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JP2006265067A - チタン酸バリウム粉末およびその製法、並びにチタン酸バリウム焼結体 - Google Patents

チタン酸バリウム粉末およびその製法、並びにチタン酸バリウム焼結体 Download PDF

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吉健 寺師
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Abstract

【課題】粉末中の格子内水酸基およびCO 2−などの炭素化合物量を低減し、焼結後に高誘電率化できる新規なチタン酸バリウム粉末およびその焼結体を提供することを目的とする。また、本発明は、新規なチタン酸バリウム粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】平均粒子径が30〜90nmの範囲内にあり、格子内水酸基の存在量が赤外線吸収測定の検出限界内であり、かつ、熱重量分析において600〜800℃の範囲における重量変化率が0.1質量%以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、チタン酸バリウム粉末およびその製法、並びにチタン酸バリウム焼結体に関し、特に、誘電材料、半導性材料、その他各種電子材料の原料として用いられる有用なチタン酸バリウム粉末およびその製法並びにチタン酸バリウム焼結体に関する。
近年、携帯電話などのモバイル電子機器は、高機能かつ高信頼性が要求され、それに用いる電子部品もまた高性能化および高信頼化の要求とともに、より小型化が求められている。このようなモバイル機器を構成する実装基板に搭載される積層セラミックコンデンサなどの電子部品は誘電体層の薄層化のために、その出発原料の微細化が求められてきている。例えば、積層セラミックコンデンサ(MLCC)に現在使用されている誘電体層の厚さは1μm以下であり、その原料となるBaTiO粉末の粒径はサブミクロンのオーダーである。
このような状況下にあって、不純物や欠陥を低減させたチタン酸バリウム粉末を合成できる蓚酸バリウムチタニルの熱分解法を改良した合成方法が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に記載されたチタン酸バリウム粉末の合成法は、蓚酸バリウムチタニル4水和物を空気中で加熱する第1の工程と、第1の工程により得られた生成物を、減圧下で加熱する第2の工程よりなるものであり、このような製法により得られたチタン酸バリウム粉末は、格子内水酸基の存在量が赤外線吸収測定法または熱重量分析法の検出限界内にあり、このため平均粒子径が59〜300nmであっても比誘電率が3400より大きくなることが記載されている。
特開2004−339040号公報
図2は従来のチタン酸バリウム粉末についての赤外線吸収測定の結果を示す図である。また、図3は従来のチタン酸バリウム粉末についての熱重量分析の結果を示す図である。上記特許文献1に記載した従来の製法により得られたチタン酸バリウム粉末は、工程の一部に減圧下で加熱する方法を採用していることから、生成した粉末は格子内水酸基の存在量が検出限界以下であり高純度なチタン酸バリウム粉末は得られている。
しかしながら、当該粉末においても、より詳細な分析では、粉末中にCO 2−などの炭素化合物が残存しており、高純度のものが得られにくく、そのため、このような粉末を焼成して得られた焼結体は比誘電率が低いものであった。
