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JP2006316689A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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JP2006316689A JP2005139797A JP2005139797A JP2006316689A JP 2006316689 A JP2006316689 A JP 2006316689A JP 2005139797 A JP2005139797 A JP 2005139797A JP 2005139797 A JP2005139797 A JP 2005139797A JP 2006316689 A JP2006316689 A JP 2006316689A
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Abstract

【課題】 機関停止時のクランク角を機関再始動に適する目標クランク角に正確に制御することができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】 筒内に直接的に燃料噴射を行う燃料噴射弁21と、筒内の混合気への点火を行う点火栓20とを具備し、機関停止中に機関再始動条件が成立した場合に機関停止中に膨張行程の途中にある気筒に燃料噴射及び点火を行うことで内燃機関を再始動させる内燃機関の制御装置において、機関停止直前又は機関停止後に、少なくともいずれか一つの気筒の筒内圧力を低減させることにより、機関停止時に圧縮行程の途中となる圧縮行程気筒と膨張行程の途中となる膨張行程気筒との間で筒内充填空気量が異なるように筒内充填空気量を調整する筒内充填空気量調整手段をさらに具備する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
近年、燃費低減及びCO2排出量の抑制等を目的として、内燃機関を搭載した車両の停車中等に内燃機関の運転を自動的に停止させると共に当該車両が再び発進するときに内燃機関を自動的に再始動させる制御(以下、「エコラン制御」と称す)を行う内燃機関の制御装置が開発されている。斯かるエコラン制御中においては、例えば、車両の停車中であって運転者によるアクセルペダルの踏込み量が零である場合等に機関停止条件が成立し、燃料噴射弁からの燃料の供給や点火栓による点火が中止され、内燃機関の回転が停止せしめられる。その後、アクセルペダルが踏込まれた場合等に機関再始動条件が成立し、再び内燃機関が回転せしめられる。
斯かるエコラン制御を行っている場合に、機関再始動条件が成立した際に常にスタータモータを用いて内燃機関を再始動させようとすると、スタータモータ使用回数が極端に多くなりスタータモータの寿命が短くなる。また、スタータモータの使用増加に伴ってバッテリ充放電負荷が増加するため大容量のバッテリが必要となる。
そこで、特許文献1に記載の装置では、機関停止中に膨張行程の途中にある気筒に対して燃料噴射及び点火を行い、これに伴う混合気の燃焼によってスタータモータを用いることなく内燃機関を始動させるようにしている。これにより、スタータモータの使用回数が少なくなると共に大容量のバッテリも必要なくなる。
特に、特許文献1に記載の装置では、機関停止条件成立後に燃料噴射及び点火を中止するのに伴ってスロットル弁開度を大きくし、各気筒について筒内充填空気量が多くなるようにしている。これにより、機関停止時に圧縮行程の途中となる気筒(以下、「圧縮行程気筒」と称す)及び膨張行程の途中となる気筒(以下、「膨張行程気筒」と称す)に多量に且つほぼ同量の空気が充填され、よって機関停止時にはピストンがその行程の中間位置付近に位置することとなる。
特開2004−124754号 特開2002−39038号
ところで、特許文献1の装置では、膨張行程気筒のピストンがその行程の中間位置付近であって且つ下死点寄りの位置となるようなクランク角(すなわち、膨張行程気筒の筒内容積が圧縮行程気筒の筒内容積よりも多くなるようなクランク角)を目標として機関停止時のクランク角を制御して、再始動性の向上を図っている。斯かる機関停止時のクランク角の制御は、膨張行程気筒への筒内充填空気量よりも圧縮行程気筒への筒内充填空気量の方が多くなるようにスロットル弁の開度を調整することによって行われている。
しかしながら、一般にスロットル弁から各気筒までには或る程度の距離があるため、スロットル弁の開度を小さくするのと同時に各気筒への筒内流入空気量が少なくなるわけではない。したがって、スロットル弁の開度の調整では膨張行程気筒への筒内充填空気量及び圧縮行程気筒への筒内充填空気量を正確に制御するのは困難である。また、圧縮行程気筒への筒内充填空気量が吸気弁閉弁時から少ないと、圧縮行程気筒内の圧縮空気によって生じる内燃機関の回転方向と反対方向に働く力が小さく、よって内燃機関は圧縮行程気筒の圧縮上死点を越えて回転してしまう場合がある。したがって機関停止時のクランク角を目標となるクランク角に正確に制御するのは困難であった。
そこで、本発明の目的は、機関停止時のクランク角を機関再始動に適する目標クランク角に正確に制御することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、第1の発明では、筒内に直接的に燃料噴射を行う燃料噴射弁と、筒内の混合気への点火を行う点火栓とを具備し、機関停止中に機関再始動条件が成立した場合に機関停止中に膨張行程の途中にある気筒に燃料噴射及び点火を行うことで内燃機関を再始動させる内燃機関の制御装置において、機関停止直前又は機関停止後に、少なくともいずれか一つの気筒の筒内圧力を低減させることにより、機関停止時に圧縮行程の途中となる圧縮行程気筒と膨張行程の途中となる膨張行程気筒との間で筒内充填空気量が異なるように筒内充填空気量を調整する筒内充填空気量調整手段をさらに具備する。
第1の発明によれば、筒内圧力を低減させることにより筒内充填空気量を調整しているため、圧縮行程気筒又は膨張行程気筒の筒内充填空気量を正確に制御することができるようになる。
第2の発明では、第1の発明において、上記内燃機関が4気筒であり、上記筒内充填空気量調整手段は機関停止時のクランク角が膨張行程気筒の圧縮上死点を基準として105〜125度となるように筒内充填空気量を調整する。
第3の発明では、第1の発明において、上記内燃機関が6気筒であり、上記筒内充填空気量調整手段は機関停止時のクランク角が膨張行程気筒の圧縮上死点を基準として60〜70度となるように筒内充填空気量を調整する。
