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JP2006516651A - 産後精神病の処置のための抗糖質コルチコイド - Google Patents

産後精神病の処置のための抗糖質コルチコイド Download PDF

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JP2006516651A JP2006503313A JP2006503313A JP2006516651A JP 2006516651 A JP2006516651 A JP 2006516651A JP 2006503313 A JP2006503313 A JP 2006503313A JP 2006503313 A JP2006503313 A JP 2006503313A JP 2006516651 A JP2006516651 A JP 2006516651A
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Abstract

本発明は、一般に精神医学の領域に関する。詳細には、本発明は、コルチソルのそのレセプターへの結合を阻害する薬剤が、産後精神病を処置する方法において使用され得るという知見に関する。強力な特異的な糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストである、ミフェプリストンが、これらの方法において使用され得る。本発明はまた、ヒトにおいて産後精神病を処置するためのキットを提供し、このキットは糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストならびに糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの適応症、投与量および投与スケジュールを教示する指示書を備える。

Description

(関連出願の引用)
本出願は、2003年2月4日に出願された、関連出願USSN60/445,284の優先権を主張し、これは本明細書中で参考として援用される。
(発明の背景)
本発明は、産後精神病を処置するための方法に関する。また産褥精神病として公知である、産後精神病の病因は、分娩および出産に関する。産後精神病は、分娩後一週間以内に急な発症を有する急性の精神疾患である。症状の発症は、産後の最初の2週間から4週間以内に早期に生じ得るか、あるいは後日に生じ得る。実際に、多くの臨床家は、症状の発症を出産に一時的に関連するような分娩後6ヶ月〜12ヶ月以内とみなす(Chaudron,L.H.およびPies,R.W.(2003)J.Clin Psychiatry 64(11):1284−1292)。
一般的な集団において、産後精神病は、1000回の出産当たり約1回または2回の頻度で生じる。しかし、発生の頻度は、特定の部分集団においては、より高くなり得る。例えば、最近の研究は、双極性障害を有する女性の間で産後精神病の頻度が1000回の出産当たり260回であったことを見出した(Leibenluft,E.(1996)Am.J.Psychiatry 153:163−173)。
産後精神病は、妄想、幻覚および現実を損なった近くにより特徴付けられる。一般に産後精神病症状の発現と関連する妄想としては、乳児を殺せという命令幻覚、乳児が取り付かれたという妄想、または乳児が取り替えられているという妄想が挙げられる。少なくとも一つの女性の集合において、錯乱および失見当は、他の精神病において観察されない程度に対して明らかである。
産後精神病を有する患者は、精神分裂病の精神病を連想するか、または精神病の特徴を有する種々の感情障害である妄想ならびに幻覚を伴ってしばしば存在する。産後精神病の症状はまた、産後の憂鬱または抑鬱の症状としばしば重なり得る。しかし、産後精神病は、産後に生じる抑鬱のより軽度の形態、および他の非産褥の精神病から区別される。実際には、出産後精神病が現れるほとんどの女性は、以前の精神病的疾患の病歴を有さないことから、明確な症状が存在するという強力な暗示が存在する。
非産褥の精神病に対して産褥の精神病の症状の存在を比較する研究は、産褥の精神病は、明確な精神病性症候群であるという結論を示唆する。例えば、産褥の精神病を有する58人の女性を、非産褥の精神病を有する52人の女性と比較した研究は、躁病の症状(例えば、発揚状態、気分不安定性、まとまりのない発話、散漫性、観察された上機嫌、増加活性)が、産褥の群においてより一般的であったことを見出した。体系妄想、被害妄想、異常な情動、および引きこもりが、非産褥の群においてより一般的であった(Brockington,I.F.ら,(1981)Arch.Gen.Psychiatry 38:829−833)。
産後精神病は、乳児の幸福を脅かし得、母親の入院を必要とする深刻な疾患である。従って、母子の結び付きができるだけ損なわれないように、精神病の症状の急速かつ有効な臨床的処置の必要がある。本発明は、出産後4週間以内に発症を通常有するが、分娩の9ヶ月以内にいつでも起こり得る産後精神病または産褥の精神病として公知の精神病の特定の形態のための有効な処置方法を提供することによる必要性を満たす。
(発明の簡単な要旨)
本発明は、産後精神病の症状の改善を必要とする患者においてこの産後精神病の症状を改善する方法に関し、この方法は産後精神病の症状を改善するのに有効な量の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストを投与する工程を包含し、ただし、最初の精神病症状は、出産の9ヶ月以内に起こり、患者は、出産により誘発されないいかなる精神病状態も患っておらず、そして患者は、分娩前に精神病に患っていなかった。
本発明の一つの局面において、糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、ステロイド骨格の11−β位において少なくとも一つのフェニル含有部分を有するステロイド骨格を含む。一つの局面において、ステロイド骨格の11−β位におけるフェニル含有部分は、ジメチルアミノフェニル部分である。別の実施形態において、この糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、ミフェプリストンである。
本発明の一つの局面において、この糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、11β−(4−ジメチルアミノエトキシフェニル)−17α−プロピニル−17β−ヒドロキシ−4,9エストラジエン−3−オンおよび17β−ヒドロキシ−17α−19−(4−メチルフェニル)アンドロスタ−4,9(11)−ジエン−3−オンからなる群から選択される。別の実施形態において、この糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、4α(S)−ベンジル−2(R)−プロプ−1−イニル−1,2,3,4,4α,9,10,10α(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオールおよび4α(S)−ベンジル−2(R)−クロロエチニル−1,2,3,4,4α,9,10,10α(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオールからなる群より選択される。
一つの局面において、糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、(11β,17β)−11−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オンである。
本発明の一つの局面において、投与は1日当たり1回である。別の局面において、投与形態は、経口である。なお別の局面において、投与形態は、経皮適用によるか、霧状化懸濁物によるか、またはエアゾールスプレーによる。
本発明はまた、被験体において産後精神病を処置するためのキットを提供する。このキットは、特異的な糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト、ならびに産後精神病を患う患者への該糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの適応症、投与量、および投与スケジュールを教示する指示書を包含する。
(定義)
本明細書中で使用される場合、用語「精神病の」とは、DSM−IV−TR(American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,第4版,Text Revision,Washington D.C.,American Psychiatric Association(2000))において規定される通りの、そして以下に記載されるとおりである、その最も広範な意味における精神医学的状態をいう。用語「精神病の」は、歴史的に、狭い記載から広い記載までの範囲で、多くの異なる定義がなされている。精神病状態は、妄想または顕著な幻覚を含み得、これらは、個体が実感するのが幻覚性の経験である顕著な幻覚、および病理学的性質への洞察の非存在下において生じる幻覚を有するものを包含する。最終的に、この用語は、自我境界の損失または現場検討における総損傷(gross impairment)により特徴付けられる精神病的状態を包含する。広範であって、主に症状に基づいたこの定義とは異なり、早期分類における精神病の特徴付け(例えば、DSM−IIおよびICD−9)は、より包括的であり、(精神的な障害が人生の通常の要求を満たす能力にあきらかに妨害する「損傷」を生じる場合、「精神病の」と言及されるように)機能的な損傷の重篤度に焦点があてられた。精神病の要素を有する異なる障害は、[精神病の」の本定義の異なる局面を包含する。例えば、分裂病様障害、および分裂感情性障害、短期精神病障害において、用語「精神病の」とは、妄想、任意の顕著な幻覚、支離滅裂な発話、もしくは支離滅裂なまたは緊張した行動をいう。一般的な精神状態に起因した精神病障害および物質誘発性精神病障害において、「精神病の」は、妄想または洞察を伴わないこれらの幻覚のみをいう。最終的に、妄想障害および共有精神病障害において、「精神病の」は、「妄想の」に等しい(DSM−IV−TR,前出,327頁−328頁を参照のこと)。