従って本発明は、粉末中の格子内水酸基およびCO 2−などの炭素化合物量を低減し、焼結後に高誘電率化できる新規なチタン酸バリウム粉末およびその焼結体を提供することを目的とする。また、本発明は、新規なチタン酸バリウム粉末の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のチタン酸バリウム粉末は、(1)平均粒子径が30〜90nmの範囲内にあり、格子内水酸基の存在量が赤外線吸収測定の検出限界内であり、かつ、熱重量分析において600〜800℃の範囲における重量変化率が0.1質量%以下であることを特徴とするものであり、特に、(2)正方晶性を示す格子定数比c/aが1.005〜1.008の範囲内にあることが好ましく、(5)上記本発明のチタン酸バリウム粉末を成形し焼成することにより本発明のチタン酸バリウム焼結体が得られる。
そして、このようなチタン酸バリウム粉末は、(3)バリウムおよびチタンを含む化合物を空気中で加熱する第1の工程と、前記第1の工程により得られた生成物を温度600℃以上、1000℃未満の減圧下でプラズマ加熱する第2の工程と、を具備する製法により得られ、特に、この製法では、(4)バリウムおよびチタンを含む化合物が、炭酸バリウムおよび酸化チタンの混合物または蓚酸バリウムチタニル4水和物であることが好ましい。
本発明のチタン酸バリウム粉末は微粒であっても上記のように高純度であるために、焼結体について高い比誘電率を得ることができる。
また本発明の製法では、バリウムおよびチタンを含む化合物を空気中で加熱する第1の工程と、第1の工程により得られた生成物を減圧下でマイクロ波による内部加熱する第2の工程を採用することから、高純度の新規なチタン酸バリウム粉末を容易に得ることができる。
以下、本発明にかかるチタン酸バリウム粉末および焼結体、並びにその製法について詳細に説明する。
本発明にかかるチタン酸バリウム粉末の平均粒子径は、30〜90nmの範囲内にあることを特徴とする。平均粒子径が30nm以上であると、チタン酸バリウム粒子における自発分極の大きさが、通常、単結晶で報告されている自発分極に近い大きさを持つことができるという利点がある。平均粒子径が90nm以下であると、チタン酸バリウム粒子における自発分極が、室温における熱振動により等価な6方位間を高速でフリッピング(熱揺らぎ)することができるという利点があり、このようなチタン酸バリウム粉末を用いて焼結体に形成した場合に高密度化かつ高誘電率化を達成できる。
また、本発明のチタン酸バリウム粉末は、その粉末の格子内水酸基の存在量が、赤外線吸収測定の検出限界内にあることを特徴とする。格子内水酸基の存在量が、赤外線吸収測定の検出限界内であると、チタン酸バリウム結晶の格子内には不純物が存在しないことになり、格子振動を妨げる障害がなくなるという利点がある。赤外線吸収測定法の検出限界とは、具体的には0.1%程度であると考えられる。熱重量分析法の検出限界とは、具体的には0.001%程度であると考えられる。格子内水酸基の存在量は、赤外線吸収測定での波数3510cm−1付近において吸収ピークが見られない状態である。
また本発明によれば、熱重量分析法において600〜800℃の範囲における重量変化率が0.1質量%以下であることを特徴とする。熱重量分析において600〜800℃の範囲における重量変化率が0.1質量%以下であると、原料粉末に含まれる炭素化合物を殆ど除くことができ、極めて高純度化した粉末が得られる。このような粉末では粉末の内部に水酸基などの存在により形成される四角空隙型結晶欠陥のような欠陥が無く、より高純度の粉末となる。
また、本発明に係る高純度化されたチタン酸バリウム粉末によれば、粉末の平均構造が正方晶となり、特に、正方晶性を示すc/a比が1.005〜1.008の範囲内であれば粉末の誘電分極が高まり比誘電率がさらに高まる。さらに本発明のチタン酸バリウム粉末はその内部が正方晶構造からなり、表面層が立方晶構造からなり、前記内部と前記表面層との間に、正方晶性(c/a比)が連続的に変化する構造変化層が存在するものであることが望ましい。このように粉末内に正方晶性(c/a比)が連続的に変化する構造変化層が存在すると、正方晶と立方晶とが隣接して共存することにより、この両結晶の境界において強誘電体の相転移境界と同様の効果が生じて高誘電率化となる。つまり、チタン酸バリウム粉末において、正方晶性を示すc/a比が1.005〜1.008の範囲内にあると、正方晶から立方晶への相転移による巨大誘電率の発現を引き起こせるという利点がある。
