JP2006218353A - 電解処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電極(陰極)にスケールが析出することを利用して、循環水中のスケール成分を除去し、系内のスケール生成傾向を下げ、その析出スケールを容易に溶解し、排出することができる電解処理方法及び電解処理装置を提供する。
【解決手段】電解処理工程にあっては、陽極3、陰極4間に電圧を印加し、電解装置1に貯水槽51からの水を循環通水し、電解処理する。陰極4の近傍では水素が発生してアルカリ性となる。陰極4の近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらが電極表面に析出することからスケール化傾向が低減される。スケール除去工程にあっては、エゼクタ12から炭酸ガス混合水を背後室6へ供給すると共に、通水スペース5へ配管9から炭酸ガスを供給し、電解装置内を加圧状態とすると共に、電解装置内の水中のCO2濃度を0.03%以上とする。
【選択図】図1
【解決手段】電解処理工程にあっては、陽極3、陰極4間に電圧を印加し、電解装置1に貯水槽51からの水を循環通水し、電解処理する。陰極4の近傍では水素が発生してアルカリ性となる。陰極4の近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらが電極表面に析出することからスケール化傾向が低減される。スケール除去工程にあっては、エゼクタ12から炭酸ガス混合水を背後室6へ供給すると共に、通水スペース5へ配管9から炭酸ガスを供給し、電解装置内を加圧状態とすると共に、電解装置内の水中のCO2濃度を0.03%以上とする。
【選択図】図1
Description
本発明は循環型冷却水系などスケール障害が問題になる水系におけるスケール析出を防止するための電解処理方法に関する。
工場、ビルなどのコンプレッサー、冷凍機で発生した廃熱は、熱交換器を介して冷却水(冷却媒体)で冷却されている。熱交換器において、廃熱との熱交換で温度が上昇した冷却水は開放型冷却塔で空気と接触することで蒸発して放熱、冷却され、再び熱交換器に循環される。従って、このような循環型冷却水系では、冷却塔で蒸発ないし飛散して減少した水量に相当する補給水が補給されて運転が行われている。
しかし、そのままでは補給水中に含有されるスケール成分が冷却水系内で濃縮されて、その溶解度を超え、熱交換器の伝熱面、冷却塔の充填材や底部或いは配管にスケールとして析出して付着し、熱交換効率の低下、通水抵抗の増加といった様々な運転障害を引き起こす。
そこで、系内をスケール析出が起こらない硬度で運転するために、冷却塔の底部から、濃縮された冷却水をブロー水として系外へ排出し、補給水で全体を希釈することにより、循環冷却水を一定の水質で運転管理することが行われている。ここで、ブロー水量を多くして、系内のスケール成分濃度を低くして運転すると、補給水を多く必要として水道料金が過大となる。反対に、ブロー水量を少なくして高濃縮運転を行うと、冷却水中のスケール成分が溶解度を超え難溶塩のスケールが析出することとなる。
従来、このような冷却水系内のスケール析出を防止するために、リン酸系薬剤やカルボン酸系など各種ポリマーよりなるスケール防止剤を添加することが行われているが、薬剤コストが嵩む。また、溶存した薬剤が放流域に住む水生生物へ影響を与える可能性があることから、下水道放流又は水処理が必要となるという問題もあった。また、薬剤は定期的に補充することが必要であり、その人員コストも問題となっている。
このようなスケール防止剤を使用しない方法として、物理的スケール防止技術が提案されている。
例えば、特開2003−190988号公報には、冷却水系の補給水または循環水を、極性が変わるバイポーラ電極を有する電解装置に通水し、補給水または循環水に含まれるスケール成分を微小な結晶として析出させることにより、冷却水系におけるスケール付着、特に伝熱面におけるスケール付着を防止する方法が記載されている。
この電解装置においては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の陽イオンは導電性粒子の陰極側に集まり、炭酸イオン、シリカなどは陽極側に集まる。陰極付近が高pHのため、陰極付近でスケールが析出する。正負の極性を逆に変換すると陰極は陽極となり、電極表面のpHが低下する。そうすることで核とならずに陰極上に析出したスケールを溶解し、電解不良を防ぐことができる。電極近傍で析出したスケールは循環水中へ流れ出て、非常に微細な結晶が冷却水中に分散したものとなる。この微細結晶が核となって、循環水中のスケール成分は系内の熱交換部や冷却塔よりも核を中心に析出する。次第に核は大きくなるが、ブロー水と共に排出され、伝熱面等へのスケール付着が防止される。