客観的試験は、個人が、精神病性であるかどうか決定するのに使用され得、ならびに特定の処置スケジュールまたはレジメンの成功を測定および評価するのに使用され得る。例えば、認識能力における変化の計測は、精神病患者の診断および処置の評価を補助する。当該分野で公知の任意の試験が使用され得る(例えば、いわゆる「Wallach試験」(これは認識記憶を評価する(以下、Wallach(1980)J.Gerontol.35:371−375を参照のこと))、またはStroop 色および語句試験(「Stroop試験」)(Golden,C.J.,Cat.No.30150M,In:A Manual for Clinical and Experimental Uses,Stoelting,Wood Date,Illを参照のこと)。
用語「精神病」とは、もっとも広範な意味において、DSM−IV−TR(2000 前出)において規定される通りの精神医学の症状、状態、または症候群をいい、この用語は上に広範に定義されるとおりに、「精神病の」要素を包含する。用語精神病は、一般的な医学的状態、疾患状態、または他の状態(例えば、薬物乱用の副作用(物質誘発性障害)または投薬の副作用)に関連する症状を言及しても良い。あるいは、用語精神病は、任意の疾患状態、医学的状態、薬剤摂取などに関連しない状態または症状を言及しても良い。
精神病は、ヒトの精神能力、感情の応答、または現実を認識し、連絡し、および日常生活の日常的要求に対処する能力を妨害する程度までの他人と関係する能力の総歪曲あるいは総みだれを引き起こす、精神障害または状態として代表的に定義される。
用語「産後精神病または分娩後精神病」とは、分娩に続いて早期に数ヶ月以内に隠れて発症する急性の精神的疾患をいう。多くの場合、症状の発症は、出産後の最初の4週間以内、しばしば、出産後の2週間以内、出産後の8週間以内、出産後の12週間以内、出産後の16週間以内におこる。しかし、出産後9ヶ月以内の症状の発症は、出産に時間的に関係すると考えられ、従って、産後精神病として規定される。この疾患は、妄想、幻覚、および損なわれた現実認知により特徴づけられる。
産後精神病エピソードと一般に関連する妄想としては、乳児を殺せという命令幻覚、乳児が取り付かれたという妄想、または乳児が取り替えられたという妄想が挙げられる。少なくとも一つの女性の部分集団において、錯乱および失見当は、他の精神病において観察されない程度で明らかである。
産後精神病は、500回の分娩中約1回〜1000回の分娩中約1回おこり、そして初産の女性においてより共通であり得る。産後精神病は、産後におこる軽度の抑鬱形態から区別される。例えば、産後の抑鬱および産後のうつ病は、異なる重篤度のうつ病の特徴を伴って代表的に存在する。対照的に、産後精神病は、うつ病、躁病またはその混合型を含む任意の気分状態において存在し得、そして妄想および幻覚を伴って存在する唯一の産後の症候群である。さらに産後精神病患者は、それらが出産関連障害である場合を除いて、以前の精神病障害の病歴を有さない。
熟語「患者は、出産により誘発されないいかなる精神病状態も患っておらず、そして、分娩前に精神病に患っていなかった」は、この患者が、産後精神病を有する症候性の特徴を共有するが、出産により誘発されない、当該分野で公知のいかなる精神医学的状態も患っておらず、そしてこの患者は、その精神病が出産に関連した疾患である場合を除いて、出産前のいつでもいかなる精神病状態も患っていなかったことを意味する。
産後精神病を有する症候性の特徴を共有する当該分野で公知の精神医学的状態としては、短期精神病障害、一般的な医学的状態に起因する精神病障害、物質誘発性精神病障害および精神分裂病(DSM−IV,2000,343頁)が挙げられ、ならびにこの精神医学的状態は精神病の特徴を有する気分障害(例えば、大うつ病に関する精神病、および躁病エピソードうつ病または混合型エピソードうつ病)である。
用語「分娩(parturition)」は、出産および分娩(labor)をいう。
用語「改善すること」または、「改善する」とは、任意の主観的または客観的パラメータ(例えば、症状の軽減、寛解または減退、もしくは患者の身体的幸福または精神的幸福における改善)を含む、病理学または状態の処置における成功の任意の徴候をいう。症状の改善は、主観的パラメータまたは客観的パラメータに基づいてもよい(身体検査および/または精神医学的評価の結果を包含する)。例えば、精神医学的障害(例えば、精神病またはうつ病)の有効な改善をモニタリングするための臨床的ガイドは、Structured Clinical Interview for DSM−IV Axis I mood disorders(「SCID−I/P」)において見出され、この臨床ガイドは、臨床家、研究者および練習生が、主要なDSM−IV Axis I診断を行うことを支援するために設計された半構造化診断面接である(例えば、SCID−I/P(for DSM−IV−TR)Patient Edition First,Michael B.,Spitzer,Robert L,Gibbon Miriam.およびWilliams,Janet B.W.:Structured Clinical Interview for DSM−IV−TR Axis I Disorders,Research Version,Patient Edition.(SCID−I/P)New York:Biomtrics Research,New York State Psychistric Institute,2001,DSM−IV−TR,(2000)前出,およびComprehensive Textbook of Psychiatry/VI,vol.1,第6版.,pp621−627,Williams&Wilkins,Balt.,Md.を参照のこと)。
用語「コルチソル」とは、ヒドロコルチゾンとも呼ばれる組成物群、およびその任意の合成アナログもしくは天然アナログをいう。
用語「糖質コルチコイドレセプター」とは、コルチソルおよび/またはコルチソルアナログに特異的に結合する、コルチソルレセプターとも呼ばれる細胞内レセプター群をいう。この用語は、糖質コルチコイドレセプターのアイソフォーム、組換え糖質コルチコイドレセプター、および変異糖質コルチコイドレセプターを包含する。
用語「ミフェプリストン」とは、代表的に高い親和性で糖質コルチコイドレセプターに結合し、そして任意のコルチソルまたはコルチソルアナログを糖質コルチコイドレセプターに結合することにより開始/媒介される生物学的効果を阻害する、RU486、またはRU38.486、または17−β−ヒドロキシ−11−β(4−ジメチル−アミノフェニル)−17−α−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン)、または11−β−(4ジメチルアミノフェニル)−17−β−ヒドロキシ−17−α−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン)、またはそのアナログと呼ばれる組成物群をいう。RU486についての化学名は、変化する(例えば、RU486はまた:11β−[p−(ジメチルアミノ)フェニル]−17β−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;11β−(4−ジメチル−アミノフェニル)−17β−ヒドロキシ−17α−(プロプ−1−イニル)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;17β−ヒドロキシ−11β−(4−ジメチルアミノフェニル−1)−17α−(プロピニル−1)−エストラ−4,9−ジエン−3−オン;17β−ヒドロキシ−11β−(4−ジメチルアミノフェニル−1)−17α−(プロピニル−1)−ε;(11b,17β)−11−[(4−ジメチルアミノ)−フェニル]−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オン;および11β−[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル]−17α−(プロプ−1−イニル)−D−4,9−エストラジエン−17β−オル−3−オン)と命名されている。
用語「特異的な糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト」とは、糖質コルチコイドレセプターアゴニスト(例えば、コルチソルまたは天然もしくは合成のコルチソルアナログ)の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストへの結合を部分的に、または完全に阻害する(拮抗する)任意の組成物もしくは化合物をいう。また「特異的な糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト」とは、糖質コルチコイドレセプターのアゴニストへの結合に関連するいずれかの生物学的応答を阻害する、任意の組成物または化合物をもいう。「特異的に」により、本発明者らは、この薬物が鉱質コルチコイドレセプターではなく糖質コルチコイドレセプターへ少なくとも100倍、ならびに頻繁に1000倍の親和性で優先的に結合することを意図する。
(発明の詳細な説明)
(被験体における糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストを使用した産後精神病の処置)
抗糖質コルチコイド(例えば、ミフェプリストン)は、被験体において産後精神病を処置するために本発明の方法において使用される薬物として処方される。糖質コルチコイドレセプターに対するコルチソルまたはコルチソルアナログの結合に関連する生物学的応答をブロックし得る任意の組成物または化合物は、本発明における薬物として使用され得る。本発明の方法を実施するための糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト薬物レジメンおよび処方を決定するための一連の手段は、特許文献および科学文献において十分に記載され、そしていくつかの例示する例が以下に示される。
(精神病に関する状態および疾患の診断および評価)
産後精神病を診断し、処置の成功を評価するための多くの手段が存在する。これらの手段は、種々の研究室的手順に加えて、古典的な心理学的評価を含む。このような手段は、科学文献および特許文献において十分に記載され、いくつかの例示する例が以下に提供される。
(A.精神病の評価および診断)