チタン酸バリウム粉末の平均粒子径が、30nmより小さいと、結晶構造が正方晶になりにくく、このため比誘電率が低いものとなり、一方、平均粒子径が90nmよりも大きい場合には焼結体が緻密化せず、また、本発明の目的とする薄層化した誘電体層において高い絶縁性を維持することが困難となる。
また、格子内水酸基の存在量が、赤外線吸収測定法または熱重量分析法の検出限界内よりも多くなり、かつ、熱重量分析法において600〜800℃の範囲における重量変化率が0.1質量%よりも多い場合には、粉末中に水酸基や炭素化合物が多く存在することになり、粉末の高純度化が困難となり高誘電率のチタン酸バリウム粉末が得られない。
つまり、本発明によれば、チタン酸バリウム粉末の平均粒子径を30〜90nm、特に45〜80nmの範囲であり、格子内水酸基の存在量が赤外線吸収測定の検出限界内であり、また、600〜800℃の範囲における重量変化率が0.1質量%以下、特に、0.05質量%以下とすることで、前記チタン酸バリウム粉末を焼成して得られた焼結体の比誘電率を1000以上、2500以上、さらには3000以上に高めることができる。
また、焼成して得られたチタン酸バリウム焼結体の相対密度は98%以上の範囲にあることが好ましい。相対密度が98%以上であると、チタン酸バリウム結晶内において格子振動の伝搬を阻害する空孔やボイドと呼ばれる空隙部分が少なく、正常な格子振動とほぼ同様な振動状態を得られるという利点があり高誘電率化が可能となる。
また本発明にかかるチタン酸バリウム粉末のBa/Ti原子比は、波長分散型X線蛍光分析の測定精度から、チタン酸バリウムの格子内のBa/Ti原子比として0.995〜1.004の範囲にあることが好ましい。チタン酸バリウムのBa/Ti原子比が、この範囲にあると、チタン酸バリウム結晶格子内において、バリウム欠損やチタン欠損という格子振動の伝搬を阻害する箇所が十分に少なく、正常な格子振動とほぼ同様な振動状態を得られるという利点がある。
次に、チタン酸バリウム粉末の製造方法について説明する。チタン酸バリウム粉末の製造方法は、次の工程よりなる。第1の工程は、バリウムおよびチタンを含む化合物を、空気中で加熱する工程である。この第1の工程では、チタンイオンの価数を+4に保ったまま、大部分のCOやHO等の含有物を放出できる。
第1の工程では、バリウムおよびチタンを含む化合物として、炭酸バリウムおよび酸化チタンの混合物(例えばBaCO、Ba(OH)、TiO)を好適に用いたり、蓚酸バリウムチタニル4水和物(例えばBaTiO(C・4HO)を好適に用いることができる。
また第1の工程では、雰囲気が空気であることが好ましい。雰囲気が空気であると、純酸素の場合と比べて、雰囲気作りが容易であり製造コストを安く抑えることができ、可燃性などの事故を引き起こす要因を抑えられるという利点がある。なお第1の工程の雰囲気は空気に限定されるものではなく、このほか、酸素、合成空気などを採用することができる。
第1の工程の加熱温度は300〜550℃の範囲にあることが好ましい。加熱温度が300℃以上であると、BaCO、Ba(OH)、TiO、蓚酸バリウムチタニル4水和物の熱分解により、余分な水分や蓚酸を除去できるという利点がある。加熱温度が550℃以下であると、BaTiOなどの中間生成物の生成を抑制できるという利点がある。第1の工程における加熱温度とはその工程での最高保持温度を意味する。
第1の工程の加熱時間は0.5〜5時間の範囲にあることが好ましい。加熱時間が0.5時間以上であると、BaCO、Ba(OH)、TiO、蓚酸バリウムチタニル4水和物の熱分解を行うことができるという利点がある。加熱時間が5時間以下であると、BaTiOなどの中間生成物を抑制できるという利点がある。
図1は、本発明の製法における第2の工程を行う装置を示す図である。本発明のチタン酸バリウム粉末の製法における第2の工程では、加熱に際し、減圧しながらプラズマ加熱処理を行うものである。図1中の符号1は電気炉本体、3は高周波プラズマ発生機、5は等温断熱容器、7は試料、9は減圧装置である。
