JP2006338795A - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 非磁性支持体の少なくとも一方の面に、水蒸気遮断層および磁性層をこの順に設け、前記非磁性支持体の長手方向および幅方向のヤング率がともに7GPa以上であり、前記磁性層が、平均板径5〜40nmの強磁性六方晶フェライト粉末もしくは平均長軸長20〜100nmの強磁性金属粉末と結合剤とを含み、かつ、前記非磁性支持体および水蒸気遮断層からなる積層体の水蒸気透過率が0.001〜0.3g/m2・24時間の範囲にある磁気記録媒体。
【選択図】 なし
Description
近年、磁気抵抗(MR)を動作原理とする再生ヘッドが提案され、ハードディスク等で使用され始め、また、特許文献1(特開平8−227517号公報)には磁気テープへの応用が提案されている。MRヘッドは誘導型磁気ヘッドに比較して数倍の再生出力が得られ、かつ誘導コイルを用いないため、インピーダンスノイズ等の機器ノイズが大幅に低下し、磁気記録媒体のノイズを下げることで大きなSN比を得ることが可能になってきた。換言すれば従来機器ノイズに隠れていた磁気記録媒体ノイズを小さくすれば良好な記録再生が行え、高密度記録特性が飛躍的に向上できることになる。
すなわち、リニア記録方式を採用する磁気記録再生システムの記録・再生時には磁気ヘッドが磁気テープの幅方向に移動し、いずれかのトラックを選択しなければならないが、トラック幅が狭くなるに従い、磁気テープとヘッドとの相対位置を制御するために高い精度が必要になる。上述した様なMRヘッドおよび微粒子磁性体を使用しSN比を向上させ狭トラック化を実現しても、使用される環境の温湿度やドライブ内テンションの変動により磁気記録媒体が変形し、記録されたトラックを再生ヘッドが読み出せなくなる場合が生じるため媒体の寸度安定性もこれまで以上のものが要求される。このような高密度記録に対応する磁気記録媒体にあっては、安定な記録再生を維持するためには従来の媒体よりもさらに高度な寸度安定性、機械的強度が要求される。
また特許文献3(特開平8−297829号公報)には、高湿下での繰り返し走行などの厳しい条件下でも走行安定性、電磁変換特性の優れた磁気記録媒体を提供することを目的として、芳香族ポリアミドあるいは芳香族ポリイミドからなる支持体フィルムの少なくとも片面に磁性層を設けてなり、該支持体フィルムの湿度膨張係数βおよび水蒸気透過率がβ ≦100×10-6(1/RH%)、水蒸気透過率≦50(g/m2 /24hr/0.1mm)を満たす磁気記録媒体が提案されている。しかし、特許文献3の実施例で使用されているフィルムの水蒸気透過率は最も少ないものでも10(g/m2/24hr/0.1mm)あり、最近の高密度磁気記録媒体に使用するには不充分である。また、前記水蒸気透過率を達成するための手段としてフィルム製膜時の延伸倍率を高めることによっているが、この手段では水蒸気透過率を実施例に記載された値よりさらに下げることは実質的に不可能である。
1)非磁性支持体の少なくとも一方の面に、水蒸気遮断層および磁性層をこの順に設け、前記非磁性支持体の長手方向および幅方向のヤング率がともに7GPa以上であり、前記磁性層が、平均板径5〜40nmの強磁性六方晶フェライト粉末もしくは平均長軸長20〜100nmの強磁性金属粉末と結合剤とを含み、かつ、前記非磁性支持体および水蒸気遮断層からなる積層体の水蒸気透過率が0.001〜0.3g/m2・24時間の範囲にあることを特徴とする磁気記録媒体。
2)前記水蒸気遮断層が、金属材料を含む層または樹脂を含む層であることを特徴とする上記1)に記載の磁気記録媒体。
3)前記水蒸気遮断層が、金属材料を含む第1層と樹脂を含む第2層とを有する少なくとも2層以上から構成されることを特徴とする上記1)に記載の磁気記録媒体。
4)前記金属材料が金属酸化物であり、前記樹脂が質量平均分子量1000〜100000の高分子化合物であることを特徴とする上記2)または3)に記載の磁気記録媒体。
5)前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けたことを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
I.非磁性支持体
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては、例えば、二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキサゾール等を使用することができる。好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が挙げられる。これらの非磁性支持体は、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理等を行ってもよい。
本発明の非磁性支持体のヤング率は長手方向、幅方向ともに7GPa以上、好ましくは7.5〜11GPa、さらに好ましくは7.6〜10.8GPaであるが、長手方向、幅方向のヤング率はそれぞれ異なっていても良い。
非磁性支持体のヤング率(長手方向、幅方向)の調整は、未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させることにより可能である。延伸方法としては、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法を用いることができる。最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行なう逐次二軸延伸法を用い、長手方向の延伸を3段階以上に分けて、縦延伸温度80〜180℃、総縦延伸倍率3.0〜6.0倍、縦延伸速度5000〜50000%/分の範囲で行なうのが好ましく例示される。幅方向の延伸方法としてはテンタ−を用いる方法が好ましく、延伸温度はフィルムのガラス転移温度(Tg)〜Tg+100℃、幅方向延伸倍率は場合により縦倍率より大きく3.2〜7.0倍、幅方向の延伸速度1000〜20000%/分の範囲で行なうのが好ましい。さらに必要に応じて、再縦延伸、再横延伸を行っても良い。
また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の磁性層塗布面側の中心面平均粗さ(JISB0660−1998、ISO4287−1997)がカットオフ値0.25mmにおいて1.8〜9nm、好ましくは2〜8nmの範囲であることが好ましく、支持体の両面の粗さは異なっていてもよい。本発明の磁気記録媒体における非磁性支持体の好ましい厚みとしては3〜60μmである。
