JP2006335804A - イミド樹脂、さらにこれを使用した光学用フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、透明性・耐熱性に優れ、かつ異物数が低減されたイミド樹脂、さらにこれを使用した外観の優れた光学用フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 特定の重合方法により得られたアクリル系樹脂をイミド化することで、グルタルイミド単位と(メタ)アクリル酸エステル単位を有するイミド樹脂を提供した。これにより、イミド化反応後の樹脂中の異物数が低減され、光学用途に好適なイミド樹脂、さらにこれを使用した外観の優れた光学用フィルムを提供することが可能となる。
【選択図】 なし
【解決手段】 特定の重合方法により得られたアクリル系樹脂をイミド化することで、グルタルイミド単位と(メタ)アクリル酸エステル単位を有するイミド樹脂を提供した。これにより、イミド化反応後の樹脂中の異物数が低減され、光学用途に好適なイミド樹脂、さらにこれを使用した外観の優れた光学用フィルムを提供することが可能となる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、異物数が低減されたイミド化樹脂、さらにこれを使用した外観の優れた光学用フィルムに関する。
近年、電子機器はますます小型化し、ノートパソコン、携帯電話、携帯情報端末に代表されるように、軽量・コンパクトという特長を生かし、多様な用途で用いられるようになってきている。一方、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの分野では画面の大型化に伴う重量増を抑制することも要求されている。
上述のような電子機器をはじめとする、透明性が要求される用途においては、従来ガラスが使用されていた部材を透明性が良好な樹脂へ置き換える流れが進んでいる。
ポリメタクリル酸メチルを代表とする種々の透明樹脂は、ガラスと比較して成形性、加工性が良好で、割れにくい、さらに軽量、安価という特徴などから、液晶ディスプレイや光ディスク、ピックアップレンズなどへの展開が検討され、一部実用化されている。
自動車用ヘッドランプカバーや液晶ディスプレイ用部材等の用途展開に従って、透明樹脂は透明性に加え、耐熱性も求められるようになっている。光学用途に用いられる代表的なポリマーの一つであるポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂は、透明性が良好であり、価格も比較的安価である特徴を有しているものの、一般に耐熱性が乏しく、例えば、示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度は100℃程度である。このため、このような用途においては適用範囲が制限される。
このアクリル系樹脂の耐熱性を改善する一つの方法として、メタクリル酸メチルとシクロヘキシルマレイミドを共重合させる方法がある。ただし、当該方法によれば、高価なモノマーであるシクロヘキシルマレイミドを用いるために、耐熱性を向上させようとするほど得られる共重合体が高価になるという課題がある。
この課題に対して、押出機中、ポリメタクリル酸メチル(例えば、特許文献1参照)やメタクリル酸メチル―スチレン共重合体(例えば、特許文献2参照)に一級アミンを処理することによりアクリル系樹脂中のメチルエステル基をイミド化して、イミド樹脂を得ることが提案されている。これらの樹脂は透明性や耐熱性が良好であると記載されている。
しかし、これらの樹脂を実際に光学用途として使用するには異物が多いという問題があった。
米国特許4、246、374号
米国特許4、727、117号
本発明の目的は、透明性・耐熱性に優れ、かつ異物数が低減されたイミド樹脂、さらにこれを使用した外観の優れた光学用フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、イミド樹脂を製造する際に特定の重合方法により得られるアクリル系樹脂を使用することにより、イミド化反応後の樹脂中の異物数を低減できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、塊状重合法により得られるアクリル系樹脂をイミド化することによって得られる下記一般式(1)で表される第一の構成単位と下記一般式(2)で表される第二の構成単位を有するイミド樹脂を提供した。
すなわち、塊状重合法により得られるアクリル系樹脂をイミド化することによって得られる下記一般式(1)で表される第一の構成単位と下記一般式(2)で表される第二の構成単位を有するイミド樹脂を提供した。
さらに、下記一般式(3)で表される第三の構成単位を有する前記イミド樹脂を提供した。
さらに、前記アクリル系樹脂中に高級アルコール系滑剤を含有しないことを特徴とする前記イミド樹脂を提供した。