本発明の方法において改善された精神病は、広範な範囲の精神的な状態および症状を包含するが、これらは分娩に続いて最初の9ヶ月以内は激しいようである、共通の特徴を共有する。開業医は、本発明の方法を実施するための適応症として産後精神病の存在を診断するための定められたまたは経験上の診断基準の任意のセットを使用し得るが、いくつかの例示する診断ガイドラインおよび関連する症状および状態の例が、以下に記載される。
精神病は、公式の精神医学の評価、(例えば「The Structured Clinical Interview for DSM−IV,or SCID」に記載される半構造化された臨床的面接)の使用より診断され得る。SCIDは、DSM−IVにおいて使用される診断基準に詳しい診断者および調査者により与えられるように設計される。SCIDは、Axis I障害(精神分裂病および他の精神病障害、を含む臨床的関心の中心であり得る臨床障害および他の状態、ならびに気分障害、および不安障害)の一つ、およびAxis IIの人格障害(人格障害、精神薄弱障害、処置の計画および結果の予測において臨床者を導くための「多軸評価システム」の一般的な記載についてDSM−IV−TR,前出,27−27頁,を参照のこと)の二つの部分を有する。SCID面接の開始において、本疾患の概観、主訴、および主要な精神病理学の過去のエピソードは、特定の症状について患者に質問を系統的にする前に得られる。面接スケジュール自体は、患者が、彼女ら自身の言葉で症状を説明する機会を有するように、解放された多くの質問を有する。
面接の結論で、面接者はまた、機能全体の評価(GAF)スケール、DSM−IVの多軸評価システム上で第5(「V」)のAxisを完遂する。Axis Vは、機能の個々の全体的レベルの臨床家の判断をレポートするためである。この情報は、処置の計画、その影響の測定、および結果の予測に有用である。このGAFスケールは、単一の計測を使用して全体の期間において個人の臨床の進行を追跡するのに特に有効である(DSM−IV−TR,前出,34頁,前出を参照のこと)。いくつかの設定において、社会的障害、職業障害を評価し、心理学的症状の重篤度から独立してリハビリゼーションにおいて進行を追跡するのに有効であり得る。例えば、この目的のために、提案された社会的機能および職業機能の評価スケール(SOFAS)DSM−IV−TR,前出,817−818頁(Appendix B)を使用する。例えば、さらなる評価スキームが、関係する機能の全体の評価(GARF)スケール(DSM−IV−TR,前出,814−816頁、Appendix B)または、防護機能スケール(DSM−IV−TR,前出,807−813頁)が、使用され得る。
精神病について処置の進行を評価するため、または診断および予後を補助するために、「短期精神評価スケール(Brief Psychiatric Rating Scale;BPRS)」はまた、患者との半構造化面接後に使用され得る。このBPRSは、18次元の評点付けスケールである。各次元は、ドメインの行動、および精神医学的症状(例えば、不安、対立行為、情動、罪の意識および見当識)を表す。これらは、「存在しない」から「完全に厳しい」まで、7点「Likert Scale」上で評点付けされる。このBPRSは、手短にいえば、容易に学習され、全体の病理学的を反映する量的スコアを提供する。このBPRSは、処置から患者の全体的な利益のありのままの指標を提供するのに有用であり、従って本発明の方法を使用して処置および改善した後に個人の状態における変化を評価するのに有用である(Overall,J.E.およびGorham,D.R.(1962)Psychol.Reports 10:799)。
客観的試験がまた、個人が、精神病であるかどうか決定するため、ならびに特定の処置スケジュールまたはレジメンの成功を測定および評価するのにこれらの主観的な、診断基準とともに使用され得る。精神病、または任意の精神医学的状態の処置の診断、分類または評価は、当該分野で公知の任意の試験(例えば、Wallach(1980)J.Gerontol.35:371−375に記載される、またはStroop 色および語句試験)を使用して、客観的に評価され得る。
いわゆる「Wallach試験」は、個人における認識の変化を評価し、認識記憶を評価することにより、精神病の存在および程度を計測し得る。
Stroop 色および語句試験(「Stroop試験」)は、個人が、精神病であるかどうかを客観的に決定し、そして処置の効力を計測するための別の手段である(Golden,前出を参照のこと)。Stroop試験は、精神病を有する個人と精神病を有さない個人との間で差別化し得る。手短にいえば、このテストは、読み書きできる大人において、色の名を言うことが色名の読むことよりも常に遅いという知見から発見された。例えば、単語がどの色で印刷されているか(例えば、黄色のインクで印刷された「XXX」)を認識するのにかかる時間よりも印刷された単語「黄色」を読むことは常に時間がかからない。さらに、呈色した単語が、一致しない色のインクで印刷される場合(例えば、赤色のインクにおける単語 黄色)、正常な個体が適切な色(赤)の名を言うのに、正常な個体色のみを示される場合(例えば、赤い矩形または赤色の「XXX」)よりも50%長い時間がかかる。色認識におけるこの遅れは、いわゆる「カラーワード干渉効果(color−word interference effect)」であり、そしてStroop試験において測定された時間変数パラメータである。遅れが大きければ大きいほど、Stroop試験スコアはより低くなる(Uttl(1997)J.Clin.Exp.Neuropsychol.19:405−420もまた参照のこと)。精神病を有する個体は、精神病を有さない個体よりもStroop試験において有意により低いスコアを有する。
精神医学的状態(例えば、産後精神病)は、心理学または精神医学の分野において周知かつ受け入れられた多くの試験または判定基準のいずれかを使用してさらに診断ならびに評価され得る。
精神病障害(例えば、産後精神病)の特徴(症状)および精神病障害の診断についての判定基準は、DSM−IV−TR,前出にさらに記載される。DSM−IV−TRは、任意の他の精神病障害として分類され得ない精神病に関する状態または疾患のような産後精神病を分類する。この苦痛は、いかなる特定の精神病障害のための判定基準も満たさない精神病症候学(すなわち、妄想、幻覚、支離滅裂な発話または支離滅裂なもしくは緊張した行動)を包含する。
開業医が、本発明の方法を実行するために個人が精神病かどうかを評価するための任意の判定基準または手段を使用し得る一方、DSM−IV−TRは、このような精神医学障害(精神病を含む)の診断、分類および処置のための一般的に受け入れられた基準を示す。本発明の方法において利用されるこのような判定基準のいくつかの例示的な例が、以下に示される。
精神病は、一般に日常生活の日常的要求に対処する能力を妨害する程度までヒトの精神能力、感情の応答、ならびに現実を認識し、連絡し、および他人と関係する能力の大きな歪曲または混乱を起こす、精神障害または状態として特徴付けられる。しばしば、妄想、または幻覚が存在する。
産後精神病において、妄想または幻覚の内容は、乳児を殺せという命令幻覚または乳児が取り付かれたという妄想を含む乳児殺しのテーマを有し得る。産後精神病はまた、躁病テーマを有する妄想または幻覚を含み得る。例えば、母親は、乳児が救世主であると説明する神の声が聞こえたかもしれないという妄想を有し得るか、あるいは妄想は被害妄想であり得る。さらに、産後精神病は、支離滅裂な発話(例えば、頻繁に脱線または散乱する)および支離滅裂なまたは緊張した行動を含む症状を含み得る。明白には、乳児についてのこのような妄想思考の存在は、乳児に対する危害の有意な増加に関連する。
産後精神病の診断は、上記の精神病の症状が、分娩後最初の9ヶ月以内に現れること、およびその女性が、精神病症状の発現が出産に関係する場合を除いて、以前の精神病エピソードの病歴を有さないことを必要とする。
(糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストを使用する精神病に関連する状態および疾患の処置)
(A.糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストとしてのステロイド性抗糖質コルチコイド)
ステロイド性糖質コルチコイドアンタゴニストは、本発明の種々の実施形態において産後精神病を処置するために投与される。ステロイド性抗糖質コルチコイドは、糖質コルチコイドアゴニストの基本構造(すなわち、ステロイド骨格の変化した形態)を改変することにより得られ得る。このコルチソルの構造は、種々の方法において改変され得る。糖質コルチコイドアンタゴニストを生成するためのコルチソルステロイド骨格の構造的な改変の二つの最も一般的な公知の分類としては、11−βヒドロキシ基の改変および17−β側鎖の改変が挙げられる(例えば、Lefebvre,J.Steroid Biochem.33:557−563,1989を参照のこと)。
ステロイド性糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの例としては、米国特許第5,929,058号に記載される通りのアントロゲン型ステロイド化合物、および米国特許第4,296,206号;同第4,386,085号;同第4,447,424号;同第4,477,445号;同第4,519,946号;同第4,540,686号;同第4,547,493号;同第4,634,695号;同第4,634,696号;同第4,753,932号;同第4,774,236号;同第4,808,710号;同第4,814,327号;同第4,829,060号;同第4,861,763号;同第4,912,097号;同第4,921,638号;同第4,943,566号;同第4,954,490号;同第4,978,657号;同第5,006,518号;同第5,043,332号;同第5,064,822号;同第5,073,548号;同第5,089,488号;同第5,089,635号;同第5,093,507号;同第5,095,010号;同第5,095,129号;同第5,132,299号;同第5,166,146号;同第5,166,199号;同第5,173,405号;同第5,276,023号;同第5,380,839号;同第5,348,729号;同第5,426,102号;同第5,439,913号;同第5,616,458号;同第5,696,127号;および同第6,303,591号に開示される化合物が挙げられる。このようなステロイド性糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストとしては、コルテキソロン、デキサメタゾン−オキセタノン、19−ノルデオキシコルチコステロン、19−ノルプロゲステロン、コルチソル−21−メシレート、デキサメタゾン−21−メシレート、11β−(4−ジメチルアミノエトキシフェニル)−17α−プロピニル−17β−ヒドロキシ−4,9エストラジエン−3−オン(RU009)、および17β−ヒドロキシ−17α−19−(4−メチルフェニル)アンドロスタ−4,9(11)−ジエン−3−オン(RU044)が挙げられる。