即ち、上記特開2003−190988号公報の電解装置を備えた冷却水系において、電解装置で生じた微粒子を含んだ冷却水は熱交換器や冷却塔へ送り込まれ、その部位において溶解度が過飽和状態になる。過飽和状態において新たに結晶核を生成するために必要なエネルギーと既に存在する結晶を元に結晶成長するために必要なエネルギーでは既に存在する結晶を元に成長する方がはるかに必要なエネルギーが小さいので、流れてきたスケール成分の微粒子を種晶としてその上にスケール成分が析出する。そして、微細結晶は堆積するまでは成長せずにブローラインより排出される。
また、特表2001−502229号公報には、円筒形容器内に黒鉛よりなる1対の電極を配置すると共に、該電極間に黒鉛等の炭素質材料よりなる導電性の粒子と、シリカ、ガラス、プラスチック等の非導電性の粒子とを混合充填し、この電極間に通電しつつ円筒形容器に水を通水させてスケール生成を低減する方法が記載されている。同号の記載によると、この通電処理によりアルカリが生成し、このアルカリによって結晶核が生成し、スケール生成傾向が低下する。このスケール防止方法では、アルカリ領域でスケール微細結晶の生成と共に電極へのスケール付着も起こり、定期的な洗浄が必要となる。この洗浄方法として、一定時間で電極を極性転換し、アルカリ側でスケール付着した電極を酸性領域とし、スケールを剥離・溶解させる技術がある。
しかしながら、電極の極性を転換させる方法では、極性転換によって陽極と陰極が反転するために電極自体の酸化・還元が繰り返され、電極が劣化し易い。電極の多くは酸化・還元どちらかの用途で用いられるが、両極で用いる場合、極性転換の時間によっては電極としての機能を果たす時間が非常に短くなる。例えば、グラファイト電極の場合、陽極で電極自身が酸化され、グラファイト粉末が流出して劣化する。不溶性電極としてよく使用される白金酸化物やイリジウム酸化物を被覆したチタン電極では、陽極での酸化には耐性を有するが、陰極では酸化物が剥離して劣化が進み易い。電極の交換を頻繁に行うことで上記問題は解決されるが、それに要する電極交換費が過大となる。
特開2000−140849号公報には、凹凸の金属電極ユニットを備えた電解装置に被処理水を通してスケール成分を陰極面に析出させ、さらに極性反転して析出したスケール成分を系外へ除去する装置および方法が記載されている。この方法の問題点は、極性転換により電極が劣化し易いこと、及び、極性転換のみでは、付着したスケールの除去性が不十分なことである。即ち、一定量のスケールが電極に付着してから極性転換したときには、スケールが付着した部分が非導電性となり、電流に分布が生じる。従って、スケールが溶解する酸性領域が形成されるのはスケールが付着していない部分からとなり、スケールの剥離・溶解に時間がかかる。
電極劣化を回避したスケール洗浄方法として、特開平9−141266号公報には、スケールが付着した電解槽を、副電解槽で発生させた酸性水を用いて洗浄する方法および装置が記載されている。しかしながら、この場合には、酸性水を発生させる副電解槽にスケールが析出する。また、洗浄効果を高めるために酸性水を過剰に供給した場合や、酸性水の水素イオン濃度を高めた場合には、放流水のpHが5以下となり、下水道法令pH5.8〜8.6の範囲外となるという問題もある。
特開2003−190988号公報
特表2001−502229号公報
特開2000−140849号公報
特開平9−141266号公報
本発明は、循環型冷却などスケール障害が問題となる水系の水を電解装置に通水して電解処理する方法において、電極(陰極)にスケールが析出することを利用して、水中のスケール成分を除去し、系内のスケール生成傾向を下げ、その析出スケールを容易に溶解し、排出することができる電解処理方法を提供することを目的とする。
請求項1の電解処理方法は、電極を有する電解装置に被処理水を通水して電解して、前記電極表面にスケールを析出させる電解処理工程と、該電解装置に二酸化炭素を供給して前記電極に析出したスケールを除去するスケール除去工程とを有し、該スケール除去工程における電解装置内の水中のCO2濃度を0.03%以上とすることを特徴とするものである。
請求項2の電解処理方法は、請求項1において、該スケール除去工程での電解装置内の圧力を大気圧よりも高い加圧状態とすることを特徴とするものである。
請求項3の電解処理方法は、請求項1又は2において、前記スケール除去工程における通水線速度を0.05〜3m/secとすることを特徴とするものである。