前記イミド樹脂から得られる、光学用フィルムを提供した。
さらに、縦300mm、横200mm、厚さ40μmのフィルムを目視にて平面視したときに認識される、大きさ50μm未満の異物・欠陥数が100個以下、50μm以上の異物・欠陥数が実質0個であることを特徴とする前記光学用フィルムを提供した。
本発明によれば、溶液重合法、懸濁重合法や乳化重合法により得られるアクリル系樹脂を使用した場合に比べ副原料が少ないため、イミド化反応後の樹脂中の異物数を低減でき、透明性・耐熱性に優れ、異物数が低減されたイミド樹脂、さらにこれを使用した外観の優れた光学用フィルムを得ることができ、有用である。
本発明は、塊状重合法により得られるアクリル系樹脂をイミド化することによって得られる下記一般式(1)で表される第一の構成単位と下記一般式(2)で表される第二の構成単位を有するイミド化樹脂、さらに、下記一般式(3)で表される第三の構成単位を有する前記イミド樹脂に関するものである。
アクリル系樹脂は一般に塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の方法で生産されている。そのうち塊状重合法とは、必要なモノマー類、重合開始剤、連鎖移動剤等を重合反応槽に加え、数10%まで加熱重合させた高温・高粘度のシロップ(ポリマー/モノマー混合物)を脱揮・押出工程に移し、未反応のモノマーを脱揮回収すると同時にペレット状のポリマーを得る方法である。この方法によれば、溶液重合法、懸濁重合法や乳化重合法に比べ、有機溶媒や水、懸濁分散剤、乳化剤等の副原料を使用しないため、製品の純度が高く、イミド化反応後の樹脂中の異物数を低減できることとなる。よって本発明に用いられるアクリル系樹脂は、塊状重合法により得られるものが好ましい。さらには重合、脱揮、押出工程を連続的に行う連続塊状重合法により得られるものであることが異物の混入が少なく、より好ましい。
本発明で使用される塊状重合法により得られるアクリル系樹脂は、イミド化剤と反応し、グルタルイミド単位となることができれば特に限定がなく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、無水マレイン酸等の酸無水物またはそれらと炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル等がイミド化可能であり、これらからなる単独重合体、これらの共重合体、もしくはスチレン、α−メチルスチレン等の他の共重合可能な成分からなる共重合体を例示できる。これらの中で、ポリメタクリル酸メチルやメタクリル酸メチル―スチレン共重合体が、コスト、物性等の点から好ましい。
本発明で使用されるアクリル系樹脂には、一般に用いられる酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤等を本発明の目的が損なわれない範囲で添加してもよい。
本発明に使用されるアクリル系樹脂は、高級アルコール系滑剤を含有しないことが好ましい。ステアリルアルコール等の高級アルコール系滑剤は、樹脂の加工性を改良するために滑剤としてよく使用されているが、揮発性が高いために成形中に金型やロールを汚染し、その結果成形品やフィルムの表面性を損なう可能性がある。
アクリル系樹脂にイミド化剤として一級アミンを処理することによりアクリル系樹脂中のメチルエステル基をイミド化して、イミド樹脂を得る方法は、すでに公知の技術である。
例えば、特許2505970号に記載されているように、アクリル系樹脂を溶解できる、イミド化反応に対して非反応性溶媒を用いて、溶液状態のアクリル系樹脂にイミド化剤を添加することによってイミド樹脂が得られる。また、例えば、米国特許4,246,374号に記載されているように、押出機を用いて、溶融状態のアクリル系樹脂にイミド化剤を添加することによっても得られる。
本発明のイミド樹脂の製造は、バッチ式反応槽(圧力容器)等を用いてもよく、押出機等を用いてもよい。
本発明に用いるバッチ式反応槽(圧力容器)としては原料ポリマーを溶解した溶液を加熱、攪拌でき、イミド化剤を添加できる構造であれば特に制限ないが、反応の進行によりポリマー溶液の粘度が上昇することもあり、攪拌効率が良好なものがよい。例えば、住友重機械(株)製の攪拌槽マックスブレンド等を例示することができる。
イミド化反応に対する非反応性溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の脂肪族アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クロロトルエン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のケトン、エーテル系化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また少なくとも2種を混合したものであってもよい。これらの中で、トルエン、およびトルエンとメチルアルコールとの混合溶媒が好ましい。