本発明では、非磁性支持体の少なくとも一方の面に水蒸気遮断層を設ける。本発明でいう水蒸気遮断層は、水蒸気を遮断する機能を有する層であれば、その材質は問わないが、水蒸気遮断層は、金属材料を含む層または樹脂を含む層であることが好ましい。
水蒸気遮断層が金属材料を含む層である場合、その金属材料としては、金属、半金属、合金、これらの酸化物及び複合物が挙げられる。具体的には、Al、Cu、Zn、Sn、Ni、Ag、Co、Fe、Mnなどの金属、Si、Ge、As、Sc、Sbなどの半金属が挙げられる。これらの金属及び半金属の合金としては、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni、Fe−Co−Ni、Fe−Cu、Co−Cu、Co−Au、Co−Y、Co−La、Co−Pr、Co−Gd、Co−Sm、Co−Pt、Ni−Cu、Mn−Bi、Mn−Sb、Mn−Al、Fe−Cr、Co−Cr、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Ni−Co−Cr等が挙げられる。また、これらの金属、半金属及び合金の酸化物は、例えば蒸着時に酸素ガスを導入することで容易に得られる。また、これらの金属、半金属及び合金の複合物としては、Fe−Si−O、Si−C、Si−N、Cu−Al−O、Si−N−O、Si−C−Oなどが挙げられる。
本発明において金属材料を含む層は、水蒸気透過率を抑制するという観点から、金属酸化物、とくにAlOx(xは0より大きく1.5を超えない)、例えばAl2O3、SiOy(yは0より大きく2を超えない)、例えばSiO2を含む層が好ましい。
金属材料を含む層の形成方法は問わないが、真空蒸着法が一般的であり、その他にもスパッタ法やイオンプレーティング法などを用いることができる。
また、前記樹脂のガラス転移温度は、0〜120℃であることが好ましく、10〜80℃であることがより好ましい。0℃以上であれば端面でのブロッキングを生じることもなく、また、120℃以下であれば水蒸気遮断層内の内部応力を緩和することができ、かつ、密着力にも優れている。分子量については、質量平均分子量1000〜100000の範囲が挙げられ、特に5000〜50000のものが好ましい。質量平均分子量が1000以上であれば、端面でのブロッキング等を生じることもなく、また100000以下であれば、有機溶剤への溶解性も良好であり、塗布による成膜も充分可能である。
樹脂を含む層の形成方法としては、前記のようにこれらの樹脂を有機溶剤に溶解し塗布する方法が挙げられる。また樹脂が熱可塑性樹脂であれば、支持体を構成する樹脂と融解共押し出しを行い、支持体の形成と水蒸気遮断層の形成を1工程で行ってもよい。
この場合、非磁性支持体上に、前記第1層および第2層をこの順に設け、第2層上に磁性層を設けるのが好ましい。
ここで、「酸素濃度の分布が大きい」とは、相対的にその他の部分よりも酸素濃度が高いことであり、特に濃度の変動が10原子%以上ある場合を含む。
本発明でいう水蒸気透過率は、JIS K7129に準じ、MOCON社製の水蒸気透過度測定装置を使用し、40℃、90%RHで測定した値である。
<強磁性金属粉末>
本発明の磁気記録媒体の磁性層に使用される強磁性金属粉末は、高密度磁気記録特性に優れていることが知られており、優れた電磁変換特性を有する磁気記録媒体を得ることができる。本発明の磁気記録媒体の磁性層に使用される強磁性金属粉末の平均長軸長は20〜100nmであるが、30〜90nmであることが好ましく、40〜80nmであることがさらに好ましい。強磁性金属粉末の平均長軸長が20nm以上であれば、熱揺らぎによる磁気特性の低下を有効に抑えることができる。また、平均長軸長が100nm以下であれば、低ノイズを維持したまま良好なSN比を得ることができる。
強磁性金属粉末の平均長軸長は、透過型電子顕微鏡写真で強磁性金属粉末を撮影し、その写真から強磁性金属粉末の短軸長と長軸長とを直接読みとる方法と画像解析装置カールツァイス製IBASSIで透過型電子顕微鏡写真トレースして読みとる方法を併用して得られる値の平均から求めることができる。
上記強磁性金属粉末には後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤等で分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。また、強磁性金属粉末は、少量の水、水酸化物又は酸化物を含むものであってもよい。強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが好ましい。強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物等で表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性金属粉末に対し0.1〜10%であり、表面処理を施すと脂肪酸等の潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は通常、6〜12であるが、好ましくは7〜11である。また強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Sr、NH4、SO4、Cl、NO2、NO3等の無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましい。各イオンの総和が300ppm以下程度であれば、特性には影響しない。また、本発明に用いられる強磁性粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。
強磁性金属粉末のBET法による比表面積(SBET)は、30m2/g以上50m2/g未満が好ましく、38〜48m2/gであることがさらに好ましい。この範囲であれば良好な表面性と低いノイズの両立が可能となる。