第4の発明では、第1〜第3のいずれか一つの発明において、上記少なくともいずれか一つの気筒が圧縮行程気筒であり、上記筒内充填空気量調整手段は、上記圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させることにより、圧縮行程気筒の筒内充填空気量が膨張行程気筒の筒内充填空気量よりも少なくなるように筒内充填空気量を調整する。
第5の発明では、第4の発明において、上記筒内充填空気量調整手段は、機関停止直前に内燃機関が逆回転しているときに、上記圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させる。
第6の発明では、第4の発明において、上記筒内充填空気量調整手段は、内燃機関が正回転から逆回転に移行しようとして一時的に静止している内燃機関の静止時に、上記圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させる。
第7の発明では、第6の発明において、上記内燃機関が一時的に静止するときのクランク角が所定のクランク角となるように内燃機関の運転パラメータを調整する静止クランク角調整手段をさらに具備する。
第8の発明では、第1〜第4のいずれか一つの発明において、上記少なくともいずれか一つの気筒の筒内圧力の低減は、機関停止後であって圧縮行程気筒及び膨張行程気筒の筒内圧力が大気圧よりも高いときに行う。
第9の発明では、第1〜第8のいずれか一つの発明において、吸気弁及び排気弁をさらに具備し、上記少なくともいずれか一つの気筒の筒内圧力の低減を吸気弁又は排気弁の開弁により行う。
第10の発明では、第1〜第8の発明において、吸気弁及び排気弁とは別に筒内圧力を低減させる補助弁を具備し、上記少なくともいずれか一つの気筒の筒内圧力の低減を補助弁の開弁により行う。
第11の発明では、第1〜第10の発明において、機関停止後に吸気弁及び排気弁の開閉弁時期を遅角させる遅角制御を行う。
本発明によれば、圧縮行程気筒又は膨張行程気筒の筒内充填空気量を正確に制御することができるため、機関停止時のクランク角を機関再始動に適する目標クランク角に正確に制御することができるようになる。
以下、図面を参照して本発明の制御装置について詳細に説明する。図1は、本発明の第一の実施形態の制御装置が用いられた内燃機関全体を示す図である。
図1を参照すると、機関本体1は複数の、例えば4つの気筒1aを具備する。各気筒1aはそれぞれ対応する吸気枝管2を介してサージタンク3に連結され、サージタンク3は吸気ダクト4を介してエアクリーナ5に連結される。吸気ダクト4内にはアクチュエータ6により駆動されるスロットル弁7が配置される。また、各気筒1aは排気マニホルド8及び排気管9を介し、排気浄化触媒10を内蔵した触媒コンバータ11に連結される。なお、図1に示される内燃機関では、#1−#3−#4−#2の順で燃焼が行われる。
各気筒1aについて詳しく示す図2を参照すると、12はシリンダブロック、13はシリンダブロック12上に固定されたシリンダヘッド、14はシリンダブロック12内で往復動するピストン、15はピストン14とシリンダヘッド13との間に形成された燃焼室、16は一対の吸気ポート、17は一対の吸気弁、18は一対の排気ポート、19は一対の排気弁をそれぞれ示している。シリンダヘッド13の内壁面の中央部には点火栓20が配置され、シリンダヘッド13内壁面周辺部には燃料噴射弁21が配置される。
各気筒の吸気弁17は吸気弁駆動装置22により開閉駆動される。この吸気弁駆動装置22は、カムシャフトと、クランク角に対するカムシャフトの回転角を進角側と遅角側との間で選択的に切り換えるための切換機構とを具備する。カムシャフトの回転角が進角されると図3にADで示されるように吸気弁17の開弁時期VO及び閉弁時期VCが進角され、従って開閉弁時期が進角される。一方、カムシャフトの回転角が遅角されると図2にRTで示されるように吸気弁17の開弁時期VO及び閉弁時期VCが遅角され、従って開閉弁時期が遅角される。この場合、吸気弁17のリフト量及び作用角(開閉弁期間)が保持されつつ位相角(開閉弁時期)が変更される。図1に示される内燃機関では、カムシャフトの回転角は機関運転状態に応じて進角側又は遅角側に切り換えられる。なお、吸気弁17の開弁時期が連続的に変更される場合や、リフト量又は作用角が変更される場合にも本発明を適用することができる。
また、各気筒の排気弁18は排気弁駆動装置23により開閉駆動される。排気弁駆動装置23も吸気弁駆動装置22と同様にカムシャフトと切換機構とを具備し、この排気弁駆動装置23により排気弁19も吸気弁17と同様に位相角が変更せしめられる。
さらに、シリンダヘッド13には燃焼室15及び排気ポート18に通じる補助排気ポート24が形成され、補助排気ポート24には補助排気ポート24を開閉する補助排気弁25が設けられる。補助排気弁25は補助排気弁駆動装置26により開閉駆動される。補助排気弁駆動装置26は、電磁アクチュエータから形成され、カムシャフトの回転に無関係に補助排気弁25を開閉することができる。
再び図1を参照すると、クランクシャフト27には図示しないクラッチを介して電気モータ28が連結可能になっている。この電気モータ28は例えばいわゆるスタータモータから形成することもできるし、クランクシャフト27により回転駆動されて発電する発電機能を備えた電気モータから形成することもできる。
電子制御ユニット(ECU)30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、電源が常時接続されているB−RAM35(バックアップRAM)、入力ポート36、及び出力ポート37を具備する。
また、アクセルペダル(図示せず)にはアクセルペダルの踏込み量を表す出力電圧を発生するアクセル踏込み量センサ41が取り付けられる。アクセル踏込み量センサ41の出力信号は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。クランクシャフト27にはクランク角を検出するためのクランク角センサ42が取付けられ、クランク角センサ42は入力ポート36に接続される。ECU30では、クランク角センサ42の出力に基づいて機関回転数が算出される。さらに、入力ポート36には、オンにされていることを表す出力パルスを発生するイグニッション(IG)スイッチ43と、オンにされていることを表す出力パルスを発生するキースイッチ44とが接続される。これらイグニッションスイッチ43及びキースイッチ44は内燃機関を搭載した車両の運転者によって操作される。一方、出力ポート37は対応する駆動回路39を介してアクチュエータ6、点火栓20、燃料噴射弁21、各種弁駆動装置22、23、26及び電気モータ28にそれぞれ接続される。
