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JP2006524489A - Spex組成物および使用方法 - Google Patents

Spex組成物および使用方法 Download PDF

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JP2006524489A
JP2006524489A JP2006500102A JP2006500102A JP2006524489A JP 2006524489 A JP2006524489 A JP 2006524489A JP 2006500102 A JP2006500102 A JP 2006500102A JP 2006500102 A JP2006500102 A JP 2006500102A JP 2006524489 A JP2006524489 A JP 2006524489A
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Scripps Research Institute
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Abstract

本発明は、脾臓組織で発現されるものとして同定され、リンパ球活性および免疫応答に関連した新規ポリペプチドおよび他の因子を提供する。これらの化合物を、本明細書ではSPEX化合物と称す。SPEXポリペプチドおよびポリヌクレオチドのヒトおよびマウス相同体が、2種のマウス対立遺伝子を含めて提供される。さらに本発明は、ポリペプチドコード化するポリヌクレオチドおよびその相補的核酸配列をを提供する。また、SPEXポリペプチドおよびポリヌクレオチドに関する免疫原、発現ベクターおよび抗体も提供される。本発明は、リンパ球活性の調節および免疫応答の調節における抗SPEX抗体の使用を開示している。

Description

発明の詳細な説明
本発明は、細胞コミュニケーション(情報伝達)およびシグナル変換の分野に関するものである。特に、本発明は、リンパ球発生、増殖および細胞分化決定に関連した新規ポリペプチドおよびポリヌクレオチド、免疫原、抗体、ベクター、宿主細胞、および他の組成物を提供し、またリンパ球活性化および免疫応答のモジュレーションという目的を含むそれらの使用方法を提供する。
ある種の細胞表面タンパク質は、細胞間接触を通して、また可溶性メディエーターについての受容体としての場合を含め、免疫応答のモジュレーションにおいて重大な役割を演じることが知られている。追加的免疫モジュレーション性タンパク質の同定および特性確認およびリンパ球発生および活性のモジュレーション方法は、自己免疫、癌、移植拒絶および炎症を含む広く多様な状態についての標的治療の開発にとって依然として重要なものである。
以下のポリヌクレオチドは、メリーランド20894、ベセスダ、ロックビル・パイク、国立医学図書館(NLM)の国立生物工学情報センター(NCBI)により維持されているGenBankデータベースに列挙されている:発現された配列標識AA184189およびAA177302および細菌性人工染色体(BAC)pBeloBAC11(インサイト・ゲノミクス、パロアルト、カリフォルニア)、PBeloBAC.26056(インサイト)、およびPBeloBAC.26057(インサイト)。
本発明は、一つには、本明細書でSPEXと称される細胞表面タンパク質をコード化する新規遺伝子を提供する。「SPEX」の名称は、脾臓組織で検出される高レベルのSPEX発現を示す「脾臓発現(された)(spleen expressed)」という句における各語の最初の2文字を短縮したものである。ある種の実施態様では、実質的完全長のSPEXポリペプチドは、リンパ球で発現される、シグナル変換受容体として特性確認されており、リンパ球増殖、分化、発生および/または細胞分化決定をモジュレーションし得る。好ましい実施態様では、SPEXは、免疫応答の負の調節因子を含む。一例では、SPEX受容体の活性化により、リンパ球の代謝が阻害されるかまたは免疫応答が阻害される。別の例では、SPEX受容体の拮抗作用により、リンパ球の代謝が促進されるかまたは免疫応答が延長される。本明細書におけるある種の実施態様は、SPEXポリペプチドの細胞外ドメインと免疫反応する抗体およびSPEX受容体に拮抗することにより、SPEX受容体を発現するリンパ球に刺激を加える方法を提供する。
一実施態様において、本発明は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む多重ドメインポリペプチドを含むSPEXポリペプチドを提供する。細胞外ドメインは、好ましくはSPEX免疫グロブリン(Ig)様ドメインを含む。膜貫通ドメインは、好ましくは、細胞の脂質二重層、好ましくは細胞質膜および別法としてリポソームにSPEXポリペプチドを固定させている。SPEX細胞内ドメインは、好ましくは1個またはそれ以上、さらに好ましくは3個のチロシンベースドメインを含む。
一部、開示されたドメイン構造に基いて、一実施態様は、免疫グロブリンスーパーファミリーのI型細胞表面シグナル変換リンタンパク質を含むSPEXポリペプチドを提供する。
免疫グロブリンスーパーファミリーは、分子認識および接着に関与する多くの細胞表面タンパク質を含む多重遺伝子族である。Ig様ドメインは、保存されたコア構造を有する。配列解析を通して、本発明者らは、SPEX受容体分子の細胞外部分におけるIg様ドメインを同定した。好ましいSPEXポリペプチドの例は、ヒトSPEX(hSPEX)の配列番号3、マウスSPEX(mSPEX)の配列番号45、またはmSPEXの第二対立遺伝子(本明細書ではmSPEXbと称す)の配列番号88に示された配列を有するIg様ドメインを含む。一実施態様において、SPEX Ig様ドメインは樹状細胞と特異的に結合する(例、樹状細胞における受容体/リガンドへのSPEXポリペプチドの特異的結合を通じて)。
リンタンパク質は別の多重遺伝子族である。リンタンパク質族は、分子認識および/またはシグナル変換に関与する多くの細胞表面タンパク質を包含する。リンタンパク質は、典型的には分子認識、リン酸化、脱リン酸化、およびシグナル変換に不可欠なシグナリングドメインを含む。ある種のSPEXポリペプチドは、1個またはそれ以上のチロシンベースドメインを含む。好ましい実施態様において、SPEXチロシンベースドメインは、分子認識、リン酸化、脱リン酸化、および/またはシグナル変換活性を含む。例えば、一実施態様において、チロシンベースドメインを含むSPEXポリペプチドは、リン酸化および脱リン酸化され得るチロシン残基を含む。好ましいSPEXチロシンベースドメインの例には、配列番号7、配列番号9および配列番号11が含まれる。
一部、SPEXポリペプチドで同定されたIg様およびリンタンパク質構造および/または本明細書で開示されているデータに基き、ある種の実施態様では、SPEX受容体がリンパ球機能をモジュレーションするものとする。ある種の実施態様は、SPEX受容体を含むリンパ球の代謝のモジュレーション方法であって、SPEX受容体の活性のモジュレーションを含む方法を提供する。一実施態様は、SPEX受容体を含むリンパ球の増殖のモジュレーション方法であって、SPEX受容体の細胞外ドメインと免疫反応する抗SPEX抗体とリンパ球を接触させることを含む方法を提供する。リンパ球の増殖、または増殖速度を増加させるのが好ましい。
ある種の実施態様では、SPEXポリペプチドを含むリンパ球においてSPEX活性を刺激することにより、リンパ球の増殖が阻害される(例、リンパ球に含まれるSPEX受容体のリガンド結合)と考えられる。
本質的に完全長のSPEXアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドに加えて、その様々なドメインは、SPEX活性をモジュレーションする分子の製造方法において有用である。例えば、SPEX細胞外ドメインは、抗体産生に有用であり、またSPEX活性およびリンパ球代謝をモジュレーションするのに有用である。またSPEX細胞内ドメインは、結合パートナーを同定するのに有用であり、またSPEXリンタンパク質活性およびリンパ球代謝をモジュレーションするのに有用である。
本発明の一実施態様は、SPEXポリペプチドをコード化する核酸配列、または核酸配列の相補体を含むSPEXポリヌクレオチドを提供する。さらなる実施態様は、SPEXポリペプチドを同定するための核酸、SPEXポリヌクレオチドを増幅するための核酸、およびベクター配列と機能し得るように結合されたSPEXポリヌクレオチドを提供する。SPEXポリヌクレオチドは、例えば、インビトロおよびインビボを含むSPEXポリペプチドの製造方法において有用である。SPEXポリヌクレオチドの発現に好ましい細胞は、B細胞およびT細胞を含むリンパ球を包含する。
一実施態様は、SPEXポリペプチドをコード化する核酸、または核酸の相補体(SPEXポリヌクレオチド)を含むSPEXベクターを提供し、その核酸はベクター配列に機能し得るように結合されている。ベクター配列は、SPEXポリヌクレオチドの代謝を調節するのが好ましく、そしてベクター配列がSPEXポリヌクレオチドの発現を調節することが最も好ましい。
一実施態様は、異種配列に機能し得るように結合されたSPEX配列を含むSPEX融合配列を提供する。ある種の有用な異種配列の例には、検出標識、溶解度強化因子、および生物活性因子があるが、これらに限定はされない。
一実施態様は、SPEXポリペプチドまたはSPEXポリヌクレオチドを含むSPEX変異型配列を提供し、そのSPEX配列は、本明細書で開示されている通り修飾または変異型を含む。SPEX変異型配列は、非修飾SPEX配列の構造的および/または機能的特性(すなわち活性)を含むのが好ましい。
一実施態様は、SPEX突然変異体配列(ポリペプチドまたはエンコーディングポリヌクレオチド)を提供する。好ましい実施態様は、チロシンベースドメインの突然変異(例、置換、欠失、先端切除)、さらに好ましくは、チロシンベースドメインのチロシンアミノ酸残基の突然変異を含むSPEXアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。チロシンベースドメインにおける突然変異は、SPEXシグナル変換を阻害するのが好ましい。
別の実施態様は、SPEXベクターを含む宿主細胞(SPEX宿主細胞)を提供する。SPEX宿主細胞は、例えば、SPEXポリペプチドの製造方法において有用である。別の例では、SPEX宿主細胞は、リンパ球代謝およびSPEX活性化および/または阻害のモジュレーションによる場合を含むそのモジュレーションの試験において有用である。
一実施態様は、本発明のSPEXポリペプチドと免疫反応する単離抗体またはそのフラグメントを提供する。一実施態様において、抗SPEX抗体は、SPEXポリペプチドを発現する免疫細胞の活性をモジュレーションする。好ましい実施態様において、抗SPEX抗体は、SPEXポリペプチドを発現する哺乳類細胞、好ましくはリンパ球、および最も好ましくはT細胞、B細胞および/または抗原提示細胞(APC)の増殖および/または分化を阻害する。
一実施態様は、SPEX結合パートナーを同定するための候補分子のスクリーニング方法であって、候補分子をSPEXポリペプチドと接触させ、候補分子およびSPEXポリペプチドが結合複合体を形成しているか否かを測定し、その際結合複合体の形成は、候補分子がSPEX結合パートナーであることを示すものであり、そしてSPEX結合パートナーが同定されるまでスクリーニング段階を続行することを含む方法を提供する。好ましい候補結合パートナー分子は、小分子有機化合物およびポリペプチドを包含する。スクリーニング検定法に好ましい標的には、SPEXポリペプチド、およびさらに好ましくはSPEX細胞外ドメイン、SPEX細胞内ドメイン、SPEX Ig様ドメイン、またはSPEXチロシンベースドメインがあるが、これらに限定はされない。一実施態様では、SPEXポリペプチドまたはSPEXドメインのアンタゴニストが、SPEX受容体を含むリンパ球を活性化するものとする。別の実施態様では、SPEXポリペプチドまたはSPEXドメインのアゴニストが、SPEX受容体を含むリンパ球の活性化を阻害するものとする。
一実施態様は、SPEXポリペプチドを含む生物学的試料からのSPEXポリペプチドの精製方法であって、抗SPEX抗体をマトリックスに結合させたアフィニティーマトリックスと生物学的試料を接触させることにより、SPEXポリペプチドおよびマトリックスに結合した抗体を含む免疫複合体を生成させ、マトリックスから生物学的試料の残りを分離し、抗SPEX抗体からSPEXポリペプチドを分離し、SPEXポリペプチドを集める段階を含む方法を提供する。
一実施態様は、SPEX受容体ポリペプチドを発現するリンパ球の代謝、好ましくは増殖のモジュレーション方法であって、SPEX受容体ポリペプチドの細胞外ドメインと免疫反応する抗SPEX抗体とSPEX受容体ポリペプチドを発現するリンパ球とを接触させることにより、リンパ球の代謝をモジュレーションする方法を提供する。好ましいリンパ球にはB細胞およびT細胞がある。
図面は、本発明の明細書の一部分を構成する。
図1は、細胞外、膜貫通(斜線部)および細胞内ドメイン(標識通り)を有する実質的に完全長のマウスおよびヒトSPEXポリペプチド(それぞれ、mSPEXおよびhSPEX)の図である。細胞外ドメインは各々、免疫グロブリン(Ig)様ドメイン(水平線)を含み、所望により開裂可能なシグナル配列(ダッシュ領域)を有していてもよく、矢印は開裂部位を指す。シグナル配列は、翻訳後プロセシング中に開裂され、成熟SPEXポリペプチドを生じさせる。細胞内ドメインは各々、3個のチロシンに基くモチーフを含む(垂直線)。また、チロシンに基く各ドメインは、チロシンアミノ酸残基を含む(Yは、チロシンについての1文字コードである)。示された実施態様は、チロシンが所望によりリン酸化され得ることを描いている(円で囲んだP)。生体膜におけるSPEXポリペプチドの相対位置が示されている。点描領域は、ある種の機能性ドメイン間における各ポリペプチドの部分を示す。
図2Aは、選択されたhSPEXポリペプチドおよび選択された各ポリペプチドに関するそれぞれの配列間の対応関係の実例を示す図である。
図2Bは、選択されたhSPEXポリヌクレオチドおよび選択された各ポリヌクレオチドに関するそれぞれの配列間の対応関係の実例を示す図である。
図2Cは、選択されたmSPEXポリペプチドおよび選択された各ポリペプチドに関するそれぞれの配列間の対応関係のある種の実例を示す図である。
図2Dは、選択されたmSPEXポリヌクレオチドおよび選択された各ポリヌクレオチドに関するそれぞれの配列間の対応関係のある種の実例を示す図である。
図3は、モノクローナル抗体PK18がT細胞活性化を阻害することを立証する4つのグラフ(パネル1〜4)を示す。LN T細胞を、B10.BRおよびBALB.Kマウスから精製し、抗CD3およびラットIg(白抜き記号)または抗CD3およびPK18(黒塗り記号)の混合物でコーティングした96ウェルプレートにおいて培養した。データを、トリプリケイト培養物の平均3H−TdR(トリチウム化チミジン)取り込み(+/−標準偏差)マイナスT細胞単独培養物の取り込みの1分間当たりの放射能カウント数(cpm)として表す(1500cpm未満)。T細胞のDNAへの3H−TdRの組込みは、T細胞の増殖およびT細胞活性化の両方と相関関係を示す。
SPEX
本発明者らは、一つには、メッセンジャーRNA(mRNA)を同定しており、その発現は、インビボ胸腺細胞発生プログラムのモデリングに使用される薬理学的活性化因子で胸腺細胞を刺激することにより実質的に高められる(すなわち、胸腺細胞に刺激を加えることにより増殖および/または分化させる、実施例1参照)。このmRNAを本明細書では「SPEX mRNA」と称す。さらに本発明者らは、SPEX mRNAに対応するかまたはそれによりコード化される遺伝子、cDNAおよびポリペプチドを同定した。従って、上記SPEXポリヌクレオチドおよびそのSPEX発現産物は、本明細書では例えばSPEX遺伝子、SPEX cDNA、SPEX mRNA、SPEXアンチセンス核酸、およびSPEXポリペプチドとして称される。