強磁性金属粉末は、公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。焼結防止処理を行った含水酸化鉄、酸化鉄を水素等の還元性気体で還元してFe又はFe−Co粒子等を得る方法、複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素等の還元性気体で還元する方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジン等の還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法等である。このようにして得られた強磁性金属粉末は公知の徐酸化処理が施される。含水酸化鉄、酸化鉄を水素等の還元性気体で還元し、酸素含有ガスと不活性ガスの分圧、温度、時間を制御して表面に酸化皮膜を形成する方法が、減磁量が少なく好ましい。
強磁性六方晶フェライト粉末は、六角状のマグネトプランバイト構造を有し、極めて大きな一軸結晶磁気異方性をもつと共に非常に高い抗磁力(Hc)を有する。このため、強磁性六方晶フェライト粉末を使用した磁気記録媒体は、化学安定性、耐蝕性及び耐摩擦性に優れ、かつ、高密度化に伴う磁気スペースシングの減少が可能となり、薄膜化の実現、高C/N及び分解能を可能とする。強磁性六方晶フェライト粉末の平均板径は5〜40nmであるが、好ましくは10〜38nmであり、より好ましくは15〜36nmである。一般にトラック密度を上げ、かつ、磁気抵抗ヘッドで再生する場合には、低ノイズにする必要があると共に、強磁性六方晶フェライト粉末の平均板径も小さくする必要がある。また磁気スペーシングを減少させる観点からも六方晶フェライトの平均板径はできるだけ小さい方が好ましい。しかし、強磁性六方晶フェライト粉末の平均板径が小さすぎると熱揺らぎにより磁化が不安定になる。このため、本発明の磁気記録媒体の磁性層に使用する強磁性六方晶フェライト粉末の平均板径の下限値を5nmとする。平均板径が5nm以上であれば、熱揺らぎによる影響も少なく、安定した磁化を得ることができる。一方、強磁性六方晶フェライト粉末の平均板径の上限値は40nmとする。平均板径が40nm以下であれば、ノイズの増大による電磁変換特性の低下を抑えることができ、特に磁気抵抗(MR)ヘッドで再現する場合に好適である。強磁性六方晶フェライト粉末の平均板径は、透過型電子顕微鏡写真で強磁性六方晶フェライト粉末を撮影し、その写真から強磁性六方晶フェライト粉末の板径を直接読みとる方法と、画像解析装置カールツァイス製IBASSIで透過型電子顕微鏡写真をトレースして読みとる方法とを併用して測定した値の平均値から求めることができる。
強磁性六方晶フェライト粉末の粒子板径・板厚の分布は、通常狭いほど好ましい。粒子板径・板厚を数値化することは困難であるが、粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定することで比較できる。粒子板径・板厚の分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すと、σ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには、粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。例えば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
強磁性六方晶フェライト粉末の飽和磁化(σs)は40〜80A・m2/kgである。σsは高い方が好ましいが、微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σsの改良のため、マグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合することや、含有元素の種類と添加量を選択すること等がよく知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理剤としては、無機化合物及び有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P等の酸化物又は水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。添加量は磁性体の質量に対して0.1〜10質量%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
強磁性六方晶フェライト粉末の製法としては、酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法;バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法;バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。強磁性六方晶フェライト粉末は、前記のように必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物等で表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸等の潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性六方晶フェライト粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Sr等の無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けるのが好ましい。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等が挙げられる。
具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr2O3、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタン等が単独又は2種類以上組み合わせて使用される。好ましいのはα−酸化鉄、酸化チタンである。
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもあってもよい。非磁性粉末の結晶子サイズ は、4nm〜1μmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。結晶子サイズが4nm〜1μmの範囲であれば、分散が困難になることもなく、また好適な表面粗さを有するため好ましい。これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くしたりして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は、10〜200nmである。5nm〜2μmの範囲であれば、分散も良好で、かつ好適な表面粗さを有するため好ましい。