本実施形態の内燃機関は、通常運転時において、吸気行程中に燃料を噴射して燃焼室15全体に亘って混合気の空燃比をほぼ均一にしてから混合気に点火する均質燃焼モードと、点火直前の圧縮行程に燃料を噴射して点火プラグ近傍のみに燃料を偏在させた状態で混合気に点火する成層燃焼モードとの二つの燃焼モードで運転を行うことができる。これら運転モードの選択は、機関負荷、機関回転数に基づいて行われ、例えば機関負荷が小さく且つ機関回転数が低い運転領域においては成層燃焼モードで運転が行われ、機関負荷が高く且つ機関回転数が高い運転領域においては均質燃焼モードで運転が行われる。
図4は、通常運転中に均質燃焼モードで運転が行われている場合のクランク角に対する各気筒の吸気弁17の開閉弁時期、排気弁19の開閉弁時期、燃料噴射時期及び点火時期を示す図である。特に、図4は1番気筒#1の圧縮上死点を0度とした場合のクランク角の変化に対する吸気弁17の開閉弁時期(白い矢印)、排気弁19の開閉弁時期(ハッチングされた矢印)、燃料噴射時期(突出部)、及び点火時期(黒い矢印)を示している。
図示したように、内燃機関の通常運転時(すなわち、後述するエコラン制御等により機関停止が行われていない運転時)にはクランクシャフト27の回転に伴って、各気筒について吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程が順次繰り返し行われる。4番気筒を参照して説明すると、吸気行程中及びその前後において吸気弁17が開弁され、吸気行程中の気筒内に空気が吸入される。また、図4に示した実施形態では、吸気行程中に燃料噴射弁21から燃料が噴射され、吸気行程中の気筒内に混合気が形成される。次いで、圧縮行程において混合気の圧縮が行われると共に圧縮上死点付近で点火栓20によって点火が行われ、これにより混合気の燃焼が起こる。この燃焼による爆発力によって次の膨張行程においてピストン14が押し下げられる。次いで、排気行程中及びその前後において排気弁19が開弁され、排気行程中の気筒内の排気ガスが排出せしめられる。
なお、上記説明では、均質燃焼モードで内燃機関が運転されている場合について説明しているが、成層燃焼モードで内燃機関が運転されている場合には、吸気行程中ではなく圧縮行程中に燃料噴射弁21による燃料噴射が行われる。
また、本実施形態の内燃機関は、運転者によってイグニッションスイッチ43がオンにされると電気モータ28により内燃機関が始動せしめられ、運転者によってキースイッチ44がオフにされると内燃機関の回転(すなわち、クランクシャフト27の回転)が停止せしめられる。
さらに、本実施形態の内燃機関では、運転者によってキースイッチ44がオフにされていないときであっても、所定の機関停止条件が成立した場合に自動的に燃料噴射弁21からの燃料噴射及び点火栓20による点火が中止され、その結果、内燃機関の回転が停止せしめられる。その後、機関再始動条件が成立すると自動的に内燃機関の回転が再び開始せしめられる(すなわち、内燃機関のクランクシャフト27が再び回転せしめられる)。このように、運転者によってキースイッチがオフにされていないときでも一定の条件下で内燃機関の回転を自動的に停止及び再開させる制御(以下、斯かる制御を「エコラン制御」と称す)により、燃料消費の低減及び排気エミッションの悪化の抑制を実現することができる。
ここで、機関停止条件が成立する場合とは、機関負荷が零(すなわちアクセル踏込み量センサ41によって検出されるアクセル踏込み量が零)であって機関回転数が低い場合、又は上記条件に加えて内燃機関を搭載した車両の速度が零の場合等であり、具体的には車両が急激に減速している場合や車両が停車している場合等が含まれる。従って、機関停止条件の成否は、アクセル踏込み量センサ41、クランク角センサ28、内燃機関を搭載した車両の速度を検出する車速センサ(図示せず)、及び運転者によるブレーキペダルの踏込み量を検出するためのブレーキ踏込み量センサ(図示せず)等の出力に基づいてECU30において判断される。
一方、機関再始動条件が成立する場合とは、機関負荷が零でなくなった場合又は機関負荷が零でなくなると予想される場合等であり、具体的には運転者がアクセルペダルを踏込んだ場合や運転者によるブレーキペダルの踏込み量が少なくなった場合等が含まれ、また車両停車中においてはクラッチペダルの踏込み操作やシフト位置をN(ニュートラル)又はP(パーキング)からD(ドライブ)へ変更する操作が行われた場合等が含まれる。従って、機関再始動条件の成否は、アクセル踏込み量センサ41、車速センサ、ブレーキ踏込み量センサ、運転者によるクラッチペダルの踏込みを検出するクラッチセンサ(図示せず)、及びシフトポジションセンサ(図示せず)等の出力に基づいてECU30において判断される。
本実施形態では、エコラン制御により内燃機関の回転が停止された後に機関再始動条件が成立した場合、内燃機関の回転の再開は、内燃機関に外力を加えることなく、すなわち電気モータ28による駆動力を加えることなく、機関停止中に膨張行程の途中にある気筒(以下、「停止時膨張行程気筒」と称す)に対して燃料噴射及び点火を行うことによって行われる。このように内燃機関の回転を再開させることによりエネルギの消費を低減することができる。
外力を加えることなく行う内燃機関の回転の再開について、図5を参照して具体的に説明する。図5は、図4と同様な図であり、機関停止中に機関再始動条件が成立した場合における各気筒の吸気弁17の開閉弁時期等を示す図である。
機関停止条件が成立すると、全ての気筒について燃料噴射及び点火が中止され、内燃機関の回転速度(すなわち、クランクシャフト27の回転速度)が次第に低下し、遂には内燃機関の回転が或るクランク角で停止し、従って各気筒はそれぞれの行程の途中で停止することになる。
図5に示した例では、クランク角が或るクランク角θxにあるときに内燃機関の回転が停止する。この場合、1番気筒(#1)は膨張行程の途中で停止し、3番気筒(#3)は圧縮行程の途中で停止し、4番気筒(#4)は吸気行程の途中で停止し、2番気筒(#2)は排気行程の途中で停止している。
次いで、機関再始動条件が成立すると、内燃機関の回転がクランク角θxにおいて停止した状態で、停止時膨張行程気筒(図5の例では1番気筒)の筒内に燃料噴射弁21から燃料噴射が行われ、噴射された燃料は筒内の空気と共に混合気を形成する。次いで、点火栓20により混合気への点火が行われ、混合気が着火燃焼せしめられる。停止時膨張行程気筒において混合気が着火燃焼されると、この燃焼により得られる駆動力により内燃機関の回転が開始される。なお、上述したように燃料噴射を行う場合、筒内圧力が大気圧となっていたり筒内の空気の温度が大気温となっていたりする状況で燃料噴射が行われるので、噴射された燃料には着火しにくい。このため、本実施形態では、点火栓20による点火作用は複数回に亘って行われる。