請求項4の電解処理方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記スケール除去工程で電解装置から排出される排水を前記循環水及び/又は補給水で希釈してから系外に排出することを特徴とするものである。
請求項5の電解処理方法は、請求項1ないし4のいずれか1項において、洗浄時の循環流速をパルス状に変化させることを特徴とするものである。
請求項6の電解処理方法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、洗浄時に循環ライン中にCO2ガスまたは空気を吹き込むことを特徴とするものである。
本発明の電解処理方法によって循環型冷却水系におけるスケール析出を防止する場合には、循環型冷却水系の水を電解装置に通水して電解処理する。
この電解装置において、冷却水は以下のように電解される。
陽極:2H2O→O2+4H++4e−
陰極:4H2O+4e−→4OH−+2H2
陽極:2H2O→O2+4H++4e−
陰極:4H2O+4e−→4OH−+2H2
この反応により陰極近傍では水素と水酸化物イオンが発生し、アルカリ性となる。このため、陰極近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらがスケールとして電極表面に析出することから冷却水系のスケール化傾向が低減される。従って、循環冷却水又は補給水をこの電解装置に通水することにより、循環冷却水のスケール生成傾向が低下する。
本発明の電解処理方法によると、薬品を使用せずに、循環冷却水中スケール成分を析出させず、腐食を起こさない一定濃度で運転することができるため、熱交換部や冷却塔でのスケール析出の防止ないし抑制及び腐食の低減が可能となる。また、補給水の硬度が高い地方においては高濃縮運転が可能となり、節水に繋がる。
なお、補給水には塩化物イオンなどの塩素成分が含まれているので、電解処理により次亜塩素酸などの酸化剤が発生する。これにより、循環型冷却水系における水の殺菌を行うことができる。
この電解処理により、スケール除去を継続していると、電極上へのスケール付着量が増加してくるので、所定時間おきに電解処理装置に二酸化炭素を供給して該スケールを除去する。
なお、スケールは炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムを主成分とするものであり、これらは二酸化炭素と次のように反応して溶解除去される。
CO2+H2O→H2CO3+H++HCO3 − (二酸化炭素の水への溶解)
CaCO3+CO2+H2O→Ca2++2HCO3 − (炭酸カルシウムの溶解)
Ca(OH)2+2H+→Ca2++2H2O (水酸化カルシウムの溶解)
MgCO3+CO2+H2O→Mg2++2HCO3 −(炭酸マグネシウムの溶解)
Mg(OH)2+2H+→Mg2++2H2O (水酸化マグネシウムの溶解)
CO2+H2O→H2CO3+H++HCO3 − (二酸化炭素の水への溶解)
CaCO3+CO2+H2O→Ca2++2HCO3 − (炭酸カルシウムの溶解)
Ca(OH)2+2H+→Ca2++2H2O (水酸化カルシウムの溶解)
MgCO3+CO2+H2O→Mg2++2HCO3 −(炭酸マグネシウムの溶解)
Mg(OH)2+2H+→Mg2++2H2O (水酸化マグネシウムの溶解)
この二酸化炭素による溶解方式によると、酸洗浄用薬品の購入や危険な搬入作業が無くなり、薬品コストが削減されると共に、作業の安全性が向上する。また、二酸化炭素を市水に溶解させた場合、水のpHは5を下回ることはなく、スケールを溶解させた溶液はpH6以上となるので、下水道放流が可能となる。
スケール除去工程において電解処理に二酸化炭素を供給する場合、電解装置内の圧力を大気圧よりも高く、好ましくは0.05〜0.2MPa(約0.49〜1.96atm)高い加圧状態とする。電解装置内を加圧状態とすることにより、カルシウム硬度成分の炭酸ガス溶解水中への溶解度が高くなり、スケール除去を短時間で効率良く行うことが可能となる。また、このため、スケール溶解のための設備を小型化、コンパクト化することができる。この電解装置等は密閉系となるので、CO2が系外に漏れることがなく、CO2の使用量も削減される。
加圧時の圧力が0.2MPa以下であれば、第2種圧力容器の対象にはならない。
このスケール除去工程において、電解装置内の水中のCO2濃度を0.03%以上とすることにより、スケールの溶解速度が十分に高くなる。また、この際の通水線速度を高くするほどスケールの溶解速度が大きくなるので、この通水線速度を0.05m/sec以上とすることが好ましい。ただし、通水動力コストを抑制するために、通水線速度は3m/sec以下とすることが好ましい。