非磁性粉末の比表面積(SBET)は、1〜100m2/gであり、好ましくは5〜70m2/gであり、さらに好ましくは10〜65m2/gである。比表面積が1〜100m2/gの範囲内にあれば、好適な表面粗さを有し、かつ、所望の結合剤量で分散できるため好ましい。ジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は、5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。タップ密度は0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が0.05〜2g/mlの範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向がある。非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましいが、pHは6〜9の間が特に好ましい。pHが2〜11の範囲にあれば、高温、高湿下又は脂肪酸の遊離により摩擦係数が大きくなることはない。非磁性粉末の含水率は、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.3〜1.5質量%である。含水量が0.1〜5質量%の範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。強熱減量は、20質量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
本発明の非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX 石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、T−600B、T−100F、T−500HD等が挙げられる。堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
また非磁性層には目的に応じて有機質粉末を添加することもできる。このような有機質粉末としては、例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。
本発明の磁性層および非磁性層に用いられる結合剤は従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物である。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む重合体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂を挙げることができる。
また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等を挙げることができる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び反応型樹脂については、いずれも朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。
また、電子線硬化型樹脂を磁性層に使用すると、塗膜強度が向上し耐久性が改善されるだけでなく、表面が平滑化され電磁変換特性もさらに向上する。
以上の樹脂は単独又はこれらを組み合わせた態様で使用することができる。中でもポリウレタン樹脂を使用することが好ましく、さらには水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのポリプロピレンオキサイド付加物等の環状構造体と、アルキレンオキサイド鎖を有する分子量500〜5000のポリオールと、鎖延長剤として環状構造を有する分子量200〜500のポリオールと、有機ジイソシアネートとを反応させ、かつ親水性極性基を導入したポリウレタン樹脂、又はコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸と、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等のアルキル分岐側鎖を有する環状構造を持たない脂肪族ジオールからなるポリエステルポリオールと、鎖延長剤として2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の炭素数が3以上の分岐アルキル側鎖をもつ脂肪族ジオールと、有機ジイソシアネート化合物とを反応させ、かつ親水性極性基を導入したポリウレタン樹脂、又はダイマージオール等の環状構造体と、長鎖アルキル鎖を有するポリオール化合物と、有機ジイソシアネートとを反応させ、かつ親水性極性基を導入したポリウレタン樹脂を使用することが好ましい。
上記ポリウレタン樹脂に含まれる極性基としては、例えば、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2(Mは水素原子又はアルカリ金属塩基)、−OH、−NR2、−N+R3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CN等が挙げられ、これらの極性基の少なくとも1つ以上を共重合又は付加反応で導入したものを用いることができる。また、この極性基含有ポリウレタン樹脂がOH基を有する場合、分岐OH基を有することが硬化性、耐久性の面から好ましく、1分子当たり2〜40個の分岐OH基を有することが好ましく、1分子当たり3〜20個有することがさらに好ましい。また、このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
結合剤の具体例としては、例えば、ユニオンカーバイト製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業製MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学製1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡製バイロンUR8200、UR8300、UR8700、RV530、RV280、大日精化製ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成製MX5004、三洋化成製サンプレンSP−150、旭化成製サランF310、F210等を挙げることができる。