アクリル系樹脂の非反応性溶媒に対する濃度は少ない方が製造コストの面からは好ましく、固形分濃度として10〜80%、特に20〜70%が好ましい。
本発明に用いる押出機としては単軸押出機、二軸押出機あるいは多軸押出機があり、原料ポリマーに対するイミド化剤の混合を促進できる押出機として二軸押出機が好ましい。二軸押出機には非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、噛合い型異方向回転式が含まれる。二軸押出機の中では噛合い型同方向回転式のものが高速回転可能であり、原料ポリマーに対するイミド化剤の混合を促進できるので好ましい。これらの押出機は単独で用いても、直列につないでも構わない。また、押出機には未反応のイミド化剤や副生物を除去するために大気圧以下に減圧可能なベント口を装着することが好ましい。
押出機の代わりに、例えば住友重機械(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽等の高粘度対応の反応装置も好適に使用できる。
上記のような方法にてイミド樹脂を得ることができるが、異物数を低減するという観点から、溶媒を使用する必要のない、溶融状態のアクリル系樹脂にイミド化剤を添加する方法がより好ましい。
本発明で使用されるイミド化剤はアクリル系樹脂をイミド化することができれば特に制限されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式炭化水素基含有アミンが挙げられる。また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素等の加熱によりこれらのアミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。これらのイミド化剤のうち、コスト、物性の面からメチルアミンが好ましい。
イミド化剤の添加量は必要な物性を発現するためのイミド化率によって決定される。
アクリル系樹脂をイミド化剤によりイミド化する際にはイミド化を進行させ、かつ過剰な熱履歴による樹脂の分解、着色などを抑制するために、反応温度は150〜400℃の範囲で行う。180〜320℃が好ましく、さらには200〜280℃が好ましい。
アクリル系樹脂をイミド化剤によりイミド化する際には、一般に用いられる触媒、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤等を本発明の目的が損なわれない範囲で添加してもよい。
本発明のイミド樹脂を構成する、第一の構成単位は、下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位である。
好ましいグルタルイミド単位としては、R1、R2が水素またはメチル基であり、R3が水素、メチル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基である。R1がメチル基であり、R2がメチル基であり、R3がメチル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基である場合が、特に好ましい。
該グルタルイミド単位は、単一の種類でもよく、R1、R2、R3が異なる複数の種類を含んでいても構わない。
本発明のイミド樹脂を構成する、第二の構成単位は、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸単位である。
好ましい(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸単位としては、R4、R5が水素またはメチル基であり、R6が水素、メチル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基である。R1がメチル基であり、R2がメチル基であり、R3がメチル基である場合が、特に好ましい。
これら第二の構成単位は、単一の種類でもよく、R4、R5、R6が異なる複数の種類を含んでいてもかまわない。
本発明のイミド樹脂を構成する、第三の構成単位は、下記一般式(3)で表される芳香族ビニル単位である。
好ましい芳香族ビニル構成単位としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらの中でスチレンが特に好ましい。
これら第三の構成単位は、単一の種類でもよく、R7、R8が異なる複数の種類を含んでいてもかまわない。
本発明のイミド樹脂には、必要に応じ、更に、第四の構成単位が共重合されていてもかまわない。第四の構成単位として、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を用いることができる。これらはイミド樹脂中に、直接共重合してあっても良く、グラフト共重合してあってもかまわない。