本発明の開示によると、SPEXはTおよびB細胞の両方により発現され、典型的にはB細胞での発現の方がT細胞での発現よりも多大である。CD4またはCD8 T細胞の活性化により、T細胞でのSPEX発現はアップレギュレーションされる。B細胞の活性化により、B細胞におけるSPEX発現はダウンレギュレーションされる。SPEXは、CD4およびCD8 T細胞、γδTCR(T細胞受容体)を発現するT細胞、およびCD25+CD4+調節T細胞により発現される。SPEXは、ダブルポジティブからシングルポジティブ段階への移行中に胸腺で誘導される。SPEXは、骨髄におけるプロB細胞からプレB細胞へのトランジション中にアップレギュレーションされ、次いで未熟および成熟B細胞発達段階中にさらにアップレギュレーションされる。SPEXは、成熟骨髄由来の樹状細胞で発現される。SPEX発現は、未熟骨髄由来の樹状細胞では低レベルないし非存在状態である。SPEX発現は、NK(ナチュラルキラー)細胞では低レベルないし非存在状態である。そしてSPEXは、脾臓における抗原提示細胞(マクロファージおよび樹状細胞を含む)で発現される。
一つには、本発明は、さらに組成物、例えばSPEXポリペプチドおよびSPEXポリヌクレオチド(SPEX発現ベクターを含む)、SPEXポリペプチドと免疫反応する抗体、免疫原およびSPEX宿主細胞を提供する。本発明はまた、SPEX組成物を用いることにより、例えばSPEXタンパク質結合パートナーを同定し、天然または組換え供給源からSPEXを単離し、リンパ球代謝をモジュレーションし、および/またはマーカーまたは単離標識としてSPEXを発現するリンパ球を識別、同定および/または精製する方法を提供する。
精製(された)の定義
本明細書で使用されている「単離された」および「精製された」の語は、互換的に使用され、興味の対象である特定化合物を他の汚染物質から分離することにより、毒性物質、例えば内毒素(所望により、必ずしも汚染物質とは限らない溶質、賦形剤、安定剤、緩衝液、塩類、医薬上許容される担体などを度外視してもよい)を含む不純物について不含有(すなわち、純粋)または本質的に不含有とすることを意味する。従って、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、免疫原、変異型、突然変異体、融合体(ポリペプチドまたはポリヌクレオチド融合体)、ベクター、宿主細胞、抗体などが精製形態であるのが好ましい。
本明細書で使用されているところによると、本発明の精製化合物を第二の精製化合物または物質と混合または組合わせたとき、生成した組成物は、「精製された」組成物(すなわち特定された成分を有する)とみなされる。
本発明を考慮に入れると、当業者であれば、タンパク質単離および精製についての標準技術を用いて本発明のポリペプチド(そのフラグメントを含む)を精製できるはずである。一般的に純粋なポリペプチドは、被る変化が限られている、非還元的ポリアクリルアミドゲルでは単一主要バンドを生じる。例えば、電気泳動ゲルにおいて空間的に近接した多重バンド(例、二重線または三重線のバンド)は、所定のアミノ酸配列を有するポリペプチドの翻訳後修飾(または他の)変異型の混合集団(例、ポリペプチドの集団の一部分は、リン酸化されているかまたは他の形で修飾されており、集団の別の部分は修飾を含まない)の存在から生じることが多い。その他、一遺伝子の対立遺伝子のポリペプチド遺伝子産物は、アミノ酸配列が異なり得る(例、遺伝子突然変異に起因)。本ポリペプチド遺伝子産物は、電気泳動中に差次的に移動し得、典型的には染色体遺伝子座の正常な相補体を伴う細胞で見出される2対立遺伝子に対応する2つのバンドを生じる。また、追加のバンドも考えられる(例、リン酸化状態の差異および/または翻訳後修飾タンパク質修飾、例えばグリコシル化に起因)。ゲルバンドを調べることにより、本発明を考慮に入れ、当業界でよく知られている一般的ポリペプチド配列決定技術、例えば配列決定(ペプチドまたはヌクレオチド)またはマススペクトル分析によってSPEXポリペプチドの内容物が決定され得る。
ポリペプチドの上記混合集団は、さらに、所望ならば(例、電荷、サイズ、親和力または当業界で公知の他の方法に基き)、等質に精製され得る(例、それにより純粋ポリペプチドを提供する)。また、上記集団は、集団におけるポリペプチドに修飾を加えるかまたは/同ポリペプチドから修飾を除去すべく処理され得る(例、リン酸化は、キナーゼにより付加されるかまたはホスファターゼを用いて除去され得、グリコシル化は、グリコシダーゼにより除去されるかまたはグリコシルトランスフェラーゼにより付加され得る)。ポリペプチドの純度はまた、例えばアミノ酸配列解析および/またはマススペクトル分析により測定され得る。
本発明を考慮に入れると、当業者であれば、核酸単離および精製についての標準技術を用いて本発明のポリヌクレオチドを精製し得るはずである。例えば、核酸は、標準核酸調製技術を用いてタンパク質、脂質、および他の化合物から除去され得る。核酸配列の混合集団は、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて分解され得、興味の対象である特異的バンドが集められる。核酸は、配列特異的プローブを用いて同定および/または精製され得る。配列特異的プローブをマトリックスに付着させることにより、アフィニティークロマトグラフィーを通して興味の対象であるポリヌクレオチドが好都合に単離され得る。ポリヌクレオチドはまたクローニング技術を用いて精製され得、単一ポリヌクレオチドクローンを含む単一コロニーの選択後、標準技術を用いて宿主細胞から興味の対象である核酸が単離され得る。
本発明を考慮に入れると、当業者であれば、標準技術を用いて本発明抗体を精製できるはずである。ある種の方法には、抗原結合マトリックス(例、SPEXポリペプチド結合マトリックス)に対するアフィニティー精製またはプロテインAマトリックスに対する一般的抗体精製が含まれる。
本発明を考慮に入れると、当業者であれば、標準技術を用いて本発明の宿主細胞を精製できるはずである。ある種の方法には、宿主細胞に含まれる選択可能なマーカー遺伝子の使用を含む場合も含まない場合もあり得る希釈平板培養技術が含まれる。
ある種の実施態様において、本発明の精製ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体、宿主細胞、または他の化合物を含む組成物は、さらに緩衝液、水、塩、医薬上許容される担体、アジュバント、融合体、標識、タッグ、マーカー、安定剤、アルブミンなど、および/またはタンパク質修飾(例、リン酸化またはグリコシル化)を含み得る。本発明の精製化合物はまた、上記薬剤の1種またはそれ以上を含み得るかまたは上記薬剤と共にパッケージされ、それでも依然として本明細書で使用されているところの「精製された」とみなされ得る(すなわち、これらの薬剤は、必ずしも汚染物質であるとは限らない)。本組成物は、精製された滅菌組成物であるのが好ましい。例えば、滅菌組成物は、滅菌条件下で本発明の精製された滅菌化合物を1種またはそれ以上の滅菌緩衝液、コンディショナー、担体、バルク、結合剤または安定剤と組合わせ、および/またはSPEX化合物および薬剤を合わせた後に組成物を滅菌することにより製造され得る。
本発明の精製および/または滅菌ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体または組成物は、ヒトまたは他の哺乳類への投与時に有害な反応を誘導し得る内毒素または他の発熱物質および望ましくない刺激物を実質的に含まないのが好ましい。本ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体または組成物は乾燥(例、凍結乾燥)形態で提供され得、上記形態は塩、安定剤などを所望に応じて含み得る。乾燥形態実施態様は、無菌性および純度を維持し得、そして所望により、ヒトまたは他の哺乳類への投与前の再構成薬剤(上記参照)による再構成に適切である容器、器またはバイアルで提供されるのが好ましい。SPEX化合物は、第二容器における再構成薬剤と一緒にパッケージされたキットにおける第一容器で提供され得る。
SPEX受容体
本明細書で使用されている「実質的完全長のSPEXポリペプチド」は、「SPEX受容体」として称され得る。「SPEX受容体」は、限定されるわけではないが、リンパ球代謝のモジュレーション(例、活性化、不活化または増殖)、細胞接着、リン酸化、脱リン酸化(細胞質ドメインの)を含め、本明細書で開示されている活性を含むのが好ましい。好ましいSPEX受容体は、Ig様ドメイン、膜貫通ドメイン、およびチロシンベースドメイン(好ましくは細胞内ドメイン)を含む。非常に好ましいSPEX受容体は、配列番号20、配列番号21、配列番号62または配列番号63を含むが、これらに限定されるわけではない。代替的SPEX受容体は、配列番号19または配列番号61を含むが、これらに限定されるわけではない。追加の代替的SPEX受容体は、SPEX膜貫通ドメインおよびSPEX細胞内ドメインに機能し得るように結合された配列番号85または配列番号86を含む。
ポリペプチド
本発明のある種の実施態様は、マウス、ヒト(好ましい)または他の哺乳類由来のSPEXポリペプチドを提供する。ヒトSPEX(hSPEX)ポリペプチドの一例は、配列番号20に示されたアミノ酸配列を含む。マウスSPEX(mSPEX)ポリペプチドの一例は、配列番号62に示されたアミノ酸配列を含む。一実施態様は、本明細書ではmSPEXbと称される、マウスSPEXの対立遺伝子を提供する。mSPEXbポリペプチドの配列の一例は、配列番号86に示されたアミノ酸配列を含む。
本明細書で使用されている「SPEXポリペプチド」の語は、本明細書で記載されている通り、実質的完全長のSPEXポリペプチド、並びにそのドメイン、フラグメント、セグメント、融合体、突然変異体、および/または変異型を含む(所望により、本質的にこれらで構成されていてもよい)アミノ酸配列を含むものとする。本発明ポリペプチドは精製形態で存在するのが好ましい。
SPEX免疫グロブリン様ドメインを含むポリペプチド
本発明の一実施態様は、SPEX免疫グロブリン(Ig)様ドメインを含むアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。ある種の実施態様では、SPEX Ig様ドメインは、配列番号3、配列番号45または配列番号88に示されている。
一実施態様において、好ましいSPEX Ig様ドメインは、二次および/または三次構造、例えばIg折りたたみまたはベータサンドイッチを含む。別の実施態様では、SPEX Ig様ドメインが、通常はSPEX Ig様ドメインを含むポリペプチド配列から単離または分離されたとき、SPEX Ig様ドメインは、二次および/または三次構造、例えばIg折りたたみまたはベータサンドイッチを維持している。
SPEX Ig様ドメインは、例えばSPEXと特異的に結合し、シグナル変換、リンパ球活性化、リンパ球発達、または免疫応答をモジュレーションする抗体の製造において有用である。別の一例では、SPEX Ig様ドメイン、所望によりSPEX細胞外ドメインは、リンパ球機能のモジュレーション、免疫応答のモジュレーション、またはSPEX結合タンパク質についてのスクリーニングに有用である。さらに別の例では、SPEX Ig様ドメインは、リンパ球および/またはSPEX活性のアゴニストおよびアンタゴニストの同定方法において有用である。
SPEX Ig様ドメインを含むポリペプチドのある種の実施態様は、下表1における配列番号により示されている。必ずしも連続しているわけではない複数のアミノ酸配列を含む実施態様では、配列は、(例えばペプチド結合またはアミノ酸配列リンカーにより)機能し得るように結合されているのが好ましい。
表1
Ig様ドメインを含むポリペプチドのある種の実施態様
Figure 2006524489
ある種の実施態様は、上記表1に示されたアミノ酸配列を含む(別法として、本質的にそれにより構成される)ポリペプチドを提供する。
興味の対象であるポリペプチドがIg様ドメインを含むか否かの測定方法では、RPS−BLASTを用い、検索クエリーとして興味の対象であるアミノ酸配列を入力することにより、保存ドメインデータベースを検索する。ポリペプチドがIg様ドメイン構造を含む場合、Ig様ドメインの位置および配列は、他のポリペプチドからのIg様ドメインのアラインメントと一緒に検索プログラムにより特定される。好ましい検索パラメーターは、検索データベース、全部;期待0.01;フィルター、低コンプレキシティー;検索モード、多重ヒット1−パスである。保存ドメインデータベースおよび検索サービスv1.54ツールは、メリーランド20894、ベセスダ、ロックビル・パイク、国立医学図書館(NLM)の国立生物工学情報センター(NCBI)、コンピューター生物学部門により提供される。配列番号3または配列番号45との候補ポリペプチドの比較(例、配列アラインメントによる)は、候補ポリペプチドが、本明細書に開示されているSPEXポリペプチド、フラグメントまたは変異型であるか否かを測定するのに有用である。
SPEXチロシンベースドメインを含むポリペプチド
本発明の別の局面は、SPEXアミノ酸配列のチロシンベースドメインを含むポリペプチドを提供する。一実施態様において、チロシンベースドメインは、配列番号7、配列番号9または配列番号11を含む。チロシンベースドメインは、チロシンアミノ酸残基を含む。チロシンベースドメインは、リン酸化部位を含むのが好ましい。また、SPEXチロシンベースドメインは、リン酸化および脱リン酸化され得るのが好ましい。
SPEXチロシンベースドメインは、例えば、SPEXシグナリング活性またはリンパ球活性化のモジュレーターの同定方法において有用である。例えば、好ましくはチロシンベースドメインモチーフまたはその付近で、SPEXポリペプチドの細胞内ドメインと特異的に結合するSPEX結合パートナーは、チロシンベースドメインのリン酸化および/または脱リン酸化に干渉することにより、それを阻害すると考えられる。チロシンベースドメインのリン酸化/脱リン酸化によりSPEXシグナル変換経路が提供されると考えられるため、これがSPEX活性をモジュレーションすると予測される。従って、一実施態様は、リンパ球代謝(他にSPEXシグナル変換)のモジュレーション方法であって、SPEX結合パートナーをコード化するベクターをリンパ球に処置し、そこで結合パートナーをSPEXポリペプチドの細胞内ドメイン、好ましくはチロシンベースドメインと結合させることを含む方法を提供する。結合パートナーベクターはリンパ球においてポリペプチドを発現し、次いでポリペプチドは、SPEXポリペプチドと特異的に結合し、リンパ球代謝および/またはSPEXシグナル変換をモジュレーションする。
1つまたはそれ以上のSPEXチロシンベースドメインを含むポリペプチドのある種の実施態様は、下記表2に提供されている。表2はまた、代替的実施態様を提供しており、それらのポリペプチドは、1つまたはそれ以上のSPEXチロシンベースドメイン(左欄)を含むが、第二のSPEX配列またはドメインについては含まない(右欄)。
表2
SPEXポリペプチドのある種の実施態様
Figure 2006524489
ある種の実施態様は、上記表2に示されたアミノ酸配列を含む(別法として、本質的にそれにより構成される)ポリペプチドを提供する。
免疫受容体チロシンベース抑制型モチーフ(ITIM)は、ある種の免疫細胞シグナリングタンパク質、特に免疫細胞膜受容体に含まれることが当業界では知られているモチーフである。ITIMは、免疫応答、細胞増殖、クローン性増殖、サイトカイン産生、細胞接着、および他の生物学的活性の調節に関与する。ITIMは、IXYXXL(配列番号93)により示され、「X」は任意のアミノ酸を表す。
本発明の一実施態様は、配列IVYASL(配列番号94)を含むITIMを提供する。一実施態様において、GIVYASLNH(配列番号9)を含むチロシンベースドメインは、配列番号94に示されたITIMを含む。別の実施態様は、IVYASL(配列番号94)を含むSPEXポリペプチドを提供する。
シグナリングリンパ球活性化分子(SLAM)関連アダプタータンパク質(SAP)は、ある種の免疫細胞シグナリングタンパク質に含まれることが当業界では知られている別のモチーフである。SAPモチーフは、免疫応答、細胞増殖、クローン性増殖、サイトカインの産生、細胞接着および他の生物学的活性の調節に関与する。一例において、SAPポリペプチド、SH2D1Aは、SLAMによるシグナル変換を阻害することが当業界では知られており、その結果、リンパ球、例えばT細胞およびナチュラルキラー細胞の増殖が抑制されずに続行されることはない。Xq25でのSAP遺伝子における欠損は、X連鎖リンパ増殖性疾患に伴う(例、Buckley,R.(2000)NEJM 343:1313−1324およびSayos J et al.(1998)Nature 395:462−469参照、各文献については出典明示により援用する)。