本発明における磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラック等を挙げることができる。
これら添加剤としては、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸等の芳香族環含有有機ホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸等のアルキルホスホン酸及びそのアルカリ金属塩、リン酸フェニル等の芳香族リン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、リン酸オクチル等のリン酸アルキルエステル及びそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステル及びそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ラウリン酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していても良い一塩基性脂肪酸及びこれらの金属塩、又は炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していても良い一塩基性脂肪酸と、炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していても良い1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していても良いアルコキシアルコールまたはアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル又は多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン等が使用できる。また、上記炭化水素基以外にもニトロ基およびF、Cl、Br、CF3、CCl3、CBr3等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基を持つものでもよい。また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又はリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。
これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これら添加剤は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。これらの添加物の具体例としては、例えば、日本油脂製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂製:FAL−205、FAL−123、新日本理化製:エヌジエルブOL、信越化学製:TA−3、ライオン製:アーマイドP、ライオン製:デュオミンTDO、日清オイリオ製:BA−41G、三洋化成製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5〜300nm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。本発明に用いることができるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン製#80、#60、#55、#50、#35、三菱化学製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#2400B、#2300、#1000、#970B、#950、#900、#850B、#650B、#30、#40、#10B、MA−600、コロンビアカーボン製CONDUCTEX SC、RAVEN8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、150、50、40、15、RAVEN−MT−P、ケッチェン・ブラック・インターナショナル製ケッチェンブラックEC等が挙げられる。
カーボンブラックを分散剤等で表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用したりしてもかまわない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独又は組み合わせで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合、磁性体の質量に対して0.1〜30質量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上等の働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって本発明で使用されるこれらのカーボンブラックは、磁性層及び非磁性層でその種類、量、組み合わせを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pH等の先に示した諸特性を基に目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは、例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して繰り返し走行性が強く要求される。このような高い走行耐久性を維持させるために、非磁性支持体の非磁性層及び磁性層が設けられた面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層用塗料は、研磨剤、帯電防止剤等と結合剤とを有機溶媒に分散させる。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができる。また、結合剤としては、例えばニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独又はこれらを混合して使用することができる。