本発明では電気炉本体1の内部に据えられた等温断熱容器5の内部に試料7である第1の工程を経て得られた粉末を置き、等温断熱容器5の外側に設置した高周波プラズマ発生機3によりプラズマを発生させ減圧しながら粉末の加熱を行うものである。つまり第2の工程は、前記第1の工程により得られた生成物を、減圧下でマイクロ波により内部加熱する工程である。
第2の工程では、第1の工程により得られた生成物から減圧下でしかも低温でCOを放出できるため、低温でのチタン酸バリウム粉末の生成を促進させ、一方、低温のためにその粒成長を抑制できるため、ナノサイズのチタン酸バリウム粉末を容易に形成できる。
特に本発明によれば、マイクロ波加熱することにより、従来の単なる減圧下での加熱する場合に比較して第1の工程で得られた中間生成物から、特に粉末内部からのCOの放出をさらに容易にでき、こうして熱重量分析の600〜800℃の範囲における重量変化率が0.1質量%のチタン酸バリウム粉末となる。
この第2の工程は減圧下で処理を行うものであるが、雰囲気は空気が好ましく、その圧力は0.0133Pa〜0.133Paの範囲にあることが好ましい。圧力が0.0133Pa〜0.133Paの範囲であると、放電することなく効率よくマイクロ波の発生が可能となり、通常の大気圧で行う場合よりも300℃以上低い温度で高純度のチタン酸バリウム粉末を合成できるという利点がある。
本発明の製法における第2の工程の加熱温度は600℃以上、1000℃未満であることが重要であり、特に700℃〜900℃の範囲内にあることが好ましい。マイクロ波による加熱温度が600℃以上であると、COを完全に脱離させ、チタン酸バリウム単相のナノサイズの粉末を生成できるという利点がある。加熱温度が1000℃未満であると、チタン酸バリウム粉末の活性度を保持したものが形成でき、また、ナノ粒子の粒成長を90nm以下に抑制できるという利点がある。
第2の工程の加熱時間は0.5〜5時間の範囲にあることが好ましい。加熱時間が0.5時間以上であると、COを完全に脱離させ、チタン酸バリウム単相のナノ粒子を生成できるという利点がある。加熱時間が5時間以下であると、チタン酸バリウムのナノサイズの粉末の粒成長を抑制できるという利点がある。
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、従来の製法により得られていたチタン酸バリウム粉末よりも高純度のものとなり、これにより、さらに比誘電率の高いチタン酸バリウム焼結体を提供できる。このように微粒化し、高誘電率化したチタン酸バリウム粉末を用いると、微粒子をそのままの状態で用いた微粒子-ポリマーコンポジット誘電体等のデバイスに応用できる。
また、本発明を実施するための最良の形態によれば、チタン酸バリウム粉末の製法が、バリウムおよびチタンを含む化合物を空気中で加熱する第1の工程と、該第1の工程により得られた生成物を減圧下でマイクロ波加熱する第2の工程からなることから、高純度かつ高誘電率の焼結体が得られる新規なチタン酸バリウム粉末の製法を提供することができる。
つぎに、本発明にかかる実施例について具体的に説明する。本実施例で作製したチタン酸バリウム粉末を次の方法で合成した。まず、炭酸バリウムおよび酸化チタンの混合物原料を使用した。この原料はBa/Ti原子比が1となるように調合し、この中の不純物として考えられるSr、Si、Al、Na、Feがそれぞれ0.01%未満という非常に高純度の原料である。
なお、原料粉末は、1次粒子の大きさは炭酸バリウム、酸化チタンそれぞれ、約100nm、約30nmである。この原料を用いて2段階の工程による熱分解法を用いてチタン酸バリウム粒子の合成を行った。
第1の工程では、炭酸バリウムおよび酸化チタンの混合物原料50gを焼成装置を用いて、空気中、昇温速度3℃/minで500℃まで加熱し、最高温度に達した後、その温度で3時間保持した。