本発明の一実施態様は、配列TEYASI(配列番号96)を含むSAP結合部位を提供する。一実施態様において、EAPTEYASICVRS(配列番号11)を含むチロシンベースドメインは、配列番号96に示されたSAPを含む。別の実施態様は、TEYASI(配列番号96)を含むSPEXポリペプチドを提供する。
SPEX細胞外ドメイン
本発明の一実施態様は、SPEX細胞外ドメインを含むポリペプチドまたはそのフラグメントを提供する。ある種の実施態様において、細胞外ドメインは、配列番号3、配列番号45、配列番号12、配列番号13、配列番号54、配列番号55、配列番号85、配列番号85、配列番号86、または配列番号88を含む。一実施態様において、細胞外ドメインは、さらに膜貫通ドメイン(例、配列番号5または配列番号47)を含む。別法として、当業界で公知の他の膜アンカー型配列も使用され得る。原形質膜、細胞壁、細胞オルガネラ、小胞、リポソーム、脂質ラフトなどにポリペプチドを固定する非常に多くの膜貫通配列が知られている。一般的な当業者であれば、膜貫通配列を用いることにより、本発明のポリペプチドを、上述の脂質に基く構造の一つ、好ましくは細胞原形質膜に合わせるか、固定するかまたは他の形で機能し得るように結合させ得るはずである。
SPEX細胞内ドメイン
本発明の一実施態様は、SPEX細胞内ドメインを含むポリペプチドまたはそのフラグメントを提供する。ある種の実施態様において、ポリペプチドは、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号16、配列番号17、配列番号58、または配列番号59を含む。ある種の実施態様では、細胞内ドメインは、さらに膜貫通ドメイン(例、配列番号5または配列番号47)を含む。一般に、他の膜アンカー型配列も所望ならば使用され得る。
免疫原
本発明のある種の実施態様は、SPEX免疫原を提供する。本明細書で使用されている「SPEX免疫原」は、免疫反応を誘導することができるSPEXポリペプチドまたはそのフラグメントである。一実施態様において、SPEXポリペプチドまたはそのフラグメントは、SPEXポリペプチドまたはそのフラグメントと免疫反応する抗体の製造に有用である(上記参照)。SPEX免疫原はまた、診断および実験的検定法またはキットにおいても有用である。例えば、ある種の診断法およびキットでは、リンパ球の発達段階のマーカー、胸腺細胞発達のDPからSP段階への移行中におけるMAPKシグナリング経路活性化のマーカー、細胞型(SPEXを発現する細胞は上記で検討されている)のマーカー、または少なくとも一部はSPEX発現に基いた細胞型の精製および/または選別用マーカーまたは標識として有用な組成物および方法が提供される。
一般に、6個またはそれ以上の連続アミノ酸残基を含むSPEXポリペプチドであれば、免疫応答を誘導することができる。典型的には、SPEXポリペプチドにおけるアミノ酸残基の数が増すと、ペプチドに対する免疫原応答は高められる。すなわち、ある種の実施態様は、優先度の増す順で、SPEXポリペプチドの6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40連続アミノ酸を含むSPEX免疫原を提供する。別法として、SPEX免疫原は、SPEXポリペプチドの6〜9、10〜19、20〜29、30〜39または40〜50連続アミノ酸を含む。
ある種の好ましい実施態様では、SPEX免疫原は、SPEXポリペプチドドメイン、例えば外部ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン、Ig様ドメイン、チロシンベースドメイン、またはシグナル配列を含む。表1および表2に開示された各SPEXポリペプチドは、SPEX免疫原として有用である。
好ましい実施態様では、SPEX免疫原は精製されている。例えば、ペプチダーゼ(例、トリプシンおよびキモトリプシン)または他のポリペプチド開裂剤(例、ピペリジン)を用いて長いSPEXポリペプチドからフラグメントを解離させるとき、長いSPEXポリペプチドからSPEX免疫原を精製するのが好ましい。SPEX免疫原の一製造方法では、当業界でよく知られている一般的技術である固相ポリペプチド合成を行う。別法では、SPEX免疫原の細胞性発現および精製が含まれる。
精製SPEX免疫原は、任意の担体と組合わされるかまたは結合され、および/または当業界で公知のアジュバントと混合され得る。かくして製造されたSPEX免疫原性組成物についても、本明細書ではSPEX免疫原と称す。精製SPEX免疫原に関して、アジュバントまたは担体は、必ずしも汚染物質とはみなされない。上記担体およびアジュバントは、免疫原応答を高めるのに有用である。免疫原増強剤およびポリペプチドとのそれらの組合わせは、当業界ではよく知られている。例えば、フロイント完全アジュバント、または担体粒子、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)またはコロイド状金属(例、コロイド状金)がある。
変異型
本明細書におけるある種の実施態様は、SPEXレファレンスポリペプチドと95%またはそれより高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド(本明細書ではSPEXポリペプチド変異型と称す)を提供する。本明細書で使用されている「SPEXレファレンスポリペプチド」は、表1または表2における配列番号により示されたポリペプチドである。本SPEX変異型ポリペプチドは、精製SPEX変異型ポリペプチドを含むのが好ましい。一般に、SPEXポリペプチドと比べてSPEX変異型ポリペプチドの配列同一性が大きい場合、変異型ポリペプチドはより好ましいものとなる。従って、ある種の実施態様は、優先度増加順で、SPEXポリペプチドと96%、97%、98%または99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。本明細書におけるSPEX変異型ポリペプチドは、SPEXレファレンスポリペプチドと比べて、少なくとも1つのアミノ酸置換、修飾、付加、欠失、ギャップおよび/または挿入を含む。好ましい変異型は、SPEXレファレンスポリペプチドと比べてかなりの生物活性を保持している。従って、SPEX変異型ポリペプチドは、一般に、SPEXレファレンスポリペプチドが有用であるほとんど実施態様においても有用である。しかしながら、SPEX変異型ポリペプチドは、本明細書では一般にSPEXレファレンスポリペプチドに代わる実施態様としてみなされている。
配列アラインメントおよび同一性パーセントは、本発明ではラボヴェロシティー(ラボヴェロシティー・インコーポレイテッド、サンフランシスコ、カリフォルニア)によるJELLYFISHバージョン1.5ソフトウェアを用いて決定され、以下のパラメーターが使用される:ktupleサイズ(1)、top diagonalsの数(5)、ウインドウサイズ(5)、ギャップペナルティ(3)、スコアリング方法(パーセント)、ウエイトマトリックス(Gonnet)、ギャップ開始ペナルティ(10)、ギャップ延長ペナルティ(0.2)、残基特異的ギャップペナルティ(イエス)、親水性ギャップベネフィット(イエス)、ギャップ間隔(8)、遅延についての同一性のパーセント(30.0)、出力オーダー(アラインメントされた順)。合成修飾アミノ酸残基(例、非天然アミノ酸)の置換、欠失、挿入、付加、ギャップおよび包含のいずれかまたは全部は、2配列間の同一性パーセントの計算に含まれるものとする。例えば、一配列においてイソロイシンまたは他のアミノ酸残基をアロ‐イソロイシンで置換することにより、アラインメントされたときの配列間の同一性パーセントは低下する。対応物質がL−アミノ酸である、配列にD−アミノ酸が含まれる場合も、配列間の同一性パーセントは低下する。
配列番号3(別法として配列番号48または配列番号88)を含むSPEX変異型ポリペプチドについては、ポリペプチドは、Ig様ドメイン構造を含むのが好ましい。例えば、一実施態様は、配列番号3(別法として配列番号45または配列番号88)と95%またはそれ以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、免疫グロブリン様ドメイン構造を含む変異型ポリペプチドを提供する。
置換、欠失、挿入、付加、修飾残基、ギャップなどを伴うポリペプチドの製造は、当業界における常用の手順によるものであり、本開示を考慮に入れて本ポリペプチドおよび変異型に適用され得る。一方法は、上記変化をコード化するポリヌクレオチドからのポリペプチドの発現(例、位置指定突然変異導入を用いてポリヌクレオチドを修飾する)を含み、好ましくは発現されたポリペプチドを精製する。変異型ポリペプチドの好ましい製造方法は、SPEX変異型ポリペプチドの新たな合成を含み、その場合所望の改変(複数も可)は合成中に行なわれる。
ある種の実施態様では、アミノ酸置換は同類置換であるのが好ましい。一般に、野生型配列における所定のアミノ酸を、特性が類似した側鎖を有するアミノ酸と置換すると、生成された同類置換変異型ポリペプチドの構造および機能に対する影響は低減化される。従って、ある種の実施態様は、10個またはそれより少ないアミノ酸変化(択一的には、10個のみのアミノ酸変化)を含む同類修飾SPEXポリペプチドを提供し、その場合アミノ酸変化は同類置換、付加または欠失である(好ましくは同類アミノ酸置換)。10より少ないアミノ酸変化が好ましい。従って、優先度の増す順で、同類修飾SPEXポリペプチドは、9またはそれ未満、8またはそれ未満、7またはそれ未満、6またはそれ未満、5またはそれ未満、4またはそれ未満、3またはそれ未満、2またはそれ未満、または1つの同類アミノ酸変化を含む。ある種の非常に好ましい同類修飾SPEX変異型は、配列番号3、配列番号45または配列番号88を含む。
配列番号7、配列番号9または配列番号11を含むSPEXポリペプチドは、配列番号7、配列番号9または配列番号11においてそれぞれ1つのみの同類アミノ酸置換(別法として、付加または欠失)を有するのが好ましい。
本明細書で使用されている天然(に存する)アミノ酸は、次の要領で同類置換についての側鎖特性によりグループ分けされる:脂肪族側鎖(G、A、L、V、I);第二アミノ基を伴う脂肪族側鎖(P);芳香族側鎖(F、Y、W);硫黄含有側鎖(CおよびM、メチオニンがポリペプチドの第一アミノ酸である場合を除く);脂肪族ヒドロキシル側鎖(S、T);塩基性側鎖(K、R、H);酸性側鎖(D、E、N、Q)。例えば、アラニンは、非変異型(または野生型)ポリペプチド(SPEXレファレンスポリペプチド)に存在するバリンに関して同類置換され得る。別法として、バリンは、非変異型ポリペプチドに存在するアラニンに関して同類置換され得る。別の例では、プロリンは同類置換をもたない。システインおよびメチオニンは硫黄含有アミノ酸のグループに属するが、システインおよびメチオニン残基は、SPEX Ig様ドメイン変異型ポリペプチドにおいて置換(または欠失)されていないのが好ましい。また、SPEX免疫グロブリン様ドメインを含む変異型ポリペプチドが、Ig様ドメイン内にシステイン残基の野生型相補体を有することによりドメインのジスルフィド形成および/または構造的立体配座を維持するのも好ましい。
SPEX突然変異体ポリペプチド
ある種の実施態様は、突然変異(置換、欠失、先端切除など)を含むSPEXポリペプチドを提供し、その場合突然変異によりSPEXシグナル変換および/またはリンパ球代謝のモジュレーションが阻害される。本SPEXポリペプチドを本明細書では「SPEX突然変異体ポリペプチド」と称す。SPEX突然変異体ポリペプチドは、SPEXポリペプチド変異型とは、例えば、突然変異体は低活性が好ましく、変異型は実質的な活性を有するのが好ましいという点で異なる。この「低活性」は、好ましくはレファレンスSPEXポリペプチドと比べて20%またはそれ未満の活性レベルである(好ましくは、10%またはそれ未満およびさらに好ましくは5%またはそれ未満の活性)。SPEX突然変異体ポリペプチドは、好ましくは精製されている。
非常に好ましいSPEX突然変異体ポリペプチドは、SPEXチロシンベースドメインにおいて突然変異を含み、さらに好ましくは、突然変異は、チロシンベースドメインのチロシン残基の置換または欠失突然変異を含む。好ましくは、チロシンベースドメイン突然変異体を含むSPEXポリペプチドは、阻害されたSPEXシグナル変換および/またはリンパ球代謝のモジュレーションを特徴とする。好ましくは配列番号7、配列番号9および配列番号11に示されている、チロシンベースドメインに突然変異が存在しない(すなわち、野生型)SPEXポリペプチドは、活性などの比較に使用され得る。
SPEX突然変異体ポリペプチドのある種の実施態様は、下表3に示されている。興味の対象であるチロシン残基の番号付けは、具体例としてのhSPEXおよびmSPEX配列についてそれぞれ提供されている。
表3
具体例としてのSPEXチロシンベースドメイン突然変異体
Figure 2006524489
ある種の好ましいSPEX突然変異体ポリペプチドは、優性ネガティブ(抑制型)SPEX突然変異体ポリペプチドを含み、前記ポリペプチドは野生型SPEXポリペプチドの活性を阻害する(例、直接的相互作用、例えば欠損多量体をもたらす多量体形成、または間接的相互作用、例えばリガンドについての阻害剤または野生型SPEXポリペプチドの活性化因子として作用することによる)。上記表3における#1〜#7の各突然変異体は、優性抑制型SPEX突然変異体ポリペプチドを含むと考えられる。SPEX突然変異体ポリペプチドは、例えば、リンパ球代謝または免疫応答のSPEXシグナリングのモジュレーション方法において有用である。例えば、突然変異体は、SPEX受容体のリガンドについて競合するかまたはSPEX活性の優性抑制型阻害剤として作用し得る。
非天然ポリペプチド
所望により、実施態様によっては、本発明のポリペプチドが非天然ポリペプチドを含む場合もある。非天然ポリペプチドの例には、(a)自然の状態または興味の対象である生物体からは見出されないアミノ酸、例えば合成アミノ酸またはアミノ酸擬似物質を含むポリペプチド、(b)自然の状態ではポリペプチドとは会合しないポリペプチドに結合した化学部分、例えば放射性同位元素または蛍光マーカーを含むポリペプチド、(c)完全な配列が天然に存在する精製アミノ酸配列、例えば精製先端切除配列を含むポリペプチド、(d)天然ポリペプチドの一部分を含まないポリペプチド、例えば内部欠失体、(e)2またはそれ以上のアミノ酸配列(同一または異なる配列)を一緒に連結させた形で含む融合ポリペプチドであって、前記アミノ酸配列が天然には一緒に連結された形では見出されないものである、融合ポリペプチド、(f)または自然の状態ではポリペプチドに通常随伴する天然に存する物質の環境から除去された精製ポリペプチドがある。SPEXポリペプチドは、例えば、宿主細胞における組換えクローニングおよびそこからの精製を含む、当業界で公知の技術を用いて哺乳類細胞または他の細胞型(例、細菌、酵母、昆虫、植物)から精製され得る。ポリペプチドは化学合成され得、その技術は当業界ではよく知られている。
ポリペプチド融合体
一実施態様では、少なくとも、第1SPEXアミノ酸配列を第2ポリペプチドに機能し得るように結合させた形で含むポリペプチドが提供され、その場合第1および第2ポリペプチドが、天然の状態で結合した形で見出されることはないものとする(本明細書では「SPEXポリペプチド融合体」と称す)。SPEX融合体の製造に有用なSPEXアミノ酸配列は、本明細書に開示されている(例、表1および表2に開示されているポリペプチド、本明細書に開示されているSPEX変異型、および本明細書に開示されているSPEX突然変異体)。「SPEX融合体」および「SPEX融合配列」の語は、包括的にSPEX融合ポリペプチドおよびSPEX融合ポリヌクレオチドと称す。本発明のSPEX融合ポリペプチドは、単離され、好ましくは精製される。一般に、SPEX融合体を含むポリペプチド成分は、所望の順序で連鎖され得る。SPEX融合ポリペプチドは、例えば、興味の対象であるSPEXポリペプチドの溶解度、精製、発現、検出、選択および抗原性を促進する(強化または増加させる)のに有用である。