本発明のイミド樹脂は異物数が少ないため光学用途として使用でき、外観の優れた光学用フィルムを得ることができる。
本発明の光学用フィルムを成形する方法としては、従来公知の任意の方法が採用できる。例えば、溶液流延法や溶融押出法等が挙げられる。そのいずれをも採用することができるが、溶剤を使用しない溶融押出法の方が、地球環境上や作業環境上、あるいは製造コストの観点から好ましい。
好ましい実施形態においては、フィルム化の前に、用いるイミド樹脂を予備乾燥しておく。予備乾燥は、例えば、原料をペレット等の形態にして、熱風乾燥機等で行われる。予備乾燥は、押し出される樹脂の発泡を防ぐことができるので非常に有用である。次に、上記イミド樹脂は押出機に供給される。押出機内で加熱溶融されたイミド樹脂は、ギヤポンプやフィルターを通して、Tダイに供給される。ギヤポンプの使用は、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚みむらを低減させる効果が高く、非常に有用である。また、フィルターの使用は、樹脂中の異物を除去し、欠陥の無い外観の優れたフィルムを得るのに有用である。さらに好ましい実施態様においては、Tダイから押し出されるシート状の溶融樹脂を2つの冷却ドラムで挟み込んで冷却することによってフィルムが成形される。2つの冷却ドラムのうち、一方は表面が平滑な剛体性の金属ドラムであり、もう一方は表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルドラムであるのが特に好ましい。剛体性のドラムとフレキシブルなドラムとで、Tダイから押し出されるシート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して成膜することにより、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面の平滑な、厚みむらが5μm以下であるフィルムを得ることができるので特に有用である。なお、冷却ドラムは、「タッチロール」あるいは「冷却ロール」と呼ばれることがあるが、本明細書中における用語「冷却ドラム」とは、これらのロールを包含する。Tダイから押し出されるシート状の溶融樹脂を剛体性のドラムとフレキシブルなドラムとで挟み込みながら冷却し、フィルムを成形する場合、一方のドラムが弾性変形可能であったとしても、いずれのドラム表面も金属であるために、薄いフィルムを成形すると、ドラムの面同士が接触してドラム外面に傷がつきやすい、あるいは、ドラムそのものが破損しやすい。したがって、成形するフィルムの厚さは10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、さらに好ましくは80μm以上、特に好ましくは100μm以上である。また、Tダイから押し出されるシート状の溶融樹脂を剛体性のドラムとフレキシブルなドラムとで挟み込みながら冷却し、フィルムを成形する場合、フィルムが厚いと、フィルムの冷却が不均一になりやすく、光学的特性が不均一になりやすい。したがって、フィルムの厚さは200μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、170μm以下である。なお、これより薄いフィルムを製造する場合の実施態様としては、このような挟み込み成形で比較的厚みの厚い原料フィルムを得た後、一軸延伸あるいは二軸延伸して所定の厚さのフィルムを製造することが好ましい。実施態様の一例を挙げれば、このような挟み込み成形で厚さ150μmの原料フィルムを製造した後、縦横二軸延伸により、厚さ40μmのフィルムを製造することができる。
本明細書中では、説明の便宜上、上記イミド樹脂をフィルム状に成形した後、延伸を施す前のフィルムを「原料フィルム」と呼ぶが、原料フィルムは、延伸を施さずにそのままで本発明の光学用フィルムとすることができる。
延伸を行うことにより、機械的特性が向上する。従来のフィルムでは、延伸処理を行った場合に位相差の発生を避けることが困難であった。しかし、各構成単位の比率を適切な範囲に調整したイミド樹脂を用いて成形されたフィルムは、延伸処理を施しても位相差が実質的に発生しないという利点を有する。フィルムの延伸は、原料フィルムを成形した後、すぐに連続的に行っても良い。ここで、上記「原料フィルム」の状態が瞬間的にしか存在しない場合があり得る。瞬間的にしか存在しない場合には、その瞬間的な、フィルムが形成された後延伸されるまでの状態を原料フィルムという。また、原料フィルムとは、その後延伸されるのに十分な程度にフィルム状になっていれば良く、完全なフィルムの状態である必要はなく、もちろん、完成したフィルムとしての性能を有さなくても良い。また、必要に応じて、原料フィルムを成形した後、一旦フィルムを保管もしくは移動し,その後フィルムの延伸を行っても良い。原料フィルムを延伸する方法としては、従来公知の任意の延伸方法が採用できる。