さらに、機関再始動条件が成立すると、上述したような停止時膨張行程気筒に対する燃料噴射及び点火に加えて、機関停止中に圧縮行程の途中にある気筒(以下、「停止時圧縮行程気筒」と称す。図5の例では3番気筒)の筒内に燃料噴射弁21から燃料噴射が行われる。斯かる燃料噴射は、機関再始動条件の成立と同時に又は機関再始動条件成立後であって内燃機関の回転が開始された直後に行われる。その後、上述したように停止時膨張行程気筒における燃焼による駆動力によって内燃機関が回転し、クランク角が停止時圧縮行程気筒についての圧縮上死点にあるとき又は圧縮上死点を越えた直後に当該気筒において点火栓20による点火が行われる。これにより、上述した停止時膨張行程気筒における燃焼に続いて、停止時圧縮行程気筒においても燃焼が行われ、内燃機関の運転がより確実に開始されるようになる。
上述したように停止時膨張行程気筒及び停止時圧縮行程気筒について燃焼が行われると、その後、通常通り各気筒において燃焼が順次行われる。特に、機関再始動時においては内燃機関の運転を安定させるために均質燃焼モードで運転が行われるため、吸気行程において燃料噴射が行われる。従って、停止時膨張行程気筒及び停止時圧縮行程気筒における燃焼に次いで通常通りの燃焼が行われる気筒、すなわち機関停止中に吸気行程の途中にある気筒(以下、「停止時吸気行程気筒」と称す。図5の例では4番気筒)に対しては、機関再始動条件の成立と同時に又は機関再始動条件成立後であって内燃機関の回転が開始された直後に燃料噴射が行われることとなる。
なお、機関再始動にあたっては、吸気弁17及び排気弁19の開閉弁時期を遅角しておくことが好ましい。すなわち、吸気弁17の閉弁時期が遅角されることにより停止時圧縮行程気筒及び停止時吸気行程気筒の筒内充填空気量が少なくなり、クランク角が停止時圧縮行程気筒及び停止時吸気行程気筒の圧縮上死点を越え易くなる。また、排気弁19の開弁時期が遅角されることにより停止時膨張行程気筒及び停止時圧縮行程気筒において行われた燃焼によって発生したエネルギを効率的にピストン14に伝達することができ、よって内燃機関の駆動力を大きくすることができる。
ところで、上述したように燃料噴射及び点火を行っても必ずしも内燃機関の回転を再開させることができるわけではなく、機関停止時のクランク角によっては上記燃料噴射及び点火を行っても内燃機関の回転を再開させることができない。これについて、図6及び図7を参照して説明する。図6は、機関停止時において膨張行程気筒におけるピストンの位置と圧縮行程気筒におけるピストンの位置との関係を示す図である。図6では例として機関停止時に1番気筒が膨張行程の途中にある場合を示しており、図中#1及び#3は1番気筒のピストンの位置及び3番気筒のピストンの位置をそれぞれ示している。図7は、機関再始動条件が成立してからのクランク角及び筒内圧力の推移を示す図である。図7では例として機関停止時に1番気筒が膨張行程の途中にある場合を示している。
一般に、機関停止中にはピストン14に設けられたピストンリング14a(図2参照)の合口部等を介して燃焼室15内から空気が流出するため、機関再始動時には全ての気筒において筒内圧力は大気圧となっていることが多い。従って、機関再始動時における各気筒の筒内充填空気量はその気筒の燃焼室15の容積に比例する。
図6(a)に示したように、機関停止時において停止時膨張行程気筒のピストン14の位置がその行程の上端位置(圧縮上死点TDCに対応する位置)に近い場合、停止時圧縮行程気筒のピストン14の位置はその行程の上端位置から離れている。従って、斯かる場合には、機関停止中における停止時膨張行程気筒の燃焼室15の容積(図6中の領域Veに相当)は停止時圧縮行程気筒の燃焼室15の容積(図6中の領域Vcに相当)よりも少なく、よって停止時膨張行程気筒における筒内充填空気量は少なく且つ停止時圧縮行程気筒における筒内充填空気量は多い。
このようなクランク角で内燃機関が停止していると、内燃機関の回転を再開させるために停止時膨張行程気筒に燃料噴射及び点火を行って混合気を燃焼させても停止時膨張行程気筒内の空気量が少ないため、十分な駆動力を得ることができない。一方、停止時圧縮行程気筒内の空気量は多いため、停止時圧縮行程気筒においてピストン14がその行程の上端位置に向かって上昇するのに伴って筒内圧力が非常に大きくなり、よって停止時圧縮行程気筒の筒内圧力は内燃機関の回転に対する大きな抵抗となってしまう。このため、図7(a)に示したように、内燃機関は、停止時圧縮行程気筒の圧縮上死点を越えて回転することができず、すなわち機関停止時のクランク角から180度以上回転することができず、その前に内燃機関は逆回転してしまい、その後停止してしまう。
図6(c)に示したように、機関停止時において停止時膨張行程気筒のピストン14の位置がその行程の上端位置から離れている場合、停止時圧縮行程気筒のピストン14の位置はその行程の上端位置に近いものとなっている。従って、斯かる場合には、機関停止中における停止時膨張行程気筒の燃焼室15の容積(Veに相当)は停止時圧縮行程気筒の燃焼室15の容積(Vcに相当)よりも大きく、よって停止時膨張行程気筒における筒内充填空気量は多く且つ停止時圧縮行程気筒における筒内充填空気量は少ない。
このようなクランク角で内燃機関が停止していると、内燃機関の回転を再開させるために停止時膨張行程気筒に燃料噴射及び点火を行って混合気の燃焼を行った場合、機関停止時における膨張行程気筒のピストン14の位置からその行程の下端位置(下死点BDCに対応する位置)までの距離が短く、混合気の燃焼によってピストン14は僅かにしか押下げられないため、斯かる燃焼によって十分な駆動力を得ることができない。一方、停止時圧縮行程気筒内の空気量が少ないため、停止時圧縮行程気筒においてピストン14がその行程の上端位置に向かって上昇するのに伴う筒内圧力の上昇も小さく、よって停止時圧縮行程気筒の筒内圧力は内燃機関の回転に対する大きな抵抗とならない。このため、図7(c)に示したように、内燃機関は停止時圧縮行程気筒の圧縮上死点を越えて回転することができる。
しかしながら、停止時圧縮行程気筒内の空気量は少ないため、当該気筒の圧縮上死点を越えた後に当該気筒において混合気の燃焼が行われても、斯かる燃焼によって十分な駆動力を得ることができない。このため、図7(c)に示したように、内燃機関は、次に訪れる停止時吸気行程気筒の圧縮上死点を越えて回転することができず、すなわち機関停止時のクランク角から360度以上回転することができず、その前に内燃機関は逆回転してしまい、その後停止してしまう。
一方、図6(b)に示したように、機関停止時の停止時膨張行程気筒のピストン14の位置が図6(a)に示した位置と図6(c)に示した位置との間にある場合、機関停止中における停止時膨張行程気筒の燃焼室15の容積は停止時圧縮行程気筒の燃焼室15の容積よりも僅かに大きく、よって停止時膨張行程気筒における筒内充填空気量は停止時圧縮行程気筒における筒内充填空気量よりも僅かに多い。
このようなクランク角で内燃機関が停止していると、内燃機関の回転を開始させるために停止時膨張行程気筒に燃料噴射及び点火を行って混合気の燃焼を行った場合、斯かる燃焼によって比較的大きな駆動力を得ることができ、よって図7(b)に示したように、内燃機関は停止時圧縮行程気筒についての圧縮上死点を越えて回転することができる。