一実施態様では、異種ポリペプチドに機能し得るように結合された第1SPEXポリペプチドを含むポリペプチドが提供され、その場合、異種ポリペプチドは、第1SPEXポリペプチドとは異なるもので、異種ポリペプチドおよび第1SPEXポリペプチドは、天然には機能し得るように結合された形では通常見出されないものとする。例えば、「異種ポリペプチド」は、SPEXおよび非SPEX配列および同一または異なる種由来の配列を包含する。
ある種の実施態様では、機能し得る結合は開裂可能である。例えば、SPEX融合ポリペプチドは、SPEXポリペプチドおよび異種ポリペプチドを分離するためのペプチダーゼ開裂部位を含む。開裂可能なペプチド配列は当業界ではよく知られており、本開示に照らすことにより、SPEX融合ポリペプチドの機能し得る連鎖へ(例、所望のアミノ酸配列のクローニングまたは新たな合成により)組込まれ得る。上記開裂についての酵素には、トリプシン(tyrpsin)、エンテロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、因子Xa、フリンなどがある。
SPEX融合ポリペプチドの好ましい機能し得る連鎖は、融合体の各ポリペプチドを1またはそれ以上の他のポリペプチドに連結するポリペプチド結合(アミド結合)を含む。好ましくは、融合体の各ポリペプチドは、単一ポリペプチド結合により融合体の別のポリペプチドに結合されている。
SPEX融合ポリペプチドの好ましい製造方法では、遺伝子工学技術を用いて連続ポリペプチドを製造する(すなわち、ペプチド結合またはアミノ酸結合配列により各ポリペプチドについてのコーディング領域を組合わせるように遺伝子操作を加えたポリヌクレオチドの発現)。SPEX融合ポリペプチドはまた、新たな化学合成(例、固相ポリペプチド合成)により製造され得る。所望により、融合体のポリペプチドは、アミノ酸スペーサー配列により機能し得るように結合され得る。スペーサー配列は、例えば融合ポリペプチドにおいて機能性ドメインを分離する(例、立体障害を回避するため)のに有用である。上記スペーサー配列は、当業界では公知であり、典型的には多数のグリシン、アラニン、および/またはプロリン残基を含む。
別法として、化学架橋剤もまた、ポリペプチドを機能し得るように結合させるのに有用である。ポリペプチドの化学的架橋は、当業界では公知であり、本発明を考慮に入れたSPEX融合ポリペプチドの製造に適用され得る。化学架橋試薬における一般的な反応性または官能性基には、スクシンイミジルエステル、マレイミド、およびヨードアセトアミドがある(化学的架橋用キットは、例えば、オレゴン、ユージーン、モレキュラー・プローブズから市販されている)。ポリペプチドの一般的反応基には、アミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、アリール、ヒドロキシルおよび炭水化物がある。ある種の特異的な化学的架橋試薬には、DSP(ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート))、DTSSP 3,3'−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)、DSS(ジスクシンイミジルスベレート)、BS(ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)、DST(ジスクシンイミジルタートレート)、スルホ−DST(ジスルホスクシンイミジルタートレート)、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)、DTME:ジチオ−ビス−マレイミドエタン、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)がある。
他の有用な化学的架橋剤には、2個またはそれ以上の異なる反応基を含み、典型的にはタンパク質の特定基との逐次コンジュゲーションにより、望ましくない重合または自己コンジュゲーションを最小限にさせ得るヘテロ二官能(heterodifinctional)架橋剤がある。第1級または第2級アミンと反応するヘテロ二官能架橋剤には、イミドエステルおよびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)−エステル、例えばスクシミジル・4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)およびスクシミジル−4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)がある。スルフヒドリル基と反応する架橋試薬には、マレイミド、ハロアセチルおよびピリジルジスルフィドがある。カルボジイミド架橋試薬は、カルボキシルを第1級アミンまたはヒドラジドにカップリングすることにより、アミドまたはヒドラゾン結合を形成させる。広範に使用されている一カルボジイミド(carbodiiumide)架橋試薬は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDAC)であり、これはカルボン酸をアミンにカップリングするのに常用されるもので、ゼロ長架橋試薬の一例である。これらの架橋試薬は、例えば、ピアス・ケミカル・カンパニー(ロックフォード、イリノイ)およびシグマ(セントルイス、ミズーリ)から入手され得る。光化学反応性架橋試薬はまた、典型的にはヘテロ二官能架橋試薬である。UV照射時、これらの試薬は求核基と反応するかまたはC−H挿入生成物を形成する。ポリペプチド間における可逆性、実質的不可逆性および開裂可能な化学的架橋剤の様々な導入方法は、当業界ではよく知られており、本開示に照らしてSPEX融合ポリペプチドを製造するのに使用され得る。
解離速度が非常に遅い2分子間の非共有結合相互作用はまた、操作可能な連鎖として機能し得る。例えば、アビジン、ストレプトアビジン、「ニュートラアビジン」ビオチン結合タンパク質および「キャプタアビジン」ビオチン結合タンパク質は、非共有結合ではなく、高い親和力を通してビオチニル化標的の4個以下の分子と機能し得るように結合し得る。
さらに異種配列は、所望により望ましい生物活性因子、例えば抗体、サイトカイン(例、インターロイキン、インターフェロン、NF−κB、IL−2R鎖(Tac抗原))、ペプチドホルモン(例、EGF、TGFα、TGFβ)、ケモカイン、キナーゼ、ホスファターゼ、膜移行配列または因子、核移行配列、膜アンカー、毒素(例、リシン、ジフテリア毒素の活性部分)、マーカーまたは識別標識などを含んでいてもよい。
一実施態様は、異種ポリペプチドに機能し得るように結合されたSPEXポリペプチドを含むポリペプチドを提供しており、上記異種ポリペプチドは、水溶液に実質的に可溶性であり、好ましくはSPEXポリペプチドよりも水溶液に高い可溶性を示すものとする。SPEXポリペプチドを可溶性の高い異種ポリペプチドと機能し得るように結合することは、例えば、発現、結合試験および抗体産生の助けとなるため望ましいことである。好ましい実質的に可溶性の異種ポリペプチドは、ヒトIgG1の定常域、さらに好ましくはヒトIgG1ヒンジCH2、およびCH3ドメインを含む。一実施態様において、溶解性促進異種ポリペプチドは、配列番号97を含む。別の実施態様は、ヒトIgG1の定常域、好ましくはヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含む異種ポリペプチドに機能し得るように結合された配列番号3、配列番号45、配列番号88、配列番号12、配列番号54または配列番号86に示されたSPEXポリペプチドを含むポリペプチドを提供する。プロテインAは、高い親和力でIgG1の定常域と結合する。従って、SPEX−ヒトIgG1融合体は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製され得る。
他に考えられる溶解性促進ポリペプチドの例には、チオレドキシン(TRX)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、プロテインA、DsbAおよびエシェリキア・コリ・マルトース結合タンパク質(MBP)またはその可溶性フラグメントがある。別の例には、ニワトリ乳酸デヒドロゲナーゼタンパク質(BDバイオサイエンシーズ・クロンテック、パロアルト、カリフォルニア)からの19−アミノ酸配列であるHATエピトープがある。非隣接ヒスチジン残基のHAT配列は、連続His残基を伴う標識、例えば6xHis標識よりも低い全電荷を有する。その結果、HATポリペプチド融合体は、6xHis標識融合体と比べて高い溶解度を呈するが、依然として固定された金属イオンについて強い親和力を有する。HAT配列の結合特性により、自然条件下(例、ほぼ中性pH(pH7))および変性条件下におけるタンパク質のイミダゾール勾配およびpH勾配精製の両方が可能となる。別の実施態様では、非ペプチド有機溶解性因子と機能し得るように結合されたSPEXポリペプチドが提供され、好ましくは共有結合によりSPEXポリペプチドに結合されている。
考えられる検出可能な標識またはマーカーの例には、抗体認識部分、例えばFLAGエピトープ、DYKDDDDK(配列番号101)、c−mycエピトープ、EQKLISEEDL(配列番号102)、明視化マーカー(例、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、ビオチン/アビジン)、酵素マーカー(例、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、放射性標識(例、125I、14C、H、33P、35Sおよび32P)、およびその組合わせ(例、放射性標識および酵素標識抗体)がある。
考えられる精製標識または補助物質の例には、GST、MBP、TRX、カルモジュリン結合ペプチド(CBC)、6−His標識(またはポリ−His)、FLAG、c−myc標識、放射性標識、蛍光マーカーおよび血球凝集素(HA)がある。これらおよび他の部分により、それぞれ固定されたグルタチオン、マルトース、フェニルアルシンオキシド、カルモジュリン、および金属キレート樹脂において対応するSPEX融合体が好都合に精製される。上記部分は、市販されている精製システムで常用されている。また、融合タンパク質には、SPEXポリペプチド配列および異種ポリペプチド配列間に位置するタンパク質加水分解開裂部位を含むように遺伝子操作が加えられ得るため、SPEXポリペプチドは、精製後に異種部分から開裂され得る。所望の挿入体を含む融合ポリヌクレオチドを作製し、挿入体から生成物を発現させ、生成物を精製するのを容易にするための様々な市販のキットが利用可能である。これらのキットは、融合生成物の部分が開裂および精製され得るように興味の対象である生成物および融合体の異種ポリペプチド間に開裂可能なリンカーを配置したベクターを提供し得る(例、CREATOR適合発現系、クロンテク)。本開示を考慮に入れることにより、これらのキットを用いて、SPEX融合配列(ポリヌクレオチドおよびポリペプチド)が作製され得る。
ポリペプチド製造
本開示を考慮に入れることにより、本発明SPEXポリペプチドは、ポリペプチドの製造または作製について当業界でよく知られている様々な技術を用いて生成され得る。例えば、天然供給源(例、リンパ球または脾臓または胸腺組織)からの精製による技術がある。別の例では、SPEXポリペプチドは、細菌性(例、K12)、真核生物、酵母、昆虫、植物、哺乳類、チャイニーズ・ハムスター(例、CHO)、マウス、およびヒト細胞を含む宿主細胞での製造を通して生成され得る(例、組換えSPEX発現系の導入を用いる)。さらに別の例では、SPEXポリペプチドは、新たな合成方法を用いて生成される。好ましい実施態様では、SPEXポリペプチドは、タンパク質分離および精製について当業界で公知の方法であって、本発明を考慮に入れたSPEXポリペプチドの単離または精製に可能な方法を用いて精製される。例えば、本発明を考慮に入れることにより、当業者であれば、本明細書で開示されている抗SPEX抗体を用いて、アフィニティー分離法によりその特異的フラグメントおよびドメインを含むSPEXポリペプチドを単離または精製することができるはずである。
有用なアミノ酸(およびヌクレオチド)の例は、World Intellectual Property Organization(WIPO)Handbook on Industrial Property Information and Documentation,Standard ST.25: Standard for the Presentation of Nucleotide and Amino Acid Sequence Listing in Patent Applications(1998)(添付書類2における表1〜6を含む、以後「WIPO Standard ST.25 of 1998」と称す)に提供されており、出典明示により援用する。
ポリヌクレオチド
本発明の一実施態様は、SPEXポリペプチドをコード化する核酸配列、または核酸配列の相補体を含む、ポリヌクレオチド(本明細書では「SPEXポリヌクレオチド」と称す)を提供する。核酸配列の相補体は、エンコーディング核酸配列とハイブリダイゼーションすることができる。SPEXポリヌクレオチドは、精製ポリヌクレオチドを含むのが好ましい。
SPEXポリヌクレオチドは、例えば、SPEXポリペプチドの製造(例、インビトロまたは細胞ポリペプチド発現、この場合SPEXポリペプチドは、好ましくは精製されている)において有用である。SPEXポリヌクレオチドはまた、細胞にSPEX発現産物を処置することを含む方法において有用であり、上記SPEXポリヌクレオチドは発現用エレメントを含むものとする。SPEXポリペプチドをコード化する核酸配列の相補体(「SPEX相補体」)は、例えばSPEX発現産物を検出するのに適切な検定法または診断キットにおいて有用である。また、本診断キットは、リンパ球型の検出または細胞精製または選別方法において有用である。
一実施態様において、SPEXポリヌクレオチドは、哺乳類SPEXポリヌクレオチド、好ましくはマウスSPEX(mSPEX)ポリヌクレオチドおよびさらに好ましくはヒトSPEX(hSPEX)ポリヌクレオチドを含む。一実施態様は、表1または表2に示されたポリペプチド(または別法として、上記で開示されているSPEX変異型ポリペプチド)をコード化する核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
本発明ポリヌクレオチドは、精製ポリヌクレオチドを含むのが好ましく、上記精製形態は、実質的に汚染物質(溶質、賦形剤、安定剤、緩衝液などを度外視してよい)不含有であり、SPEXが天然で共存する物質の環境から除去される。精製SPEXポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅および/または配列決定に使用される1本鎖オリゴヌクレオチド配列を実質的に含まないのが好ましい。
表4は、SPEXドメインおよびある種の好ましいポリヌクレオチド間の対応例をポリヌクレオチドによりコード化されるポリペプチドと一緒に提供している。それぞれの配列は、配列番号により示されている。
表4
SPEXポリヌクレオチドのある種の実施態様
Figure 2006524489
複数の配列番号を有する(例、マウスSPEX Ig様ドメインについて列挙されている「45/88」)、上記表4における実施態様は、特定生物体で同定された明確な特異的対立遺伝子をいう。
本明細書における記載によると、SPEX遺伝子が天然の状態で通常随伴する隣接ゲノム5'および3'領域を含むSPEXポリヌクレオチドの最大長は、40000塩基対である(度外視してよいベクター配列、下記参照)。本発明の範囲内におさまるためには、SPEXポリヌクレオチド配列のゲノムクローンは、必ずや40000塩基対以下(1本鎖核酸についての塩基)でなくてはならない。40000またはそれより少ない数の塩基対を有するゲノムクローンが、天然で見出されるSPEX遺伝子に通常随伴する他の隣接ゲノム配列から分離されるのが好ましい。さらに本明細書における記載によると、SPEXポリヌクレオチドの最小の長さは18残基である(例、本質的に配列番号94または配列番号96に示されたポリペプチドをコード化する核酸から成るポリヌクレオチド)。
好ましい実施態様において、SPEXポリヌクレオチドは、好ましい長さの範囲を特徴とする。例えば、当業者であれば、ポリヌクレオチドを用いる各適用例または系について、適用例におけるポリヌクレオチドの使用を有効なものにする典型的な長さまたは長さ範囲があることは認識しているはずである。従って、当業者であれば、本発明を考慮に入れることにより、選ばれた適用例に最適な核酸長を選択できるはずである。下記表5は、SPEXポリヌクレオチドを用いた実施態様および選択された適用例または系についてのSPEXポリヌクレオチドの好ましい長さの実例を提供している。