ステロイド性抗糖質コルチコイドの他の例が、Van Kampenら,(2002)Eur.J.Pharmacol. 457(2−3):207、WO 03/043640、EP 0 683 172B1、およびEP 0 763 541B1において開示され、これらの各々は、本明細書中で参考として援用される。EP 0 763 541B1およびHoybergら,Int’l J.of Neuro−psychopharmacology,5:補還.1,S148(2002)では、化合物(11β,17β)−11−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オン(ORG34517)を開示し、一つの実施形態においてこの化合物は、産後精神病の症状の改善を必要とする患者において産後精神病の症状を改善するための有効量を投与される。
(1.11−βヒドロキシ基の除去または置換)
11−βヒドロキシ基の除去または置換を包含する改変されたステロイド骨格を有する糖質コルチコイドアゴニストは、本発明の一つの実施形態において投与される。この分類としては、天然の抗糖質コルチコイド(コルテキソロン誘導体、プロゲステロン誘導体およびテストステロン誘導体)、および合成組成物(例えば、ミフェプリストン(Lefebvreら,前出)が挙げられる。これらの化合物が、プロゲステロンレセプター(PR)結合活性を欠いていること(Agarwal,FEBS 217:221−226,1987)から、本発明の好ましい実施形態は、全ての11−β−アリールステロイド骨格誘導体を含む。別の好ましい実施形態は、11−βフェニル−アミノジメチルステロイド骨格誘導体(すなわち、ミフェプリストン)を含み、この誘導体は、有効な抗糖質コルチコイド剤および抗プロゲステロン剤の両方である。これらの組成物は、可逆的に結合したステロイドレセプターアンタゴニストとして作用する。例えば、11−βフェニル−アミノジメチルステロイドへ結合する場合、ステロイドレセプターは、その天然のリガンド(例えば、糖質コルチコイドレセプターの場合におけるコルチソル)(Cadepond,1997,前出)へ結合し得ない高次構造で維持される。
合成11−βフェニル−アミノジメチルステロイドとしては、RU486として公知のミフェプリストン、または17−β−ヒドロキシ−11−β−(4−ジメチル−アミノフェニル)17−α−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オン)が挙げられる。ミフェプリストンは、プロゲステロンレセプターと糖質コルチコイド(糖質コルチコイドレセプター)レセプターの両方の強力なアンタゴニストであることが示されている。糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの効果を有することが示された別の11−βフェニル−アミノジメチルステロイドとしては、RU009(RU39.009)、11−β−(4−ジメチル−アミノエトキシフェニル)−17−α−(プロピニル−17β−ヒドロキシ−4,9−エストラジエン−3−オン)が挙げられる(Bocquel,J.Steroid Biochem.Molec.Biol.45:205−215,1993を参照のこと)。RU486に関連する別の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、RU044(RU43.044)17−β−ヒドロキシ−17−α−19−(4−メチル−フェニル)−(アンドロスタ−4,9(11)−ジエン−3−オン)(Bocquel,1993,前出)である。Teutsch,Steroids 38:651−665,1981;米国特許4,386,085号および同第4,912,097号も参照のこと)。
一つの実施形態は、不可逆性の抗糖質コルチコイドである基本的な糖質コルチコイドのステロイド構造を含有する組成物を含む。このような化合物としては、コルチソルのα−ケト−メタンスルホン酸誘導体(コルチソル−21−メシレート(4−プレグネン−11−β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホネートおよびデキサメタゾン−21−メシレート(16−メチル−9α−フルオロ−1,4−プレグナジエン−11β,17−α,21−トリオール−3,20−ジオン−21−メタン−スルホネート)を含む)が挙げられる。Simons,J.Steroid Biochem.24:25−32,1986;Mercier,J.Steroid Biochem.25:11−20,1986;米国特許第4,296,206号を参照のこと。
(2.17−β側鎖基の改変)
17−β側鎖の種々の構造的改変により得られ得るステロイド性抗糖質コルチコイドはまた、本発明の方法において使用され得る。この分類としては、合成抗糖質コルチコイド(例えば、デキサメタゾン−オキセタノン、種々の17,21−アセトニド誘導体およびデキサメタゾンの17−β−カルボキサミド誘導体)が挙げられる(Lefebvre,1989,前出;Rousseau,Nature 279;158−160,1979)。
(3.他のステロイド骨格の改変)
本発明の種々の実施形態において使用される糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、糖質コルチコイドレセプター−アゴニスト相互作用から生じる生物学的応答をもたらす任意のステロイド骨格の改変を含む。ステロイド骨格アンタゴニストは、コルチソルの任意の天然の、または合成のバリエーション(例えば、C−19メチル基を失った副腎ステロイド(例えば、19−ノルデオキシコルチコステロンおよび19−ノルプロゲルテロン)(Wynne,Endocrinology 107:1278−1280,1980))であり得る。
一般に、11−β側鎖置換基、および特にその置換基の大きさは、ステロイド性抗糖質コルチコイド活性の内容を決定するのに重要な役割を果たし得る。ステロイド骨格のA環における置換基もまた、重要であり得る。17−ヒドロキシプロペニル側鎖は、一般に、化合物を含有する17−プロピニル側鎖と比較して抗糖質コルチコイド活性を低下させる。
当該分野で公知かつ本発明の実施に適切なさらなる糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストとしては、21−ヒドロキシ−6,19−オキシドプロゲステロン(Vicent,Mol.Pharm.52:749−753,1997を参照のこと),Org31710(Mizutani,J Steroid Biochem Mol Biol 42(7):695−704,1992を参照のこと)、RU43044,RU40555(Kim,J Steroid Biochem Mol Biol.67(3):213−22,1998を参照のこと)、RU28362およびZK98299が挙げられる。
(B.アンタゴニストとしての非ステロイド性抗糖質コルチコイド)
非ステロイド性糖質コルチコイドアンタゴニストはまた、被験体において産後精神病を処置するために本発明の方法において使用される。これらは、合成模倣物(synthetic mimetics)およびタンパク質のアナログ(部分ペプチド分子実体、偽性のペプチド分子実体、および非ペプチド分子実体を含む)を含む。例えば、本発明における有用なオリゴマ−のペプチド模倣物としては、(α−β−不飽和)ペプチドスルホンアミド、N−置換グリシン誘導体、オリゴカルバミン酸、オリゴ尿素ペプチド模倣物、ヒドラジノペプチド、オリゴスルホンなどが挙げられる(例えば、Amour,Int.J.Pept.Protein Res.43:297−304,1994;de Bont,Bioorganic & Medicinal Chem.4:667−672,1996を参照のこと)。合成分子の巨大なライブラリの作製および共スクリーニングは、コンビナトリアル化学における周知の技術を使用して実施され得る(例えば、van Breemen,Anal Chem 69:2159−2164,1997;およびLam,Anticancer Drug Des 12:145−167,1997を参照のこと)。糖質コルチコイドレセプターに特異的なペプチド模倣物の設計は、コンビナトリアル化学(コンビナトリアルライブラリ)スクリーニングアプローチと組み合せたコンピュータプログラムを使用して設計され得る(Murray,J.of Computer−Aided Molec.Design 9:381−395,1995;Bohm,J.of Computer−Aided Molec.Design 10:265−272,1996)。このような「理論的な薬物設計」は、シクロ異性体、レトロ−転化異性体、レトロ異性体などを含むペプチド異性体およびペプチド配座異性体を開発するのを補助し得る(Chorev,TibTech 13:438−445,1995において議論される)。
非ステロイド性糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの例としては、クロトリマゾール;N(トリフェニルメチル)イミダゾール;N−([2−フルオロ−9−フェニル]フルオレニル)イミダゾール;N−([2−ピリジル]ジフェニルメチル)イミダゾール;N(2[4,4’,4’’−トリクロロトリチル]オキシエチル)モルホリン;1−(2[4,4’,4’’−トリクロロトリチル]オキシエチル)−4(2ヒドロキシエチル)ピペラジンジマレアート;N−([4,4’,4’’]−トリクロロトリチル]イミダゾール;9−(3−メルカプト−1,2,4トリアゾリル)−9−フェニル−2,7−ジフルオロフルオレノン;1−(2−クロロトリチル)−3,5−ジメチルピラゾール;4(モルホリノメチル)−A−(2−ピリジル)ベンズヒドロール;5−(5−メトキシ−2−(N−メチルカルバモイル)−フェニル)ジベンゾスベロール;N−(2−クロロトリチル)−L−プロリノールアセテート;1−(2−クロロトリチル)−2−メチルイミダゾール;1(2クロロトリチル)−1,2,4−トリアゾール;1,S−ビス(4,4’,4’’−トリクロロトリチル)−1,2,4−トリアゾール−3−チオール;およびN((2,6ジクロロ−3メチルフェニル)ジフェニル)メチルイミダゾール