具体的には、例えば、テンターを用いた横延伸、ロールを用いた縦延伸、およびこれらを逐次組み合わせた逐次二軸延伸等がある。また、縦と横を同時に延伸する同時二軸延伸方法も採用できる。ロール縦延伸を行った後、テンターによる横延伸を行う方法を採用しても良い。本発明においては、フィルムを延伸するにあたって、フィルムを一旦、延伸温度より0.5〜5℃高い温度まで予熱した後、延伸温度まで冷却して延伸することが好ましい。さらに好ましくは、延伸温度より1〜3℃高い温度まで一旦予熱した後、延伸温度まで冷却して延伸することが好ましい。予熱温度が高すぎるとフィルムがロールに貼り付く、あるいは自重で弛む等の弊害が発生するので好ましくない。また、予熱温度が延伸温度とあまり変わらないと延伸前のフィルムの厚み精度を維持しない、あるいは厚みむらが大きくなり、厚み精度が低下するので好ましくない。結晶性の熱可塑性樹脂の場合には、延伸に際してネッキング現象を利用することができるので、その場合には、延伸によって厚み精度が改善される。一方、本発明のイミド樹脂は非晶性熱可塑性樹脂であるため、延伸に際してネッキング現象の利用が困難であるので、厚み精度を維持あるいは改善するためにはこのような温度管理が特に重要である。
本発明のフィルムは、原料フィルムの状態で、すなわち、未延伸フィルムの状態で最終製品とすることができる。また、一軸延伸フィルムの状態で最終製品とすることができる。さらに、延伸工程を組み合わせて行って二軸延伸フィルムとしても良い。
フィルムの延伸温度および延伸倍率は、得られたフィルムの機械的強度および表面性、厚み精度を指標として適宜調整することができる。延伸温度の範囲は、DSC法によって求めたフィルムのガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは、Tg−30℃〜Tg+30℃の範囲である。より好ましくは、Tg−20℃〜Tg+20℃の範囲である。さらに好ましくは、Tg以上Tg+20℃以下の範囲である。延伸温度が高すぎる場合、得られたフィルムの厚みむらが大きくなりやすい上に、伸び率や引裂強度、耐揉疲労等の力学的性質の改善も不十分になりやすい。また、フィルムがロールに粘着するトラブルが起こりやすい。逆に、延伸温度が低すぎる場合、延伸フィルムのヘーズが高くなりやすく、また、極端な場合には、フィルムが裂ける、割れる等の工程上の問題を引き起こしやすい。好ましい延伸倍率は、延伸温度にも依存するが、1.1倍から3倍の範囲で選択される。より好ましくは、1.3倍〜2.5倍である。さらに好ましくは、1.5倍〜2.3倍である。本発明のイミド樹脂中の各構成単位の比率を適切な範囲に調整し、適切な延伸条件を選択することにより、実質的に複屈折を生じさせることなく、また、ヘーズの増大を実質的に伴わない、厚みむらの小さなフィルムを容易に得ることができる。好ましくは、1.3倍以上、より好ましくは1.5倍以上延伸することにより、フィルムの伸び率、引裂強度および耐揉疲労等の力学的性質が大幅に改善され、さらに、厚みむらが5μm以下であり、複屈折が実質的にゼロ、ヘーズが1%以下のフィルムを得ることができる。
本発明の光学用フィルムの厚さは、好ましくは10μmから200μmであり、より好ましくは20μmから150μmであり、さらに好ましくは30μmから100μmである。これより厚いフィルムを成形するには、未延伸フィルムとして200μmを越すフィルムが必要であり、その場合には、フィルムの冷却が不均一になり、光学的均質性等が低下するので好ましくない。これより薄いフィルムを成形すると、延伸倍率が過大になり、ヘーズが高くなる等の弊害がある。
本発明のフィルムのガラス転移温度は100℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。ガラス転移温度の上限は特にないが、過度の高ガラス転移温度は延伸処理を困難化、あるいは延伸処理設備の高価格化の恐れがあるため、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。
本発明の光学用フィルムにおいて、縦300mm、横200mm、厚さ40μmのフィルムを目視にて平面視したときに認識される、大きさ50μm未満の異物・欠陥数は100個以下が好ましく、さらに好ましくは50個以下であり、特に30個以下が好ましい。また、50μm以上の異物・欠陥数は実質0個であることが好ましい。
本発明で言う「フィルムを目視にて平面視したときに認識される」とは、暗室にてフィルムを机上に平らに置いて蛍光灯卓上スタンドの光を照射し、フィルム表面に光を反射させながら走査したときに目視にて認識できることを言う。
本発明で言う異物とは、前述の方法にて認識できた部分に印を付け、その部位を反射光源450倍の顕微鏡にて観察した時に異物が認識できるものをいい、異物部分の最大径をその大きさとした。また、本発明で言う欠陥とは、前述の方法にて認識できた部分に印を付け、その部位を反射光源450倍の顕微鏡にて異物が認識できないものをいい、その歪んでいる部分の最大径をその大きさとした。