表5
SPEXポリヌクレオチドの長さの範囲の実例
Figure 2006524489
上記表5については、長さの範囲は、1本鎖ポリヌクレオチドについての場合にはヌクレオチドおよび2本鎖ヌクレオチドについての場合には塩基対で示されている。表5に開示されている好ましいSPEXポリヌクレオチド長の範囲は、各組成物または適用例に対して有効性が高められることを示唆されているが、必ずしも絶対的なものではない。一般に、ベクターで使用されている挿入体のサイズが増すと、所定のベクター系の形質転換効率は減少する。
一実施態様は、少なくとも第2ポリペプチドに機能し得るように結合された第1SPEXアミノ酸配列を含むポリペプチドをコード化する核酸配列を含む、本明細書では「SPEX融合ポリヌクレオチド」と称されるポリヌクレオチドを提供するもので、上記の第1および第2ポリペプチドは、天然では結合した形で見出されないものである。例えば、SPEX融合ポリペプチドをコード化する核酸配列を含むポリヌクレオチドがある。本実施態様は、SPEX融合ポリペプチドの大量生産に特に有用である。
ある種の好ましいSPEX融合ポリヌクレオチドは、配列番号97に示されたポリペプチドに機能し得るように結合された、配列番号3、配列番号45、配列番号88、配列番号12、配列番号13、配列番号54、配列番号55、配列番号85、または配列番号86に示された第一アミノ酸配列の1個またはそれ以上をコード化する核酸配列を含む。本融合ポリヌクレオチドは、SPEXポリペプチドの外部ドメインの生産に有用であり、上記融合体は、実質的に水溶液に可溶性であり、好ましくはSPEXポリペプチド単独よりも可溶性が高い。
ポリヌクレオチド配列の開裂、ハイブリダイゼーションおよびセグメントのライゲーションについての組成物および方法は、当業界ではよく知られており、上記組成物および方法は、本発明に照らしてSPEX融合ポリヌクレオチドを製造するのに有用である。所望ならば、SPEX融合ポリヌクレオチドは、SPEX融合ポリヌクレオチドのセグメントを分離するための制限部位を含み得る。
介在配列
一実施態様において、ポリヌクレオチドは、さらにSPEX核酸配列と機能し得るように結合された介在配列(例、イントロン)を含む。SPEXポリヌクレオチドと機能し得るように結合されたイントロンは、例えば、特に哺乳類発現系において、転写を促進し、mRNA発現産物の安定性を高めるのに望ましいものであり得る。典型的には、イントロンは、SPEX核酸配列の第一および第二セグメント間で機能し得るように結合されている。従って、本発明の一実施態様は、SPEXポリヌクレオチドおよびイントロン配列を含むポリヌクレオチドを提供するもので、イントロンは、核酸配列上流の核酸に機能し得るように結合されている。好ましいイントロン配列は、一つまたはそれ以上のSPEXゲノムイントロン配列から選択される。所望により、イントロン配列は、一つまたはそれ以上の異種イントロン配列またはSPEXイントロンおよび異種イントロンの組合わせから選択される。
有用なイントロン配列の例には、SV40小型−t抗原イントロンおよびCMV IE遺伝子からのイントロンAがある。これらのイントロン配列は、プロメガ(マディソン、ウィスコンシン)およびインビボゲン(サンディエゴ、カリフォルニア)からそれぞれ購入できる。コーディング配列およびイントロン配列間の接合部(すなわち、スプライス接合部)は、プロセシング中(例、スプライシング反応、例えばhnRNAからmRNAへのプロセシング中)におけるイントロン配列の除去に適切なスプライス部位を含むのが好ましい。ある種の実施態様において、SPEXポリヌクレオチドは、適切なスプライス接合部を有するイントロンを含む。
縮重遺伝コード変異型
当業者であれば、遺伝コードの縮重については認識しており、そのため、本発明を考慮に入れることにより、縮重コドンを用いて同じSPEXポリペプチドをコード化する多重核酸配列を製造できるはずである。標準遺伝コードおよびその使用、並びに共通アミノ酸についての記号およびその省略形またはコードの表については、Biochemistry、第3版、Stryer編、フリーマン・パブリッシャー(1988)91〜115頁および裏表紙内側参照、これについては出典明示により援用する。適切なSPEXポリヌクレオチドは、本発明を考慮に入れることにより、発現させる所望のSPEXポリペプチド配列および標準遺伝コードの情報に基いて編成され得る。
配列修飾技術
SPEX配列への修飾は、例えば、ポリマーの化学合成(ポリヌクレオチドおよびポリペプチド合成を含む)中に、またはポリヌクレオチドの突然変異誘発(斑入り)および所望による、コード化ポリペプチド変異型の発現を通して加えられ得る。ポリヌクレオチド配列の好ましい改変方法は、位置指定突然変異導入によるものである。化学合成、突然変異誘発、位置指定突然変異導入およびポリヌクレオチド発現の方法は、当業界ではよく知られている。所望のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列の生産を確認する方法についても、当業界では公知である。これらの方法は、本開示および当業界での情報を考慮に入れることにより、SPEX配列変異型の作製および確認に適用され得る。
ベクター
ある種の実施態様において、SPEXポリヌクレオチドは、さらにベクター配列を含むことが望ましい。従って、本発明は、SPEXポリペプチドをコード化する核酸配列、またはその相補配列に機能し得るように結合されたベクター配列を含む、精製ポリヌクレオチドを提供する。SPEXポリペプチドをコード化する核酸、またはその相補体を、本明細書では「SPEX挿入体」と称す。本明細書で使用されている「SPEXベクター」は、「SPEX挿入体」と機能し得るように結合された「ベクター配列」を含む。SPEXベクター配列は、例えば、SPEX mRNA、SPEXポリペプチド、またはSPEXハイブリダイゼーション配列(例、「アンチセンス」核酸)を発現させるのに有用である。SPEX発現産物は、所望ならば検出可能な標識により標識され得る。例えば、検出可能な標識は、合成中に組込まれ得る。SPEXベクターはまた、好都合なクローニングツール(例、シャトルベクター)として、または市販量でのSPEX核酸の製造に有用である。適切なSPEX挿入体は、表および本項に列挙されているSPEXポリヌクレオチド、その相補体を含むか、または本明細書に開示されているSPEXポリペプチドをコード化する(例、上記表1および表2に開示されているSPEXポリペプチド)。
SPEXベクターについての好ましい使用は、細胞へのSPEX発現産物の処置における場合である。例えば、SPEXポリペプチドは、細胞へSPEXベクターを導入することにより細胞に処置され得、次いで細胞は、細胞機構を用いてSPEX発現産物を合成する。SPEXポリペプチドの発現は、例えば、リンパ球の代謝、免疫応答、および/またはSPEXシグナル変換をモジュレーションするのに有用である。
本明細書で使用されているSPEX挿入体は、エンコーディング領域に加えて非翻訳領域、クローニング配列、介在配列、スプライシング配列または他の配列(上記開示により限定)を含み得る。SPEXベクターは精製されているのが好ましい。SPEXベクターは、環状および線状核酸を含む。
SPEXベクター配列は、好ましくはベクターおよび/またはSPEX挿入体の発現、複製または他の活性をモジュレーションするための1個またはそれ以上の制御エレメントを含む。制御エレメントは、1個またはそれ以上のアフィニティー標識、分枝点、細胞局在性シグナル、エンハンサー、インデューサー、リボソーム内部侵入部位(IRES)、イントロン、コザック配列、ポリアデニル化部位(ポリA部位)、プロモーター、精製標識、リプレッサー、選択可能マーカー、シグナル配列、サイレンサー、スプライス受容体、スプライス供与体、開始コドン(イニシエーターコドン、翻訳開始部位、ATG)、停止コドン、TATAボックス、ターミネーター、および転写開始部位(例、シャイン‐ダルガルノ配列)を含む。制御エレメントは、ベクター配列および/またはSPEX挿入体に含まれ得る(所望により、1つまたはそれ以上の制御エレメントは、別の独立ベクターに配置され、シスで作用し得る場合がある)。多様なベクター系は、商業的、学究的および他の供給源から入手可能であり、本開示に照らして、当業界でよく知られている技術を用いることにより容易にSPEX挿入体と機能し得るように結合され得る。
ある種の好ましい実施態様では、SPEXベクターは発現されることが可能である。SPEXポリヌクレオチド、好ましくはSPEXベクターからのSPEX産物の発現には、DNAからRNAへの転写、RNAからポリペプチドへの翻訳または転写および翻訳の両方が含まれる。一実施態様において、発現は、SPEX mRNAを形成するSPEXポリペプチドをコード化するSPEX核酸配列の転写を含む。SPEXポリペプチドをコード化する核酸配列は、ベクターに含まれるものとして「枠内」にあるのが好ましい。ほとんどの発現ベクターは、または所望のポリペプチドの合成に適切な読み枠に挿入体が組込まれるように利用可能であるか、容易に適合化される。縮重コドンの表は、アミノ酸残基およびポリペプチド合成中に各アミノ酸残基を特定するヌクレオチドコドン(複数も可)間の好ましい対応を提供しており、SPEX挿入体が望ましい読み枠内にあることを配列決定解析で予測または確認するのに有用である。
プロモーターおよびエンハンサー
SPEXベクターは、SPEX挿入体の発現を増加させるためのプロモーターおよび/またはエンハンサーを含むのが好ましい。一般に、プロモーターおよびエンハンサーは、鋳型ヌクレオチドからの転写物の発現をモジュレーションする制御エレメントである。エンハンサーおよびプロモーター間の基本的な区別は、操作的なものであって、絶対的ではない。典型的には、プロモーターエレメントは、RNAポリメラーゼII(または他のポリメラーゼ)についての開始部位の周囲に位置し、転写方向に指向する。プロモーターエレメントは、通常7〜20塩基の核酸を含み、転写アクチベーターおよび/またはリプレッサーについての1つまたはそれ以上の認識部位を含み得る。典型的には、各プロモーターにおけるモジュールは、RNA合成についての開始部位の位置を定めるべく機能する。これのよく知られている例は、TATAボックスである。一般に、エンハンサーエレメントは、転写開始部位から一定の距離をおいて転写をモジュレーション(典型的には刺激)することができる。エンハンサーは、転写開始部位と同じ核酸(シス)または別の核酸(トランス)に配置され得る。プロモーターを含む実施態様では、「機能し得るように結合された」の語は、プロモーターが挿入体に関してRNAポリメラーゼ開始および転写物の発現を制御する位置および/または配向にあることを意味すると理解される。
プロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントは、転写開始頻度を調節し得る。典型的には、これらは、転写開始部位の上流の領域30〜110bpに位置するが、若干のプロモーターは、同じく開始部位の下流に(例、転写された核酸内に)機能性エレメントを含むことが知られている。プロモーターエレメント間のスペーシングは、普通は融通がきくため、エレメントが互いに逆方向にされるかまたは動かされたときでもプロモーター機能は保存される。例えば、tkプロモーター(単純疱疹ウイルス(HSV)チミジンキナーゼ遺伝子から)では、プロモーターエレメント間のスペーシングは、活性が下降し始める前に50bpまで間隔を増やすことができる。別の例は、lacオペロンを含む。プロモーターによっては、個々のエレメントが転写を活性化するように協同的または独立的に機能し得ると思われる。
ある種の実施態様において、SPEX挿入体の発現を制御するのに使用される特定プロモーター(複数も可)は、それが標的環境において意図した実施態様にとって望ましいかまたは充分なレベルで(例、検出可能レベルで、または天然に生成されたSPEXと比べて過剰発現された状態で)ポリヌクレオチドを発現させ得るものでありさえすれば、厳密なものではないと考えられる。すなわち、例えば、ヒト細胞での発現については、ヒト細胞で発現され得るプロモーターに隣接し、その制御下においてポリヌクレオチドコーディング領域を配置させるのが好ましい。概して、かかるプロモーターは、ヒトまたはウイルスプロモーターを含み得る。有用なウイルスプロモーターには、HSV tk、SV40初期転写ユニット、サイトメガロウイルス(CMV)、マウス乳癌ウイルス−長末端反復(MMTV−LTR)、マウス肉腫ウイルス(MSV−LTR)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV−LTR)由来のものがある。ヒトまたは他の哺乳類遺伝子由来の有用なプロモーターには、β−アクチンおよび延長因子1−α(EF−1α)由来のものがある。様々な環境における発現またはモジュレーションされた発現に適切なプロモーターおよびエンハンサーエレメントを有する多様なベクターが利用可能である。ある種の好ましい環境には、ヒト細胞、好ましくはリンパ球、およびさらに好ましくはT細胞またはB細胞がある。
熟知された特性をもつプロモーターを用いることにより、SPEXポリヌクレオチドの発現のレベルおよびパターンがは最適化され得る。例えば、特異的細胞において実質的に高い活性を示すプロモーター、例えばチロシナーゼ(黒色腫)、アルファ−フェトプロテインおよびアルブミン(肝癌)、CC10(肺癌)および前立腺特異的抗原(前立腺癌)の選択により、SPEXポリヌクレオチドの組織特異的発現が可能となる。従って、好ましい実施態様において、プロモーターおよび/またはベクターは、特定の望ましい環境において最適である転写を駆動するように選択される。
非細胞性発現環境
通常「インビトロ発現(系)」として知られている非細胞性発現環境は、典型的には反応容器に含まれる鋳型ポリヌクレオチドを転写および/または翻訳するための細胞ライゼートまたは因子を包含する。好ましくは、インビトロ発現系を、少なくとも部分精製することにより、阻害剤を除去および/または試薬濃度を高め、さらに好ましくは、実質的に精製する。インビトロ発現系は市販されている(例、SP6転写キット、T7転写キット、シングル・チューブ・プロテイン・システム3、およびレッド・ノヴァ・ライゼート・キット、これらは各々ノヴァゲン(マディソン、ウィスコンシン)から入手可能、およびラピッド・トランスレーション・システム(RTS)、ロシュ(インディアナポリス、インディアナ)から入手可能)。非細胞性発現系は、興味の対象であるSPEX発現産物が細胞性発現環境における宿主細胞にとって有毒である事象において好ましい。一実施態様は、インビトロ発現系での使用に適合化されたSPEX発現ベクターを提供する。
SPEX宿主細胞
有用な細胞性発現環境には、原核生物および真核生物宿主細胞がある。「宿主細胞」の語は、SPEXポリヌクレオチド、好ましくはSPEXベクター含む細胞をいい、上記SPEXポリヌクレオチドは、人為的操作により細胞へ導入され、SPEX宿主細胞を形成する(例、組換え非天然SPEXポリヌクレオチドが、発現目的で細胞へ導入される)。従って、一実施態様は、SPEXベクターを含む宿主細胞を提供する。上記「宿主細胞」は、本明細書では「SPEX宿主細胞」と称される。好ましくは、SPEXベクターは、SPEX発現ベクターを含み、好ましくはSPEX発現産物を生産し得る。
好ましい実施態様では、SPEX宿主細胞は、発現に適切な形質転換SPEXポリヌクレオチド(例、組換えSPEX発現ベクター)が存在しない場合にはSPEX発現性を有しない。人為的操作によるSPEXポリヌクレオチドの導入を伴わずにSPEXを発現する細胞は、本明細書で使用されているところの「天然SPEX発現」を有する。人為的操作により細胞へ形質転換されたSPEXポリヌクレオチドからのSPEX発現を、本明細書では「外因性SPEX発現」または「組換えSPEX発現」という。外因性SPEX発現は、人為的に指令されたプロセスでの宿主細胞のゲノムへ組込まれたSPEXポリヌクレオチドからのSPEX発現を包含するものとする。実施態様によっては、所望によりSPEX宿主細胞が、天然SPEX発現性を有し得る場合もある。しかしながら、外因性SPEXポリヌクレオチドの発現産物は、天然SPEX生成物よりも多大な存在量であるのが好ましい(すなわち、組換えSPEXポリヌクレオチドは過剰発現されるのが好ましい)。