その後、第2の工程では、さらに真空排気して減圧(0.0133Pa)しながら(図1参照)、周波数2.45GHzの交流電界によりプラズマを発生させ、4℃/minで表1に示す温度まで昇温した後5時間保持しチタン酸バリウム粉末を作製した。
以降、各粉末の名称を簡単のため、A−1(第2工程580℃処理0.0133Pa)、A−2(第2工程600℃処理0.0133Pa)、A−3(第2工程700℃処理0.0133Pa)、A−4(第2工程800℃処理0.0133Pa)、A−5(第2工程850℃処理0.133Pa)、A−6(第2工程900℃処理0.0133Pa)、A−7(第2工程1000℃処理0.0133Pa)とする。
これ以外に、原料粉末として蓚酸バリウムチタニル4水和物からのチタン酸バリウム粉末の合成を行った。この場合、まず、蓚酸バリウムチタニル4水和物50gを図1の装置を用いて、空気中、昇温速度3℃/minで500℃にて加熱した。
その後、第2工程では、さらに真空排気して減圧(圧力0.133Pa、0.13Pa)状態としながら、周波数2.45GHzの交流電界によりプラズマを発生させ、4℃/minで表1に示した温度まで昇温後、1時間保持した。その後、電気炉の電源を切り、排気しながら室温まで徐令した。この操作により、25g近いチタン酸バリウム粉末を合成した。
次に、得られたチタン酸バリウム粉末を直径20mm、厚み2mmのペレット状に成形し、これをホットプレス焼成(HP)により800〜900℃、2時間焼成しチタン酸バリウム粉末からなる焼結体試料を得た。次に得られたチタン酸バリウム粉末および焼結体の評価を行った。
(ア)格子内水酸基の存在量は、赤外線吸収スペクトルの測定により求めた。赤外線吸収スペクトルは波長800〜4000cm−1の範囲とした。赤外線吸収法では、まず各試料を100℃の乾燥機で一晩乾燥させた後、KBr粉末で1質量%の濃度で試料を加え、瑪瑙乳鉢を用いて十分に混合した後、ハンドプレス成型器を用いて測定用のペレットを作製した。一方、試料を加えないKBr粉末のみでもペレットを作製し、これを参照試料として、各試料の赤外線吸収スペクトルを測定した。なお、赤外線吸収スペクトルにおける水酸基の存在は、KAPPHANとWEBER(S.KAPPHAN and G WEBER,Ferroelectrics 37(1981) 673)によれば、3510cm−1付近に鋭い吸収帯が現れることで確認できる。また、1440cm−1付近の吸収帯により炭素化合物の存在を確認できる。この場合、水酸基および炭素化合物が存在しない状態のサンプルのレベルはチタン酸バリウムの焼結体の分析結果を基にして、このチタン酸バリウムの焼結体のピークに対して1%以内であれば、水酸基および炭素化合物が存在しない状態であり、ピーク強度が1%よりも大きい場合には水酸基および炭素化合物が存在するものとした。
(イ)熱重量分析では、窒素雰囲気中において常温から1000℃まで測定し、その中で、600〜800℃における重量変化率を求めた。熱重量分析では不純物の存在量とその存在場所を推定することができる。200℃付近までは物理吸着した化学種によるものである。200℃から600℃の範囲では化学吸着した水や不純物量を確認できる。そして600〜800℃において炭素化合物の含有量を確認できる。
(ウ)次に、得られたチタン酸バリウム粉末について、平均粒子径を透過型電子顕微鏡観察を行うことにより求めた。まず、各チタン酸バリウム微粒子を1−プロパノール10ml中に数十mgほど加え、超音波ホモジナイザーを用いて十分に撹拌した。この低濃度の懸濁液を試料ホルダーである銅メッシュに滴下し、乾燥したものを試料とした。この試料を透過型電子顕微鏡にセットし、その明視野像を試料ごとに10枚近く撮影した。それぞれの写真から、各試料について100個以上の粒子径を測定し、それを平均化したものを平均粒子径と定義した。
(エ)焼結体についての平均粒子径は走査型電子顕微鏡を用いて撮影した写真に対角線を引き、線上に存在する粒子についてそれぞれ最大径を測定し平均化して求めた。