本発明で言う「縦300mm、横200mm、厚さ40μmのフィルムを目視にて平面視したときに認識される、大きさ50μm以上の異物・欠陥数が実質0個である」とは、縦300mm、横200mm、厚さ40μmのフィルム5枚における異物・欠陥数を測定したときの大きさ50μm以上の異物数が0個であった時、実質0個であると定義する。
本発明の光学用フィルムは、異物・欠陥が少なく外観に優れており、光学用途として好適なフィルムである。本発明により得られるフィルムはそのまま、あるいは各種加工を行って、種々の用途に使用できる。特に優れた光学的均質性、透明性、低複屈折性等を利用して光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや透明導電フィルム等液晶表示装置周辺等の公知の光学用途に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例で測定した物性の各測定方法は次のとおりである。
(1)ガラス転移温度(Tg)
生成物あるいはフィルム10mgを量りとり、(株)島津製作所製示差走査熱量計DSC−50を用いて、窒素流量30ml/min、昇温速度20℃/minの条件にて測定し、中間点ガラス転移温度をTgとした。
生成物あるいはフィルム10mgを量りとり、(株)島津製作所製示差走査熱量計DSC−50を用いて、窒素流量30ml/min、昇温速度20℃/minの条件にて測定し、中間点ガラス転移温度をTgとした。
(2)フィルムのヘーズ
厚さ40μmのフィルムから50mm×50mmのサイズの試験片を3枚切り出した。日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を用いて、JIS K7136に準じて測定し、3枚の平均値をそのサンプルのヘーズ値とした。
厚さ40μmのフィルムから50mm×50mmのサイズの試験片を3枚切り出した。日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を用いて、JIS K7136に準じて測定し、3枚の平均値をそのサンプルのヘーズ値とした。
(3)フィルム中の異物・欠陥数および大きさの測定
厚さ40μmのフィルムから縦300mm、横200mmのサンプルを切り出し、暗室にてフィルムを机上に平らに置いて蛍光灯卓上スタンドの光を照射し、フィルム表面に光を反射させながら走査した。目視にて認識できる異物・欠陥部位に印をつけ、その個数を確認した。さらに、印をつけた部位を(株)キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX100、ズームレンズVH−Z75を用いて、反射光源450倍の条件にて観察し、大きさを測定した。
厚さ40μmのフィルムから縦300mm、横200mmのサンプルを切り出し、暗室にてフィルムを机上に平らに置いて蛍光灯卓上スタンドの光を照射し、フィルム表面に光を反射させながら走査した。目視にて認識できる異物・欠陥部位に印をつけ、その個数を確認した。さらに、印をつけた部位を(株)キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX100、ズームレンズVH−Z75を用いて、反射光源450倍の条件にて観察し、大きさを測定した。
(実施例1)
(イミド樹脂の製造)
連続塊状重合法により製造したアクリル系樹脂であるポリメタクリル酸メチルを、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いてイミド化し、イミド樹脂を製造した。使用した押出機は口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、樹脂を1.0kg/hrで供給し、モノメチルアミンの供給量は樹脂に対して3重量部とした。ホッパーから樹脂を投入し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルからモノメチルアミンを注入した。反応ゾーンの末端にはシールリングを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.08MPaに減圧して脱揮した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化した。得られたイミド樹脂ペレットのガラス転移温度は120℃であった。
(イミド樹脂の製造)