ある種の実施態様は、SPEX挿入体と機能し得るように結合されたベクター配列を含むポリヌクレオチドを提供し、上記ベクター配列は、宿主細胞、好ましくは細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞または哺乳類細胞の一つまたはそれ以上においてSPEX挿入体を発現させるための一つまたはそれ以上の制御エレメントを含むものとする。本発明に照らしてSPEX挿入体を発現させるのに有用である多様なベクターおよび宿主細胞は、学究的、商業的および他の供給源から入手可能である。有用な宿主細胞のある種の追加例には、エシェリキア・コリ(E.coli)およびエシェリキア・コリのK12株(細菌細胞)、酵母細胞シゾサッカロマイシス・セレヴィシエ(S.cerevisiae)、シゾサッカロマイシス・ポンベ(S.pombe)、およびピキア・パストリス(P.pastoris);昆虫細胞スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)9(Sf9)、Sf21、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)(一般にはHigh Five細胞と称される)、およびS2(ショウジョウバエ、drosophilae)がある。そして哺乳類細胞には、HEK−293(ヒト腎臓)、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)、ボーズ(Bowes)黒色腫(ヒト黒色腫)、ヒーラ(卵巣癌)、CHU2(ヒト口腔腫瘍)、およびHBEC−90(ヒト脳内皮)、33.1.1(マウスプレ−B細胞)、K46(マウスBリンパ腫)、TR2(マウス稀突起膠細胞)がある。ある種の好ましい哺乳類細胞には、リンパ球、T細胞、B細胞、未熟T細胞、未熟B細胞、分化T細胞、分化B細胞、およびナチュラルキラー細胞がある。これらの細胞およびその他のものは、例えばインビトロゲン、ノヴァゲン、クロンテック、およびアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、マナッサス、バージニア)から入手可能である。
ある種の実施態様では、複数の宿主細胞でSPEX挿入体を発現させるのが望ましい。従って、ある種の実施態様では、多宿主細胞型でのSPEX挿入体の発現に適切な制御エレメントを有するベクター系を使用するのが好ましい。例えば、TRIEX MULTISYSTEM EXPRESSION VECTORS(カルビオケム、ラジョラ、カリフォルニア)は、エシェリキア・コリ(E.coli)、バクロウイルスおよび哺乳類細胞型での発現について最適化された転写および翻訳シグナルを含む。
細菌における発現
SPEX挿入体によるクローニングに有用な細菌細胞クローニングベクターには、pUC8、pUC9、pBR322、pBR329、pBC−SK、pBC−KS、LAMBDA ZAP II(学究的供給源、プロメガ(マディソン、ウィスコンシン)またはストラタジーン(ラジョラ、カリフォルニア)から入手可能)がある。宿主細胞は、所定の細胞環境で機能し得る複製起点を含むのが好ましい。例えば、細菌性ベクターは、エシェリキア・コリ(E.coli)複製起点(ori)を含み得る。
pETベクターシリーズ(ノヴァゲン(マディソン、ウィスコンシン)、プロメガ、ストラタジーン)は、T7因子を含む細菌細胞においてSPEX挿入体の高レベル発現を駆動するのに有用なT7プロモーターおよびT7遺伝子10翻訳開始シグナルを含む。pETベクター系は、T7 RNAポリメラーゼを欠く細菌細胞、例えばBL21(DE3)へのトランスフェクションにより誘導性にされる。発現は、欠けているT7ポリメラーゼを発現させるためのベクターによるトランスフェクションにより、または天然T7発現の抑制を除去することにより誘導される。
pL発現系(インビトロゲン、カールスバッド、カリフォルニア)はまた、細菌発現系の厳しい誘導可能な転写制御をもたらす。pLベクターは、強力なpLプロモーターを含み、SPEX挿入体の発現を駆動し得る。pLプロモーターは、エシェリキア・コリ(E.coli)宿主で発現されるラムダclリプレッサータンパク質により制御される。clリプレッサー遺伝子は、厳しく調節されたtrpプロモーターの制御下において細菌染色体へ遺伝子操作により導入される。SPEXポリヌクレオチドの発現は、トリプトファンを加えることにより誘導され得る。
pBADベクター(インビトロゲン)は、培養培地へアラビノースまたはグルコースをそれぞれ加えることによりSPEX挿入体の転写を刺激または抑制するようにモジュレーションされ得るaraBADプロモーターから駆動される、機能し得るように結合されたSPEX挿入体の誘導性発現に有用である。細菌系での発現を駆動する一つまたはそれ以上の制御エレメントを含む追加のベクターには、Trc/Tacプロモーターベクター(クロンテック、パロアルト、カリフォルニア)、ラムダRPプロモーターベクター(ファルマシア、ピーパック、ニュージャージー)、およびファージT5プロモーターに基くベクター(キアゲン、バレンシア、カリフォルニア)がある。実施態様により、一般に、細菌細胞においてSPEX挿入体の生成物を発現させるための一つまたはそれ以上の制御エレメントを含む各ベクターまたはいずれかのベクターと機能し得るように結合されたSPEX挿入体が提供される。
酵母での発現
ある種の実施態様では、SPEX挿入体と機能し得るように結合されたベクター配列を含むポリヌクレオチドが提供され、上記ベクター配列は、酵母細胞においてSPEX挿入体を発現させるための一つまたはそれ以上の制御エレメントを含んでいる。酵母での発現が可能なSPEX発現ベクターは、酵母複製起点(例、ColE1)を含むのが好ましい。
pESCベクター(ストラタジーン)は、酵母細胞、好ましくはシゾサッカロマイシス・セレヴィシエ(S.cerevisiae)で発現させるためのGAL1およびGAL10制御エレメントを含む。pESCベクターセットは、FLAGエピトープ、c−mycエピトープ(標識)、およびHIS3、TRP1、LEU2またはURA3選択可能マーカーを含む選択可能な特徴を用いることにより1種またはそれ以上の異なる発現産物(の発現)をもたらす。
pYESベクターセット(インビトロゲン)は、GAL1プロモーターを含み、酵母細胞、好ましくはシゾサッカロマイシス・セレヴィシエ(S.cerevisiae)におけるSPEX挿入体の発現に有用である。ESP酵母タンパク質発現および精製システム(インビトロゲン)は、シゾサッカロマイシス・ポンベ(S.pombe)のnmt1プロモーターを含み、酵母細胞、好ましくはシゾサッカロマイシス・ポンベ(S.pombe)におけるSPEX挿入体の発現に有用である。ESPベクターセットは、FLAGエピトープ、c−mycエピトープ(標識)、およびHIS3、TRP1、LEU2またはURA3選択可能マーカーを含む選択可能な特徴を用いることにより1種またはそれ以上の異なる発現産物(の発現)をもたらす。ある種のESPベクターは、さらにGSTアフィニティークロマトグラフィーによる酵母発現SPEX−GST融合ポリペプチドの好都合な精製のためのグルタチオンsトランスフェラーゼ(GST)ペプチド標識を含む。SpECTRAシゾサッカロマイシス・ポンベ(S.pombe)発現系(インビトロゲン)は、酵母での発現が可能なSPEXベクターの構築に有用な追加ベクターを含む。ピキア・パストリス(Pichia pastoris)発現系(インビトロゲン)は、酵母、好ましくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)、および細菌、好ましくはエシェリキア・コリ(E.coli)での発現が可能なSPEX発現ベクターの構築に有用なベクターを含む。
昆虫細胞での発現
ある種の実施態様では、SPEX挿入体と機能し得るように結合されたベクター配列を含むポリヌクレオチドが提供され、上記ベクター配列は、昆虫細胞でSPEX挿入体を発現させるための一つまたはそれ以上の制御エレメントを含んでいる。
DES(ショウジョウバエ(ドロソフィラ、Drosophila)発現系、インビトロゲン)は、ショウジョウバエ(ドロソフィラ、Drosophila)細胞、好ましくはS2細胞でのSPEX挿入体発現用に最適化される。DESベクターpAc5.1/V5−HisおよびpMT/V5−Hisは、Ac5.1またはV5プロモーターによりそれぞれ促進される発現をもたらし、検出および/または精製を目的とするHis標識を含む。pMT/BiP/V5−Hisベクターは、さらに発現されたポリペプチドの分泌を目的とするBiPショウジョウバエ(ドロソフィラ、Drosophila)分泌シグナル配列を提供する。
INSECTSELECTシステム(インビトロゲン)は、好ましくは分泌タンパク質の発現を目的とする、Sf9、Sf21、HIGH FIVEおよびS2を含む広範囲の昆虫セルラインにおけるSPEX挿入体の発現に有用である。
哺乳類細胞における発現
ある種の実施態様では、SPEX挿入体と機能し得るように結合されたベクター配列を含むポリヌクレオチドが提供され、上記ベクター配列は、哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞においてSPEX挿入体を発現させるための一つまたはそれ以上の制御エレメントを含んでいる。
アデノウイルスおよびレトロウイルスベクターは、哺乳類細胞におけるSPEX挿入体の発現に有用である。例えば、ViraPowerアデノウイルス発現系は、選択されたプロモーターを好都合に挿入させるヒトCMV発現プロモーターを有するかまたはプロモーターを随伴しないE1およびE3欠失pAd−DESTアデノウイルスベースのベクターを含む。アデノウイルス粒子のパッケージングは、製造会社の文献(インビトロゲン)に記載されている。別の例において、ViraPowerレンチウイルス発現系は、分裂中および非分裂細胞(インビトロゲン)の安定した形質導入用に最適化されている。
pShooterベクター(インビトロゲン)は、EF−1αまたはCMVプロモーターを含み、さらにSPEXポリペプチドを発現させ、発現されたSPEXポリペプチドを特異的細胞区画へ指向させ得るシグナル配列を含み得る。例えば、pEF/myc/cytoベクターは、EF−1αプロモーターおよびc−myc標識を含む。シグナル配列は、細胞質発現を目的とする本ベクターには含まれない。pEF/myc/nucベクターは、EF−1αプロモーター、c−myc標識、および発現されたSPEXポリペプチドを哺乳類細胞の核へ指向させ得る核局在化配列(SV40から)を含む。pEF/myc/mitoベクターは、EF−1αプロモーター、c−myc標識、および発現されたSPEXポリペプチドを哺乳類細胞の核へ指向させ得るミトコンドリア局在化配列(COX VIII cDNAから)を含む。pShooterベクターの別のセットは、EF−1αプロモーターに取って代わるCMVプロモーターを含む。pShooterベクターは、ほとんどのヒト細胞および組織を含む広範囲の哺乳類細胞型における発現を駆動し得る。
pSG5ベクター(ストラタジーン)は、哺乳類(ヒトを含む)および細菌細胞型を含む広範囲の細胞型においてSPEX挿入体の発現を駆動し得る。哺乳類発現は、SV40初期プロモーターにより駆動され、細菌性発現はT7プロモーターにより駆動される。pSG5ベクターは、好ましくはさらにori、アンピシリン耐性遺伝子およびファージf1起点(例、突然変異誘発および配列決定で使用されるssDNAを回収(rescue)させ得る)を含む。
pIRES−hrGFP−1ベクター(ストラタジーン)は、CMVプロモーターを用いることによりSPEX挿入体およびマーカー遺伝子(この例では、ヒト化緑色蛍光タンパク質(hrGFP))を発現し得る。このベクターは、単一発現mRNA種からSPEX挿入体およびマーカー遺伝子の両方を発現させるリボソーム内部侵入部位(IRES)を含む。すなわち、SPEXおよびマーカー遺伝子は、融合mRNAとして発現され、また独立ポリペプチドとして発現される。他のSPEX発現ベクターは、所望ならば、さらにIRESを含み得る。
ある種の実施態様において、SPEXベクター構築物は、さらに別の発現産物をコード化するセグメントを含む。例えば、このベクターは、選択可能マーカー、検出可能標識、および/または精製標識を含み得る。例としては、amp、neo、hygro、zeo、puro、ミコフェノーリック、kan、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化シアン蛍光タンパク質(ECFP)、強化黄色蛍光タンパク質(EYFP)、DsRed2、HcRed1、myc標識、FLAG標識、およびGST標識をコード化するセグメントがある。ある種の実施態様において、ベクターは、SPEX挿入体と機能し得るように結合された融合体を形成するように配置された標識を提供するように選択される。ある種のベクターは、さらにリボソーム内部侵入部位(IRES)を提供する。例えば、Palmenberg et al.による米国特許第4937190号参照、これについては出典明示により援用する。一実施態様において、IRESは、単転写物ベクター(STV)を用いることにより動物細胞における2種のタンパク質(少なくとも一方はSPEXポリペプチドを含む)の発現を容易にする。
SPEXの細胞性発現は、典型的には選択された細胞へのSPEX発現構築物の導入を伴い、そこで細胞性因子は発現を駆動する。細胞への発現ベクターの導入方法は、当業界では公知である(例、リン酸カルシウム沈澱、脂質ベースのトランスフェクション、ペプチドベースの膜転位、電気穿孔など)。Laneによる米国特許第6312956号およびFelgner et al.による米国特許第6165720号参照、各特許については出典明示により援用する。
下記表7は、SPEXベクターの好ましい実施態様を提供し、表6は、これらのSPEXベクター構築物の好ましい特徴および使用について記載している。
表6
好ましいSPEX発現ベクター
Figure 2006524489
上記表6におけるベクターは各々、当業者には公知の標準クローニング方法を用いて製造される。「バックボーン名称」は、「ベクター配列」を指す。
表7
ある種のSPEXベクターの好ましい使用
Figure 2006524489
抗体
本発明の一実施態様は、SPEXポリペプチドと免疫反応する抗体を提供する。「抗体」の語は、無傷抗体分子および/または抗体分子の免疫学的活性部分を含む、抗体のあらゆる形態を包含するものとする。抗体およびその活性フラグメントは、当業界ではよく知られており、例えば、IgG、IgM、IgE、ポリクローナル、モノクローナル、Fab、Fab'、F(ab')、F(v)、1本鎖抗体(SCA)、1本鎖Fab、ヒト化、ハイブリッドなどがある。本発明で提供される抗体は、SPEXポリペプチドの一つまたはそれ以上の部分と免疫反応する。抗体は単離されているのが好ましい。抗体は、組換え体、キメラ、またはそれ以外の非天然抗体を含むのがさらに好ましい。
抗SPEX抗体は、例えば、SPEXシグナル変換活性、リンパ球活性化または代謝、および免疫応答をモジュレーションするのに有用である。抗SPEX抗体はまた、診断における検出剤として有用であり、リンパ球集団を発現するSPEXの検出、精製および/または選別に有用なキットである。
好ましい抗体は、抗SPEXモノクローナル抗体、好ましくはヒトまたはヒト化抗SPEXモノクローナル抗体である。他の好ましい抗SPEX抗体は、hSPEXポリペプチド、mSPEXポリペプチド、またはmSPEXbポリペプチド(上記で開示されているマウスSPEXの対立遺伝子)の一つと特異的に免疫反応する。配列番号7、配列番号9および/または配列番号11と免疫反応する抗SPEX抗体は、SPEXチロシンベースドメインを含む全てのマウスおよびヒトSPEXポリペプチドと(別法として、SPEXチロシンベースドメインまたは細胞内ドメインを有する哺乳類SPEXポリペプチドと)免疫反応すると考えられる。他の例としての抗SPEX抗体は、表1および表2、表3および表4に示されたSPEXポリペプチドと免疫反応する。ある種の実施態様では、抗SPEX抗体は、第1SPEXポリペプチドと免疫反応するが、第2SPEXポリペプチドとは免疫反応しない。例えば、抗SPEX抗体は、表1の1欄および/または2欄に示されたSPEXポリペプチドと免疫反応するが、表1の3欄に示されたSPEXポリペプチドとは免疫反応しない。別の例では、抗SPEX抗体は、表2の1欄に示されたSPEXポリペプチドと免疫反応するが、表2の2欄に示された第2SPEXポリペプチドとは免疫反応しない。