本発明では、電極に析出したスケールの溶解当量の1〜3倍モル程度の二酸化炭素を電解処理装置に供給することにより、スケールを十分に除去することができる。
スケール除去工程で電解装置から排出される排水にはカルシウム硬度成分が高濃度に含まれているので、循環水及び/又は補給水で希釈してから系外に排出するのが好ましく、特にカルシウム硬度を300mgCaCO3/L以下として排出するのが好ましい。
なお、CO2溶解水と接触したスケールはCO2との反応によって軟質化する。そこで脈動を送ったり、溶液に気体を混ぜることで剪断力が増し、スケールを剥離しやすくなる。即ち、スケールは分散状態で溶液との接触面積が大きいほど溶解しやすくなるので剥離は有効な手段である。
なお、CO2溶解水と接触したスケールはCO2との反応によって軟質化する。そこで脈動を送ったり、溶液に気体を混ぜることで剪断力が増し、スケールを剥離しやすくなる。即ち、スケールは分散状態で溶液との接触面積が大きいほど溶解しやすくなるので剥離は有効な手段である。
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1,2はそれぞれ実施の形態に係るスケール除去装置の系統図であり、図3は冷却水系の概略的な系統図である。
図3の通り、水はクーリングタワー50で冷却され、貯水槽51に貯留される。この冷却水が循環ポンプ52を介して熱交換器53へ送られ、熱交換後、クーリングタワー50で冷却され、貯水槽51に戻される。
この貯水槽51内の水をポンプ55を介して電解装置1又は20に通水し、電解処理した後、貯水槽51に戻す。貯水槽51内の水は適宜ブローされ、代わりに補給水が供給される。
次に、図1を参照して電解装置1の構成について説明する。
電解装置1は、ケーシング2内に陽極3と陰極4とを配置し、陽極3と陰極4との間の通水スペース5に貯水槽51からの水を通水して電解処理するよう構成している。この実施の形態では、陰極4は多孔体よりなり、該陰極4を挟んで通水スペース5と反対側には二酸化炭素受入れ用の背後室6が形成されている。
通水スペース5の一端側には、貯水槽51からの水を導入するための配管7が弁8を介して接続されていると共に炭酸ガスの導入用の配管9が弁10を介して接続されている。通水スペース5の他端側には、電解処理された水を貯水槽51へ戻すための配管16が弁15を介して接続されている。
背後室6には、エゼクタ12の流出水が弁13を介して導入可能とされている。このエゼクタ12へは、炭酸ガス溶解用の水の供給配管11と、炭酸ガス供給用配管14とが接続されている。
電解処理工程にあっては、陽極3、陰極4間に電圧を印加すると共に、弁10,13を閉、弁8,15を開とする。貯水槽51からの水は、前記ポンプ55を経て配管7、弁8を介して通水スペース5に通水され、電解処理された後、弁15、配管16を介して貯水槽51に戻される。
この電解処理工程にあっては、通水スペース5内の陰極4の近傍では水素が発生してアルカリ性となる。このため、陰極4の近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらがスケールとして電極表面に析出することから冷却水系のスケール化傾向が低減される。
従って、貯水槽51内の水をこの電解装置に通水することにより、循環冷却水のスケール生成傾向が低下する。貯水槽51の水の代わりに、補給水をこの電解装置で処理してから貯水槽51へ供給するようにしてもよい。
なお、スケールが主に炭酸塩として析出することにより、系内の硬度成分だけでなく重炭酸イオンも除去して循環水のpHを低下させることができる。
溶液の腐食・スケール傾向を計るインデックスであるランジェリア指数(以下LSIと記載する。)は、正の値になるほどスケール析出傾向となり、負の値になるほど腐食傾向となり、0のときにどちらの傾向も示さない。電解装置1により硬度成分と重炭酸イオンの両方を除去してpHを下げることにより、LSIを0.5〜1.0の若干スケール傾向となるようにコントロールするのが好ましい。LSIを0.5〜1.0程度の正の値で管理し、スケールが析出しない過飽和に近い濃度でスケール成分を残存させておくことで、系内配管や熱交換器への腐食速度の低減が可能となる。循環水中のカルシウム硬度は冷却水系の熱交換部や配管、冷却塔の充填材などにスケールを析出させない80〜120mgCaCO3/Lで運転することが望ましく、さらにはMアルカリ度を80〜120mgCaCO3/Lに制御して、飽和指数LSIを0.5〜1.0にすることが好ましい。