連続塊状重合法により製造したアクリル系樹脂であるポリメタクリル酸メチルを、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いてイミド化し、イミド樹脂を製造した。使用した押出機は口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、樹脂を1.0kg/hrで供給し、モノメチルアミンの供給量は樹脂に対して3重量部とした。ホッパーから樹脂を投入し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルからモノメチルアミンを注入した。反応ゾーンの末端にはシールリングを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.08MPaに減圧して脱揮した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化した。得られたイミド樹脂ペレットのガラス転移温度は120℃であった。
(フィルムの成形)
得られたペレットを100℃で5時間乾燥した後、口径40mmの単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて240℃で押し出し、厚さ150μmのフィルムを得た。得られたフィルムをロール縦延伸機を用いて120℃で1.9倍に縦延伸した後、テンターを用いて130℃で横2.1に横延伸し、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムのヘーズは0.3%、大きさ50μm未満の異物・欠陥数は12個、50μm以上の異物・欠陥数は0個であった。
得られたペレットを100℃で5時間乾燥した後、口径40mmの単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて240℃で押し出し、厚さ150μmのフィルムを得た。得られたフィルムをロール縦延伸機を用いて120℃で1.9倍に縦延伸した後、テンターを用いて130℃で横2.1に横延伸し、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムのヘーズは0.3%、大きさ50μm未満の異物・欠陥数は12個、50μm以上の異物・欠陥数は0個であった。
(実施例2)
(イミド樹脂の製造)
連続塊状重合法により製造したアクリル系樹脂であるメタクリル酸メチル―スチレン共重合体を、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いてイミド化し、イミド樹脂を製造した。使用した押出機は口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数300rpm、樹脂を1.0kg/hrで供給し、モノメチルアミンの供給量は樹脂に対して30重量部とした。ホッパーから樹脂を投入し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルからモノメチルアミンを注入した。反応ゾーンの末端にはシールリングを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.02MPaに減圧して脱揮した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化した。得られたペレットのガラス転移温度は154℃であった。
(イミド樹脂の製造)
連続塊状重合法により製造したアクリル系樹脂であるメタクリル酸メチル―スチレン共重合体を、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いてイミド化し、イミド樹脂を製造した。使用した押出機は口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数300rpm、樹脂を1.0kg/hrで供給し、モノメチルアミンの供給量は樹脂に対して30重量部とした。ホッパーから樹脂を投入し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルからモノメチルアミンを注入した。反応ゾーンの末端にはシールリングを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.02MPaに減圧して脱揮した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化した。得られたペレットのガラス転移温度は154℃であった。
(フィルムの成形)
得られたペレットを140℃で5時間乾燥した後、口径40mmの単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて270℃で押し出し、厚さ150μmのフィルムを得た。得られたフィルムをロール縦延伸機を用いて162℃で1.9倍に縦延伸した後、テンターを用いて175℃で横2.1に横延伸し、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムのヘーズは0.3%、大きさ50μm未満の異物・欠陥数は15個、50μm以上の異物・欠陥数は0個であった。