(米国特許第6,051,573号を参照のこと);米国特許5,696,127号および同第6,570,020号に開示された糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト化合物;米国特許出願20020077356において開示されたGRアンタゴニスト化合物、Bradleyら,J.Med.Chem.45,2417−2424(2002)において開示された糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト(例えば、4α(S)−ベンジル−2(R)−クロロエチニル−1,2,3,4,4α,9,10,10α(R)オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオール(「CP394531」)および4α(S)−ベンジル−2(R)−プロップ−1−イニル−1,2,3,4,4α,9,10,10α(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオール(「CP409069」);Hoybergら,Int’l J.of Neuro−psychopharmacology,5:補還1.S148(2002)において開示された化合物(11β,17β)−11−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オン(「ORG34517」);高親和性、ステロイドレセプターについての高い選択的アンタゴニスト(例えば、6置換−1,2−ジヒドロ−N−保護化キノリン)である非ステロイド性化合物を記載するPCT国際出願番号 WO96/19458号において開示される化合物;およびいくつかのκオピオイドリガンド(例えば、κオピオイド化合物ダイノルフィン−1,13ジアミド、U50,488(trans−(1R,2R)−3,4−ジクロロ−N−メチル−N−[2−(1−ピロリジニル)シクロヘキシル]ベンゼンアセトアミド)、ブレマゾシンおよびエチルケトシクラゾシン);およびEvansら,Endocrin.,141:2294−2300(2000)において開示されるような、非特異的オピオイドレセプターリガンド、ナロキソンが挙げられる。
(C.特異的な糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの同定)
任意の特異的な糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストが、被験体において産後精神病を処置するために使用され得ることから、上記の化合物および組成物に加えて、さらなる有用な糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストが、当業者により決定され得る。このような種々の日常的な、周知の方法が使用され得、科学文献および特許文献に記載される。これらは、さらなる糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの同定のためのインビトロアッセイおよびインビボアッセイを含む。2、3の例示的な実施例が、以下に記載される。
本発明の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストを同定するために使用され得る一つのアッセイは、Granner,Meth.Enzymol.15:633,1970の方法に従って、チロシンアミノトランスフェラーゼ活性に対する推定上の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの効果を測定する。この分析は、ラット肝癌細胞(RHC)の培養における肝臓の酵素チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性の測定に基づく。TATは、チロシンの代謝における第1の工程を触媒し、肝臓中および肝癌細胞中の両方で糖質コルチコイド(コルチソル)により誘導される。この活性は、細胞抽出物において容易に測定される。TATは、チロシンのアミノ基を2−オキソグルタル酸に変換する。P−ヒドロキシフェニルピルビン酸もまた形成される。このP−ヒドロキシフェニルピルビン酸は、アルカリ溶液中においてより安定なp−ヒドロキシベンズアルデヒドに変換され得、そして331nmでの吸光度により定量され得る。推定上の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、コルチソルとともに、インビボ、またはエキソビボで、肝臓全体、または肝癌細胞、または細胞抽出物に共投与される。化合物の投与が、コントロール(すなわち、コルチソルのみまたは糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストが添加された)と比較して、誘導されたTAT活性量を減少する場合、化合物は糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストとして同定される(Shirwany,Biochem.Biophys.Acta 886:162−168,1986もまた参照のこと)。
TATアッセイに加えて、本発明の方法において利用される組成物を同定するために使用され得る、多くのアッセイのさらなる例は、インビボにおける糖質コルチコイドの活性に基づくアッセイである。例えば、糖質コルチコイドにより刺激される細胞において、H−チミジンのDNAへの取り込みを阻害する推定上の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの能力を評価するアッセイが、使用され得る。あるいは、推定上の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、肝臓癌組織培養物の糖質コルチコイドレセプターに対する結合についてH−デキサメタゾンと競合(complete)し得る(例えば、Choiら,Steroids 57:313−318,1992を参照のこと)。別の例として、H−デキサメタゾン−糖質コルチコイドレセプター複合体の核結合をブロックするために、推定上の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの能力が、使用され得る(Alexandrovaら,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.41:723−725,1992)。推定上の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストをさらに同定するために、レセプター結合の動力学によって、糖質コルチコイドアゴニストと糖質コルチコイドアンタゴニストとの間を区別することが可能な動力学的アッセイもまた、使用され得る(Jones,Biochem J.204:721−729,1982に記載される)。
別の例示的な例において、Daune,Molec.Pharm.13:948−955,1977;および米国特許第4,386,085号により記載されるアッセイが、抗糖質コルチコイド活性を同定するために使用され得る。手短にいえば、副腎を摘出されたラットの胸腺細胞を、デキサメタゾンを含有する栄養培地において様々な濃度の試験化合物(推定上の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト)とともにインキュベートする。H−ウリジンを細胞培養物に添加し、この培養物をさらにインキュベートし、そしてポリヌクレオチドへの放射標識の取り込みの程度を測定する。糖質コルチコイドアゴニストは、取り込まれる3H−ウリジンの量を減少させる。従って、糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、この効果を妨害する。
本発明の方法において利用され得るさらなる化合物、ならびにそのような化合物を同定および作製する方法については、米国特許第4,296,206号(上を参照のこと);同第4,386,085号(上を参照のこと);同第4,447,424号;同第4,477,445号;同第4,519,946号;同第4,540,686号;同第4,547,493号;同第4,634,695号;同第4,634,696号;同第4,753,932号;同第4,774,236号;同第4,808,710号;同第4,814,327号;同第4,829,060号;同第4,861,763号;同第4.912,097号;同第4,921,638号;同第4,943,566号;同第4,954,490号;同第4,978,657号;同第5,006,518号;同第5,043,332号;同第5,064,822号;同第5,073,548号;同第5,089,488号;同第5,089,635号;同第5,093,507号;同第5,095,010号;同第5,095,129号;同第5,132,299号;同第5,166,146号;同第5,166,199号;同第5,173,405号;同第5,276,023号;同第5,380,839号;同第5,348,729号;同第5,426,102号;同第5,439,913号;および同第5,616,458号;ならびにWO 96/19458(これは、ステロイドレセプターについての高親和性、高選択的な調節因子(アンタゴニスト)である、非ステロイド性化合物(例えば、6置換1,2−ジヒドロN−1保護化キノリン)について記載する)を参照のこと。