本発明の非磁性支持体は水蒸気遮断層および/またはバックコート層との接着力向上のため易接着層を設けてもよい。易接着層としては溶剤可溶性の、例えば以下の物質が挙げられる。ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、デンプン、変性デンプン化合物、アルギン酸化合物、カゼイン、ゼラチン、プルラン、デキストラン、キチン、キトサン、ゴムラッテクス、アラビアゴム、フノリ、天然ガム、デキストリン、変性セルロース樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸系樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルエーテル、ポリマレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、アルキド樹脂等が挙げられる
易接着層は厚さとして0.01〜3.0μmであれば特に制限はないが、好ましくは0.02〜2.0μmであり、さらに好ましくは0.05〜1.5μmである。上記易接着層で使用される樹脂のガラス転移温度については、30〜120℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。0℃以上であれば端面でのブロッキングを生じることもなく、また、120℃以下であれば易接着層内の内部応力を緩和することができ、かつ、密着力にも優れている。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の少なくとも一方の面に、少なくとも2層の塗膜、すなわち、非磁性層とこの非磁性層上に磁性層とが設けられているのが好ましく、前記の磁性層は必要に応じて二層以上の層としてもよい。また、非磁性支持体の反対側の面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。また、本発明の磁気記録媒体は、磁性層上に潤滑剤塗膜や磁性層保護用の各種塗膜等を必要に応じて設けてもよい。また、非磁性支持体と非磁性層との間には、塗膜と非磁性支持体との接着性の向上等を目的として、下塗り層(易接着層)を設けることもできる。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性層及び磁性層を非磁性支持体の両面に設けることもできる。非磁性層(下層)と磁性層(上層)とは、下層を塗布後、下層が湿潤状態のうちでも、乾燥した後にでも上層磁性層を設けることができる。生産得率の点から同時、又は逐次湿潤塗布が好ましいが、デイスク状の場合は乾燥後塗布でも充分使用できる。本発明の重層構成で同時、又は逐次湿潤塗布では上層/下層が同時に形成できるため、カレンダー工程等の表面処理工程を有効に活用でき、超薄層でも上層磁性層の表面粗さを良化できる。
本発明で用いられる磁気記録媒体の厚み構成は、非磁性支持体の好ましい厚みが3〜80μmである。磁気テープの非磁性支持体は、3.5〜7.5μm、好ましくは3〜7μmの範囲の厚さのものが使用される。また、非磁性支持体と非磁性層又は磁性層の間に下塗り層を設けた場合、下塗り層の厚みは、0.01〜0.8μm、好ましくは0.02〜0.6μmである。また、非磁性支持体の非磁性層及び磁性層が設けられた面とは反対側の面に設けられたバックコート層の厚みは、0.1〜1.0μm、好ましくは0.2〜0.8μmである。
磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には10〜100nmであり、好ましくは20〜80nmであり、さらに好ましくは30〜80nmである。また、磁性層の厚み変動率は±50%以内が好ましく、さらに好ましくは±40%以内である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
本発明の非磁性層の厚みは、0.02〜3.0μmであり、0.05〜2.5μmであることが好ましく、0.1〜2.0μmであることがさらに好ましい。なお、本発明の磁気記録媒体の非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10mT(100G)以下又は抗磁力が7.96kA/m(100 Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
本発明に用いられる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は100〜300mTである。また磁性層のHcは、143.3〜318.4kA/mであるが、好ましくは159.2〜278.6kA/mである。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFD及びSFDrは0.6以下、さらに好ましくは0.2以下である。
本発明で用いられる磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において0.5以下であり、好ましくは0.3以下である。また、表面固有抵抗は、好ましくは磁性面104〜1012Ω/sq、帯電位は−500V〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa、破断強度は、好ましくは98〜686MPa、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa、残留のびは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.2%以下である。
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜180℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜180℃が好ましい。損失弾性率は1×107〜8×108Paの範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