この実施の形態では、陰極4を多孔体にて構成しているため、水と陰極4との接触面積が大きく、スケール成分を効率よく析出させることができる。
なお、電解処理時の通水スペース5内での水の流速(線速)は0.5m/sec以下、例えば0.1〜0.5m/sec程度が好適である。このように流速を小さくすると、陰極4の表面に析出するスケールが非常に柔らかく、除去し易いものとなる。
陰極4を構成する多孔体の材料としては、導電性を有し、酸に不溶な材料が好ましく、具体的にはガラス質炭素、不溶性金属、金属酸化物、SUSなどの金属複合物が好適である。なお、多孔体電極の空隙率は30〜97%の範囲が好ましく、特に80〜97%が好適である。陽極には不溶性の金属電極、酸化耐性のある電極を使うのが好ましく、具体的には、白金、イリジウムを被覆したチタン電極や白金メッキ電極等が好ましい。なお、電解処理工程において、陽極3と陰極4とに印加する電圧を反転させないので、白金、イリジウムを被覆したチタン電極を陽極に用いることができる。
陽極3と陰極4との間隔は3〜20mm特に5〜10mmが好適である。
この電解処理を継続すると、陰極4のスケール付着量が増加してくるので、電解処理工程を停止し、スケール除去工程を行う。このスケール除去工程にあっては、弁8を閉、弁13,15を開とすると共に、エゼクタ12へ配管11を介して水を供給し、配管14を介して炭酸ガスを供給する。このエゼクタ12へ供給する水としては、水道水、工業用水、地下水などが好適である。炭酸ガス源としては炭酸ガスボンベを用いるのが好ましい。
エゼクタ12からの炭酸ガス気泡を巻き込んだ炭酸ガス溶解水は、背後室6から多孔体よりなる陰極4を透過して通水スペース5へ流出し、陰極4に付着していたスケールを溶解させる。この際、この水に含まれていた気泡がスケールと接触して陰極4から剥離させる作用も奏される。
さらに、このスケール除去工程にあっては、弁10を開とし、配管9から炭酸ガスを通水スペース5へ直接に吹き込むのが好ましい。これにより、陰極4の表面付近が激しい撹拌状態となり、陰極4に付着していたスケールが剥離する。
このスケール除去工程においては、電解装置1内の圧力を大気圧よりも高く、好ましくは0.05〜0.2MPa高い加圧状態とする。これにより、水中への炭酸ガスの溶解度が高くなり、スケール溶解速度が向上する。なお、このときの電解装置1内の水中のCO2濃度は0.03%以上特に0.07〜0.27%であることが好ましい。
また、スケール除去工程での電解装置1内の通水線速度を0.05〜3m/sec特に0.5〜1m/secとすることが好ましい。この通水線速度を0.05m/sec以上とすることにより、スケール溶解速度が十分に高いものとなる。また、3m/sec以下とすることにより、通水のための動力コストを低くすることができる。
このスケールの除去工程においては、炭酸ガスの使用量は付着スケールの1〜3倍モル量程度が好適である。かかる少量の炭酸ガスによってもスケールを十分に除去することができ、炭酸ガスコストも安い。なお、スケール除去工程において、配管16から流出する水は貯水槽51に導入され、適宜、該貯水槽51に設けられているブローライン(図示略)を介して排出される。一般に、水道水に二酸化炭素を飽和させた水ではpH4.8以下になることはなく、炭酸カルシウムを溶解させた放流水のpHは5.8以上となるので、このブローラインからの排出水は中和処理することなく放流することができる。
このようにスケール除去工程の電解装置排水を循環水で希釈する代りに、補給水で希釈して放流してもよい。いずれの場合も、放流水中のカルシウム硬度が300mgCaCO3/L以下となるように希釈するのが好ましい。
次に、図2の電解装置20について説明する。
この電解装置20は、ケーシング21内に陽極22と陰極23とを所定間隔をあけて対面配置し、両者間を通水スペースとしたものである。
この通水スペースの一端側に貯水槽51からの水導入用の配管24が弁25を介して接続されると共に、エゼクタ32が弁33を介して接続されている。
このエゼクタ32は水槽40内の水がポンプ30及び配管31を介して供給されると共に、該水槽40の上部から炭酸ガスが配管36を介して供給される。
通水スペースの他端側には、電解処理された水を貯水槽51へ戻すための配管27が弁26を介して接続されていると共に、スケール除去工程で排水をケーシング21から流出させるための配管35が弁34を介して接続されている。
この配管35の末端は水槽40に接続されている。