MRと相対的な糖質コルチコイドレセプターに対するアンタゴニストの特異性は、当業者に公知の種々のアッセイを使用して測定され得る。例えば、特異的なアンタゴニストは、MRと比較した、アンタゴニストの糖質コルチコイドレセプターへの結合能を測定することにより同定され得る(例えば、米国特許第5,606,021号;同第5,696,127号;同第5,215,916号;同第5,071,773号を参照のこと)。このような分析は、直接的な結合アッセイか、あるいは、公知のアンタゴニストの存在下において精製した糖質コルチコイドレセプターまたは精製したMRへの競合的な結合を評価することによるかのどちらかを使用して実施され得る。例示的アッセイにおいて、糖質コルチコイドレセプターまたは鉱質コルチコイドレセプターを高レベルで安定して発現する細胞(例えば、米国特許第5,606,021号を参照のこと)が、精製レセプター源として使用される。次いで、このレセプターに対するアンタゴニストの親和性が、直接的に測定される。次いで、MRと相対的に、糖質コルチコイドレセプターに対して、少なくとも100倍より高い親和性(しばしば、1000倍)を示すこれらのアンタゴニストは、本発明の方法における用途のために選択される。
糖質コルチコイドレセプター特異的なアンタゴニストはまた、糖質コルチコイドレセプター媒介活性を阻害するが、MR媒介活性を阻害しない能力を有する化合物として規定され得る。このような糖質コルチコイドレセプター特異的アンタゴニストを同定する一つの方法は、アンタゴニストのトランスフェクションアッセイを使用してレポーター構築物の活性化を防止する能力を評価することである(例えば、Bocquelら,J.Steroid Biochem Molec.Biol.45:205−215,1993;米国特許第5,606,021号、同第5,929,058号を参照のこと)。例示的なトランスフェクションアッセイにおいて、レセプターをコードする発現プラスミドおよびレセプター特異的な調節エレメントに連結するレポーター遺伝子を含有するレポータープラスミドは、適切なレセプターがない宿主細胞へ共トランスフェクトされる。次いで、トランスフェクトした宿主細胞は、レポータープラスミドのホルモン応答性プロモーター/エンハンサーエレメントを活性化可能なホルモン(例えば、コルチゾールまたはそのアナログ)の存在下または非存在下において培養される。次にトランスフェクトされ、培養された宿主細胞に、そのレポーター遺伝子配列の生成物の誘導(すなわち、その存在)についてモニタリングする。最終的に、(発現プラスミドにおけるレセプターDNA配列によりコードされ、形質転換され、培養された宿主細胞において生成された)ホルモンレセプタータンパク質の発現および/またはステロイド結合能を、アンタゴニストの存在下および非存在下におけるレポーター遺伝子の活性を決定することにより測定する。化合物のアンタゴニストの活性は、糖質コルチコイドレセプターおよびMRレセプターの公知のアンタゴニストと比較して決定され得る(例えば、米国特許第5,696,127号を参照のこと)。次いで、効力を、参照アンタゴニスト化合物に対する各々の化合物について観察される最大応答のパーセントとして報告する。糖質コルチコイドレセプター特異的なアンタゴニストは、MRと相対的に糖質コルチコイドレセプターへの活性の少なくとも100倍(しばしば、1000倍以上)を示すと考えられる。
(薬学的組成物としての糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト)
本発明の方法において使用される糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、当該分野において公知の任意の手段(例えば、非経口的、局所的、経口的または局所投与(例えば、エアゾルによる)または経皮的)により投与され得る。本発明の方法は、予防的処置および/または治療的処置を提供する。薬学的処方物としての糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、状態または疾患、ならびに産後精神病の程度、各患者の全身の医学的状態、結果として生じる好ましい投与方法などに依存して、種々の単位投薬形態において投与され得る。処方および投与についての技術の詳細は、化学技術文献および特許文献に十分に記載されるており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Publishing Co,Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照のこと。本発明の方法の実施に適切な糖質コルチコイドブロッカーの治療有効量は、代表的に約0.5mg/kg〜約25mg/kgの範囲である。当業者は、過度の実験をすることなく、当該分野の技術および本開示を考慮して、本発明の実施のために特異的糖質コルチコイドブロッカー化合物の治療有効量を決定することが可能である。例えば、特異的糖質コルチコイドブロッカーは、より高い用量またはより低い用量でより効果的であり得る。本明細書中に記載される方法を使用して患者を評価することにより、当業者は、患者が処置に応答するかどうかを判断することが可能であり、従って投薬レベルをどのように調節するかを知っている。
一般に、糖質コルチコイドブロッカー化合物は、治療薬物の投与について当該分野で公知の任意の方法により薬学的組成物として投与され得る。組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、半固形物、粉末、持続性放出処方物、溶液、懸濁液、エリキシル、エアゾールまたは任意の他の適切な組成物の形態を取り得;そして、少なくとも一つの薬学的に受容可能な賦形剤と組み合せて本発明の少なくとも一つの化合物を含有する。適切な賦形剤は、当業者に周知であり、そして、これらの賦形剤およびこの組成物を処方する方法は、Alfonso AR:Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,Mack Publishing Company,Easton PA,1985のような標準的な参考文献において見出され得る。適切な液体キャリア(特に、注射可能溶液)としては、水、生理食塩水溶液、デキストロース水溶液、およびグリコールが挙げられる。
本発明の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適切な賦形剤との混和剤における糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストを含有する。このような賦形剤としては、懸濁剤(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴム、アカシアゴム)、および分散剤または湿潤剤(例えば、自然存在するリン脂質(例えば、レシチン)、脂肪酸とのアルキレン酸化物の縮合物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、長鎖脂肪族アルコールとのエチレン酸化物の縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとのエチレン酸化物の縮合物(例えば、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、または脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとのエチレン酸化物の縮合体(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が挙げられる。この水性懸濁液はまた、一つ以上の保存剤(例えば、エチルp−ヒドロキシ安息香酸またはn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸)、一つ以上の着色剤、一つ以上の芳香剤および一つ以上の甘味剤(例えば、スクロース、人工甘味料またはサッカリン)を含有し得る。処方物は、浸透圧について調整され得る。
油性懸濁液は、糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストを、植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、ココナッツ油)、または鉱油(例えば、流動パラフィン);もしくはこれらの混合物中に懸濁することにより、処方され得る。この油性懸濁液は、濃化剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコール)を含有し得る。甘味剤は、口当たりの良い経口調製物(例えば、グリセロール、ソルビトールまたはスクロース)を提供するために添加され得る。これらの処方物は、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)の添加により保存され得る。注射可能油性ビヒクルの例としては、Minto,J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93−102,1997を参照のこと。本発明の薬学的処方物はまた、水中油エマルジョンの形態で存在し得る。この油相は、上記の植物油もしくは鉱油またはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤としては、天然存在するゴム(例えば、アカシアゴムおよびトラガントガム)、天然に存在するリン脂質(例えば、大豆レシチン)、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されたエステルまたは部分エステル(例えば、モノオレイン酸ソルビタン)、これらの部分エステルのエチレン酸化物との縮合体(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が挙げられる。このエマルジョンはまた、シロップおよびエリキシルの処方物中に甘味剤および芳香剤を含有し得る。このような処方物はまた、粘滑剤、防腐剤、または着色剤を含有し得る。
糖質コルチコイドブロッカーの薬学的処方物は、医薬品の製造分野で公知の任意の方法に従って調製され得る。このような薬物は、甘味剤、芳香剤、着色剤および防腐剤を含有し得る。任意の糖質コルチコイドブロッカー処方物は、製造に適切である非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤と混合され得る。