ある種の好ましい抗SPEX抗体の抗原性免疫反応性を、配列番号で示された配列の例と一緒に下記表8に示す。
表8
以下の抗原と免疫反応する好ましい抗SPEX抗体
Figure 2006524489
一実施態様は、SPEXポリペプチドの細胞外ドメインと免疫反応し、リンパ球の増殖または他の代謝をモジュレーションし得る抗体、好ましくはモノクローナル抗体を提供する。さらに好ましくは、抗体は、ヒト化モノクローナル抗体を含む。一実施態様において、発現されたSPEXポリペプチドを含むリンパ球に、SPEX細胞外ドメイン、好ましくはIg様ドメインと免疫反応する抗体を処置することにより、リンパ球の増殖および/または分化が阻害される。
所望により、抗SPEX抗体は、第2エピトープ、例えば異なるSPEXエピトープまたは非SPEXエピトープについての結合ドメインを含み得る(例、1種またはそれ以上の異なるエピトープと結合し得る多価抗体)。
一実施態様において、抗SPEX抗体は、ヒトSPEXポリペプチドと免疫反応するが、マウスSPEXポリペプチドとは実質的に免疫反応しない。所望により、抗SPEX抗体は、マウスSPEXポリペプチドと免疫反応するが、ヒトSPEXポリペプチドとは実質的に免疫反応しない。上記抗体は、例えば、ヒトおよびマウスSPEXポリペプチド配列を区別するのに有用である。
特異的抗原を想定した抗体の製造方法は、当業界ではよく知られている。本発明は、抗SPEX抗体の製造に有用なSPEX抗原(すなわち免疫原)を提供する。すなわち、本開示を考慮に入れることにより、当業者であれば、本発明の抗SPEX抗体を製造できるはずである。抗体は、一般的に例えば動物(例、ウサギ、マウス、ハムスター、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ)、細胞、主として細胞培養物(例、細菌、植物、藻類、昆虫、哺乳類、マウス、ハイブリドーマおよびヒト細胞)において、ファージディスプレーにより、そして抗体スカホールドベクターへのエピトープクローニングおよび様々な細胞型(例、細菌、植物、藻類、昆虫、哺乳類、マウス、およびヒト)のいずれかへの遺伝子導入により製造される。従って、本発明はまた、抗SPEX抗体を生産し得る細胞を提供する。
ある種の実施態様において、抗SPEX抗体は、検出可能な標識を含む。検出可能な標識の例には、放射性同位元素(例、125I)、蛍光分子(例、SMCC−活性化BSA−フルオレセイン、プロザイム、サンレアンドロ、カリフォルニア)、ビオチニル化、myc標識、FLAG標識、および酵素(例、ペルオキシダーゼ)がある。検出可能な標識および望ましい検出可能標識による抗体の標識またはコンジュゲーションについては、当業界ではよく知られている。典型的には、検出可能標識を、共有結合により抗体と組合わせる。抗体の検出可能な形での標識については多様な市販製品が利用可能である。標識は、抗体の可変部分の構造および/または機能に干渉しないのが好ましい。抗体分子またはその活性フラグメントの代替的領域における標識も当業界ではよく知られている。
ある種の実施態様において、抗SPEX抗体は、第1SPEXポリペプチドと免疫反応し、第2SPEXポリペプチドとは免疫反応しないのが望ましい。上記特性を有するモノクローナルおよびポリクローナル抗SPEX抗体は、例えば、抗SPEX抗体の製造においてエピトープ特異的SPEX抗原を用いることにより製造され得る。所望ならば、抗体集団をスクリーニングにかけることにより、望ましくない免疫反応性を有する集団の分子が控除または他の形で除去され得る(すなわち、望ましくない抗原を含むマトリックスでのサブトラクションスクリーニングによる)。
SPEX結合パートナーについてのスクリーニング方法
一実施態様は、一つまたはそれ以上のSPEX結合パートナーを同定するための候補分子のスクリーニング方法であって、1)候補分子をSPEXポリペプチドと接触させ、2)候補分子およびSPEXポリペプチドが結合複合体を形成するか否かを測定し、その場合結合複合体の形成は、候補分子がSPEX結合パートナーであることを示すものとし、そして3)SPEX結合パートナーが同定されるまで段階1)および2)を反復することを含む方法を提供する。好ましい候補結合パートナー分子は、小分子有機化合物およびポリペプチドを含む。好ましいSPEXポリペプチド結合標的は、SPEXチロシンベースドメイン(例、配列番号7、配列番号9または配列番号11)またはSPEX Ig様ドメイン(例、配列番号3、配列番号45または配列番号88)を含む。
本発明および当業界での情報を考慮に入れながら、候補分子およびSPEXポリペプチドが結合複合体を形成しているか否かの測定は、当業界でよく知られている様々な結合検定法を用いて行われ得、そのため本発明は特定の結合検定法により限定はされない。例えば、結合複合体は、抗SPEX抗体を用いた結合複合体の捕捉によって、SPEXポリペプチド単独と比べた場合の分子量増加により検出され得る。結合複合体が分子量の変化またはゲルでの移動を通じて、または複合体からのSPEXポリペプチドの直接検出によって同定され得るように、SPEXポリペプチドは、アフィニティー標識または検出可能標識を含むように遺伝子操作され得る。ある種の候補分子は、候補分子がSPEXポリペプチドとの結合複合体から直接検出され得るように、既知の検出可能特性、例えば抗体免疫反応性部位(エピトープ)、蛍光特性、またはアフィニティー標識(天然または遺伝子操作された)を有し得る。
SPEXポリペプチドの単離方法
一実施態様は、SPEXポリペプチドを含む生物学的試料からのSPEXポリペプチドの精製方法であって、抗SPEX抗体をマトリックスに結合させたアフィニティーマトリックスと生物学的試料を接触させることにより、SPEXポリペプチドおよびマトリックスに結合した抗体を含む免疫複合体を生成させ、マトリックスから生物学的試料の残りを分離し、抗SPEX抗体からSPEXポリペプチドを分離し、そしてSPEXポリペプチドを集めることにより、精製SPEXポリペプチドを得ること含む方法を提供する。
リンパ球の活性の調節方法
一実施態様は、SPEX受容体を発現するリンパ球の代謝(好ましくは増殖または活性化)のモジュレーション方法であって、SPEXポリペプチドの細胞外ドメインと免疫反応する抗SPEX抗体(好ましくはモノクローナル抗体)とリンパ球を接触させることを含む方法を提供する。ある種の実施態様は、SPEX受容体活性が、SPEX受容体を発現するリンパ球の代謝をモジュレーション、好ましくは阻害し、さらに好ましくは増殖を阻害することを開示している。SPEXポリペプチドの細胞外ドメイン、好ましくはIg様ドメインと免疫反応する抗体は、本明細書におけるある種の実施態様で、SPEX活性を阻害することにより、SPEXが誘導する代謝の抑制を解く、すなわち、抗体は、SPEX発現性リンパ球の代謝の相応する増加をもたらすことが開示されている。有用な抗体には、ラット抗SPEX抗体PK3、PK18およびPK23(またはその免疫反応性フラグメント)がある。好ましい抗体には、SPEXポリペプチドの細胞外ドメインと免疫反応するヒト化またはヒト抗体がある。好ましいリンパ球には、B細胞およびT細胞がある。ある種の好ましい実施態様では、抗体は、配列番号13、配列番号55、または配列番号85に示されたアミノ酸配列と免疫反応する。リンパ球は、インビトロ培養またはインビボに存在し得る。例えば、抗体またはその免疫反応性フラグメントを(例、注射により)ヒトまたはヒト以外の哺乳類へ投与することにより、リンパ球をインビボで抗体と接触させる。
mSPEX cDNAの同定およびクローニング
正の選択は、未熟な胸腺細胞が、胸腺間質により発現されるMHC/自己ペプチド複合体のT細胞抗原受容体(TCR)認識の結果として成熟シグナルを受容する発達プロセスである。低濃度の薬理学的活性化因子ホルボールエステル(例、PMA)および/またはイオノマイシンに未熟胸腺細胞を暴露することにより、インビトロでダブルポジティブ(DP)胸腺細胞の生存および分化が誘導され、インビボ胸腺細胞の容認された正の選択のモデル系が提供される。
核酸マイクロアレイを用いることにより、本発明者らは、非刺激胸腺細胞に対する胸腺細胞の正の選択中における核酸発現の変化を確認した。TCRα−鎖欠損胸腺細胞(マウス)を、活性化および非活性化胸腺細胞をそれぞれもたらす0.2ng/mlのPMAおよび0.2mg/mlのイオノマイシンの存在または非存在下における培地で培養した。TCRα−鎖欠損胸腺細胞は、遺伝子突然変異故にDP発達段階で遮断される。刺激を加えた後のこれらの細胞における遺伝子発現は、胸腺細胞の発生を特徴とする。細胞を6時間インキュベーション後、RNeasy RNAおよびオリゴテックスmRNAキット(キアゲン)を用いてポリ−A+RNAを単離した。ポリ−A+RNAを、製造業者の使用説明書(インサイト・ゲノミクス)に従ってマウス1.02アレイを用いる比較cDNAアレイ分析にかけた。GEMTools解析ソフトウェア(インサイト・ゲノミクス)を用いて、マイクロアレイのシグナル解析を実施した。
本発明者らは、非刺激胸腺細胞に対する刺激胸腺細胞における配列の発現比に基くさらなる試験用に2つの配列を選択した。発現比を、マウスアレイに含まれるESTである、EST AA184189およびAA177302のそれぞれと各標識cDNAのハイブリダイゼーションの正規化シグナルから測定した。各配列の発現は、EST AA184189およびAA177302とハイブリダイゼーションする配列についてそれぞれ9.1倍および6.6倍に増加していた。マウス1.02アレイにおけるこれらのESTは、4週令C57BL/6Jマウスの脾臓から誘導されたソアレスマウス3NbMSラブラリーと呼ばれるマウスライブラリーに由来するものであった。
本発明者らは、EST AA184189およびAA177302を、BLASTソフトウェア(NCBI)を用いてリンクし、マウス核酸配列のデータベースとESTの配列を比較することを決定した(各ESTは、マウス配列データベースにおける共通配列に対応する)。すなわち、EST AA184189およびAA177302は、より完全な核酸の一部であることが決定されている。5'完全(most)EST(AA177302)を用いることにより、本発明者らは、反応における鋳型として刺激胸腺細胞から調製されたcDNAを用いて、cDNA末端の迅速な増幅(SMART RACE cDNA増幅キット、クロンテック)により完全長遺伝子をクローン化した。
上記遺伝子を、本明細書ではマウス脾臓発現(mouse spleen expressed)遺伝子(mSPEX遺伝子)と称す。一例としてのmSPEX核酸は、配列番号105に示されており、配列番号84に示されたコーディング領域を含む。GenBankのBLAST検索は、SPEX cDNAが新規タンパク質をコード化することを明らかにしている。mSPEX核酸によりコード化される具体例としてのmSPEXポリペプチドは、配列番号63に示されている。シグナル配列(例、配列番号43)は、典型的には細胞プロセシング中に開裂され、一例として配列番号62に示された成熟mSPEXポリペプチドが形成される。mSPEXポリペプチドおよびタンパク質データベース(NCBI)のPfamファミリー間の配列比較を用いることにより、発明者らはポリペプチドの予測される細胞外部分において免疫グロブリン様ドメインを同定した。しかしながら、発明者らは、SPEXが、特定免疫グロブリン含有スーパーファミリー構成員との密接な相同性を欠くことを観察した。
hSPEX cDNAの同定およびクローニング
GenBankデータベースにおけるヒト配列とmSPEX配列の配列比較を用いることにより、本発明者らは、ヒトEST AI792952およびAA931122がmSPEXポリヌクレオチドと平行整列すること、そしてヒトESTが、GenBankデータベースにおける単一ヒトクローンと対応することを測定した。ヒトクローン、および多くの汚染性クローンを含む細菌穿刺培養物(AI792952)を、IMAGEコンソーシアム(ローレンス・リバーモア・ナショナル・ラボラトリー、リバーモア、カリフォルニア)から購入した。mSPEXと相同的なヒト遺伝子配列を、穿刺培養物から精製し、サブクローニングし、配列決定する。一例としてのhSPEX核酸配列は配列番号104に示されており、配列番号42に示されたコーディング領域を含む。hSPEX核酸配列によりコード化される一例としてのhSPEXポリペプチドは、配列番号21に示されている。シグナル配列(例、配列番号1)は、典型的にはhSPEXタンパク質の細胞プロセシング中に開裂され、一例として配列番号20に示された成熟hSPEXポリペプチドを形成する。
抗mSPEXモノクローナル抗体
融合タンパク質、mSPEX細胞外ドメイン(SPEXシグナル配列を含む)およびヒンジ、ヒトIgG1のCH2およびCH3ドメインを有する融合体をコード化するコーディング領域を含む単離された発現ベクター構築物(本明細書ではp−mSPEX−Igと称す)を調製する。p−mSPEX−Igベクターを、培養中の293細胞へトランスフェクションする。抗ヒトIgG1抗体でプローブしたウエスタンブロットにより評価したところによると、p−mSPEX−Igトランスフェクション293細胞は、mSPEX−Ig融合タンパク質を発現および分泌する。トランスフェクション293細胞の上清から、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより、mSPEX−Ig融合タンパク質を精製する。
CFAで乳化した精製組換えmSPEX−Igにより、ラットを尾の付け根のところで免疫化することにより、モノクローナル抗体を産生させる。所定の抗原に対してモノクローナル抗体を含む抗体を産生させる手順および技術は、当業界ではよく知られている。2週間後内側腸骨リンパ節を採取し、標準方法によりYB2/0細胞と融合させる。かくして製造された抗体を、細胞表面mSPEX−YFP融合タンパク質(YFPは、黄色蛍光タンパク質の略語である)を発現するようにトランスフェクションされたDPKおよび293細胞を用いたFACSによりmSPEXとの特異的免疫反応性についてスクリーニングする。1種またはそれ以上の抗mSPEXモノクローナル抗体がスクリーニング過程で同定されるまで、スクリーニングを続行する。YFP標識により、トランスフェクションされた細胞が、細胞表面でmSPEX−YFP融合タンパク質を発現することが証明され得、mSPEX−YFP融合タンパク質発現に対する細胞性抗体結合の相対レベルの相関関係が示され得る。具体的には、スクリーニング手順に使用されるDPKおよび293細胞を、pEYEP−N1ベクター(クロンテック)へのmSPEX遺伝子挿入体のクローニングから作製された単離発現ベクター構築物でトランスフェクションする。pEYEP−N1ベクターは、YFP標識を供給し、pEYEP−N1からのmSPEX挿入体の発現により、YFP標識と機能し得るように結合されたmSPEXポリペプチドを含む融合タンパク質の発現が誘導される。3種のハイブリドーマPK3、PK18およびPK23がこのスクリーンから得られる。所望により、標準方法を用いてハイブリドーマを再クローニングし、抗体を精製してもよい。
かくして製造されたモノクローナル抗体は、mSPEXの細胞外ドメインと特異的に免疫反応する。mSPEXの細胞外ドメインと免疫反応する3種のモノクローナル抗体を本明細書ではPK3、PK18およびPK23と称す。
抗hSPEXモノクローナル抗体
実施例3に開示した方法を用いて、hSPEXポリペプチドの細胞外ドメインと特異的に反応するモノクローナル抗体を製造するが、ただし、1)融合タンパク質、mSPEX細胞外ドメイン(SPEXシグナル配列を含む)およびヒンジ、ヒトIgG1のCH2およびCH3ドメインを有する融合体をコード化するコーディング領域を含むp−hSPEX−Ig発現ベクターを製造し、これを用いてラットにおいてモノクローナル抗体を製造する、および2)hSPEXポリペプチドの細胞外ドメインをコード化するhSPEXポリヌクレオチドを、pEYEP−N1ベクターへクローン化し、DPKおよび293細胞で発現させ、上記で開示したFACS−YFP手順を用いてモノクローナル抗体についてスクリーニングすることを除く。製造されたモノクローナル抗体は、hSPEXの細胞外ドメインと特異的に免疫反応する。
MAPキナーゼシグナリングは、SPEX発現を刺激する