この水槽40は密閉タンクよりなるものであり、その上部に炭酸ガスボンベ41から配管42及び弁43を介して炭酸ガスが導入可能とされている。また、水槽40の上部には炭酸ガス放出弁44が設けられている。水槽40内の炭酸ガス圧が圧力コントローラ45によって検知され、この圧力が所定範囲となるように弁43,44が開閉制御される。水槽40の底部には、配管35から水と共に流入してきた固形物を捕集するためのトラップ46が設けられ、該トラップ46に固形物排出弁47が設けられている。
図示はしないが、この水槽40には水道水、工業用水などの炭酸ガス溶解用水の供給ラインが接続されていると共に、スケール溶解水の排出ラインが接続されている。
なお、陽極22、陰極23の構成材料は、図1の場合と同様のものを用いることができる。陽極22と陰極23との間隔も同様に、3〜20mm特に5〜10mm程度が好適である。
次に、この電解装置20の作動について説明する。
水槽40内に規定水位まで炭酸ガス溶解用水を貯留させると共に、水槽40内の上部に炭酸ガスボンベ41から規定圧力となるように炭酸ガスを導入しておく。
電解処理工程にあっては、陽極22、陰極23間に電圧を印加すると共に、弁33,34を閉、弁25,26を開とする。貯水槽51からの水は、前記ポンプ55を経て配管24、弁25を介して電解装置20に通水され、電解処理された後、弁26、配管27を介して貯水槽51に戻される。
図1の電解装置1の場合と同様に、この電解処理工程にあっては、陰極23の近傍では水素が発生してアルカリ性となる。このため、陰極23の近傍で重炭酸イオンが炭酸イオンに解離し、Caイオン及びMgイオンより炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが生成し、これらが陰極表面に析出することからスケール化傾向が低減される。従って、貯水槽51内の水をこの電解装置に通水することにより、循環冷却水のスケール生成傾向が低下する。貯水槽51の水の代わりに、補給水をこの電解装置20で処理してから貯水槽51へ供給するようにしてもよい。
この電解処理を継続すると、陰極23にスケールが付着してくるので、電解処理工程を停止し、スケール除去工程を行う。このスケール除去工程にあっては、弁25,26を閉、弁33,34を開とすると共に、ポンプ30を作動させる。これにより、水槽40内の水がエゼクタ32へ供給され、該エゼクタ32から炭酸ガス気泡を巻き込んだ炭酸ガス溶解水が電解装置20内に供給される。これにより、陰極23に付着していたスケールが溶解する。
電解装置20内の液及びそれに混在する炭酸ガスの気泡は、配管35を介して水槽40に導入され、気液分離される。水はポンプ30を介して再びエゼクタ32へ供給される。水槽40内において水から離脱した炭酸ガスは、配管36を介して再度エゼクタ32へ供給される。配管35から水槽40内に流入した水に含まれていた固形物は、トラップ46に溜まり、適宜に弁47を開とすることにより排出される。水槽40内の上部の炭酸ガス圧は、コントローラ45によって所定範囲に保たれる。
スケール除去工程では電解装置20内の圧力を大気圧よりも高くし、特に大気圧よりも0.05〜0.2MPa高くし、電解装置20内の水中のCO2濃度を0.03%以上とし、電解装置20内の通水線速度を0.1〜3m/secとすることが好ましく、炭酸ガスの電解装置20への供給量は付着したスケールの1〜3倍モル量程度とするのが好適である。タンクの容積は、スケールの除去量によって異なるが、溶解させたときの硬度成分濃度が1500mgCaCO3/L以下となるものが好ましい。
所定時間、このスケール除去工程を行った後、ポンプ30を停止し、弁33,34を閉とする。その後、弁25,26を開とし、電解処理工程に復帰する。
水槽40内の水は、スケール除去工程に繰り返し使用可能である。水槽40内の水が汚れてきたとき、あるいはカルシウムが飽和してきたときには、一部又は全部を排出し、代わりに炭酸ガス溶解用水を水槽40に供給する。この水槽40からの排出水も、炭酸カルシウムが析出しないように、カルシウム硬度が300mgCaCO3/L以下となるように循環水及び/又は補給水で希釈して放流することが望ましい。
この図2の実施の形態では、循環型冷却水系を循環している冷却水のMアルカリ度が120mg−CaCO3/Lを超えないように電解装置20を運転することが望ましい。電解装置20でのスケール析出量は陽極22、陰極23間に通電する直流電流値によって制御することが可能である。
実験例1
図2のケーシング21、陽極22、陰極23よりなる電解装置20を、内容積25mL、電極間距離5mm、電極間面積0.5dm2となるように製作した。そして、弁34,33間をマグネットポンプ付き配管で接続した。