また、停止時圧縮行程気筒内の空気量も比較的多いため、その圧縮上死点を越えた後に停止時圧縮行程気筒において行われる混合気の燃焼によって十分な駆動力を得ることができる。このため、図7(b)に示したように、内燃機関は次に訪れる停止時吸気行程気筒の圧縮上死点を越えて回転することができ、その後も順次燃焼が行われて、内燃機関の運転が開始される。
図8は、機関停止時における停止時膨張行程気筒の圧縮上死点を基準としたクランク角(以下、「停止クランク角」と称す)と、上述したように停止時膨張行程気筒及び停止時圧縮行程気筒に燃料噴射及び点火を行うことによって内燃機関が回転可能な角度との関係を示した図である。図8(a)に示したように、停止クランク角が小さい場合、特に0〜100度である場合、図6(a)及び図7(a)を用いて説明したように内燃機関は1回目の上死点(すなわち、停止時圧縮行程気筒についての圧縮上死点)を越えて回転することができない。一方、停止クランク角が大きい場合、特に、130〜180度である場合、図6(c)及び図7(c)を用いて説明したように内燃機関は2回目の上死点(すなわち、停止時吸気行程気筒についての圧縮上死点)を越えて回転することができない。一方、停止クランク角が中程度の場合、特に、105〜125度である場合、図6(b)及び図7(b)で説明したように内燃機関は2回目の上死点を越えて回転することができる。従って、停止時膨張行程気筒及び停止時圧縮行程気筒に対する燃料噴射及び点火により内燃機関の回転を再開させるためには、停止クランク角が105〜125度となるように内燃機関を停止させる必要がある。
なお、上記説明では、4気筒の内燃機関を対象としているが、4気筒以上の内燃機関であれば停止時膨張行程気筒及び停止時圧縮行程気筒に対する燃料噴射及び点火により内燃機関の回転を再開させることができ、また、停止時膨張行程気筒及び停止時圧縮行程気筒に対する燃料噴射及び点火により内燃機関の回転を再開させるのに適する停止クランク角は気筒数に応じて異なる。図8(b)は6気筒の内燃機関における図8(a)と同様な図を示しており、この図から6気筒の内燃機関においては停止時膨張行程気筒及び停止時圧縮行程気筒に対する燃料噴射及び点火により内燃機関の回転を再開させるためには、停止クランク角が60〜70度となるように内燃機関を停止させる必要があることがわかる。
そこで、本実施形態では、停止時膨張行程気筒及び停止時圧縮行程気筒に対する燃料噴射及び点火により内燃機関の回転を再開させるのに適する停止クランク角(以下、「目標停止クランク角」と称す)で内燃機関が停止するように内燃機関を制御するようにしている。以下では、内燃機関を目標停止クランク角で停止させる機関停止制御について説明する。
本実施形態では、機関停止条件が成立すると、全ての気筒に対して燃料噴射及び点火を中止すると共に、スロットル弁7の開度を増大させ且つ吸気弁17の閉弁時期を進角させる。スロットル弁7の開度を増大させるとスロットル弁7に起因する吸気抵抗が小さくなり、各気筒内へ空気が流入し易くなり、また、吸気弁17の閉弁時期を下死点に向けて進角させると燃焼室14の容積が大きいときに吸気弁17が閉弁することになる。これにより、機関停止条件成立後においては各気筒への筒内充填空気量は多いものとなる。
このように機関停止の際に各気筒への筒内充填空気量を多いものとすることにより、特に気筒内の圧力を調整しない限り、内燃機関をピストン14がその行程の中間位置付近となるようなクランク角で停止させることができる。すなわち、一般に、燃料噴射及び点火の中止後において内燃機関の回転に対する抵抗(以下、「回転抵抗」と称す)となるのは、主に内燃機関における機械的なフリクション及び圧縮行程の途中にある気筒の筒内圧力によって内燃機関の回転方向と反対向きに働く力(以下、「反発力」と称す)である。従って、機関停止の際に各気筒への筒内充填空気量を少ないものとすると、上記反発力は大きな回転抵抗とはならず、機械的なフリクションのみが主な回転抵抗となるため、内燃機関の停止クランク角はもっぱら機械的なフリクションによって決まる。しかしながら、機械的なフリクションを制御することによって内燃機関の停止クランク角を制御するのは困難である。
一方、機関停止の際に各気筒への筒内充填空気量を多いものとすると、上記反発力が内燃機関の回転に対する大きな抵抗となるため、機械的なフリクションではなく反発力が主な回転抵抗となり、従って内燃機関の停止クランク角は主に反発力によって決まる。従って、各気筒への筒内充填空気量が多ければ、反発力を適切に制御することにより、内燃機関の停止クランク角を適切に制御することができる。特に、機関停止時に圧縮行程の途中となる気筒(以下、「圧縮行程気筒」と称す)及び膨張行程の途中となる気筒(以下、「膨張行程気筒」と称す)内の筒内充填空気量は吸気弁17の閉弁時期が同じであればほぼ同一であり、斯かる場合には両気筒について筒内圧力が等しくなるように内燃機関が停止することになる。従って、特に気筒内の圧力を調整しない限り、内燃機関はピストン14がその行程の中間位置付近に位置するようなクランク角で停止する。本実施形態のように、4気筒の内燃機関では、停止クランク角は90度付近となる。
図9は、機関停止直前におけるクランク角及び筒内圧力の推移を示す図であり、特に1番気筒(#1)が膨張行程の途中にあるときに内燃機関が停止する場合について示している。機関停止条件成立により内燃機関に対する燃料噴射及び点火を中止すると、機関回転数は徐々に低下していき、単位時間当たりに進む内燃機関の回転角度が徐々に小さいものとなっていく。そして、図9に示した例では、時刻t1において膨張行程気筒の圧縮上死点(0度)を越えると、1番気筒の筒内圧力が急激に低下していくのと同時に、次に圧縮上死点をむかえる3番気筒(#3)の筒内圧力が急激に上昇していく。そして、時刻t2において、3番気筒の筒内圧力による反発力が内燃機関の回転慣性力よりも大きなものとなり、これにより内燃機関の回転が一旦静止し、その後内燃機関が逆回転する。
内燃機関が逆回転すると、3番気筒の筒内圧力が低下するのと同時に1番気筒の筒内圧力が再び上昇する。そして、内燃機関が或る程度逆回転すると、1番気筒の筒内圧力により内燃機関の正回転方向に働く力が内燃機関の逆回転方向の慣性力及び3番気筒の筒内圧力による反発力よりも大きなものとなり、内燃機関の回転が一旦静止し、その後内燃機関が再び正回転する(時刻t3)。このように内燃機関は、正回転及び逆回転を繰り返し、最終的にピストン14がその行程の中間位置付近に位置するようなクランク角(図9に示した例では約90度)で停止する。
