薬汚染がなく、着色むらがなく、鮮度低下がなく、裂果がない。袋掛けトマトは秀品率が約80%と高く、ハウス栽培果に比べれば2倍にも達する。
(1)夏秋期(6〜10月)における露地トマトの有袋栽培は、無農薬の有機JASにおいてすら、ハウストマト栽培にくらべ、秀品率が80:40と2倍に達した。これは本発明の方法により露地トマトに撥水性と通気性のある白色の紙袋を掛けたことにある。(表2)
(2)外面品質面では有袋栽培を行うことにより、露地トマトのほうが、ハウストマトよりも秀品が多かった。果実は艶々して真っ赤である。
(3)内面品質面では、露地トマトもハウストマトも高い評価を受け甲乙がつけがたかった。糖度は8度と甘い。
(4)安全面では、露地有袋トマトのほうがハウストマトよりもはるかに秀れていた。果実から農薬は検出されなかった。
(5)衛生面では、露地トマトもハウストマトも共に問題はなかった。ショウジョウバエの発生が後日の検査でも認められなかった。
(6)ハウストマトと露地トマトの生産(設備費も含む)コスト比は、1シーズン当り約7倍もハウストマトのほうが高い。(表1)
(7)夏秋期トマトの生産は露地有袋栽培を実施するほうが断然有利である。
2 開口部
3 切込み
4 針金
Claims (2)
- 房採りトマトの露地栽培法であって、着果後各房のトマト果実径が直径1〜2cmに肥大した時点で、遮光率10〜15%の透気性及び撥水性を具備する袋を用いて各房ごとに袋掛けを施し、各房ごとにその全周を袋で20日〜30日間被覆することにより袋内の日中温度を30℃〜35°C以下に保つことを特徴とする房採りトマトの露地栽培法。
- 請求項1に記載の露地栽培法であって、使用する袋は、水抜き孔を底部に備えている白色紙袋である房採りトマトの露地栽培法。
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