mSPEXおよびhSPEX mRNAの発現を、PMAおよびイオノマイシンによる刺激の存在または非存在下およびMEK阻害剤(10μM U0126)の存在または非存在下における培養DP胸腺細胞で比較する。PMAおよびイオノマイシン刺激による観察されたSPEX mRNA発現(マウスおよびヒト細胞の両方で)の増加は、一実験では約70%までMEK阻害剤により阻害される。これらのデータは、SPEX mRNA発現の刺激をまねくMAPキナーゼシグナリングと一致する。
細胞性mSPEXの単離
マトリックス結合抗mSPEXモノクローナル抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、還元的および非還元的条件下でマウス脾臓細胞全細胞ライゼートからmSPEXタンパク質を単離する。マトリックス結合抗体を、ライゼート中のmSPEXポリペプチドが抗体と結合するのに充分な条件下で細胞ライゼートと接触させ、それによってマトリックス、抗hSPEX抗体、およびhSPEXポリペプチドを含む反応複合体を形成させる(免疫反応緩衝液および他の条件、例えばインキュベーション時間および温度は、当業界では熟知されており、この場合に適用可能である)。マトリックスを洗浄することにより、非mSPEX汚染物質を除去する。mSPEXポリペプチドは、マトリックス−抗体−mSPEX複合体から放出され、mSPEXポリペプチドは精製形態で集められる。精製mSPEXポリペプチドの存在を、銀染色を用いてSDS−PAGEゲルでの電気泳動によって確認することにより、試料の生物学的内容物を検出する。mSPEXポリペプチドは、本質的に試料中に存在する唯一の物質であり、銀染色により検出されたところによると35kDaおよび37kDa二重線として現われる。二重線の各バンドの正体は、トランスフェクション細胞のエピトープ標識および抗mSPEXモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングによりmSPEXであることが確認される。
細胞性hSPEXの単離
hSPEXタンパク質を、マトリックス結合抗hSPEXモノクローナル抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、還元的および非還元的条件下でヒト脾臓細胞の細胞培養ライゼートから単離する。マトリックス結合抗体を、ライゼート中のhSPEXポリペプチドが抗体と結合するのに充分な条件下で細胞ライゼートと接触させ、それによってマトリックス、抗hSPEX抗体、およびhSPEXポリペプチドを含む反応複合体を形成させる。マトリックスを洗浄することにより、非hSPEX汚染物質を除去する。hSPEXポリペプチドは、マトリックス−抗体−hSPEX複合体から放出され、hSPEXポリペプチドは精製形態で集められる。試料中の精製hSPEXポリペプチドの存在を、銀染色を用いてSDS−PAGEゲルでの電気泳動によって確認することにより、試料の生物学的内容物を検出する。hSPEXポリペプチドは、銀染色により検出されたところによると本質的に試料中に存在する唯一の物質である。hSPEXポリペプチドであることは、抗hSPEXモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングにより確認される。
SPEXタンパク質の組織分布
SPEX遺伝子発現の組織分布を、細胞性mRNAのノーザンブロット分析によりマウスの脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、皮膚、小腸、脾臓、胃、精巣および胸腺組織で調べる。本質的にSPEX mRNAは、ノーザン分析によりマウスの脳または精巣からは検出されない。SPEXの低レベル発現は、心臓、腎臓、筋肉および皮膚組織で観察される。SPEXの中レベル発現は、肝臓、肺、小腸および胃組織で観察される。SPEXの高レベル発現は胸腺および脾臓組織で観察され、脾臓組織での発現は胸腺組織と比べて約2倍の大きさである。
リンパ球におけるSPEX mRNA発現の分布を、マウスB−リンパ球、CD4+胸腺細胞およびCD8+胸腺細胞で評価する。胸腺細胞におけるSPEXの発現について、CD4、CD8について胸腺細胞を3色染色し、フローサイトメトリーにより発現パターンを分析することにより測定する。SPEX mRNA発現は、CD8 T細胞と比べてCD4 T細胞における方が高い。一実験において、CD8 T細胞SPEX mRNA発現に対するCD4 T細胞SPEX mRNA発現は、約2:1であった。両細胞集団ともタンパク質を発現するが、SPEXタンパク質の発現もまた、CD4T細胞での方がCD8系列の場合と比べて高い。これらのデータは、T細胞の系列運命決定に関与するSPEXシグナリングと一致している。
B細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞におけるSPEX mRNAの発現について、マウス脾臓細胞を3色染色し、FACSにより発現パターンを分析することにより評価する。また、SPEXはBおよびT細胞で発現され、最高から最低までの発現レベルの順序は、典型的にはB細胞、次いでCD4 T細胞、そして次にCD8細胞である。
抗SPEX抗体によるT細胞応答の調節
この実施例では、T細胞を抗mSPEX抗体と接触させることによりT細胞代謝のモジュレーションを検出する。AND TCRトランスジェニックマウスのリンパ節からの磁気ビーズ枯渇によりCD4T細胞を精製する。これらのT細胞は、CD4およびCD8発現に関して充分に特性確認された抗原特異性を有する。本検定法では、CD4 T細胞を、SPEX特異的モノクローナル抗体の存在または非存在下で抗原提示細胞(APC)および抗原と混合する。各混合物の培養物を、それぞれ異なる選択された期間インキュベーションし、T細胞応答を検出または測定する。抗体不含有混合物と比べた場合の抗体処理混合物におけるT細胞増殖速度の変化は、SPEXの細胞外ドメインと免疫反応する抗体の処置から生じるT細胞代謝のモジュレーションの証拠である。
上記検定法におけるAPCは、当業界で公知の標準技術に従ってBALB.Kマウスの放射線照射脾臓細胞から調製される。APCは、AND T細胞に抗原を提示するのに適切なMHC分子を有し、mSPEXb対立遺伝子を有し、mSPEXbポリペプチドを発現するが、mSPEXb以外にSPEX対立遺伝子を有することも、mSPEXポリペプチドを発現することもない。使用抗体は、mSPEXbポリペプチドとは免疫反応しない抗mSPEX抗体であるPK18である。PK18抗体は、mSPEXポリペプチドの細胞外ドメインと免疫反応する。すなわち、BALB.Kマウスから製造されたAPCは、PK18抗体とは免疫反応しない。T細胞およびAPCを、PK18抗SPEXモノクローナル抗体の存在または非存在下において、様々な濃度の抗原、この実施例ではハトシトクロムcから誘導されたペプチドの存在下で混合し、様々な期間培養する。増殖を、培養開始後様々な期間でのHチミジン取込により測定する。
抗SPEX抗体によるT細胞活性化の阻害
この実施例は、SPEXポリペプチドと免疫反応する抗体とSPEXポリペプチドを含むT細胞とを接触させることによるT細胞活性化の阻害方法を証明する。LN T細胞を、B10.BR(mSPEXポリペプチドを有する)およびBALB.Kマウス(mSPEXbポリペプチドを有する)から別々に精製する。等量の抗CD3およびラットIgまたは等量の抗CD3およびモノクローナル抗体PK18でコーティングした96ウェルプレートにおいて3H−TdR(トリチウム化されたチミジン)の存在下でT細胞を培養する。抗CD3抗体は、T細胞活性化の既知刺激因子である。PK18抗体は、B10.BR T細胞のmSPEXポリペプチドと免疫反応するが、BALB.K T細胞のmSPEXbポリペプチドとは免疫反応しない。
結果を図3に示す。抗CD3およびラットIgと反応したT細胞への3H−TdR組込みは、図3において白抜き記号として描かれている。抗CD3およびPK18と反応したT細胞への3H−TdR組込みは、図3において黒塗り記号として描かれている。データは、トリプリケイト培養物についての平均3H−TdR組込み(+/−標準偏差(SD))−T細胞単独培養物の3H−TdR組込みのcpm(1500cpm未満であった)として表されている。T細胞への3H−TdRの組込みは、T細胞の増殖およびT細胞活性化の両方と相関関係を示す。
図3のパネル1および2(異なる2実験)は、B10マウスT細胞のmSPEXと免疫反応する抗体PK18とT細胞とを接触させたとき、B10マウスからのT細胞の活性化が阻害されることを証明している。図3のパネル3および4(異なる2実験)は、BALB.KマウスT細胞のmSPEXbとは免疫反応しない抗体PK18とT細胞とを接触させても、BALB.KマウスからのT細胞の活性化は、あまりモジュレーションされないことを証明している。
PK18抗体は、mSPEXbポリペプチドの細胞外ドメインと免疫反応する。すなわち、図3に描かれたデータは、SPEXポリペプチド、好ましくはSPEXポリペプチドの細胞外ドメイン、さらに好ましくはSPEXポリペプチドのIg様ドメインと免疫反応する抗体とSPEXポリペプチドを含むT細胞とを接触させることによるT細胞活性化の阻害方法を証明している。
抗SPEX抗体によるB細胞活性化の阻害
この実施例は、SPEXポリペプチドと免疫反応する抗体とSPEXポリペプチドを含むB細胞とを接触させることによるB細胞活性化の阻害方法を証明する。B細胞をB10.BRおよびBALB.Kマウスから精製することを除き、実施例10を反復する。BALBマウスではなく、B10のB細胞をPK18抗体と接触させることにより、B細胞活性化は阻害されることが見出された。すなわち、データは、SPEXポリペプチド、好ましくはSPEXポリペプチドの細胞外ドメイン、さらに好ましくはSPEXポリペプチドのIg様ドメインと免疫反応する抗体とSPEXポリペプチドを含むB細胞とを接触させることによるB細胞活性化の阻害方法を証明している。
マウス抗mSPEXモノクローナル抗体
BALB/cマウスを、免疫化(50μg、CFA中)し、組換え可溶性SPEX−Ig融合タンパク質(上記で検討されているSPEXの細胞外ドメインを含む)でブースト(3〜5回、IFA中50μg)した。免疫原は、B6マウスに由来するものであるため(mSPEXb対立遺伝子ではなく、mSPEX対立遺伝子を含む)、BALB/cマウスにおいて対立遺伝子特異的抗体を産生する。標準的手段によりハイブリドーマを免疫化動物の脾臓細胞から製造する。SPEX−YFP融合タンパク質を発現するトランスフェクションおよび親細胞への差次的結合により、モノクローナル抗体をスクリーニングにかける。3種のモノクローナル抗体、PJ16、PJ19およびPJ196を、追加分析用に選択する。各抗体のイソ型はIgG1κである。PJ19、PJ16およびPJ196抗体は、BALB/c由来の細胞(mSPEXではなく、mSPEXbを発現する)ではなく、B6細胞により発現されたmSPEX(mSPEXbではない)と特異的に免疫反応することを含む、ラットモノクローナル抗体のPK系列(上記参照)と同一の染色パターンを有する。
本明細書に記載した実施態様に加えて、本発明の様々な修飾も当業者であれば、前述の記載内容から容易に理解できるはずであり、それらも本発明の範囲内に包含されるものとする。
図1は、細胞外、膜貫通(斜線部)および細胞内ドメイン(標識通り)を有する実質的に完全長のマウスおよびヒトSPEXポリペプチド(それぞれ、mSPEXおよびhSPEX)の図である。細胞外ドメインは各々、免疫グロブリン(Ig)様ドメイン(水平線)を含み、所望により開裂可能なシグナル配列(ダッシュ領域)を有していてもよく、矢印は開裂部位を指す。シグナル配列は、翻訳後プロセシング中に開裂され、成熟SPEXポリペプチドを生じさせる。細胞内ドメインは各々、3個のチロシンに基くモチーフを含む(垂直線)。また、チロシンに基く各ドメインは、チロシンアミノ酸残基を含む(Yは、チロシンについての1文字コードである)。示された実施態様は、チロシンが所望によりリン酸化され得ることを描いている(円で囲んだP)。生体膜におけるSPEXポリペプチドの相対位置が示されている。点描領域は、ある種の機能性ドメイン間における各ポリペプチドの部分を示す。 図2Aは、選択されたhSPEXポリペプチドおよび選択された各ポリペプチドに関するそれぞれの配列間の対応関係の実例を示す図である。 図2Bは、選択されたhSPEXポリヌクレオチドおよび選択された各ポリヌクレオチドに関するそれぞれの配列間の対応関係の実例を示す図である。 図2Cは、選択されたmSPEXポリペプチドおよび選択された各ポリペプチドに関するそれぞれの配列間の対応関係のある種の実例を示す図である。 図2Dは、選択されたmSPEXポリヌクレオチドおよび選択された各ポリヌクレオチドに関するそれぞれの配列間の対応関係のある種の実例を示す図である。 図3は、モノクローナル抗体PK18がT細胞活性化を阻害することを立証する4つのグラフ(パネル1〜4)を示す。LN T細胞を、B10.BRおよびBALB.Kマウスから精製し、抗CD3およびラットIg(白抜き記号)または抗CD3およびPK18(黒塗り記号)の混合物でコーティングした96ウェルプレートにおいて培養した。データを、トリプリケイト培養物の平均3H−TdR(トリチウム化チミジン)取り込み(+/−標準偏差)マイナスT細胞単独培養物の組込みの1分間当たりの放射能カウント数(cpm)として表す(1500cpm未満)。T細胞のDNAへの3H−TdRの取り込みは、T細胞の増殖およびT細胞活性化の両方と相関関係を示す。
【配列表】
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Claims (12)

  1. (a)配列番号3、7、9、11、45または88のいずれか一つに示されたアミノ酸配列、または
    (b)配列番号3、7、9、11、45または88のいずれか一つとの同一性が95%またはそれより大であり、免疫グロブリン様ドメイン構造を含むアミノ酸配列
    を含む精製ポリペプチド。
  2. 本質的に配列番号3、7、9、11、45または88のいずれか一つの8〜40連続アミノ酸残基により構成される、精製免疫原性ポリペプチド。
  3. SPEXポリペプチドをコード化する核酸配列、またはその核酸配列の相補体を含む、精製ポリヌクレオチド。
  4. 配列番号3、7、9、11、45または88のいずれか一つに示されたポリペプチド配列をコード化する核酸配列、またはその核酸配列の相補体を含む、精製ポリヌクレオチド。
  5. SPEXチロシンベースドメインをコード化する核酸配列、またはその核酸配列の相補体を含む、精製ポリヌクレオチド。
  6. a)SPEXポリペプチドをコード化する核酸配列、またはその相補体、および
    b)その核酸配列に機能し得るように結合されたベクター配列
    を含む精製ポリヌクレオチド。
  7. SPEXポリペプチドを発現させるための1つまたはそれ以上の制御エレメントを有するベクター配列に機能し得るように結合されたSPEXポリペプチドをコード化する核酸配列を含む、精製SPEX発現ベクター。
  8. SPEX発現産物を発現させるための一つまたはそれ以上の制御エレメントを有するベクター配列と機能し得るように結合されたSPEX発現産物をコード化する核酸配列を含むSPEX発現ベクターを含む、精製宿主細胞。
  9. SPEXポリペプチドと免疫反応する単離抗体。
  10. a)候補結合パートナーとSPEXポリペプチドを接触させ、
    b)SPEXポリペプチドを含む結合複合体が形成されているか否かを検出し、
    c)結合複合体形成時におけるSPEX結合パートナーとしての候補結合パートナーを選択する
    ことを含む、SPEX結合パートナーの同定方法。
  11. a)抗SPEX抗体をマトリックスに結合させたアフィニティーマトリックスと生物学的試料を接触させることにより、SPEXポリペプチドおよびマトリックスに結合させた抗SPEX抗体を含む複合体を生成させ、
    b)マトリックスおよび生物学的試料の残りを分離し、
    c)SPEXポリペプチドおよび抗SPEX抗体を分離し、そして
    d)単離されたSPEXポリペプチドを集める
    ことを含む、SPEXポリペプチドを含む生物学的試料からのSPEXポリペプチドの単離方法。
  12. SPEXポリペプチドの細胞外ドメインと免疫反応する抗SPEX抗体とリンパ球を接触させることを含む、SPEXポリペプチドを発現するリンパ球の代謝のモジュレーション方法。
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