ここで、内燃機関を上述した目標停止クランク角で停止させるために、少なくともいずれか一つの気筒について筒内圧力を低減させて、膨張行程気筒の筒内充填空気量が圧縮行程気筒の筒内充填空気量よりも多くなるようにすることが考えられる。内燃機関は基本的に膨張行程気筒の筒内圧力と圧縮行程気筒の筒内圧力とが等しくなるように停止するため、いずれか一つの気筒について筒内圧力を適切に低減させることにより、内燃機関を上述した目標停止クランク角で停止させることができるようになる。特に、本実施形態では、上述したようにいずれの気筒についても筒内圧力を低減させないと内燃機関が停止する際に膨張行程気筒の筒内充填空気量と圧縮行程気筒の筒内充填空気量がほぼ等しくなるため、圧縮行程気筒の筒内圧力を低減することにより、すなわち圧縮行程気筒から空気を適切に流出させることにより内燃機関を目標停止クランク角で停止させることができる。
ここで、圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させる時期が問題となる。すなわち、圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させる時期によっては、内燃機関を目標停止クランク角で停止させることができない場合がある。
図10は、図9と同様な図であり、ピストン14の上昇に伴う圧縮行程気筒の筒内圧力の上昇中に当該気筒の筒内圧力を低減させた場合におけるクランク角及び筒内圧力の推移を示している。図からわかるように、3番気筒の筒内圧力上昇中であって内燃機関のクランク角が目標停止クランク角θtにあるときに3番気筒の筒内圧力を低減させると(時刻t4)、3番気筒の筒内圧力による反発力がほとんどなくなるため、内燃機関の慣性力により内燃機関は3番気筒の圧縮上死点(図中の#3TDC)を越えて回転してしまう。そして、3番気筒の圧縮上死点を越えた後、4番気筒の筒内圧力による反発力が回転抵抗となり、よって内燃機関の回転が停止せしめられる。この場合、図からわかるように、内燃機関停止時のクランク角は220度程度であり、すなわち3番気筒の圧縮上死点を基準としたクランク角(停止クランク角)は40度程度となってしまい、目標停止クランク角から大きく離れたクランク角で内燃機関が停止してしまう。
そこで、本実施形態では、内燃機関が一旦停止して圧縮行程気筒の筒内圧力による反発力により逆回転を開始した直後に圧縮行程気筒の筒内圧力を低減するようにしている。
図11は、図8及び図9と同様な図であり、内燃機関の逆回転中に圧縮行程気筒の筒内圧力を低減した場合のクランク角及び筒内圧力の推移を示している。図からわかるように、内燃機関が逆回転を開始した直後に圧縮行程気筒(図11の例では3番気筒)の筒内圧力を低減させると、圧縮行程気筒の筒内圧力による反発力が小さくなると共に圧力低減時において内燃機関の逆回転方向の慣性力は未だ小さいため、筒内圧力の低減が行われてから直ぐに内燃機関の逆回転が停止せしめられる。従って、本実施形態では、内燃機関の逆回転中であってクランク角が目標停止クランク角に達する前又は達した時に圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させることにより、内燃機関を目標停止クランク角で停止させるようにしている。
また、圧縮行程気筒の筒内圧力の低減を開始する時のクランク角は、内燃機関が正回転から逆回転に変わるときのクランク角(以下、「逆転クランク角」と称す)に応じて定める。すなわち、逆転クランク角が圧縮行程気筒の圧縮上死点に近い場合には筒内圧力の低減を開始する時のクランク角を圧縮行程気筒の圧縮上死点側に移動させ、逆転クランク角が圧縮行程気筒の圧縮上死点から離れている場合には筒内圧力の低減を開始する時のクランク角も圧縮行程気筒の圧縮上死点から離れる側に移動させる。これは逆転クランク角から筒内圧力の低減を開始する時のクランク角までの角度が大きいと、その間に内燃機関の逆回転方向の慣性力が大きくなり、筒内圧力の低減を行ってから内燃機関が完全に停止するまでに内燃機関が回転する角度が大きくなるためである。
なお、本実施形態では、筒内圧力の低減は補助排気弁25を開弁することによって行われる。また、上述したように機関再始動時には吸気弁17及び排気弁19の開閉弁時期を遅角させるのが好ましいため、本実施形態では内燃機関が完全に停止した後に吸気弁17及び排気弁19の開閉弁時期を遅角させるようにしている。
図12は、上述した機関停止制御を実行する制御ルーチンのフローチャートである。まず、ステップ101においてアクセル踏込み量センサ41及びクランク角センサ28等の出力に基づいて機関停止条件が成立したか否かが判定される。機関停止条件が成立していないと判定された場合には制御ルーチンが終了せしめられる。一方、機関停止条件が成立していると判定された場合には、ステップ102へと進む。
ステップ102〜ステップ104では、燃料噴射及び点火が中止されると共に、各気筒への筒内充填空気量を多くするために、スロットル弁7のスロットル開度が増大され、吸気弁17が進角される。次いで、ステップ105では、内燃機関が逆回転を開始したか否かが判定される。ステップ105において、内燃機関が逆回転を開始していないと判定された場合、すなわち内燃機関がまだ正回転している場合には、ステップ105が繰り返される。一方、ステップ105において、内燃機関が逆回転を開始したと判定された場合には、ステップ106へと進み、クランク角センサ42により内燃機関が逆回転を開始したときのクランク角、すなわち逆転クランク角Acrが検出される。
次いで、ステップ107では、ステップ106において検出された逆転クランク角Acに基づいて筒内圧力の減圧を開始すべき減圧開始クランク角Actが算出される。より詳細には、逆転クランク角と減圧を開始すべき減圧開始クランク角との関係を予め実験的に又は計算によって求め、マップとしてECU30のROM32に保存し、このマップに基づいて上記減圧開始クランク角Actの算出が行われる。次いで、ステップ108においてクランク角センサ42によって検出された現在のクランク角Acが、上記減圧開始クランク角Actとなっているか否かが判定され、クランク角Acが減圧開始クランク角Actと異なる場合にはステップ108が繰り返される。一方、ステップ108において、クランク角Acが目標クランク角Actと同じであると判定された場合にはステップ109へと進む。ステップ109では、圧縮行程気筒の補助排気弁25が開弁せしめられ、圧縮行程気筒の筒内圧力の低減が行われ、その後内燃機関が停止せしめられる。
次に、本発明の第二の実施形態の制御装置について説明する。本実施形態では、内燃機関及び制御装置の構成は基本的に上記第一の実施形態における構成と同様である。ただし、第二の実施形態では圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させる時期が第一の実施形態における当該時期とは異なっており、第二の実施形態では内燃機関が正回転から逆回転へと移り変わろうとして一旦静止したとき(以下、「静止時」と称す)に圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させることとしている。