図2のケーシング21、陽極22、陰極23よりなる電解装置20を、内容積25mL、電極間距離5mm、電極間面積0.5dm2となるように製作した。そして、弁34,33間をマグネットポンプ付き配管で接続した。
弁25,26を開いてケーシング21内に炭酸カルシウム粉末45gを分散させた水道水15Lを供給した。
次いで、ケーシング21内の空気を炭酸ガスに置換した。なお、RUN1では大気圧とし、RUN2,3ではゲージ圧が+0.1MPa又は+0.2MPaとなるようにケーシング21内を加圧状態とした。
マグネットポンプを駆動し、通水線速度1m/secにて240分間水を循環させた。
その後、ポンプを停止し、水中に溶解したカルシウム硬度を測定した。その結果を図4に示す。図4の通り、ケーシング内を加圧状態とすることにより、カルシウム硬度の溶解度が増大する。
実験例2
上記実験例1において、ケーシング内に循環水を通水して電解処理し、電極表面にCaCO3スケールを2g付着させた。次いで、実験例1のRUN3(ゲージ圧0.2MPa)と同様にして水をマグネットポンプで循環させた。通水線速度を0.2、0.5又は1m/secとし、スケール溶解率を測定した。結果を図5に示す。図5の通り、通水線速度を大きくすると、溶解速度が増大する。
上記実験例1において、ケーシング内に循環水を通水して電解処理し、電極表面にCaCO3スケールを2g付着させた。次いで、実験例1のRUN3(ゲージ圧0.2MPa)と同様にして水をマグネットポンプで循環させた。通水線速度を0.2、0.5又は1m/secとし、スケール溶解率を測定した。結果を図5に示す。図5の通り、通水線速度を大きくすると、溶解速度が増大する。
1,20 電解装置
2,21 ケーシング
3,22 陽極
4,23 陰極
12,32 エゼクタ
40 水槽
45 コントローラ
2,21 ケーシング
3,22 陽極
4,23 陰極
12,32 エゼクタ
40 水槽
45 コントローラ
Claims (6)
- 電極を有する電解装置に被処理水を通水して電解して、前記電極表面にスケールを析出させる電解処理工程と、
該電解装置に二酸化炭素を供給して前記電極に析出したスケールを除去するスケール除去工程と
を有し、該スケール除去工程における電解装置内の水中のCO2濃度を0.03%以上とすることを特徴とする電解処理方法。 - 請求項1において、該スケール除去工程での電解装置内の圧力を大気圧よりも高い加圧状態とすることを特徴とする電解処理方法。
- 請求項1又は2において、前記スケール除去工程における通水線速度を0.05〜3m/secとすることを特徴とする電解処理方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記スケール除去工程で電解装置から排出される排水を前記循環水及び/又は補給水で希釈してから系外に排出することを特徴とする電解処理方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、洗浄時の循環流速をパルス状に変化させることを特徴とする電解処理方法。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、洗浄時に循環ライン中にCO2ガスまたは空気を吹き込むことを特徴とする電解処理方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005031951A JP2006218353A (ja) | 2005-02-08 | 2005-02-08 | 電解処理方法 |
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CN107244772A (zh) * | 2017-05-03 | 2017-10-13 | 浙江大学 | 空气冲刷脱垢的电化学软化水方法与系统 |
CN111039474A (zh) * | 2019-12-26 | 2020-04-21 | 西安泰金工业电化学技术有限公司 | 一种电厂循环水处理系统及方法 |
CN112479447A (zh) * | 2020-11-19 | 2021-03-12 | 河海大学 | 一种水中含卤有机物的去除装置及其去除方法 |
-
2005
- 2005-02-08 JP JP2005031951A patent/JP2006218353A/ja active Pending
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