代表的には、本発明の実施における使用に適切な糖質コルチコイドブロッカー化合物は、経口的に投与される。この組成物中の本発明の化合物の量は、組成物の型、単位投薬量の大きさ、賦形剤の種類および当業者に周知の他の要因に依存して広く変化し得る。一般に、最終組成物は、0.000001重量%(%w)〜10%wの糖質コルチコイドブロッカー化合物を含み得、好ましくは、0.00001%w〜1%wの糖質コルチコイドブロッカー化合物を含み得、残りが賦形剤である。例えば、糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストであるミフェプリストンは、錠剤の形態において、約0.5mg/kg〜25mg/kgの間の範囲内の投薬量、より好ましくは約0.75mg/kg〜15mg/kgの範囲内の投薬量、最も好ましくは約10mg/kgの投薬量で経口的に与えられる。
経口投与についての薬学的処方物は、経口投与に適切な投薬量において当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアを使用して処方され得る。このようなキャリアは、薬学的処方物が、患者による消化のために適切な錠剤、丸薬、散剤、糖衣錠、カプセル、液体、舐剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などのような、単位投薬形態において処方されることを可能にする。経口用途のための薬学的調製物は、糖質コルチコイドブロッカー化合物を固形賦形剤と組み合せ、生じた混合物を必要に応じて攪拌し、所望の場合、適切なさらなる化合物を添加した後、顆粒剤の混合物を処理し、錠剤および糖衣錠の核を得ることによって得られ得る。適切な固形の賦形剤は、糖質またはタンパク質賦形剤であり、そして適切な固形の賦形剤としては、糖(ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む);コーン、小麦、コメ、ジャガイモまたは他の植物由来のデンプン;セルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはナトリウムカルボキシメチルセルロース);ゴム(アラビアおよびトラガントを含む);ならびにタンパク質(例えば、ゼラチンおよびコラーゲン)が挙げられるが、これらに限定されない。所望の場合、崩壊剤または可溶化剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))が添加され得る。
本発明の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストはまた、薬物の直腸投与のための坐剤の形態において投与され得る。これらの処方物は、薬物を、常温で固体であるが直腸の温度で液体である適切な無刺激の賦形剤と混合することにより調製され得、従って直腸内で溶解し、この薬物を放出する。このような物質としては、ココアバターおよびポリエチレングリコールがある。
本発明の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストとしてはまた、坐剤、吸入剤、散剤およびエアゾール処方物を含む鼻内経路、眼内経路、膣内経路および直腸内経路により投与され得る(ステロイド吸入剤の例について、Rohatagi,J.Clin.Pharmacol.35:1187−1193,1995;Tjwa,Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107−111.1995を参照のこと)。
本発明の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストは、経皮的、局所的な経路により送達され得、塗布棒、溶液、懸濁液、乳化剤、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、塗布剤、散剤、およびエアゾールとして処方され得る。
本発明の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストはまた、体内でゆっくりと放出するための微粒子として送達され得る。例えば、微粒子は、ゆっくりと皮下放出する薬物(例えば、ミフェプリストン)含有微粒子の皮内注射を介して(Rao,J.Biomater Sci.Polym.第7編:623−645,1995を参照のこと);生分解性ゲル処方物および注射可能ゲル処方物として(例えば、Gao Pharm.Res.12:857−863,1995を参照のこと);または経口投与のための微粒子(例えば、Eyles,J.Pharm.Pharmacol.49:669−674,1997)として投与され得る。経皮経路および皮内経路の両方により、数週間または数ヶ月間、一定した送達が与えられる。
本発明の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの薬学的処方物が、塩として提供され得、多くの酸(塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などが含まれるが、これらに限定されない)により形成され得る。塩は、水性または対応する遊離塩基形態である他のプロトン性溶媒においてより可溶性である傾向がある。他の場合において、好ましい調製物は、pH4.5〜5.5の範囲で1mM〜50mMのヒスチジン、0.1%〜2%スクロース、2%〜7%マンニトール中の凍結乾燥した散剤であり得、これは使用前に緩衝液と合わされる。
別の実施形態において、本発明の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト処方物は、非経口投与(例えば、静脈内(IV)投与)について有用である。投与のための処方物は、薬学的に受容可能なキャリア中に溶解した糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト(例えば、ミフェプリストン)の溶液を一般に含有する。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒では、水、およびRinger’s溶液、等張性の塩素酸ナトリウム、がある。さらに、滅菌した不揮発性油は、溶媒、または懸濁媒体として従来通りに使用され得る。この目的のために任意の温和な不揮発性油が、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含め、使用され得る。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)は、注射可能物の調製において同様に使用され得る。これらの溶液は、滅菌状態であり、一般に望ましくない物質を含まない。これらの処方物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌され得る。これらの処方物は、生理学的状態に近づけるために、必要とされるような薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pHの調整剤および緩衝剤、毒性の調整剤(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど))を含有し得る。これらの処方物中の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの濃度は、広範に変化し得、そして選択される特定の投与の形態および患者の必要性に従って、流体量、粘度、体重などに基づいて最初に選択される。IV投与について、処方物は、滅菌した注射可能な調製物(例えば、滅菌した注射可能な水性懸濁液または油性懸濁液)であり得る。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤ならびに懸濁剤を使用した公知の技術に従って、処方され得る。この滅菌した注射可能調製物はまた、非毒性の、非経口の受容可能な希釈剤または溶媒(例えば、1,3−ブタンジオールの溶液)中の滅菌した注射可能な溶液または懸濁液であり得る。
別の実施形態において、本発明の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト処方物が、細胞膜と融合するかあるいはエンドサイトーシスを受けるリポソームの使用により(すなわち、リポソームに結合したリガンドの使用により送達され得るか、またはオリゴヌクレオチドへエンドサイトーシスを生じる細胞の表面の膜タンパク質レセプターへ結合する直接結合され得る。リポソーム、(特に、そのリポソームの表面が、標的細胞について特異的なリガンドを有するかまたは他の点では特定の組織に優先的に指向される、リポソーム)を使用することにより、インビボで、標的細胞への糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの送達に焦点を合わせ得る(例えば、Al−Muhammed,J.Microencapsul.13:293−306,1996;Chonn,Curr.Opin.Biotechnol.6:698−708,1995;Ostro,Am.J.Hosp.Pharm.46:1576−1587,1989を参照のこと)。
本発明の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストを含む医薬品は、受容可能なキャリア中に処方された後、適切な容器内に配置され得、そして指示された状態の処置のために標識され得る。糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの投与のためにこのような標識は、例えば、投与の量、頻度および方法に関する説明書を含み得る。一つの実施形態において、本発明は、被験体における産後精神病を処置するためのキットを提供し、このキットは、糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストおよび糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの適応症、投与量、および投与スケジュールを教示する指示書を包含する。
(糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストのための投薬レジメンの決定)
本発明の方法は、被験体における産後精神病を処置する。これを達成するのに適切な糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの量は、「治療有効用量」として規定される。投薬スケジュールおよびこの使用についての有効な量(すなわち、「投薬レジメン」)は、精神病の重篤度、患者の身体状態、年齢などを含む種々の要因に依存する。患者についての投薬レジメンの計算において、投与の形態もまた、考慮される。