図13は、図9〜図11と同様な図であり、内燃機関が正回転から逆回転へと移り変わろうとして一旦静止したときに圧縮行程気筒の筒内圧力を減圧した場合のクランク角及び筒内圧力の推移を示している。図からわかるように、内燃機関が静止した時に圧縮行程気筒(図11の例では3番気筒)の筒内圧力を低減させると、圧縮行程気筒の筒内圧力による反発力が小さくなると共に圧力低減時において内燃機関の回転慣性力は全くないため、筒内圧力の減圧が行われたときのまま又はその後僅かに逆回転して内燃機関が停止せしめられる。このように、本実施形態では、内燃機関の静止時に圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させることにより、内燃機関を目標停止クランク角で停止させるようにしている。
ただし、このようにして内燃機関を目標停止クランク角で停止させるためには、上記静止位置が目標停止クランク角付近でなければならない。そこで、本実施形態では、内燃機関を目標停止クランク角付近で静止させるように、機関停止条件成立時又はその直後にスロットル弁7の開度又は吸気弁17の開閉弁時期を調整するようにしている。
図14は、吸気弁17の閉弁時期に応じた機関停止直前におけるクランク角等の推移を示しており、図14(a)は吸気弁17の閉弁時期が進角されている場合、図14(c)は吸気弁17の閉弁時期が遅角されている場合、図14(b)は吸気弁17の閉弁時期が図14(a)に示した場合と図14(c)に示した場合との中間にある場合をそれぞれ示している。
上述したように吸気弁17の閉弁時期が進角されている場合には各気筒への筒内充填空気量が多くなる。このため、図14(a)に示したように、圧縮行程気筒及び膨張行程気筒の筒内圧力はかなり高く、よって筒内圧力による反発力は大きい。従って、吸気弁17の閉弁時期が進角されている場合には、機関停止直前に大きな振幅でクランク角が振動し、これに伴って図14(a)に示した例では内燃機関は順に170、40、140、70度のクランク角で静止する。
一方、吸気弁17の閉弁時期が遅角されている場合には各気筒への筒内充填空気量が少ない。このため、図14(c)に示したように、圧縮行程気筒及び膨張行程気筒の筒内圧力はあまり高くなく、よって筒内圧力による反発力は小さい。従って、吸気弁17の閉弁時期が遅角されている場合には、機関停止直前に小さい振幅でクランク角が振動し、これに伴って図14(c)に示した例では内燃機関は順に140、50度のクランク角で静止する。
吸気弁17の閉弁時期がこれらの中間にある場合、図14(b)に示したように各気筒への筒内充填空気量は中程度であり、よって筒内圧力による反発力も中程度である。従ってこの場合、機関停止直前に中程度の振幅でクランク角が振動し、これに伴って図14(b)に示した例では内燃機関は順に160、50、120、80度のクランク角で静止する。
このように、吸気弁17の閉弁時期を調整することによって、内燃機関が静止するクランク角を制御することができる。そこで、本実施形態では、内燃機関が目標停止クランク角で静止するように吸気弁17の閉弁時期を調整すると共に、内燃機関が静止した時に圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させるようにしている。例えば、目標停止クランク角が160度である場合には、吸気弁17の閉弁時期を中程度にすると共に、内燃機関が静止したときに補助排気弁25を開弁させる。
なお、機関停止条件成立時又はその直後にスロットル弁7の開度を調整することによっても同様に内燃機関の静止位置を調整することができる。すなわち、スロットル弁7の開度を大きくすると筒内充填空気量が増大し、内燃機関のクランク角は図14(a)に示したように推移し、逆にスロットル弁7の開度を小さくすると筒内充填空気量が減少し、よって内燃機関のクランク角は図14(c)に示したように推移する。
また、スロットル弁7の開度及び吸気弁17の閉弁時期を適切に制御したとしても内燃機関の静止位置が目標停止クランク角にならない場合もあるため、斯かる場合には第二の実施形態の制御装置を第一実施形態の制御装置と組み合わせて用いてもよい。すなわち、内燃機関の静止位置が目標停止クランク角にならなかった場合には、内燃機関の静止時に圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させるのではなく、内燃機関の逆回転時に圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させて内燃機関を目標停止クランク角で停止させるようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させる手段として補助排気弁25を用いているが、それ以外の手段を用いることも可能である。例えば、燃焼室15及び吸気ポート16に通じる補助吸気ポートを形成し、補助吸気ポートに当該ポートを開閉する補助吸気弁を設けたものを、圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させる手段として用いてもよい。或いは、補助ポート及び補助ポートを設けずに、吸気弁17及び排気弁19をこれらの代わりとして用いてもよい。この場合、例えば、吸気弁19の閉弁時期を遅角させることによって圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させるために圧縮行程気筒の吸気弁19を開弁させることができる。また、吸気弁駆動装置22又は排気弁駆動装置23が電磁アクチュエータから形成されている場合には、この電磁アクチュエータに開弁信号を送信することによって圧縮行程気筒の筒内圧力を減圧させるようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、内燃機関が完全に停止する前に圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させることによって内燃機関を目標クランク角で停止させるようにしている。しかしながら、内燃機関が完全停止した時、またはその直後であって圧縮行程気筒及び膨張行程気筒の筒内圧力が大気圧にまで低下していない時に圧縮行程気筒又は膨張行程気筒の筒内圧力を低減させ、内燃機関が一旦完全停止した後に圧縮行程気筒と膨張行程気筒との差圧によって内燃機関を僅かに回転させて、内燃機関を目標クランク角で停止させるようにしてもよい。上述したように内燃機関はピストン14がその行程の中間位置付近に位置するようなクランク角で停止することが多いため、この場合、内燃機関が一旦完全停止した時又はその直後に圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させることになる。