磁性層の最大高さSRmaxは、0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20〜80%、平均波長Sλaは5〜300μmが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールやカレンダ処理のロール表面形状等で容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体における非磁性層と磁性層と間では、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができる。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くすることができる。
本発明で用いられる磁気記録媒体の磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる六方晶フェライト強磁性粉体又は強磁性金属粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤等すべての原料はどの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用液及び非磁性層用液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法では、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に磁性層塗布液を所定の膜厚となるようにして磁性層を塗布して形成する。ここで複数の磁性層塗布液を逐次又は同時に重層塗布してもよく、非磁性層塗布液と磁性層塗布液とを逐次又は同時に重層塗布してもよい。上記磁性層塗布液又は非磁性層塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
磁性層塗布液の塗布層は、磁気テープの場合、磁性層塗布液の塗布層中に含まれる強磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に磁場配向処理を施す。ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加する等公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。強磁性六方晶フェライト粉末の場合は一般的に面内及び垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石等公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用いて円周配向することもできる。
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい、また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロール等が利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダ処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。本発明の磁気記録媒体は極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤とを選んで形成した磁性層を上記カレンダ処理を施すことにより行われる。カレンダ処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500kg/cm(98〜490kN/m)の範囲であり、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kN/m)の範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)の範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
熱収縮率低減手段として、低テンションでハンドリングしながらウエッブ状で熱処理する方法と、バルク又はカセットに組み込んだ状態等テープが積層した形態で熱処理する方法(サーモ処理法)があり、両者を利用できる。高出力と低ノイズの磁気記録媒体を供給する観点からはサーモ処理法が好ましい。
得られた磁気記録媒体は、裁断機等を使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
1.水蒸気遮断層(第2層)用塗料液の調製
塩化ビニリデン/塩化ビニル=92/8共重合体樹脂 15部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=8/2混合溶剤 100部
上記共重合体樹脂をディスパーで溶解し水蒸気遮断層(第2層)用塗料液とした。
強磁性針状金属粉末 100部
組成:Fe/Co/Al/Y=68/20/7/5(at%)、表面処理層:Al2O3,Y2O3、結晶子サイズ:125Å、平均長軸長:45nm、平均針状比:5、SBET:42m2/g、抗磁力(Hc):180kA/m、飽和磁化(σs):135A・m2/kg
ポリウレタン樹脂 12部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系、親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(平均粒径0.1μm) 2部
カーボンブラック(平均粒径20nm) 2部
シクロヘキサノン 110部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
非磁性無機質粉体 85部
α−酸化鉄、表面処理層:Al2O3,SiO2、平均長軸径:0.15μm、平均針状比:7、SBET:50m2/g、DBP吸油量:33ml/100g、pH8
カーボンブラック 20部
SBET:250m2/g、DBP吸油量:120ml/100g、pH:8、揮発分:1.5%
ポリウレタン樹脂 12部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系、親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
アクリル樹脂 6部
ベンジルメタクリレート/ダイアセトンアクリルアミド系、親水性極性基:−SO3Na=60eq/ton含有
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(平均粒径0.2μm) 1部
シクロヘキサノン 140部
メチルエチルケトン 170部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