投薬レジメンはまた、当該分野で周知の薬物動態学的パラメ−タ(すなわち、糖質コルチコイドレセプターアンゴニストの吸収の速度、生物学的利用能、代謝、クリアランスなど)を考慮に入れる(例えば、Hidalgo−Aragones,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.58:611−617,1996;Groning,Pharmazie 51:337−341,1996;Fotherby,Contraception 54:59−69,1996;Johnson,J.Pharm.Sci.84:1144−1146,1995;Rohatagi,Pharmazie 50:610−613,1995;Brophy,Eur.J.Clin.Pharmacol.24:103−108,1983;最新のRemington’s,前出を参照のこと)。例えば、ある研究において、0.5%未満のミフェプリストンの日用量が、尿中に排出された;この薬物は広範に循環アルブミンと結合した(Kawai,前出,1989を参照のこと)。この技術水準により、臨床家が各々の固有の患者、糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストおよび処置される疾患または状態についての投薬レジメンを決定することが可能である。図示する例として、ミフェプリストンについて以下に提供されるガイドラインが、本発明の方法を実施する場合に投与される任意の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの投薬レジメン(すなわち、投薬スケジュール、および投薬量のレベル)を決定するための指針として使用され得る。
糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト処方物の単一または複数の投与は、患者により必要とされかつ耐性であるような投薬量および頻度に依存して投与され得る。この処方物は、被験体における産後精神病を有効に処置するための十分な量の活性剤(すなわち、ミフェプリストン)を提供するべきである。例えば、抗糖質コルチコイド(例えば、ミフェプリストンまたはORG34517)の経口投与のための代表的な好ましい薬学的処方物は、一日当たり患者一人当りの体重1kg当たり約5mg〜15mg、より好ましくは一日当たり患者一人当りの体重1kg当たり約8mg〜約12mgの間、最も好ましくは一日当たり患者一人当りの体重1kg当たり約10mgであるが、一日当たり患者一人当りの体重1kg当たり約0.5mg〜25mgの間の投薬量が、本発明の実施において使用され得る。経口投与への投与、血流への投与、体腔への投与、または組織の管腔への投与とは対照的に、特に、薬物が、解剖学上隔離された部位(例えば、大脳の脊髄液(CSF)空間)へ投与される場合、より低い投薬量が使用され得る。実質的により高い投薬量が、局所的な投与において使用され得る。非経口的に投与可能な糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト処方物を調製するための実際の方法は、当業者に対して公知であるか、または明白であり、Remington’s,前出のような刊行物においてより詳細に記載される(Nieman,In「Receptor Mediated Antisteroid Action,」Agarwalら,De編,Gruyter,New York,1987を参照のこと)。
以下の実施例は、例示のために提供され、本願発明を限定するものではない。
(実施例1:ミフェプリストンを使用した産後精神病の処置)
以下の実施例は本発明の方法を例証する。
精神病疾患の以前の病歴を有さない32歳の女性が、彼女の最初の子供を出産した後、2ヶ月で妄想および幻覚を経験する。この女性は(上記のような)産後精神病と診断され、精神医学病院へ入院する。この女性の産後精神病の診断は、2人の精神科医により確認され、彼女は、9日間入院し、病院滞在を厳密に観察される。
この女性は、糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト(ミフェプリストン)で処置され、比較的に短期間にわたって毎日一回体重1kg当り約15mgの投薬量で投与される。よって、約4日間にわたる、一日当り800mgの範囲におけるミフェプリストンの毎日の投薬は、産後精神病についての有効な処置として使用される。
彼女の病院滞在および処置の過程の間、この女性の経過は、「短期精神病評価スケール(BPRS)」試験(Overall(1962)Psychol.Rep.10:799)の適用によりモニタリングされる。BPRSの結果は、「Likert スケール」の「存在しない」から「非常に重篤」までの7点に従って評点付けられ、それにより全体的な病理を反映した定量的なスコアを提供する。従って、BPRSは、本発明の方法を使用した処置から女性の全体的な利益の指標を提供する。BRPS 評価スケールは、ミフェプリストンの投与の前および後の両方で提供される。
BPRS試験と組み合せて、この女性の診断、分類または処置の成功はWallach(1980)J.Gerontol.35:371−375に記載されるような試験、またはStroopの色および語句試験を使用して客観的に評点付けられる。しかし、当該分野で公知の任意の試験は、彼女の評価について等しく有効である。
短期精神評価スケール(BPRS)(Overall,J.E.およびGorham,D.R(1962)前出)は、1日1回、3回、5回、7回および9回実施される。他の試験(例えば、「Wallach認知試験」)は、1日1回、5回および9回実施される。
この女性は、4日間にわたり1日当り1回800mgのミフェプリストンを経口的に提供される。
病院滞在の終了時に、この女性の短期精神評価スケール(BPRS)スコアは、約40.5〜約29.5に減少することが予想される。Wallach認知試験の結果が評価される場合、この女性は、産後精神病の改善を示す。実際には、試験において実際に現される単語と誤認しされるまぎらわしい単語の数は、処置後25%〜100%の間に減少することが予想される。
この実施例は、一日当り約800mgの範囲において、比較的短期間−−約4日間−にわたって毎日1回提供されるミフェプリストンの投薬の仕方が、産後精神病についての有効かつ安全な処置を実現すると予想されることを例証する。
本明細書中に記載される実施例および実施形態は、図示する目的のみであり、これらに鑑みて種々の改変または変化が、当業者に示唆され、そして本出願の精神および範囲ならびに添付された特許請求の範囲内に含まれることが理解されるべきである。

Claims (14)

  1. 産後精神病の症状の改善を必要とする患者において該産後精神病の症状を改善する方法であって、該方法は該産後精神病の症状を改善するのに有効な量の糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストを投与する工程を包含し、ただし、最初の精神病症状は、出産の9ヶ月以内に起こり、該患者は、出産により誘発されないいかなる精神病状態も患っておらず、そして該患者は、分娩前に精神病に患っていなかった、方法。
  2. 前記最初の精神病症状が、出産の8週間以内に起こる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストが、ステロイド骨格の11−β位において少なくとも一つのフェニル含有部分を有する該ステロイド骨格を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記ステロイド骨格の11−β位における前記フェニル含有部分が、ジメチルアミノフェニル部分である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストがミフェプリストンを含む、請求項4に記載の方法。
  6. 前記糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストが、11β−(4−ジメチルアミノエトキシフェニル)−17α−プロピニル−17β−ヒドロキシ−4,9エストラジエン−3−オンおよび17β−ヒドロキシ−17α−19−(4−メチルフェニル)アンドロスタ−4,9(11)−ジエン−3−オンからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
  7. 前記糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストが、4α(S)−ベンジル−2(R)−プロプ−1−イニル−1,2,3,4,4α,9,10,10α(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオールおよび4α(S)−ベンジル−2(R)−クロロエチニル−1,2,3,4,4α,9,10,10α(R)−オクタヒドロ−フェナントレン−2,7−ジオールからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストが、(11β,17β)−11−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オンである、請求項1に記載の方法。
  9. 前記投与が1日あたり1回である、請求項1に記載の方法。
  10. 投与形態が経口である、請求項1に記載の方法。
  11. 投与形態が経皮適用によるか、霧状化懸濁物によるか、またはエアゾールスプレーによる、請求項1に記載の方法。
  12. ヒトにおいて産後精神病を処置するためのキットであって、該キットは:
    (i)特異的糖質コルチコイドレセプターアンタゴニスト;ならびに、
    (ii)産後精神病を有する患者への該糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストの適応症、投与量、および投与スケジュールを教示する指示書;
    を備える、キット。
  13. 前記糖質コルチコイドレセプターアンタゴニストがミフェプリストンである、請求項12に記載のキット。
  14. 前記ミフェプリストンが錠剤形態にある、請求項12に記載のキット。
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