なお、上記説明では、キースイッチ44がオンにされている場合における機関停止時の再始動について説明しており、従ってキースイッチ44がオフにされることによって内燃機関の回転が停止した場合の再始動は基本的に電気モータによって行われる。これは、キースイッチ44がオフにされている場合に内燃機関の回転が停止してから再始動させるまでの間に内燃機関のクランク角が変わってしまう場合があることによるものである。ただし、キースイッチ44がオフにされている間に内燃機関のクランク角が変わっていなければ、キースイッチ44がオフにされることによって内燃機関の回転が停止した後にキースイッチ44がオンにされて再始動させる場合においても同様の制御を行ってもよい。
なお、上記説明において「膨張行程気筒」とは、機関停止時に膨張行程の途中となる気筒として説明しているが、より詳細にはいずれの気筒においても筒内圧力の減圧を行わない場合に機関停止時に膨張行程の途中になると予想される気筒及び機関停止時に実際に膨張行程の途中となっている気筒を意味し、同様に「圧縮行程気筒」とは、いずれの気筒においても筒内圧力の減圧を行わない場合に機関停止時に圧縮行程の途中になると予想される気筒及び機関停止時に実際に圧縮行程の途中となっている気筒を意味する。
本発明が適用される内燃機関の全体図である。 各気筒の概略断面図である。 吸気弁の開閉弁時期を示す図である。 通常運転時における各気筒のサイクル、燃料噴射時期、及び点火時期を示す図である。 機関停止中に機関再始動条件が成立した場合における燃料噴射期間、点火時期、吸気弁の開閉弁期間及び排気弁の開閉弁期間を示す図である。 膨張行程気筒におけるピストンの位置と圧縮行程気筒におけるピストンの位置との関係を示す図である。 機関再始動条件が成立してからのクランク角及び筒内圧力の推移を示す図である。 停止クランク角と、その停止クランク角から内燃機関を再始動させようとした場合に回転可能な角度との関係を示した図である。 機関停止の際におけるクランク角及び筒内圧力の推移を示す図である。 圧縮行程気筒の筒内圧力の上昇中に当該気筒の筒内圧力を低減させた場合におけるクランク角及び筒内圧力の推移を示す図である。 内燃機関の逆回転中に圧縮行程気筒の筒内圧力を減圧した場合のクランク角及び筒内圧力の推移を示す図である。 機関停止制御を実行する制御ルーチンのフローチャートである。 内燃機関が正回転から逆回転へと移り変わろうとして一旦静止したときに圧縮行程気筒の筒内圧力を減圧した場合のクランク角及び筒内圧力の推移を示す図である。 吸気弁の閉弁時期に応じた機関停止直前におけるクランク角等の推移を示す図である。
符号の説明
1 機関本体
1a 気筒
15 燃焼室
17 吸気弁
19 排気弁
20 点火栓
21 燃料噴射弁
22 吸気弁駆動装置
23 排気弁駆動装置
25 補助排気弁
26 補助排気弁駆動装置
27 クランクシャフト
28 電気モータ
30 ECU

Claims (11)

  1. 筒内に直接的に燃料噴射を行う燃料噴射弁と、筒内の混合気への点火を行う点火栓とを具備し、機関停止中に機関再始動条件が成立した場合に機関停止中に膨張行程の途中にある気筒に燃料噴射及び点火を行うことで内燃機関を再始動させる内燃機関の制御装置において、
    機関停止直前又は機関停止後に、少なくともいずれか一つの気筒の筒内圧力を低減させることにより、機関停止時に圧縮行程の途中となる圧縮行程気筒と膨張行程の途中となる膨張行程気筒との間で筒内充填空気量が異なるように筒内充填空気量を調整する筒内充填空気量調整手段をさらに具備する、内燃機関の制御装置。
  2. 上記内燃機関が4気筒であり、上記筒内充填空気量調整手段は機関停止時のクランク角が膨張行程気筒の圧縮上死点を基準として105〜125度となるように筒内充填空気量を調整する、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 上記内燃機関が6気筒であり、上記筒内充填空気量調整手段は機関停止時のクランク角が膨張行程気筒の圧縮上死点を基準として60〜70度となるように筒内充填空気量を調整する、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 上記少なくともいずれか一つの気筒が圧縮行程気筒であり、上記筒内充填空気量調整手段は、上記圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させることにより、圧縮行程気筒の筒内充填空気量が膨張行程気筒の筒内充填空気量よりも少なくなるように筒内充填空気量を調整する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 上記筒内充填空気量調整手段は、機関停止直前に内燃機関が逆回転しているときに、上記圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させる、請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 上記筒内充填空気量調整手段は、内燃機関が正回転から逆回転に移行しようとして一時的に静止している内燃機関の静止時に、上記圧縮行程気筒の筒内圧力を低減させる、請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
  7. 上記内燃機関が一時的に静止するときのクランク角が所定のクランク角となるように内燃機関の運転パラメータを調整する静止クランク角調整手段をさらに具備する、請求項6に記載の内燃機関の制御装置。
  8. 上記少なくともいずれか一つの気筒の筒内圧力の低減は、機関停止後であって圧縮行程気筒及び膨張行程気筒の筒内圧力が大気圧よりも高いときに行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  9. 吸気弁及び排気弁をさらに具備し、上記少なくともいずれか一つの気筒の筒内圧力の低減を吸気弁又は排気弁の開弁により行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  10. 吸気弁及び排気弁とは別に筒内圧力を低減させる補助弁を具備し、上記少なくともいずれか一つの気筒の筒内圧力の低減を補助弁の開弁により行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  11. 機関停止後に吸気弁及び排気弁の開閉弁時期を遅角させる遅角制御を行う、請求項1〜10のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
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