得られたペレットを140℃で5時間乾燥した後、口径40mmの単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて270℃で押し出し、厚さ150μmのフィルムを得た。得られたフィルムをロール縦延伸機を用いて162℃で1.9倍に縦延伸した後、テンターを用いて175℃で横2.1に横延伸し、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムのヘーズは0.3%、大きさ50μm未満の異物・欠陥数は15個、50μm以上の異物・欠陥数は0個であった。
(比較例1)
懸濁重合法により製造したアクリル系樹脂であるポリメタクリル酸メチルを使用した以外は実施例1と同様の方法でイミド樹脂を製造し、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたイミド樹脂ペレットのガラス転移温度は120℃、フィルムのヘーズは0.3%、大きさ50μm未満の異物・欠陥数は130個、50μm以上の異物・欠陥数は13個であった。
懸濁重合法により製造したアクリル系樹脂であるポリメタクリル酸メチルを使用した以外は実施例1と同様の方法でイミド樹脂を製造し、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたイミド樹脂ペレットのガラス転移温度は120℃、フィルムのヘーズは0.3%、大きさ50μm未満の異物・欠陥数は130個、50μm以上の異物・欠陥数は13個であった。
(比較例2)
懸濁重合法により製造したアクリル系樹脂であり、高級アルコール系滑剤としてステアリルアルコールを含有するポリメタクリル酸メチルを使用した以外は実施例1と同様の方法でイミド樹脂を製造し、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたイミド樹脂ペレットのガラス転移温度は120℃、フィルムのヘーズは0.3%、大きさ50μm未満の異物・欠陥数は132個、50μm以上の異物・欠陥数は25個であった。
懸濁重合法により製造したアクリル系樹脂であり、高級アルコール系滑剤としてステアリルアルコールを含有するポリメタクリル酸メチルを使用した以外は実施例1と同様の方法でイミド樹脂を製造し、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたイミド樹脂ペレットのガラス転移温度は120℃、フィルムのヘーズは0.3%、大きさ50μm未満の異物・欠陥数は132個、50μm以上の異物・欠陥数は25個であった。
(比較例3)
懸濁重合法により製造したアクリル系樹脂であるメタクリル酸メチル―スチレン共重合体を使用した以外は実施例2と同様の方法でイミド樹脂を製造し、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたイミド樹脂ペレットのガラス転移温度は154℃、フィルムのヘーズは0.3%、大きさ50μm未満の異物・欠陥数は127個、50μm以上の異物・欠陥数は15個であった。
懸濁重合法により製造したアクリル系樹脂であるメタクリル酸メチル―スチレン共重合体を使用した以外は実施例2と同様の方法でイミド樹脂を製造し、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたイミド樹脂ペレットのガラス転移温度は154℃、フィルムのヘーズは0.3%、大きさ50μm未満の異物・欠陥数は127個、50μm以上の異物・欠陥数は15個であった。
Claims (5)
- 前記アクリル系樹脂中に高級アルコール系滑剤を含有しないことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のイミド樹脂。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のイミド樹脂から得られる、光学用フィルム。
- 縦300mm、横200mm、厚さ40μmのフィルムを目視にて平面視したときに認識される、大きさ50μm未満の異物・欠陥数が100個以下、50μm以上の異物・欠陥数が実質0個であることを特徴とする請求項4に記載の光学用フィルム。
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JP2005159338A JP2006335804A (ja) | 2005-05-31 | 2005-05-31 | イミド樹脂、さらにこれを使用した光学用フィルム |
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- 2005-05-31 JP JP2005159338A patent/JP2006335804A/ja active Pending
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