水蒸気遮断層における第1層および第2層の有無、形成面を表1に示した通りに変更した以外は、実施例1−1と同様の方法で磁気テープを作製した。
非磁性支持体の種類、強磁性金属粉末の平均長軸長、水蒸気遮断層における第1層および第2層の有無、形成面を表1に示した通りに変更した以外は、実施例1−1と同様の方法で磁気テープを作製した。
磁性層用塗料液の調製
強磁性板状六方晶フェライト粉末 100部
組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/0.8、平均板径:25nm、平均板状比:3、SBET:50m2/g、抗磁力(Hc):191kA/m、飽和磁化(σs):60A・m2/kg
ポリウレタン樹脂 12部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系、
親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(平均粒径0.15μm) 2部
カーボンブラック(平均粒径 20nm) 2部
シクロヘキサノン 110部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
非磁性支持体の種類、強磁性六方晶フェライト粉末の平均板径、水蒸気遮断層における第1層および第2層の有無、形成面を表2に示した通りに変更した以外は、実施例2−1と同様の方法で磁気テープを作製した。
磁性層用塗料液の調製
強磁性板状六方晶フェライト粉末 100部
組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/0.8、平均板径:25nm、平均板状比:3、SBET:50m2/g、抗磁力(Hc):191kA/m、飽和磁化(σs):60A・m2/kg
ポリウレタン樹脂 12部
分岐側鎖含有ポリエステルポリオール/ジフェニルメタンジイソシアネート系、親水性極性基:−SO3Na=70eq/ton含有
フェニルホスホン酸 3部
α−Al2O3(平均粒径0.15μm ) 2部
カーボンブラック(平均粒径20nm) 2部
シクロヘキサノン 110部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
厚み30μm、磁性層形成面側の表面粗さ2nmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム支持体の両面に真空蒸着装置を用いて、最大入射角60°、フィルム走行速度1.5m/分、電子銃パワー16kWで厚さ40nmのAl2O3水蒸気遮断層(第1層)を蒸着により成膜した。
得られたポリエチレンナフタレート(PEN)支持体上に上記水蒸気遮断層(第2層)用塗料液を乾燥後の厚みが0.3μmになるように塗布、乾燥後、さらに実施例1−1と同様の非磁性塗料を乾燥後の厚さが1.8μmになるように塗布し、さらにその直後に上記磁性塗料を乾燥後の厚さが0.2μmになるように同時重層塗布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに周波数50Hz、磁場強度25mTおよび周波数50Hz、12mTの2つの磁場強度交流磁場発生装置の中を通過させランダム配向処理を行い乾燥後、7段のカレンダーで温度90℃、線圧300kg/cm(294kN/m)で処理を行い、70℃で48時間加熱処理を行い、1.8吋に打ち抜き表面研磨処理施した後、ライナーが内側に設置済のClik−diskカートリッジに入れ、所定の機構部品を付加し、フレキシブルディスクを得た。
水蒸気遮断層における第1層および第2層の有無、形成面を表3に示した通りに変更した以外は、実施例3−1と同様の方法でフレキシブルディスクを作製した。
非磁性支持体の種類、強磁性六方晶フェライト粉末の平均板径、水蒸気遮断層における第1層および第2層の有無、形成面を表3に示した通りに変更した以外は、実施例3−1と同様の方法でフレキシブルディスクを作製した。
1.水蒸気透過率の測定
JIS K7129に準じたMOCON社製の水蒸気透過度測定装置を使用し40℃、90%RHで測定した。
2.表面粗さ(Ra)の測定(支持体)
光学式粗さ計(WYKO社製HD−2000)を用いてカットオフ値0.25mmで測定し、JISB0660−1998、ISO4287−1997に記載のRaに相当する算術平均粗さを求めた。
3.エラーレート(初期、高湿高温下)の測定
記録信号を23℃,50%RHにおいて磁気テープでは8−10変換PR1等化方式、フレキシブルディスクでは(2,7)RLL変調方式で記録し、23℃,50%RH(初期)、40℃,80%RH(高湿高温下)の各環境下で各々測定した。
結果を表1〜3に併せて示す。
Claims (5)
- 非磁性支持体の少なくとも一方の面に、水蒸気遮断層および磁性層をこの順に設け、前記非磁性支持体の長手方向および幅方向のヤング率がともに7GPa以上であり、前記磁性層が、平均板径5〜40nmの強磁性六方晶フェライト粉末もしくは平均長軸長20〜100nmの強磁性金属粉末と結合剤とを含み、かつ、前記非磁性支持体および水蒸気遮断層からなる積層体の水蒸気透過率が0.001〜0.3g/m2・24時間の範囲にあることを特徴とする磁気記録媒体。
- 前記水蒸気遮断層が、金属材料を含む層または樹脂を含む層であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 前記水蒸気遮断層が、金属材料を含む第1層と樹脂を含む第2層とを有する少なくとも2層以上から構成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 前記金属材料が金属酸化物であり、前記樹脂が質量平均分子量1000〜100000の高分子化合物であることを特徴とする請求項2または3に記載の磁気記録媒体。
- 前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末と結合剤とを含む非磁性層を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
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-
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