(オ)粉末および焼結体についての結晶構造(正方晶性を示すc/a比を含む)は、X線回折を用いたリートベルト解析により求めた。
(カ)焼結体についての比誘電率は、LCRメータを用いて、1MHz、1v、1分間保持後の測定により求めた。
(キ)チタン酸バリウム焼結体の密度はアルキメデス法により測定し、作製した焼結体の主構成鉱物の格子定数と分子量から求めた真密度に対する相対密度を求めた。
比較例として、炭酸バリウムおよび酸化チタンの混合物原料を用いた場合(R−1)、並びに、蓚酸バリウムチタニル4水和物(R−2)について、第1の工程では大気焼成装置を用いて、空気中、昇温速度3℃/minで500℃まで加熱した。第2の工程では、真空排気して減圧(圧力0.133Pa、0.13Pa、温度850℃)状態としながら4℃/minで表1に示した温度まで昇温後、1時間保持して作製した。つまり、プラズマを発生させない条件で加熱した。比較例の試料についても上記(ア)〜(キ)の評価を行った。結果を表1に結果を示した。
Figure 2006265067
表1の結果から、本発明の試料では、炭酸塩と酸化物の混合粉末の場合、あるいは蓚酸チタニルバリウムを用いた場合のいずれにおいても、
(ア)赤外線吸収スペクトルの3510cm−1付近に吸収帯がみられず、格子内水酸基を含まないものであった。また、炭素化合物も存在しないものであった。
(イ、ウ)チタン酸バリウム粉末の平均粒子径は、30〜80nm、焼結体中のチタン酸バリウム結晶粒子の平均粒子径は40〜90nmであった。
(エ)粉末および焼結体についての結晶構造(正方晶性(c/a比)を含む)は、X線回折を用いたリートベルト解析により、いずれも平均構造が正方晶であり、c/a比もいずれも1より大きかった。
(オ)焼結体についての比誘電率は、焼結体中の平均粒子径が40〜80nmでは増加傾向であるが、平均粒子径が90から100nmでは比誘電率が低くなる傾向が見られた。
(カ)チタン酸バリウム粉末の焼結体の相対密度は、いずれも98.2%以上であり、高密度で欠陥の少ないチタン酸バリウム焼結体が得られた。
これに対して、粉末の製法の第2の工程において減圧下でプラズマ加熱を施さずに加熱処理して得られた試料では、水酸基は見られなかったものの、炭素化合物が質量比で0.1%以上含まれており、本発明の粉末や結晶粒子と同じ程度の平均粒子径を有しているものどうしを比較した場合に焼結体の比誘電率が低いものとなった。また、第2の工程での加熱温度を1000℃としたものでは、チタン酸バリウム焼結体の相対密度が97.9%と低くなった。
本発明の製法における第2の工程を行う装置を示す図である。 従来のチタン酸バリウム粉末についての赤外線吸収測定の結果を示す図である。 従来のチタン酸バリウム粉末についての熱重量分析の結果を示す図である。
符号の説明
1 電気炉本体
3 高周波プラズマ発生機
5 等温断熱容器
7 試料
9 減圧装置

Claims (5)

  1. 平均粒子径が30〜90nmの範囲内にあり、格子内水酸基の存在量が赤外線吸収測定の検出限界内であり、かつ、熱重量分析において600〜800℃の範囲における重量変化率が0.1質量%以下であることを特徴とするチタン酸バリウム粉末。
  2. 正方晶性を示す格子定数比c/aが1.005〜1.008の範囲内にある請求項1または2に記載のチタン酸バリウム粉末。
  3. バリウムおよびチタンを含む化合物を空気中で加熱する第1の工程と、前記第1の工程により得られた生成物を温度600℃以上、1000℃未満の減圧下でプラズマ加熱する第2の工程と、を具備することを特徴とするチタン酸バリウム粉末の製法。
  4. バリウムおよびチタンを含む化合物が炭酸バリウムおよび酸化チタンの混合物または蓚酸バリウムチタニル4水和物である請求項3に記載のチタン酸バリウム粉末の製法。
  5. 請求項1または2に記載のチタン酸バリウム粉末を焼成して得られることを特徴とするチタン酸バリウム焼結体。
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